特許第5941907号(P5941907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5941907スラリーの濃縮のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941907
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】スラリーの濃縮のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 57/02 20060101AFI20160616BHJP
   B03C 5/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B01D57/02
   B03C5/00 Z
【請求項の数】36
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-506658(P2013-506658)
(86)(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公表番号】特表2013-527031(P2013-527031A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2011056728
(87)【国際公開番号】WO2011135022
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年1月21日
(31)【優先権主張番号】61/331,951
(32)【優先日】2010年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10161498.0
(32)【優先日】2010年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セテマン,イエルク
(72)【発明者】
【氏名】アインシユピーラー,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シユワルツ,マルテイン
【審査官】 近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02367526(FR,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02259459(GB,A)
【文献】 特開平08−047691(JP,A)
【文献】 特開2002−177819(JP,A)
【文献】 特開昭53−126573(JP,A)
【文献】 実開昭57−133062(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 57/00〜57/02
B03C 5/00〜5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性の鉱物のケーキまたは固形物の形態のスラリーの濃縮のための装置であって、モジュールを受け入れるための支持構造を備えており、
前記モジュールが、
a.少なくとも1つの電気的に接続されたカソードと、少なくとも1つの電気的に接続された回転可能なアノードディスク(50)とを有する電気泳動セルと、
b.前記ケーキまたは固形物を受け取るための各々のアノードディスク表面に隣接する分離ユニットとを備え、該分離ユニットが、半円筒形または半矩形の形態を有する受け部(40)と、ピストン(20)と、スライドキャリッジ(10)とを備え、前記スライドキャリッジ(10)が、受け部(40)を閉じるためのカバー(11)を有し、かつ受け部(40)を閉じるときに受け部(40)の段部(30)から受け部(40)に残余のケーキまたは固形物を集め、受け部(40)の段部(30)が、アノードディスクから前記ケーキまたは固形物を取り去るための掻き落としフランジとして機能するように寸法付けられ、ピストン(20)が集められた前記ケーキまたは固形物を受け部(40)から押し出し、前記モジュールがさらに、
c.アノードディスクを回転させ、スラリーを電気泳動セルとの間を循環させ、カソードとアノードディスクとの間に電圧を加えるための手段を備えている装置。
【請求項2】
電気泳動セルが、多室の容器(60)である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
多室のスラリー容器(60)が、室を形成するように内側にフランジが取り付けられている容器(60)の外殻から製作されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
フランジが、容器(60)の外殻へと溶接されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
多室のスラリー容器(60)が、単一の一体的な部品である、請求項2に記載の装置
【請求項6】
電気泳動セルまたは多室の容器(60)が、他のすべての構成部品から電気的に絶縁されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
電気泳動セルまたは多室の容器(60)が、カソードである、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
アノードディスク(50)が、電気泳動セルまたは室において鉛直方向に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
アノードディスク(50)が、回転のための駆動軸(7)に取り付けられている、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
アノードディスク(50)が、アノードディスク(50)間の距離を確立する固定フランジによって駆動軸(7)に取り付けられている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
アノードディスクを電気的に接続するためにジャンパリングが設けられている、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
各々の電気泳動セルまたは室が、底部にスラリーのための入り口開口を有し、上縁にオーバーフローを有している、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
支持構造が、アルミニウム製のフレーム(5)である、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
アノードディスクが、耐食性である、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
アノードディスクが、チタニウムを含んでいる、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
各々の分離ユニットが、合成材料で製作されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
合成材料が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
ピストン(20)が、空気によって駆動される、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
各サイクルにおいて、アノードディスク(50)が10°回転し、次いで、アノードディスク(50)が3分間滞在し、滞在している間に、カソードとアノードディスク(50)との間に特定の電圧が印加される、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
カソードとアノードディスク(50)との間に20Vの電圧が加えられる、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
脱水のために適用されるスラリーが、乾燥重量にて10から50%の間の鉱物含有量を有している、請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
鉱物が、負に帯電しかつ分散した炭酸カルシウムである、請求項1から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載のスラリーの濃縮のための装置の一部としての分離ユニットであって、
半円筒形または半矩形の形態を有しかつ回転するアノードディスクの鉱物のケーキまたは固形物を受け取るための受け部(40)を備え、受け部(40)の段部(30)がアノードディスクから前記ケーキまたは固形物を取り去るための掻き落としフランジとして機能するように寸法付けられ、前記分離ユニットがさらに、集められたケーキまたは固形物を受け部(40)から押し出すためのピストン(20)と、スライドキャリッジ(10)とを備えており、前記スライドキャリッジ(10)が、受け部(40)を閉じるためのカバー(11)を有し、かつ受け部(40)を閉じるときに受け部(40)の段部(30)から受け部(40)に残余のケーキまたは固形物を集める、分離ユニット。
【請求項24】
合成材料で製作されている、請求項23に記載の分離ユニット。
【請求項25】
合成材料が、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項24に記載の分離ユニット。
【請求項26】
ピストン(20)が、空気によって駆動される、請求項23から25のいずれか一項に記載の分離ユニット。
【請求項27】
請求項1から22のいずれか一項に記載の装置または請求項23から26のいずれか一項に記載の分離ユニットを使用してスラリーを濃縮するための方法であって、
a.粒子が分散している鉱物のケーキまたは固形物の形態のスラリーを前記装置の電気泳動セルに導入するステップと、
b.電気泳動セルの止まっているアノードディスクとカソードとの間に電圧を加えるステップと、
c.各々のアノードディスクを所定の回転角度だけ回転させ、付いている前記ケーキまたは固形物を前記装置の分離ユニットの受け部(40)へと取り去るステップと、
d.随意により前記受け部(40)をスライドキャリッジで閉じるステップと、
e.前記ケーキまたは固形物をピストン(20)で分離ユニットから押し出すステップと、
f.随意により入り口開口を介して電気泳動セルへと新規なスラリーを導入し、余分なスラリーを各々の電気泳動セルの出口を介して取り除き、ステップa〜fを繰り返すステップと
を含んでいる方法。
【請求項28】
分離ユニットの受け部(40)が、前記ケーキまたは固形物を受け部(40)へと取り去った後でスライドキャリッジ(10)によって閉じられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
プロセスが、連続的に駆動され、間欠的に駆動され、あるいは各々の室を順次に満たすことによって駆動される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記ケーキまたは固形物が、鉱物粒子を含んでいる、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
分散した粒子が、負に帯電している、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
スラリーが、電気的に負に帯電しかつ分散した炭酸カルシウムを含んでいる、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
脱水のために適用されるスラリーが、乾燥重量にて10〜50%の間の鉱物含有量を有している、請求項27から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
20Vの電圧が加えられる、請求項27から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
回転の角度が10°である、請求項27から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ステップbの継続時間が、スラリーの特性に合わせて調節される、請求項27から35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーの濃縮のためのシステムおよび方法に関し、特に鉱物含有スラリーの濃縮のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選鉱は、多くの場合に、水の添加を必要とする。結果として、過度に希釈された鉱物含有スラリーがもたらされ、さらなる処理のために懸濁液の細粒状の鉱物の濃縮が必要になる可能性がある。必要とされる鉱物の最終的な濃度に応じて、脱水プロセスに種々の方法が使用される。遠心分離、ろ過、または気化などの方法の他に、スラリーの脱水を、固体層またはケーキの形成をもたらす電気泳動または電気浸透によって達成できることが知られている。
【0003】
米国特許第1,133,967号明細書が、懸濁液の容器と懸濁液の撹拌手段とを有する電気浸透プロセスのための装置であって、アノードおよびアノードと撹拌手段との間に固定されたカソードを備えており、カソードに長さが幅よりもはるかに大きい開口が設けられている装置を開示している。この発明によれば、アノードが円筒形である。
【0004】
米国特許第3,972,799号明細書が、ボーリングの泥水から固形物を取り出すための装置を記載している。この装置は、間隔を空けて配置された複数の回転する板状のディスク(アノード)を、間隔を空けて配置されつつ互いに接続された複数のパネル(カソード)の間に配置して有する水平方向の容器を備えており、各々のディスクの外周部分がボーリングの泥水に沈められ、ディスクがモータによって回転させられる。懸濁液中の固形物が、それぞれのディスクの向かい合う表面に引き付けられ、これらの表面に層または膜として付着し、ディスクに隣接して配置された不動のスクレーパブレード部材が、付着した固形物を取り除く。
【0005】
懸濁液からの固体層またはケーキの露出を達成するために、回転アノードディスクが、対向する1対の自己完結の電極構造体の間に維持される電界にて固形物の懸濁液を脱水するためのシステムおよび方法を開示している米国特許第4,107,026号明細書によって提案されている。電界が、固形物を該当の自己完結の電極構造体上に層またはケーキを形成するように担体液に対して移動させる一方で、担体液を対向する中空の自己完結の電極構造体の液体透過壁を通って反対の方向に真空のもとで取り出すことができるように制御可能に維持される。ろ液の取り出しの速度を担体液における固形物の移動の相対速度に矛盾なく適合するように制御するための手段が組み合わせられ、前記層およびケーキの物質を、例えば懸濁液から露出しているときに前記電極構造体から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第1,133,967号明細書
【特許文献2】米国特許第3,972,799号明細書
【特許文献3】米国特許第4,107,026号明細書
【特許文献4】米国特許第5,171,409号明細書
【特許文献5】欧州特許第0253749号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気泳動による分離の効率を高めるために、米国特許第5,171,409号明細書(欧州特許第0253749号明細書の同等物)が、電気泳動および電気浸透セルにおいて懸濁液の形態の帯電した固体の粉状の物質を連続的に分離するプロセスを提案しており、カソード液の一部が排出され、その一部が好ましくは気体である酸性の薬剤で処理され、処理済み部分がカソードの区画へと再び導入される一方で、排出分のうちの残りの部分は取り除かれる。この文献に開示の方法および装置は、取り扱いがきわめて複雑であるため、取り扱いが容易であると同時に処理能力も高い装置について、ニーズが存在する。
【0008】
電気泳動または電気浸透による懸濁液の脱水のプロセスは、技術水準において公知であるが、どちらの方法も、鉱物のケーキまたは固形物の回収の程度が、特に粘着性の鉱物ケーキまたは固形物の形態での炭酸カルシウムの回収の場合に、満足できるものではない。
【0009】
本発明の目的は、鉱物含有スラリーの濃縮のためのシステムおよび方法であって、公知のシステムおよび方法の欠点を回避するシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、スラリーの濃縮のための装置であって、
モジュールを受け入れるための支持構造を備えており、
モジュールが、
a.少なくとも1つの電気的に接続されたカソードと、少なくとも1つの電気的に接続された回転可能なアノードディスクとを有する電気泳動セル、
b.ケーキ物質を受け取るための各々のアノード表面に隣接し、受け部およびピストンを備えており、受け部の段部がアノードから固形の物質またはケーキを取り去るための掻き落としフランジとして機能するように寸法付けられ、ピストンが集められた物質またはケーキを受け部から押し出し、さらに任意選択にて受け部を閉じるためのカバーを有するスライドキャリッジを備える分離ユニット、および
c.アノードを回転させ、スラリーを電気泳動セルとの間を循環させ、電極に電圧を加えるための手段
を備えている装置が提供される。
【0011】
電気泳動セルは、スラリーを受け入れるための容器であって、電気泳動のための1つまたは複数の室を備えるように設計された容器であってもよい。電気泳動セルが多室のセルである好ましい実施の形態においては、これを、多室の容器が室を形成するように内側にフランジが取り付けられている容器の外殻から製作されるように、板を容器へと溶接することによって形成できる。さらなる好ましい実施の形態においては、多室のスラリー容器が、単一の一体的な部品である。
【0012】
多室の容器を含む容器の全体が、カソードとして機能することが意図されるが、1つ以上の板または他の手段を電気泳動セル内に配置してカソードとすることも、本発明の技術的範囲に包含される。電気泳動セルまたは容器がカソードである場合には、電源への別途の接続が不要であり、(多)室のスラリー容器が、他のすべての部品から電気的に絶縁される。
【0013】
アノードディスクの一部分がスラリーへと露出され、一部分が空気などの気体の環境へと露出されることが意図される。さらに、分離ユニットの段部が、アノードのうちの気体の環境へと露出した部分に隣接して位置することが意図される。分離ユニットが、ほぼ水平な位置に位置することが好ましい。
【0014】
アノードディスクが、所与の室において縦に配置されることが好ましい。アノードディスクを回転させるために、アノードディスクは、好ましくは回転のための駆動軸に取り付けられる。さらに、アノードディスクを、アノードディスク間の距離を確立する固定フランジによって駆動軸に取り付けることができる。それぞれアノードディスクであるアノードが、設けられるジャンパリングによって電気的に接続される。
【0015】
必要であれば、スラリーの特別な組成ゆえに、変更された容器および変更されたアノードディスクの間隔を使用することができる。好ましい実施の形態においては、容器の外壁が半円筒形であり、カソードとアノードディスクとの間に所定の距離を生み出すようにアノードの直径に合わせて調節される。半円筒形の容器の設計は、アノードの一部分だけがスラリーへと露出されるという要件を容易にする。
【0016】
他の好ましい実施の形態においては、スラリーのための少なくとも1つの入り口開口が、各々の電気泳動セルの底部に配置され、オーバーフローが上縁に配置される。別の実施の形態においては、入り口開口を、各セルの外周に分布させることができる。
【0017】
アノードの好ましい材料は、防食コーティングを有するチタニウムである。アノードを配置するために、カソード(複数可)とアノードとの間に適切な距離が保たれるように保証するために、マフを使用することが可能であり、前記距離が、脱水プロセスにおいて重要である。マフとアノードディスクとを交互にすることで、軸上に滑り込ませられるユニットを形成することができる。アノードディスクと分離ユニットとの間の距離が一定であることも重要である。マフの断面積を、アノードディスクが軸上で移動できないように保証するために使用することができる。
【0018】
ジャンパリングを、より高い電圧が拡大版のシステムにおいて可能であるように、金接点にて製作することができる。接点は、好ましくは弾性的である。
【0019】
支持フレームについて、好ましい材料はアルミニウムである。このフレームがシステムの背骨を呈し、他のすべての部品がこのフレームに取り付けられる。容器がカソードを呈する場合には、支持フレームを容器から絶縁するために合成材料の板を使用することができる。さらなる板を、アノードユニットおよびアノードを回転させるモータの軸に対する支持体として使用することができる。
【0020】
分離ユニットの受け部の好ましい形態は、半円筒形または半矩形であり、受け部の形態に合わせられたピストンを備えている。受け部について、他の形態も適用可能であることは、当業者にとって自明である。分離ユニットは、好ましくは合成材料で製作され、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または良好な摺動特性を有する任意の他の材料で製作される。半円筒の段部が隣接するアノードディスクに合わせて調節されているため、別途の掻き落とし具は不要である。これは、固形の物質またはケーキが掻き落とし具に集まることがないという大きな利点を有する。分離ユニットを閉じるためのスライドキャリッジとの組み合わせにおいて、固形の物質が、完全に分離ユニットから押し出される。本発明者の実験において、開いた半円筒、すなわちスライド扉を持たない半円筒では、固形の物質が掻き落とし具およびピストンに溜まり、固形の物質またはケーキの取り出しが不完全であった。
【0021】
分離ユニットは、理想的には、分離ユニットが2つのアノードディスクから同時にケーキを取り除くべく機能できるよう、2つのアノードディスクの間に正確に配置される。分離ユニットとアノードとの間の止まっているすき間は、好ましくは約1mmである。分離ユニットを、合成の取り付け具によって支持フレームに固定することができる。
【0022】
ピストンおよび半円筒を同じ材料から形成することで、熱膨張の相違による問題を回避することができる。
【0023】
ピストンを空気によって駆動することが好ましい。例えば油圧など、ピストンを駆動するための任意の他の手段も、本発明の技術的範囲に包含される。
【0024】
スラリーの濃縮のためのプロセスが、好ましくは非連続的に駆動されるため、各サイクルにおけるアノードの回転の角度は、約3分というアノード各部の滞在の好ましい長さとの組み合わせにおいて、好ましくは約10°である。
【0025】
好ましい実施の形態においては、10V〜40Vの間の電圧が電極へと加えられる。電圧は、電極を形成している材料およびスラリーの組成に依存する。アノードの腐食に関して制限されるべきであり、したがって60V以下であるべきである。
【0026】
本発明による装置は、鉱物の含有量が好ましくは10〜50%の間であり、より好ましくは20〜24%の間であり、所定の粒子サイズを有しているスラリーに最適化される。電圧などのパラメータを、電極の間の距離を変えることなく他のスラリーに合わせて調節することができる。なぜならば、電極の間の距離は、電気泳動セルの構成によってあらかじめ定まるからである。
【0027】
装置において使用される好ましい物質は、負に分散した炭酸カルシウム粒子を含んでいるスラリーである。
【0028】
本発明の他の対象は、本発明による装置を用いたスラリーの濃縮のための方法であって、
a.粒子が分散しているスラリーを前記装置の電気泳動セルに導入するステップと、
b.電気泳動セルの止まっている電極に電圧を加えるステップと、
c.各々のアノードを所定の回転角度だけ回転させ、止まっている固形の物質またはケーキを前記装置の分離ユニットの受け部へと取り去るステップと、
d.随意により前記受け部をスライドキャリッジで閉じるステップと、
e.固形の物質またはケーキをピストンで分離ユニットから押し出すステップと、
f.随意により入り口開口を介して電気泳動セルへと新規なスラリーを導入し、余分なスラリーを各々のセルの出口を介して取り除き、ステップa〜fを繰り返すステップと
を含む方法である。
【0029】
物質を効率的に取り去ることができるよう、濃縮プロセスが不連続に駆動されることが好ましく、すなわちアノードがスラリー内で止まっている段階と、固形の物質またはケーキを受け取るためにアノードが回転させられる段階とが好ましい。
【0030】
この方法は、鉱物粒子を含有しており、特に炭酸カルシウムを含有しており、とりわけ負に分散した炭酸カルシウムを含有しているスラリーに最適化される。これに加え、あるいはこれに代えて、陽イオン的に分散した炭酸カルシウムも使用することができる。
【0031】
溶液の安定性および粒子の帯電を最適にするために、分散剤などの界面活性剤をスラリーに加えることが好ましい。界面活性剤が粒子に付着するため、結果としての帯電が、界面活性剤の帯電に対応する。この方法で、必要に応じてアノードまたはカソードへと移動するように分散粒子の帯電を強化または変更することができる。
【0032】
この方法の最適なパラメータは、約20Vの電圧および約10°の回転角度であり、引き上げ時間および時間間隔をスラリーの特性に合わせて調節することができる。好ましくは、アノードディスクの滞在の時間が約3分である。
【0033】
ケーキの回収、すなわちアノードの回転のプロセスは、ピストンが完全に伸ばされているときに中断される。ケーキがピストンの背後に集まってピストンの引き戻しにおいて問題となることがないように、アノードを再び回転させることができる前に、ピストンを引き戻さなければならない。
【0034】
本発明を、図面および実施例によってさらに説明するが、本発明は、説明される実施の形態に限られるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電極への印加電圧に対する付着ケーキの固形分含有量のグラフである。
図2】電極への印加電圧に対する比付着速度のグラフである。
図3】電極への印加電圧に対する比エネルギー消費のグラフである。
図4】電極の距離に対する付着ケーキの固形分含有量のグラフである。
図5】電極の距離に対する比付着速度のグラフである。
図6】電極の距離に対する比エネルギー消費のグラフである。
図7】保持時間に応じた固形分含有量のグラフである。
図8】保持時間に応じた比付着速度のグラフである。
図9】保持時間に応じた比エネルギー消費のグラフである。
図10】分離ユニットである。
図11A】分離ユニットとアノードディスクとからなる装置である。
図11B】分離ユニットとアノードディスクとからなる装置である。
図12】入り口とオーバーフローとを有する電気泳動セルである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1が、浸透に関して、電極への印加電圧が付着ケーキの固形分含有量に顕著な影響を有することを示している。固形分含有量および付着速度(図2)は、電圧が高くなるにつれて大になるが、エネルギー消費(図3)が、不釣り合いに増加する。この結果の理由は、含まれる水の電気分解の増加である。水成分の電気泳動が、周囲の空気と爆発性の混合物を形成する水素および酸素の発生につながることが、深刻な問題である。電圧を水素が発生しない水準まで下げることは、不可能である。
【0037】
したがって、無理のないエネルギー消費にて良好な生産性を可能にする妥協点を決定しなければならない。多くの実験を、20Vの電圧で行なったが、電圧は10〜60Vの範囲であってもよい。
【0038】
さらなる実験を、固形分含有量(図4)、比付着速度(図5)、および比エネルギー消費(図6)に関して、電極の距離を決定するために実行した。電極の距離は、通常は、例えば可動のカソードによるなど、多大な苦労を伴わなければ変更ができないため、電気泳動装置を製作するために、電極の最適な距離を知ることが重要である。
【0039】
図4図6に示されている結果は、20Vの電圧を加えることによって得られている。電極の距離が短いと電気分解の効率が高くなり、すなわちエネルギー消費の減少につれて固形分含有量および付着速度が大になることを、はっきりと見て取ることができる。これは、電極の距離が短い方が好ましいことを意味している。
【0040】
アノード上の付着ケーキによってカソードとアノードとの間のすき間が小さくなることを、考慮に入れなければならない。実験により、最大約10mmというアノードケーキの物理的な厚さが示されている。電極の間に残るすき間がスラリーの流通に適することが、保証されなければならない。図5において、付着速度の停滞を、20mmよりも上の電極の距離において見て取ることができる。これは、アノードケーキによる電極の間のすき間の最小化の影響を反映している可能性がある。
【0041】
回転するアノードを使用することによって、電気泳動の実行の種々の態様を適用することができる。アノードを連続的または間欠的に回転させることができる。アノードディスク50上のアノードケーキの増加は、固体のケーキがスラリーよりも高い電気抵抗を有するため、電気抵抗の増大につながる。結果として、付着速度が低下(図8)し、エネルギー消費が増大(図9)する一方で、アノードケーキの固形分含有量は依然として高くなる(図7)。
【0042】
図7図9に示したとおりの妥当な保持時間を決定するための実験の結果は、20Vの電圧、40mmの電極の距離、および45°の回転角度で実行されている。
【0043】
回転の角度および保持時間が、アノードディスク50に付着するアノードケーキの総量に関する重要なパラメータである。アノードケーキの量は、分離ユニットが一杯にならないように、分離ユニットの大きさに相関していなければならない。なぜならば、分離ユニットが一杯になると、アノードディスク50上に固体の粒子が残ることになりかねないからである。当業者であれば、アノード上のケーキの厚さに応じて回転の程度を調節でき、すなわちケーキが厚いほど、受け部40が満たされる前のアノードの回転の程度を小さくすることができるであろう。
【0044】
装置の作成および電気泳動の実行のためのパラメータの決定の際に、いくつかの制限を考慮に入れなければならない。電極に高い電圧を印加することは、安全上の理由で水素の発生という副作用を軽減しなければならないため、避けるべきである。電極の距離は、基本的には、図11に示されるとおりの多室スラリー容器60の構想によってあらかじめ確立される。残りのパラメータを、アノードケーキの固形分含有量を最適化するとともに、高い付着速度を達成するように選択しなければならない。
【0045】
表1が、本発明による装置について選択したパラメータを示している。
【0046】
【表1】
【0047】
測定値に正確には対応していない値は、曲線の推移に従って外挿されている()。計算の出発点を、表1の一番上の列に示されている電圧の変化について得られた結果から取った。固形分含有量、付着速度、およびエネルギー消費の変化を、電極の電圧、保持時間、および回転の角度を変化させる実験から得た。好ましい動作条件において好ましいパラメータを使用し、一番下の列に示されている固形分含有量、付着速度、およびエネルギー消費における結果がもたらされる。電圧を20Vに調節すべきであり、電極の距離Hを、スラリー容器60の構成に応じて選択すべきである。固形分含有量、付着速度、およびエネルギー消費を最適にするために、保持時間を約4分にすべきであり、回転の角度を45°にすべきである。
【0048】
図10が、回転するアノード50からケーキ物質を受け取るための受け部40を備えている分離ユニットを示している。受け部40の段部30が、アノード50から固形の物質またはケーキを取り去るための掻き落としフランジとして機能するように寸法付けられている。集められた物質は、バルブ22によって制御される空気シリンダ21によって駆動されるピストン20によって受け部40から押し出される。受け部は、スライドキャリッジ10によって閉じることができるように意図される。スライドキャリッジ10は、カバー11および案内ロッド12を備えている。
【0049】
さらに、受け部40を閉じるためのスライドキャリッジ10は、受け部を閉じるときに段部30から受け部40へと残余の物質を集めるためのワイパを前部に有するように意図される。
【0050】
図11が、分離ユニットとアノードディスク50とからなる装置を示している。図11Aにおいては、受け部40が、集められた固形の物質をピストン20の移動によって押し出すために閉じられている。図11Bにおいては、受け部が開かれており、回転するアノード50から固形の物質を集めることができる状態である。受け部40を開閉するために、アノードディスク50に隣接して配置されたすべての受け部40が、接続棒6によって接続されている。接続棒6の端部が、フレーム5に取り付けられた空気シリンダ21に接続されている。アノードディスク50は、容器60において縦に回転している。アノード50は、駆動軸7に取り付けられ、駆動軸7が、不動のテーブル9上に搭載されたただ1つの駆動部8によって回転させられる。受け部を、カバー11と案内ロッド12とを備えるスライドキャリッジ10によって閉じることができる。
【0051】
図12が、入り口61とオーバーフロー62とを有する電気泳動セルを示している。縦回転のアノードディスク50が、多室の容器60の室において回転する。スラリーが入り口開口61から入れられ、脱水されたスラリーがオーバーフロー62によって容器から出る。入り口開口61を容器60の底に配置し、出口62を容器60の上縁に配置することが意図される。
【0052】
多室の容器60の各室を、新規のスラリーの流れを等しく分割することによって、新規のスラリーで満たすことが可能である。好都合には、この方法で電気泳動セルを満たすために、ただ1つのポンプを使用すればよい。他の可能性は、室を先行の室からあふれたスラリーで満たすことであり、室の列において固形分含有量の勾配が生じる。スラリーの固形分含有量が約9〜10%を下回るとアノード50における固形の物質の形成が停止するため、固形分含有量がこの値を下回るスラリーを、バッファストレージからの固形の物質で補うことができ、あるいはプロセスから取り除かなければならないことに、注意すべきである。
【符号の説明】
【0053】
5 フレーム
6 接続棒
7 駆動軸
8 ただ1つの駆動部
9 不動のテーブル
10 スライドキャリッジ
11 カバー
12 案内ロッド
20 ピストン
21 空気シリンダ
22 バルブ
30 段部
40 受け部
50 アノードディスク
60 容器
61 入り口
62 オーバーフロー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12