(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941870
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】超音波溶接器
(51)【国際特許分類】
B29C 65/08 20060101AFI20160616BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
B29C65/08
B23K20/10
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-106760(P2013-106760)
(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-226826(P2014-226826A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000234339
【氏名又は名称】白光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊和
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−193462(JP,A)
【文献】
特開2003−011227(JP,A)
【文献】
特開2009−131989(JP,A)
【文献】
特開平10−045114(JP,A)
【文献】
特開2005−329613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/08
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1グリップと、
第2グリップと、
前記第1グリップと前記第2グリップとを互いに回転可能に連結する軸と、
前記第1グリップに設けられる超音波振動子と、
前記第2グリップに設けられる溶着金具と、
前記超音波振動子に設けられ、前記溶着金具との間で被溶着物を挟み込むホーンと、
前記第1グリップと前記第2グリップとの間に介装され、前記溶着金具と前記ホーンとが離反する方向に前記第1グリップと前記第2グリップとを付勢するグリップ付勢ばねと、
前記ホーンと前記溶着金具の開口許容幅を規制する規制手段とを備え、
前記規制手段は、前記開口許容幅を変更可能に構成されていることを特徴とする超音波溶接器。
【請求項2】
第1グリップと、
第2グリップと、
前記第1グリップと前記第2グリップとを互いに回転可能に連結する軸と、
前記第1グリップに設けられる超音波振動子と、
前記第2グリップに設けられる溶着金具と、
前記超音波振動子に設けられ、前記溶着金具との間で被溶着物を挟み込むホーンと、
前記第1グリップと前記第2グリップとの間に介装され、前記溶着金具と前記ホーンとが離反する方向に前記第1グリップと前記第2グリップとを付勢するグリップ付勢ばねと、
前記ホーンと前記溶着金具の開口許容幅を規制する規制手段とを備え、
前記規制手段は、前記開口許容幅を調整可能に構成されており、
前記規制手段は、
前記第1グリップと前記第2グリップの何れか一方において、前記軸よりも基端側に設けられ、前記第1グリップと前記第2グリップの何れか他方に開くねじ孔を有するねじ孔部材と、
前記ねじ孔に螺合し、前記第1グリップと前記第2グリップとが開くときに前記第1グリップと前記第2グリップの何れか他方の基端側と当接することにより前記開口許容幅を規制する調整ねじと
を備えていることを特徴とする超音波溶接器。
【請求項3】
請求項2記載の超音波溶接器において、
前記調整ねじと前記ねじ孔部材との間に付勢力を付与する弾性部材をさらに備えている
ことを特徴とする超音波溶接器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波溶接器において、
前記調整ねじと一体化されたノブをさらに備え、
前記ノブは、前記第1グリップと前記第2グリップの何れか一方に形成された開口から外部に臨んでいる
ことを特徴とする超音波溶接器。
【請求項5】
請求項4記載の超音波溶接器において、
前記開口は、前記第1グリップと前記第2グリップの何れか一方の基端部に開口している
ことを特徴とする超音波溶接器。
【請求項6】
請求項3から5の何れか1項に記載の超音波溶接器において、
前記弾性部材は、円すいコイルばねである
ことを特徴とする超音波溶接器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶接器に関し、特に、片手で把持して操作する手動式の超音波溶接器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、一般に、手動式の超音波溶接器は、上グリップと下グリップの基端部分同士を軸で連結した構造体である。作業者は、上グリップに親指を乗せるように下グリップを他の指に乗せて把持し、上グリップを親指で押し込むことにより、超音波溶接器を操作する。上グリップと下グリップの何れか一方(通常は、下グリップ)の先端部には、溶着金具が設けられる。また、上グリップと下グリップの何れか他方(通常は、上グリップ)には、超音波振動子が設けられる。超音波振動子は、溶着金具との間で被溶着物を挟み込むホーンを有している。さらに、上グリップと下グリップの間には、両グリップの先端部分同士が離れる方向に両グリップを付勢するばねが介装されている。また、このばねの付勢力に抗して上グリップを下グリップに押し込むことにより、超音波振動子のスイッチが接続される構成になっている。
【0003】
ホーンと溶着金具が被溶着物を挟み込み、スイッチが接続されると、ホーンと溶着金具との間に超音波振動が発生する。この超音波振動により摩擦による被溶着物に発熱が誘発され、被溶着物が接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−66610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上グリップと下グリップが自由状態のときのホーンと溶着金具の開口許容幅の設定は、必ずしも容易ではない。
【0006】
作業性の観点からは、上記開口許容幅は、できる限り短い方がよい。一回の操作に要するストロークが短くなり、作業者の疲労が軽減されるからである。しかしながら、上記開口許容幅が短い場合には、大型の被溶着物を挟み込みことができなくなり、汎用性が乏しくなる。また、僅かな振動で不随意にホーンと溶着金具が接合する恐れも生じるので、ばねの付勢力を相当強く設定する必要があり、操作時の負荷が増加するので好ましくない。
【0007】
一方、上記開口許容幅を広く設定すると、汎用性は高くなる。また、ばねの付勢力を低く抑えることも、可能ではある。しかしながら、開口許容幅を広く設定した場合には、被溶着物の種類如何に拘わらず、一回の操作に要するストロークが長くなり、作業者の操作性が低くなる。よって、ばねの付勢力を弱く設定していたとしても、使いにくく、疲れやすい仕様となる。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、被溶着物の大きさに応じて操作性を高めることができ、且つ、汎用性を高めることのできる超音波溶接器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、第1グリップと、第2グリップと、前記第1グリップと前記第2グリップとを互いに回転可能に連結する軸と、前記第1グリップに設けられる超音波振動子と、前記第2グリップに設けられる溶着金具と、前記超音波振動子に設けられ、前記溶着金具との間で被溶着物を挟み込むホーンと、前記第1グリップと前記第2グリップとの間に介装され、前記溶着金具と前記ホーンとが離反する方向に前記第1グリップと前記第2グリップとを付勢するグリップ付勢ばねと、前記ホーンと前記溶着金具の開口許容幅を規制する規制手段とを備え、前記規制手段は、前記開口許容幅を
変更可能に構成されていることを特徴とする超音波溶接器である。
【0010】
この態様では、第1グリップと第2グリップとは、軸により相対的に開閉可能な状態になっている。また、グリップ付勢ばねの付勢力により、第1グリップの先端部と第2グリップの先端部とは、互いに離れる方向(開く方向)に付勢されている。ここで、本態様では、ホーンと溶着金具の開口許容幅を
変更可能に構成されている規制手段を備えているので、厚みの薄い被溶着物を加工する場合には、開口許容幅を狭く設定することができる。よって、作業者は、短いストロークで楽に溶着作業を実行することができる。一方、広い開口許容幅が必要な被溶着物に対しては、開口許容幅を広く変更し、対処することができる。よって、超音波溶接器の汎用性を高めることができる。
【0011】
本発明の別の態様は、
第1グリップと、第2グリップと、前記第1グリップと前記第2グリップとを互いに回転可能に連結する軸と、前記第1グリップに設けられる超音波振動子と、前記第2グリップに設けられる溶着金具と、前記超音波振動子に設けられ、前記溶着金具との間で被溶着物を挟み込むホーンと、前記第1グリップと前記第2グリップとの間に介装され、前記溶着金具と前記ホーンとが離反する方向に前記第1グリップと前記第2グリップとを付勢するグリップ付勢ばねと、前記ホーンと前記溶着金具の開口許容幅を規制する規制手段とを備え、前記規制手段は、前記開口許容幅を調整可能に構成されており、前記規制手段は、前記第1グリップと前記第2グリップの何れか一方において、前記軸よりも基端側に設けられ、前記第1グリップと前記第2グリップの何れか他方に開くねじ孔を有するねじ孔部材と、前記ねじ孔に螺合し、前記第1グリップと前記第2グリップとが開くときに前記第1グリップと前記第2グリップの何れか他方の基端側と当接することにより前記開口許容幅を規制する調整ねじとを備えている
ことを特徴とする超音波溶接器である。
この態様では、
ホーンと溶着金具の開口許容幅を調整可能に規制する規制手段を備えているので、厚みの薄い被溶着物を加工する場合には、開口許容幅を狭く設定することができる。よって、作業者は、短いストロークで楽に溶着作業を実行することができる。一方、広い開口許容幅が必要な被溶着物に対しては、開口許容幅を広く変更し、対処することができる。よって、超音波溶接器の汎用性を高めることができる。加えて、第1グリップと第2グリップの何れか他方の基端側は、軸を挟んでホーン及び溶着金具と反対側で調整ねじと対向する。よって、軸を回転中心として、ホーンと溶着金具が開くと、上記基端側の部分は、調整ねじに向かって接近し、遂には、当接する。この当接により、ホーンと溶着金具の開口許容幅が規定される。従って、調整ねじがねじ孔に螺合しているときの突出量を調整し、上記基端側の部分と調整ねじとが当接する位置を変更することにより、これら調整ねじ、ねじ孔(ないしねじ孔部材)は、ホーンと溶着金具の開口許容幅を調整可能に規制する規制手段の主要素を構成する。このように、本態様では、調整ねじとねじ孔を有するねじ孔部材とにより、簡素な構成で規制手段を構成することができる。
【0012】
好ましい態様の超音波溶接器において、前記調整ねじと前記ねじ孔部材との間に付勢力を付与する弾性部材をさらに備えている。この態様では、調整ねじが弾性部材の付勢力によって回動が規制されるので、調整ねじが不用意に緩むのを防止することができる。好ましい態様の超音波溶接器において、前記調整ねじと一体化されたノブをさらに備え、前記ノブは、前記第1グリップと前記第2グリップの何れか一方に形成された開口から外部に臨んでいる。この態様では、ノブを操作して調整ねじを回すことができるので、操作性が向上する。
【0013】
好ましい態様の超音波溶接器において、前記開口は、前記第1グリップと前記第2グリップの何れか一方の基端部に開口している。この態様では、第1グリップと第2グリップを操作するときに、ノブが邪魔にならない位置で外部に臨むので、不用意にノブが操作されるおそれがなくなるという利点がある。また、第1グリップと第2グリップを把持するときに、利き腕に拘わらず、ノブが邪魔にならなくなる。
【0014】
好ましい態様の超音波溶接器において、前記弾性部材は、円すいコイルばねである。この態様では、調整ねじを締めて弾性部材が圧縮された場合に、小径側が大径側内に畳み込まれてばね高さが低くなるので、超音波溶接器の小型化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、ホーンと溶着金具の開口許容幅を調整可能に規定する規制手段を設けているので、開口許容幅を狭く設定することのできる被溶着物が加工対象の場合には、開口許容幅を狭く設定することによって、楽に溶着作業を実行することができる一方、広い開口許容幅が必要な被溶着物に対しては、開口許容幅を広く変更して、対処することができるので、被溶着物の大きさに応じて操作性を高めることができ、且つ、汎用性を高めることができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る超音波溶接器の使用例を断面で示した図である。
【
図4】
図1の超音波溶接器の基端部分を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図1の超音波溶接器を本体に装着したときの状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
図1及び
図2(A)(B)を参照して、本実施形態に係る超音波溶接器10は、第1グリップとしての上グリップ20と第2グリップとしての下グリップ30とを備えている。これらは、片手で把持可能なハンドルを構成する構造体である。以下の説明では、上グリップ20、下グリップ30の一端側を仮に基端側とし、反対側を仮に先端側と称する。
【0019】
上グリップ20は、樹脂製のケーシング21を備えている。ケーシング21は、内部に超音波振動子22を内蔵している。超音波振動子22は、ケーシング21の内部に固定された取付金具23を介してケーシング21の内部に止定されている。超音波振動子22の給電コード24は、ケーシング21の基端部に固定されたゴム製の取付部25を介して外部に延びている。
【0020】
超音波振動子22のホーン26は、ケーシング21の先端に形成された開口27を介して先端部分から下向き(下グリップ側)に露出している。
【0021】
次に、下グリップ30は、樹脂製のケーシング31を備えている。ケーシング31は、周縁に壁部32を有する断面形状皿形に形成されている。壁部32の基端部には、図略の軸受が形成されている。軸受には、金属製の軸40が固定されている。この軸40は、上グリップ20の基端部分に形成されている図略の軸受と相対回転可能に連結されている。よって、上グリップ20は、下グリップ30に対し、軸40を介して回動可能に連結されている。
【0022】
壁部32内には、ケーシング31の底部を覆う金属板33がビス止めされている。金属板33の先端部には、上記ホーン26との間で被溶着物を挟み込む溶着金具34が立設されている。金属板33のうち、この溶着金具34よりも基端側部分は、樹脂製の化粧部材35で覆われている。
【0023】
化粧部材35の中間部分には、前後(先端側と基端側とが対向する方向)に並ぶ2個のスプリングシート36A、36Bが形成されている。各スプリングシート36A、36Bは、それぞれ、化粧部材35の成型時に一体形成されたボス状の部位である。先端側のスプリングシート36Aには、スイッチ操作ばね37が装着されている。また、基端側のスプリングシート36Bには、グリップ付勢ばね38が装着されている。各ばね37、38は、何れもコイルばねで具体化されている。各スプリングシート36A、36Bは、対応するコイルばね(スイッチ操作ばね37、グリップ付勢ばね38)を押さえる押さえとしての役割を果たす。スイッチ操作ばね37は、上グリップ20の中間部分に対向している。上グリップ20のケーシング21には、このスイッチ操作ばね37の上端部と対向する部位に、開口部28が形成されている。開口部28には、超音波振動子22のマイクロスイッチ29が配置されている。よって上グリップ20が軸40回りに押し込まれると、マイクロスイッチ29がスイッチ操作ばね37に押圧され、超音波振動子22が作動するようになっている。グリップ付勢ばね38は、スイッチ操作ばね37よりも基端側で、上グリップ20のケーシング21の下面に臨んでいる。従って、ケーシング21は、自由状態において、グリップ付勢ばね38にまず接触し、弾性的に開いた姿勢が維持されるようになっている。
【0024】
金属板33の基端部分は、上記軸40が固定されている部位よりもさらに基端側で一部が屈曲して段差を形成している。段差は、ケーシング31の底部との間で空間を形成している。この空間を形成している部位には、ねじ孔39が形成されている。ねじ孔39は、軸40よりも基端側で上グリップ20の取付金具23の基端下面に対向して開いている。このように、本実施形態において、金属板33は、ねじ孔39が形成されたねじ孔部材の一例でもある。
【0025】
ねじ孔39には、調整ねじ50が下側から螺合している。調整ねじ50の上端部は、上グリップ20の取付金具23の基端下面に臨んでいる。グリップ付勢ばね38に付勢されている状態において、取付金具23の基端下面は、調整ねじ50の上面に当接する。これによって、調整ねじ50は、開口許容幅L(上グリップ20と下グリップ30とがグリップ付勢ばね38に付勢されて、ホーン26と溶着金具34とが開くときに上限となる間隔)を規定する。調整ねじ50が下方に退避する方向に回動されると、開口許容幅L(Lmax)は、
図1の実線で示すように、長くなる。一方、調整ねじ50が上方に突出する方向に回動されると、上グリップ20の先端部が開く方向に回動するときの開口許容幅L(Lmin)は、
図1の仮想線で示すように、短くなる。
【0026】
調整ねじ50は、ノブ51を一体に有している。ノブ51は、円盤状の樹脂製部材であり、外周には、指で操作するための凹部52が複数個形成されている。
【0027】
図3を参照して、ノブ51の裏面(調整ねじ50が突出している側)には、環状のスプリングシート53が形成されている。スプリングシート53は、ノブ51の成型時に一体形成された溝で具体化されている。スプリングシート53には、弾性部材としてのコイルばね54が配置されている。コイルばね54は、金属板33とノブ51との間に介装され、金属板33とノブ51との間に付勢力を付与することにより、ねじ孔39と調整ねじ50の螺合部分の摩擦力を増大させる。これにより、コイルばね54は、調整ねじ50の緩み止めとして機能し、また、ノブ51が不用意に回動するのを規制する機能を奏する。図示の例では、コイルばね54は、上端側が小径となる円すい台状の円すいコイルばねである。このため、調整ねじ50を締めてコイルばね54が圧縮された場合に、小径側(図示の例では、上端側)が大径側(図示の例では、下端側)内に畳み込まれて、コイルばね54の高さが低くなる。また、図示の例では、調整ねじ50の大径側をノブ51のスプリングシート53に着座させている。これにより、スプリングシート53は、コイルばね54を押さえる押さえとしての役割を果たす。
【0028】
図4に示すように、下グリップ30の壁部32の基端部分における長手方向の端面には、開口55が形成されている。上記ノブ51は、この開口55から一部を露出させている。よって、作業者は、開口55からノブ51を操作して、調整ねじ50を回動させることができる。開口55の上方には、インディケータとして機能する複数の突起56が突設されている。各突起56は、左右に並んでいる。これら突起56は、開口許容幅Lとノブ51の回動方向とに対応して、ひとつずつ、一方から他方へ順に高低が変更されている。例えば、ノブ51の回動方向が、調整ねじ50を上方に突出させる方向(
図4の例では、右側から左側の方向)において、各突起56は、上流から下流側に向けてひとつずつ高くなっている。これにより、作業者は、インディケータとしての突起56を見ながら、開口許容幅Lを調整することができる。
【0029】
次に、
図5を参照して、上述のような超音波溶接器10は、制御用の本体60と併用される。本体60は、ケーシング61を有している。ケーシング61は、平たい略直方体の外観を呈している。ケーシング61の内部には、超音波溶接器10の超音波振動子22を制御する制御基板が内蔵されている。超音波振動子22は、給電コード24を介して制御基板に接続されている。また、ケーシング61の上部には、ホルダ62が一体形成されている。ホルダ62は、超音波溶接器10の下グリップ30を受ける載置部63と、載置部の端部に形成される半円弧型のフード部64とを有している。作業者は、超音波溶接器10の先端部分をフード部64に向けて挿入することにより、超音波溶接器10は、
図5に示すように、載置部63上に載置される。このとき、超音波振動子22のマイクロスイッチ29は、遮断された状態が維持されるよう、各部の諸元が設定されている。また、ホルダ62に載置されている超音波溶接器10を片手で把持することにより、作業者は、容易に超音波溶接器10をホルダ62から取り外し、溶着作業を行うことができる。なお、
図5において、65は、電源スイッチ、66は、表示用LEDである。
【0030】
図1を参照して、以上の構成では、溶着作業時において、作業者は、上グリップ20に親指を乗せるように下グリップ30を他の指に乗せて把持し、上グリップ20を親指で押し込むことにより、超音波溶接器10を操作する。
【0031】
本実施形態においては、規制手段の主要素を構成する調整ねじ50を設けている。そのため、
図1に示したように、開口許容幅Lを例えば、LminからLmaxの間で調整することができるので、厚みの異なる種々の被溶着物を挟み込むことが可能となる。従って、本実施形態では、厚みの薄い被溶着物を加工する場合には、開口許容幅Lを狭く設定することができる。よって、作業者は、短いストロークで楽に溶着作業を実行することができる。一方、広い開口許容幅Lが必要な被溶着物に対しては、開口許容幅Lを広く変更し、対処することができる。よって、超音波溶接器10の汎用性を高めることができる。
【0032】
また、上記規制手段は、下グリップ30において、軸40よりも基端側に設けられ、上グリップ20に開くねじ孔39を有するねじ孔部材としての金属板33と、ねじ孔39に螺合して、軸40よりも基端側で上グリップ20の取付金具23に臨み、且つ、上グリップ20と下グリップ30とが開くときに、上グリップ20の取付金具23(基端側の部分の具体例)と当接することにより開口許容幅Lを規制する調整ねじ50とを備えている。このため本実施形態では、上グリップ20の取付金具23は、軸40を挟んでホーン26及び溶着金具34と反対側で調整ねじ50と対向する。よって、軸40を回転中心として、ホーン26と溶着金具34が開くと、取付金具23は、調整ねじ50に向かって接近し、遂には、当接する。この当接により、ホーン26と溶着金具34の開口許容幅Lが規制される。従って、調整ねじ50がねじ孔39に螺合しているときの突出量を調整し、取付金具23と調整ねじ50とが当接する位置を変更することにより、これら調整ねじ50、ねじ孔39(ないし金属板33)は、ホーン26と溶着金具34の開口許容幅Lを調整可能に規制する規制手段の主要素を構成する。このように、本態様では、調整ねじ50とねじ孔39を有する金属板33とにより、簡素な構成で規制手段を構成することができる。
【0033】
また、本実施形態は、調整ねじ50とねじ孔39が形成されている金属板33(ねじ孔部材)との間に、付勢力を付与する弾性部材としてのコイルばね54をさらに備えている。このため本実施形態では、調整ねじ50が弾性部材の付勢力によって回動が規制されるので、調整ねじ50が不用意に緩むのを防止することができる。
【0034】
また、本実施形態は、調整ねじ50と一体化されたノブ51をさらに備え、ノブ51は、下グリップ30に形成された開口55から外部に臨んでいる。このため本実施形態では、ノブ51を操作して調整ねじ50を回すことができるので、操作性が向上する。
【0035】
また、本実施形態において、開口55は、上グリップ20と下グリップ30の何れか一方の基端部に開口している。このため本実施形態では、上グリップ20と下グリップ30を操作するときに、ノブ51が邪魔にならない位置で外部に臨むので、不用意にノブ51が操作されるおそれがなくなるという利点がある。また、上グリップ20と下グリップ30を把持するときに、利き腕に拘わらず、ノブ51が邪魔にならなくなる。
【0036】
また、本実施形態では、弾性部材としてのコイルばね54は、円すいコイルばねである。このため本実施形態では、調整ねじ50を締めてコイルばね54が圧縮された場合に、小径側が大径側内に畳み込まれてばね高さが低くなるので、超音波溶接器10の小型化に寄与することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、上グリップ20と下グリップ30とがグリップ付勢ばねに付勢されて、開口許容幅Lを調整可能な調整ねじ50を下グリップ30の基端部に設けているので、開口許容幅Lを狭く設定することのできる被溶着物が加工対象の場合には、開口許容幅Lを狭く設定することによって、楽に溶着作業を実行することができる一方、広い開口許容幅Lが必要な被溶着物に対しては、開口許容幅Lを広く変更して、対処することができるので、被溶着物の大きさに応じて操作性を高めることができ、且つ、汎用性を高めることができるという顕著な効果を奏する。
【0038】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
【0039】
例えば、溶着金具34を上グリップ20に設け、超音波振動子22を下グリップ30に設けてもよい。つまり、第1グリップを下グリップ30とし、第2グリップを上グリップ20としてもよい。また、グリップ付勢ばね38は、圧縮コイルばねに限らず、例えば、捩りばねであってもよい。ノブ51は、円盤型のものに限らす、レバー型のものであつてもよい。開口55は、基端部に限らず、側部に開口していてもよい。また、ねじ孔39を上グリップ20に形成し、調整ねじ50を上グリップ20側から下グリップ30に向けて螺合させてもよい。また、スプリングシート36A、36B、53は、対応するコイルばね37、38、54を受ける受け座としての機能、すなわち、対応するコイルばね37、38、54を押さえる押さえとしての役割を果たすものであればよい。具体的には、上述した実施形態のように、化粧部材35またはノブ51と同一部材で連続的に成型することができる。必ずしも、別部材を設ける必要はない。
【0040】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
10 超音波溶接器
20 上グリップ(第1グリップの一例)
22 超音波振動子
26 ホーン
30 下グリップ(第2グリップの一例)
33 金属板(ねじ孔部材の一例)
34 溶着金具
38 グリップ付勢ばね
39 ねじ孔
40 軸
50 調整ねじ
51 ノブ
54 コイルばね(弾性部材の一例)
55 開口
L 開口許容幅