(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の方法では、鉄道沿線に沿って広範囲に存在する盛土全体の解析を精度良く行うには計算量が多くなり、実務上困難であった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、降雨に対する盛土の安全性を簡易に求めることが可能な安全性評価装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、降雨による盛土の崩壊に対する安全性を評価する安全性評価装置であって、
盛土内の平均飽和度を、前記平均飽和度と、前記盛土に集まる水量に対する前記盛土への流入水量の割合との関係を定めた関係式に代入し、前記割合を求め、前記盛土に集まる水量と前記割合を用いて、前記盛土への流入水量を算出する流入水量計算手段と、盛土内の平均飽和度を、前記平均飽和度と前記盛土からの流出水量との関係を定めた関係式に代入し、前記盛土からの流出水量を算出する流出水量計算手段と、前記盛土への流入水量と前記盛土からの流出水量を用いて、前記盛土内の平均飽和度を算出する平均飽和度計算手段と、前記平均飽和度計算手段で算出した平均飽和度を用いて、降雨による盛土の崩壊に対する安全度を算出する安全度計算手段と、を具備することを特徴とする安全性評価装置である。
第2の発明は、降雨による盛土の崩壊に対する安全性を評価する安全性評価装置であって、盛土内の平均飽和度を、前記平均飽和度と前記盛土からの流出水量との関係を定めた関係式に代入し、前記盛土からの流出水量を算出する流出水量計算手段と、前記盛土への流入水量と前記盛土からの流出水量を用いて、前記盛土内の平均飽和度を算出する平均飽和度計算手段と、前記平均飽和度計算手段で算出した平均飽和度を用いて、降雨による盛土の崩壊に対する安全度を算出する安全度計算手段と、を具備し、前記安全度は、降雨による盛土の崩壊に対する安全率を初期値で正規化したものであり、前記安全度計算手段は、前記平均飽和度計算手段で算出した平均飽和度を、前記平均飽和度と前記安全度との関係を定めた関係式に代入し、前記安全度を算出し、前記平均飽和度と前記安全度との関係を定めた関係式は、下記の式で表されることを特徴とする安全性評価装置である。
Fs/Fs(0)=1.0−{e・(Sr−Sr(0))f}/Fs(0)
ここで、
Fs:安全率
Sr:平均飽和度
Fs(0):安全率の初期値
Sr(0):平均飽和度の初期値
e、f:盛土の形状によって定まる値
第3の発明は、降雨による盛土の崩壊に対する安全性を評価する安全性評価装置であって、盛土内の平均飽和度を、前記平均飽和度と前記盛土からの流出水量との関係を定めた関係式に代入し、前記盛土からの流出水量を算出する流出水量計算手段と、前記盛土への流入水量と前記盛土からの流出水量を用いて、前記盛土内の平均飽和度を算出する平均飽和度計算手段と、前記平均飽和度計算手段で算出した平均飽和度を用いて、降雨による盛土の崩壊に対する安全度を算出する安全度計算手段と、を具備し、前記平均飽和度と前記盛土からの流出水量との関係を定めた関係式は、下記の式で表されることを特徴とする安全性評価装置である。
Qout=c・(Sr−Sr(0))d+Qout(0)
ここで、
Qout:流出水量
Sr:平均飽和度
Qout(0):流出水量の初期値
Sr(0):平均飽和度の初期値
c、d:盛土の形状によって定まる値
【0009】
前記安全度は、降雨による盛土の崩壊に対する安全率を初期値で正規化したものであり、前記安全度計算手段は、前記平均飽和度計算手段で算出した平均飽和度を、前記平均飽和度と前記安全度との関係を定めた関係式に代入し、前記安全度を算出することが望ましい。
【0010】
また、少なくともいずれかの関係式が、前記盛土の形状ごとに定められることが望ましい。
【0013】
第
4の発明は、
第1〜第3のいずれかの発明の安全性評価装置によって、降雨による盛土の崩壊に対する安全度を算出することを特徴とする安全性評価方法である。
【0014】
第
5の発明は、
コンピュータを、第1〜第3のいずれかの発明の安全性評価装置と
して機能させるためのプログラムである。
【0015】
本発明では、盛土の平均飽和度と、盛土への流入水量や盛土からの流出水量との間に相関関係があることを利用し、この相関関係を示す関係式を用いて、平均飽和度から流入水量や流出水量を算出する。そして、この流入水量と流出水量から新たに平均飽和度を算出し、これを用いて降雨による盛土の崩壊に対する安全度を求める。これにより、地形をメッシュ分割し浸透流解析等を行って水の収支を計算するなどの複雑な計算を行う必要が無く、広範囲の盛土について、降雨時の安全性を簡易に解析できる。
【0016】
また、安全度を、降雨による盛土の崩壊に対する安全率を初期値で正規化したものとすると、平均飽和度と安全度との間に相関関係があることを利用し、この相関関係を示す関係式を用いて平均飽和度から安全度が算出でき、評価に用いることができる。
【0017】
また、関係式は、予め検討を行った結果より盛土の形状に応じて上記のように定めておくことで、メッシュ分割等を行わず盛土の形状の違いを安全性の解析に反映させることができる。
【0018】
さらに、盛土は広範囲に渡って同様の形状、土質により形成されることが多いので、本発明を適用して簡易かつ精度良く安全性の解析が行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、降雨に対する盛土の安全性を簡易に求めることが可能な安全性評価装置等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
(1.安全性評価装置1)
図1に本発明の実施形態に係る安全性評価装置1のハードウエア構成について示す。
図1に示すように、安全性評価装置1は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14、通信部15等が、バス16を介して接続された一般的なコンピュータで実現できる。
【0023】
制御部11は、CPU、ROM、RAM等で構成される。CPUは、記憶部12、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス16を介して接続された各部を駆動制御し、後述する処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラムやデータ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部12、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部11が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0024】
記憶部12は、ハードディスク等であり、制御部11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ等が格納される。プログラムは、制御部11のCPUにより必要に応じて読み出されてRAMに移され、後述する各種の処理を行う手段として実行される。
【0025】
入力部13は、データの入力を行い、例えば、タッチパネル、キーボード等の入力装置を有する。入力部13を介して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
表示部14は、液晶パネル等のディスプレイ装置、およびディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等を有する。
【0026】
通信部15は、ネットワークを用いた通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して他の装置と通信を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
バス16は、各部間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0027】
[2.安全性評価装置1による安全度計算方法]
次に、安全性評価装置1を用いた盛土の安全度計算方法について説明する。
図2は、盛土の安全度計算方法の手順を示すフローチャートであり、各ステップは安全性評価装置1の制御部11が実行する処理である。ここで、盛土とは、鉄道または道路の土構造物の一種であって、土を地盤面より高く盛り上げて造った土構造物をいうものとする。
【0028】
(S101:パラメータの入力受付)
まず、安全性評価装置1は、計算に必要なパラメータのユーザによる入力を受け付ける(S101)。パラメータは、盛土条件、降雨、表層流に関するものなどがある。盛土条件は、盛土の形状および間隙率等の盛土の物性値などである。降雨に関するものとしては、単位時間・単位面積当たりの降雨量の時間変化などがある。また、表層流に関するものとしては、自然斜面の表面を流れて盛土に流入する流入水量の時間変化などがある。
【0029】
S101によって、降雨による盛土の崩壊に対する安全度を計算する際のモデルが設定される。このモデルの例について示したものが
図3(a)である。
図3(a)では、自然斜面61の上に、前後2方向の斜面を有する盛土60が形成されている(以下、傾斜地盤という)。
【0030】
図3(b)は、盛土60における水収支を示す。盛土60に集まる水量としては、降雨による流入水量q
in,R、自然斜面61の表層からの流入水量q
in,Sがあり、その一部が盛土60内に流入する流入水量Q
inとなる。流入水量Q
inと盛土60内の水量Qを合わせた内の一部は、盛土60からの流出水量Q
outとして流出する。
【0031】
図3は自然斜面61上に前後2方向の斜面を有する盛土60が形成された例であるが、盛土60の形状としては、その他、
図4(a)に示すように、自然斜面61上に1方向の斜面を有する盛土60が形成された例(以下、片切片盛という)や、
図4(b)に示すように、平坦な地面62上に前後2方向の斜面を有する盛土60が形成された例(以下、純盛土という)などもあり、例えば
図4(b)の純盛土の場合、前記のq
in,Sは0である。また、純盛土の場合、左右対称の形状であるので、モデルとしては左半部分もしくは右半部分のみを対象として計算が行われる。
【0032】
盛土60の形状としては、上記のような盛土60の種類に加え、盛土60の高さ(最低点と最高点の差)や幅(両側端点間の距離)、頂面の幅、斜面の傾斜率、その他底面の傾斜率等の詳細形状も設定される。盛土60の種類と詳細形状により盛土60の形状が定まり、盛土60の体積なども求められる。
【0033】
なお、自然斜面61の表層からの流入水量q
in,Sは、例えば前記した特許文献1に記載の方法を用いて自然斜面61の表層を流れる水量を算出し入力とすることができる。あるいはそれ以外の方法で適宜定めることもできる。また、降雨による流入水量q
in,RはS101で入力した降雨量から算出できる。
【0034】
(S102:盛土60への流入水量Q
inの算出)
図2の説明に戻る。S101においてパラメータが入力されると、安全性評価装置1は、時間ステップ(以下、単に時間という)t(t=1、2、3…)における盛土60への流入水量Q
in(t)を算出する(S102)。
【0035】
S102において、安全性評価装置1は、以下の関係式(1)〜(3)を用いて、時間tにおける盛土60への流入水量Q
in(t)を計算する。
q
in(t)=q
in,R(t)+q
in,s(t)…(1)
α(t)=a・Sr(t−1)+b…(2)
Q
in(t)=α(t)・q
in(t)…(3)
【0036】
ここで、q
inは盛土60へ集まる水量を示し、αは盛土60に集まる水量q
inに対する盛土60への流入水量Q
inの割合である。Srは盛土60内の水の平均飽和度である。a、bは盛土60の形状により定まる値である。
【0037】
式(3)は盛土60に集まる水量q
inの一部が実際に盛土60に流入することを示し、式(2)はこの割合αが盛土60の平均飽和度Srと相関関係にあることを示している。
【0038】
図5は、盛土60に流入する流入水量Q
inの盛土60へ集まる水量q
inに対する割合αと、平均飽和度Srとの関係を、発明者らが別途行った浸透流解析等の結果を元にプロットしたものである。(a)は傾斜地盤、(b)は片切片盛、(c)は純盛土の例である。各図の直線は上記の式(2)によって盛土60の種類ごとのプロットを近似したものであり、a、bの値は、盛土60の種類ごとに最適な値に定められている。
【0039】
図5に示すように、平均飽和度Srと上記の割合αの間には式(2)で示す相関関係があり、平均飽和度Srが高いほど割合αが小さくなる。この相関関係は盛土60の種類ごとに異なり、S102では、S101で設定した盛土60の形状である、盛土60の種類に対応するa、bの値を有する式(2)が用いられる。
【0040】
(S103:盛土60からの流出水量Q
outの算出)
図2の説明に戻る。一方、安全性評価装置1は、時間(t−1)における盛土60からの流出水量Q
out(t−1)を算出する(S103)。
【0041】
S103では、以下の関係式(4)を用いて流出水量Q
out(t−1)の算出を行う。
Q
out(t−1)=c・(Sr(t−1)−Sr(0))
d+Q
out(0)…(4)
【0042】
ここで、Q
out(0)は流出水量Q
outの初期値(最低地下水位状態における流出水量)であり、Sr(0)は平均飽和度Srの初期値(最低地下水位状態における平均飽和度)である。それぞれS101にて適当な値が入力される。c、dは盛土60の形状により定まる値である。
【0043】
上記の式(4)は、流出水量Q
outが平均飽和度Srと相関関係にあることを示している。
図6は、流出水量Q
outと平均飽和度Srとの関係を、発明者らが別途行った浸透流解析等の結果を元にプロットしたものである。(a)は傾斜地盤、(b)は片切片盛、(c)は純盛土の例である。各図においてプロットの違い(A、B、C)は盛土60の高さ等の詳細形状の違いを示す。各図の曲線は上記の式(4)によって盛土60の種類、詳細形状ごとのプロットを近似したものであり、c、dの値は盛土60の種類、詳細形状ごとに最適な値に定められている。
【0044】
図6に示すように、平均飽和度Srと流出水量Q
outの間には式(4)で示す相関関係があり、平均飽和度Srが高いほど流出水量Q
outが大きくなる。この相関関係は盛土60の種類、詳細形状ごとに異なり、S103では、S101で設定した盛土60の形状である、盛土60の種類および詳細形状に対応するc、dの値を有する式(4)が用いられる。
【0045】
なお、
図7は、盛土60の詳細形状の違いを体積Vの違いとして表し、盛土60の種類ごとに上記のc、dの値との関係を示したものである。(a)は傾斜地盤、(b)は片切片盛、(c)は純盛土の例であり、各図のプロットの違いはc値、d値の違いを示す。
【0046】
図7に示すように、盛土60の体積Vとc値、d値の間にはそれぞれ関係式(5)、(6)で表される相関関係がある。
c=α・V+β…(5)
d=γ・V+δ…(6)
α、β、γ、δは盛土60の種類によって定まる値である。
【0047】
このように、上記のc、dの値と盛土60の体積Vとの間には式(5)、(6)で表される相関関係があることから、S103では、盛土60の種類に応じたα、β、γ、δの値を有する式(5)、(6)を用いてc値、d値を算出した後、式(4)を用いてQ
out(t−1)を算出することもできる。
【0048】
(S104:盛土60内の水収支ΔQの算出)
図2の説明に戻る。安全性評価装置1は、次に、時間tにおける盛土60内の水収支ΔQ(t)を、以下の式(7)を用いて算出する(S104)。
ΔQ(t)=Q
in(t)−Q
out(t−1)…(7)
【0049】
(S105:盛土60内の水量Qの算出)
そして、安全性評価装置1は、時間tにおける盛土60内の水量Q(t)を、以下の式(8)を用いて算出する(S105)。
Q(t)=Q(t−1)+ΔQ(t)…(8)
【0050】
(S106:盛土60内の平均飽和度Srの算出)
次いで、安全性評価装置1は、時間tにおける盛土60内の平均飽和度Sr(t)を以下の式(9)を用いて算出する(S106)。
Sr(t)=Q(t)/(V・n)…(9)
ここで、nは盛土60の間隙率である。式(9)は、平均飽和度Srが、盛土60内の水量Qを、盛土60内の間隙の体積V・nで割って求められることを示している。
【0051】
(S107:盛土60の安全度の算出)
安全性評価装置1は、S106で算出した平均飽和度Sr(t)を用いて、降雨による盛土60の崩壊に対する安全度を算出する(S107)。
【0052】
S107では、以下の関係式(10)を用いて、安全度として、初期値によって正規化した時間tにおける安全率Fs(t)/Fs(0)(以下、正規化安全率という)を算出する。
Fs(t)/Fs(0)=1.0−{e・(Sr(t)−Sr(0))
f}/Fs(0)…(10)
ここで、Fs(0)は安全率の初期値(最低地下水位状態における安全率)である。Fs(0)はS101にて適当な値が入力される。また、e、fはそれぞれ盛土60の形状により定まる値である。
【0053】
上記の式(10)は、正規化安全率Fs/Fs(0)が平均飽和度Srと相関関係にあることを示している。
図8は、正規化安全率Fs/Fs(0)と平均飽和度Srとの関係を、発明者らが別途行った浸透流解析等の結果を元にプロットしたものである。(a)は傾斜地盤、(b)は片切片盛、(c)は純盛土の例である。各図においてプロットの違い(A、B、C)は盛土60の高さ等の詳細形状の違いを示す。各図の曲線は上記の式(10)によって盛土60の種類ごとにプロットを近似したものであり、e、fの値は盛土60の種類ごとに最適な値に定められている。
【0054】
図8に示すように、平均飽和度Srと正規化安全率Fs/Fs(0)の間には式(10)で示す相関関係があり、平均飽和度Srが高いほど正規化安全率Fs/Fs(0)が小さくなる。この相関関係は盛土60の種類ごとに異なり、S107では、S101で設定した盛土60の形状である、盛土60の種類に対応するe、fの値を有する式(10)が用いられる。
【0055】
なお、安全率Fsの値自体は、特許文献1にも記載されているように、土の粘着力や内部摩擦角等を変数として求められるが、本実施形態では、初期値Fs(0)で正規化した安全率Fs、すなわち安全率Fsの初期値Fs(0)からの変化度合いにより盛土60の安全性を評価する。従って、計算時間中変化しない変数である土の粘着力や内部摩擦角の影響が無く、上記のように平均飽和度Srから計算できる。
【0056】
また、盛土60の安全性は、安全率Fsの初期値Fs(0)からの変化度合いにより評価するので、上記の初期値Fs(0)としては適当な値を用いることができ、例えば1.5などとできる。
【0057】
(S108:計算時間の判定)
図2の説明に戻る。安全性評価装置1は、所定の計算終了時間となるまで(S108:N)、時間をt→t+1としてS102〜S107を繰り返す。こうして時刻歴計算を行い、計算終了時間となると(S108:Y)、処理を終了する。
【0058】
すると、各時間tでの正規化安全率Fs(t)/Fs(0)が安全度として計算される。これを安全性評価装置1の表示部14等に表示すれば、斜面の盛土崩壊に対する安全性の継時変化を把握することができる。また、安全度を所定の閾値と比較して盛土60の安全性の判定を行うことも可能である。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、盛土60の平均飽和度Srと、盛土60への流入水量Q
inや盛土60からの流出水量Q
outとの間に相関関係があることを利用し、この相関関係を示す関係式を用いて、平均飽和度Srから流入水量Q
inや流出水量Q
outを算出する。そして、この流入水量Q
inと流出水量Q
outから新たに平均飽和度Srを算出するとともに、これを用いて降雨による盛土60の崩壊に対する安全度を求める。これにより、地形をメッシュ分割し浸透流解析等を行って水の収支を計算するなどの複雑な計算を行う必要が無く、広範囲の盛土60について、降雨時の安全性を簡易に解析できる。
【0060】
また、安全度を、降雨による盛土60の崩壊に対する安全率Fsを初期値Fs(0)で正規化したものとすると、平均飽和度Srと安全度Fs/Fs(0)との間に相関関係があることを利用し、この相関関係を示す関係式を用いて平均飽和度Srから安全度Fs/Fs(0)が算出でき、評価に用いることができる。ただし、土の粘着力や内部摩擦角など必要なパラメータを入力しておくことで、安全度として安全率Fsそのものを求めることは可能である。
【0061】
また、関係式は、予め検討を行った結果より盛土60の形状に応じて定めておくことで、メッシュ分割等を行わず盛土60の形状の違いを安全性の解析に反映させることができる。ただし、更なる検討の結果、盛土60の形状に関わらず同じ関係式を用いる可能性は考えられる。
【0062】
さらに、盛土60は広範囲に渡って同様の形状、土質により形成されることが多いので、本発明を適用して簡易かつ精度良く安全性の解析が行える。
【0063】
なお、前記の計算中、S106で得られた平均飽和度Sr(t)の値が1を超える場合は、Sr(t)の値が1以下となるように、盛土60からの流出水量Q
out(t−1)を再計算したのち、S104〜S107を再び行えばよい。例えば、流出水量Q
out(t−1)を下式(11)で再計算し、S104以降の計算を行うことができる。
Q
out(t−1)=Q(t−1)+Q
in(t)−Q
飽和…(11)
ここで、Q
飽和は、盛土60内が飽和状態であるときの盛土60内の水量であり、通常は間隙の体積(V・n)と略同一の値になる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。