(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
〔ポリアミド〕
本実施形態のポリアミドは、下記の(a)、(b)を重合させたポリアミドである。
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸。
(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミン。
なお、本明細書中、ポリアミドとは主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体を意味する。
また、本実施形態のポリアミドは、環状アミノ末端を有し、当該環状アミノ末端量が30μ当量/g未満である。
【0021】
((a)ジカルボン酸)
本実施形態のポリアミドを構成する(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸である。
(a)ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むものを使用することにより、強度、靭性、及び熱時安定性等を同時に満足し、かつ高い融点を有するポリアミドを得ることができる。また、耐熱性、流動性、及び低吸水性にも優れるポリアミドを得ることができる。
【0022】
前記脂環族ジカルボン酸(以下、(a−1)脂環族ジカルボン酸、と記載することがあり、また、単に脂環族ジカルボン酸と記載することもある。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
脂環族ジカルボン酸における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、低吸水性、及び強度等の観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
(a−1)脂環族ジカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
脂環族ジカルボン酸には、トランス体及びシス体の幾何異性体が存在する。
ポリアミドの原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体、シス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体、シス体の種々の比率の混合物を用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス体の方がトランス体に比べて後述する(b)ジアミンとの当量塩の水溶性が高い。これらの観点から原料モノマーとしては、トランス体/シス体比がモル比にして、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。
【0024】
(a)ジカルボン酸のうちの、脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸(以下、(a−2)脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、と記載することがある。)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0025】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸における種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩等のその塩等が挙げられる。
【0027】
本実施形態のポリアミドにおいて、(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を共重合する場合、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度等の観点で、好ましくは脂肪族ジカルボン酸であり、より好ましくは炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸である。
中でも、耐熱性及び低吸水性等の観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
前記炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸等が挙げられる。中でも、耐熱性等の観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(a)ジカルボン酸として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
前記多価カルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。脂環族ジカルボン酸の割合は50〜100モル%であり、好ましくは60〜100モル%であり、より好ましくは70〜100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。
脂環族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であること、すなわち50モル%以上であることにより、強度及び靭性等に優れ、高い融点を有するポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は0〜50モル%であり、好ましくは0〜40モル%であり、より好ましくは0〜30モル%である。
【0030】
(a)ジカルボン酸中の、(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、好ましくは(a−1)脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸0.1〜50モル%であり、より好ましくは(a−1)脂環族ジカルボン酸が60〜99モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸1〜40モル%であり、さらに好ましくは(a−1)脂環族ジカルボン酸が70〜99モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸1〜30モル%である。
【0031】
本実施形態において、(a)ジカルボン酸としては、ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、前記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物は、ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物等が挙げられる。
【0032】
((b)ジアミン)
本実施形態のポリアミドを構成する(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン(以下、(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン、と記載することがある。)を含む。
(b)ジアミンとして、(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを少なくとも50モル%含むものを使用することにより、強度、靭性等を同時に満足し、かつ成形性も優れているポリアミドを得ることができる。
【0033】
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンは、1,5−ジアミノペンタン骨格を有するジアミンと表すこともできる。
ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンとしては、例えば、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルペンタメチレンジアミン、3−n−ブチルペンタメチレンジアミン、2,4−ジメチルペンタメチレンジアミン、2−メチル−3−エチルペンタメチレンジアミン、及び2,2,4−トリメチルペンタメチレンジアミン等の炭素数5〜20の飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンは、それぞれ、1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−エチル−1,5−ジアミノペンタン、3−n−ブチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−3−エチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2,4−トリメチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンとしては、耐熱性及び強度等の観点で、好ましくはペンタメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンであり、より好ましくは2−メチルペンタメチレンジアミンである。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(b)ジアミンのうちの、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミン(以下、(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミン、と記載することがある。)としては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0035】
前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルヘキサメチレンジアミン、2,4−ジメチルヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の炭素数2〜20の飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
なお、脂肪族ジアミンには、前記(b−1)であるペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンは含まれない。
【0036】
前記脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
【0037】
前記芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン等の芳香族構造を有するジアミン等が挙げられる。
【0038】
(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミンとしては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度等の観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、よりさらに好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(b)ジアミンとして、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミン等の3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(b)ジアミン中の(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの割合は50〜100モル%であり、好ましくは60〜100モル%であり、より好ましくは80〜100モル%であり、さらに好ましくは85〜100モル%であり、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、もっとも好ましくは100モル%である。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの割合が、少なくとも50モル%、すなわち50モル%以上であることにより、靭性及び強度に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は、0〜50モル%であり、好ましくは0〜40モル%であり、より好ましくは0〜20モル%であり、さらに好ましくは0〜15モル%であり、よりさらに好ましくは0〜10モル%であり、もっとも好ましくは0モル%である。
【0041】
(a)ジカルボン酸の添加量と(b)ジアミンの添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、好ましくは0.9〜1.2であり、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
【0042】
((c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)
本実施形態のポリアミドは、靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドであってもよい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、ポリアミドに重合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
本実施形態のポリアミドが、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を共重合させたポリアミドである場合には、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸がより好ましい。
【0043】
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。中でも、靭性の観点で、ε−カプロラクタム及びラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸等が挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)は、前記(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の各モノマー全体のモル量に対して、0〜20モル%であることが好ましい。
【0045】
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンの組み合わせは、特に限定されるものではなく、例えば、(a−1)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミン又はペンタメチレンジアミンの組み合わせが好ましく、(a−1)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミンがより好ましい。
これらの組み合わせの(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンをポリアミドの成分として重合させることにより、強度、靭性、及び熱時安定性に優れ、高い融点を有するポリアミドとすることができる。
【0046】
(末端封止剤)
本実施形態のポリアミドは、上述した(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、さらに必要に応じて(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いて重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤を用いてもよく、本実施形態のポリアミドは、分子末端に当該末端封止剤の残基を有していてもよい。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられ、熱安定性の観点で、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン;並びにピロリジン、ピペリジン、3−メチルピペリジン等の環状アミン;等が挙げられる。
モノアミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(末端基構造)
本実施形態におけるポリアミドのポリマー末端は、1)環状アミノ末端を有しており、その他、2)アミノ末端、3)カルボキシル末端、4)末端封止剤による末端、及び5)その他の末端のいずれかを有していてもよい。
【0050】
ポリアミドのポリマー末端とは、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミン(必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を含む)とが、アミド結合により重合した重合体のポリマー鎖の末端部分を意味する。
1)環状アミノ末端は、ポリマー末端が環状アミノ基であることを意味する。
2)アミノ末端は、ポリマー末端がアミノ基(−NH
2基)であることを意味し、ポリマー鎖の末端が原料として用いる(b)ジアミンに由来する。
3)カルボキシル末端は、ポリマー末端がカルボキシル基(−COOH基)であることを意味し、ポリマー鎖の末端が原料として用いる(a)ジカルボン酸に由来する。
【0051】
環状アミノ基は、下記式で表される基である。
【0053】
前記式中、Rは、水素原子、又はメチル基、エチル基、あるいはt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を示す。
環状アミノ末端は、原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの脱アンモニア反応により環化して形成されるピペリジン構造であってもよく、その場合、Rは、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのペンタメチレン骨格以外の側鎖部分のアルキル基を示す。上記式においては、Rは一置換として例示しているが、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの側鎖部分に合致するように、二置換であってもよく、三置換以上の多置換であってもよい。
【0054】
4)末端封止剤による末端は、重合時に添加した末端封止剤で、ポリマー末端が封止されていることを意味し、モノカルボン酸及びモノアミンなどの末端封止剤に由来する構造を有する。
5)その他の末端は、上述した1)〜4)に分類されないポリマー末端であり、例えば、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端及びカルボキシル末端が脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
【0055】
本実施形態のポリアミドの環状アミノ末端量は、30μ当量/g未満であり、好ましくは2〜15μ当量/gであり、より好ましくは4〜10μ当量/gである。
環状アミノ末端量が上記範囲内であることにより、ポリアミドの耐熱性、耐熱色調安定性、及びフォギング性を向上することができる。
【0056】
環状アミノ末端量は、ポリアミド1g中に存在する環状アミノ末端のモル数で表す。
環状アミノ末端量は、下記実施例に記載するように、1H−NMRを用いて測定することができる。
例えば、ピペリジン環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素の積分比を基に算出することができる。
【0057】
本実施形態のポリアミドは、そのポリマー末端において、末端基の総量(以下、「分子鎖末端基総量」という。)と、当該末端のアミノ基の量(以下、「アミノ末端量」という。)とが、特定の条件を満足することが好ましい。
すなわち、{分子鎖末端基総量−アミノ末端量}(μmol/g)と分子鎖末端基総量(μmol/g)との比が、下記式(1)を満足することが好ましい。
0.70<{分子鎖末端基総量−アミノ末端量}/分子鎖末端基総量<1.0・・・(1)
上記式(1)を満たすことにより、耐熱色調安定性の効果が得られる。
【0058】
なお、本明細書では、アミノ末端量を[NH
2]と表す場合もある。
ポリマー末端が上記式(1)を満足する範囲内であることにより、ポリアミドの耐熱色調安定性を向上させることができる。
アミノ末端量は、ポリアミド1g中に存在するアミノ末端のモル数で表す。
アミノ末端量は、下記実施例に記載する方法を用いて測定することができる。
【0059】
〔ポリアミドの製造方法〕
本実施形態のポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含む方法が挙げられる。
本実施形態のポリアミドは、重合工程の少なくとも一部において固相重合工程を経て得られるポリアミドであることが好ましい。
本実施形態のポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
【0060】
本実施形態のポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものでははく、例えば、以下に例示する方法等が挙げられる。
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)。
3)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)。
4)ジカルボン酸・ジアミン塩又は、その混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)。
5)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物を固体状態に維持したまま、一段で重合させる方法(以下、「一段固相重合法」と略称する場合がある)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライドとジアミンとを用いて重合させる方法(以下、「溶液法」と略称する場合がある。)。
【0061】
本実施形態のポリアミドの製造方法としては、前記3)プレポリマー・押出重合法、4)プレポリマー・固相重合法、及び5)一段固相重合法が好ましく、より好ましくは、前記4)プレポリマー・固相重合法、及び5)一段固相重合法である。
本実施形態のポリアミドの製造方法においては、ポリアミドの分子量を向上させる点で、固相重合法を実施することが好ましく、また、固相重合法を実施し、ポリアミドの分子量を向上させる方法は、熱溶融重合法で分子量を向上させるよりも、ポリアミドの環状アミノ末端量を所定の量に制御することができる点で好適である。
【0062】
本実施形態のポリアミドの製造工程において、重合を行う際には、重合時に添加物を加えておくことが好適である。
重合時の添加物としては、ポリアミドの原料である(b)ジアミンが挙げられる。この場合の(b)ジアミンは、等モル量のジカルボン酸・ジアミン塩の製造に用いる(b)ジアミンとは別に、さらに添加する(b)ジアミンを意味し、当該添加物としての(b)ジアミンの添加量は、好ましくは0.1〜10モル%であり、より好ましくは0.5〜5.0モル%であり、さらに好ましくは1.5〜4.5モル%であり、よりさらに好ましくは2.6〜4.0モル%である。
(b)ジアミンの添加量を上記範囲内とすることは、環状アミノ末端量を、また、アミノ末端量を目的の値に制御するための方法として有効である。
【0063】
本実施形態のポリアミドの重合時の添加物としては、蟻酸及び酢酸等の有機酸等を添加することもできる。
蟻酸等を加えることにより、ポリマー末端の環状アミノ末端量が減少する傾向があるため、環状アミノ末端量を目的の値に制御するための方法として有効である。
【0064】
本実施形態のポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
また、固相重合法以外の方法により用いる反応器に関しては、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及び、ニーダー等の押出機型反応器等が挙げられ、これら用いて各種重合反応を行うことができる。
【0065】
本実施形態のポリアミドの製造方法としての前記固相重合法は、例えば、タンブラー型の反応器、振動乾燥機型の反応器、ナウターミキサー型の反応器、及び攪拌型の反応器等を用いて行うことができる。
具体的には、ポリアミドのペレット、フレーク、又は粉体を上記反応器に入れ、ポリアミドを重合する。このとき、窒素、アルゴン、及びヘリウム等の不活性ガスの気流下又は減圧下で行ってもよく、また、反応器上部で減圧に内部気体を引きながら反応器下部から不活性ガスを供給してもよく、ポリアミドの融点以下の温度で加熱することによって、ポリアミドの分子量を向上させることができる。
固相重合の反応温度は、好ましくは100〜350℃であり、より好ましくは120〜300℃であり、さらに好ましくは150〜270℃である。
重合後、加熱を停止し、好ましくは0〜100℃、より好ましくは室温から60℃に反応温度が低下してから、反応器よりポリアミドを取り出して得ることができる。
【0066】
本実施形態のポリアミドの製造方法においては、上述した「プレポリマー・固相重合法」、「一段固相重合法」、「溶液法」のいずれにおいても、ポリアミドの融点以下の反応温度でジカルボン酸とジアミン(必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を含む)とを重合させることが好ましい。但し、プレポリマーの作製工程においては、ポリアミドの融点以上の反応温度で行い、その後、急冷することによりプレポリマーを得てもよい。
なお、重合工程においては、最高到達圧力を10kg/cm
2以上とすることが好ましく、より好ましくは12kg/cm
2以上とする。これにより、ジアミンの逃散を抑制することができ、目的とするポリアミドを高分子量化することができる。
さらには、重合の最終温度をポリアミドの融点以下とすることが好ましい。これにより、環状アミン化合物の生成を抑制する効果が得られる。
前記「プレポリマー・固相重合法」及び「一段固相重合法」の製造方法により、環状アミノ末端の量を容易に制御しながら、高分子量化でき、耐熱性、熱時安定性、耐熱色調安定性、耐熱リフロー性、及びフォギング性に優れる高い融点を有するポリアミドとすることができる。
【0067】
(末端封止剤の添加)
本実施形態のポリアミドの製造工程においては、上述した(a)ジカルボン酸と(b)ジアミン、必要に応じて(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いて重合する際に、分子量調節のために、上述した公知の末端封止剤をさらに添加して重合を行ってもよい。
【0068】
上述したように、本実施形態のポリアミドは、環状アミノ末端を有し、当該環状アミノ末端量が30μ当量/g未満である。
前記環状アミノ末端は、(1)ピペリジン環を有する環状アミン化合物とカルボキシル末端とが脱水反応することによって生成するか、(2)ポリマー末端のアミノ末端がポリマー分子内で脱アンモニア反応することによって生成する。
前記(1)ピペリジン環を有する環状アミン化合物とカルボキシル末端とが脱水反応することによって生成する環状アミノ末端は、(1a)ピペリジン環を有する環状アミン化合物を末端封止剤として重合反応系中に添加することでも生成可能であり、(1b)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンがモノマー分子内で脱アンモニア反応すること、すなわち、重合工程で、(b)ジアミンに含まれるペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンが、(a)ジカルボン酸と反応する際、モノマー分子中で脱アンモニア反応し、環状アミン化合物になることからも生成可能である。
【0069】
本実施形態のポリアミドの環状アミノ末端は、(b)ジアミン中に少なくとも50モル%含まれている、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの環化反応に由来する末端であることが好ましい。
すなわち、前記(1b)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンがモノマー分子内で脱アンモニア反応することにより重合反応系中で生成する環状アミン化合物とカルボキシル基とが脱水反応することによって得られるか、前記(2)ポリマー末端のアミノ末端がポリマー分子内で脱アンモニア反応することによって得られることが好ましい。
【0070】
本実施形態のポリアミド、環状アミノ末端を形成するための、前記(1a)の方法により、末端封止剤としてピペリジン環を有する環状アミン化合物を重合初期に添加することは低分子量のカルボキシル末端を重合初期の段階で封止することになるため、ポリアミドの重合反応速度を低くし、結果として高分子量体が得られにくくなる原因となるのに対して、(1b)の方法により、反応の途中で生成するピペリジン環を有する環状アミンであれば、ある程度高分子量化した重合後期に封止することになるためポリアミドの高分子量体を得ることは容易となり、好ましい方法である。
【0071】
環状アミノ末端量をある一定量に調整する方法としては、上述したように、重合時の添加物として(b)ジアミンを用い、添加量を所定の範囲とする方法や、蟻酸や酢酸を加える方法の他、重合温度や反応時間を調整し、かつ環状アミンを生成するジアミン、すなわちペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの添加量等を適宜調整する方法が有効な方法として挙げられる。
【0072】
本実施形態のポリアミドに環状アミノ末端を生成する、ピペリジン環を有する環状アミン化合物は、ポリアミドの重合反応の際に副生物として生成してもよい。
ピペリジン環を有する環状アミン化合物の生成については、反応温度が高いほど反応速度も向上する。
具体的に、前記ペンタメチレンジアミン骨格を有する原料のジアミンとして、2−メチルペンタメチレンジアミンを用いた場合は、ポリアミドの融点以下の反応温度で、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミン(必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を含む)とを重合させることが好ましい。より好ましくは、ポリアミドの融点より60℃以上低い反応温度であり、さらに好ましくは、融点より80℃以上低い反応温度であり、特に好ましくは、融点より100℃以上低い反応温度である。
ポリアミドの融点以下の反応温度で重合させることにより、ピペリジン環を有する環状アミン化合物の生成を抑制することができるため、環状アミノ末端量を30μ当量/g未満にするための方法として有効である。
【0073】
上述したように、本実施形態のポリアミドは、そのポリマー末端において、末端基の総量(以下、「分子鎖末端基総量」という。)と、当該末端のアミノ基の量(以下、「アミノ末端量」という。)が、特定の条件を満足することが好ましい。
すなわち、{分子鎖末端基総量−アミノ末端量}(μmol/g)と分子鎖末端基総量(μmol/g)との比が、下記式(1)を満足することが好ましい。
0.70<{分子鎖末端基総量−アミノ末端量}/分子鎖末端基総量<1.0・・・(1)
上記式(1)を満たすようにするためには、分子鎖末端基総量中のアミノ末端基の比率を制御することが必要である。例えば、ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてのジアミン及び末端封止剤の添加量、並びに重合条件を制御する方法等が有効な方法として挙げられる。
【0074】
〔ポリアミドの物性〕
(分子量)
本実施形態のポリアミドの分子量としては、25℃の硫酸相対粘度ηrを指標とし、25℃の硫酸相対粘度ηrは、2.3以上であることが好ましい。より好ましくは2.3〜7.0であり、さらに好ましくは2.5〜5.5であり、特に好ましくは2.8〜4.0である。
ポリアミドの、25℃における硫酸相対粘度ηrを制御する方法としては、例えば、ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてのジアミン及び末端封止剤の添加量、並びに重合条件を制御する方法等が有効な方法として挙げられる。
25℃の硫酸相対粘度ηrが2.3以上であることで、ポリアミドは靭性及び強度等の機械物性に優れる。溶融流動性の観点から、ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrが7.0以下であると、流動性に優れるポリアミドとすることができる。
25℃の硫酸相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6920に準じて98%硫酸中、25℃で測定することができる。
また、ポリアミドの分子量の指標としては、25℃の蟻酸相対粘度VRも使用することができる。蟻酸相対粘度VRの測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6920に準じて90%蟻酸中、25℃で測定することができる。
【0075】
(融点)
本実施形態のポリアミドの融点は、Tm2として、耐熱性の観点から、280〜350℃であることが好ましい。
ポリアミドの融点は、ポリアミドの組成により制御できる。
融点Tm2は、好ましくは290℃以上であり、より好ましくは305℃以上であり、さらに好ましくは315℃以上である。また、融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
ポリアミドの融点Tm2が280℃以上であることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、ポリアミドの融点Tm2が350℃以下であることにより、押出、成形等の溶融加工でのポリアミドの熱分解等を抑制することができる。
ポリアミドの融解熱量ΔHは、耐熱性の観点から、10〜100J/gであることが好ましく、14〜100J/gであることがより好ましく、20〜100J/gであることがさらに好ましい。
ポリアミドの融点(Tm1又はTm2)及び融解熱量ΔHの測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
【0076】
(色調)
本実施形態のポリアミドの色調は、b値として、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である。
b値は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
b値が10以下であることにより、耐熱変色性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0077】
〔ポリアミド組成物〕
本実施形態のポリアミド組成物は、前記ポリアミドと、無機充填材と、を含有する。
ポリアミド組成物として、無機充填材を含有することにより、耐熱性、熱時安定性、耐熱色調安定性、耐熱リフロー性、及びフォギング性に優れ、かつ高い融点を有するポリアミドの性質を損なうことなく、ポリアミド組成物としても、耐熱性、熱時安定性、耐熱色調安定性、耐熱リフロー性、及びフォギング性等を満足しながら、さらに、特に強度、成形加工性に優れたものとなる。
【0078】
(無機充填材)
本実施形態のポリアミド組成物を構成する無機充填材としては、特に限定されるものではなく、公知の材料を用いることができる。
例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、クレー、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、窒化珪素、及びアパタイト等が挙げられる。
無機充填材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填材としては、強度及び剛性等の観点で、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、窒化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、クレー、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイト等が好ましく、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、タルク、カオリン、マイカ、窒化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ウォラストナイト、及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1種である無機充填材がより好ましい。
前記無機充填材のうち、ガラス繊維や炭素繊維は、断面が真円状でも扁平状でもよい。
扁平状の断面としては、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、長手方向の中央部がくびれた繭型等が挙げられる。
【0079】
前記ガラス繊維や炭素繊維の中でも、優れた機械物性をポリアミド組成物に付与する観点から、ポリアミド組成物中において、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるガラス繊維又は炭素繊維が、好ましく用いられる。
ポリアミド組成物中の無機充填材の数平均繊維径は、例えば、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、当該ポリアミド組成物に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上のガラス繊維を任意に選択し、SEMで観察して、繊維径を測定することにより数平均繊維径を求めることができる。
ポリアミド組成物中の無機充填材の重量平均繊維長は、同様にしてガラス繊維を任意に選択し、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を測定することができる。
【0080】
前記無機充填材としては、重量平均繊維長が1〜15mmである強化繊維がより好ましい。このような強化繊維の重量平均繊維長は、機械的強度、剛性及び成形性の向上の観点から1〜15mmであるものとし、好ましくは3〜12mmである。
なお、強化繊維の重量平均繊維長は、ポリアミド組成物のポリアミドのみ燃焼又は溶解させて除去した後、光学顕微鏡を用いて観察し、画像解析装置を用いて任意に選択した強化繊維400本の長さを測定し、平均値を算出することにより求められる。
ここで、強化繊維一本一本の長さを、それぞれL1、L2、・・・、L400としたとき、一本ごとの重量平均繊維長の算出式は下記式で表される。なお、下記式中、「i」は、1〜400までの整数をとる。
重量平均繊維長=Σ(Li
2)/ΣLi
なお、前記重量平均繊維長は、本実施形態のポリアミド組成物に含有されている状態の強化繊維に対して適用される値である。
すなわち、ポリアミドに配合する前の段階の強化繊維の重量平均繊維長については上記に限定されない。
強化繊維の材料としては、一般的にポリアミドに使用される強化繊維であれば特に制限はない。
例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、金属繊維(例:ステンレス繊維、アルミニウム繊維、銅繊維等)等の無機系のものや、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリパラフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ジアミノジフェニルエーテルとテレフタル酸又はイソフタル酸からの縮合物から得られる繊維等の全芳香族ポリアミド繊維、あるいは、全芳香族液晶ポリエステル繊維等の有機系のものが挙げられる。
強化繊維としては、上記材料を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、機械的強度及び剛性の向上の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、金属繊維から選ばれる1種以上であることが好ましく、ガラス繊維及び/又は炭素繊維がより好ましい。
前記強化繊維は、単繊維における平均繊維径に関して特に限定されるものではないが、例えば、直径5〜25μmのものが一般的に使用される。
なお、単繊維の平均繊維径は、使用する強化繊維を光学顕微鏡下で観察し、画像解析装置を用いて任意に選んだ400本の繊維径を測定したときの平均値を算出することにより求められる。
また、強化繊維としては、単繊維を集束した連続繊維であるロービングを用いることが好ましい。
【0081】
<表面処理剤>
ガラス繊維や炭素繊維等の無機充填材は、シランカップリング剤等により表面処理されていてもよい。
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類等が挙げられる。中でも、アミノシラン類が好ましい。
シランカップリング剤としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
<集束剤>
ガラス繊維や炭素繊維等の、繊維状の無機充填材は、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、並びにアクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、及びこれらの第一級、第二級、又は第三級アミンとの塩等を含んでもよい。
中でも、ポリアミド組成物の機械物性(中でも、強度)の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体(カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体とも記される。)、エポキシ化合物、及びポリウレタン樹脂が好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、及びポリウレタン樹脂がより好ましい。
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体における不飽和ビニル単量体は、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を含まない。
集束剤としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体を構成するカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水シトラコン酸等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
また、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体を構成する不飽和ビニル単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びエチルメタクリレート等が挙げられ、スチレン及びブタジエンが好ましい。
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体としては、例えば、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体が好ましい。
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が、好ましくは2,000以上であり、ポリアミド組成物の流動性向上の観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜1,000,000である。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0084】
前記エポキシ化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイド等の脂肪族エポキシ化合物;グリシドール、エポキシペンタノール、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコール等の脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイド等のテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド、m−クロロスチレンオキサイド等の芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;及びエポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
【0085】
前記ポリウレタン樹脂は、特に限定されるものではなく、集束剤として一般的に用いられるものを用いることができる。例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)、及びイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系及びポリエーテル系のジオールと、から合成されるものが好適に使用できる。
【0086】
前記アクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)としては、重量平均分子量が、好ましくは1,000〜90,000であり、より好ましくは1,000〜25,000である。
ポリアクリル酸は、第一級、第二級、又は第三級のアミンとの塩形態であってもよい。
前記アミンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びグリシン等が挙げられる。
前記塩形態を有することによるポリアクリル酸の中和度は、ポリアクリル酸のアクリル酸成分のうち、塩を形成しているアクリル酸成分の割合を意味し、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上の観点や、アミン臭低減の観点から、好ましくは20〜90%であり、より好ましくは40〜60%である。
塩形態のポリアクリル酸の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、また、ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、好ましくは3,000以上であり、ポリアミド組成物の機械物性向上の観点から、好ましくは50,000以下である。
【0087】
前記アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーにおけるその他共重合性モノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーである、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸などが挙げられる。その他共重合性モノマーとしては、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのエステルであるモノマーを好適に用いることができる。
前記アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーとしては、重量平均分子量が好ましくは1,000〜90,000であり、より好ましくは1,000〜25,000である。
前記アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーは、第一級、第二級、又は第三級のアミンとの塩形態であってもよい。
前記アミンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びグリシン等が挙げられる。
前記塩形態を有することによるコポリマーの中和度は、当該コポリマーの酸成分のうち、塩を形成している酸成分の割合を意味し、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上の観点や、アミン臭低減の観点から、好ましくは20〜90%であり、より好ましくは40〜60%である。
塩形態のコポリマーの重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、また、ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、好ましくは3,000以上であり、ポリアミド組成物の機械物特性向上の観点から、好ましくは50,000以下である。
【0088】
前記集束剤を含むガラス繊維や炭素繊維等の繊維状の無機充填材は、上記集束剤を、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状の無機充填材に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させて得られる。
前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
前記集束剤は、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状の無機充填材100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、0.3〜2質量%付与(添加)することがより好ましい。
ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状の無機充填材の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状の無機充填材100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。ポリアミド組成物の熱安定性向上の観点から、集束剤の添加量が固形分率として3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0089】
本実施形態のポリアミド組成物を構成する無機充填材としてウォラストナイトを用いる場合、ポリアミド組成物中において、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が10〜500μmであり、アスペクト比(L/D)が3〜100であるものが好ましく用いられる。
無機充填材としては、タルク、マイカ、カオリン、及び窒化珪素等を用いる場合、ポリアミド組成物中において、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものが好ましい。
【0090】
(その他の添加剤)
本実施形態のポリアミド組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤、例えば、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチ含む)、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、核剤、ゴム、強化剤並びにその他のポリマー等を含有することもできる。
【0091】
また、ポリアミド組成物には、熱安定剤として、フェノール系安定剤、リン系安定剤、アミン系安定剤、周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物よりなる群から選択される1種類以上を配合することができる。
【0092】
前記フェノール系安定剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。
フェノール系安定剤は、ポリアミド等の樹脂や繊維に耐熱性や耐光性を付与する性質を有する。
前記ヒンダードフェノール化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等が挙げられる。中でも、耐熱エージング性向上の観点から、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
フェノール系安定剤としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のフェノール系安定剤の配合量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。配合量が上記範囲内である場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0093】
前記リン系安定剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト等が挙げられる。中でも、耐熱エージング性の一層の向上及び発生ガスの低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0094】
前記ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・メチル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−エチルヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ラウリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソトリデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ベンジル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・エチルセロソルブ・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ブチルカルビトール・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,6−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−シクロヘキシルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。中でも、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
【0095】
前記リン系安定剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のリン系安定剤の配合量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。配合量が上記範囲内である場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0096】
前記アミン系安定剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
アミン系安定剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のアミン系安定剤の配合量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。配合量が上記範囲内である場合、耐光性や耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0097】
周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族、及び第IVb族の元素の金属塩としては、特に限定されるものではなく、熱安定剤として好ましくは銅塩である。
銅塩としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅等)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤に銅の配位した銅錯塩等が挙げられる。中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、及び酢酸銅よりなる群から選択される1種以上であることが好ましく、ヨウ化銅及び/又は酢酸銅がより好ましい。上記金属塩、中でも、銅塩を用いた場合、耐熱エージング性に優れ、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう)を抑制可能なポリアミド組成物を得ることができる。
上記金属塩は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
銅塩を用いる場合、ポリアミド組成物中の銅塩の配合量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.2質量部であり、より好ましくは0.02〜0.15質量部である。配合量が上記範囲内である場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる。
また、耐熱エージング性を向上させる観点から、ポリアミド組成物全量に対し、銅元素の含有濃度として、好ましくは10〜500ppmであり、より好ましくは30〜500ppmであり、さらに好ましくは50〜300ppmである。
【0098】
前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物等が挙げられる。中でも、耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、ヨウ化カリウム及び臭化カリウム、並びにこれらの混合物が好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。
上記ハロゲン化物としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、ポリアミド組成物中のアルカリ及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の配合量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.2〜2質量部である。配合量が上記範囲内である場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる。
【0099】
本実施形態のポリアミド組成物においては、銅塩とアルカリ及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物を熱安定剤として好適に用いることができる。銅塩とアルカリ及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との割合は、ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が2/1〜40/1となるように、ポリアミド組成物に含有させることが好ましく、より好ましくは5/1〜30/1である。
モル比(ハロゲン/銅)が上記範囲内である場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させることができる。また、モル比(ハロゲン/銅)が2/1以上である場合、銅の析出及び金属腐食を抑制することができるため好適である。モル比(ハロゲン/銅)が40/1以下である場合、靭性等の機械物性を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できるため、好適である。
【0100】
〔ポリアミド組成物の製造方法〕
本実施形態におけるポリアミド組成物の製造方法としては、上述したポリアミドと、無機充填材と、必要に応じて、上述したその他の添加剤を混合する方法であれば、特に限定されるものではない。
ポリアミド組成物の構成材料の混合方法として、例えば、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にしたポリアミドに、サイドフィーダーから無機充填材やその他の添加剤を配合する方法等が挙げられる。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分(ポリアミド及び無機充填材等)を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
無機充填材の配合量は、ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部であり、より好ましくは1〜180質量部であり、さらに好ましくは5〜150質量部である。
配合量を0.1質量部以上とすることにより、ポリアミド組成物の靭性、強度及び剛性等の機械物性が向上し、また、配合量を200質量部以下とすることにより、成形性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0101】
なお、ポリアミド組成物に含有されている無機充填材が、重量平均繊維長が1〜15mmの強化繊維である場合のポリアミド組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミドを二軸押出機で溶融混練し、溶融したポリアミドを強化繊維のロービングに含浸させ、ポリアミド含浸ストランドを得るプルトルージョン法や、特開2008−221574号公報に記載されているように、含浸ストランドを螺旋状に撚る工程によってポリアミドを十分に含浸させる方法が挙げられる。
本実施形態のポリアミド組成物中の重量平均繊維長が1〜15mmの強化繊維の含有量は、強度、熱時強度、耐久性、及び成形性の観点から、20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜75質量%であり、さらに好ましくは30〜70質量%である。
【0102】
〔ポリアミド組成物の物性〕
本実施形態のポリアミド組成物は、25℃の硫酸相対粘度ηrは2.3以上であることが好ましい。より好ましくは2.3〜7.0であり、さらに好ましくは2.5〜5.5であり、特に好ましくは2.8〜4.0である。25℃の硫酸相対粘度ηrが2.3以上であることにより、靭性及び強度等の機械物性に優れたものとなる。また、溶融流動性の観点から、ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrは7.0以下であることが好ましい。
25℃の硫酸相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6920に準じて98%硫酸中、25℃で測定することができる。
ポリアミド組成物の融点Tm2は、耐熱性の観点から、280〜350℃であることが好ましい。融点Tm2は、好ましくは290℃以上であり、より好ましくは305℃以上であり、さらに好ましくは315℃以上である。また、融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。ポリアミド組成物の融点Tm2が280℃以上であることにより、耐熱性に優れたものとすることができる。また、融点Tm2が350℃以下であることにより、押出、成形等の溶融加工での熱分解等を抑制することができる。
ポリアミド組成物の融解熱量ΔHは、耐熱性の観点から、5〜80J/gであることが好ましく、7〜80J/gであることがより好ましく、10〜80J/gであることがさらに好ましい。
ポリアミド組成物の融点(Tm1又はTm2)及び融解熱量ΔHの測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
また、ポリアミド組成物における前記各物性の測定値が、前記ポリアミドの物性の測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、耐熱性、成形性、及び耐薬品性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0103】
〔ポリアミド及びポリアミド組成物の成形品〕
本実施形態のポリアミド及びポリアミド組成物は、周知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸等を用いて各種成形品を得ることができる。
【0104】
本実施形態のポリアミド及びポリアミド組成物から得られる成形品は、強度、耐熱性、熱時安定性、耐熱色調安定性、耐熱リフロー性、フォギング性及び成形加工性に優れる。
従って、本実施形態のポリアミド及びポリアミド組成物は、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、並びに日用及び家庭品用等の各種部品材料として、また、押出用途等に好適に用いることができる。
【0105】
自動車用としては、特に限定されるものではなく、例えば、吸気系部品、冷却系部品、燃料系部品、内装部品、外装部品、及び電装部品等に用いられる。
自動車吸気系部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディ等が挙げられる。
自動車冷却系部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプ等が挙げられる。
自動車燃料系部品では、特に限定されるものではなく、例えば、燃料デリバリーパイプ及びガソリンタンクケース等が挙げられる。
内装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、及びトリム等が挙げられる。
外装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー、及びドアミラーステイ、ルーフレール等が挙げられる。
電装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクターやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、及びコンビネーションスイッチ等が挙げられる。
電気及び電子用としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクター、スイッチ、リレー、プリント配線板、電子部品のハウジング、コンセント、ノイズフィルター、コイルボビン、及びモーターエンドキャップ等に用いられる。
産業資材用としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギヤ、カム、絶縁ブロック、バルブ、電動工具部品、農機具部品、エンジンカバーなどに用いられる。
日用及び家庭品用としては、特に限定されるものではなく、例えば、ボタン、食品容器、及びオフィス家具等に用いられる。
押出用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、フィルム、シート、フィラメント、チューブ、棒、及び中空成形品等に用いられる。
【実施例】
【0106】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態は、後述する実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
なお、本実施例において、1kg/cm
2は、0.098MPaを意味する。
【0107】
〔(A)ポリアミドの原材料〕
<(a)ジカルボン酸>
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体(モル比)=25/75)
(2)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
(3)アジピン酸(ADA) 和光純薬工業製 商品名 アジピン酸
(4)ドデカン二酸(C12DA) 和光純薬工業製 商品名 ドデカン二酸
【0108】
<(b)ジアミン>
(5)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPD) 東京化成工業製 商品名 2−メチル−1,5−ジアミノペンタン
(6)ペンタメチレンジアミン(PMD) 和光純薬工業製 商品名 1,5−ジアミノペンタン
(7)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
(8)1,10−ジアミノデカン(デカメチレンジアミン)(C10DA) 商品名:1,10−デカンアミン(小倉合成工業社製)
【0109】
〔(B)無機充填材〕
(9)ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 平均繊維径(平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
(10)ウォラストナイト NYCO製 商品名 NYAD400 平均繊維径(平均粒径)7μm、平均繊維長35μm
【0110】
(11)酢酸 和光純薬工業製 商品名 酢酸
【0111】
〔ポリアミド成分量の計算〕
(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのモル%は、(原料モノマーとして加えた(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、溶融重合時の添加物として加えた(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのモル数は含まれない。
【0112】
〔物性の測定方法〕
<(1)融点Tm1、Tm2(℃)、融解熱量ΔH>
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)のもっとも高温側に現れた吸熱ピーク温度をTm1(℃)とし、昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)のもっとも高温側に現れた吸熱ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。
なお、Tm2として、ピークが複数ある場合には、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなした。例えば、Tm2として、融点295℃、ΔH=20J/gと、融点325℃、ΔH=5J/gの、二つのピークが存在する場合、融点は高い方の値である325℃、ΔHは全ピークの合算値の25J/gとした。
【0113】
<(2)25℃の硫酸相対粘度ηr>
JIS−K6920に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、ポリマー溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
【0114】
<(3)環状アミノ末端量(μ当量/g)>
環状アミノ末端量は、ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMR(日本電子株式会社製、JNM ECA500)を用いて周波数500MHz、スキャン数は1600回とし室温で測定した。
窒素の複素環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素のシグナル(化学シフト値3.5〜4.0ppm)とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素のシグナル(化学シフト値3.0〜3.5ppm)の積分比を用いて環状アミノ末端量を算出した。
その際に使用する、分子鎖末端基総量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、東ソー株式会社製、HLC−8020、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒、PMMA(ポリメチルメタクリレート)標準サンプル(ポリマーラボラトリー社製)換算)で測定した数平均分子量(Mn)を用いて、2/Mn×1,000,000として計算した。
【0115】
<(4)アミノ末端量(μ当量/g)>
アミノ末端量は、中和滴定により測定した。
ポリアミド3.0gを90%フェノール水溶液100mLに溶解し、0.025規定塩酸で滴定を行い、アミノ末端量を求めた。終点はpH計の指示値から決定した。
【0116】
<(5)滞留時のηr維持率>
ポリアミドペレットから多目的試験片(A型)を得る際に、冷却時間を調整することによって、スクリューでの滞留時間を6分間(平均値)として、試験片の射出成形を行った。
滞留6分間の試験片のηrを、前記(2)に記載の方法で測定し、ポリアミドペレットのηrを100としたときの相対値(100分率)を滞留時のηr維持率とした。
【0117】
<(6)荷重たわみ温度(HDT)(℃)>
実施例及び比較例で得られたポリアミドペレットから、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度をTg+20℃、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃に設定し、ISO 3167、多目的試験片(A型)として成形片を得た。
スクリューでの滞留時間は2分間(平均値)であった。
得られた多目的試験片(A型)を用いて、ISO−75−2に準じ、荷重0.46MPaにおける荷重たわみ温度を測定した。
【0118】
<(7)耐熱色調安定性>
ポリアミドペレット又はポリアミド組成物ペレットから多目的試験片(A型)を得る際に、冷却時間を調整することによって、スクリューでの滞留時間の異なる試験片を作製した。
平均滞留時間が2分、6分、10分の試験片を作製し、滞留時間が2分の試験片を基準サンプルとし、滞留時間による試験片の色の変化を、以下の基準で判定した。
◎:10分の滞留により試験片の変色が認められない。
○:10分の滞留により試験片の変色が認められる。
×:6分の滞留により試験片の変色が認められる。
【0119】
<(8)耐熱リフロー性>
実施例及び比較例で得られたポリアミドペレットから、射出成形機[IS−80EPN:東芝機械(株)製]を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度をTg+20℃、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃に設定し、試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)を得た。
得られた多目的試験片を、熱風リフロー炉で加熱して、試験片の形状変化と、変色の度合いとを確認し、以下の基準で判定した。
◎:試験片の変形なし。試験片のごくわずかな変色が認められる。
○:試験片の変形あり。試験片のごくわずかな変色が認められる。
×:試験片の変形あり。試験片の明らかな変色が認められる。
なお、このときに使用した熱風リフロー炉は、鉛フリーハンダ対応リフロー炉(UNI−6116H、日本アントム社製)であり、温度設定について、プレヒートゾーンの温度を180℃、ソルダリングゾーンの温度を280℃に設定した。
また、リフロー炉内のコンベアーベルト速度は0.3m/分に設定した。この条件下において、炉内の温度プロファイルを確認したところ、140℃〜200℃の熱暴露時間が90秒、220℃以上の熱暴露時間が48秒、260℃以上の熱暴露時間が11秒であり、最高到達温度は265℃であった。
【0120】
<(9)フォギング性>
ポリアミドの上記(6)の方法により得られた多目的試験片(A型)の両端を切断し、厚み4mm、巾10mm、長さ50mmの直方体成形片を作製した。得られた成形片2本を外径25mm、高さ役70mmの内容量50cm
3のガラス瓶に入れ、ガラス瓶上部にガラス板を載置し、蓋をした。
成形片の入ったガラス瓶を220℃に設定した熱風オーブン中に入れ、約20時間静置した。
その後、室温まで冷却し、ガラス板を取り出し、評価を実施した。評価判定は下記の通りとした。
◎:付着物が見られない。
○:ごくわずかな付着物が認められる。
×:明らかな付着物が認められる。
【0121】
<(10)色調>
実施例及び比較例で得られたポリアミドペレットについて、日本電色社製色差計ZE−2000を用いて反射法によりb値を測定した。
具体的には、前記ペレット試料を、専用治具を用いて13mmの厚さに敷き詰め、10mmΦの開口部から投光する方法により測定した。
【0122】
<(11)引張強度(MPa)>
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物ペレットから、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度をTg+20℃、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃に設定し、ISO 3167、多目的試験片(A型)として成形片を得た。スクリューでの滞留時間は2分間(平均値)であった。
得られた多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/minで引張試験を行い、引張強度を測定した。
ここで、ガラス転移温度Tg(℃)は、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定サンプルとした。そのサンプル10mgを用いて、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定した。
【0123】
<(12)目やに起因の異物の数(個/5kg)>
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物ペレット5kgを金属バットに広げ、目視にて目やに起因の異物の数を測定し、成形加工性の指標とした。
【0124】
〔実施例1〕
「プレポリマー・固相重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA896g(5.20モル)、及び(b)2MPD604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、等モルの原料モノマーを含む50質量%水溶液を作製した。
得られた水溶液と、重合時の添加物である、2MPD18g(0.16モル)を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。
液温約50℃から、オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm
2になるまで、加熱を続けた。
槽内の圧力を約2.5kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約85%になるまで濃縮した。
水の除去を止め、槽内の圧力が約10kg/cm
2になるまで(最高到達圧力が約10kg/cm
2)加熱を続けた。この時、液温は約210℃であった。液温が210℃になるようにヒーター温度を調整しながら、槽内の圧力を60分間かけて10kg/cm
2から大気圧(ゲージ圧は0kg/cm
2)になるまで降圧した。
さらに、加熱を続け、オートクレーブ内温度が220℃になるようにヒーター温度を調整し、発生した水蒸気を徐々に抜きながら3時間反応させた。
得られたポリアミドを2mm以下の大きさまで粉砕し、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%未満になるように調整してから、上記(1)〜(10)の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0125】
〔実施例2〕
前記〔実施例1〕において得られたポリアミドを使用し、さらに「固相重合」を実施した。
プレポリマー・固相重合法で得られたポリアミドペレット10kgを円錐型リボン真空乾燥機(株式会社大川原製作所製、商品名リボコーンRM−10V)に入れ、充分に窒素置換を行った。
1L/分で窒素を流したまま、攪拌を行いながら260℃で6時間の加熱を行った。その後、窒素を流通したまま温度を下げていき、約50℃になったところでペレットのまま装置から取り出し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドについて、上記(1)〜(10)の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0126】
〔
参考例3、実施例4〜6〕
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン及び重合時の添加物として、下記表1に記載の化
合物と量を用いた。実施例4では末端封止剤として酢酸を用いた。
また、重合の最終温度を下記表1に記載の温度にした。
その他の条件は、実施例1に記載したプレポリマー・固相重合法でポリアミドの重合を
行った。
さらに、固相重合の温度と時間として、下記表1に記載の温度と時間をかけた。その他
の条件は、上記実施例2と同様にして固相重合を行った。
得られたポリアミドについて、上記(1)〜(10)の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0127】
〔比較例1〕
(a)CHDA896g(5.20モル)、及び(b)2MPD604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、等モルの原料モノマーを含む50質量%水溶液を作製した。
得られた水溶液と、溶融重合時の添加物である、2MPD21g(0.18モル)を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。
液温約50℃から、オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm
2になるまで、加熱を続けた。
槽内の圧力を約2.5kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約85%になるまで濃縮した。
水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm
2になるまで加熱を続けた。槽内の圧力を30kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、液温の最終温度−50℃になるまで加熱を続けた。
さらに加熱は続けながら、槽内の圧力を60分間かけて30kg/cm
2から大気圧(ゲージ圧は0kg/cm
2)になるまで降圧した。液温の最終温度が345℃になるようにヒーター温度を調整した。液温はその状態のまま、槽内を真空装置で100torrの減圧下に10分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し、水分率を約0.2質量%未満になるように調整してから、上記(1)〜(10)の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0128】
〔比較例2〕
前記比較例1において、溶融重合時の添加物の量として、下記表1に記載の量にした。
その他の条件は、比較例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
さらに下記の方法により「固相重合」を実施した。
溶融重合で得られたポリアミドペレット10kgを円錐型リボン真空乾燥機(株式会社大川原製作所製、商品名リボコーンRM−10V)に入れ、充分に窒素置換を行った。
1L/分で窒素を流したまま、攪拌を行いながら260℃で6時間の加熱を行った。
その後、窒素を流通したまま温度を下げていき約50℃になったところでペレットのまま装置から取り出し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドについて、上記(1)〜(10)の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0129】
〔比較例3〜5、7、8〕
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び溶融重合時の添加物として、表1に記載の化合物と量を用いた。
また、重合の最終温度を表1に記載の温度にした。その他の条件は、比較例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
さらに、固相重合の温度と時間として、下記表1に記載の温度と時間をかけた。その他の条件は、比較例2に記載した固相重合と同様の方法により固相重合を行った。
得られたポリアミドについて、上記(1)〜(10)の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0130】
〔比較例6〕
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び溶融重合時の添加物として、表1に記載の化合物と量を用いた。
また、重合の最終温度を表1に記載の温度にした。その他の条件は、比較例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
得られたポリアミドについて、上記(1)〜(10)の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0131】
〔実施例7〕
実施例1で得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整して用いた。
2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度Tm2+20℃(この場合、327+20=347℃)、スクリュー回転数300rpm)を用いて、押出し機最上流部に設けられたトップフィード口よりポリアミド(100質量部)を供給し、押出し機下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口より無機充填材としてガラス繊維を表3に示す割合(質量部)で供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(7)、(11)、(12)の測定結果を下記表3に示す。
なお、引張試験における引張速度は5mm/minで実施した。
【0132】
〔実施例8〜14〕
原料成分の量を、下記表3に記載の割合になるようにした。その他の条件は、実施例7に記載の方法と同様にしてポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(7)、(11)、(12)の測定結果を下記表3に示す。
なお、引張試験における引張速度は5mm/minで実施した。
【0133】
〔比較例9〜15〕
原料成分の量を表3に記載の割合になるようにした。その他の条件は、実施例7に記載の方法と同様にしてポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(7)、(11)、(12)の測定結果を下記表3に示す。
なお、引張試験における引張速度は5mm/minで実施した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜6のポリアミドは、耐熱性、熱時安定性、耐熱色調安定性、耐熱リフロー性、フォギング性、及び高融点の全ての点で優れた特性を有するものであった。
特に、0.70<{分子鎖末端基総量−アミノ末端量}/分子鎖末端基総量<1.00を満たす実施例4のポリアミドは、優れた特性を有するものであった。
これに対して、環状アミノ末端量が30μ当量/gを超える比較例1、2、3では、耐熱色調安定性、フォギング性強度の点で不充分であった。
また、比較例4、5のアジピン酸とペンタメチレンジアミンからなるポリアミドは、環状アミノ末端量によらず耐熱色調安定性が優れており、これらの比較例のように、従来の加工温度が低いポリアミドでは加工時の色調安定性に関する課題はなかったことが明らかになった。
さらに、表3の結果から明らかなように、実施例7〜14のポリアミド組成物は、強度、耐熱色調安定性、成形加工性の点で優れた特性を有するものであった。一方、比較例9〜15のポリアミド組成物はこれらの点で不充分であった。
【0138】
本出願は、2011年3月15日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2011−056745)に基づくものであり、その内容は、ここに参照として取り込まれる。