【文献】
中村 一貴 他,VoIPのシグナリングプロトコル SIPを用いたシグナリングの実際,Interface,日本,CQ出版株式会社,2003年 6月 1日,第29巻 第6号,p.79〜89
【文献】
千村 保文 他,次世代SIP教科書,株式会社インプレスR&D,2010年 3月 1日,初版,p.317〜345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IP電話網に設けられたIP電話網SIPサーバが処理できるSIPメソッドを記録したSIPメソッドデータベースを参照して、SIP端末から出力されるSIPメソッドを、前記IP電話網SIPサーバが処理できるSIPメソッドに変換するユーザ側ゲートウェイ装置と、
構内電話交換SIPサーバが処理できるSIPメソッドを記録したSIPメソッドデータベースを参照して、前記IP電話網から入力されるSIPメソッドを、前記構内電話交換SIPサーバが処理できるSIPメソッドに変換する交換機側ゲートウェイ装置とを具備するクラウド交換機システム。
SIPサーバが処理できるSIPメソッドとSIPヘッダとを記録したSIPメソッドデータベースを参照して、入力されたSIPメソッドと前記SIPサーバが処理できるSIPメソッドとの差分を前記SIPヘッダ毎に検出するヘッダ差分検出部と、
前記差分があるSIPヘッダを、前記SIPメソッドデータベースを参照して前記SIPサーバが処理できるSIPヘッダに変換するヘッダ変換部と、
前記SIPメソッドがIP電話網を通過することが許容されているSIPメソッドであるか否かを判定し、通過できるSIPメソッドの場合は前記ヘッダ差分検出部と前記ヘッダ変換部の動作を開始させ、通過できないSIPメソッドの場合は交換機側ゲートウェイ装置に対してTCPコネクションによるトンネル接続を指示し、前記交換機側ゲートウェイ装置との間でTCPコネクションによるトンネル接続を形成する非許容メソッド通過部と
を具備することを特徴とするゲートウェイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
〔クラウド交換機システムの構成〕
図1を参照して本実施の形態のクラウド交換機システム1の構成を説明する。クラウド交換機システム1は、市販の構内電話交換機機能を持つSIPサーバを用いてユーザオフィス内の内線電話システムをクラウド化したものである。
【0018】
クラウド交換機システム1は、ユーザオフィス内に配置された電話端末である複数のSIP端末10と、SIP端末10が接続されるローカルIP電話回線20と、ローカルIP電話回線20に接続するユーザ側ゲートウェイ装置30と、ユーザ側ゲートウェイ装置30と接続する公衆電話網であるIP電話網40と、IP電話網40に接続する交換機側ゲートウェイ装置50と、交換機側ゲートウェイ装置50と接続する構内電話交換機機能SIPサーバ(以降、構内電話交換SIPサーバと称する)60とを具備する。
【0019】
図1のSIP端末10は、内線番号1001のSIP端末10と内線番号1002のSIP端末10の2台を表記しているが、2台以上の複数台がローカルIP電話回線20に接続されているものとする。以降において、SIP端末10の識別は内線番号を表記することで行う。
【0020】
IP電話網40は、SIP端末10又は構内電話交換SIPサーバ60からの接続要求に対応した接続経路を選択するルーティング決定を行う複数台のIP電話網SIPサーバを含んだSIPサーバのネットワークで構成されるものである。
図1においては、SIPサーバのネットワークを1台のIP電話網SIPサーバ41の破線で表記している。以降において、IP電話網40とIP電話網SIPサーバ41とは同じものとして説明する。
【0021】
〔クラウド交換機システムの動作〕
次に、
図2と
図3を参照してクラウド交換機システム1の動作を説明する。内線番号1001から内線番号1002に内線電話を掛ける例で、クラウド交換機システム1の動作を説明する。
【0022】
まず、内線番号1001の端末から内線番号1002にダイヤルすると、内線番号1001の端末からローカルIP電話回線20を経由してユーザ側ゲートウェイ装置30に対してメッセージが送信される(ステップS1)。なお、
図2と
図3においてローカルIP電話回線20の表記は省略している。
【0023】
メッセージとは、SIPメソッドとSIPレスポンスコードとを含む情報である。SIPメソッドとは処理要求(リクエスト)のことである。SIPレスポンスコードとは、処理要求に対する応答の種別を表すコードのことである。
【0024】
この場合のメッセージとしてはINVITEメソッドが、内線番号1001の端末からユーザ側ゲートウェイ装置30に送信される。INVITEメソッドはユーザからの接続要求を意味する。
【0025】
INVITEメソッドを受信したユーザ側ゲートウェイ装置30は、受信したINVITEメソッドを構成するSIPヘッダが、IP電話網SIPサーバ41で処理できるものであるか否かを検出する(ステップS2)。検出は、処理が可能なSIPヘッダとの差分を見て行う。SIPヘッダの差分を検出する処理について詳しくは後述する。
【0026】
図4に、SIPメソッドとSIPヘッダとの関係を例示する。
図4はINVITEメソッドの例で示す。
図4の1行目の「INVITE」が、INVITEメソッドであることを表す。それ以降の:で区切られた前の部分、例えばcall-ID:で表記される:を含む各行がSIPヘッダである。例えばCall-ID:は、特定のクライアントを一意に識別する識別子を表す。
【0027】
IP電話網SIPサーバ41で処理できないSIPヘッダの差分を検出したユーザ側ゲートウェイ装置30は、当該差分を処理できるように変換する(ステップS3)。変換とは、IP電話網40を通過(IP電話網SIPサーバ41が処理できる)できるSIPメソッドにすることである。
【0028】
変換されたSIPメソッド(この場合、INVITEメソッド)は、IP電話網SIPサーバ41に送信される(ステップS4)。INVITEメソッドをIP電話網SIPサーバ41に送信したユーザ側ゲートウェイ装置30は、内線番号1001の端末に対して暫定応答のSIPレスポンスコード(100 Trying)を返す(ステップS5)。
【0029】
IP電話網SIPサーバ41は、接続先(ルーティング)を決定し(ステップS6)、
受信したSIPメソッドを、接続先の交換機側ゲートウェイ装置50に送信する(ステップS7)。そして、IP電話網SIPサーバ41は、ユーザ側ゲートウェイ装置30に対してSIPレスポンスコード(100 Trying)を返す(ステップS8)。
【0030】
交換機側ゲートウェイ装置50は、受信したSIPメソッドを構成するSIPヘッダが、構内電話交換SIPサーバ60で処理できるものであるか否かを検出する(ステップS9)。検出はユーザ側ゲートウェイ装置30と同じ方法で行う。交換機側ゲートウェイ装置50は、その検出結果に基づいてSIPヘッダを、交換機側ゲートウェイ装置50が処理できるように変換する(ステップS10)。
【0031】
SIPヘッダが変換されたSIPメソッドは、構内電話交換SIPサーバ60に送信される(ステップS11)。そして、交換機側ゲートウェイ装置50は、IP電話網SIPサーバ41に対してSIPレスポンスコード(100 Trying)を返す(ステップS12)。
【0032】
SIPメソッドを受信した構内電話交換SIPサーバ60は、INVITEメソッドを、交換機側ゲートウェイ装置50とIP電話網SIPサーバ41とユーザ側ゲートウェイ装置30を経由させて内線番号1002の端末に送信する(ステップS13、S15、S17、S19)。同様に、ステップS15にはステップS18のSIPレスポンスが対応し、S17にはステップS20、S19にはステップS21のSIPレスポンスが対応する。ステップS14は、ステップS11に対するSIPレスポンスである。
図2において、ステップS14とS15、及び、ステップS17とS19、のそれぞれの間で行われるSIP変換の処理は省略している。
【0033】
SIPメソッドを受信した着側の内線番号1002の端末は、鳴動を指示するSIPレスポンスコード(180 Ringing)を、ユーザ側ゲートウェイ装置30とIP電話網SIPサーバ41と交換機側ゲートウェイ装置50を経由させて構内電話交換SIPサーバ60に送信する(ステップS22〜S25)。その鳴動指示(180 Ringing)は、構内電話交換SIPサーバ60から交換機側ゲートウェイ装置50とIP電話網SIPサーバ41とユーザ側ゲートウェイ装置30を経由して発側の内線番号1001の端末に送信される(ステップS26〜S29、
図3)。続いて、内線番号1002の端末は、INVITEメソッドに対する応答として接続了承を意味するSIPレスポンスコード(200 OK)を、鳴動指示(180 Ringing)と同様に内線番号1001の端末に送信する(ステップS30〜S37)。内線番号1002の端末は、続けてACKメソッドを、内線番号1001の端末に送信する(ステップS38〜S45)。
【0034】
内線番号1001の端末がACKメソッドを受信すると、内線番号1001の端末と内線番号1002の端末との間に通話回線が確立して内線通話が可能となる(ステップS46)。なお、ACKメソッドについても構成するSIPヘッダの差分の検出と変換の処理を行うが、
図3では、その表記を省略している。
【0035】
以上説明したように、ユーザ側ゲートウェイ装置30が、SIP端末10とIP電話網40との間のSIPヘッダの差分を吸収する。また、交換機側ゲートウェイ装置50が、IP電話網40と構内電話交換SIPサーバ60との間のSIPヘッダの差分を吸収することで、市販の不特定多数の構内電話交換機機能を持つSIPサーバの中から選択したSIPサーバを用いた内線電話のクラウド交換機システムを実現することができる。
【0036】
次に、ユーザ側ゲートウェイ装置30又は交換機側ゲートウェイ装置50の、具体的な機能構成例を示して更にその動作を詳しく説明する。
【0037】
〔ゲートウェイ装置〕
ユーザ側ゲートウェイ装置30と交換機側ゲートウェイ装置50とは、SIPメソッドの差分を吸収する相手が異なるだけで差分を吸収する処理は同じであり、同じ機能構成を持つゲートウェイ装置70で実現できる。
図5に、ゲートウェイ装置70の機能構成例を示す。
【0038】
ゲートウェイ装置70は、ヘッダ差分検出部71と、ヘッダ変換部72と、SIPメソッドデータベース73と、SIPレスポンス中継部74とを具備する。ゲートウェイ装置70は、例えばROM、RAM、CPU等で構成されるコンピュータに所定のプログラムが読み込まれて、CPUがそのプログラムを実行することで実現されるものである。
【0039】
SIPメソッドデータベース73は、SIP端末10とIP電話網40を構成する複数種類のIP電話網SIPサーバ41との間で差分があるSIPヘッダと、IP電話網SIPサーバ41と構内電話交換SIPサーバ60との間で差分があるSIPヘッダとの両者を記録したものである。SIPレスポンス中継部74は、SIPメソッドの送信先(IP電話網SIPサーバ41又は構内電話交換SIPサーバ60)からのSIPレスポンスコードを送信元に中継するものである。なお、SIPレスポンス中継部74は一般的なものである。
【0040】
図6に示すゲートウェイ装置70の動作フローも参照してその動作を説明する。ヘッダ差分検出部71はSIPメソッドを受信する(ステップS710)。差分検出部71は、SIPサーバが処理できるSIPメソッドを記録したSIPメソッドデータベース73を参照して、入力されるSIPメソッドとIP電話網SIPサーバ41で処理できるSIPメソッドとの差分をSIPヘッダ毎に検出する。ヘッダ差分検出部71は、受信したSIPメソッドからSIPヘッダを抽出(ステップS711)し、SIPヘッダ毎にSIPメソッドデータベース73に記録されたSIPヘッダとの差分を検出する(ステップS712)。
【0041】
ヘッダ変換部72は、差分がある(ステップS712のNo)SIPヘッダを、SIPメソッドデータベース73を参照してIP電話網SIPサーバ41が処理できるSIPヘッダに変換する。ヘッダ変換部72は、追加を要するSIPヘッダなのか(ステップS720)、削除を要するSIPヘッダなのか(ステップS721)、値変更を要するSIPヘッダであるのか(ステップS723)を更に分類する。
【0042】
追加の場合は、差分をSIPヘッダに追加する(ステップS725)。削除の場合は、差分のSIPヘッダを削除する(ステップS726)。値変更の場合は、SIPヘッダの値を変更する(ステップS727)。差分がないと判定されたSIPヘッダはそのまま透過する(ステップS724)。
【0043】
ヘッダ差分検出部71が行うSIPヘッダの差分検出処理と、ヘッダ変換部72が行うSIPヘッダの変換処理とは、SIPヘッダ毎(
図4の各行毎)に行われ、全てのSIPヘッダについて終了するまで繰り返される(ステップS728のNo)。全てのSIPヘッダについての変換処理が終了する(ステップS728のYes)と、そのSIPメソッドは変換後のSIPメソッドとして送信先のSIPサーバに送信される(ステップS729)。次のSIPメソッドがあれば、そのSIPメソッドのSIPヘッダの差分検出処理と変換処理を、SIPメソッドが終了するまで繰り返す(ステップS730のNo)。
【0044】
このようにして変換したSIPメソッドの一例を
図7に示す。
図7(a)はゲートウェイ装置70が受信したSIPメソッドの一例を示す、
図7(b)は(a)のSIPヘッダを変換した後のSIPメソッドを示す。
【0045】
1行目のドメイン名「@abc.ne.jp」が、値変更処理によって「@ntt-west.ne.jp」に変換されている。9行目のAllowヘッダの「INVITE,ACK,BYE,CANCEL,PRACK,UPDATE,REFER,NOTIFY」が、値変更処理によって「INVITE,ACK,BYE,CANCEL,PRACK,UPDATE」に変換されている。13行目のP-Prefered-Identityヘッダが削除処理によって削除されている。また、最後の行に追加処理によってMin-SEヘッダが追加されている。このように変換されたSIPメソッドは、送信先のSIPサーバで処理することができる。
【0046】
これまでに説明したSIPメソッドの変換処理は、IP電話網の仕様上利用が可能なSIPメソッドであることが前提である。一方、IP電話網の仕様上利用できないSIPメソッドが存在する。例えばREFERメソッド(保留転送動作)はIP電話網を通過することができない。内線電話システムの全ての機能をクラウド化するためには、IP電話網で利用を許容されていないSIPメソッドも通過させる必要がある。
【0047】
次に、IP電話網で利用を許容されていないSIPメソッドを通過させることができるゲートウェイ装置80の動作を説明する。
図8に、ゲートウェイ装置80の機能構成例を示す。ゲートウェイ装置80は、ゲートウェイ装置70に対して非許容メソッド通過部81を備える点で異なる。
図9に、非許容メソッド通過部81の動作フローを示す。
【0048】
非許容メソッド通過部81は、SIP端末10からSIPメソッドを受信する(ステップS810)。そして、受信したSIPメソッドがIP電話網40を通過することが許容されているSIPメソッドであるか否かを判定する(ステップS811)。判定は、非許容メソッド通過部81の内部に備えた非透過メソッド設定ファイル81aを参照して行う。非透過メソッド設定ファイル81aには、IP電話網で利用を許容されていないSIPメソッドであるREFERメソッドやNOTIFYメソッド(保留転送動作の終了通知)が設定されている。その設定は、予め例えばシステム管理者が行う。
【0049】
受信したSIPメソッドがIP電話網40を通過できるSIPメソッドの場合(ステップS811のYes)は、ヘッダ差分検出部71とヘッダ変換部72の動作を開始させる(ステップS812)。この場合のゲートウェイ装置80は、
図6で説明した処理を行う。
【0050】
受信したSIPメソッドがIP電話網40を通過できないSIPメソッド(例えばREFERメソッド)の場合(ステップS811のNo)、非許容メソッド通過部81は、SIPメソッドの送信先である交換機側ゲートウェイ装置50に対してTCPコネクションによるトンネル接続を指示する(ステップS813)。そして、交換機側ゲートウェイ装置50との間でTCPコネクションによるトンネル接続を形成する(ステップS814)。
【0051】
非許容メソッド通過部81は、形成したトンネル接続を通してREFERメソッドを交換機側ゲートウェイ装置50に送信する(ステップS815)。このようにIP電話網40を通過できないSIPメソッドの場合は、ユーザ側ゲートウェイ装置30と交換機側ゲートウェイ装置50との間を直接接続して通信することができるTCPコネクションによるトンネル接続を形成する。そのトンネル接続を用いることで、非許容のSIPメソッドを交換機側ゲートウェイ装置50に送信することができる。
【0052】
次に、交換機側ゲートウェイ装置80の非許容メソッド通過部81の動作を
図10を参照して説明する。交換機側ゲートウェイ装置80の非許容メソッド通過部81は、ユーザ側ゲートウェイ装置30から送信されて来る信号を受信する(ステップS816)。
【0053】
交換機側ゲートウェイ装置50の非許容メソッド通過部81は、受信した信号が、SIPメソッドであるのかトンネル接続の指示であるのかを判定する(ステップS817)。トンネル接続の指示である場合、非許容メソッド通過部81はユーザ側ゲートウェイ装置30との間でTCPコネクションを接続する(ステップS818)。そして、接続したTCPコネクションを経由してIP電話網40を通過できないSIPメソッドを受信する(ステップS819)。
【0054】
非許容メソッド通過部81は、受信した信号がSIPメソッドである場合(ステップS817のメソッド)、その受信したSIPメソッドがTCPコネクションによるトンネル接続を介して入力されたのか否かを判定する(ステップS821)。TCPコネクション経由の場合は、SIPメソッドに添付されているTCPヘッダを外す処理を行う(ステップS820)。TCPコネクション経由でない場合は、ヘッダ差分検出部71とヘッダ変換部72の動作を開始させる(ステップS822)。
【0055】
このように交換機側ゲートウェイ装置50の非許容メソッド通過部81が動作することで、TCPコネクション経由で受信したSIPメソッドを、SIPによって処理することが可能になる。なお、分かり易くする目的で、ユーザ側ゲートウェイ装置30の非許容メソッド通過部81と、交換機側ゲートウェイ装置50の非許容メソッド通過部81の動作フローを分けて説明したが、
図9と
図10に示した動作フローは一本化することが可能である。つまり、上記の様にユーザ側ゲートウェイ装置30と交換機側ゲートウェイ装置50とは、同じ機能構成を持つゲートウェイ装置80で実現することが可能である。
【0056】
〔保留転送動作〕
図2と
図3に示した動作シーケンス図において、内線番号1001と内線番号1002との通話回線が確立(ステップS46)されるまでの動作を説明した。次に、
図11と
図12を参照して内線番号1001と内線番号1002とが通話中に、内線番号1001のユーザがSIP端末10の保留転送ボタンを押して、内線番号1002と内線番号1003との通話に切り替える要求をした場合の動作を説明する。なお、これから説明する保留転送動作は、説明済みのSIPヘッダの差分検出処理と変換処理とが行われることを前提としたものであり、
図11と
図12においてユーザ側ゲートウェイ装置30と交換機側ゲートウェイ装置50が行うそれらの処理ステップの表記は省略する。
【0057】
内線番号1001と内線番号1002とが通話中に、保留転送ボタンが押されると内線番号1001の端末からユーザ側ゲートウェイ装置30にSIPメソッドのREFERメソッドが送信される(ステップS47)。ユーザ側ゲートウェイ装置30は、その応答としてREFERレスポンスを内線番号1001の端末に返す(ステップS48)。
【0058】
ユーザ側ゲートウェイ装置30は、REFERメソッドがIP電話網40において許容されていないのでIP電話網SIPサーバ41に対してセッション情報の更新(UPDATEリクエスト)を要求する(ステップS49)。セッション情報の更新とは、ここではUPDATEリクエストによるTCPコネクションによるトンネル接続を要求することである。
【0059】
IP電話網SIPサーバ41はルーティングを決定(ステップS50)し、接続先(交換機側ゲートウェイ装置50)にTCPコネクションによるトンネル接続要求を転送する(ステップS51)。交換機側ゲートウェイ装置50は、TCPコネクションによるトンネル接続要求の応答としてUPDATEレスポンスをユーザ側ゲートウェイ装置30に返す(ステップS52)。
【0060】
UPDATEレスポンスがユーザ側ゲートウェイ装置30に返ると、ユーザ側ゲートウェイ装置30と交換機側ゲートウェイ装置50とがTCPコネクションによるトンネル接続で接続される(ステップS53、S54)。ユーザ側ゲートウェイ装置30は、そのTCPコネクションによるトンネル接続を介してSIP端末10から送信されて来たREFERメソッドにTCPヘッダを添付して送信する(ステップS55)。
【0061】
REFERメソッドを受信した交換機側ゲートウェイ装置50は、添付されたTCPヘッダを削除したREFERメソッドを構内電話交換SIPサーバ60に送信する(ステップS56)。REFERメソッドを受信した構内電話交換SIPサーバ60は、REFERレスポンスを交換機側ゲートウェイ装置50に返す(ステップS57)。
【0062】
構内電話交換SIPサーバ60は、REFERメソッドを受信した応答として転送状態通知のNOTIFYリクエスト(NOTIFYメソッド)を交換機側ゲートウェイ装置50に送信する(ステップS58)。交換機側ゲートウェイ装置50は、確立済みのトンネル接続を介してTCPヘッダを添付したIP電話網40において許容されていないNOTIFYメソッドをユーザ側ゲートウェイ装置30に送信する(ステップS59)。
【0063】
ユーザ側ゲートウェイ装置30は、受信したNOTIFYメソッドを内線番号1001の端末に送信する(ステップS60)。NOTIFYメソッドを受信した内線番号1001の端末は、その応答としてNOTIFYレスポンスをユーザ側ゲートウェイ装置30に返す(ステップS61)。NOTIFYレスポンスをユーザ側ゲートウェイ装置30が受信すると、内線番号1001の端末と内線番号1002の端末との間の通話は保留されその間の通話音声は途切れる(ステップS62)。
【0064】
その後、内線番号1001の端末を操作するユーザは、転送先の内線番号1003の端末を呼び出す(ステップS63)。内線番号1001の端末からの接続要求(INVITEメソッド)は、ユーザ側ゲートウェイ装置30、IP電話網40(IP電話網SIPサーバ41)、交換機側ゲートウェイ装置50、構内電話交換SIPサーバ60、の経路を往復して内線番号1003の端末に送信される(ステップS63〜S70)。ここでSIPレスポンスコードを含む詳細な動作シーケンスの表記は省略している。
【0065】
内線番号1003の端末が内線番号1001からの接続要求を受信すると、内線番号1001と内線番号1003との間で通話が可能になる(ステップS71)。その後、内線番号1001の端末を操作するユーザが受話器を置くと、内線番号1001の端末からBYEメソッド(通話の終了)が送信される(ステップS72)。BYEメソッドが構内電話交換SIPサーバ60に到達(ステップS72〜S75)すると、構内電話交換SIPサーバ60は、その応答として転送状態通知のNOTIFYリクエスト(NOTIFYメソッド)を交換機側ゲートウェイ装置50に送信する(ステップS76)。
【0066】
交換機側ゲートウェイ装置50は、確立済みのトンネル接続を介してTCPヘッダを添付したNOTIFYメソッドをユーザ側ゲートウェイ装置30に送信する(ステップS77)。ユーザ側ゲートウェイ装置30は、NOTIFYメソッドを内線番号1002の端末に送信する(ステップS78)。
【0067】
NOTIFYメソッドを受信した内線番号1002の端末は、その応答(NOTIFYレスポンス)をユーザ側ゲートウェイ装置30に返す(ステップS79)。NOTIFYレスポンスは、ユーザ側ゲートウェイ装置30と交換機側ゲートウェイ装置50との間に形成済みのTCPコネクションによるトンネル接続を経由して交換機側ゲートウェイ装置50に送信される(ステップS80)。
【0068】
交換機側ゲートウェイ装置50は、トンネル接続を経由して受信したNOTIFYレスポンスを構内電話交換SIPサーバ60に送信する(ステップS81)。構内電話交換SIPサーバ60がNOTIFYレスポンスを受信すると、内線番号1002の端末と内線番号1003の端末との間に回線が確立して通話が可能になり保留転送動作が終了する(ステップS82)。
【0069】
以上説明したように、IP電話網40を挟んで通信する2つのゲートウェイ装置の間にTCPコネクションによるトンネル接続を形成することでIP電話網40が許容していないSIPメソッドを送信することができる。その結果、IP電話網40が許容していない例えば保留転送機能等を含めた内線電話システムをクラウド化することができる。
【0070】
内線電話システムを本実施の形態を用いてクラウド化することで、ユーザにおいては、内線電話の運用を事業者に委託できるメリットが得られる。また、仕様を変更した場合でもユーザ側における新たな工事が不要である。また、事業者側においては、工事が不要なため、新しいサービスを早期に提供することが可能である。また、Web連携を活用することで多様なサービスを提供することができる。また、ユーザ側への無派遣工事化も可能にするメリットが得られる。
【0071】
なお、
図11と
図12を参照した説明では、内線番号1001の端末から内線番号1002の端末に至る往復の通信経路が同じ場合の例で説明を行ったが、往路と復路の通信経路は異なってもよい。
図13に、往路と復路の通信経路が異なる場合のクラウド交換機システム2の構成例を示す。
【0072】
クラウド交換機システム2は、ユーザ側ゲートウェイ装置30,31を2台備える点でクラウド交換機システム1と異なる。クラウド交換機システム2は、例えば同じ会社の異なる事業所間を一つの内線電話システムで結ぶ場合に用いられる。この場合は、往路と復路の通信経路が異なるので、交換機側ゲートウェイ装置50からユーザ側ゲートウェイ装置31に向けてNOTIFYリクエストを送信する際に、交換機側ゲートウェイ装置50とユーザ側ゲートウェイ装置31との間にTCPコネクションによるトンネル接続を形成する必要がある。その形成方法は、上記のステップS35〜ステップS40と同じステップを、交換機側ゲートウェイ装置50とユーザ側ゲートウェイ装置31との間で行えばよい。このように本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0073】
なお、上記装置における処理部をコンピュータによって実現する場合、各処理部が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記装置における処理部がコンピュータ上で実現される。
【0074】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記録装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としても良い。