(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出電極(11)又は前記ガード電極(13)に前記基準電位を与え、前記検出電極(11)と前記ガード電極(13)の間に電界を形成させて、前記検出電極(11)の抵抗成分Rmと、前記ガード電極(13)の抵抗成分Rgと、前記検出電極(11)と前記ガード電極(13)との間のインピーダンスZm−gとを算出する設計値算出部(23、5)を備える請求項1に記載の静電容量式乗員検知装置。
前記故障判別部(23、24)は、前記検出電圧、前記検出電流、及び前記ガード電流に基づいて、前記検出電極(11)と前記基準電極(3)との間のインピーダンスである検出インピーダンスと、前記ガード電極(13)と前記基準電極(3)との間のインピーダンスであるガードインピーダンスとを算出し、前記検出インピーダンス及び前記ガードインピーダンスに基づいて、前記静電センサ(1)の故障を判別する請求項6に記載の静電容量式乗員検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0015】
<第一実施形態>
第一実施形態の静電容量式乗員検知装置は、
図1及び
図2に示すように、静電センサ1と、乗員検知ECU2と、を備えている。静電センサ1は、フィルム状のセンサマットであって、電極が波状に配置されている。静電センサ1は、車両のシート91内に配置されている。静電センサ1は、シート91の座面911と略平行に配置されている。
【0016】
具体的に、静電センサ1は、
図3に示すように、メイン電極(「検出電極」に相当する)11と、ガード電極13と、フィルム部材14〜16と、を備えている。メイン電極11は、平板状の導電部材であって、フィルム部材15上に配置されている。
【0017】
ガード電極13は、平板状の導電部材であって、フィルム部材15を介してメイン電極11と対向するように配置されている。ガード電極13の下方には、フィルム部材16が配置されている。つまり、ガード電極13は、フィルム部材15とフィルム部材16の間に配置されている。メイン電極11は、ガード電極13よりもシート91の座面911側に配置される。フィルム部材14〜16は、絶縁性材料(例えばPET)からなり、フィルム部材14〜16間には例えば接着剤が介在している。
【0018】
乗員検知ECU2は、電子制御ユニットであって、電圧印加部21(「検出電圧印加部」に相当する)と、電流検出部22と、容量検出部23と、乗員判別部24と、オペアンプ(「ガード電圧印加部」に相当する)25と、を備えている。
【0019】
電圧印加部21は、車両接地GND、メイン電極11、及びオペアンプ25に接続されている。電圧印加部21は、交流電源であって、メイン電極11に交流電圧(検出電圧)を印加する。これにより、メイン電極11は、基準電極である車両ボディ3との間に電界を形成する。車両ボディ3は、車両のボディ部分であるとともに電極を構成し、基準電位である車両接地GNDに接続されている。
【0020】
電流検出部22は、電圧印加部21の電圧印加によりメイン電極11に流れる電流(以下、検出電流とも称する)、及びオペアンプ25の電圧印加によりガード電極13に流れる電流(以下、ガード電流とも称する)を検出する。
【0021】
具体的に、電流検出部22は、電流センサ(「電流検出装置」に相当する)221と、スイッチ部222と、スイッチ制御部223と、を備えている。電流センサ221は、接続された検出対象に流れる電流を検出するセンサである。なお、電流センサの検出対象への接続とは、検出対象の電流を検出可能な回路状態であることを意味する。
【0022】
スイッチ部222は、スイッチ制御部223の信号に応じて電流センサ221の接続先をメイン電極11とガード電極13とで切り替え可能な切替器である。スイッチ部222は、第一スイッチ222aと、第二スイッチ222bと、で構成されている。
【0023】
第一スイッチ222aは、一方端子がメイン電極11に接続され、他方のa接点が電流センサ221及び第二スイッチ222bのc接点に接続され、他方のb接点が第二スイッチ222bのd接点及びオペアンプ25の出力端子に接続された電磁スイッチである。第二スイッチ222bは、一方端子がガード電極13に接続され、他方のc接点が電流センサ221及び第一スイッチ222aのa接点に接続され、他方のd接点がオペアンプ25の出力端子及び第一スイッチ222aのb接点に接続された電磁スイッチである。
【0024】
スイッチ制御部223は、スイッチ部222の接続先を制御する制御回路である。スイッチ制御部223が第一スイッチ222aをa接点に接続させ且つ第二スイッチ222bをd接点に接続させることで、電流センサ221はメイン電極11に流れる電流を検出する。この際、メイン電極11は電圧印加部21に接続されて検出電圧が印加され、ガード電極13はオペアンプ25に接続されて検出電圧と同電位の電圧(ガード電圧)が印加される。この接続状態をメイン検出状態と称する。
【0025】
また、スイッチ制御部223が第一スイッチ222aをb接点に接続させ且つ第二スイッチ222bをc接点に接続させることで、電流センサ221はガード電極13に流れる電流を検出する。この際、ガード電極13は電圧印加部21に接続されて検出電圧が印加され、メイン電極11はオペアンプ25に接続されて検出電圧と同電位の電圧が印加される。この接続状態をガード検出状態と称する。このように上記の2つの接続状態では、いずれもメイン電極11とガード電極13には同電位の電圧が印加される。本実施形態のスイッチ制御部223は、所定時間毎にメイン検出状態とガード検出状態とを切り替える。
【0026】
容量検出部23は、電流検出部22及び乗員判別部24に接続されている。詳細には、容量検出部23は、乗員判別部24に接続されていると共に、スイッチ制御部223を介して電流センサ221に接続されている。容量検出部23とスイッチ制御部223は、連動して作動する。
【0027】
容量検出部23は、電圧印加部21の印加する電圧と、電流検出部22が検出した電流とに基づいて、メイン電極11又はガード電極13が形成する電界における静電容量を算出する。静電容量は、電圧印加時の電流経路におけるインピーダンスの虚数成分(アドミッタンスの虚数部)に基づき算出でき、虚数成分は電流と電圧の位相のずれから算出できる。
【0028】
容量検出部23は、スイッチ制御部223と接続されており、スイッチ制御部223によるスイッチ部222の接続状態を把握し、メイン電極11及びガード電極13のいずれの静電容量であるかを判別している。静電容量の算出については後述する。
【0029】
乗員判別部24は、容量検出部23に接続されており、容量検出部23の検出結果(静電容量)と予め設定された閾値とに基づいて、乗員の有無、及び乗員が大人かCRSであるかを判別する。
【0030】
オペアンプ25は、入力側に電圧印加部21が接続され、出力側にスイッチ部222が接続されたオペアンプである。オペアンプ25は、メイン検出状態において、メイン電極11に印加される電圧と同電圧をガード電極13に印加する。ガード電極13は、メイン電極11の下側でメイン電極11と同電位になることで、メイン電極11がシート91の座面911を介さない下側で車両ボディ3と電界を形成することを抑制している。つまり、ガード電極13は、メイン電極11が確実にシート91上に電界を形成するためのものである。
【0031】
ここで容量検出部23による静電容量の算出について説明する。メイン検出状態におけるメイン電極11とガード電極13とは、互いに形成する電界中の静電容量が異なるため、実際には同電位とならない。したがって、実際には、
図4に示すような等価回路が形成されている。
【0032】
図4において、Eは電圧印加部21及びオペアンプ25が印加する電圧であり、I
mはメイン電極11に流れる電流(検出電流)であり、I
gはガード電極13に流れる電流(ガード電流)である。R
mはメイン電極11の抵抗成分であり、R
gはガード電極13の抵抗成分である。Z
m−body−GNDはメイン電極11と車両ボディ3との間のインピーダンス(以下、検出インピーダンスと称する)であり、Z
m−gはメイン電極11とガード電極13との間のインピーダンスであり、Z
g−GNDはガード電極13と車両ボディ3との間のインピーダンス(以下、ガードインピーダンスと称する)である。なお、i
errは、電位差によりメイン電極11とガード電極13の間に流れる意図しない電流である。
ここで、乗員判別に必要な要素は、検出インピーダンスZ
m−body−GNDである。また、R
m、R
g、Z
m−gは設計値であって、予め容量検出部23に記憶された値である。検出インピーダンスZ
m−body−GNDは、等価回路から下記式(1)により算出できる。
【0034】
容量検出部23は、式(1)に基づいて検出インピーダンスZ
m−body−GNDを算出し、算出結果に基づいて静電容量を算出する。なお、上述のとおり、静電容量は、インピーダンスの虚数成分(アドミッタンスの虚数部)であって、インピーダンスを求めることで算出できる。すなわち、インピーダンスと静電容量は対応しており、インピーダンスを算出することは、静電容量を算出することに相当する。換言すると、静電容量に基づく判別は、インピーダンスに基づく判別と同意である。なお、ガードインピーダンスZ
g−GNDは下記式(2)により算出できる。
【0036】
本実施形態の乗員検知ECU2が行う制御について説明する。
図5に示すように、まず、スイッチ制御部223がスイッチ部222をメイン検出状態(第一スイッチ222aをa接点、第二スイッチ222bをd接点)にセットする(S101)。そして、電流センサ221が検出電流I
mを検出する(S102)。
【0037】
続いて、スイッチ制御部223がスイッチ部222をガード検出状態(第一スイッチ222aをb接点、第二スイッチ222bをc接点)にセットする(S103)。そして、電流センサ221がガード電流I
gを検出する(S104)。容量検出部23は、電流センサ221からの電流情報I
m、I
g、電圧印加部21の印加電圧E、及び設計値R
m、R
g、Z
m−gから式(1)を用いて検出インピーダンスZ
m−body−GNDを算出する(S105)。乗員判別部24は、容量検出部23の算出結果に基づいて乗員の有無及び種別を判別する(S106)。
【0038】
図6に示すように、容量検出部23で算出される検出電流からの容量換算値(pF)では、厚着大人と1歳児(チャイルドシート付き)において、メイン−ガード間の電位差を考慮しない従来の乗員検知装置での容量差(約4.1pF)よりも本実施形態での容量差(約4.7pF)のほうが大きくなっている。つまり、本実施形態では、両者の判別がより明確にできるようになり、乗員検知精度(乗員判別精度)は向上する。
【0039】
このように、第一実施形態によれば、ガード電流を検出し、ガード電流を利用することでより正確な静電容量を検出でき、乗員検知精度を向上させることができる。また、第一実施形態では、電流センサなどの電流検出装置を1つ設ければ良く、また既存のスイッチを利用することができるため、製造コストの面で優れている。なお、以下の実施形態でも検出インピーダンスを本実施形態同様に算出しており、
図4や式(1)を参照できる。
【0040】
<第二実施形態>
第二実施形態の静電容量式乗員検知装置について
図7を参照して説明する。第一実施形態と同じ符号は、第一実施形態と同様の構成を示すものであって、先行する説明が参照される。第二実施形態の静電容量式乗員検知装置は、第一実施形態と比較して、電流検出部の構成が異なっている。
【0041】
図7に示すように、第二実施形態の電流検出部42は、第一電流センサ421と、第二電流センサ422と、を備えている。第一電流センサ421は、一方が電圧印加部21及びメイン電極11に接続され、他方が容量検出部23に接続された電流センサである。第一電流センサ421は、電圧印加部21の電圧印加によりメイン電極11に流れる電流(検出電流)I
mを検出する。
【0042】
第二電流センサ422は、一方がオペアンプ25及びガード電極13に接続され、他方が容量検出部23に接続された電流センサである。第二電流センサ422は、オペアンプ25の電圧印加によりガード電極13に流れる電流(ガード電流)I
gを検出する。
【0043】
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が発揮される。また、第二実施形態によれば、スイッチの切替制御をすることなく、検出電流とガード電流を同時に検出することができる。常時両方の電流を検出することにより、乗員の着座タイミングやシート91上での乗員の激しい動作に関わらず、より正確な静電容量を検出することができる。
【0044】
<第三実施形態>
第三実施形態の静電容量式乗員検知装置について
図8及び
図9を参照して説明する。第一実施形態と同じ符号は、第一実施形態と同様の構成を示すものであって、先行する説明が参照される。第三実施形態の静電容量式乗員検知装置は、第一実施形態と比較して、主に、第三スイッチ5が追加され、容量検出部23が設計値を算出する点で異なっている。
【0045】
図8に示すように、第二スイッチ222bとガード電極13の間には、第三スイッチ5が配置されている。第三スイッチ5は、一方端子がガード電極13に接続され、他方のe接点が第二スイッチ222bの一方端子に接続され、他方のf接点が車両接地GNDに接続された電磁スイッチである。第三スイッチ5は、スイッチ制御部223の指示により、e接点とf接点とが切り替えられる。
【0046】
容量検出部23は、設計値を算出する際、スイッチ制御部223を介して各スイッチ222a、222b、5に指示する。具体的に、設計値を算出する際のスイッチ接続状態(以下、設計値検出状態と称する)は、第一スイッチ222aがa接点に接続され、第三スイッチ5がf接点に接続された状態である。設計値検出状態において、第二スイッチ222bの接点接続は何れでも良く任意に設定される。
【0047】
設計値検出状態では、ガード電極13が車両接地GNDに接続され、メイン電極11が電圧印加部21及び電流センサ221に接続されている。これにより、メイン電極11とガード電極13との間に電界が形成され、その際の電圧・電流値から設計値R
m、R
g、Z
m−gを算出することができる。容量検出部23は、乗員検知を実行する前に、設計値検出状態を形成し、設計値R
m、R
g、Z
m−gを算出する。容量検出部23は、ガード電極13に基準電位(GND)を与えて設計値を算出する設計値算出部を兼ねている。また、設計値算出部は、第三スイッチ5と容量検出部23の一部(設計値を算出する部位)で構成されているともいえる。なお、メイン検出状態及びガード検出状態では、第三スイッチ5は、e接点に接続される。
【0048】
第三実施形態の乗員検知ECU2の制御は、
図9に示すように、まずスイッチ制御部223が各スイッチ222a、222b、5を設計値検出状態にセットする(S201)。そして、容量検出部23が設計値R
m、R
g、Z
m−gを算出する(S202)。続いて、スイッチ制御部223が各スイッチ222a、222b、5をメイン検出状態(第一スイッチ222aをa接点、第二スイッチ222bをd接点、第三スイッチ5をe接点)にセットする(S203)。電流センサ221は、メイン電流I
mを検出する(S204)。
【0049】
続いて、スイッチ制御部223が各スイッチ222a、222b、5をガード検出状態(第一スイッチ222aをb接点、第二スイッチ222bをc接点、第三スイッチ5をe接点)にセットする(S205)。電流センサ221は、ガード電流I
gを検出する(S206)。容量検出部23は、検出した設計値、電流センサ221からの電流情報、電圧印加部21の電圧値から式(1)に基づいて検出インピーダンスZ
m−body−GNDを算出する(S207)。そして、乗員判別部24が容量検出部23の検出結果に基づいて乗員を判別する(S208)。
【0050】
第三実施形態によれば、第一実施形態の効果に加えて、実測により設計値を計測することができ、より実際の状態に近い静電容量を検出することができる。ただし、設計値は、第一実施形態のように、回路設計時に算出された固定値として記憶させたものを用いても良く、製造コスト面で第一実施形態が優れている。
【0051】
<第四実施形態>
第四実施形態の静電容量式乗員検知装置について
図2及び
図10〜
図12を参照して説明する。第一実施形態と同じ符号は、第一実施形態と同様の構成を示すものであって、先行する説明が参照される。第四実施形態の静電容量式乗員検知装置は、第一実施形態と比較して、主に、乗員判別部24が故障判別を行う点で異なっている。したがって、第四実施形態の回路構成は、第一実施形態と同様(
図2参照)となる。
【0052】
乗員判別部24は、容量検出部23の検出結果に基づいて静電センサ1の故障の有無を判別する。つまり、乗員判別部24は、容量検出部23の検出結果に基づいて、乗員を判別すると共に静電センサ1の故障も判別する。乗員判別部24及び容量検出部23は、本発明における「故障判別部」に相当する。
【0053】
乗員判別部24は、
図10及び
図11に示すように、容量検出部23で検出されたインピーダンスと予め設定された閾値との大小関係に基づいて故障及び乗員を判別する。
【0054】
具体的には、検出インピーダンス(ここではZ
mと表示する)が大人閾値(Th_adult_m)より大きくメイン側第一故障閾値(Th_err_m)より小さい場合で、且つ、ガードインピーダンス(ここではZ
gと表示する)がガード側第二故障閾値(Th_empty_g)より大きくガード側第一故障閾値(Th_err_g)より小さい場合、乗員判別部24は、「故障なし」で乗員を「大人」と判別する。
【0055】
また、検出インピーダンスZ
mが子供閾値(Th_child_m)より大きく大人閾値より小さい場合で、且つガードインピーダンスZ
gがガード側第二故障閾値より大きくガード側第一故障閾値より小さい場合、乗員判別部24は、「故障なし」で乗員を「子供(チャイルドシート)」と判別する。
【0056】
また、検出インピーダンスZ
mがメイン側第二故障閾値(Th_empty_m)より大きく子供閾値より小さい場合で、且つガードインピーダンスZ
gがガード側第二故障閾値より大きくガード側第一故障閾値より小さい場合、乗員判別部24は、「故障なし」で乗員を「空席(空座)」と判別する。
【0057】
このように、検出インピーダンスZ
mに対して、大人か子供かを判定するための大人閾値と、子供か空席かを判定するための子供閾値と、第一の故障か大人かを判定するためのメイン側第一故障閾値と、第二の故障か空席かを判定するメイン側第二故障閾値と、が設定されている。また、ガードインピーダンスZ
gに対して、第一の故障か否かを判定するガード側第一故障閾値と、第二の故障か否かを判定するガード側第二故障閾値と、が設定されている。
【0058】
乗員判別部24は、検出インピーダンスZ
mとガードインピーダンスZ
gが上記3パターン以外である場合、静電センサ1が故障している(故障有り)と判別し、表示ランプ等の通知装置(図示せず)を作動させてユーザに通知する。さらに本実施形態では、故障の種類(電極の断線かショートか)及び断線の場合に断線箇所(いずれの電極で断線しているか)を判別する。
【0059】
例えば、メイン電極11の半分が断線した場合、静電センサ1に占める各電極面積及び配置位置の関係から、検出インピーダンスZ
mは減少し、ガードインピーダンスZ
gは異常増加する。乗員判別部24は、このような検出結果を利用して故障判別を行う。以下に具体的に説明する。
【0060】
(メイン電極断線故障)
検出インピーダンスZ
mが大人閾値より小さく且つガードインピーダンスZ
gがガード側第一故障閾値より大きい場合、乗員判別部24は、「メイン電極11断線故障」と判別する。ここで、
図12に示すように、実際の乗員が「大人」で「メイン電極11断線故障」である場合、検出インピーダンスZ
mは大人閾値より小さく子供閾値より大きくなり得る。この場合、本実施形態の故障判別がない従来の構成では、乗員が「子供」と誤判定される。また、実際の乗員が「子供」で「メイン電極11断線故障」である場合、検出インピーダンスZ
mが子供閾値より小さくなり得る。この場合、従来の構成では、乗員が「空席」と誤判定される。
【0061】
また、検出インピーダンスZ
mがメイン側第二故障閾値より小さく、且つ、ガードインピーダンスZ
gがガード側第一故障閾値より小さくガード側第二故障閾値より大きい場合、乗員判別部24は、「メイン電極11断線故障」と判別する。検出インピーダンスZ
mがメイン側第二故障閾値より小さいことだけでは、メイン電極11とガード電極13のいずれの電極が断線しているのかは特定できない。
【0062】
(ガード電極断線故障)
一方、検出インピーダンスZ
mがメイン側第二故障閾値より大きく且つガードインピーダンスZ
gがガード側第二故障閾値より小さい場合、乗員判別部24は、「ガード電極13断線故障」と判別する。ここで、
図12に示すように、実際の乗員が「子供」で「ガード電極13断線故障」である場合、検出インピーダンスZ
mは大人閾値より大きくメイン側第一閾値より小さくなり得る。この場合、従来の構成では、乗員が「大人」と誤判定される。また、実際の乗員が「空席」で「ガード電極13断線故障」である場合、検出インピーダンスZ
mが子供閾値より大きく大人閾値より小さくなり得る。この場合、従来の構成では、乗員が「子供」と誤判定される。
【0063】
また、検出インピーダンスZ
mがメイン側第一故障閾値より大きく、且つ、ガードインピーダンスZ
gがガード側第一故障閾値より小さくガード側第二故障閾値より大きい場合、乗員判別部24は、「ガード電極13断線故障」と判別する。
【0064】
(その他の故障)
また、検出インピーダンスZ
mがメイン側第二故障閾値より小さく且つガードインピーダンスZ
gがガード側第二故障閾値より小さい場合、乗員判別部24は、「メイン電極11及びガード電極13断線故障」と判別する。また、検出インピーダンスZ
mがメイン側第一故障閾値より大きく且つガードインピーダンスZ
gがガード側第一故障閾値より大きい場合、乗員判別部24は、「メイン電極11及びガード電極13のショート(短絡)故障」と判別する。
【0065】
このように、第四実施形態によれば、検出インピーダンスZ
m及びガードインピーダンスZ
gを検出すること(ひいては検出電圧、検出電流、及びガード電流を検出すること)で、故障の詳細(種別・箇所)を特定できると共に、誤判定を抑制することで乗員検知精度を向上させることができる。第四実施形態によれば、ガード電極13の故障を検出できるため、誤判定をより精度良く抑制することができる。乗員判別部24は、故障判別結果に基づいて乗員判別を行うことができる。
【0066】
第四実施形態では、検出電圧と検出電流に加えて、ガード電流を検出し、且つこれらの値を利用することで、故障の詳細を判別し、誤判定を抑制する。つまり、故障判別部を含む乗員判別部24は、検出電圧、検出電流、及びガード電流に基づいて故障を判別する。
【0067】
<その他の変形態様>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、静電センサ1は、
図13に示すように、サブ電極12を有していても良い。この場合、サブ電極12は、平板状の導電部材であって、フィルム部材15上でメイン電極11と隣り合うように、メイン電極11の少なくとも一方側(ここでは両隣)に配置されている。換言すると、サブ電極12は、メイン電極11の縁から離間し且つ並列して(当該縁に沿って)配置されている。メイン電極11及びサブ電極12上には、フィルム部材14が配置されている。つまり、メイン電極11及びサブ電極12は、フィルム部材14とフィルム部材15の間に配置されている。
【0068】
そして、この場合、オペアンプ25は、入力側に電圧印加部21が接続され、出力側にサブ電極12及びガード電極13が接続される。オペアンプ25は、メイン電極11に印加される電圧と同電圧をサブ電極12及びガード電極13に印加する。
【0069】
サブ電極12は、メイン電極11の端部(縁部)から出る電気力線がシート91及び乗員を介さずにメイン電極11の端から車両ボディ3に向けて延びるのを抑制する。また、サブ電極12は、シート91の被水を検知するための電極としても利用できる。この場合(被水検知のモードの際)、サブ電極12に基準電位(車両接地GND)が付与され、検出電圧が印加されたメイン電極11と基準電位のサブ電極12との間で電界が形成され、当該電極間での静電容量に基づいて被水が検知される。
【0070】
上記実施形態がサブ電極12を備える場合、R
gはガード電極13及びサブ電極12の抵抗成分となり、Z
m−gはメイン電極11とガード電極13(サブ電極12を含む)との間のインピーダンスとなり、I
gはガード電極13とサブ電極12に流れる電流値となり、Z
g−GNDはガード電極13及びサブ電極12と車両ボディ3との間のインピーダンスとなる。これによっても、上記実施形態と同様の効果が発揮される。
【0071】
また、第三実施形態において、第三スイッチ5はメイン電極11と第一スイッチ222aの間に配置されていても良い。つまり、第三スイッチ5は、一方端子がメイン電極11に接続され、他方のe接点が第一スイッチ222aの一方端子に接続され、他方のf接点が車両接地GNDに接続されている電磁スイッチであって、第二スイッチ222bの一方端子とガード電極13とが直接的に接続されている。
【0072】
また、第三スイッチ5は、メイン電極11と第一スイッチ222aの間、及びガード電極13と第二スイッチ222bの間の両方に配置されていても良い。これらの構成によっても、第三スイッチ5を切り替えることで、メイン電極11及びガード電極13の何れか一方に基準電位(車両接地GND)を与えることができ、第三実施形態同様の効果が発揮される。
【0073】
また、第四実施形態において、乗員検知に関しては、ガード電流を用いず、従来どおり検出電圧と検出電流から検出インピーダンスを検出してもよい。つまり、第四実施形態では、乗員検知とは別に故障検知のみを検出電圧、検出電流、及びガード電流に基づいて実行しても良い。これによっても、詳細な故障判別が可能となる。
【0074】
また、数式はベクトル表記となっているが、等価回路から導き出せる数式であれば良く、ベクトル表記以外で表しても良い。また、第四実施形態では、故障と判別した場合でも、
図11の実測値を参考にして故障時の判別条件を設定し、各インピーダンスZ
m、Z
gに基づいて乗員を判別しても良い。また、乗員検知ECU2は、容量検出部23及び乗員判別部24とは別に、検出電圧、検出電流、及びガード電流に基づいて、静電センサ1の故障を判別する故障判別部を備えていてもよい。
【0075】
また、スイッチ制御部223によるスイッチ部222の切替制御方法は、例えば、基本的にメイン検出状態にセットしておき、検出電流が増加した場合にのみメイン検出状態とガード検出状態とを切り替えるように設定しても良い。
【0076】
また、同電圧が印加されたメイン電極11とサブ電極12とが基準電極(車両ボディ3)との間に電界を形成する場合、両電極11、12に流れる電流の和を検出電流I
mとして検出しても良い。この場合、メイン電極11とサブ電極12が検出電極となる。また、第二実施形態と第三実施形態又は第四実施形態や、第三実施形態と第四実施形態など、実施形態同士適宜組み合わせても良い。