(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941917
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ターボチャージャの製造方法
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20160616BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B39/00 T
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-530297(P2013-530297)
(86)(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公表番号】特表2013-537958(P2013-537958A)
(43)【公表日】2013年10月7日
(86)【国際出願番号】US2011052690
(87)【国際公開番号】WO2012047527
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】102010046658.1
(32)【優先日】2010年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ラム
(72)【発明者】
【氏名】ウベ・クナウアー
(72)【発明者】
【氏名】レイフ・ハイディングスフェルダー
(72)【発明者】
【氏名】アーバン・ラドキー
【審査官】
川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/102546(WO,A1)
【文献】
特開平09−300083(JP,A)
【文献】
特開2001−093411(JP,A)
【文献】
特開2003−089022(JP,A)
【文献】
特開2001−179454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変タービン形状(VTG)を有するターボチャージャ(1)を製造するための方法であって、前記ターボチャージャ(1)が、
−排気ガス用の供給ダクト(9)を有するタービンハウジング(2)を有し、
−前記タービンハウジング(2)に回転可能に取り付けられるタービンロータ(4)を有し、そして
−案内格子(18)を有し、前記案内格子が、
・外側で半径方向に前記タービンロータ(4)を取り囲み、
・ブレード軸受リング(6)を有し、
・前記ブレード軸受リング(6)に取り付けられた1つのブレードシャフト(8)を各々有する複数の案内ブレード(7)を有し、
・関連のブレードレバー(20)の端部の一方において前記ブレードシャフト(8)に締結された前記関連のブレードレバー(20)を介して前記案内ブレード(7)に作動的に接続される調整リング(5)であって、前記ブレードレバー(20)が各々、他方の端部において、前記調整リング(5)の関連の係合凹部(24)と係合して配置することができるレバーヘッド(23)を有する調整リング(5)を有し、そして
・前記案内ブレード(7)によって形成されたノズル断面を通して最小通過流を少なくとも設定するためのストッパ(25)を有し、ここで
・前記ストッパ(25)が、自動化された突き合わせ溶接工程によって締結される設定ピンとして形成され、前記設定ピンの位置が、同様の案内格子により事前に実施されたオンラインの通過流測定から決定され、所望の通過流量に反復して近似する、
方法。
【請求項2】
支持プレート(27)が隣接する円筒状ストッパシャンク(26)が、前記設定ピン(25)に設けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持プレート(27)が、前記ストッパシャンク(26)の直径(D2)以上の直径(D1)で製造される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持プレート(27)の支持面(28)に係止ペグ(32)が設けられる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記設定ピン(25)が溶接されたピンとして形成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記設定ピン(25)が前記ブレード軸受リング(6)に突合せ溶接される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2つの設定ピン(25、25’)が設けられ、前記2つの設定ピンの一方(25)が最大位置を設定するために使用され、前記2つの設定ピンの他方(25’)が前記案内格子(18)の最小位置を設定するために使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
可変タービン形状(VTG)を有するターボチャージャ(1)用の案内格子(18)を製造するための方法であって、前記案内格子(18)が外側で半径方向に前記ターボチャージャ(1)のタービンロータ(4)を取り囲み、かつ次の部分、すなわち、
・ブレード軸受リング(6)と、
・前記ブレード軸受リング(6)に取り付けられた1つのブレードシャフト(8)を各々有する複数の案内ブレード(7)と、
・関連のブレードレバー(20)の端部の一方において前記ブレードシャフト(8)に締結された前記関連のブレードレバー(20)を介して前記案内ブレード(7)に作動的に接続される調整リング(5)であって、前記ブレードレバー(20)の各々が、他方の端部において、前記調整リング(5)の関連の係合凹部(24)と係合して配置することができるレバーヘッド(23)を有する調整リング(5)と、
・前記案内ブレード(7)によって形成されたノズル断面を通して最小通過流を少なくとも設定するためのストッパ(25)と、
を有し、ここで
・前記ストッパ(25)が、自動化された突き合わせ溶接工程によって締結される設定ピンとして形成され、前記設定ピンの位置が、同様の案内格子により事前に実施されたオンラインの通過流測定から決定され、所望の通過流量に反復して近似する、
方法。
【請求項9】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の特徴の少なくとも1つを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
可変タービン形状(VTG)を有するターボチャージャ(1)用の案内格子(18)のストッパを製造するための方法であって、前記案内格子(18)が外側で半径方向に前記ターボチャージャ(1)のタービンロータ(4)を取り囲み、かつ次の部分、すなわち、
・ブレード軸受リング(6)と、
・前記ブレード軸受リング(6)に取り付けられた1つのブレードシャフト(8)を各々有する複数の案内ブレード(7)と、
・関連のブレードレバー(20)の端部の一方において前記ブレードシャフト(8)に締結された前記関連のブレードレバー(20)を介して前記案内ブレード(7)に作動的に接続される調整リング(5)であって、前記ブレードレバー(20)の各々が、他方の端部において、前記調整リング(5)の関連の係合凹部(24)と係合して配置することができるレバーヘッド(23)を有する調整リング(5)と、
を有し、ここで
・前記ストッパ(25)が、自動化された突き合わせ溶接工程によって締結される設定ピンとして形成され、前記設定ピンの位置が、同様の案内格子により事前に実施されたオンラインの通過流測定から決定され、所望の通過流量に反復して近似する、
方法。
【請求項11】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の特徴の少なくとも1つを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のターボチャージャを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のターボチャージャが欧州特許出願公開第1564380A1号明細書に記載されている。調整リングの弱化を回避するために、前記文献は、調整リングに一体接続され、かつ幅を変更し得るウェブから構成されるか又は調整可能なグラブねじを設けることが可能なストッパを提案している。前記設計は、ある程度まで、調整可能なストッパの可能性を十分に創出するが、このようにして形成されるストッパは、実際にはほとんど実現できないであろう。なぜなら、第一に、空間状態グラブねじの挿入、このことがさらに単一ピースのストッパ部分の雌ねじの提供を必要とし、さらに、実施された設定を固定できるように、グラブねじ用のロック機構を提供することが必要であるからである。極めて限定された空間状態のため、このことは実際には高い費用を伴い、したがって望ましくない。
【0003】
しかし、ストッパが調整リングに一体形成される結果、公知のターボチャージャでは、例えば案内格子の端部位置の補正を実施することが意図されるか又は必要である場合、案内格子の組立後にストッパの突出部を再加工することは、いずれにせよ比較的高い費用をかけることによってのみ可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、自動化による案内格子又は案内装置の組立の簡略化を許容する、請求項1の前文に規定されたタイプのターボチャージャを製造するための方法を提供することであり、ここで、通過流領域の簡単な、したがって費用効果的かつ精密な調整が、案内装置の通過流測定によるオンライン情報フィードバックによって可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。
【0006】
このようにして、可変タービン形状(VTG)の質量流の制限をストッパピンによって簡単に達成することができる。この場合、最小通過流及び最大通過流の両方の制限の達成を求める場合、自動的にブレード軸受リングに好ましくは突合せ溶接できるこのような2つの設定ピン又はストッパピンが設けられる。したがって、所望のように設定ピンを位置決めすることが可能であり、固定が行われた後に前記ピンがブレード軸受リングに捕捉して接続されるので、質量流の非常に精密な設定が可能である。自動化された溶接の場合、設定ピンの位置は反復及び最後に使用された位置との比較によって決定し得る。このことは、製造工程で溶接されたカートリッジがすぐその後に通過流測定を受け、また処理量の偏差が設定ピンの位置決めの補正変数としてオンラインで組み込まれることを前提とする。したがって、必要な処理量は、工程に付随して各々のカートリッジ又は各々の案内格子で適合し得る。本発明によれば、したがって、非常に精密かつ永続的に設定されたカートリッジ又は案内格子が製造される。
【0007】
本発明によれば、製造工程のオンラインの処理量測定を含み、したがって、1つ以上のストッパの位置決めの品質に関する結論の導きを可能にする自動化された方法が結果として実現される。したがって、本発明による方法は、所望の処理量に反復して近似することができる。ストッパピンの締結は、自動的に行われることが好ましく、すなわち、使用する位置は記憶され、引き続く位置決め工程のための比較として提供される。ストッパの締結は、任意の所望の位置において可能であり得、本発明による方法に先行して知られていない。締結のために、突合せ溶接工程が使用されることが好ましい。本発明によれば、所望の処理量を有しない完全に溶接された案内格子は、不良品として扱われる。
【0008】
原理的に、ストッパをハウジングで静止しているブレード軸受リングに又は移動可能な調整リングに固定することが可能である。それに応じた方法により、次に、ストッパの突出部は、調整リングの相手部材のストッパ面と又はブレードレバーの締結リングと相互作用する。
【0009】
得られる別の利点は、案内装置全体は、カートリッジとして完全に予め組み立てることができ、次に前記案内装置がタービンハウジングに挿入される前に最小通過流を設定できることである。
【0010】
したがって、最小通過流、適切ならば、最大通過流の設定は、タービンハウジング及びターボチャージャの他の構成要素、例えば軸受ハウジングとは無関係に行われる。同様に、軸受ハウジングとタービンハウジングとの間の接続部片の位置は、最小通過流の設定にもはや影響を及ぼさない。同様に、調整レバー及び前記調整レバーが調整リングに係合する箇所の摩耗は、最小通過流速度に影響を及ぼさない。
【0011】
従属請求項は、本発明の有利な改良形態に関する。
【0012】
請求項10と12は、それぞれ、各々独立して市販できる対象物として案内格子及びストッパを規定している。
【0013】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、図面に基づき例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明によるターボチャージャの基本的な構造の断面斜視図である。
【
図5】本発明によるブレード軸受リング及び設定ピンの異なる組立段階の部分図である。
【
図6】本発明によるブレード軸受リング及び設定ピンの異なる組立段階の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、タービンハウジング2と、軸受ハウジング19を介してタービンハウジングに接続されたコンプレッサハウジング3とを有する本発明によるターボチャージャ1を示している。ハウジング2、3と19は、回転軸線Rに沿って配置される。タービンハウジング2は、半径方向外側の案内格子18の部分としてのブレード軸受リング6の配置を示すために部分的に断面で示されており、案内格子18は、枢支軸又はブレードシャフト8を有する円周にわたって分布される複数の案内ブレード7を有する。このようにして、案内ブレード7の位置に応じてより大きいか又はより小さいノズル断面が形成され、ノズル断面を介して、回転軸線Rの中心に取り付けられたタービンロータ4が多かれ少なかれエンジンの排気ガスの作用を受け、排気ガスは、同一のシャフトに位置するコンプレッサロータ17をタービンロータ4を介して駆動するために、供給ダクト9を介して供給され、中央接続部片10を介して放出される。
【0016】
案内ブレード7の運動又は位置を制御するために、作動装置11が設けられる。前記作動装置は任意の所望の構造であり得るが、好ましい実施形態は、プランジャ要素14の運動をブレード軸受リング6の背後に位置する調整リング5の僅かな回転運動に変換するために、制御ハウジング12に締結されたプランジャ要素14の制御運動を制御する制御ハウジング12を有する。ブレード軸受リング6とタービンハウジング2の環状部15との間に、案内ブレード7用の自由空間13が形成される。前記自由空間13を守るために、ブレード軸受リング6は一体形成されたスペーサ16を有する。実施例の場合、3つのスペーサ16は、ブレード軸受リング6の円周に、各々120°の角度間隔で配置される。しかし、原理的に、より多いか又はより少ない数のこのようなスペーサ16を設けることが可能である。
【0017】
図2及び
図3は、本発明による案内格子18の実施形態の平面図であり、
図4は拡大部分図である。
【0018】
各図において、前記案内格子18のすべてのブレードレバーの内のブレードレバー20が代表例として示され、このレバーは、ブレードシャフト8の一方の端部が固定される凹部22を有する締結リング21を一方の端部に有する。
【0019】
ブレードレバー20のレバーヘッド23は、調整リング5の係合凹部24に配置され、したがって調整リング5に係合している。
【0020】
さらに、
図2〜
図4は、各々設定ピンの形態の2つのストッパ25、25’の配置を示している。
【0021】
図2〜
図4に示したように、実施例では、設定ピン25と25’はブレード軸受リング6に固定される。ここで、
図2は、本発明による排気ガスターボチャージャが装備された内燃機関の最大負荷位置のVTGの調整リングを示している。前記位置において、VTGの案内ブレードリングは、最大可能な程度に開放される。ここで、VTGの調整リング5のストッパカム又はフランク30は、さらなる調整移動を制限する設定ピン25(最大ストッパピン)に当接する。
【0022】
これに対し、
図3は最小位置の案内格子18を示している。案内ブレードリングは、最大可能な程度に閉鎖され、それに応じて、ストッパカム又はフランク29が設定ピン25’に当接する。
【0023】
さらに、
図4は、上述の構成要素を示すために本発明による案内格子18の部分セクションの拡大図を示している。
【0024】
図5及び
図6は、設定ピン25を有するブレード軸受リング6の一部の拡大図を示しており、その構造は設定ピン25’と同一である。
【0025】
したがって、設定ピン25、25’は、各々、一体の支持プレート27が設けられる円筒状のストッパシャンク26を有する。特に
図6に示したように、支持プレート27の直径D1は、ストッパシャンク26の直径D2よりも大きい。
【0026】
支持プレート27はまた、組立状態でブレード軸受リング6に静止する下方支持面28を有する。実施例では、係止ペグ32は、支持面28の中央に配置され、係止ペグ32により、突き合わせ溶接工程中の電流プロファイル用の設定ピンの規定の初期の接触が保証される。
【0027】
図5及び
図6の上方部分(矢印VSで図示)は、ブレード軸受リング6に溶接される前の設定ピン25の組立状態を示しており、係止ペグ32はこれらの図のみに見ることができる。
【0028】
図6の下方部分(矢印NVで図示)は、設定ピン25が所定の位置においてブレード軸受リング6に捕捉して接続されている溶接工程後の状態を示している。
【0029】
本開示を補完するために、
図1〜
図6の本発明の概略図が明示的に参照される。
【符号の説明】
【0030】
1 ターボチャージャ
2 タービンハウジング
3 コンプレッサハウジング
4 タービンロータ/タービンホイール
5 調整リング
6 ブレード軸受リング
7 案内ブレード
8 ブレードシャフト
9 供給ダクト
10 軸方向接続片
11 作動装置
12 制御ハウジング
13 案内ブレード7用の自由空間
14 プランジャ要素
15 タービンハウジング2の環状部
16 スペーサ/スペーサカム
17 コンプレッサロータ/コンプレッサホイール
18 案内格子/案内装置
19 軸受ハウジング
20 ブレードレバー
21 締結リング
22 凹部
23 レバーヘッド
24 係合凹部
25 ストッパ/設定ピン
26 ストッパシャンク
27 支持プレート
28 接触面
29、30 ストッパカム/フランク
31 溝
32 係止ペグ