【文献】
LG Electronics,Specification impact of reduced power ABS,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #67 R1-113978,2011年11月14日
【文献】
Motorola Mobility ,System Performance for eICIC ,3GPP TSG RAN1#63 R1-114022 ,2011年11月14日
【文献】
New Postcom,ABS signaling considerations for LTE-A FDD,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #63 R1-105939,2010年11月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記干渉抑制処理には、前記ブランク区間に含まれる既知信号による干渉に対して、その既知信号を推定し、推定した既知信号を受信信号から除去する処理、ビームフォーミングにより干渉を回避する処理、又は、時間領域あるいは周波数領域での信号処理により干渉を除去する処理の内、少なくともいずれか1つが含まれている請求項3に記載の基地局装置。
前記識別情報には、前記ブランク区間のパイロット信号の位置に関する情報、PDCCHの使用状態を示す情報、及び、PDSCHの使用状態を示す情報の内、少なくともいずれか1つが含まれている請求項1〜4のいずれか一項に記載の基地局装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピコセルは、マクロセル圏内に配置されるため、ピコセルとマクロセルとが同一の通信周波数を使用した場合、ピコセルのセルエッジ付近に位置する端末装置は、マクロセルから強い干渉を受けることが懸念される。
つまり、ピコセルのセル中央付近(ピコセルを形成する小型基地局装置の近傍)では、マクロセルを形成する基地局装置からの電波に比べて、ピコセルを形成する小型基地局装置からの電波の方が強い。したがって、ピコセルの端末装置の通信品質は、比較的良好である。
しかし、ピコセルを形成する小型基地局装置から離れると、小型基地局装置からの電波が弱くなる。この結果、ピコセルのセルエッジ付近では、マクロセルからの電波の干渉を受け易くなる。
【0005】
そこで、マクロセルが送信するフレームにおいて、その使用を制限するブランク区間(ブランクサブフレーム)を設けておくことが考えられる。マクロ基地局装置による使用が制限されるブランク区間の間においては、ピコセル内の端末装置はマクロセル側から干渉を受けない。したがって、ピコセルのセルエッジ付近に位置する端末装置には、そのブランク区間を優先的に割り当てることで、ピコセルのセルエッジ付近に位置する端末装置における、マクロセルからの干渉による通信品質低下を抑制することができる。
【0006】
ここで、ブランク区間については、マクロ基地局装置の使用を制限するためのタイプとして、種々の方法が考えられる。
例えば、マクロ基地局装置が、送信信号の送信を全く行わないことによりブランク区間を設定した場合には、ピコセルのセルエッジ付近に位置する端末装置にとっては、マクロセルからの干渉を好適に回避でき、干渉を受ける可能性が極めて低くなる。
しかし、マクロ基地局装置が、自装置の送信電力を小さくして実質的なセルサイズを小さくすることでブランク区間を設定することも考えられる。この場合、マクロ基地局装置による周囲の基地局装置に対する与干渉を低減することはできるが、マクロ基地局装置は自装置の送信を停止するわけではないので、ピコセルに接続する端末装置に対して干渉を与える可能性が全くなくなるわけではない。
【0007】
上記のようにブランク区間には、種々のタイプが考えられ、そのタイプによっては、与干渉の度合が変化する。ピコセルのセルエッジ付近に位置する端末装置は、上述のように、ピコ基地局装置に優先的に接続させる必要があるので、マクロ基地局装置からの干渉を抑制しつつ、できるだけピコ基地局装置との通信を維持するために、ブランク区間のタイプに応じた干渉抑制処理等の受信処理を行う必要がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ブランク区間のタイプに応じた受信処理を端末装置に実行させることができる基地局装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の基地局装置は、第1の他の基地局装置の無線フレームに設定されたブランク区間のタイプを識別可能な識別情報を取得する取得部と、前記識別情報を自装置に接続する端末装置、及び/又は、前記第1の他の基地局装置とは異なる第2の他の基地局装置に送信する送信制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
上記のように構成された基地局装置によれば、自装置に接続する端末装置、及び/又は、第2の他の基地局装置に、第1の他の基地局装置のブランク区間のタイプを識別可能な識別情報を送信することで、当該端末装置等に、ブランク区間のタイプについて識別させることができる。この結果、ブランク区間のタイプに応じた受信処理を端末装置に実行させることができる。また、第2の他の基地局装置に、当該第2の他の基地局装置に接続する端末装置に対して前記ブランク区間のタイプに関する識別情報を送信させる等の処理を実行させることができる。
【0011】
(2)前記基地局装置において、前記識別情報に基づいて、前記ブランク区間に対応する自装置の無線フレームの対応区間の送信内容が変更されるように自装置の無線フレームを調整するフレーム調整部をさらに備え、前記送信制御部は、調整後の自装置の無線フレームに関する情報を前記識別情報に含めて送信することが好ましい。
この構成によれば、ブランク区間及び対応区間の両者に同期信号等の制御信号が含まれており、かつ、ブランク区間のタイプによる干渉の抑制度合によって自装置の制御信号が干渉を受けるおそれがある場合にも、対応区間の送信内容が変更されるように無線フレームを調整することで、自装置の信号が受ける与干渉を抑制することができる。
基地局装置が自装置の無線フレームを調整すると、自装置と他装置との間で同期信号等の制御信号の位置関係が変化し、端末装置側からみたときのブランク区間に相対的な影響を与える。よって、基地局装置による調整後の無線フレームに関する情報を端末装置に送信することで、基地局装置が無線フレームを調整したことによる影響を反映したブランク区間を、端末装置に認識させることができる。
【0012】
(3)前記基地局装置において、前記ブランク区間において前記端末装置に及ぶ干渉を抑制するために当該端末装置が実行する干渉抑制処理に関する設定情報を受信する受信制御部と、前記第1の他の基地局装置に向けた前記端末装置のハンドオーバの要否を判定するための基準パラメータを、前記識別情報及び前記設定情報に基づいて設定するパラメータ設定部と、をさらに備えていることが好ましい。
この場合、基地局装置は、端末装置が実行する干渉抑制処理を認識でき、さらに識別情報及び設定情報に基づいて、基準パラメータを設定するので、ブランク区間のタイプ及び端末装置が行う干渉抑制処理に基づいた干渉の抑制度合に応じて、第1の他の基地局装置に向けた端末装置のハンドオーバの要否判定の基準を調整することができる。
【0013】
(4)前記干渉抑制処理には、前記ブランク区間に含まれる既知信号による干渉に対して、その既知信号を推定し、推定した既知信号を受信信号から除去する処理、ビームフォーミングにより干渉を回避する処理、又は、時間領域あるいは周波数領域での信号処理により干渉を除去する処理の内、少なくともいずれか1つが含まれているものであることが好ましい。
【0014】
(5)さらに、前記識別情報には、前記ブランク区間のパイロット信号の位置に関する情報、PDCCHの使用状態を示す情報、及び、PDSCHの使用状態を示す情報の内、少なくともいずれか1つが含まれていることが好ましい。
【0015】
(6)また、本発明の基地局装置は、自装置の無線フレームにブランク区間を設定するブランク区間設定部と、前記ブランク区間設定部が設定したブランク区間のタイプを識別可能な識別情報を、他の基地局装置に送信する基地局間通信部と、を備えていることを特徴としている。
上記構成の基地局装置によれば、自装置の無線フレームに設定したブランク区間のタイプを他の基地局装置に識別させることができる。この結果、他の基地局装置に、当該他の基地局装置に接続する端末装置に対して前記ブランク区間のタイプに関する識別情報を送信させる等の処理を実行させることができる。
【0016】
(7)また、本発明の基地局装置は、他の基地局装置の無線フレームに設定されたブランク区間のタイプを識別可能な識別情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記識別情報に基づいて、ブランク区間を自装置の無線フレームに設定するブランク区間設定部と、を備えていることを特徴としている。
上記構成の基地局装置によれば、他の基地局装置が設定するブランク区間に応じて、同じタイプのブランク区間を自装置の無線フレームに設定することができるので、設定されるブランク区間のタイプを複数の基地局装置の間で統一することができる。この結果、このブランク区間を利用する基地局装置及び端末装置においてその利便性が高まる。
【0017】
(8)本発明は、基地局装置に接続する端末装置であって、前記基地局装置とは異なる他の基地局装置の無線フレームに設定されたブランク区間のタイプを識別するための識別情報を、前記基地局装置を介して取得する取得部と、前記識別情報に基づいて、前記ブランク区間における干渉抑制処理を設定する干渉処理設定部と、を備えていることを特徴としている。
上記構成の端末装置によれば、他の基地局装置の無線フレームに設定されたブランク区間のタイプを識別することができるので、ブランク区間のタイプに応じた受信処理を実行することができる。
【0018】
(9)前記干渉抑制処理には、前記ブランク区間に含まれる既知信号による干渉に対して、その既知信号を推定し、推定した既知信号を受信信号から除去する処理、ビームフォーミングにより干渉を回避する処理、又は、時間領域あるいは周波数領域での信号処理により干渉を除去する処理の内、少なくともいずれか1つが含まれていることが好ましい。
【0019】
(10)他の観点からみた本発明は、第1の基地局装置の無線フレームに設定されたブランク区間を、第2の基地局装置に接続する端末装置、及び/又は、第3の基地局装置に認識させる方法であって、前記ブランク区間のタイプを識別可能な識別情報を前記第2の基地局装置が取得する取得ステップと、前記第2の基地局装置が、前記識別情報を前記端末装置、及び/又は、前記第3の基地局装置に送信するステップと、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブランク区間のタイプに応じた受信処理を端末装置に実行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.通信システムの構成]
図1は、無線通信システムの構成を示す概略図である。この通信システムは、複数の基地局装置(BS;Base Station)1を備えたセル方式のシステムである。本実施形態の無線通信システムは、例えば、LTEが適用されるシステムであり、各基地局装置1と、端末装置(UE;User Equipment)2との間において、LTEに準拠した通信が行われる。ただし、通信方式は、LTEに限られるものではない。
【0023】
通信システムを構成する複数の基地局装置1には、例えば、数キロメートルの大きさの通信エリア(マクロセル)MCを形成する複数のマクロ基地局装置(Macro Base Station)1aのほか、マクロセルよりも小さいセルを形成する小型基地局装置1b,1cを含めることができる。小型基地局装置としては、たとえば、ピコセルPCを形成するピコ基地局装置1b、及び、フェムトセルFCを形成するフェムト基地局装置1cがある。
以下では、マクロ基地局装置をマクロBS、ピコ基地局装置をピコBS、フェムト基地局装置をフェムトBSというものとする。
【0024】
ピコBS1bは、マクロセルMC内に1又は複数設置される。ピコBS1bは、マクロBS1aと同様に、主に、通信事業者によって設置される。このピコBS1bをマクロセルMC内に設置することで、マクロセルMC内の端末装置(移動端末)2を、マクロBS1aではなくピコBS1bに優先的に接続させれば、マクロBS1aの通信負荷を軽減させることができ、システム全体のスループットを向上させることができる。
【0025】
フェムトBS1cも、マクロセル内に1又は複数設置される。フェムトBS1cは、主に、通信システムの顧客(ユーザ)である個人や企業などによって設置される。フェムトBS1cを設置することで、フェムト基地局装置の設置場所における通信環境の改善などを図ることができる。
【0026】
フェムトセルFC及びピコセルPCは、ともに、マクロセルMCよりも狭い通信エリアを持つが、「フェムト」及び「ピコ」という名称が示すように、一般に、フェムトセルFCの方が、ピコセルPCよりも狭い。
なお、LTEにおいて、マクロBS及びピコBSは、「eNB」とよばれ、フェムトBSは、「HeNB」とよばれる。
【0027】
図2は、マクロBS1a、ピコBS1b、及びフェムトBS1cの各基地局装置を接続する基地局間ネットワーク(有線ネットワーク)を示している。eNBであるマクロBS1a及びピコBS1bは、S1インターフェースとよばれる通信インターフェースによる回線6を介して、MME(Mobility Management Entity)と接続されている。MME3は、端末装置2の位置等の管理を行う管理装置であり、各端末装置2の移動管理についての処理を行うノードである。
さらに、eNB間はX2インターフェースと呼ばれる通信インターフェースによる回線7によって相互に接続されており、eNB間で直接的に情報交換のための通信が可能である。ただし、現行の標準では、フェムトBS1cはX2インターフェースを持つことができない。
なお、X2インターフェースによる接続は、
図2に示す接続に限られず、任意のeNB間に設けることができる。
【0028】
HeNBであるフェムトBS1cは、HeNBゲートウェイ(GW)5を介してMME3に接続されている。MME3とゲートウェイ5との間、及び、ゲートウェイ5とフェムトBS1cとの間も、それぞれS1インターフェースと呼ばれる通信インターフェースによる回線6によって接続されている。
なお、フェムトBS1cは、HeNBゲートウェイ(GW)5を介さずに、S1インターフェースによって、MME3と接続されていてもよい。
【0029】
上記のS1インターフェース及びX2インターフェースによるネットワークは、各基地局装置1a,1b,1cの間を有線で接続する基地局間ネットワークを構成している。この基地局間ネットワークには、通信を管理するサーバ(図示省略)などが設置される。
なお、各基地局装置1a,1b,1c間は、基地局間ネットワーク等を利用して、基地局間同期が確保されている。
【0030】
[2.LTEのフレーム構造]
本実施形態の通信システムが準拠するLTEにおいて採用可能なFDD方式においては、上り信号(端末装置から基地局装置への送信信号)と、下り信号(基地局装置から端末装置への送信信号)との間で、互いに異なる使用周波数を割り当てることで、上り通信と下り通信とを同時に行う。
【0031】
図3は、LTEにおける上り及び下りそれぞれの無線フレームの構造を示す図である。LTEにおける下りの基本フレームである無線フレーム(DLフレーム)及び上りの無線フレーム(ULフレーム)は、その1無線フレーム分の時間長さがそれぞれ10ミリ秒であり、#0〜#9まで10個のサブフレーム(一定の時間長さを持つ通信単位領域)によって構成されている。これらのDLフレームとULフレームは、そのタイミングが揃えられた状態で、時間軸方向に配置される。
【0032】
図4は、DLフレーム(基地局装置の送信フレーム)の詳細な構造を示す図である。図中、縦軸方向は周波数を示しており、横軸方向は時間を示している。
DLフレームを構成するサブフレームは、それぞれ2つのスロットにより構成されている。また、1つのスロットは、7個(♯0〜♯6)のOFDMシンボルにより構成されている(Normal Cyclic Prefixの場合)。
また、図中、データ伝送の上での基本単位領域であるリソースブロック(RB:Resource Block)は、周波数軸方向に12サブキャリア、時間軸方向に7OFDMシンボル(1スロット)で定められる。
また、DLフレームの周波数方向の帯域幅は、最大20MHzで複数の設定値が規定されている。
【0033】
図4に示すように、各サブフレームの先頭には、基地局装置1が端末装置2に対し、下り通信に必要な制御チャネルを割り当てるための伝送領域が確保されている。この伝送領域は、各サブフレームにおいて先頭側に位置するスロットのシンボル♯0〜♯2(最大で3シンボル)で割り当てられている。この伝送領域には、PDCCH(Physical Downlink Control Channel)、PCFICH(Physical Control Format Indicator. Channel)、PHICH(Physical HARQ Indicator Channel)などが割り当てられている。
【0034】
DLフレームを構成する10個のサブフレームの内、1番目(♯0)及び6番目(♯5)のサブフレームそれぞれには、基地局装置やセルを識別するための制御信号である、第一同期信号(PSS:Primary Synchronisation Signal)及び第二同期信号(SSS:Secondary Synchronisation Signal)を送信するための領域(P−SCH:Primary Synchronizaiton Channel,S−SCH:Secondary Synchronizaiton Channel)が割り当てられている。
【0035】
また、DLフレームにおいて、1番目のサブフレーム♯0には、ブロードキャスト送信によってシステムの帯域幅等を端末装置に通知するためのブロードキャストチャネル(PBCH:Physical Broadcast Channel)が割り当てられる。PBCHは、時間軸方向において、1番目のサブフレーム♯0における後方側のスロットのシンボル♯0〜♯3の位置に4つのシンボル幅で配置され、周波数軸方向において、DLフレームの帯域幅の中央の位置に6リソースブロック幅分(72サブキャリア)で割り当てられる。このチャネルは、4フレームにわたって同一の情報を送信することで、40ミリ秒ごとに更新されるように構成されている。
PBCHには、通信帯域幅や、無線フレーム番号等を含んだマスタ情報ブロック(MIB:Master Information Block)が格納されている。
【0036】
上述の各チャネルが割り当てられていない他のリソースブロックは、ユーザデータ等を格納するためのDL共有チャネル(PDSCH)として用いられる。このPDSCHは、複数の端末装置で共有して用いられるエリアである。
PDSCHに格納されるユーザデータの割り当てについては、各サブフレームの先頭に割り当てられているPDCCHに格納される、下りの無線リソース割当に関するリソース割当情報により端末装置に通知される。このリソース割当情報は、各PDSCHの無線リソース割当を示す情報であり、端末装置は、このリソース割当情報によって、そのサブフレーム内に自己に対するデータが格納されていることを認識できる。
P−SCH,S−SCH,PBCH、PDCCHその他の制御チャネルには、端末装置2がPDSCHにて送信されるデータ信号を受信するために必要な各種の制御信号を含んでいるため、これらの制御チャネルが、電波干渉を受けると、PDSCHによって送信されたデータ信号の受信に支障を来たす。
【0037】
また、PDSCHには、ユーザデータの他、各端末装置共通の制御信号、各端末装置個別の制御信号等も格納される。PDSCHに格納される制御信号としては、例えばシステム情報ブロック(SIB:System Information Block)などの報知情報が挙げられる。
【0038】
システム情報ブロックとしては、SIB1〜SIB9がある。SIB1が送信されるタイミング等は、MIBで指定される。SIB2〜SIB9のスケジューリング情報は、SIB1に含まれている。したがって、SIBなどの報知情報は、端末装置2が基地局装置1との接続を確立してなくても、端末装置が読み取ることができる。なお、SIBの数は特に限定されるものではない。
【0039】
[3.ハンドオーバについて]
端末装置2をマクロセルMCよりもピコセルPCに優先的に接続させるためには、例えば、ピコセルPCのセルエッジ付近に位置する端末装置2aの接続先をできるだけピコセルPCで維持することが考えられている。
ピコセルPCのセルエッジ付近では、マクロBS1aからの電波(干渉波)が届き易い上、ピコBS1bからの電波(希望波)の強度が弱くなるため、ピコセルPCに接続している端末装置2がマクロセルMCにハンドオーバし易くなる。このため、ピコセルPCのセルエッジ付近では、マクロBS1aにハンドオーバする端末装置2も現れる。
【0040】
図5は、ピコ基地局装置1bに接続する端末装置2が、マクロ基地局装置1aにハンドオーバする際の一般的な処理を示すシーケンス図である。
端末装置2がハンドオーバするには、まず、端末装置2が接続するピコBS1bが、当該端末装置2に対して周辺セルの受信品質(受信電力)の測定(メジャメント)を要求する(ステップS1)。メジャメント要求に対して端末装置2は、メジャメントを行い、周辺セルの受信品質についてピコBS1bに対して応答する(ステップS2)。ピコBS1bは、メジャメント応答に基づいて、ピコBS1bからの受信電力と、マクロBS1aからの受信電力とを互いに比較する(ステップS3)。比較の結果、ピコBS1bの受信電力の方が大きければ、ピコBS1bとの接続を維持することを決定し、ピコBS1bの受信電力の方が小さければ、マクロBS1aにハンドオーバすることを決定する(ステップS4)。
【0041】
ハンドオーバの実行を決定すると、ピコBS1bは、端末装置2のハンドオーバを要求するためのハンドオーバ要求を、X2インターフェース等を介してマクロBS1aに送信するとともに(ステップS5)、端末装置2に対しては、ハンドオーバの実行を指示するためのハンドオーバ指示を送信する(ステップS6)。
【0042】
その後、端末装置2は、ハンドオーバを実行し、マクロBS1aとの間で通信接続を開始する(ステップS7)。
各基地局装置1は、上述のハンドオーバを実行する機能を有しており、マクロセルMCに接続する端末装置2がピコセルPCにハンドオーバする際も、上記手順とほぼ同様で行われる。
【0043】
ピコBS1bは、ハンドオーバの実行を決定する際に、端末装置2のメジャメントによる測定結果の内、自装置1bの受信電力にオフセット値を加える(又は、マクロBS1aの受信電力に加えられるオフセット値よりも大きめのオフセット値を加える)ことで、見かけ上の自装置1bの受信電力を高め、自装置1bに接続する端末装置2がマクロBS1aにハンドオーバするのをできるだけ制限するように設定される場合がある。
この場合、自装置1bの受信電力に加えられるオフセット値(又は、自装置1bの受信電力及びマクロBS1aの受信電力に加えられるオフセット値)は、端末装置2がマクロBS1aに向けてハンドオーバする際の要否を判定するための基準パラメータを構成している。
【0044】
ピコセルPCのセルエッジ付近では、上述のように、ピコセルPCに接続している端末装置2はマクロセルMCにハンドオーバし易くなり、マクロBS1aに接続する端末装置2も現れる可能性が生じる。しかし、上記のようにピコセルPCからマクロセルMCへのハンドオーバの実行を制限するように上記オフセット値が設定されていれば、通常であれば、端末装置2がピコセルPCからマクロセルMCにハンドオーバすべき状態であっても、ハンドオーバの実行がなされず、接続先をピコセルPCで維持できる。これにより、ピコセルPCのエッジ付近の範囲は、実質的に拡張され、端末装置2をマクロセルMCよりもピコセルPCに優先的に接続させることができる。
【0045】
[4.セル間の干渉抑制処理(Inter-Cell Interference Coordination)]
図1に示すように、ピコセルPCのセルエッジ付近の領域である領域Eに位置する端末装置2aには、マクロBS1aからの電波(干渉波)が届き易い上、ピコBS1bからの電波(希望波)の強度が弱くなるため、マクロBS1aからの干渉を受ける可能性がある。なお、上記領域Eとは、ピコセルPCのセルエッジ付近の領域であって、マクロBS1aからの干渉を受ける可能性がある領域を示している。
【0046】
さらに、上述のように、ピコ基地局装置1bが、自装置1bに接続する端末装置2のハンドオーバの実行を制限している場合、ピコセルPCに接続するとともに領域Eに位置する端末装置2は、ピコセルPCの受信電力の方がマクロセルMCよりも見かけ上大きくなるように設定されることでピコセルPCに接続されているため、実際には、マクロセルMCの受信電力の方が大きく、マクロBS1aからの干渉を強く受ける可能性がある。
【0047】
ピコセルPCのセルエッジ付近である領域Eに位置する端末装置2への、マクロBS1aからの干渉を低減するために、本システムでは、
図6に示すように、マクロBS1aの送信フレーム中に、マクロBS1aの使用が制限されるブランク区間を設けている。
【0048】
ここでブランク区間とは、与干渉抑制を目的として、当該ブランク区間を設定した基地局装置によっては、全く信号送信が行われないか、又は、実質的な信号送信が行われない区間であり、マクロBS1aによる無線リソースの使用が、ピコBS1bを含む他セルに影響を与えない程度に制限されるような形態に設定される区間である。ブランク区間では、当該ブランク区間を設定した基地局装置による無線リソースの使用が制限されるので、与干渉を抑制することができる。
逆に言うと、ブランク区間内では、下り信号にブランク区間が設定されているマクロBS1a以外の基地局装置に、ブランク区間の時間帯におけるリソースを積極的に使用させることができる。
【0049】
図6は、マクロBS1aがブランク区間を設ける具体例として、そのDLフレーム中に、ABS(Almost Blank Subframe)を設けたものを示している。ABSとは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)の技術仕様書(TS36.300 V10.3.0 2011-03 16.1.5)に記載されている「Almost Blank Subframe」である。このABSは、その区間に存在するいくつかの物理チャネルについて送信電力を小さく抑えたり、その区間に存在するいくつかの物理チャネルについて最低限のデータだけを割り当てたり、その区間に存在するいくつかの物理チャネルについて最低限のデータ信号だけを送信するか若しくは全くデータ信号を送信しなかったり、使用する無線リソースを少なくしたりすることで、他セルに影響を与えない程度に、BSによる無線リソースの使用が制限される区間である。
また、ABSは、所定のパターンで、無線フレーム内に一又は複数設定される。
【0050】
図6において、ピコBS1bは、自装置1bのDLフレームにおいて、マクロBS1aの使用が制限されるABSと同一のタイミングのサブフレームを、領域Eに位置する端末装置2aの無線リソースとして割り当てれば、当該端末装置2に対するマクロBS1aからの与干渉は抑制される。
【0051】
なお、ピコBS1bが、ABSが設定されているタイミングのサブフレームを用いて領域Eに位置する端末装置2aに送信を行うには、当該ピコBS1bが、マクロBS1aのABSのタイミングを認識しておく必要がある。
この点、マクロBS1aは、上述のようにABSを所定のパターンで無線フレーム内に設定し、その設定したパターンを示すABSパターン情報を、基地局間通信によって周辺基地局装置1に通知する。このABSパターン情報を受信することによって、ピコBS1bを含む周辺基地局装置1は、マクロBS1aが設定するABSのタイミングを認識することができる。
【0052】
[5.ブランク区間のタイプについて]
上記ブランク区間として設けたABSは、上述のような態様で定義されているため、ABSを構成するサブフレームを、複数のタイプとして予め定めることができる。
図7は、本実施形態において、マクロBS1aが設定するABSについて、予め定めている複数のタイプそれぞれの構成を示す図である。
図7(a)は、PDCCH、PDSCHの送信を行わず、パイロット信号10のみを送信するタイプに設定されたABSを示している。このようなパイロット信号10以外の部分がブランクの状態であるABSのタイプをここでは「タイプ1」と呼ぶ。
【0053】
図7(b)は、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)用のサブフレーム((MBSFN(MBMS Single Frequency Network)サブフレーム)が適用されたサブフレームをABSとした場合を示している。
MBMSは、ブロードキャストサービスであるため、MBMSに用いられるMBSFNサブフレームでは、MBMSに係る情報の他、当該サブフレームがMBSFNサブフレームである旨等の必要最小限の制御情報が制御チャネル(サブフレーム先頭側の2シンボル)を用いて送信され、それ以降の領域はパイロット信号も配置されていないブランクの状態である。このようなMBSFNサブフレームが適用されたABSのタイプをここでは「タイプ2」と呼ぶ。
【0054】
図7(c)は、PDCCH、PDSCHの送信電力を、他セルに対する与干渉が抑制される程度に小さく設定して送信する形態のABSを示している。このようなサブフレームの内の一部の送信電力を小さくして送信するABSのタイプをここでは「タイプ3」と呼ぶ。
【0055】
マクロBS1aは、自装置1aが設定したABSのタイプを識別することができる情報(ABS識別情報)を周辺基地局装置1に通知することで、周辺基地局装置1にABSのタイプを識別させる。
【0056】
[6.サブフレームシフトについて]
図4で示したように、無線フレーム中の1番目(#0)及び6番目(#5)のサブフレームには、PSSが割り当てられている。PSSは、上述のように、端末装置2が、基地局装置やセルを識別するために用いたり、同期をとるために用いる制御信号である。このため、マクロBS1aが、1番目(#0)又は6番目(#5)のサブフレームにABSを設定したとしても、PSSの送信を中止することはできない。
【0057】
例えば、
図8(a)に示すように、マクロBS1aの無線フレームと、ピコBS1bの無線フレームとが、サブフレームの番号が互いに一致するように同期しているとすると、両BS1a、1bは、PSSを同時に送信することとなる。
この場合、ピコセルPCに接続しかつピコセルPCのセルエッジ付近である領域Eに位置する端末装置2は、自装置2が受信すべきピコBS1bからのPSSが、マクロBS1aからのPSSによって干渉を受ける。端末装置2は、ピコBS1bからのPSSのSINRが−10dB程度までは当該PSSを受信することができる。しかし、例えば、ハンドオーバの実行を判断する際における受信電力のオフセット値をピコBS1bに15dB程度加えているとすると、ピコセルPCに接続するとともに領域Eに位置する端末装置2は、ピコBS1bのPSSのSINRが−10dBよりもより低くなるおそれが生じ、マクロBS1aのPSSによる与干渉によって、ピコBS1bのPSSの受信が困難となる。
【0058】
さらに、上述のように、マクロBS1aが、1番目(#0)又は6番目(#5)のサブフレームにABSを設定したとしても、PSSの送信を中止することはできず、ABSによっては、PSSの干渉を充分に回避することができないおそれがある。
【0059】
そこで、本実施形態のピコBS1bは、自装置1bの無線フレームのタイミングをマクロBS1aとの間で相対的にずらすように調整する処理を行う機能を有している。
ピコBS1bは、例えば、ABS識別情報等に基づいてPSSについてマクロBS1aからの与干渉が生じると判断する場合、
図8(b)に示すように、自装置1bの無線フレームを調整し、マクロBS1aの無線フレームに対して、サブフレーム1つ分だけずらす処理(サブフレームシフト)を行う。これにより、マクロBS1aのPSSと、ピコBS1bのPSSとの間の送信タイミングがずれるので、マクロBS1aのPSSによる、ピコBS1bのPSSに対する与干渉を回避することができる。
【0060】
言い換えると、上記サブフレームシフトを実行すれば、マクロBS1aがPSSを含むサブフレームにABSを設定したとしても、ピコBS1bの無線フレームにおいてABSに対応する対応サブフレームにPSSが存在しないように、当該対応サブフレームの送信内容を変更することができ、ピコBS1bのPSSに対する与干渉を回避することができる。
【0061】
上記サブフレームシフトを実行している場合、ピコBS1bはその旨を自装置1bに接続する端末装置2に認識させる必要がある。
ピコBS1bは、サブフレームシフトを実行している旨を、上述のABS識別情報に含めて送信する。これにより、ピコBS1bは、サブフレームシフトを実行したか否かを端末装置2に通知する。
【0062】
[7.基地局装置及び端末装置の構成]
図9は、マクロBS1a、ピコBS1b、及び端末装置2の構成を示すブロック図である。
マクロBS1aは、他の基地局装置1や端末装置2との間の通信処理を行うための通信処理部20と、自装置1aの無線フレームにABSを設定するABS設定部21とを備えている。
通信処理部20は、端末装置2との間で無線通信を行う送受信部20aと、他の基地局装置1との間で基地局間通信を行うための基地局間通信部20bとを備えている。
ABS設定部21は、ABSのパターン及びタイプを決定し無線フレームに設定するとともに、基地局間通信部20bを通じて、これらABSのパターンを示すABSパターン情報、及び、ABSのタイプを識別可能なABS識別情報を他の基地局装置1に通知する。
【0063】
ピコBS1bは、他の基地局装置1や端末装置2との間の通信処理を行うための通信処理部30と、ABS情報取得部31とを備えている。
通信処理部30は、端末装置2との間で無線通信を行う送受信部30aと、他の基地局装置1との間で基地局間通信を行うための基地局間通信部30bとを備えている。
ABS情報取得部31は、基地局間通信によりマクロBS1aから送信される情報の内、マクロBS1aの無線フレームに設定されたABSのタイミングを特定するための情報として、マクロBS1aから送信されるABSパターン情報を取得する。また、ABS情報取得部31は、マクロBS1aから送信される情報の内、ABSのタイプを識別するための情報として、マクロBS1aから送信されるABS識別情報を取得する。
通信処理部30は、ABS情報取得部31が取得したABSパターン情報及びABS識別情報を自装置1bに接続する端末装置2に送信する送信制御部としての機能を有している。
【0064】
また、ピコBS1bは、自装置1bの無線フレームのタイミングを調整し上述のサブフレームシフト処理を実行するフレームタイミング調整部33と、上述のハンドオーバに関する処理を行うハンドオーバ処理部34とを備えている。
ハンドオーバ処理部34は、ハンドオーバを実行する機能の他、ハンドオーバの要否を判定する際において自装置1bの受信電力に加えられるオフセット値を設定する機能を有している。ハンドオーバ処理部34は、ABS識別情報より識別されるマクロBS1aのABSのタイプ、及び、後述する端末装置2から送信される当該端末装置2による受信処理を示す設定情報に基づいて、前記オフセット値を設定する。
【0065】
端末装置2は、基地局装置1との間で無線通信を行うための送受信部40と、ABS情報取得部41と、受信処理設定部42とを備えている。
ABS情報取得部41は、送受信部40が受信したピコBS1bからの受信信号の中から、ABSパターン情報や、マクロBS1aのABSのタイプを識別するためのABS識別情報を取得する。
【0066】
受信処理設定部42は、ABS情報取得部41が取得したABS識別情報に基づいて、マクロBS1aが設定したABSに対応する区間において実行する受信処理として、干渉抑制処理を設定する機能を有している。
受信処理設定部42は、ABSに対応する区間における干渉抑制処理として、希望波であるピコBS1bの下り信号に対する干渉波であるマクロBS1aの下り信号による干渉を抑制するための処理を行う。受信処理設定部42は、ABS識別情報からABSのタイプを識別し、そのタイプに応じて、実行可能な複数の干渉抑制処理の中からいずれかを選択して実行する。また、受信処理設定部42は、干渉抑制処理をしないことを選択する場合もある。受信処理設定部42は、干渉抑制処理を設定したか否かを示す設定情報を、送受信部40を介して、ピコBS1bに通知する。
【0067】
[8.マクロBS1aとピコBS1bとの間の干渉抑制処理について]
図10は、マクロBS1aと、ピコBS1bとの間で行われるセル間の干渉抑制処理を示すシーケンス図である。
図に示すように、まず、マクロBS1aが自装置1aの無線フレームにABSを設定すると(ステップS10)、そのABSに関するABSパターン情報及びABS識別情報をピコBS1bに基地局間通信によって通知する(ステップS11)。
ABSパターン情報及びABS識別情報を受信したピコBS1bは、これら情報によりマクロBS1aが設定したABSのタイミングを認識するとともにタイプを識別する。
【0068】
ここで、ABS識別情報は、パイロット信号、PDCCH、及び、PDSCHそれぞれの構成を特定するための情報を含んでいる。
パイロット信号の構成を特定するための情報としては、セルIDや、サブフレーム番号、MBSFNサブフレームに関する情報が挙げられる。セルID及びサブフレーム番号からは、パイロット信号のサブキャリア位置や、パイロット信号のパターンを特定することができる。MBSFNサブフレームに関する情報からは、そのサブフレームにおける2シンボル目以降のパイロット信号の有無を特定することができる。
PDCCHの構成を特定するための情報としては、電力や、使用率、シンボル数が挙げられる。また、PDSCHの構成を特定するための情報としては、電力や、使用率等が挙げられる。
ピコBS1b及び端末装置2は、上記各情報からなるABS識別情報に基づいて、マクロBS1aのABSのタイプが上述のタイプ1〜3の内のどのタイプであるかを識別する。
【0069】
ピコBS1bは、マクロBS1aのABSのタイプについて識別すると、そのABSのタイプに応じてマクロBS1aの無線フレームに対するサブフレームシフトを設定する(ステップS12)。
ピコBS1bは、マクロBS1aのABSがタイプ1及び2の場合、サブフレームシフトを実行し、タイプ3の場合、サブフレームシフトを実行しない。タイプ3では、ABSにおける送信電力が小さく設定されるので、PSSの干渉も抑制されるからである。タイプ1、2では、送信電力を小さく抑える設定とはしないので、PSSの送信電力は比較的大きく設定され、干渉が生じるおそれがあるため、サブフレームシフトを実行する。
なお、サブフレームシフトを実行する場合には、ピコBS1bは、サブフレームシフトを実行している旨を示す情報を、上述のABS識別情報に含める。
【0070】
次いで、ピコBS1bは、マクロBS1aから取得したABSパターン情報、及びサブフレームシフトの実行の有無に関する情報を含めたABS識別情報を端末装置2に送信する(ステップS13)。
【0071】
端末装置2は、ピコBS1bが送信したABSパターン情報及びABS識別情報を受信すると、ABS識別情報に応じて受信処理の設定を行う(ステップS14)。端末装置2は、干渉抑制処理として、上述のように、ABS識別情報からマクロBS1aのABSのタイプを識別し、このタイプに基づいて、実行可能な複数の処理の中からいずれか一つを選択し設定する。この干渉抑制処理の設定については後に詳述する。
【0072】
端末装置2は、干渉抑制処理を設定すると、干渉抑制処理を設定したか否かを示す設定情報をピコBS1bに通知する(ステップS15)。
設定情報を受信したピコBS1bは、この設定情報と、端末装置2に通知したABS識別情報とに基づいて、端末装置2のハンドオーバの要否を判定する際に受信電力に加えられるオフセット値を設定する(ステップS16)。ピコBS1bは、端末装置2がピコセルPCのセルエッジ付近の領域Eに位置していたとしても、マクロBS1aにハンドオーバするのを効果的に制限することができるように、端末装置2の干渉抑制処理及びマクロBS1aが設定するABSのタイプに応じたオフセット値を設定する。
【0073】
[9.端末装置2による干渉抑制処理の設定]
図11は、
図10中ステップS14において端末装置2が行う、干渉抑制処理の設定についてのフローチャートである。
ピコBS1bが送信したABSパターン情報及びABS識別情報(
図10中ステップS13)を受信した端末装置2は、ABSパターン情報よりマクロBS1aが設定したABSのタイミングを認識する(ステップS31)。さらに、端末装置2は、ABS識別情報よりマクロBS1aのABSのタイプを識別する。
次いで、端末装置2は、受信処理として、ABSのタイプに応じて、実行可能な複数の干渉抑制処理の中からいずれかを選択する(ステップS33)。
【0074】
図12は、
図11中ステップS33において端末装置2が行う、干渉抑制処理の選択についてのフローチャートである。
本実施形態の端末装置2は、実行可能な干渉抑制処理として、干渉波に含まれるパイロット信号を推定し、推定したパイロット信号を自装置1bの受信信号から除去することで、他の基地局装置1からのパイロット信号による干渉を除去する処理(パイロット信号キャンセル処理)、及び、ビームフォーミングによって干渉を回避する処理(ビームフォーミング処理)を実行する機能を有している。
【0075】
端末装置2は、識別したマクロBS1aのABSがタイプ1か否かを判定する(ステップS331)。
ステップS331において、タイプ1であると判定すると、端末装置2は、干渉抑制処理としてパイロット信号キャンセル処理を選択し(ステップS332)、処理を終える。
【0076】
タイプ1の場合のABSは、上述したように、PDCCH、PDSCHの送信を行わず、パイロット信号10のみを送信する構成なので(
図7(a))、ABSの区間におけるマクロBS1aからの干渉波としては、ABS内のパイロット信号のみである。端末装置2は、このようなABSの区間での干渉抑制に適した干渉抑制処理としてパイロット信号キャンセル処理を選択する。本処理によって、端末装置2は、マクロBS1aからのパイロット信号による与干渉を抑制できる。当該ABSでは、他に信号が配置されないので、端末装置2は、ABSに対応する区間を使用することで、マクロBS1aからの与干渉を効果的に抑制することができる。
【0077】
ステップS331において、タイプ1でないと判定すると、端末装置2は、マクロBS1aのABSがタイプ2か否かを判定する(ステップS333)。
ステップS333において、タイプ2であると判定すると、端末装置2は、干渉抑制処理を実行しないことを選択し(ステップS334)、処理を終える。
【0078】
タイプ2の場合、MBSFNサブフレームをABSとしているので、サブフレーム先頭側から3シンボル目以降には、パイロット信号も配置されていないブランクの状態である(
図7(b))。よって、端末装置2は、特に干渉抑制処理を行わずとも、マクロBS1aから干渉を受けることがない。このため、タイプ2の場合、端末装置2は、必要のない処理である干渉抑制処理を実行しないことを選択する。
【0079】
ステップS333において、タイプ2でないと判定すると、端末装置2は、ABSのタイプが、パターン3であると判定することができる。本実施形態では、ABSのタイプとして、タイプ1〜3の3つのタイプが設定されるからである。端末装置2は、ABSのタイプがタイプ3であると判定すると、干渉抑制処理として、ビームフォーミング処理を選択し(ステップS335)、処理を終える。
【0080】
タイプ3のABSの場合、PDCCH、PDSCHの送信電力を、他セルに対する与干渉が抑制される程度に小さく設定して送信する形態としているので、たとえ送信電力を抑えて送信したとしても、端末装置2は、マクロBS1aからの信号によって干渉を受ける可能性がある。このため、端末装置2は、干渉抑制処理として、空間的にマクロBS1aからの干渉波を回避しうる処理であるビームフォーミング処理を選択する。
【0081】
以上のようにして、端末装置2は、ABSのタイプに応じた干渉抑制処理を選択する(
図11中ステップS33)。
【0082】
なお、本実施形態の端末装置2は、干渉抑制処理として、パイロット信号キャンセル処理と、ビームフォーミング処理を実行する機能を有する場合を示したが、これら干渉抑制処理は、端末装置2の構成に依存するので、これら機能を持たない端末装置2の場合は、干渉抑制処理を実行しない。
また、他の異なる干渉抑制処理、例えば、時間領域あるいは周波数領域での信号処理により干渉を除去する処理を実行する機能を有する場合、それらを干渉抑制処理として実行することができる。
時間領域あるいは周波数領域での信号処理により干渉を除去する処理としては、干渉信号のレプリカを生成することで干渉を除去するレプリカ生成型の処理や、等化処理、誤り訂正復号処理と等化処理の組み合わせにターボループを導入した処理等を用いることができる。
【0083】
[10.ハンドオーバ時のオフセット値の設定]
上述したように、
図10中のステップS16において、ピコBS1bは、端末装置2から通知される設定情報と、端末装置2に通知したABS識別情報とに基づいて、端末装置2のハンドオーバの要否を判定する際の受信電力に加えられるオフセット値を設定する。
【0084】
図13は、ピコBS1bに接続している端末装置2が、ピコBS1bとの接続を実質的に維持することが可能な、ピコBS1bの受信信号の電力とマクロBS1aの受信信号の電力との電力差を示す図であり、この電力差の値と、マクロBS1aが設定しうる各ABSタイプ、及び端末装置2が実行する干渉抑制処理の有無との関係を示している。
【0085】
マクロBS1aのABSがタイプ1の場合、端末装置2の干渉抑制処理が実行されないときの前記電力差は、−10dBであり、干渉抑制処理が実行されるときの前記電力差は、−15dBである。このように、端末装置2側で干渉抑制処理を実施すれば、より通信環境が悪化したとしてもピコBS1bとの接続を維持することができる。
【0086】
マクロBS1aのABSがタイプ2の場合、端末装置2の干渉抑制処理が実行されないときの前記電力差は、−20dBである。本実施形態では、タイプ2の場合、干渉抑制処理を実行しないので、干渉抑制処理が実行されるときの前記電力差の値はない。
マクロBS1aのABSがタイプ2の場合、ほとんどの領域に信号が配置されていないMBSFNサブフレームが適用されているので、干渉抑制処理の実行がなくても、前記電力差の値が、パターン1の場合よりも大きくなる。
【0087】
マクロBS1aのABSがタイプ3の場合、端末装置2の干渉抑制処理が実行されないときの前記電力差は、−6dBであり、干渉抑制処理が実行されるときの前記電力差は、−10dBである。タイプ3の場合、送信電力が小さく設定されているが、信号の送信が行われていることに変わりはないので、前記電力差は、他のタイプと比較して最も大きくなる。
【0088】
ピコBS1b(のハンドオーバ処理部34)は、前記電力差に基づいて、端末装置2のハンドオーバの要否を判定する際に受信電力に加えられるオフセット値を設定する。
ピコBS1bは、
図13に示す、マクロBS1aのABSのタイプ及び端末装置2の干渉抑制処理の有無によって定まる条件に対応する前記電力差で、自装置1bに接続する端末装置2がマクロBS1aにハンドオーバするように、オフセット値を設定する。
【0089】
例えば、マクロBS1aのABSがタイプ1でかつピコBS1bに接続する端末装置2が干渉抑制処理を実行している場合には、ピコBS1bは、当該端末装置2におけるピコBS1bの受信電力がマクロBS1aの受信電力に対して−15dBを超えない限り、この端末装置2のハンドオーバを実行しない。
これによって、ピコBS1bは、マクロBS1aのABSのタイプ及び端末装置2の干渉抑制処理の有無によって定まる条件に応じて、自装置1bに接続する端末装置2がマクロBS1aにハンドオーバするのをできるだけ制限し、端末装置2をマクロBS1aよりもピコBS1bに優先的に接続させる。
【0090】
上記ピコBS1b(のハンドオーバ処理部34)は、マクロBS1aに向けた端末装置2のハンドオーバの要否を判定するための基準パラメータである、自装置1bの受信電力に加えられるオフセット値を、ABS識別情報(から識別されるABSのタイプ)及び前記設定情報に基づいて設定する。
このように、ピコBS1bは、端末装置2が通知する設定情報、及びABS識別情報(から識別されるABSのタイプ)に基づいて、前記オフセット値を設定するので、ABSのタイプ及び端末装置2が行う干渉抑制処理に基づいた干渉の抑制度合に応じて、マクロBS1aに向けた端末装置2のハンドオーバを制限することができる。
【0091】
[11.効果について]
上記のように構成されたピコBS1bは、マクロBS1aの無線フレームに設定されたABSのタイプを識別可能なABS識別情報を取得するABS情報取得部31と、ABS識別情報を自装置1bに接続する端末装置2に送信する通信処理部30とを備えているので、自装置1bに接続する端末装置2に、マクロBS1aのABS識別情報を送信することで、当該端末装置2に、ABSのタイプについて識別させることができる。この結果、ABSのタイプに応じた干渉抑制処理等の受信処理を端末装置に実行させることができる。
【0092】
また、上記ピコBS1bは、ABS識別情報に基づいて、マクロBS1aのABSに対応する自装置1bの無線フレームの対応区間の送信内容が変更されるように自装置1bの無線フレームを調整するサブフレームシフトを行うフレームタイミング調整部33を備え、通信処理部30は、自装置1bの無線フレームの調整後のタイミングに関する情報として、サブフレームシフトを実行したか否かを示す情報をABS識別情報に含めて送信するように構成されている。
【0093】
この場合、マクロBS1aのABS及び自装置1bの対応区間の両者にPSS等の制御信号が含まれており、ABSタイプにより干渉の抑制度合によって自装置1bのPSSが干渉を受けるおそれがある場合にも、対応区間の送信内容が変更されるように無線フレームを調整することで、自装置1bのPSSが受ける与干渉を抑制することができる。
【0094】
また、ピコBS1bが自装置1bの無線フレームのタイミングを調整すると、自装置1bとマクロBS1aとの間でPSS等の制御信号の位置関係が変化し、端末装置2側からみたときのABSに相対的な影響を与える。よって、サブフレームシフトを実行したか否かを示す情報を端末装置2に送信することで、ピコBS1bが無線フレームのタイミングを調整したことによる影響を反映したABSを、端末装置2に認識させることができる。
【0095】
また、上記構成の端末装置2は、マクロBS1aの無線フレームに設定されたABSのタイプを識別するためのABS識別情報を、ピコBS1bを介して取得するABS情報取得部41と、ABS識別情報に基づいて、ABSに対応する区間における受信処理である干渉抑制処理を設定する受信処理設定部42とを備えているので、マクロBS1aの無線フレームに設定されたABSのタイプを識別することができ、ABSのタイプに応じた受信処理を実行することができる。
【0096】
[12.他の実施例について]
図14(a)は、ピコBS1bと、同じマクロセルMCに属する他のピコBS1bとの間におけるABSの設定の態様を示すシーケンス図である。
図において、マクロBS1aが、当該マクロBS1aの無線フレームにABSを設定し(ステップS41)、そのABSに関するABSパターン情報及びABS識別情報をピコBS1bに基地局間通信によって通知すると(ステップS42)、ピコBS1bは、これらABSパターン情報及びABS識別情報を受信する。
【0097】
ピコBS1bは、受信したABSパターン情報及びABS識別情報によりマクロBS1aが設定したABSのタイミングを認識するとともにタイプを識別する。
さらにピコBS1bは、受信したABSパターン情報及びABS識別情報を、他のピコBS1bに基地局間通信によって通知する(ステップS43)。
【0098】
この場合、ピコBS1bは、他のピコBS1bにマクロBS1aが設定したABSのABS識別情報を送信することで、他のピコBS1bにマクロBS1aのABSのタイプを識別させることができる。この結果、他のピコBS1bに、当該他のピコBS1bに接続する端末装置2に対して前記ABS識別情報を送信させる等の処理を実行させることができる。
【0099】
図14(b)は、マクロBS1aと、当該マクロBS1aと異なる他のマクロBS1aとの間におけるABSの設定の態様を示すシーケンス図である。
図において、他のマクロBS1aが、当該他のマクロBS1aの無線フレームにABSを設定し(ステップS51)、そのABSに関するABSパターン情報及びABS識別情報をマクロBS1aに基地局間通信によって通知すると(ステップS52)、マクロBS1aは、これらABSパターン情報及びABS識別情報を受信する。
【0100】
マクロBS1aは、受信したABSパターン情報及びABS識別情報によりマクロBS1aが設定したABSのタイミングを認識するとともにタイプを識別する。
【0101】
次いで、マクロBS1aは、受信したABSパターン情報及びABS識別情報に基づいて、自装置1aの無線フレームにABSを設定する(ステップS53)。このとき、マクロBS1aは、マクロBS1aのABSと同一のタイミング、タイプとされたABSを自装置1aの無線フレームに設定する。
【0102】
この場合、マクロBS1aは、他のマクロBS1aが設定するABSに応じて、同じタイプのABSを自装置1aの無線フレームに設定するので、設定されるABSのタイプを複数の基地局装置1の間で統一することができる。この結果、このABSを利用する基地局装置1及び端末装置2においてその利便性が高まる。
【0103】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。