(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942360
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】保磁力に優れた鉄−白金系磁性合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/04 20060101AFI20160616BHJP
H01F 10/14 20060101ALI20160616BHJP
H01F 41/20 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
H01F1/04 Z
H01F10/14
H01F41/20
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-184294(P2011-184294)
(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公開番号】特開2013-45990(P2013-45990A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】397022885
【氏名又は名称】公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000242644
【氏名又は名称】北陸電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076484
【弁理士】
【氏名又は名称】戸川 公二
(72)【発明者】
【氏名】石神 龍哉
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−228816(JP,A)
【文献】
特開平06−103552(JP,A)
【文献】
特開2008−159177(JP,A)
【文献】
特開2007−107086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/04
H01F 10/14
H01F 41/20
C21D 1/76
C21D 1/773
C21D 6/00
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄-白金系合金にNイオンビームを直接照射して、窒素原子の添加量が11at.%以上となるように合金中に窒素原子を注入した後、合金の熱処理を行って前記注入された窒素を外部に放出することを特徴とする保磁力に優れた鉄-白金系磁性合金の製造方法。
【請求項2】
鉄-白金系合金の熱処理を水素雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1記載の保磁力に優れた鉄-白金系磁性合金の製造方法。
【請求項3】
鉄-白金系合金の熱処理を1.0×10-3Pa以下の高真空中でも行うことを特徴とする請求項1または2に記載の保磁力に優れた鉄-白金系磁性合金の製造方法。
【請求項4】
Nイオンビームを照射する鉄-白金系合金が、Fe層とPt層を交互に積層したFe/Pt多層薄膜であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の保磁力に優れた鉄-白金系磁性合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄-白金系磁性合金の製造方法の改良、詳しくは、磁性合金の保磁力を増大させることができ、しかも、増大させる保磁力の大きさや増大させる部位も容易に制御できる保磁力に優れた鉄-白金系磁性合金の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能永久磁石の分野では、磁石の強さを示す指標となる最大エネルギー積(BH)
maxが大きく、かつ、安価な希土類系磁石(Nd-Fe-B系やSm-Co系など)が主流となりつつあるが、MEMS(Micro Electro Mechanical System)のアクチュエータや歯科用磁性アタッチメント等、特殊な利用分野では、鉄-白金系磁石への期待が高まっている。
【0003】
これは、鉄-白金系磁石が、希土類系磁石よりも製造コストの面で劣るものの、希土類系磁石に準ずる磁気性能を有し、また熱安定性や加工性、耐食性の面では希土類系磁石を凌ぐ特性を持つためである。そして、この特性を上手く利用すれば、腐食環境で使用される超小型デバイスや義歯等の生体用器具の品質や安全性を大幅に改善できる。
【0004】
一方、永久磁石の性能に関しては、磁石の強さを表す最大エネルギー積だけでなく磁力の抜け難さを表す保磁力も大きな指標となるが、磁性材料に鉄-白金系薄膜合金を使用する場合、その厚みに応じて保磁力が著しく低下する問題が生じるため、厚みのある薄膜永久磁石の製造には保磁力を増大する技術が必須となる。
【0005】
そこで、従来においては、鉄-白金系薄膜合金をスパッタ法によって成膜する際、基板の表面温度を650℃以上まで予め加熱してから成膜を行うことにより、基板上に直径100nm前後のFePt微粒子が島状に並んだ薄膜を形成し、この磁気的に孤立した無数の微粒子から成る構造によって保磁力を高める技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、上記島状に並んだFePt微粒子から薄膜を形成する技術では、特許文献1の段落番号[0031]にも記載されているように、厚みが50nm以上の薄膜を形成しようとすると、島同士が繋がって連続化してしまい、それによって磁気的に孤立した微粒子が失われて保磁力が急激に低下してしまうため、製造する薄膜の厚さが制限される。
【0007】
また、他にも鉄-白金系磁石の保磁力を増大する技術として、鉄-白金系薄膜合金をスパッタ法により成膜する際、チャンバー内に流した窒素ガスとスパッタ粒子(FePt粒子)とを反応させて薄膜内に窒素元素を導入し、更にこの薄膜を焼鈍(アニール)処理することで保磁力を向上させる技術も公知となっている(特許文献2、非特許文献1・2参照)。
【0008】
しかし、上記技術では、窒素元素の添加量に応じて保磁力が増大するものの、反応性スパッタ法では添加量に限界があるため(例えば、非特許文献2では窒素原子を15at%まで添加できることが報告されている)、その限界量を超えて窒素元素を合金に添加することができない。また、反応性スパッタ法では、添加量の調整や局所的な添加も難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−289005号公報
【特許文献2】特開平6−224038号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.Y.You,et al."Magnetic properties and microstructures of Fe-Pt thin films sputter deposited under partial nitrogen gas flow"Journal of Applied Physics 98 (2005) 013902 1-8
【非特許文献2】H.Y.Wang,et al."Improvement in hard magnetic properties of FePt films by N addition"Journal of Applied Physics 95 (2004) 2564-2568
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、高機能な永久磁石材料の製造方法であって、鉄-白金系合金の保磁力を増大させることができ、しかも、増大させる保磁力の大きさや増大させる部位についても容易に制御できる保磁力に優れた鉄-白金系磁性合金の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段は次のとおりである。
【0013】
即ち、本発明は、鉄-白金系磁性合金の製造方法において、鉄-白金系合金にNイオンビームを
直接照射して、窒素原子の添加量が11at.%以上となるように合金中に窒素原子を注入してから、合金の熱処理を
行って前記注入された窒素を外部に放出する工程を採用した点に特徴がある。
【0014】
また、上記鉄-白金系合金の熱処理については、熱処理を水素雰囲気中で行って合金中の酸素を抜くことにより磁性合金の保磁力を更に向上できる。そして更に、水素雰囲気中での熱処理に、1.0×10
-3Pa以下の高真空中の熱処理を組み合わせれば保磁力の増大効果は一層顕著となる。
【0015】
そしてまた、上記Nイオンビームを照射する鉄-白金系合金については、単層膜やバルク合金も使用できるが、特にFe層とPt層を交互に積層したFe/Pt多層薄膜が好ましい。ちなみに本明細書中では、厚みがサブミクロンからサブミリオーダーのものを”薄膜合金”、厚みがミリオーダー以上のものを”バルク合金”と呼ぶ。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、鉄-白金系磁性合金の製造する際、熱処理を行う前に、鉄-白金系合金にNイオンビームを照射して窒素原子を直接注入する工程を採用したことにより、従来の反応性スパッタ法よりも窒素元素の添加量を大幅に増やすことが可能となる。またそれによって、保磁力の増大効果も従来以上に引き上げることができる。
【0017】
またここで、窒素元素の添加により保磁力が増大する理由についても簡単に説明しておくと、合金の保磁力は、熱処理時におけるFePt結晶子の成長(結晶粒径の拡大)によって著しく低下する傾向があるが、予め合金中に注入した窒素原子が熱処理時に外部に放出されることでこの結晶子の成長が抑えられ、その結果、保磁力が向上すると考えられている。
【0018】
また、Fe/Pt多層膜を使用する場合には、窒素原子が放出されて生じた合金中の格子欠陥によって、熱処理時における鉄・白金原子の拡散が促進され、結晶の秩序化(鉄原子、白金原子がそれぞれ存在すべき格子位置に存在するようになること)が進むことで、合金の磁気性能が向上するとも考えられる。
【0019】
一方、本発明では、窒素原子の導入手段にNイオンビームを用いたことにより、イオンビームのビーム電流や照射時間、照射面積を調節して、増大させる保磁力の大きさや増大させる部位の制御も容易に行うことができるため、最適な保磁力を有する鉄白金系磁石を製造することが可能となる。
【0020】
したがって、本発明により、マイクロ化に対応でき腐食環境にも耐え得る高機能な鉄-白金系磁石の保磁力を一層向上することができ、しかも、永久磁石の用途に合わせて保磁力の調整も行える鉄-白金系磁性合金の製造方法を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例1及び実施例2で作製したサンプルの保磁力を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例1及び実施例2で作製したサンプルの磁気ヒステリシス曲線を示すグラフである。
【
図3】イオン注入前、熱処理前および熱処理後のFePt合金の後方散乱スペクトルを示すグラフである。
【
図4】イオン注入前、熱処理前および熱処理後のN原子量の変化を示すグラフである。
【
図5】本発明の製法および従来の製法で作製したFePt合金のX線回折パターンを示すグラフである。
【
図6】本発明の製法および従来の製法で作製したFePt合金の結晶子の大きさを示すデータである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
『実施例1』
本発明の実施例1について、以下に説明する。まずこの実施例1では、電子ビーム加熱蒸着装置を用いてFe/Pt多層膜の成膜を行った。なお、成膜基板には、表面が酸化被膜(厚さ:120nm)で覆われたシリコンウェハ(厚さ:0.5mm)を使用し、成膜時の装置内の真空度は1×10
-4Paに設定した。
【0023】
そして、成膜時においては、蒸着原子の吸着性が向上させるために最初に基板を600℃まで加熱した後、この加熱した基板表面にPt層を10nm成膜し、その後、基板の温度を100℃まで下げた上で、成膜したPt層の上からFe層とPt層を交互にFe/Pt層が17周期繰り返されるように堆積させた。
【0024】
なお、上記方法で成膜したFe/Pt多層膜の厚さは、断面SEM像から判断して110±5nmであった。また、成膜時におけるFe/Pt各層の成膜速度は、Fe層が0.4Å/s、Pt層が0.3Å/sであった。他方、Fe/Pt多層膜の組成は、エネルギー分散X線分光(EDS)測定およびラザフォード後方散乱(RBS)測定からFe
54Pt
46と求められた。
【0025】
そして次に、上記Fe/Pt多層膜に対し、中電流イオン注入装置を用いてNイオンビームの照射し、窒素原子の注入を行った。その際、注入する窒素イオン(N
2+)のエネルギーは、窒素原子をFe/Pt膜中に広く分布させるために120keV或いは130keVの何れかを選択した。
【0026】
なお、上記イオン注入において、SRIMコードによって計算された窒素原子の飛程はFe/Pt多層膜の膜厚の約半分であり、注入時の試料温度は80℃以下であった。また本実施例では、窒素原子の注入を、注入量0.5〜3.5×10
17atoms/cm
2(添加量6〜31at.%)の範囲で段階的に行い複数のサンプルを作製した。
【0027】
下記の表1にサンプルの具体的な内容を示す。なお、窒素の注入量は、Nイオンビームのビーム電流、照射面積、照射時間から計算した。また、添加量は、Fe/Pt多層膜の密度を14.0g/cm
3とし、膜厚を110nmとして計算した。
【表1】
【0028】
そして最後に、上記窒素原子を注入したサンプルを、赤外線ランプアニール装置によって熱処理することでFePt薄膜合金を作製した。なお加熱条件に関しては、加熱温度を650℃、加熱時間を15分間とし、高真空中(基底真空度が2×10
-4Pa、加熱時の最高圧力が1.1×10
-3Pa)で加熱した。また、最高温度までの到達時間は10分間とした。
【0029】
『実施例2』
次に、本発明の実施例2について、以下に説明する。この実施例2では、上記実施例1と同じ方法・条件でFe/Pt多層膜の成膜、及び窒素原子の注入を行う一方、Fe/Pt多層膜の熱処理については、高真空中での熱処理だけでなく水素雰囲気下での熱処理も組み合わせて行った。
【0030】
具体的には、一回目の熱処理の条件を、加熱温度650℃、加熱時間15分間、高真空雰囲気(基底真空度が2×10
-4Pa、加熱時の最高圧力が1.1×10
-3Pa)とし、二回目の熱処理の条件を、加熱温度350℃、加熱時間30分間、0.1気圧中の水素雰囲気とした。また、どちらの熱処理も最高温度までの到達時間は10分とした。
【0031】
『効果の実証試験』
次に、本発明の保磁力増大効果を実証するために行った実証試験について説明する。この実証試験では、実施例1の方法で作製したFePt薄膜合金(試料A〜G,比較試料S)と、実施例2の方法で作製したFePt薄膜合金(試料A’〜G’,比較試料S’)についてそれぞれ保磁力を測定した。
【0032】
その結果、
図1に示すように、窒素原子を22at.%以上添加した試料D〜F及びD’〜F’の方が、添加なしの比較試料S及びS’よりも膜面に対し水平方向の保磁力が高い数値で計測された。また、膜面に対し垂直方向の保磁力も、窒素原子を11at.%以上添加した試料B〜F及びB’〜F’の方が添加なしの比較試料S及びS’よりも高い数値で計測された。
【0033】
したがって、上記保磁力の測定結果により、窒素元素を多く注入した試料の方が保磁力が増大していることが確認できた。また、高真空中のみで熱処理を行った試料A〜Fよりも水素雰囲気下での熱処理を組み合わせた試料A’〜F’の方が保磁力が向上していることも確認できた。
図1のグラフの具体的な数値については以下の表2に示す。
【表2】
【0034】
一方、この実証試験では、試料F・F’と比較試料S・S’の磁化曲線の測定も行った。その結果は
図2に示す。なお、保磁力及び磁化曲線の測定は、PPMS-VSM(Physical Property Measurement System-Vibrating Sample Magnetometer,Quantum Design,MODEL6000)を用いて室温で行われ、磁化曲線の測定時には最大40kOeまでの磁場が掛けられた。
【0035】
そして、上記磁化曲線の測定結果により、窒素を添加したFePt合金は、窒素を添加しないFePt合金よりも飽和磁束密度及び残留磁束密度が低下しているものの、保磁力については大きく増大していることが確認できた。また、最大エネルギー積(BH)maxも大きな低下は見られなかった。
【0036】
『本発明の作用・効果に関する検証試験(I)』
次に、本発明の作用・効果を裏付けるために行った検証試験(I)について説明する。この検証試験(I)では、窒素の注入量が1.6×10
17atoms/cm
2及び3.2×10
17atoms/cm
2の2種類のFePt薄膜について、窒素注入前、熱処理前、熱処理後の各段階で6.0MeVの
4He
2+イオンビームを照射して後方散乱スペクトルの測定を行った。
【0037】
その結果、
図3に示すように、Fe及びPtによって散乱した
4Heのカウント数から、FeとPtの組成比が54:46であると求められた。なお、上記測定時のビーム電流は7nA、検出角は165°とした。また6.0MeVの
4Heの
14Nによる165°方向への微分散乱断面積は8.6×10
-26cm
2であり、FeおよびPtからの微分散乱断面積にはラザフォードの散乱断面積を用いた。
【0038】
また更に、
図4に示すグラフは、上記後方散乱スペクトルのカウント数からFePt合金中のNの面密度を算出したものであるが、この結果からFePt合金中の窒素元素は注入直後には注入した量だけほぼそのまま合金中に残っているものの、FePt合金の熱処理後には注入された窒素の殆どが外部に放出されていることが確認できた。
【0039】
『本発明の作用・効果に関する検証試験(II)』
次に、本発明の作用・効果を裏付けるために行った検証試験(II)について説明する。この検証試験(II)では、窒素元素の注入量および熱処理の条件の異なる5つの試料についてX線回折装置(Rigaku,RINT2500)を用いて、X線回折パターンの測定を行った。なお、測定は入射X線をCu Kα(l=1.54 A)とし、q-2q法により行った。
【0040】
また、測定に用いた試料(a)〜(e)の詳細は以下に記載する。(a)N注入量:なし、熱処理の条件:650℃,15分間,高真空中、(b)N注入量:1.5×10
17atoms/cm
2、熱処理の条件:650℃,15分間,高真空中、(c)N注入量:3.0×10
17atoms/cm
2、熱処理の条件:650℃,15分間,高真空中、(d)N注入量:1.5×10
17atoms/cm
2、熱処理の条件:650℃,15分間,高真空中+350℃,30分間,0.1気圧の水素雰囲気、(e)N注入量:3.0×10
17atoms/cm
2、熱処理の条件:650℃,15分間,高真空中+350℃,30分間,0.1気圧の水素雰囲気。
【0041】
そして、上記X線回折パターンの測定によって得られた
図5のFePt(111)回折ピークから、Scherrerの式を用いて得られた結晶子の大きさを求めたところ、
図6に示す数値が算出された。またこの結果により、窒素の注入量が多い方が、熱処理後のFePt合金の結晶子が小さくなること、及び水素雰囲気で加熱しても、結晶子の大きさは変わらないことが確認できた。
【0042】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、記載した実施例にのみ限定されるものではなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、Nイオンビームを照射する鉄-白金系合金には、Fe/Pt多層膜だけでなくFePt単層膜やバルク合金等も使用することもできる。
【0043】
また、鉄-白金系合金に薄膜合金を使用する場合には、蒸着以外の例えば、スパッタ法や電着法、冷間圧延法等によってFePt薄膜を成膜することができ、またバルク合金の場合に関しても、一般的に用いられている種々の方法を採用することができる。
【0044】
また更に、鉄-白金系合金にバルク合金を使用する場合には、Nイオンビームの照射に用いるイオン注入器に、高エネルギーイオン注入装置(シンクトロン加速器等)を用いることによってバルク合金の深い部分にまで窒素元素を注入することができる。
【0045】
そしてまた、熱処理の条件に関しても、高真空中の加熱を組み合わせず水素雰囲気下の加熱(加熱温度: 350〜600℃)のみで熱処理を行っても優れた保磁力増大効果が得られることが分かっており、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
「鉄-白金系永久磁石」は、コバルト-白金系磁石とともに加工性磁石と呼ばれており、高価な反面、耐食性に優れ、曲げ、切削加工が容易な磁石として精密機械などに使用されている。そして特に、鉄-白金系磁石は、保磁力が10kOe程度の薄膜を容易に作成することができ、しかも、結晶性磁気異方性が大きいことから熱安定性も高いといわれている。
【0047】
それゆえ、単純な永久磁石の性能としては、希土類系磁石が勝っているものの、厳しい環境下で使用され、かつ、サイズも極めて小さいMEMS等への組み込みには、希土類系磁石よりも鉄-白金系磁石の方が適しており、磁性材料の開発においては鉄-白金系磁石の一層の性能向上が求められている。
【0048】
そのような中で、本発明の鉄-白金系磁性合金の製造方法は、鉄-白金系磁石の保磁力を従来よりも格段に向上することができ、しかも、保磁力の増大量を制御することもできる有用な技術であるため、その産業上の利用価値は非常に高い。