(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転部材は、前記コイルハウジングに前記カム機構とは反対側で対向するフランジを有し、前記電磁コイルへの通電によって前記コイルハウジングに摩擦係合する摩擦係合面が前記フランジに形成された請求項1に記載のクラッチ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明を車両用の電磁クラッチに適用した第1の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1はハイブリッド車両を示す。
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、エンジン101と、第1のモータジェネレータMG1と、エンジン101及び第1のモータジェネレータMG1がそれぞれ連結された動力分配機構102と、駆動輪103に動力を出力するための出力ギヤ104と、出力ギヤ104に減速機構105を介して連結された第2のモータジェネレータMG2とを備えている。出力ギヤ104の動力は差動機構106を介して左右の駆動輪103に伝達される。
【0018】
エンジン101は、火花点火型の多気筒内燃機関として構成され、その動力は入力軸107を介して動力分配機構102に伝達される。入力軸107とエンジン101との間にはダンパ108が介在し、エンジン101のトルク変動はダンパ108にて吸収される。
【0019】
第1のモータジェネレータMG1は、固定部材としてのケーシング6に固定されたステータ109aと、このステータ109aの内側に同軸に配置されたロータ109bとを備えている。同様に、第2のモータジェネレータMG2は、ケーシング6に固定されたステータ110aと、このステータ110aの内側に同軸に配置されたロータ110bとを備えている。
【0020】
動力分配機構102は、相互に差動回転可能な3つの要素をもつシングルピニオン型の遊星歯車機構からなり、外歯車としてサンギヤS1と、このサンギヤS1に対して同軸に配置された内歯車としてのリングギヤR1と、これらギヤS1,R1に噛合するピニオンギヤP1を自転かつ公転可能に保持するキャリアC1とを備えている。
【0021】
この形態では、入力軸107がキャリアC1に、第1のモータジェネレータMG1が回転部材2を介してサンギヤS1に、また出力ギヤ104がリングギヤR1にそれぞれ連結されている。
【0022】
回転部材2は、第1のモータジェネレータMG1のロータ109bに連結され、全体が入力軸107を挿通させる中空部材によって形成されている。回転部材2の詳細については後述する。
【0023】
一方、減速機構105は、相互に差動回転可能な3つの要素をもち、第2のモータジェネレータMG2の回転を減速して出力ギヤ104に伝達するシングルピニオン型の遊星歯車機構からなり、外歯車としてのサンギヤS2と、このサンギヤS2に対して同軸に配置された内歯車としてのリングギヤR2と、これらギヤS2,R2に噛合するピニオンギヤP2を自転かつ公転可能に保持するキャリアC2とを備えている。
【0024】
この形態では、サンギヤS2が第2のモータジェネレータMG2に、またリングギヤR2が出力ギヤ104にそれぞれ連結され、キャリアC2がケーシング6に固定されている。これにより、第2のモータジェネレータMG2の回転が減速されるとともに、その動力が増幅されて出力ギヤ104に伝達される。
【0025】
ハイブリッド車両100には、車体に固定された非回転部材であるケーシング6に対して回転部材2を制動するためのブレーキ装置として機能する電磁クラッチ1が搭載されている。これにより、第1のモータジェネレータMG1を用いた電気的な無段変速を実現する無段変速モードと第1のモータジェネレータMG1を使用しない固定変速段を実現する固定変速モードとを選択的に実行することができる。
【0026】
(電磁クラッチの全体構成)
図2は電磁クラッチ1の駆動状態を示す。
図3は電磁クラッチ1の非駆動状態を示す。
図2及び
図3に示すように、電磁クラッチ1は、第1のモータジェネレータMG1のロータ109b(共に
図1に示す)と共に回転する回転部材2と、この回転部材2の回転軸線O上に配置された出力機構3と、この出力機構3の出力による作動によって回転部材2からの回転力を回転軸線O方向のカム推力に変換するカム機構4と、このカム機構4と回転部材2とを断続可能に連結するコイルハウジング5とから大略構成されている。
【0027】
(回転部材2の構成)
回転部材2は、前述したように、入力軸107(
図1に示す)を挿通させる中空の丸軸からなり、第1のモータジェネレータMG1のロータ109bに連結され、かつケーシング6にコントロールカム40(後述)及び軸受7を介して回転可能に支持され、全体が磁性材料によって形成されている。そして、回転部材2は、第1のモータジェネレータMG1の駆動によってロータ109bと共に回転するように構成されている。ケーシング6には、入力軸107を挿通させるシャフト挿通孔6aが設けられている。
【0028】
回転部材2には、その外周囲で復帰用スプリング8及び軸受9を各端面で支持する環状の支持部材10が配置されている。また、回転部材2には、その径方向に突出し、かつコイルハウジング5にカム機構4とは反対側で対向するフランジ11が一体に設けられている。
【0029】
復帰用スプリング8は、例えば皿ばねからなり、支持部材10とフランジ11との間に介在して回転部材2の外周囲に配置されている。そして、復帰用スプリング8は、フランジ11から離間する方向の復帰力をコイルハウジング5に付与するように構成されている。
【0030】
フランジ11は、出力機構3の電磁コイル30への通電によってコイルハウジング5に摩擦係合する摩擦係合面11aを有し、全体が略リング状の板部材によって形成されている。
【0031】
(出力機構3の構成)
出力機構3は、電磁力を発生させる電磁コイル30と、電磁コイル30を内部に収容するコイルハウジング5とを有し、回転部材2の外周囲に配置されている。
【0032】
そして、出力機構3は、電磁コイル30でフランジ11に対する押圧力P
1となる電磁力を発生させてコイルハウジング5に対する回転軸線O方向の移動力を出力するように構成されている。
【0033】
電磁コイル30は、フランジ11の摩擦係合面11aに対向し、コイルハウジング5のコイル収容部50a(後述)に収容されている。
【0034】
そして、電磁コイル30は、通電によってフランジ11及びコイルハウジング5等に跨って磁気回路Mを形成するように構成されている。電磁コイル30への電力供給は、パイロットカム41の貫通孔411c(共に後述)及びコイルハウジング5の貫通孔50d(後述)に嵌合する筒部材12に導線を挿通させて行われる。
【0035】
(カム機構4の構成)
カム機構4は、回転部材2に対して回転可能な固定用の第1のカム部材としてのコントロールカム40、このコントロールカム40に対向する可動用の第2のカム部材としてのパイロットカム41、及びこのパイロットカム41とコントロールカム40との間に介在する転動体としてのカムフォロア42を有し、回転部材2の外周囲に配置されている。
【0036】
そして、カム機構4は、電磁コイル30の通電状態において回転部材2の回転によって作動し、コントロールカム40とパイロットカム41との相対回転によりカム推力を発生させるように構成されている。
【0037】
コントロールカム40は、ケーシング6に回転不能に固定され、全体が回転部材2を挿通させる環状部材によって形成されている。
【0038】
コントロールカム40には、カムフォロア42側(出力機構3側)に開口するカム溝40aが設けられている。カム溝40aは、コントロールカム40の円周方向に沿って軸線方向の深さが変化する凹溝によって形成されている。
【0039】
パイロットカム41は、ベース部410及びカム部411を有し、コイルハウジング5に相対回転不能かつ相対移動可能に連結されている。
【0040】
そして、パイロットカム41は、カム機構4の作動によるカム推力によってコイルハウジング5側に移動し、カム部411の摩擦面411aがコイルハウジング5の摩擦面50cに押圧力P
2で摩擦係合するように構成されている。
【0041】
ベース部410は、ストレートスプライン嵌合部410aを外周面に有し、パイロットカム41の内周側に配置され、全体が回転部材2を挿通させる筒状部材によって形成されている。
【0042】
カム部411は、コイルハウジング5側を指向する摩擦面411a、この摩擦面411aとは反対側の端面に開口するカム溝411b、及びパイロットカム41の厚さ方向に開口する貫通孔411cを有し、パイロットカム41の外周側に配置され、全体が回転部材2を挿通させる環状部材によって形成されている。カム溝411bは、パイロットカム41の円周方向に沿って軸線方向の深さが変化する凹溝によって形成されている。
【0043】
カムフォロア42は、球状部材からなり、コントロールカム40のカム溝40aとパイロットカム41におけるカム部411のカム溝411bとの間に介在して転動可能に配置され、かつリテーナ13によって保持されている。リテーナ13には、カムフォロア42を転動可能に保持するボール保持孔13aが設けられている。
【0044】
(コイルハウジング5の構成)
コイルハウジング5は、ヨークとしてのコイルホルダ50及び内フランジ51を有し、フランジ11とパイロットカム41との間に介在してカム機構4の軸線上に回転可能に配置され、かつパイロットカム41のベース部410に相対回転不能かつ相対移動可能に連結され、全体が磁性材料によって形成されている。
【0045】
そして、コイルハウジング5は、電磁コイル30の通電時に回転部材2の回転力をパイロットカム41に伝達するとともに、カム機構4の作動時にそのカム推力によってパイロットカム41と摩擦係合する連結部材によって形成されている。すなわち、コイルハウジング5は、電磁コイル30への通電によって回転部材2とカム機構4とをトルク伝達可能に接続し、電磁コイル30への通電停止によって回転部材2とカム機構4との間のトルク伝達を遮断するトルク断続部材として機能するように構成されている。
【0046】
また、コイルホルダ50は、フランジ11側に開口する環状のコイル収容部50aを有し、コイルハウジング5の外周側に配置されている。そして、コイルホルダ50は、コイル収容部50aに電磁コイル30を収容するように構成されている。
【0047】
コイルホルダ50には、フランジ11の摩擦係合面11aに対向する摩擦係合面50b、パイロットカム41におけるカム部411の摩擦係合面411aに対向する摩擦係合面50c、及びカム部411の貫通孔411cに対応する貫通孔50dが設けられている。また、コイルホルダ50には、パイロットカム41におけるベース部410のストレートスプライン嵌合部410aに嵌合するストレートスプライン嵌合部50eが設けられている。
【0048】
内フランジ51は、コイルハウジング5の内周側に配置され、かつコイルホルダ50の内周面に固定されている。
【0049】
(電磁クラッチ1の動作)
次に、本実施の形態に示す電磁クラッチの動作につき、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0050】
図3において、第1のモータジェネレータMG1(
図1に示す)を駆動すると、第1のモータジェネレータMG1の回転駆動力が回転部材2に伝達され、回転部材2が回転駆動される。
【0051】
通常、第1のモータジェネレータMG1の始動時には、出力機構3の電磁コイル30が非通電状態にあるため、電磁コイル30を基点とした磁気回路Mが形成されず、コイルハウジング5がフランジ11側に吸引されることがない。
【0052】
このため、出力機構3においてそのクラッチ力となる押圧力P
1が発生せず、フランジ11の摩擦係合面11aとコイルハウジング5の摩擦係合面50bとが摩擦係合せず、電磁クラッチ1による制動力は回転部材2に伝達されない。
【0053】
この場合、コイルハウジング5が復帰用スプリング8のばね力によってフランジ11から離間し、回転部材2とカム機構4との間のトルク伝達が遮断される。
【0054】
従って、本実施の形態においては、電磁コイル30の非通電時にパイロットカム41とコントロールカム40との相対回転が規制され、カム機構4の誤作動を抑制することができる。
【0055】
一方、
図2に示すように、第1のモータジェネレータMG1の駆動時(回転部材2の回転時)に電磁コイル30が通電されると、すなわち出力機構3が移動力を出力すると、電磁コイル30を基点とした磁気回路Mが形成され、コイルハウジング5が初期位置からフランジ11側に回転軸線Oに沿って移動する。
【0056】
そして、この移動力により、コイルハウジング5の摩擦係合面50bがフランジ11の摩擦係合面11aに押圧力P
1をもって摩擦係合する。これにより回転部材2の回転力がコイルハウジング5を介してパイロットカム41に伝達可能な状態となる。この出力機構3の出力状態における回転部材2の回転に伴い、パイロットカム41とコントロールカム40とが相対回転し、カム機構4が作動する。
【0057】
カム機構4が作動すると、その作動によるカム作用によってパイロットカム41におけるカム部411の摩擦係合面411aがコイルハウジング5の摩擦係合面50cに押圧力P
2(P
1<P
2)をもって摩擦係合し、またコイルハウジング5の摩擦係合面50bがフランジ11の摩擦係合面11aに押圧力(P
1+P
2)をもってカム機構4の作動前の状態よりも強固に摩擦係合する。この摩擦係合の摩擦力は、回転部材2をケーシング6に対して制動する制動力となる。
【0058】
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0059】
電磁クラッチ1の非駆動状態において、カム機構4は、回転部材2側ではなく非回転部材であるケーシング6側に連結されているので、回転部材2が静止状態から急激に回転を開始しても、あるいは回転部材2が大きな加速度又は減速度で回転速度を変化させても、パイロットカム41等のカム機構4を構成する部材の慣性による追随遅れによってカム機構4の作動状態が影響を受けることがない。このため、例えば復帰用スプリング8のばね力を従来(カム機構が回転部材側に連結されている場合)よりも小さくすることも可能となる。
【0060】
[参考例1]
次に、本発明の参考例1に係る電磁クラッチにつき、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は電磁クラッチの駆動状態を示す。
図5は電磁クラッチの非駆動状態を示す。
図4及び
図5において、
図2及び
図3と同一又は同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
図4及び
図5に示すように、本発明の参考例1に係る電磁クラッチ61は、コイルハウジング5は回転部材2に相対回転不能に配置され、出力機構3は電磁コイル30が磁性材料からなるパイロットカム41に取り付けられている点に特徴がある。
【0062】
このため、コイルホルダ50は、コイル収容部50aがカム機構4側に開口して設けられている。内フランジ51は、その内周面にストレートスプライン嵌合部51aが設けられている。
【0063】
また、回転部材2の外周面には、内フランジ51のストレートスプライン嵌合部51aに対応するストレートスプライン嵌合部2aが設けられている。
【0064】
なお、
図4及び
図5において、符号14は軸受9を支持する支持部材である。
【0065】
このように構成された電磁クラッチ61においては、第1の実施の形態と同様に、第1のモータジェネレータMG1(
図1に示す)を駆動すると、第1のモータジェネレータMG1の回転駆動力が回転部材2に伝達され、回転部材2が回転駆動される。
【0066】
通常、第1のモータジェネレータMG1の始動時には、出力機構3の電磁コイル30が非通電状態にあるため、電磁コイル30を基点とした磁気回路Mが形成されず、パイロットカム41がコイルハウジング5側に吸引されることがない。
【0067】
このため、出力機構3においてそのクラッチ力となる押圧力P
1が発生せず、パイロットカム41の摩擦係合面411aとコイルハウジング5の摩擦係合面50cとが摩擦係合せず、電磁クラッチ1による制動力は回転部材2に伝達されない。
【0068】
この場合、パイロットカム41が復帰用スプリング8のばね力によってコイルハウジング5から離間し、回転部材2とカム機構4との間のトルク伝達が遮断される。
【0069】
従って、参考例1においては、電磁コイル30の非通電時にパイロットカム41とコントロールカム40との相対回転が規制され、カム機構4の誤作動を抑制することができる。
【0070】
一方、第1のモータジェネレータMG1の駆動時(回転部材2の回転時)に電磁コイル30が通電されると、電磁コイル30を基点とした磁気回路Mが形成され、パイロットカム41が初期位置からコイルハウジング5側に移動する。
【0071】
このため、パイロットカム41の摩擦係合面411aがコイルハウジング5の摩擦係合面50cに押圧力P
1をもって摩擦係合し、これに伴いカム機構4が作動する。
【0072】
カム機構4が作動すると、その作動によるカム作用によってパイロットカム41の摩擦係合面411aがコイルハウジング5の摩擦係合面50cに押圧力P
2(P
1<P
2)をもってカム機構4の作動前の状態よりも強固に摩擦係合し、電磁クラッチ1による制動力が回転部材2に伝達される。
【0073】
[参考例1の効果]
以上説明した参考例1によれば、第1の実施の形態の効果と同様の効果が得られる。すなわち、電磁クラッチ61の非駆動状態において、カム機構4は非回転部材であるケーシング6側に連結されているので、回転部材2が静止状態から急激に回転を開始しても、あるいは回転部材2が大きな加速度又は減速度で回転速度を変化させても、パイロットカム41等のカム機構4を構成する部材の慣性による追随遅れによってカム機構4の作動状態が影響を受けることがない。
【0074】
[参考例2]
次に、本発明の参考例2に係る電磁クラッチにつき、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は電磁クラッチの駆動状態を示す。
図7は電磁クラッチの非駆動状態を示す。
図6及び
図7において、
図2〜
図4と同一又は同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0075】
図6及び
図7に示すように、本発明の参考例2に係る電磁クラッチ71は、コイルハウジング5は、回転部材2に対して回転不能な回転用のハウジングエレメント72、及び回転部材2に対して回転可能な固定用のハウジングエレメント73を有する点に特徴がある。
【0076】
このため、回転用のハウジングエレメント72は、コイルホルダ50及び内フランジ51を有し、コイルホルダ50のコイル収容部50aがカム機構4とは反対側に開口して設けられている。固定用のハウジングエレメント73は、コイル収容部50aの開口部を閉塞し、ケーシング6にボルト15によって固定されている。
【0077】
このように構成された電磁クラッチ71においては、その動作が参考例1に示す電磁クラッチ61の動作と略同様に行われるため、その説明は省略する。
【0078】
[参考例2の効果]
以上説明した参考例2によれば、第1の実施の形態の効果と同様の効果が得られる。
【0079】
[参考例3]
次に、本発明の参考例3に係る電磁クラッチにつき、
図8〜
図10を用いて説明する。
図8は電磁クラッチの駆動状態を示す。
図9は電磁クラッチの非駆動状態を示す。
図10は、パイロットカム41の平面図を示す。
図8〜
図10において、
図2〜
図4と同一又は同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0080】
図8〜
図10に示すように、本発明の参考例3に係る電磁クラッチ81は、コイルハウジング5がカム機構4側に開口して回転部材2に相対回転不能に配置され、パイロットカム41に円弧状の貫通孔411cが形成され、かつ電磁コイル30がパイロットカム41の貫通孔411cを介してケーシング6に回転不能に連結されている点に特徴がある。
【0081】
コイルハウジング5は、コイルホルダ50及び内フランジ51を一体に有し、コイルホルダ50のコイル収容部50aがカム機構4側に開口して設けられている。内フランジ51は、回転部材2に対する軸方向移動が規制され、かつ回転部材2に相対回転不能に連結されている。
【0082】
電磁コイル30は、支持部材60により支持されている。支持部材60は、パイロットカム41の貫通孔411cを挿通し、電磁コイル30をその周方向の一箇所で支持している。支持部材60の電磁コイル30側の端部は、カバー部材31により覆われている。このカバー部材31は、電磁コイル30に電流を供給する導線32を挿通させ、パイロットカム41の貫通孔411cの内部にあたる領域に設けられている。
【0083】
支持部材60は、ケーシング6の内面に沿うように屈曲し、ケーシング6に螺着したボルト16によってケーシング6に固定されている。
【0084】
図10に示すように、パイロットカム41の貫通孔411cは、回転部材2を挿通させる貫通孔411dの中心と同心の円弧状であり、カム溝411bの外周側に形成されている。そして、その周方向の角度範囲は、一つのカム溝411bをカムフォロア42が転動する角度範囲よりも大きく形成されている。
【0085】
このように構成された電磁クラッチ81においては、その動作が参考例1に示す電磁クラッチ61の動作と略同様に行われるため、その説明は省略する。
【0086】
[参考例3の効果]
以上説明した参考例3によれば、第1の実施の形態の効果と同様の効果が得られる。
【0087】
[参考例3の変形例]
次に、本発明の参考例3の変形例に係る電磁クラッチにつき、
図11を用いて説明する。
図11において、
図8及び
図9と同一又は同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0088】
参考例3の変形例に係る電磁クラッチ81Aは、コントロールカム40が回転軸線Oの径方向に突出した突出部401を有し、保持部材31を支持する支持部材60が、コントロールカム40の突出部401に回転不能に連結されている構成が参考例3とは異なる。
【0089】
支持部材60は、コントロールカム40の突出部401に螺着したボルト17によって固定され、コントロールカム40は、突出部401の先端部にて、ケーシング6に螺着したボルト18によって固定されている。
【0090】
この構成によっても、参考例3と同様の作用及び効果が得られる。
【0091】
以上、本発明の電磁クラッチを上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0092】
上記実施の形態では、本発明を電磁コイルの電磁力によってカム機構を作動させる電磁クラッチに適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば油圧シリンダ又はクラッチ制御用のモータの出力によってカム機構を作動させるようにしてもよい。