特許第5942413号(P5942413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5942413-クラッチレリーズ軸受装置 図000002
  • 特許5942413-クラッチレリーズ軸受装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942413
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】クラッチレリーズ軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/14 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   F16D23/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-278633(P2011-278633)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-130217(P2013-130217A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】安本 昇司
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−028359(JP,U)
【文献】 実開平04−058635(JP,U)
【文献】 特開2008−032042(JP,A)
【文献】 特開2009−079609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動軸と駆動力伝達軸とを断続可能に連結するクラッチ機構におけるクラッチペダルのペダル操作によって前記駆動力伝達軸上を摺動し、前記駆動力伝達軸の軸線一方向に開口して各溝壁が互いに対向する円環状の凹溝を有するスリーブと、
前記スリーブの前記凹溝内に配置され、前記スリーブの軸線と平行な軸線をもつ内外2つのレース、及び前記内外2つのレース間で転動する複数の転動体を有するクラッチレリーズ軸受と、
前記クラッチレリーズ軸受を収容する収容空間を形成する第1の円筒部、及び前記第1の円筒部の内周面に前記クラッチレリーズ軸受を介して外周面が対向する第2の円筒部を有するカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、前記第1の円筒部の外周面が前記凹溝の外周側溝壁に装置使用温度域の低温側温度域で、また前記第2の円筒部の内周面が前記凹溝の内周側溝壁に前記装置使用温度域の高温側温度域でそれぞれしまりばめによって取り付けられ
前記低温側温度域及び前記高温側温度域は、共通の温度域を含む、
クラッチレリーズ軸受装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記凹溝の外周側溝壁に対する前記第1の円筒部の外周面のしめしろが温度上昇によって、また前記凹溝の内周側溝壁に対する前記第2の円筒部の内周面のしめしろが温度降下によってそれぞれ小さくなる請求項1に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
【請求項3】
前記スリーブは、前記カバー部材の材料よりも線膨張係数が大きいアルミニウムからなる材料によって形成されている請求項1又は2に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記装置使用温度域tを−40℃≦t≦140℃とするとともに、前記低温側温度域tを−40℃≦t≦50℃とし、かつ前記高温側温度域tを20℃≦t≦140℃として前記スリーブに取り付けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記クラッチレリーズ軸受と前記凹溝の溝底との間に介在して前記第1の円筒部と前記第2の円筒部とを連結する連結部、及び前記連結部に前記内外2つのレースのうち外レースと前記複数の転動体とを介して対向するスプリング受部を有し、前記スプリング受部と前記外レースとの間に軸受調心用のスプリングが介在して配置されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車など車両のクラッチ機構に組み込まれるクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、MT(マニュアルトランスミッション)車においては、エンジン等の駆動源からトランスミッションに伝達される駆動力をペダル操作で一時的に遮断してトランスミッションによる変速操作を行うためのクラッチ機構(例えば図2(a)及び(b)に示す)が用いられている。
【0003】
このようなクラッチ機構のクラッチ接続時には、図2(a)に示すように、プレッシャープレート101がダイヤフラムスプリング102のばね力を受けてクラッチディスク103をフライホイール104に摩擦係合させるため、駆動力伝達軸105がフライホイール104等を介してエンジンの駆動軸106と共に回転する。
【0004】
一方、クラッチ機構のクラッチ遮断時には、図2(b)に示すように、クラッチペダル107のペダル操作によって圧油がマスタシリンダ108からレリーズシリンダ109に供給され、これに伴いレリーズフォーク110が支持軸111の回りに回転し、駆動力伝達軸105上におけるクラッチレリーズ軸受装置112の軸方向一方側への摺動によってダイヤフラムスプリング102がその傾斜をクラッチ接続時の傾斜と反対とする向きにされる。これにより、プレッシャープレート101が軸方向他方側に移動し、クラッチディスク103がフライホイール104から離間するため、駆動力伝達軸105と駆動軸106との連結が遮断され、トランスミッションの速度切替操作が可能となる。
【0005】
ところで、この種のクラッチ機構におけるクラッチレリーズ軸受装置には、駆動軸と駆動力伝達軸とを断続するためのばね部材(ダイヤフラムスプリング)のばね力を受ける内輪、クラッチペダルの操作力をレリーズフォークから回転力として受ける外輪、及び外輪と内輪との間で転動する転動体を有する玉軸受からなるクラッチレリーズ軸受を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
クラッチレリーズ軸受は、内輪が駆動力伝達軸105(図2に示す)上を摺動する例えば鋳鉄からなるスリーブに対し圧入によって取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−168082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に示すクラッチレリーズ軸受装置においては、近年における軽量化を図るために、上記したスリーブの材料が鋳鉄からアルミニウムに変更されると、スリーブの温度変化による膨張・収縮が大きくなり、スリーブに対して内輪(クラッチレリーズ軸受)の圧入による取り付けが困難なものとなる。
【0009】
すなわち、この種のクラッチレリーズ軸受装置においては、スリーブに対するクラッチレリーズ軸受の取り付けが低温域でしまりばめによって(所定のしめしろをもって)行われると、高温の使用時にスリーブとクラッチレリーズ軸受との間のしめしろが過大となり、クラッチレリーズ軸受が許容フープ応力以上の応力を受けて破損する。一方、スリーブに対するクラッチレリーズ軸受の取り付けが高温域で所定のしめしろをもって行われると、低温の使用時にスリーブとクラッチレリーズ軸受との間で所定のしめしろが得られない。
【0010】
このため、使用温度域においてスリーブとクラッチレリーズ軸受との間で常に所定のしめしろを得ることができるクラッチレリーズ軸受装置の出現が要望されていた。
【0011】
従って、本発明の目的は、使用温度域においてスリーブとクラッチレリーズ軸受との間で所定のしめしろを得ることができるクラッチレリーズ軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、(1)〜(5)のクラッチレリーズ軸受装置を提供する。
【0013】
(1)エンジンの駆動軸と駆動力伝達軸とを断続可能に連結するクラッチ機構におけるクラッチペダルのペダル操作によって前記駆動力伝達軸上を摺動し、前記駆動力伝達軸の軸線一方向に開口して各溝壁が互いに対向する円環状の凹溝を有するスリーブと、前記スリーブの前記凹溝内に配置され、前記スリーブの軸線と平行な軸線をもつ内外2つのレース、及び前記内外2つのレース間で転動する複数の転動体を有するクラッチレリーズ軸受と、前記クラッチレリーズ軸受を収容する収容空間を形成する第1の円筒部、及び前記第1の円筒部の内周面に前記クラッチレリーズ軸受を介して外周面が対向する第2の円筒部を有するカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記第1の円筒部の外周面が前記凹溝の外周側溝壁に装置使用温度域の低温側温度域で、また前記第2の円筒部の内周面が前記凹溝の内周側溝壁に前記装置使用温度域の高温側温度域でそれぞれしまりばめによって取り付けられ、前記低温側温度域及び前記高温側温度域は、共通の温度域を含む、クラッチレリーズ軸受装置。
【0014】
(2)上記(1)に記載のクラッチレリーズ軸受装置において、前記カバー部材は、前記凹溝の外周側溝壁に対する前記第1の円筒部の外周面のしめしろが温度上昇によって、また前記凹溝の内周側溝壁に対する前記第2の円筒部の内周面のしめしろが温度降下によってそれぞれ小さくなる。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)に記載のクラッチレリーズ軸受装置において、前記スリーブは、前記カバー部材の材料よりも線膨張係数が大きいアルミニウムからなる材料によって形成されている。
【0016】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のクラッチレリーズ軸受装置において、前記カバー部材は、前記装置使用温度域tを−40℃≦t≦140℃とするとともに、前記低温側温度域tを−40℃≦t≦50℃とし、かつ前記高温側温度域tを20℃≦t≦140℃として前記スリーブに取り付けられている。
【0017】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のクラッチレリーズ軸受装置において、前記カバー部材は、前記クラッチレリーズ軸受と前記凹溝の溝底との間に介在して前記第1の円筒部と前記第2の円筒部とを連結する連結部、及び前記連結部に前記内外2つのレースのうち外レースと前記複数の転動体とを介して対向するスプリング受部を有し、前記スプリング受部と前記外レースとの間に軸受調心用のスプリングが介在して配置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、使用温度域においてスリーブとクラッチレリーズ軸受との間で常に所定のしめしろを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係るクラッチレリーズ軸受装置の全体を説明するために示す断面図。
図2】(a)及び(b)は、従来のクラッチレリーズ軸受装置を備えたクラッチ機構を示す断面図。(a)はクラッチ機構の接続時を、また(b)はクラッチ機構の遮断時をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係るクラッチレリーズ軸受装置につき、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(クラッチレリーズ軸受装置の全体構成)
図1はクラッチレリーズ軸受装置を示す。図1に示すように、クラッチレリーズ軸受装置1は、スリーブ2,クラッチレリーズ軸受3及びカバー部材4を備え、エンジン(図示せず)とトランスミッション(図示せず)との間に介在してクラッチ機構(図示せず)に組み込まれている。そして、クラッチレリーズ軸受装置1は、ダイヤフラムスプリング6とレリーズフォーク7との間の相対回転を許容するように構成されている。ダイヤフラムスプリング6はプレッシャープレート101(図2に示す)に、またレリーズフォーク7は車体側にそれぞれ取り付けられている。
【0022】
クラッチ機構は、自動車用エンジン(図示せず)の駆動によって回転する駆動軸(図2に示す駆動軸106)と、この駆動軸からトランスミッション(図示せず)に自動車用エンジンの駆動力を伝達する駆動力伝達軸5とを断続可能に連結するように構成されている。
【0023】
(スリーブ2の構成)
スリーブ2は、駆動力伝達軸5上に摺動可能に配置され、全体がカバー部材4の材料よりも線膨張係数が大きい例えばアルミニウムからなる成形部材によって形成されている。そして、スリーブ2は、クラッチペダル(図2に示すクラッチペダル107)のペダル操作による移動力をレリーズフォーク7から受けてダイヤフラムスプリング6側に駆動力伝達軸5上を摺動するように構成されている。
【0024】
スリーブ2には、駆動力伝達軸5の軸線O一方向に沿ってダイヤフラムスプリング6側に開口し、かつ各溝壁8a,8bが互いに対向する円環状の凹溝8が設けられている。一方(凹溝8の外周側)の溝壁8aの軸線方向寸法は、他方(凹溝8の内周側)の溝壁8bの軸線方向寸法よりも大きい寸法に設定されている。
【0025】
(クラッチレリーズ軸受3の構成)
クラッチレリーズ軸受3は、スリーブ2の軸線(駆動力伝達軸5の軸線O)と平行な軸線をもつ内外2つの軌道輪(レース)30,31、及び内外2つの軌道輪30,31間で転動する複数の転動体32を有する玉軸受からなり、スリーブ2の凹溝8内に配置されている。
【0026】
一方の軌道輪(外レース)30は、複数の転動体32を転動させる軌道面30a、及び軌道面30aの軸線方向両側で他方の軌道輪31側に開口する円環状のシール溝30b,30cを有し、クラッチレリーズ軸受3の外周側に配置され、全体が例えば薄肉鋼板からなる円筒部材によって形成されている。
【0027】
他方の軌道輪(内レース)31は、一方の軌道輪30の軌道面30aに対向して複数の転動体32を転動させる軌道面31aを有し、一方の軌道輪30に対し軸線方向片側(ダイヤフラムスプリング6側)に若干ずらしてクラッチレリーズ軸受3の内周側に配置され、全体が一方の軌道輪30と同様に例えば薄肉鋼板からなる円筒部材によって形成されている。他方の軌道輪31の軸線方向寸法は、一方の軌道輪30の軸線方向寸法よりも大きい寸法に設定されている。これにより、他方の軌道輪31におけるダイヤフラムスプリング6側の端部がスリーブ2の凹溝8外に露出する。
【0028】
複数の転動体32は、一方の軌道輪30の軌道面30aと他方の軌道輪31の軌道面31aとの間に介在して配置され、かつ保持器9によって転動可能に保持され、全体が例えば軸受鋼からなる球体によって形成されている。
【0029】
(カバー部材4の構成)
カバー部材4は、第1の円筒部4a及び第2の円筒部4bを有し、スリーブ2の凹溝8内に収容され、かつ第1の円筒部4a及び第2の円筒部4bのうち少なくとも一方の円筒部がスリーブ2に対し常に所定のしめしろをもって(しまりばめによって)取り付けられ、全体が例えば冷間圧延鋼板(Steel Plate Cold Cmmercial:SPCC)からなる円筒部材によって形成されている。
【0030】
第1の円筒部4aは、その外周面が凹溝8の溝壁8aにクラッチレリーズ軸受装置1の使用温度域tの低温側温度域tでしまりばめによって取り付けられている。例えば、使用温度域tは−40℃≦t≦140℃に、また低温側温度域tは−40℃≦t≦50℃にそれぞれ設定される。そして、第1の円筒部4aは、凹溝8の溝壁8aに対するしめしろが温度上昇によって小さくなり、使用温度域t内であって低温側温度域t以外の温度域(例えば50℃〜140℃)ですきまばめによってスリーブ2の凹溝8の溝壁8aに取り付けられる。また、第1の円筒部4aは、クラッチレリーズ軸受3を収容する収容空間40aを形成するように構成されている。
【0031】
第2の円筒部4bは、第1の円筒部4aの内周面にクラッチレリーズ軸受3を介して外周面が対向する位置に配置され、かつ内周面が凹溝8の溝壁8bにクラッチレリーズ軸受装置1の使用温度域tの高温側温度域tでしまりばめによって取り付けられている。例えば、高温側温度域tは20℃≦t≦140℃に設定される。これにより、高温側温度域t及び低温側温度域tには共通の温度域t(20℃≦t≦50℃)が含まれる。共通の温度域tでは、第1の円筒部4aが凹溝8の溝壁8aに、また第2の円筒部4bが凹溝8の溝壁8bにそれぞれしまりばめによって取り付けられる。そして、第2の円筒部4bは、凹溝8の溝壁8bに対するしめしろが温度降下によって小さくなり、使用温度域t内であって高温側温度域t以外の温度域(−40℃〜20℃)ですきまばめによって凹溝8の溝壁8bに取り付けられる。
【0032】
カバー部材4には、クラッチレリーズ軸受3と凹溝8の溝底8cとの間に介在して第1の円筒部4aと第2の円筒部4bとを連結する円環状の連結部4c、及び連結部4cに一方の軌道輪30と複数の転動体32とを介して対向する円環状のスプリング受部4dが一体に設けられている。
【0033】
連結部4cは、そのダイヤフラムスプリング6側にクラッチレリーズ軸受3の一方側を封止する円環状のシール部材10が配置されている。シール部材10は、他方の軌道輪31と連結部4cとの間に介在し、一方の軌道輪30のシール溝30b,30cのうちレリーズフォーク7側のシール溝30cに取り付けられている。
【0034】
スプリング受部4dは、そのレリーズフォーク7側にクラッチレリーズ軸受3(一方の軌道輪30)をカバー部材4(連結部4c)に圧接する軸受調心用のスプリング11が配置されている。軸受調心用のスプリング11としては例えば皿ばねが用いられる。軸受調心用のスプリング11と一方の軌道輪30との間には、円環状のスペーサ12が介在して配置されている。また、スプリング受部4dは、そのレリーズフォーク7側にクラッチレリーズ軸受3の他方側(ダイヤフラムスプリング6側)を封止するシール部材13が配置されている。シール部材13は、スペーサ12の内周囲でスプリング受部4dと一方の軌道輪30との間に介在し、一方の軌道輪30のシール溝30b,30cのうちダイヤフラムスプリング6側のシール溝30bに取り付けられている。
【0035】
このように構成されたクラッチレリーズ軸受装置1においては、カバー部材4の第1の円筒部4aがスリーブ2の凹溝8の溝壁8aにクラッチレリーズ軸受装置1の使用温度域t(−40℃≦t≦140℃)の低温側温度域t(−40℃≦t≦50℃)でしまりばめによって取り付けられ、この状態から使用温度が上昇して50℃を超えると、スリーブ2(凹溝8の溝壁8a)に対してカバー部材4(第1の円筒部4a)がすきまばめによって取り付けられる。
【0036】
一方、カバー部材4の第2の円筒部4bがスリーブ2の凹溝8の溝壁8bにクラッチレリーズ軸受装置1の使用温度域tの高温側温度域t(20℃≦t≦140℃)でそれぞれしまりばめによって取り付けられ、この状態から使用温度が降下して20℃未満になると、スリーブ2(凹溝8の溝壁8b)に対してカバー部材4(第2の円筒部4b)がすきまばめによって取り付けられる。
【0037】
従って、本実施の形態においては、クラッチレリーズ軸受装置1の使用温度が50℃を超えるとカバー部材4の第2の円筒部4bがスリーブ2の凹溝8の溝壁8bに、またクラッチレリーズ軸受装置1の使用温度が20℃未満になると、カバー部材4の第1の円筒部4aがスリーブ2の凹溝8の溝壁8aにそれぞれしまりばめによって取り付けられることになる。
【0038】
上記したクラッチレリーズ軸受装置1の使用温度が20℃〜50℃の範囲では、カバー部材4の第2の円筒部4bがスリーブ2の凹溝8の溝壁8bに、またカバー部材4の第1の円筒部4aがスリーブ2の凹溝8の溝壁8aにそれぞれしまりばめによって取り付けられる。
【0039】
なお、本実施の形態に示すクラッチレリーズ軸受装置1が組み込まれたクラッチ機構の動作は、従来と同様にして行われる。すなわち、クラッチ機構のクラッチ接続時には、駆動力伝達軸5がフライホイール104(図2に示す)等を介してエンジンの駆動軸106(図2に示す)と共に回転する。
【0040】
一方、クラッチ機構のクラッチ遮断時には、駆動力伝達軸5と駆動軸106との連結が遮断され、トランスミッションの速度切替操作が可能となる。この場合、一方の軌道輪30及び他方の軌道輪31が相対回転すると、複数のスラストころ32が一方の軌道輪30の軌道面30a及び他方の軌道輪31の軌道面31a上を転動する。
【0041】
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0042】
クラッチレリーズ軸受装置1の使用温度域tにおいてスリーブ2とクラッチレリーズ軸受3との間で常に所定のしめしろを得ることができる。
【0043】
以上、本発明のクラッチレリーズ軸受装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0044】
(1)上記実施の形態では、共通の温度域tが20℃≦t≦50℃に設定されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば高温側温度域の下限値と低温側温度域の上限値とが一致する場合など他の温度域に設定してもよい。また、クラッチレリーズ軸受装置1の使用温度域tが−40℃≦t≦140℃に設定されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の温度域に設定してもよい。
【0045】
(2)上記実施の形態では、軸受調心用のスプリング11が皿ばねである場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばコイルばねなど他のばね部材を用いても勿論よい。
【符号の説明】
【0046】
1…クラッチレリーズ軸受装置、2…スリーブ、3…クラッチレリーズ軸受、30…軌道輪、30a…軌道面、30b,30c…シール溝、31…軌道輪、31a…軌道面、32…転動体、4…カバー部材、4a…第1の円筒部、40a…収容空間、4b…第2の円筒部、4c…連結部、4d…スプリング受部、5…駆動力伝達軸、6…ダイヤフラムスプリング、7…レリーズフォーク、8…凹溝、8a,8b…溝壁、8c…溝底、9…保持器、10…シール部材、11…軸受調心用のスプリング、12…スペーサ、13…シール部材、101…プレッシャープレート、102…ダイヤフラムスプリング、103…クラッチディスク、104…フライホイール、105…駆動力伝達軸、106…駆動軸、107…クラッチペダル、108…マスタシリンダ、109…レリーズシリンダ、110レリーズフォーク、111…支持軸、112…クラッチレリーズ軸受装置、O…軸線、t…使用温度域、t…低温側温度域,t…高温側温度域、t…共通の温度域
図1
図2