特許第5941861号(P5941861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5941861マグネトロン駆動用電源、および、それを備えた高周波加熱装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941861
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】マグネトロン駆動用電源、および、それを備えた高周波加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/68 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   H05B6/68 350Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-55878(P2013-55878)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-182904(P2014-182904A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 功記
(72)【発明者】
【氏名】下澤 雅規
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−100011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を用いてマグネトロンに高周波電力を供給するインバータ回路と、
該インバータ回路の一次電流を検出し、検出した一次電流に応じた電圧を出力する入力電流検出回路と、
前記スイッチング素子を制御する制御回路と、
を備えたマグネトロン駆動用電源であって、
前記制御回路は、前記入力電流検出回路が出力した電圧値を基準電圧と比較して前記スイッチング素子を制御する比較手段と、基準電圧として用意されている複数の基準から一つの基準を切り替えて選択する基準電圧切替手段と、を有しており、
前記マグネトロンが発振を開始した起動時から安定発振を開始する通常時へと移行する移行期間に前記基準電圧を異常検出しきい値(a)から該異常検出しきい値(a)よりも高い異常検出しきい値(b)に切替える構成であって、
前記異常検出しきい値(a)と前記異常検出しきい値(b)は、前記マグネトロンが発振を開始して起動時から通常時への移行を検出する起動しきい値より大きく、前記マグネトロンが発振を開始して起動時から通常時への移行を判断する起動検出期間に流れる前記一次電流値より大きな値であることを特徴とするマグネトロン駆動用電源。
【請求項2】
請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源を備えたことを特徴とする高周波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロン駆動用電源、および、それを備えた高周波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、マグネトロンの管内放電によって生じる異常動作からインバータ回路を保護するためにマグネトロンに流れる電流を検出して検出した電流が所定値を超えるとマグネトロンへ供給する電力を止めるマグネトロン駆動用電源がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−103269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術において、高圧トランスの2次側に電流検出部を設けるため、絶縁距離の確保のためインバータ回路を搭載する基板が大きくなる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、スイッチング素子を用いてマグネトロンに高周波電力を供給するインバータ回路と、該インバータ回路の一次電流を検出し、検出した一次電流に応じた電圧を出力する入力電流検出回路と、前記スイッチング素子を制御する制御回路と、を備えたマグネトロン駆動用電源であって、前記制御回路は、前記入力電流検出回路が出力した電圧値を基準電圧と比較して前記スイッチング素子を制御する比較手段と、基準電圧として用意されている複数の基準から一つの基準を切り替えて選択する基準電圧切替手段と、を有しており、前記マグネトロンが発振を開始した起動時から安定発振を開始する通常時へと移行する移行期間に前記基準電圧を異常検出しきい値(a)から該異常検出しきい値(a)よりも高い異常検出しきい値(b)に切替える構成であって、前記異常検出しきい値(a)と前記異常検出しきい値(b)は、前記マグネトロンが発振を開始して起動時から通常時への移行を検出する起動しきい値より大きく、前記マグネトロンが発振を開始して起動時から通常時への移行を判断する起動検出期間に流れる前記一次電流値より大きな値である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高圧トランスの2次側の電流を監視することなく、マグネトロンでAKタッチ(管内放電)が発生したとき、確実にマグネトロンの発振を停止することができ、さらに高電圧が印可される2次側に電流検出部を設けないのでインバータ回路を載せる基板も必要以上に大きくなることは無い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施例のマグネトロン駆動用の制御回路を搭載した高周派加熱装置の外観斜視図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】高周波加熱装置の制御を説明するブロック図。
図4】本実施例のマグネトロン駆動用電源を説明する制御ブロック図。
図5】制御ブロック図の主要部の電圧波形図。
図6】マグネトロンのアノードに対するカソードの電圧波形。
図7】基準電圧を切替えたときのAKタッチ発生時の波形。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0009】
図1は本実施例のマグネトロン駆動用の制御回路を搭載した高周波加熱装置の外観斜視図、図2図1のA−A部の断面図、図3は高周波加熱装置の制御を説明するブロック図を示す。
【0010】
図において、高周波加熱装置の本体1は、加熱室17に加熱する食品を入れ、高周波波エネルギーやヒータの熱を使用して食品を加熱調理する。
【0011】
ドア2は、加熱室17の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室17を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用する高周波の漏洩を防止し、ヒータの熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0012】
取っ手7は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0013】
ガラス窓4は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられ、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0014】
入力手段5は、ドア2の前面下側の操作パネル3に設けた表示部5aと操作部5bからなり、操作部5bは、高周波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱の強さや加熱する時間等の調理条件を入力するためのもので、表示部5aは、操作部5bから入力された内容や調理の進行状態を表示するものである。
【0015】
排気口8は、部品を冷却した後の冷却風や食品を加熱した時に発生した蒸気を排出するところである。
【0016】
機械室18は、加熱室17下部に設けられた空間で、空間内には、食品を加熱するためのマグネトロン31、マグネトロン31に接続された導波管21、マグネトロン31の電源を供給するマグネトロン駆動用電源30が搭載されたインバータ基板、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却する冷却手段62等が取り付けられている。
【0017】
加熱室17の底面の略中央部は凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ19が設置され、マグネトロン31の発振により放射される高周波エネルギーは、導波管21、回転アンテナ駆動手段23の出力軸23aが貫通する結合穴22を通して回転アンテナ19の下面に流入し、該回転アンテナ19で拡散されて加熱室17内に放射される。回転アンテナ19は、回転アンテナ駆動手段23の出力軸23aに連結されている。
【0018】
加熱室17の後部には熱風ユニット11が取り付けられ、熱風ユニット11内には加熱室17内の空気を効率良く循環させる熱風ファン15と熱風ヒータ14が取り付けられ、加熱室奥壁面には熱風の通り道となる孔が設けられている。
【0019】
熱風ファン15は、熱風ユニット11の外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、加熱室奥壁面に設けた孔を通して加熱室17との間で空気を循環し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0020】
加熱室17の天面の裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室17の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室17の天面を加熱して加熱室17内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0021】
温度検出手段16は、各ヒータで加熱される加熱室17の温度を検出するもので、検知手段としてサーミスター等が使用される。
【0022】
テーブルプレート20は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱と高周波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、高周波の透過性が良く、衛生面でも問題がない磁器等の材料で成形されている。
【0023】
つぎに、図3のブロック図について説明する。41は交流電源で、本体1の制御部や各電気部品を動作させるものである。
【0024】
60はレンジ加熱手段で、食品を高周波エネルギーで加熱するマグネトロン31とマグネトロン駆動用電源30から構成し、主制御手段6によって入力手段5より入力された加熱の強さをパワー信号6aに変換してマグネトロン駆動用電源30の制御回路50に送られる。
【0025】
61はオーブン加熱手段で、前述した熱風ユニット11と熱風ユニット11の外側に取り付けられた熱風モータ13からなり、主制御手段6によって加熱室17の温度が入力手段5から入力された温度になるように加熱室17の温度を温度検出手段16により検出し、熱風ヒータ14の電力を調整する。
【0026】
62は冷却手段で、加熱動作時に自己発熱部品や発熱部品からの熱伝導によって熱的に不具合を発生する部品を冷却するもので、レンジ加熱手段60が動作している時は、特にマグネトロン31やマグネトロン駆動用電源30を冷却するものである。
【0027】
6は主制御手段で、入力手段5から入力された内容に従い、食品を加熱調理するように各加熱手段を動作させ、温度検出手段16の検知温度に応じてオーブン加熱手段61やグリル加熱手段12のヒータの電力を調整するものである。
【0028】
次に、マグネトロン31とマグネトロン駆動用電源30の動作について、図3図7を用いて説明する。
【0029】
初めに、マグネトロン駆動用電源30について説明する。
【0030】
41は交流電源で、商用電源から供給される交流の電源である。
【0031】
42は整流回路で、電源41から供給された交流の電源を直流化するものである。
【0032】
43は電源平滑回路で、整流回路42で整流された電源を平滑するものである。
【0033】
46は昇圧トランスで、一時側コイルに印加された電圧を昇圧して二次側コイルに高い電圧を誘起させるものである。
【0034】
44はスイッチング素子で、スイッチング素子44は昇圧トランス46の一次側コイルに流す電流を高周波(20K〜40KHz)でON、OFFするものである。
【0035】
45は共振コンデンサで、共振コンデンサ45と昇圧トランス46の一次側コイルのインダクタンスによって、スイッチング素子44がONからOFFした後も、昇圧トランス46の一次側コイルに電流が交流的に流れ、昇圧トランス46の二次側コイルに電圧を誘起する。そして、スイッチング素子44のON、OFFする時間の比率を調整することで二次側に発生する電圧の高さを調節するもので、以上説明した電源平滑回路43、スイッチング素子44、共振コンデンサ45、昇圧トランス46によってインバータ回路48を構成する。
【0036】
47は高圧回路で、昇圧トランス46の二次側コイルに誘起した高周波電圧を倍電圧整流するものである。
【0037】
31はマグネトロンで、電気的構成としては、カソード(ヒータと兼用)31aとアノード31bからなり、ヒータ31aに電流を流しヒータを発熱させ、ヒータが温まり、カソード31aとアノード31b間の電圧が発振電圧以上(約4kV)に達するとマグネトロン31は発振を開始し、高周波エネルギーを放射して加熱室17の食品を加熱するものである。
【0038】
6aはパワー信号で、主制御手段6によって操作部5bで入力された食品を加熱する強さをマグネトロン駆動用電源30内の制御回路50に伝え、マグネトロン31の高周波出力を設定するための信号である。
【0039】
51は電源同期タイミング検出回路で、交流電源41の電圧(図5(a)商用電源の1/2周期を表示)が周期的に変化し、電圧がゼロボルトになるタイミングを検出するためのものである。実施例では、図5の(b)に示すように、交流電源41の電圧が一定の範囲内の時にパルスとなって出力するように設定され、その出力されたパルスの中点がゼロと認識するように後述する制御手段53は設定されている。但し、制御手段53に電圧がゼロになったタイミングが検知できる、ゼロクロス検出手段を備えている場合は、電源同期タイミング検出回路51に代わってゼロクロス検出手段を使用することも可能である。
【0040】
52は入力電流検出回路で、マグネトロン31を動作している時に電源平滑回路43に流れる電流を検出し、その電流値に応じた電圧を出力するものである。電流の測定は、抵抗52aの両端間に発生する電圧を測定し、抵抗52aの抵抗値から算出する。抵抗52aは、抵抗自身で余分な電力を消費しないように、小さな抵抗値の抵抗器を使用するので、抵抗52aの両端に発生する電圧も微小な値となるので、その電圧を増幅回路で増幅して制御手段53に出力している。
【0041】
そして、マグネトロン31が発振している時の高周波出力と前記電圧との相関関係を事前に確認しておくことで、制御手段53は入力電流検出回路52の抵抗52aの両端に発生する電圧より、マグネトロン31の発振している出力が主制御手段6からの要求に合致しているかどうかを認識できるようになっている。
【0042】
さらに、入力電流検出回路52からの検出値を複数回検出し、その値を平均化することでノイズなどの影響を少なくしている。
【0043】
53は制御手段で、制御手段53は計時手段と記憶手段53aを要し、計時手段は、電源同期タイミング検出回路51から送られてくるパルス信号のパルス幅を計時してパルス幅の中間を算出し、パルスとパルスの間隔の時間を測定して、接続されている電源41の周波数を判定する。
【0044】
記憶手段53aには、マグネトロン駆動用電源30の出力が、マグネトロン31が最大の高周波出力で発振できる電圧を出力するためのデータを記憶し、そのデータは、接続する交流電源41の周波数によって異なり、日本国内で使用する場合は50Hz用と60Hz用の半サイクル分のデータを2種類記憶している。
【0045】
記憶するデータは、交流電源41の半サイクル分の複数個のパルスのOFF時間とON時間のデータで、その周波数は約16KHzとなる。
【0046】
そして、制御手段53は、判定した周波数に対応したデータを記憶手段53aより呼び出し、次の平滑回路54へと出力するデータ信号(c)(図5(c))を作成する。そのデータ信号(c)は、呼び出した最初に出力するパルスのOFF時間とON時間のデータに基づいて、電源同期タイミング検出回路51より入力されたパルスの中点(交流電源のゼロボルト点)より計時を開始し、最初のデータのOFF時間が経過した後にパルスをONし、パルスのON時間を計時してONする時間を経過したらパルスをOFFする。次に二番目のパルスのOFF時間とON時間のデータに基づいて、OFF時間の計時を開始する。以後三番目、四番目のデータに基づいてパルスの出力する動作を繰り返して半サイクル分のパルスを出力し終わったら、次の電源同期タイミング検出回路51より入力されたパルスを待ち、パルスが入力されたら前記動作を繰り返して加熱続ける。
【0047】
また、主制御手段6から送られてくるパワー信号6aに対応したマグネトロン31の発振する高周波出力になるように、入力電流検出回路52からの検出値に応じて制御手段53から出力するデータ信号(c)のパルスのON、OFFする時間の比率を次のように変更する。
【0048】
すなわち、変更は、要求のある高周波出力に対応した電流が流れるように、入力電流検出回路52の検出した電流値が小さい場合はマグネトロン31に印加する電圧を高くするようにデータ信号(c)のON時間の比率を大きくして、マグネトロン31が発振する高周波出力を大きくするように動作する。また、検出した電流が大きい場合はマグネトロン31に印加する電圧を小さくするようにデータ信号のON時間の比率を小さくして、マグネトロン31が発振する高周波出力を小さくするように動作するものである。
【0049】
前記記憶手段53aに記憶するデータは、マグネトロン駆動用電源30の出力が、マグネトロン31が最大の高周波出力で発振できる電圧を出力するためのデータであり、また、マグネトロン31を発振させた時に最大限に力率と効率を向上できる電源(図5(h))を生成するためのデータである。
【0050】
具体的には、力率と効率を向上するために交流電源41の電圧が低い正弦波の裾野にあたる図5(a)のA部では、マグネトロン31の通電率を高めるために、スイッチング素子44のON時間を長くして昇圧トランス46の二次側コイルの誘導電圧を早く上昇(維持)させ、マグネトロン31のヒータ31aの温度を早く上昇させ、マグネトロン31の発振開始を早くしている。また、電源効率を向上させるために、交流電源41の電圧が低い正弦波の裾野にあたる図5(a)のA部から急激に電圧が上昇(図5(a)のB部)した後、電圧変動がなだらかになる頂点部分の図5(a)のC部では、必要以上の電圧がマグネトロン31に加わらないように、頂点部分のC部の手前(電圧が急激に上昇しているB部の後半)からスイッチング素子44のON時間を短くし始めマグネトロン31に印加される電圧の上昇率を押え、頂点部分のC部では必要以上の電圧(マグネトロン31に印加される印加電圧がマグネトロンの発振電圧(約4kV)を越すと急激に電流が流れる)が印加されないようにした。
【0051】
高周波出力の変更は、基準データ信号の全パルスのON、OFFする時間の比率を同じ比率で変更することで、マグネトロン31に印加される電源の力率と電源効率は低下することはない。
【0052】
54は平滑回路で、制御手段53から出力されたデータ信号(c)を平滑した信号(図5(d)、信号g)に変換するもので、データ信号(c)のパルスのON時間の比率がOFF時間より短いほど平滑後の電圧値は低い値を示し、ON時間の比率がOFF時間より長いほど平滑後の電圧値は高い値を示す。
【0053】
平滑回路54は、データ信号(c)の変化に対応して平滑した電圧値が変化できるように時定数を1msec以下になるように回路乗数を決定している。
【0054】
55はONタイミング検出回路で、スイッチング素子44がONからOFFした後にスイッチング素子44に印加されている電圧がゼロになるのを検知して、次にスイッチング素子44がONする事が可能となるタイミングを出力(図5(d)、信号f)するものである。
【0055】
この出力する信号波形には、スイッチング素子44を動作させる周波数(20〜40KHz)と制御手段53から出力されるデータ信号(c)を平滑した電圧の高低に対応してスイッチング素子44のON時間とOFF時間の比率が変更できる信号となっている。
【0056】
56は基準発振回路で、基準発振回路56は、制御手段53で出力したデータ信号(c)を平滑回路54によって変換された信号(図5(d)、信号g)とONタイミング検出回路55から出力された信号波形(図5(d)、信号f)を比較(図5(d))して、スイッチング素子44のON時間とOFF時間(図5(e))を決定し、またそのONとOFFの周期はマグネトロン31を効率良く発振させるために20KHz〜40KHzの高周波としている。
【0057】
スイッチング素子44のON時間とOFF時間の決定は、平滑回路54によって平滑した信号の電圧値が高いとスイッチング素子44のON時間の比率が小さくなりマグネトロン31に印加される電圧は低くなり、平滑した信号の電圧値が低いとスイッチング素子44のON時間の比率が大きくなりマグネトロン31に印加される電圧は高くなる。
【0058】
57は駆動回路で、基準発振回路56からの信号でスイッチング素子44を駆動できる信号に変換するものである。
【0059】
77は比較手段で、入力電流検出回路52が検出電流値に応じて出力した電圧値を基準電圧74の値と比較して、その比較結果を停止手段79に出力する。入力電流検出回路52の出力電圧が基準電圧74を上回ったら、停止手段79によりスイッチング素子44を駆動する駆動回路57を停止する。
【0060】
71は基準電圧切替手段で、基準電圧74として用意されている複数の基準から一つの基準を、制御手段53からの信号に基づいて切り替えて選択するものである。
【0061】
本実施例は、以上の構成からなり、次に動作について説明する。
【0062】
被調理物を温めるのに、その被調理物(図示無し)を加熱室17のテーブルプレート20に載置しドア2を閉める。
【0063】
ドア2を閉めた後、ドア2に設けられた操作パネル3の表示部5aを見ながら操作部5bで高周波加熱を選択して、加熱強さを示す高周波出力と加熱時間を設定する。もしくは、自動加熱の温めを選択する。
【0064】
そして、操作部5bの加熱開始用スタートボタン(図示せず)を押して加熱を開始する。
【0065】
以下の説明は、高周波出力を700W、加熱時間を1分と入力された場合について説明する。
【0066】
主制御手段6は、加熱を開始するために、入力された高周波出力が700Wであることを、パワー信号6aをインバータ基板内の制御手段53に送って知らせる。
【0067】
同時に主制御手段6は、回転アンテナ駆動手段23に信号を送り、回転アンテナ19を回転させ、冷却手段62へも信号を送り冷却風の送風を開始する。
【0068】
制御手段53はパワー信号6aを受けて、記憶手段53aに記憶してあるデータのうち、電源の周波数に対応した方のデータを呼び出してデータ信号(c)を生成し出力する。なお、電源周波数の検出は製品が電源に接続された時に、接続した交流電源41の周波数の検出を終了している。
【0069】
加熱開始直後は、マグネトロン31のヒータ31aは温まっていないので発振も無く電流もさほど流れないが、加熱開始時は、記憶手段53aに記憶してあるデータでデータ信号(c)を生成し出力するのでマグネトロン31には最大出力となる高い電圧が印加され、早期にヒータ31aの温度が上昇し始め(電圧の印加した約1秒後)次第に電流が流れ始める。
【0070】
ヒータ31aが温まると急激に電流が流れるので、急激な電流の流れを防止するために、ヒータ31aがまだ完全に温まる前に、既にマグネトロン31に印加する電圧を下げる方向にデータ信号(c)のON、OFFする時間のON時間の比率を下げる必要がある。そこで、電圧を印加した後から入力電流検出回路52で回路に流れる電流を検出し続け、検出値が電流換算で3A以下の間は、加熱開始後に出力したデータ信号(c)のON、OFFする時間の比率を変更しないで、3A以上が一定時間以上継続したらデータ信号のON、OFFする時間のON時間の比率を下げてマグネトロン31に印加する電圧の上昇率を低下させる。
【0071】
その後、必要とする高周波出力700Wに見合った電流値が得られるように、データ信号(c)のON時間とOFF時間の比率を変更する。ただし、目標の電流値に対して、差が大きいときは変更幅を多く、差が小さくなると変更幅も小さくしている。さらに、目標値に対して電流を増加させるときと減少させるときでは、減少させるときのマグネトロン31の発振する高周波出力の変化が鈍いので減少させるときは変更幅を大きくした方が良い。
【0072】
被調理物の加熱は前記動作を繰り返すことで安定して加熱が行われ、加熱時間の1分が経過すると、主制御手段6より制御手段53と各負荷に停止命令がでて、加熱を終了する合図と共に加熱を終了する。
【0073】
加熱開始直後、つまり、マグネトロン31に電力の供給を始めた起動時では、マグネトロン31のヒータ31aが温まっていない状態であり、マグネトロン31には高い電圧(約7000V)が印加(図6(a)正常発振時の電圧)される。その後、ヒータ31aが温まると、マグネトロン31は起動時から移行期間を経て通常時に移行して、安定的に電流が流れるとともに電圧は通常電圧(約4000V)に下がる。
【0074】
そして、特に起動時は高い電圧(約7000V)が印加されているので、マグネトロンの状態等処々の条件により稀にアノードとカソードがショートするAKタッチ現象が発生すると、図6(b)に示すような、AKタッチ発生を示す電圧が発生する。
【0075】
図7にマグネトロン発振開始時の一次電流の波形を示す(また、起動時にAKタッチが発生した状況を波形を示す)。
【0076】
AKタッチが発生すると、図に示すようなAKタッチの発生を示す電流が流れる。また、このAKタッチの電流は、マグネトロン31の起動時と通常時とで異なるため、比較手段77の判断する基準電圧74を起動時と通常時とで切替える必要がある。そのため、基準電圧は起動時の比較判断に使用される異常検出しきい値(a)と通常時の比較判断に使用される異常検出しきい値(b)の二種類を基準電圧切替手段71によって切替える。
【0077】
この基準電圧切替手段71によって、この異常検出しきい値(a)と異常検出しきい値(b)とを切替えるタイミングについて以下説明する。
【0078】
切替えは、マグネトロン31が発振開始して起動時から通常時に移行する移行期間の一次電流の変化を捉えるもので、起動時から通常時へと移行する移行期間の一次電流が増加して、起動しきい値に達した後、起動しきい値以上の大きな電流が一定時間(起動検出期間)以上流れ続けた場合に、マグネトロン31の状態が起動時から通常時に移行したと判断して、制御手段53は、基準電圧切替手段71によって、異常検出しきい値(a)から異常検出しきい値(b)に切替えるものである。
【0079】
そのため、異常検出しきい値(a)と異常検出しきい値(b)は、マグネトロン31が発振開始して起動時から通常時へと移行を検出する起動しきい値より大きく、また、起動検出期間であるマグネトロン31が発振開始して起動時から通常時へと移行出来たと判断する間に流れる一次電流値より大きな値を選定している。
【0080】
結果、マグネトロン31が発振開始して起動時や通常時に、稀に発生するAKタッチ現象を一次電流を監視することで確実検出して、マグネトロン31の動作を止めることができる。
【0081】
以上のことから、本実施例によれば、高圧トランスの2次側の電流を監視することなく、マグネトロンでAKタッチ(管内放電)が発生したとき、確実にマグネトロンの発振を停止することができ、さらに高電圧が印可される2次側に電流検出部を設けないのでインバータ回路を載せる基板も必要以上に大きくなることは無い。
【符号の説明】
【0082】
30 マグネトロン駆動用電源
31 マグネトロン
44 スイッチング素子
48 インバータ回路
50 制御回路
51 電源同期タイミング検出回路
52 入力電流検出回路
53 制御手段
53a 記憶手段
71 基準電圧切替手段
74 基準電圧
78 比較手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7