(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の椎体スペーサを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の椎体スペーサの第1実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の椎体スペーサを構成するブロック体の第1実施形態を示す平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)、
図2および
図3は、それぞれ、本発明の椎体スペーサの第1実施形態の使用状態を示す図である。
【0029】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、椎体スペーサを症例(患者)の椎体と椎体との間に挿入した状態を基本として、その方向を特定する。
【0030】
具体的には、症例の腹側(すなわち、
図1(a)、
図1(b)および
図2(b)中の右側、
図1(c)および
図2(a)中の紙面手前側、
図3中の下側)を「前」、症例の背側(すなわち、
図1(a)、
図1(b)および
図2(b)中の左側、
図1(c)および
図2(a)中の紙面奥側、
図3中の上側)を「後」と言う。また、症例の頭側(すなわち、
図1(b)および
図2中の上側、
図1(a)および
図3中の紙面手前側、
図1(c)中の左側)を「上」、症例の脚側(すなわち、
図1(b)および
図2中の下側、
図1(a)および
図3中の紙面奥側、
図1(c)中の右側)を「下」と言う。なお、
図4〜
図8についても、
図1〜
図3と同様にして、椎体スペーサの方向を特定する。
【0031】
図2に示すように、椎体スペーサ1は、椎間板が摘出された後の上側の椎体101と下側の椎体102とを固定する際に、椎体101と椎体102との間(以下、「椎間」と言う。)に挿入される。椎体スペーサ1が椎間に挿入された状態(以下、「挿入状態」とも言う。)で、椎体101と椎体102との間隔(離間距離)が適正に維持(保持)される。
【0032】
本実施形態では、
図2(a)および
図3に示すように、椎体スペーサ1(以下、単に「スペーサ1」と言うこともある。)は、一対の長尺状をなすブロック体2、2で構成されている。各ブロック体2は、互いに、ほぼ同一形状(構成)とされている。
【0033】
このように、各ブロック体2は、ほぼ同一形状とされているため、以下では、一方のブロック体2について代表に説明する。
【0034】
図1に示すように、ブロック体2は、第1の面31と、第2の面32と、第3の面33と、第4の面34と、第5の面35と、第6の面36とを有する複数の面で規定される多面体で構成されている。
【0035】
図3に示すように、このブロック体2を椎間に挿入した状態(挿入状態)で、第1の面31が椎体101と当接する当接面を構成し、第2の面32が椎体102と当接する当接面を構成する。また、挿入状態で、第3の面33により、椎間に内側の空間103が画成され、第4の面34により、外側の空間103が画成される。
【0036】
本実施形態では、第3の面33が湾曲凹面を構成し、第4の面34が湾曲凸面を構成する。これにより、ブロック体2を、椎体(椎骨)の形状に対応するように、椎間により容易に挿入することができる。
【0037】
また、第1の面31、第2の面32、第5の面35および第6の面36は、それぞれ、ほぼ平面(平坦面)を構成する。これらのうち、特に、第1の面31および第2の面32が平面(平坦面)を構成することにより、ブロック体2を椎体101、102に確実に当接させ得る。
【0038】
さらに、第1の面31と第2の面32とは、ほぼ等しい長さを有し、第3の面33と第4の面34とは、ほぼ等しい長さを有し、第5の面35と第6の面36とは、ほぼ等しい長さを有する。
【0039】
すなわち、ブロック体2は、直方体を、第3の面33が凹没し、第4の面34が突出するように、その長手方向に沿って湾曲させたような形状をなしている。
【0040】
なお、各面同士が接することで形成される角部付近は、それぞれ、面取りがなされている。これにより、ブロック体2の欠け等の破損が防止されるとともに、椎間へのブロック体2の挿入を、椎体101、102に引っかけることなく、容易に行うことができる。
【0041】
このようなブロック体2の前後方向の長さ(
図1中のL
1)、左右方向の長さ(
図1中のL
2)および上下方向の長さ(
図1中のL
3)等の各寸法は、頸椎、腰椎のような椎体の種類や、症例に応じて適宜決定されるが、概ね、以下に示すような範囲内に設定される。
【0042】
すなわち、前後方向の長さ(
図1中のL
1)は、好ましくは6〜25mm程度、より好ましくは8〜22mm程度に設定される。
【0043】
また、左右方向の長さ(
図1中のL
2)は、好ましくは4〜25mm程度、より好ましくは10〜25mm程度、さらに好ましくは16〜21mm程度に設定される。
【0044】
さらに、上下方向の長さ(
図1中のL
3)は、好ましくは6〜15mm程度、より好ましくは9〜12mm程度に設定される。
【0045】
さて、本発明では、かかる構成のブロック体2は、枠状の緻密部25と、この緻密部25の内側に設けられ、少なくとも表面の空孔率が、緻密部25の空孔率よりも大きい多孔部21とを有する。すなわち、ブロック体2は、多孔部21と、この多孔部21の外周側に設けられた緻密部25とを有する。これにより、ブロック体2は、挿入状態において、応力が付与されたとしても、緻密部25によりその形状を維持することができる。このため、椎間を適正な大きさに維持しつつ、多孔部21の破損を的確に防止または抑制することができる。また、多孔部21の椎体101、102との早期の骨癒合を生じさせ得る。
【0046】
本実施形態では、緻密部25は、
図1(a)に示すようなブロック体2の平面視形状に対応する形状を備える下側枠状部(第1の枠状部)251および上側枠状部(第2の枠状部)252と、これらの枠状部251、252を連結する複数の連結部253とを有する。
【0047】
これにより、ブロック体2の全体形状を規定する緻密部25が形成される。換言すれば、ブロック体2は、複数の角部を備える多孔部21と、多孔部21の各角部に沿って(を取り囲むように)形成された緻密部25とを有する。挿入状態では、下側枠状部251が椎体(一方の椎体)102に当接し、上側枠状部252が椎体(他方の椎体)101に当接する。
【0048】
なお、本実施形態では、複数の連結部253は、枠状部251、252の各角部にそれぞれ設けられた4つの連結部と、枠状部251、252の中央部にそれぞれ設けられた2つの連結部とを有している。かかる連結部253は、下側枠状部251と上側枠状部252とを支える支柱としての機能を発揮する。このため、挿入状態おいて、ブロック体2に応力が付与された際に、下側枠状部251と上側枠状部252とが接近するのを的確に防止または抑制することができる。なお、緻密部25の空孔率は、多孔部21よりも小さくなっていればよく、特に限定されるものではない。具体的には、緻密部25の空孔率は、3〜50%程度であるのが好ましく、10〜40%程度であるのがより好ましく、15〜35%程度であるのがさらに好ましい。ただし、緻密部25の空孔率は実質0%であっても良い。
【0049】
なお、本明細書中では、上記のように、連結部253に支柱としての機能を発揮させて、下側枠状部251と上側枠状部252とを連結部253で支える構造のことを「支柱構造」と言うこととする。
【0050】
多孔部21は、枠状の緻密部25内に装填されたような構成となっており、ブロック体2の各面31〜36において、緻密部25の内側に露出する。
【0051】
この多孔部21は、少なくとも表面の空孔率が、緻密部25の空孔率よりも大きくなっていればよい。したがって、多孔部21は、その内部に緻密な部分を有する構成であってもよいが、その全体が多孔体で構成されているのが好ましい。これにより、多孔部21と椎体101、102との骨癒合を早期に生じさせ得る。このため、椎間にブロック体2が確実に固定される。
【0052】
多孔部21の空孔率は、緻密部25の空孔率よりも大きくなっていればよく、特に限定されるものではない。具体的には、多孔部21の空孔率は、20〜95%程度であるのが好ましく、50〜85%程度であるのがより好ましく、55〜85%程度であるのがさらに好ましい。これにより、多孔部21と椎体101、102との骨癒合をより早期に生じさせ得る。また、多孔部21の空孔率を、かかる範囲内とした場合でも、本発明では、ブロック体2が多孔部21に加えて緻密部25を有するので、椎間に挿入された状態において応力が付与された際の、ブロック体2の破損をより的確に防止または抑制することができる。なお、多孔部21の空孔率が55%以上であると、多孔部21内には、空孔同士が互いに連結した連通孔が形成されやすい。
【0053】
また、多孔部21には、その連通孔(空孔)の内面に、骨誘導因子が担持されているのが好ましい。これにより、多孔部21と椎体101、102との骨癒合をより早期に生じさせ得る。
【0054】
骨誘導因子としては、未分化間葉系細胞に対して骨芽細胞への分化を誘導することにより骨形成を促す活性を有するものであればよく、特に限定されない。具体的には、骨誘導因子には、例えば、骨形態形成タンパク質(BMP)が好適に用いられる。
【0055】
また、BMPとしては、例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−12(以上、ホモダイマー)、もしくは、これらのBMPのヘテロダイマーまたは改変体等が挙げられる。
【0056】
また、本発明では、ブロック体2は、後述するような製造方法を用いて製造することができる。かかる製造方法によれば、緻密部25と多孔部21とを一体的に形成することができる。このようなブロック体2は、挿入状態において応力が付与された際に、緻密部25または多孔部21に選択的に応力が付与されるのを的確に防止することができる。また、この場合、各面31、32、33、34が平坦面、すなわち、緻密部25と多孔部21との間に段差のない面を構成する。これにより、特に、第1の面31および第2の面32において、多孔部21を椎体101、102に密着させることができる。このため、多孔部21と椎体101、102との骨癒合を早期に生じさせ得る。
【0057】
本発明では、このようなブロック体2の構成材料、すなわち、緻密部25および多孔部21の構成材料としては、主にチタンまたはチタン合金のチタン系材料が用いられる。
【0058】
チタン系材料は、生体適合性が高く、また、優れた強度を有することから、ブロック体2の構成材料として好適に用いられる。なお、チタン系材料の中でも、チタン合金が特に優れた強度を有しているため、ブロック体2の構成部材のうち、優れた強度が求められる緻密部25の構成材料として好適に用いられる。また、チタン合金としては、特に限定されないが、Tiを主成分とし、Al、Sn、Cr、Zr、Mo、Ni、Pd、Ta、Nb、V、Pt等が添加された合金が挙げられる。かかる合金の具体例としては、例えば、Ti−6Al−4Vや、Ti−29Nb−13Ta−4.6Zr等が挙げられる。
【0059】
以上説明したようなブロック体2は、一対で椎体101と椎体102との間(椎間)に左右に並べて挿入される。
【0060】
このように、椎間へブロック体2を挿入することにより、椎間には、このブロック体2が存在しない領域に空間103が形成される。この空間103に、充填物としての移植骨(特に、自家骨)を充填することにより、ブロック体2および移植骨を介した椎体101と椎体102との骨融合をより確実かつ早期に生じさせ得る。
【0061】
また、スペーサ1は、一対のブロック体2、2で構成されるため、各ブロック体2の配置を変えること、すなわち、ブロック体2の前端または後端同士を離間および/または接近させた状態で配置することにより、症例に応じた、適切な治療が可能となる。
以上説明したようなスペーサ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0062】
<1> まず、脱脂および焼結が施されることにより緻密部25となる枠状緻密体を用意する。
かかる枠状緻密体は、例えば、チタン系材料で構成されるシート状緻密体を用意し、このシート状緻密体を、レーザーカット、ウォータージェット、放電ワイヤー加工、超音波切断のような薄片切断加工法を用いて、所望の形状および大きさに加工することで容易に得ることができる。あるいは、枠状緻密体は、空孔率がより小さくなるように濃度などが調整されたスラリーを用いて、後述の多孔部21となる加工成形体と同様にして用意することができる。さらには、枠状緻密体は、組成や発泡剤添加量(0%〜)が調整されたスラリーを用いて、後述の多孔部21となる加工成形体と同様にして用意することができる。
【0063】
<2> 次に、脱脂および焼結が施されることにより多孔部21となる加工成形体を用意する。
<2−1> まず、金属粉と、発泡剤とを含有するスラリーを用意する。
金属粉としては、前述したチタン系材料またはその酸化物で構成される粉末が用いられる。
【0064】
また、金属粉の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.5〜50μm程度であるのが好ましく、3〜30μm程度であるのがより好ましい。かかる大きさの金属粉を用いることにより、得られる多孔部21の空孔率や空孔の平均孔径を所望のものに設定することが可能となる。なお、金属粉の平均粒径は、レーザー回折法等により測定することができる。
【0065】
スラリー中における金属粉の含有量は、30〜80質量%程度であるのが好ましく、40〜70質量%であるのがより好ましい。かかる範囲内に金属粉の含有量を設定することにより、得られる多孔部21の空孔率や空孔の平均孔径をより確実に所望のものに設定することが可能となる。
【0066】
また、発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、揮発性の有機溶剤等が挙げられる。揮発性の有機溶剤としては、炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤が好ましく用いられ、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンがより好ましく用いられる。このような発泡剤を用いることにより、空孔率の高い多孔部21を容易に得ることができる。
【0067】
かかる構成のスラリーは、好ましくは、水溶性樹脂バインダーおよび水を含有し、必要に応じて可塑剤や有機溶媒等のその他の成分を含有する。
【0068】
水溶性樹脂バインダーとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性樹脂バインダーを含有するスラリーを用いることにより、多孔部21の骨格がより良好に形成される。
【0069】
また、可塑剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコールおよびポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0070】
さらに、有機溶剤としては、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等が挙げられる。
【0071】
<2−2> 次に、調製したスラリーを基材上においてシート状とし、その後、加熱して発泡させた後に乾燥させて成形体(グリーンシート)を得る。
【0072】
スラリーをシート状に成形する方法としては、特に限定されるものではないが、ドクターブレード法が好ましく用いられる。
【0073】
また、前記加熱は、特に限定されないが、湿度80%以上の高湿度雰囲気下で行うのが好ましい。この際の温度条件を制御することで、発泡剤の働きにより形成される無数の発泡孔の孔径を、スラリー全体に亘って均一に制御することができる。その結果、金属粉を含有するスラリー成分から構成される3次元網目状の骨格を形成することができる。
【0074】
この際、スラリーの基材との接面(裏面)においては、平坦な発泡孔が形成される。一方、スラリーの基材とは反対側の面(表面)においては、自由発泡により3次元的に膨らんだ発泡孔が形成される。そのため、本実施形態のような製造方法によれば、裏面と表面とにおいて、互いに非対称的な発泡構造を有する成形体が形成される。
【0075】
さらに、発泡孔が形成されたスラリーの乾燥は、大気中や不活性ガス雰囲気中等において、100℃以下の温度により加熱することで行われる。これにより、スラリー中に形成された発泡孔を維持しつつ、スラリー中の水分を確実に除去することができる。
【0076】
<2−3> 次に、得られた成形体を、基材から剥離した後、この成形体を、前述した薄片切断加工法を用いて、所望の形状および大きさに加工する。これにより、脱脂および焼結が施されることにより多孔部21となる加工成形体を得る。
【0077】
<3> 次に、加工成形体(脱脂および焼結が施される前の多孔部21)を、枠状緻密体(脱脂および焼結が施される前の緻密部25)内に装填し、その後、この状態で加熱する。これにより、加工成形体および枠状緻密体の脱脂および焼結を行うことで、多孔部21および緻密部25としてブロック体2を得る。なお緻密部25は、脱脂および焼結後の空孔率が3〜50%となるようにするのが好ましい。
【0078】
加工成形体および枠状緻密体の脱脂は、例えば、350〜600℃程度の温度範囲で、1〜10時間程度保持することにより行われる。かかる条件で脱脂することで、発泡孔構造を維持したまま加工成形体および枠状緻密体中に含有される金属粉以外の成分が分解除去され、これにより、加工成形体および枠状緻密体を、金属粉が凝集した骨格から形成される金属脱脂体とすることができる。
【0079】
さらに、脱脂後の加工成形体および枠状緻密体(金属脱脂体)の焼結は、例えば、非酸化性雰囲気中で、1100〜1350℃程度の温度範囲で、1〜10時間程度保持することにより行われる。かかる条件で焼結することで、発泡孔構造を維持したまま金属粉同士を焼結させることができるとともに、脱脂後の加工成形体および枠状緻密体の金属粉が互いに拡散し、その結果、緻密部25と多孔部21とが拡散接合される。また、発泡孔構造を維持したまま金属粉同士を焼結させることができ、その結果、緻密部25と多孔部21とが強固に接合されたブロック体2を得ることができる。
【0080】
なお、非酸化性雰囲気とする際の真空度は、5.0×10
−2Pa以下であるのが好ましく、さらに、非酸化性雰囲気は、アルゴン雰囲気であるのが好ましい。
【0081】
以上のようにして、脱脂および焼結を施すことにより、加工成形体および枠状緻密体が、それぞれ、多孔部21および緻密部25となり、この多孔部21と緻密部25とが強固(一体的)に接合されたブロック体2を得ることができる。
【0082】
なお、枠状緻密体をチタン系合金(材料)で構成する場合には、枠状緻密体を分割して作成しておき、分割された枠状緻密体と、多孔部21(焼結済の加工成形体)とを組み立てる。次いで、分割された枠状緻密体の端部同士をレーザー等で溶接して、組立体を得る。その後、この組立体に対して、800〜1050℃、1〜10時間、非酸化性雰囲気(アルゴン雰囲気、真空)で熱処理を施す。これにより、枠状緻密体が緻密部25になるとともに、緻密部25と多孔部21とが拡散接合することでブロック体2を得ることができる。なお、分割された枠状緻密体と多孔部21とを組み立てる際には、組立体において、各面が平坦面を構成し得るように加工された多孔部21、すなわち、枠状緻密体を収容可能な溝が形成された多孔部21が用いられる。
【0083】
<第2実施形態>
次に、本発明の椎体スペーサの第2実施形態について説明する。
【0084】
図4は、本発明の椎体スペーサを構成するブロック体の第2実施形態を示す平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)である。
【0085】
以下、
図4に示すブロック体2について説明するが、
図1〜
図3に示すブロック体2との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0086】
図4に示すブロック体2では、その全体形状が異なること以外は、
図1〜
図3に示したブロック体2と同様である。
【0087】
すなわち、本実施形態では、第1の面31および第2の面32の双方が湾曲凸面を構成し、これらの面31、32が前側の端部において互いに連結している。これにより、第6の面36が省略されている。また、第3の面33、第4の面34および第5の面35は、それぞれ、ほぼ平面を構成する。このようにブロック体2の第1の面31および第2の面32の双方が湾曲凸面を構成とすることで、ブロック体2を椎間へ湾曲凸面に沿って滑らすようにして挿入することが可能である。このため、ブロック体2を椎体101、102に引っかけることなく、その椎間への挿入操作をより容易に行うことができる。
【0088】
また、本実施形態では、第1の面31と第2の面32との接合部を形成する緻密部のほぼ中央に穴部255が設けられている。この穴部255は、例えば、ブロック体2の椎間への挿入を治具を用いて行う場合に、治具の凸部を挿入することにより、ブロック体2を治具に固定するために用いられる。これにより、治具を用いたブロック体2の椎間への挿入を容易に行うことができる。
【0089】
かかる全体形状を有するブロック体2では、
図4(a)に示すようなブロック体2の平面視形状に対応する形状を備える下側枠状部251および上側枠状部252と、これらの枠状部251、252とを連結する連結部253とを有する。そして、本実施形態では、連結部253は、枠状部251、252の後側の端部に設けられた1つの幅広の連結部で構成されている。また、枠状部251、252は、それぞれ湾曲して、前側の端部において直接連結している。したがって、枠状部251、252の前側の端部では、連結部が省略されている。
【0090】
このような構成の本実施形態のブロック体2も、前記第1実施形態のブロック体2と同様にして使用することができ、前記第1実施形態のブロック体2(スペーサ1)と同様の効果が得られる。
【0091】
<第3実施形態>
次に、本発明の椎体スペーサの第3実施形態について説明する。
【0092】
図5は、本発明の椎体スペーサを構成するブロック体の第3実施形態を示す平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)である。
【0093】
以下、
図5に示すブロック体2について説明するが、
図1〜
図3に示すブロック体2との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0094】
図5に示すブロック体2では、緻密部25の構成が異なること以外は、
図1〜
図3に示したブロック体2と同様である。
【0095】
すなわち、本実施形態では、
図5に示すように、各連結部253は、ブロック体2の上下方向に対して斜めに配置されている。そして、隣接する連結部253同士は、その端部(下側枠状部251および上側枠状部252と連結する連結部位)が接触(連結)している。すなわち、枠状部251、252および連結部253で構成される緻密部25がトラス構造を形成している。これにより、連結部253は、下側枠状部251と上側枠状部252とを支える支柱としての機能をより好適に発揮し、緻密部25の強度がより向上する。このため、挿入状態においてブロック体2に応力が付与された際の、緻密部25の破損をより的確に抑制または防止することができる。
【0096】
このような構成の本実施形態のブロック体2も、前記第1実施形態のブロック体2と同様にして使用することができ、前記第1実施形態のブロック体2(スペーサ1)と同様の効果が得られる。
【0097】
<第4実施形態>
次に、本発明の椎体スペーサの第4実施形態について説明する。
【0098】
図6は、本発明の椎体スペーサを構成するブロック体の第4実施形態を示す平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)である。
【0099】
以下、
図6に示すブロック体2について説明するが、
図1〜
図3に示すブロック体2との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0100】
図6に示すブロック体2では、円錐状の突起部41が、第1の面31および第2の面32から複数突出するように設けられていること以外は、
図1〜
図3に示したブロック体2と同様である。
【0101】
すなわち、本実施形態では、多孔部21を貫通するように設けられた複数の貫通孔に、両端部に突起部41を備える針状体40を、多孔部21から突起部41が突出するように挿通されている。このように、ブロック体2に、第1の面31および第2の面32から突出する複数の突起部41を設けることにより、ブロック体2を椎間に挿入した際に、突起部41が椎体101の下面および椎体102の上面にスパイク(アンカー)される。これにより、第1の面31および第2の面32をそれぞれ椎体101および椎体102により強固に当接させることができるため、ブロック体2の椎間からの脱落を確実に防止することができる。
【0102】
このような針状体40は、緻密部25と同様に、緻密体で構成されているのが好ましい。これにより、針状体40は、より優れた強度を発揮し、挿入状態においてブロック体2に応力が付与された際の、針状体40の破損を的確に防止または抑制することができる。
【0103】
このような構成の本実施形態のブロック体2も、前記第1実施形態のブロック体2と同様にして使用することができ、前記第1実施形態のブロック体2(スペーサ1)と同様の効果が得られる。
【0104】
なお、突起部41の形状は、
図6に示した円錐状に限らず、例えば、四角錐状や三角錐状等の角錐状であってもよい。
【0105】
<第5実施形態>
次に、本発明の椎体スペーサの第5実施形態について説明する。
【0106】
図7は、本発明の椎体スペーサを構成するブロック体の第5実施形態を示す平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)、
図8は、本発明の椎体スペーサの第5実施形態の使用状態を示す図である。
【0107】
以下、
図7および
図8に示すブロック体2について説明するが、
図1〜
図3に示すブロック体2との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0108】
図7に示すブロック体2では、一対のブロック体2に、これらのブロック体2同士を回動可能に連結する連結部50が設けられていること以外は、
図1〜
図3に示したブロック体2と同様である。
【0109】
すなわち、連結部20は、一方のブロック体2の第3の面33の前側の端部に設けられた板状の連結指51と、他方のブロック体2の第3の面33の前側の端部に設けられた板状の連結指52とを有している。そして、連結指51のブロック体2と反対側の端部には棒状体53が上方に向かって突出して形成され、連結指52のブロック体2と反対側の端部には貫通孔54が形成されている。棒状体53を貫通孔54に挿通することにより、2つのブロック体2が連結部20を介して連結される。また、棒状体53を貫通孔54に挿通することによりヒンジ部が形成され、このヒンジ部を回動中心として、ブロック体2同士を接近および離間させることができる。すなわち、ブロック体2同士が第1の面31と水平な方向に回動可能となっている。
【0110】
かかる構成のスペーサ1を用いれば、症例に応じた、各ブロック体2の配置の変更、すなわち、各ブロック体2の前端または後端同士を離間および/または接近させる操作等を容易にかつ迅速に行うことができる。このため、スペーサ1による適切な治療を早期に行うことが可能となる。また、ブロック体2同士が連結部20を介して連結されているので、挿入状態において、これらを椎間に正確に位置決めしやすい。
【0111】
このような構成の本実施形態のブロック体2も、前記第1実施形態のブロック体2と同様にして使用することができ、前記第1実施形態のブロック体2(スペーサ1)と同様の効果が得られる。
【0112】
以上、本発明の椎体スペーサを図示の各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0113】
例えば、本発明の椎体スペーサでは、前記第1〜第5実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
【0114】
また、各実施形態では、多孔部21が1つの塊から構成されていたが、空孔率の異なる複数のシート状体を積層(貼り合わせ)して構成することもできる。この場合、多孔部21の強度に異方性を持たせることが可能となり、ブロック体2(スペーサ1)の設計の自由度が広がる。
【0115】
また、各実施形態では、一対のブロック体2を椎間に挿入する場合について説明したが、これに限定されず、1つのブロック体2を椎間に挿入するようにしてもよい。この場合、ブロック体2は、第4の面34が前側を第3の面33が後側を向くようにして、椎間の前側に挿入される。
【0116】
さらに、充填物は、移植骨(自家骨)に限定されるものではなく、例えば、リン酸カルシウム系化合物の粉体や顆粒、リン酸カルシウム系セメント等であってもよい。