特許第5941809号(P5941809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941809
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】火工品作動装置
(51)【国際特許分類】
   F42B 3/16 20060101AFI20160616BHJP
   F42B 15/36 20060101ALI20160616BHJP
   B64G 1/64 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   F42B3/16
   F42B15/36
   B64G1/64 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-217081(P2012-217081)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70799(P2014-70799A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】穴井 隆祐
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−245000(JP,A)
【文献】 特開平5−322497(JP,A)
【文献】 特開平6−194100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 3/16
B64G 1/64
F42B 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体に搭載され、火工品を作動するための電圧を発生する圧電素子と、
前記圧電素子に打撃を与えることで電圧を発生させる打撃装置と、を備え、
前記打撃装置は、前記圧電素子に向けた一端に開口部を有するシリンダと、
前記シリンダ内に格納され前記開口部に向けて摺動可能なピストンと、
前記シリンダ内に格納され点火によってガスを発生する出力薬と、
前記飛翔体の発射を契機として前記出力薬を点火する点火装置と、を有し、
前記ピストンは、前記点火装置による前記出力薬の点火時に発生するガスの圧力によって、前記開口部に向けて摺動し前記圧電素子に打撃を与える、ことを特徴とする火工品作動装置。
【請求項2】
前記点火装置と前記出力薬とは、導爆線を介して連結しており、
前記導爆線は、一部又は全部が紐状の延時薬になっており、
前記延時薬は、一端が点火によって燃焼してから他端が燃焼するまで所定の時間を要する、ことを特徴とする請求項1に記載の火工品作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体において搭載された火工品作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミサイル、ロケットの飛翔体において、飛翔中に火工品を作動させる必要がある場合がある。ここでの火工品とは、例えば、飛翔中において後部を切り離すための装置や、または、胴体を開いて内部に格納している弾薬を展開するための装置を想定している。
この火工品を作動させるために、一般的に乾電池や熱電池が用いられている。具体的には、飛翔中において火工品を作動させるタイミングで、電池を起動させ、火工品に電力を供給する構造が採用されている。
【0003】
火工品を電池によって作動させる装置としては、例えば、特許文献1に記載されている点火装置が知られている。
特許文献1に記載の点火装置は、電池より電源を供給する電源回路部と、昇圧された電力を蓄え点火玉に点火電流を供給する点火回路部を有することによって、ロケット用の火工品を点火する構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−012903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図1に記載するような火工品作動装置において、上記乾電池を用いると以下のような問題点が考えられる。
まず、飛翔体1に搭載した火工品2を点火させるための電源3として乾電池を使用した場合においては、作動装置の構造を簡素化することができるが、防衛設備品のように使用される時期が製造から数年経過した後である場合には、機器の信頼性を維持するために定期的な交換が必要になる。
一方、電源3として熱電池を使用した場合においては、製造から10年程度は交換が不要であるため、メンテナンスの負荷を軽減させることができる。しかし、熱源や断熱構造等を必要とするため内部構造が複雑化し、製品の故障率を抑えることが困難になるといった問題点が生じていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、数年ごとのメンテナンスが必要な乾電池や内部構造が複雑な熱電池を使用することがなく、簡素な構造で製造可能な火工品作動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によると、飛翔体に搭載され、火工品を作動するための電圧を発生する圧電素子と、
前記圧電素子に打撃を与えることで電圧を発生させる打撃装置と、を備え、
前記打撃装置は、前記圧電素子に向けた一端に開口部を有するシリンダと、
前記シリンダ内に格納され前記開口部に向けて摺動可能なピストンと、
前記シリンダ内に格納され点火によってガスを発生する出力薬と、
前記飛翔体の発射を契機として前記出力薬を点火する点火装置と、を有し、
前記ピストンは、前記点火装置による前記出力薬の点火時に発生するガスの圧力によって、前記開口部に向けて摺動し前記圧電素子に打撃を与える、ことを特徴とする火工品作動装置が提供される。
【0008】
また、前記点火装置と前記出力薬とは、導爆線を介して連結しており、
前記導爆線は、一部又は全部が紐状の延時薬になっており、
前記延時薬は、一端が点火によって燃焼してから他端が燃焼するまで所定の時間を要する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、飛翔体の発射を契機とした出力薬の点火によって圧電素子に打撃を与える。よって、予め飛翔体内に乾電池や熱電池を搭載しなくても圧電素子に打撃を与えることによる電圧の発生が可能になる。
【0010】
そのため、本発明によれば、数年ごとのメンテナンスが必要な乾電池や内部構造が複雑な熱電池を使用することがなく、また、簡素な構造で製造可能な火工品作動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術における飛翔体の模式図である。
図2】本発明における飛翔体の模式図である。
図3】本発明における火工品作動装置の構成図である。
図4】本発明における搭載火工品作動装置によって子弾を放出する際の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0013】
図2は、本発明における飛翔体の模式図であって、図3は、本発明における起動前の火工品作動装置の構成図である。
この図において、10は火工品作動装置、11は飛翔体、12は火工品、13は点火装置、13aは起動装置、13bは導爆線、13cは延時薬、14は出力薬、15はピストン、15aはシリンダ、16は圧電素子、20は打撃装置である。
【0014】
図2において、飛翔体11は、例えばミサイルやロケット弾等であり、この例においては、火工品12を搭載したものを想定している。
火工品12は、具体的には、飛翔体11の筐体内部に搭載された弾薬等を目的地において散布する際に、例えば、局部的な爆破によって筐体の一部を開放するために用いるものや、飛翔体11の側面に連結した推進力を補助するための補助用ロケット(図示しない)を、飛翔体11の発射後所定時間経過してから切り離すために用いるものが想定される。
ここで、火工品12を作動させるために、飛翔体11内において電圧を発生させる必要がある。以下、飛翔体11内における電圧を発生させる装置について説明を行う。
【0015】
図3(a)は、火工品作動装置において、ピストン起動前の状態の構成図である。打撃装置20は、圧電素子16を打撃するための装置であり、後述する点火装置13、出力薬14、ピストン15、シリンダ15aから構成される。
点火装置13は、後述する出力薬14に点火するための装置であって、起動装置13aと、この起動装置13aと出力薬14とを連結する導爆線13bと、この導爆線13bの一部を構成する延時薬13cからなる。
起動装置13aは、導爆線13bの一端を点火するための装置であって、例えば、飛翔体11が有するロケットモータ(図示しない)が点火した際や、飛翔体11が地上や艦艇に設置された状態から発射したことをトリガーとして起動装置13aが起動する構成になっている。
具体的には、発射の際において、発射装置(図示しない)から直接電流を付加させることによって起動装置13aを起動させる方法や、ロケットモータの点火時において、ロケットモータと点火装置13とが連結した導線の一端も同時に点火することによって起動装置13aを起動させる方法が考えられる。
【0016】
さらに、この例においては、導爆線13bの一部が延時薬13cになっており、この延時薬13cの長さを調整することによって、例えば飛翔体11の発射から出力薬14の点火までの時間を調整することが可能になっている。
この延時薬13cは、マンガンやクロム酸バリウム等を主成分とするものを用いることを想定している。
また、この例においては、延時薬13cは導爆線13bの一部を構成しているが、導爆線13bが全て延時薬13cからなるものや、延時薬13cの全部又は一部がシリンダ15aの中に設置されているものであってもよい。
【0017】
シリンダ15aは、一端に開口部15bを有する筒形状の容器であって、内部においてピストン15及び出力薬14を格納している。ピストン15は開口部15bから発射可能なように出力薬14に対して開口部15bに近い位置に配置している。
出力薬14は、点火によってガスを発生させるものであり、発生したガス圧によってピストン15を起動させる構成になっている。
ピストン15の外径は、出力薬14から発生したガス圧を最大限に利用するためにシリンダ15aの内径とほぼ同じ大きさに設定することが望ましい。また、起動前においては、ピストン15の外壁と、シリンダ15aの内壁とが螺合されている構成であってもよい。
また、ピストン15は、例えば、後端部においてシリンダ15aと連結されたバネ(図示しない)を有しており、出力薬14の起動後、バネの弾性力によって元の位置に戻る構成であってもよい。
【0018】
圧電素子16は、ピストン15によって打撃を受けることにより、電圧を発生させるものである。圧電素子16は、例えば、セラミックによって製造されたものを用いることを想定している。
この構成を有することによって、飛翔体11内部に乾電池等の電源を格納させることなく、飛行中においても火工品12に対して点火をすることが可能になる。
【0019】
なお、図3において、ピストン15は、飛翔体11の飛翔方向と垂直の方向に向けて起動する構成になっているが、飛翔体11の飛翔方向と同一方向に向けて起動するような構成であってもよい。この構成によって、例えば小型の飛翔体11に本発明を搭載する場合等において、ピストン15の起動が飛翔体11の飛翔に与える影響を小さくすることが可能になる。
【0020】
図4は、本発明における搭載火工品作動装置によって子弾を放出する際の構成図である。
この図において、21は展開装置、22は格納部、23は展開部、24は子弾である。
【0021】
この例は、火工品作動装置10によって点火された火工品12によって、展開部23を展開させ、内部の格納部22において格納していた子弾24を放出する場合のものである。
【0022】
展開装置21は、火工品12の点火に伴って起動するものである。この例において、展開部23の先端部は、飛翔体11の側面において連結しているものであり、この連結部分を展開装置21によって解除する。
具体的には、展開装置21は、局部的に爆発を発生させる機構であり、これによって、展開部23の先端部と、飛翔体11との連結部分を切り離し、展開部23の展開を行う。
【0023】
格納部22は、飛翔体11の内部に位置しており、この中に放出対象である子弾24を格納する構成である。この例においては、格納部22には複数の子弾24が格納されているが、子弾24ごとにそれぞれ格納部22及び展開装置21を設け、任意のタイミングで子弾24を1つずつ放出させる構成であってもよい。
【0024】
本発明においては、上記構成を有することによって、乾電池や熱電池を用いることなく火工品に電力を供給することが可能になるため、部材の交換等の頻繁なメンテナンスを必要としない。
さらに、熱源等を用いる必要がないため、構造を簡素にすることが可能になり、製品の故障率を下げることが可能になる。
【0025】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 飛翔体、2 火工品、3 電源、
10 火工品作動装置、11 飛翔体、12 火工品、
13 点火装置、13a 起動装置、
13b 導爆線、13c 延時薬、14 出力薬、
15 ピストン、15a シリンダ、15b 開口部、
16 圧電素子、20 打撃装置、
21 展開装置、22 格納部、23 展開部、24 子弾
図1
図2
図3
図4