特許第5941846号(P5941846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5941846凹凸部を有する板材並びにこれを用いた車両パネル及び積層構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941846
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】凹凸部を有する板材並びにこれを用いた車両パネル及び積層構造体
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20160616BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20160616BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20160616BHJP
   B21D 47/00 20060101ALI20160616BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20160616BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B62D25/10 A
   B62D25/06 Z
   B62D25/20 E
   B21D47/00 G
   B21D53/88 Z
   B21D22/02 B
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-552649(P2012-552649)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2011078740
(87)【国際公開番号】WO2012096085
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-2767(P2011-2767)
(32)【優先日】2011年1月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌也
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−044366(JP,U)
【文献】 国際公開第2007/010868(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00 − 29/04
B21D 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材であって、
上記凹凸部は、間隔をあけて順次平行に配された仮想の3つの面である第1基準面、中間基準面及び第2基準面を基準とし、
上記中間基準面を、同じ大きさの仮想の矩形からなる枡を敷き詰めた枡目をなすものと仮定し、
上記枡をなす仮想の矩形の一辺と平行な方向をX方向とし、該X方向に垂直な方向をY方向とし、
上記中間基準面においては、X方向に連なる3つの枡をX領域とし、Y方向に連なる3つの枡をY領域とし、
1つの上記Y領域の両端部に該Y領域の端部と上記X領域の中央の枡とが接するようにそれぞれ1つずつX領域を配してあり、該X領域の両端部に該X領域の端部とY領域の中央の枡とが接するようにそれぞれ1つずつY領域を配してなる領域を第1基準領域とし、
上記中間基準面上には、上記第1基準領域が同じ向きで配列されており、上記X方向において複数の上記第1基準領域同士を一枡開けた状態で一列に配列した第1基準領域列が複数形成され、
上記中間基準面上のY方向において隣接する上記第1基準領域列は、互いにX方向に3つの枡目分移動した位置に配されており、
上記中間基準面において、上記第1基準領域以外の全ての領域を第2基準領域とし、
上記中間基準面上において定められた上記第1基準領域から上記第1基準面に向かって突出する第1領域と、上記中間基準面上において定められた上記第2基準領域から上記第1基準面又は第2基準面に向かって突出する第2領域及び上記中間基準面上に上記第2基準領域を基に形成される平面領域のいずれか一方又は両方、とを設け、
上記第1領域は、上記第1基準領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1基準領域の輪郭とをつなぐ第1側面とからなり、
上記第2領域は、上記第2基準領域を上記第1基準面上又は上記第2基準面上に等倍又は縮小して投影した第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とからなるよう構成したことを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項2】
請求項1に記載の凹凸部を有する板材において、上記枡をなす一辺の長さL(mm)と、該一辺と直交する辺の長さM(mm)は、0.5L≦M≦2Lの関係にあることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の凹凸部を有する板材において、上記第2基準面に対する上記第1側面の傾斜角度θ1(°)は、10°〜90°の範囲にあり、上記第2基準面に対する上記第2側面の傾斜角度θ2(°)は、10°〜90°の範囲にあることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準面及び上記第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材を製造する方法であって、上記板材は金属板から作製し、かつ、上記凹凸部はプレス成形することにより形成することを特徴とする凹凸部を有する板材の製造方法
【請求項6】
請求項5に記載の凹凸部を有する板材の製造方法において、上記金属板の成形前の板厚t(mm)が0.03〜6.0mmであることを特徴とする凹凸部を有する板材の製造方法
【請求項7】
請求項に記載の凹凸部を有する板材の製造方法において、上記枡の一辺の長さL(mm)と、上記板厚t(mm)との比L/tは10〜2000であることを特徴とする凹凸部を有する板材の製造方法
【請求項8】
請求項6又は7のいずれか一項に記載の凹凸部を有する板材の製造方法において、上記第1領域の突出高さH1(mm)と上記板厚t(mm)との比H1/tと、上記第1側面と上記中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ1(°)とは、1≦(H1/t)≦−3θ1+272の関係にあり、上記第2領域の突出高さH2(mm)と上記板厚t(mm)との比H2/tと、上記第2側面と上記中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ2(°)とは、1≦(H2/t)≦−3θ2+272の関係にあることを特徴とする凹凸部を有する板材の製造方法
【請求項9】
複数の板材を積層してなる積層構造体であって、上記板材の少なくとも1枚は請求項1〜4のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体。
【請求項10】
アウターパネルと該アウターパネルの裏面に接合されたインナーパネルとを有する車両パネルであって、上記アウターパネルと上記インナーパネルのいずれか一方又は両方が請求項1〜4のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材よりなることを特徴とする車両パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材、並びにこれを用いて構成した車両パネル及び積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車においては、軽量化を目的として、鋼板等によって構成されている部品の材料を、アルミニウム合金板等の軽量な材料に置き換えることが検討、実施されている。この場合、軽量化の前提として、要求される剛性を確保することが必要である。
これまで、板材の板厚を厚くすることなく剛性を向上させるために、板材に波形形状や、凹凸形状を設けて形状的に剛性を向上させることが検討されてきた。
【0003】
凹凸形状を施した例として、自動車部品の一つに、ヒートインシュレータという板材よりなる部品がある。特許文献1には、その材料として、板厚を厚くすることなく十分な剛性を確保するために、エンボス成形による多数の突部を形成したものが提案されている。また、ヒートインシュレータに限らず、様々な用途においてエンボス成形等の凹凸部を形成することによって剛性を向上させた板材が提案されている(特許文献2〜7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4388558号公報
【特許文献2】特許3332353号公報
【特許文献3】特開2000−257441号公報
【特許文献4】特開平9−254955号公報
【特許文献5】特開2000−288643号公報
【特許文献6】特開2002−307117号公報
【特許文献7】特開2002−321018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のごとく、板材に波形形状や、多数の凹凸部を形成した板材は、凹凸部を形成していない平板よりも剛性が高くなることは事実である。しかしながら、波形形状を設けた板材の剛性には方向性があり、一方向においては剛性が向上するものの、その他の方向においては所望の剛性向上効果を得られない場合がある。また、特許文献1や特許文献2に示す凹凸部を設けた板材においては、剛性の異方性を低減できるものの、その剛性向上効果は凹凸部を形成していない平板に比べ2倍程度で、軽量化効果は20%程度であり、必ずしも要求を満足できるものではない。そのため、より剛性を向上し、かつ軽量化を実現する最適な凹凸部形状がいかなるものであるかについては、未だ解明できているとは言えず、剛性向上効果及び軽量化効果をこれまで以上に高くすることは、常に要求されている。また、軽量化の必要性以外にも、材料費削減の効果も期待されており、板材(板形状を有する材料)であれば、材質を問わず剛性向上及び軽量化の要求は存在する。
【0006】
また、剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材を用いて、これを含んだ積層構造体や、剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材を組み合わせた車両パネルについても、従来以上の高剛性なものとすることも求められている。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、凹凸部を設けることによって剛性を向上させた板材であって、従来よりも剛性向上効果の高い凹凸部のパターンを有する板材、及びこれを用いた車両パネル並びに積層構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材であって、
上記凹凸部は、間隔をあけて順次平行に配された仮想の3つの面である第1基準面、中間基準面及び第2基準面を基準とし、
上記中間基準面を、同じ大きさの仮想の矩形からなる枡を敷き詰めた枡目をなすものと仮定し、
上記枡をなす仮想の矩形の一辺と平行な方向をX方向とし、該X方向に垂直な方向をY方向とし、
上記中間基準面においては、X方向に連なる3つの枡をX領域とし、Y方向に連なる3つの枡をY領域とし、
1つのY領域の両端部に該Y領域の端部と上記X領域の中央の枡とが接するようにそれぞれ1つずつX領域を配してあり、該X領域の両端部に該X領域の端部とY領域の中央の枡とが接するようにそれぞれ1つずつY領域を配してなる領域を第1基準領域とし、
上記中間基準面上には、上記第1基準領域が同じ向きで配列されており、上記X方向において複数の上記第1基準領域同士を一枡開けた状態で一列に配列した第1基準領域列が複数形成され、
上記中間基準面上のY方向において隣接する上記第1基準領域列は、互いにX方向に3つの枡目分移動した位置に配されており、
上記中間基準面において、上記第1基準領域以外の全ての領域を第2基準領域とし、
上記中間基準面上において定められた上記第1基準領域から上記第1基準面に向かって突出する第1領域と、上記中間基準面上において定められた上記第2基準領域から上記第1基準面又は第2基準面に向かって突出する第2領域及び上記中間基準面上に上記第2基準領域を基に形成される平面領域のいずれか一方又は両方、とを設け、
上記第1領域は、上記第1基準領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1基準領域の輪郭とをつなぐ第1側面とからなり、
上記第2領域は、上記第2基準領域を上記第1基準面上又は上記第2基準面上に等倍又は縮小して投影した第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とからなるよう構成したことを特徴とする凹凸部を有する板材にある。
【0009】
本発明の他の態様は、複数の板材を積層してなる積層構造体であって、上記板材の少なくとも1枚は上記凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体にある。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、アウターパネルと該アウターパネルの裏面に接合されたインナーパネルとを有する車両パネルであって、上記アウターパネルと上記インナーパネルのいずれか一方又は両方が上記凹凸部を有する板材よりなることを特徴とする車両パネルにある。
【発明の効果】
【0011】
上記凹凸部を有する板材において、上記凹凸部は、上記中間基準面上において定められた上記第1基準領域から上記第1基準面に向かって突出する第1領域と、上記中間基準面上において定められた上記第2基準領域から上記第1基準面又は第2基準面に向かって突出する第2領域及び上記中間基準面上に上記第2基準領域を基に形成される平面領域のいずれか一方又は両方、とを設けてなる。
【0012】
このような構造を有しているので、上記凹凸部を有する板材は曲げ剛性に優れると共に、エネルギー吸収特性に優れた板材となる。
剛性が向上する理由は、次のように考えられる。即ち、上記第1領域は、上記板材の中立面から離れた位置に配される上記第1基準面上に配置した上記第1頂面と、板材の厚さ方向に交差した上記第1側面とからなる。また、第2領域は、上記第1基準面又は上記第2基準面上に配置した上記第2頂面と、板材の厚さ方向に交差した上記第2側面とからなる。また、上記平面領域は、上記中間基準面上に配された上記第2基準領域を基に形成される。そのため、上記板材の中立面から離れた位置に多くの材料を配置できる。したがって、多くの材料を効果的に使用することができ、剛性向上効果を高めることができる。
【0013】
特に、上記第1領域及び上記第2領域は、上記のごとく形状及び位置関係を設定した上記第1基準領域及び上記第2基準領域を基に形成されている。これにより、任意の断面においても断面2次モーメントを向上させることができ、優れた剛性向上効果を有し、かつ剛性の異方性が少ない凹凸形状を得ることができる。これにより、板厚の薄い材料においても、必要な剛性が得られるため軽量化が可能となる。また、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0014】
上記積層構造体においては、上記のごとく剛性向上効果を備えた凹凸部を有する板材を積層構造体の一部として用いることによって、非常に剛性が高い積層構造体を容易に得ることができる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
【0015】
上記車両パネルにおいては、上記のごとく剛性向上効果を備えた凹凸部を有する板材を上記アウターパネル及び上記インナーパネルのいずれか一方又は両方に用いることによって、非常に剛性が高い車両パネルを容易に得ることができる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1における、凹凸部を有する板材の平面図。
図2図1のA−A線矢視断面における、部分拡大断面図。
図3】実施例1における、中間基準面を示す説明図。
図4】実施例2における、第1領域と第2領域からなる凹凸部を有する板材の平面図。
図5図4のB−B線矢視断面における、部分拡大断面図。
図6】実施例3における、第1領域と平面領域からなる凹凸部を有する板材の平面図。
図7図6のC−C線矢視断面における、部分拡大断面図。
図8】実施例4における、凹凸部を有する円筒材を示す説明図。
図9】実施例5における積層構造体の展開説明図。
図10】実施例6における車両パネルの展開説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、矩形等の形状の表現は、いずれも幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に上記の形状と認識できる形状を含むものであり、各辺が若干曲線となったり、角部や面に成形上必要な丸み等が生じるいわゆるフィレットといわれる曲面を設けたりすることも当然に許容される。
また、平行の表現は幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に平行と認識できるものであればよい。
【0018】
また、上記凹凸部の構成は、上記第2基準領域を基に、上記第2領域と上記平面領域のいずれか一方又は両方を形成するかによって変化する。
上記第2基準領域を基に上記第2領域を形成した場合、上記凹凸部は上記第1領域と上記第2領域とによって構成される。このとき、上記第2領域を上記中間基準面から上記第1基準面上に向かって突出するように形成した場合、上記第2領域は、上記第1基準面上に配された上記第2頂面と、上記第1基準面と上記中間基準面の間に配される上記第2側面とからなる。また、上記第2領域を、上記中間基準面から上記第2基準面上に向かって突出するように形成した場合、上記第2領域は、上記第2基準面上に配された上記第2頂面と、上記第2基準面と上記中間基準面の間に配される上記第2側面とからなる。
【0019】
また、上記第2基準領域を基に平面領域を形成した場合、上記凹凸部は、第1領域と平面領域とによって構成される。
また、上記第2基準領域を基に上記第2領域と上記平面領域の両方を形成することもできる。この場合、上記凹凸部は、上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域によって構成される。
【0020】
また、上記第2基準領域を上記第2領域及び上記平面領域にどのように分配するかにより、得られる剛性及びその異方性を適宜変更することができる。このとき、形成される上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域のうち、2つ以上の領域により形成される凹凸部の形状は、規則的に形成されていることが好ましい。凹凸部が不規則な形状を有している場合、局部的な剛性の変化が生じ、剛性及びその異方性が不安定となる場合がある。
【0021】
また、上記第2領域を上記中間基準面から上記第1基準面に向かって突出するように形成した場合及び上記平面領域を形成した場合には、上記第1基準面及び上記中間基準面の2つの面を基準とし、上記第2領域を上記中間基準面から上記第2基準面上に向かって突出するように形成した場合には、上記第1基準面、上記中間基準面及び上記第2基準面の3つの面を基準とする。
【0022】
また、上記第1頂面は、上記第1基準面の面によって構成することもできるし、あるいは、上記第1基準面から上記中間準面を配した方向とは逆の方向に突出した部位によって構成することもできる。
また、上記第2領域を設ける場合における上記第2頂面は、上記第1基準面又は第2基準面の面によって構成することもできるし、あるいは、上記第2領域の突出方向と同じ方向に突出した部位によって構成することもできる。突出した部位の形状例としては、ドーム形状、稜線形状、錐形状等があるがこれに限定するものではない。
【0023】
また、上記枡をなす一辺の長さL(mm)と、該一辺と直交する辺の長さM(mm)は、0.5L≦M≦2Lの関係にあることが好ましい。この場合には、成形性を確保すると共に、十分な曲げ剛性向上効果を得ることができる。
Mが0.5L未満の場合及び2Lを超える場合、成形が困難となったり、曲げ剛性の異方性が大きくなることがあり好ましくない。
【0024】
また、上記中間基準面に対する上記第1側面の傾斜角度θ1(°)は、10°〜90°の範囲にあり、上記中間基準面に対する上記第2側面の傾斜角度θ2(°)は、10°〜90°の範囲にあることが好ましい。この場合には、成形性を確保しつつ、優れた剛性向上効果を有する凹凸部形状を得ることができる。
【0025】
上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)が10°未満の場合には、上記第1領域と上記第2領域の突出高さを大きくすることが難しくなり、剛性向上効果が低下する。また、上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)が90°を超えることは凹凸部形成上困難であり、必要のない領域である。
尚、金属板をプレス成型する場合において上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)の上限値は、成形性の問題から、70°以下であることがより好ましい。したがってより好ましい範囲としては10°〜70°である。
また、上記第1側面及び上記第2側面は複数の面により構成されるが、それらの面が全て同じ傾斜角度である必要はなく、部位によって傾斜角度を変えてもよい。但し、いずれの面においても、上記好ましい傾斜角度の範囲内とすることが好ましい。
【0026】
また、上記第1基準面、上記中間基準面及び上記第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなることが好ましい。
この場合には、優れた上記凹凸部を有する板材を様々な形状に変形させることができ、用途を拡大することができる。
【0027】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記板材は金属板をプレス成形することにより上記凹凸部を形成したものであることが好ましい。金属板は、エンボス成形等のプレス成形あるいはロール成形等の塑性加工を施すことによって、容易に凹凸部を形成することができる。そのため、金属板の場合には、上記の優れた凹凸部形状を適用することが比較的容易にできる。金属板の材質としては、アルミニウム合金、鋼、銅合金などの塑性加工が可能な種々のものを適用できる。
【0028】
尚、成形方法においては、ロール成形等の塑性加工の他、鋳造、切削等を採用することも可能である。
また、上記板材は、上記凹凸部を有する限り、金属以外の材料においても有効であり、例えば、樹脂板、樹脂と金属との積層材又は複合材等とすることもできる。樹脂材料等であれば射出成形あるいはホットプレス等によって凹凸部を形成することができる。樹脂材料においては、金属材料の場合よりも成形上の制約を受けにくく、設計の自由度もより広くなる。
【0029】
また、上記金属板の成形前の板厚t(mm)が0.03〜6.0mmであることが好ましい。金属板の板厚が0.03mm未満の場合及び6.0mmを超える場合には、用途的に剛性を向上させる必要性が少ない。
【0030】
また、上記枡をなす一辺の長さL(mm)と、上記板厚t(mm)との比L/tは10〜2000であることが好ましい。
上記比L/tが10未満の場合には成形が困難となるおそれがあり、一方、上記比L/tが2000を超える場合には、十分な凹凸部形状を形成できなくなり、剛性が低下するという問題が生じるおそれがある。
【0031】
また、上記第1領域の突出高さH1(mm)と上記板厚t(mm)との比H1/tと、上記第1側面と上記中間基準面とがなす最も大きい傾斜角度θ1(°)とは、1≦(H1/t)≦−3θ1+272の関係にあり、上記第2領域の突出高さH2(mm)と上記板厚t(mm)との比H2/tと、上記第2側面と上記中間基準面とがなす最も大きい傾斜角度θ2(°)とは、1≦(H2/t)≦−3θ2+272の関係にあることが好ましい。
【0032】
上記比H1/tが1未満の場合には、第1領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないという問題が生じる恐れがある。一方、上記比H1/tが−3θ1+272を超える場合には成形が困難になるという問題が生じる恐れがある。同様に、上記比H2/tが1未満の場合には、第2領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないという問題が生じる恐れがある。一方、上記比H2/tが−3θ2+272を超える場合には成形が困難になるという問題が生じる恐れがある。
【0033】
また、上記積層構造体においては、上記凹凸部を有する板材を1枚のコア材として、その両面に配設された1枚ずつの平坦な面板よりなる三層構造の積層体とすることができる。また、このような基本構造を繰り返した構造、つまり、複数枚の上記凹凸部を有する板材を1枚ごとに平坦な面板を介して積層してなる多層構造を有することもできる。
また、複数枚の凹凸部を有する板材を直接積層してコア材とし、その片側又は両側の表面に平坦な面板を接合してなる構造を取ることもできる。
また、複数枚の凹凸部を有する板材を直接積層しただけの状態の積層構造体とすることもできる。
上記板材の積層枚数としては、用途及び要求特性に応じて変更することができる。
【0034】
また、上記車両パネルは、自動車のフードに限らず、ドアー、ルーフ、フロア、トランクリッドなどのパネル及び補強部材や、バンパー、クラッシュボックス、ドアビームなどのエネルギー吸収部材にも適用できる。また、上記アウターパネル及び上記インナーパネルとしては、鋼板、アルミニウム合金板などを用いることができる。
上記アウターパネルをアルミニウム合金板により構成する場合には、たとえば、比較的安価であるという理由により6000系合金が好適である。また、上記インナーパネルをアルミニウム合金板により構成する場合には、たとえば、比較的成形性が良いという理由により5000系合金板が好適である。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
凹凸部を有する板材にかかる実施例につき、図1図3を参照して説明する。
【0036】
図1は、本例に示す凹凸部20を有する板材1の平面図を示すものであり、同図面中に示す破線は、中間基準面K3と凹凸部20の交線を示すものである。
また、図3は、本例に示す板材1が有する凹凸部20の形状を、中間基準面K3における第1基準領域213及び第2基準領域223の配置によって表したものである。同図中において、太実線は、第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線を示すものであり、第1基準領域213の輪郭線の内側に描かれた細実線は、X領域214とY領域215の境界を示すものである。また、同図中の破線は、中間基準面K3上に配された仮想の枡24の輪郭線を示すものである。また、第1基準領域213の内側に記された記号L1、L2は、その第1基準領域213が属する第1基準領域列を示すものである。
【0037】
本例の板材1は、図1図3に示すごとく、凹凸部20を形成することによって、剛性を高めたものである。
凹凸部20は、次のように構成される。
凹凸部20は、図2に示すごとく、間隔をあけて順次平行に配された仮想の3つの面である第1基準面K1、中間基準面K3及び第2基準面K2を基準とする。中間基準面K3は、図3に示すごとく、同じ大きさの仮想の矩形(正方形)からなる枡24を敷き詰めた枡目をなすものと仮定し、枡24をなす仮想の矩形の一辺と平行な方向をX方向とし、該X方向に垂直な方向をY方向とする。中間基準面K3においては、X方向に連なる3つの枡24をX領域214とし、Y方向に連なる3つの枡24をY領域215とする。1つのY領域215の両端部に該Y領域215の端部とX領域214の中央の枡とが接するようにそれぞれ1つずつX領域214を配してあり、該X領域214の両端部に該X領域214の端部とY領域215の中央の枡とが接するようにそれぞれ1つずつY領域215を配してなる領域を第1基準領域213とする。
【0038】
中間基準面K3上には、図3に示すごとく、第1基準領域213が同じ向きで配列されており、X方向において複数の第1基準領域213同士を一枡開けた状態で一列に配列した第1基準領域列L1、L2が複数形成してある。中間基準面K3上のY方向において、第1基準領域列L1と第1基準領域列L2とは、交互に配されると共に、隣接する第1基準領域列L1、L2は、互いにX方向に3つの枡目分移動した位置に配してある。また、中間基準面K3において、第1基準領域213以外の全ての領域を第2基準領域223とした。
【0039】
凹凸部20は、図1及び図2に示すごとく、中間基準面K3(図3)上において定められた第1基準領域213(図3)から第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と、中間基準面K3上において定められた第2基準領域223(図3)から第2基準面K2に向かって突出する第2領域22とからなる。第1領域21は、第1基準領域213を第1基準面K1上に縮小して投影した第1頂面211と、該第1頂面211の輪郭と第1基準領域213の輪郭とをつなぐ第1側面212とからなる。第2領域22は、第2基準領域223を第2基準面K2上に縮小して投影した第2頂面221と、該第2頂面221の輪郭と第2基準領域223の輪郭とをつなぐ第2側面222とからなる。
【0040】
また、図2に示すごとく、本例における第1基準面K1、中間基準面K3及び第2基準面K2は、互いに平行な平面である。第1頂面211は、その板厚中心が第1基準面K1と重なるように構成されており、第2頂面221は、その板厚中心が第2基準面K2と重なるように構成されている。そして、第1基準面K1と中間基準面K3との間の距離を突出高さH1とし、本例においては、第1領域21の突出高さH1は、1.5mmとした。また、第2基準面K2と中間基準面K3との間の距離を突出高さH2とし、本例においては、第2領域22の突出高さH2は、1.5mmとした。
また、図3に示すごとく、枡24をなすX方向と平行に配された辺の長さL(mm)及びY方向と平行に配された辺の長さM(mm)は、共に8mmとし、枡24は正方形をなしている。
【0041】
また、図2に示すごとく、中間基準面K3に対する第1側面212の傾斜角度θ1と中間基準面K3に対する第2側面222の傾斜角度θ2とは、共に30°である。
また、本例の凹凸部20を有する板材1は、板厚t=0.3mmの1000系のアルミニウム板である。凹凸部20は、一対の金型を用いたプレス成形により形成される。尚、この成形方法は、表面に所望の凹凸形状を付けた一対の成形ロールによって成形するロール成形等の他の塑性加工方法を採用することも可能である。
【0042】
また、X方向と平行に配された辺の長さL(mm)と、上記アルミニウム板の板厚t(mm)との比L/tは26.67であり、10〜2000の範囲内にある。
また、第1領域21の突出高さH1(mm)と板厚t(mm)との比H1/tは、5である。また、第1側面212と中間基準面K3とがなす傾斜角度θ1=30°であり、−3θ1+272=182である。したがって、1≦H1/t≦182の関係を満たしている。同様に、第2領域22の突出高さH2(mm)と板厚t(mm)との比H2/tは、5である。また、第2側面222と中間基準面K3とがなす傾斜角度θ2=30°であり、−3θ2+272=182である。したがって、1≦H2/t≦182の関係を満たしている。
【0043】
次に、本例における凹凸部20を有する板材1の作用効果について説明する。
凹凸部20は、上記のごとく、中間基準面K3上において定められた第1基準領域213から第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と、中間基準面K3上において定められた第2基準領域223から第2基準面K2に向かって突出する第2領域22とを設けてなる。そして、第1領域21は、第1頂面211と、該第1頂面211の輪郭と第1基準領域213の輪郭とをつなぐ第1側面212とからなり、第2領域22は、第2頂面221と、該第2頂面221の輪郭と第2基準領域223の輪郭とをつなぐ第2側面222とからなる。
【0044】
このような構造を有しているので、本例の凹凸部20を有する板材1は曲げ剛性に優れると共に、エネルギー吸収特性に優れたものとなる。
剛性が向上する理由は、次のように考えられる。即ち、図2に示すごとく、第1領域21は、板材1の中立面から離れた位置に配される第1基準面K1上に配置した第1頂面211と、板材1の厚さ方向に交差した第1側面212とからなる。また、第2領域22は、板材1の中立面から離れた位置に配される第2基準面K2上に配置した第2頂面221と、板材1の厚さ方向に交差した第2側面222とからなる。そのため、板材1の中立面から離れた位置に多くの材料を配置できる。したがって、多くの材料を効果的に使用することができ、剛性向上効果を高めることができる。
【0045】
特に、第1領域21及び第2領域22は、上記のごとく形状及び位置関係を設定した第1基準領域213及び第2基準領域223を基に形成されている。基本形状である第1基準領域213の形状及び位置関係を上記のごとく設定してある。これにより、任意の断面においても断面2次モーメントを向上させることができ、優れた曲げ剛性向上効果を有し、かつ剛性の異方性が少ない凹凸形状を得ることができる。これにより、板厚の薄い材料においても、必要な剛性が得られるため軽量化が可能となる。また、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0046】
(FEM解析)
本例の板材1の剛性向上効果を定量的に判断するために、FEM解析を用いた片持ち梁による曲げ剛性評価を行った。
上記FEM解析は、試験片における凹凸部20の形成方向を変化させることにより、0°、45°、90°の3方向における曲げ剛性評価を行った。
【0047】
FEM解析に用いた試験片形状は、120mm×120mmの矩形形状を有しており、その全面に凹凸部20を形成してある。尚、表面積の増加を考慮して板厚は、t=0.272mmとした。
上記試験片の端部において、一端を固定端とし、該固定端と対向して配される端部を自由端とした。該自由端をなす辺の中央部に1Nの負荷を加え、FEM解析を行うことで板材1のたわみ量を求めた。
評価は、凹凸部20を形成していない平板状の元板について、同様のFEM解析を行い得られたたわみ量と比較することで行った。
【0048】
<0°方向>
図1に示すごとく、中間基準面K3(図3)におけるX方向と板材1のなす辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z1を固定端とし、端部Z1と対向する端部Z2を自由端とする方向を0°方向とした。
実施例1の凹凸部20を有する板材1は、前述した0°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が22.46倍に向上することが明らかとなった。
【0049】
<45°方向>
中間基準面K3(図3)におけるX方向と板材1のなす辺とが45°となるよう凹凸部20を形成した試験片において、上方に位置する端部を固定端とし、固定端と対向する端部を自由端とする方向を45°方向とした。
実施例1の凹凸部20を有する板材1は、前述した45°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が13.06倍に向上することが明らかとなった。
【0050】
<90°方向>
図1に示すごとく、中間基準面K3(図3)におけるX方向と板材1のなす辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の左側に位置する端部Z3を固定端とし、端部Z3と対向する端部Z4を自由端とする方向を90°方向とした。
実施例1の凹凸部20を有する板材1は、前述した90°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が12.22倍に向上することが明らかとなった。
【0051】
上記のFEM解析の結果、本例に示す凹凸部20を有する板材1は、最も曲げ剛性向上効果が低い90°方向においても、平板に比べ12.22倍の剛性倍率Gを有し、軽量化率W(%)は少なくとも56%程度が見込まれる。尚、軽量化率W(%)は、剛性倍率Gを用いて、W=(1−1/3√G)×100の計算式より算出したものである。
また、本例においては、135°方向における凹凸部20の形状は、45°方向と同様であり、180°方向における凹凸部20の形状は、0°方向と同様である。したがって、FEM解析の結果は、135°方向と45°方向とが同一となり、180°方向と0°方向とが同一となる。
【0052】
(実施例2)
本例にかかる凹凸部20を有する板材1について、図4及び図5を参照して説明する。
本例は、実施例1と同様の中間基準面K3(図3)を用いて、凹凸部20の構成を変更した例を示すものである。尚、本例においては、第1基準面K1及び中間基準面K3の2つの面を基準とし、第2基準面K2は用いない。
【0053】
図4に示す板材1は、第1領域21及び第1基準面K1に向かって突出した第2領域22により構成される凹凸部20を有するものである。本例の第2領域22は、図4及び図5に示すごとく、第2基準領域223(図3)を第1基準面K1上に縮小して投影した第2頂面221と、該第2頂面221の輪郭と第2基準領域223の輪郭とをつなぐ第2側面222とからなる。本例の第2領域22は、上記のごとく中間基準面K3から第1基準面K1に対して突出するように形成されており、突出方向が実施例1とは反対となる。したがって、本例において、第2領域22の突出高さH2と第1領域21の突出高さH1とは同一である。その他の第1領域21及び第2領域22の構成については実施例1と同様である。
【0054】
(実施例3)
本例にかかる凹凸部20を有する板材1について、図6及び図7を参照して説明する。
本例は、実施例1と同様の中間基準面K3(図3)を用いて、凹凸部20の構成を変更した例を示すものである。尚、本例においては、第1基準面K1及び中間基準面K3の2つの面を基準とし、第2基準面K2は用いない。
【0055】
図6に示す板材1は、第1領域21及び平面領域23からなる凹凸部20を有するものである。平面領域23は、図6及び図7に示すごとく、中間基準面K3(図3)上において第2基準領域223(図3)の輪郭により形成される。また、第1領域21の構成については実施例1と同様である。
【0056】
本例に示す凹凸部20を有する板材1においても、曲げ剛性の異方性が少なく、高い曲げ剛性向上効果を有する板材1を得ることができる。
【0057】
(実施例4)
本例は、図8に示すごとく、凹凸部20を円筒材11に設けた例である。本例においては、第1基準面K1、中間基準面K3及び第2基準面K2は、平行に配された円筒状の曲面からなる。本例の中間基準面K3は、実施例1〜実施例3のいずれかに記載の平面状をなす中間基準面K3を円筒状に湾曲させたものである。凹凸部20をなす第1領域21、第2領域22及び平面領域23の構成は、実施例1及び実施例2と同様である。
本例に示すごとく、優れた特性を備えた凹凸部20を有する板材1を様々な形状に変形させることができ、用途を拡大することができる。
【0058】
また、本例に示す凹凸部20を有する円筒材11を、飲料缶やロケットのような円筒形の構造物に用いることで、材料の板厚を増加させることなく、剛性を高めることができる。また、本例の円筒材11は、優れたエネルギー吸収特性を有している。そのため、自動車などの車体に使用することで、高い剛性と優れたエネルギー吸収特性を付与することができる。
【0059】
(実施例5)
本例は、図9に示すごとく、実施例1の凹凸部20を有する板材1をコア材として用いて積層構造体5を構成した例である。
即ち、積層構造体5は、凹凸部20を有する1枚の板材1よりなるコア材の両側の表面に面板42、43を接合してなる。
面板42、43は、材質3000系、板厚1.0mmのアルミニウム合金板よりなる。
【0060】
本例の積層構造体5は、前述したような優れた剛性を有する凹凸部20を有する板材1をコア材として用い、その第1領域21の第1頂面211と第2領域22の第2頂面221に対して面板42、43を接着、ろう付け等により接合することによって、凹凸部20を有する板材1単体の場合よりも格段に剛性が高い積層構造体5が得られる。しかも、板材1も面板42、43もアルミニウム合金板よりなるため、軽量化することができる。
【0061】
また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。また、良く知られているように、面板42、43のいずれか一方に貫通孔を形成することにより、ヘルムホルツ型吸音構造となり、さらに吸音性を向上させることができる。
尚、面板42、43としては、アルミニウム合金以外の金属の板、たとえば、鋼板、チタン板等や、樹脂板等を適用することも可能である。
【0062】
(実施例6)
本例は、図10に示すごとく、実施例1〜実施例3のいずれかに記載した板材1をインナーパネルとして用い、板材1における第1基準面K1側の面をアウターパネル61の裏面側に向けて配置して構成する車両パネル6の例である。上記インナーパネルは、その外周部においてアウターパネル61とヘム加工等により接合されている。尚、前述したインナーパネルにおいて、凹凸部20の形成方向を限定するものではなく、板材1における第1基準面K1と反対側の面をアウターパネル61の裏面側に向けて配置して構成することもできる。
【0063】
本例の車両パネル6は、そのインナーパネルを構成する凹凸部20を有する板材1が、上記のごとく剛性向上効果に優れているので、歩行者が衝突した際の一次衝突のエネルギー及び二次衝突のエネルギーを吸収する特性に優れたものとなる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
尚、本例においては、凹凸部20を有する板材1をインナーパネルとして用いたが、インナーパネルとアウターパネル61のいずれか一方又は両方に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10