【実施例1】
【0034】
図1に示されるように、排熱回収装置10(熱交換デバイス10)は、内燃機関において発生した排気ガス(第1熱媒体)が導入される導入口11と、この導入口11に接続されている分岐部12と、この分岐部12に接続され導入口11の下流に延びている第1流路13と、この第1流路13に沿って分岐部12から延びている第2流路14と、この第2流路14の一部を形成し排気ガスの熱を媒体(第2熱媒体)に伝える熱交換器30と、この熱交換器30に接続されているサーモアクチュエータ16と、第1及び第2流路13,14の下流端が接続されているバルブ室17と、このバルブ室17に接続され排気ガスを排出する排出口18と、バルブ室17に収納され第1流路13又は第2流路14を閉じるバルブ19とからなる。バルブ室17は、第1又は第2流路13,14内を通過した排気ガスが合流する合流部を兼ねている。
【0035】
図に示される状態において、バルブ19は、第1流路13を閉鎖している。このとき、第2流路14は開放されており、排気ガスは、第2流路14を通過する。一方、所定の条件によりバルブ19がスイングすると、バルブ19は、第2流路14を閉じる。このとき、第1流路13は開放されており、排気ガスは、第1流路13を通過する。
【0036】
熱交換器30の側方には、媒体を導入するための媒体導入管21(第2熱媒体導入管21)が接続されている。また、熱交換器30には、サーモアクチュエータ16を支持しているアクチュエータ支持部材22が接続されている。アクチュエータ支持部材22には、媒体を排出するための媒体排出管23(第2熱媒体排出管23)が接続されている。
【0037】
即ち、媒体は、媒体導入管21から熱交換器30に導入される。導入された媒体は、熱交換器30内において排気ガスの熱を受け、媒体排出管23から排出される。即ち、熱交換器30は、排気ガスのエネルギを回収する。熱交換器30の詳細について、次図以降において詳細に説明する。
【0038】
図2に示されるように、熱交換器30は、内部に媒体が流される略角筒形状のコアケース31と、このコアケース31の両端の開口を塞ぐように取付けられている上流側及び下流側エンドプレート32,33と、これらの上流側及び下流側エンドプレート32,33間に取付けられ内部を排気ガスが通過する熱交換チューブ34と、この熱交換チューブ34に収納されているフィン35とからなる。
【0039】
図3に示されるように、上流側エンドプレート32には、複数の熱交換チューブ34が差し込まれている。下流側エンドプレート33も同様である。
【0040】
コアケース31は、コアケース31の下半分を形成する正面視略コ字状の下部ケース半体41と、この下部ケース半体41に接合され上半分を形成する上部ケース半体42とからなる。上部ケース半体42も正面視において略コ字状を呈する。
【0041】
下部ケース半体41の側面部41aには、媒体が導入される媒体導入口41b(第2熱媒体導入口41b)が形成されている。媒体導入口41bには、媒体導入管(
図1、符号21)が接続される。
【0042】
上部ケース半体42は、上流側エンドプレート32、下流側エンドプレート33及び下部ケース半体41に接合される接合部42aと、この接合部42aから内部に向かって凹んでいる凹部42bとから構成される。凹部42bの上面部42cには、媒体を排出するための媒体排出口42d(第2熱媒体排出口42d)が形成されている。媒体排出口42dには、アクチュエータ支持部材(
図1、符号22)が接続される。
【0043】
図2も参照して、上流側エンドプレート32は、略矩形を呈し熱交換チューブ34の上流側端部34aを支持する上流側底面部32aと、この上流側底面部32aの周縁から一体的に立ち上げられる上流側壁部32bとからなる。上流側壁部32bは、上流側底面部32aから下流側に向かって延びている。上流側壁部32bの先端部32cが最も下流側に位置している。
【0044】
上流側底面部32aには、熱交換チューブ34を貫通させ支持するための支持孔32dが複数形成されている。上流側壁部32bは、上流側壁部32bの先端部32cのみがコアケース31に接合されている。
【0045】
下流側エンドプレート33も同様である。即ち、下流側エンドプレート33は、略矩形を呈し熱交換チューブ34の下流側端部34bを支持する下流側底面部33aと、この下流側底面部33aの周縁から一体的に立ち上げられる下流側壁部33bとからなる。下流側壁部33bは、下流側底面部33aから上流側に向かって延びている。下流側壁部33bの先端部33cが最も上流側に位置している。
【0046】
下流側底面部33aには、熱交換チューブ34を貫通させ支持するための支持孔33dが複数形成されている。下流側壁部33bは、下流側壁部33bの先端部33cのみがコアケース31に接合されている。
【0047】
コアケース31には、排気ガスの流れ方向に沿って内側に向かって凹む凹部42bが形成されている。凹部42bを形成することにより、コアケース31の剛性を高めることができる。これにより、媒体が膨張する方向に対して強度を高めることができ、熱交換器10の長寿命化を図ることができる。
【0048】
上流側壁部32bは、上流側壁部32bの先端部32cのみがコアケース31に接合されている。これにより、上流側壁部32bの周縁は、コアケース31に接合されない。このため、上流側壁部32bの周縁に対して、排気ガスを導入するための部材を直接的に接合することができる。流路と熱交換器10とを直接的に接合できるため、流路と熱交換器10とを接続するための部品を別途増加させる必要がない。これにより、部品点数の削減を図ることができる。下流側エンドプレート33についても同様である。
【0049】
コアケース31の下部には、媒体を熱交換チューブ34の上流側に向かってガイドするガイド部37が形成されている。ガイド部37は、コアケース31の内周面部31aに接合されコアケース31の内周面部31aとの間に閉断面を形成する板状のガイドプレート50によって構成されている。
【0050】
上流側エンドプレート32の上流側壁部32b及び下流側エンドプレート33の下流側壁部33bの長さは、共に、10mm〜24mmであることが望ましい。即ち、上流側の部品及び下流側の部品に対して重ねられるラップ代が2〜7mm。これらのラップ代間の部位が6〜10mmである。ラップ代間の部位は、それぞれの溶接部の溶接ビードが重ならない長さに設定されている。
【0051】
図4に示されるように、ガイドプレート50は、鋼板をプレス成形することにより、略L字状に形成した部材である。より詳細には、媒体導入口41bに対応した部位において媒体導入口41bを覆うように設けられる導入部51と、この導入部51の下端からコアケース31の幅方向に亘って延びているガイド構成部52と、これらの導入部51及びガイド構成部52の周縁に一体的に形成されコアケース31の内周面部31aに接合されるフランジ部53とからなる。
【0052】
フランジ部53から膨出している導入部51及びガイド構成部52がコアケース31の内周面部31aとの間において閉断面を形成する。ガイド構成部52の上流側の端部には、媒体を熱交換チューブ(
図2、符号34)の上流側に向かってガイドするガイド孔52a,52aが開けられている。
【0053】
図5に示されるように、ガイドプレート50が下部ケース半体41に取り付けられた状態において、媒体導入口41bから導入された媒体(矢印(1)参照)は、ガイド構成部52によってコアケース31の内部にガイドされる。コアケース31の内部にガイドされた媒体は、矢印(2)によって示されるように、ガイド孔52a,52aからコアケース31の上流側に向かって流される。
【0054】
図2も併せて参照し、導入された媒体は、まず、コアケース31内を上流側に向かって流される。上流側には、熱交換前の排気ガスが流される。熱交換前の高温の排気ガスと熱交換前の低温の媒体とによって熱交換を行うことにより、効率的に熱交換を行うことができる。
【0055】
さらに、媒体を上流側に向かって流すことにより、上流側エンドプレート32の高温化による応力の上昇を抑制することができる。これにより、熱交換器30に加わる負荷を軽減し、熱交換器30の長寿命化が図れる。加えて、媒体は、高温になることにより沸騰することがある。上流側に向かって媒体を流すことにより、上流側へ安定して媒体を供給し、媒体が沸騰することを抑制することができる。これにより、熱交換性能を向上させることができる。
【0056】
加えて、ガイド部37は、コアケース31との間に閉断面を形成する板状のガイドプレート50によって構成され、ガイドプレート50の上流側の端部には、ガイド孔52aが開けられている。簡便な構成によって媒体を熱交換チューブ34の上流側に向かって流すことができる。即ち、簡便な構成によって、効率的に熱交換を行うことができる。
【0057】
図6(a)に示されるように、比較例による熱交換器230は、上流側エンドプレート232の上流側壁部232bが、上流側底面部232aから上流に向かって延びている。また、下流側エンドプレート233の下流側壁部233bが、下流側底面部233aから下流に向かって延びている。
【0058】
上流側壁部232bが上流側(左側)に向けられる場合には、上流側壁部232bの先端部232cが熱交換チューブ34の上流側端部34aから前方へ突出し、熱交換器230の全長が大きくなる。
【0059】
下流側エンドプレート233も同様である。即ち、下流側壁部233bが下流側に向けられる場合には、下流側壁部233bの先端部233cが熱交換チューブ34の下流側端部34bから後方へ突出し、熱交換器230の全長が大きくなる。
【0060】
図6(b)に示されるように、実施例による熱交換器30は、上流側エンドプレート32は、熱交換チューブ34を支持する上流側底面部32aと、上流側底面部32aの周縁から一体的に立ち上げられる上流側壁部32bとからなり、上流側壁部32bの先端部32cは、コアケース31に接合されている。
【0061】
上流側壁部32bの先端部32cが下流側に向けられているため、上流側壁部32bの先端部32cが熱交換チューブ34の上流側端部34aよりも下流側に位置する。結果、熱交換器30の全長が小さくなる(α参照)。熱交換器30の小型化が図れる。
【0062】
加えて、熱交換チューブ34の上流側端部34aより、上流側壁部32bの先端部32cが後方に延び、さらに、この上流側壁部32bの先端部32cがコアケース31に接合される。ほぼ、上流側壁部32bの長さだけコアケース31を短くすることができ、コアケース31の小型化が図れる。
【0063】
さらに、上流側壁部32bと上流側底面部32aとによって囲われている部位に媒体を流すことができる。この部位の分だけコアケース31を小型化することができ、熱交換器30全体としても小型化することができる。
【0064】
下流側エンドプレート33も同様である。下流側壁部33bの先端部33cが上流側に向けられているため、下流側壁部33bの先端部33cが熱交換チューブ34の下流側端部34bよりも上流側に位置する。結果、熱交換器30の全長が小さくなる(β参照)。熱交換器30の小型化が図れる。
【0065】
加えて、熱交換チューブ34の下流側端部34bより、下流側壁部33bの先端部33cが前方に延び、さらに、この下流側壁部33bの先端部33cがコアケース31に接合される。ほぼ、下流側壁部33bの長さだけコアケース31を短くすることができ、コアケース31の小型化が図れる。
【0066】
さらに、下流側壁部33bと下流側底面部33aとによって囲われている部位に媒体を流すことができる。この部位の分だけコアケース31を小型化することができ、熱交換器30全体としても小型化することができる。
【0067】
即ち、比較例による熱交換器(
図6(a)、符号230)に比べて、上流側がαだけ短くなった。下流側エンドプレート33についても同様である。比較例による熱交換器に比べて、下流側がβだけ短くなった。実施例による熱交換器30によれば、比較例による熱交換器に比べて、α+βだけ短くすることができた。
【0068】
図1も合わせて参照し、コンパクトな熱交換器30を搭載することにより、排熱回収装置10全体としてもコンパクト化することができる。排熱回収装置10の配置の自由度が増し、望ましい。
【実施例2】
【0069】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7は実施例2の熱交換器の断面構成を示し、上記
図2に対応させて表している。
図2に示された熱交換器に対して、コアケース及びガイド部の構成が変更されている。
【0070】
図7及び
図8に示されるように、熱交換器60のコアケース61は、正面視略コ字状の下部ケース半体71と、この下部ケース半体71の上部に被せられる正面視略コ字状の上部ケース半体72と、下部ケース半体71の側面及び下面に外方から接合されているガイドプレート80とからなる。
【0071】
下部ケース半体71は、上流側エンドプレート32及び下流側エンドプレート33に接合される接合部71a,71aと、これらの接合部71a,71aの間において内部に向かって凹んでいる凹部71bとから構成される。凹部71bは、接合部71a,71aの端部から傾斜して延びているテーパ部71c,71cと、これらのテーパ部71c,71cの間に渡され熱交換チューブ34に平行に延びている平面部71dとからなる。
【0072】
ガイドプレート80は、下部ケース半体71の側面に対応した部位に接合されている導入部81と、この導入部81の下端からコアケース61の幅方向に亘って延びているガイド構成部82と、これらの導入部81及びガイド構成部82の周縁に一体的に形成されコアケース61の外周面部61bに接合されるフランジ部83とからなる。
【0073】
導入部81には、媒体を導入するための媒体導入口81a(第2熱媒体導入口81a)が形成されている。媒体導入口81aには、媒体導入管(
図1、符号21)が接続される。
【0074】
導入部81及びガイド構成部82がコアケース61の外周面部61bとの間において閉断面を形成することにより、ガイド部67は、形成されている。上流側のテーパ部71cには、媒体を熱交換チューブ34の上流側に向かってガイドするガイド孔71eが開けられている。加えて、平面部71dには、ガイド孔71eよりも小さな小孔71fが複数開けられている。
【0075】
図9に示されるように、ガイド孔71e及び小孔71fは、熱交換チューブ34の層間に対応する部位に開けられている。媒体を熱交換チューブ34の層間に向かって流すことができる。流路面積の広い部位に向かって直接的に媒体を流すことにより、媒体を円滑に流すことができる。これにより、さらに効率的に熱交換を行うことができる。
【0076】
図10に示されるように、下部ケース半体71の全周に亘って凹部71bが形成されている。このような下部ケース半体71の外周面部61bにガイドプレート80が被せられることにより、媒体をガイドするガイド部67は構成されている。
【0077】
図11に示されるように、ガイド孔71eの大きさは、小孔71fの大きさよりも大きい。このため、矢印(5)によって示されるように、媒体導入口81aから導入された媒体は、矢印(6)によって示されるように、主にガイド孔71eから上流側に向かって流れる。一方、媒体の残部は、矢印(7)によって示されるように、小孔71fからコアケース61内に導入される。ガイド孔71eを通過する媒体の流れを主流としつつ、併せて小孔71fからコアケース61内に媒体を導入する。これにより、媒体の流量を増加させることができ、より効率的に熱交換を行うことができる。
【実施例3】
【0078】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図12は実施例3の熱交換器の断面構成を示し、上記
図2に対応させて表している。上流側エンドプレートの向きを変更すると共に、上流側エンドプレート及び下流側エンドプレートの構成を変更した。
【0079】
図12に示されるように、熱交換器90の上流側エンドプレート92は、コアケース31に接続され断面視コ字状を呈するエンドプレート本体101と、このエンドプレート本体101に接合され熱交換チューブ34を支持する支持プレート102とからなる。
【0080】
エンドプレート本体101は、上流側底面部101aと、この上流側底面部101aの周縁から一体的に立ち上げられる上流側壁部101bとからなる。上流側底面部101aには、略矩形の矩形孔101cが形成されている。この矩形孔101cの周縁に支持プレート102が接合されている。支持プレート102の板厚は、エンドプレート本体101の板厚よりも薄い。
【0081】
下流側エンドプレート93も同様である。下流側エンドプレート93は、コアケース31に接続され断面視コ字状を呈するエンドプレート本体106と、このエンドプレート本体106に接合され熱交換チューブ34を支持する支持プレート107とからなる。
【0082】
エンドプレート本体106は、下流側底面部106aと、この下流側底面部106aの周縁から一体的に立ち上げられる下流側壁部106bとからなる。下流側底面部106aには、略矩形の矩形孔106cが形成されている。この矩形孔106cの周縁に支持プレート107が接合されている。支持プレート107の板厚は、エンドプレート本体106の板厚よりも薄い。
【0083】
上流側エンドプレート92と下流側エンドプレート93とは、配置されている向きについて異なる。上流側エンドプレート92は、上流側壁部101bが上流側底面部101aから上流に向かって延びている。このことにより、上流側壁部101bの先端部101dは、コアケース31から遠ざかる方向に向かって延びている。一方、下流側エンドプレート93は、下流側壁部106bが下流側底面部106aから上流に向かって延びている。このことにより、下流側壁部106bの先端部106dは、コアケース31に向かって延びている。
【0084】
このように、下流側壁部106bの先端部106dが上流側に向けられて配置され、上流側壁部101bの先端部101dが下流側に向けられて配置されていない場合においても本発明所定の効果を得ることができる。即ち、下流側壁部106bの先端部106dが上流側に向けられた分だけ、コアケース31を小型化でき(
図6、β参照)、熱交換器90全体としても小型化することができる。
【0085】
高温の排気ガスが流れる熱交換チューブ34には、排気ガスの熱により伸びが発生する。支持プレート102の板厚がエンドプレート本体101の板厚よりも薄いため、エンドプレート本体101よりも支持プレート102は曲げ剛性が弱い。このため、エンドプレート本体101に比べて支持プレート102は撓みやすい。撓みやすい部位に熱交換チューブ34が差し込まれているため、熱交換チューブ34の伸びを撓みによって吸収することができる。これにより、熱交換チューブ34に加わる負荷を軽減し、熱交換器90の長寿命化を図ることができる。下流側エンドプレート93についても同様である。
【0086】
なお、上流側エンドプレート92及び下流側エンドプレート93の向きを共に逆向きとした場合にも、本発明の効果を得ることができる(
図6、α参照)。即ち、上流側エンドプレート92の先端部101dをコアケース31に接合すると共に、下流側エンドプレート93の先端部106dをコアケース31から離れるよう下流側に向かって延ばすこともできる。
【0087】
尚、本発明の熱交換器は、実施の形態では排熱回収装置に適用したが、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラやコージェネレーションシステム、熱電発電装置への適用も可能である。さらに、これらのように、排気ガスの熱と媒体との間で熱交換を行うもの以外の物にも適用が可能である。
【0088】
また、実施例1による熱交換器に、実施例3による熱交換器の技術の一部を適用することも可能である。即ち、各実施例は、適宜互いに組み合わせることができる。