(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942430
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】電子機器用筐体及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20160616BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
H05K5/02 L
B60R16/02 610B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-923(P2012-923)
(22)【出願日】2012年1月6日
(65)【公開番号】特開2013-140905(P2013-140905A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年8月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池澤 輝
【審査官】
中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−039977(JP,U)
【文献】
特開平02−250396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00−5/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器回路を配置するためのベースプレートと、
前記電子機器回路の収容空間を覆うためのカバーと
を有し、
前記ベースプレートは、
前記電子機器回路を配置するための底部と、
前記底部に対して立設され前記電子機器回路を収容する収容空間の周囲を区画する壁部と、
を有し、
前記壁部は、それぞれが前記カバーと接触する接触面を有する複数のねじ止め部を有し、
前記複数のねじ止め部の各々には、前記カバーを前記ベースプレートに固定するためのねじ穴が形成されており、
前記複数のねじ止め部の各々の接触面は、前記壁部の上面よりも高い位置にあると共に、前記壁部の上面よりも高い平面度の面であり、
前記カバーは、
前記収容空間を前記ベースプレートと対向する側から覆うための上部カバー部と、
前記上部カバー部の周縁に、前記複数のねじ止め部の各々の接触面と前記壁部の上面との差よりも前記ベースプレート側に長く延びている外側面カバー部と
を有する、
電子機器用筐体。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器用筐体であって、
前記外側面カバー部は、前記カバーの部材を前記ベースプレート側に向くように折り曲げて形成される、
電子機器用筐体。
【請求項3】
請求項2記載の電子機器用筐体であって、
前記カバーの部材は、四隅に切り欠きを有している、
電子機器用筐体。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の電子機器用筐体であって、
前記ねじ穴は、前記複数のねじ止め部の各々の接触面の中心より前記電子機器回路側にオフセットして設けられている、
電子機器用筐体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子機器用筐体であって、
前記電子機器回路には、
前記壁部の長手方向における一方の面である第1の面から入力端子が突設され、
前記壁部の前記長手方向における他方の面である第2の面から出力端子が突設され、
前記壁部が、前記第1の面よりも前記第2の面に近い位置に、前記カバーと接触する接触面を有する1以上のねじ止め部を更に有する、
電子機器用筐体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子機器用筐体と、
前記電子機器用筐体に配置された電子機器回路と
を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器回路を収容するための電子機器用筐体及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッドカーや、電気自動車等においては、例えば、DC−DCコンバータユニットのような電子機器が利用されている。このような電子機器においては、電子機器の回路(電子機器回路)を結露や、塵、埃等から保護するために、筐体内に電子機器回路を収容するようにしている。
【0003】
電子機器回路を収容する筐体に関する技術としては、例えば、筐体を第1本体と、第2本体に分割し、第2本体部の支持部にて基板を保持し、更に、保護区画壁にて基板を密着圧接させるようにした車載用電子機器回路モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−216836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電子機器回路を収容する筐体は、電子機器回路を載置するベースプレートと、板金カバーとで構成される。この構成においては、ベースプレートの電子機器回路を取り囲む壁の上面の全体に平面度を向上するための機械加工を施し、ベースプレートの壁の上面と、板金カバーとを適切に密着させることで、防塵、防水性を保持することが期待できる。
【0006】
しかし、この構成については、例えば、ベースプレートの電子機器回路を取り囲む壁の上面の全体に機械加工を施す場合には、機械加工を行う範囲が広く、ベースプレートの加工に多くの工数を要するので、ベースプレートの加工コストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、電子機器用筐体を容易に作成でき、且つ加工コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る電子機器用筐体は、電子機器回路を配置するためのベースプレートと、電子機器回路の収容空間を覆うためのカバーとを有する。ベースプレートは、電子機器回路を配置するための底部と、底部に対して立設され電子機器回路を収容する収容空間の周囲を区画する壁部とを有する。
【0009】
壁部は、カバーと接触する接触面を有するねじ止め部を有する。
【0010】
ねじ止め部は、カバーをベースプレートに固定するためのねじ穴が形成されており、例えば、壁部の四隅に設けられる。ねじ止め部の接触面は、壁部の上面よりも高い位置にある。ねじ止め部の接触面は、例えば水平であり、壁部の上面の高さは、ねじ止め部の接触面にカバーが接触した状態において、カバーに接触しないような高さ(つまり、カバーとの間に空間が生じる高さ)である。
【0011】
カバーは、
上部カバー部と、外側面カバー部とを有する。
上部カバー部は、収容空間をベースプレートと対向する側から覆うためのカバー部である。外側面カバー部は、
上部カバー部の周縁に設けられ、ねじ止め部の接触面と壁部の上面との差よりもベースプレート側に長く延びている。
【0012】
第2の観点に係る電子機器用筐体では、外側面カバー部は、カバーの部材をベースプレート側に折り曲げて形成されてもよい。
【0013】
第3の観点に係る電子機器用筺体では、カバーの部材は、四隅に切り欠きを有していてよい。
【0014】
第4の観点に係る電子機器用筐体では、ねじ穴は、ねじ止め部の接触面の中心より電子機器回路側にオフセットして設けられている。
【0015】
第5の観点に係る電子機器用筺体では、収容空間を囲む壁部の第1の面側に、収容空間の長手方向に長い基板が配置されるようになっており、壁部が、第1の面よりも第1の面に対向した第2の面に近い位置に、1以上のねじ止め部を更に有して良い。
【0016】
本発明の第6の観点に係る電子機器は、第1乃至第5の観点のうちのいずれかの電子機器用筐体と、電子機器用筐体に配置された電子機器回路とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るDC−DCコンバータユニットの構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るDC−DCコンバータユニットの分解斜視図である。
【
図3】
図2における、ねじ止め部103Aを含む図示範囲、の拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るカバーの一部の構成及びカバーの作成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る電子機器が適用されたDC−DCコンバータユニット10を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るDC−DCコンバータユニットの構成を示す斜視図である。
【0021】
DC−DCコンバータユニット10は、例えば、ハイブリッド車、又は電気自動車に備えられ、100V〜500V程度の電圧を蓄える高圧バッテリから供給される高圧の直流電圧を、低圧の直流電圧に変換し、12〜16V程度の電圧を蓄える低圧バッテリに供給する。
【0022】
DC−DCコンバータユニット10は、ベースプレート100と、カバー200とを組み合わせて構成された筐体20とを有する。ベースプレート100と、カバー200とは、組み合わされて、ねじ300のような固定部材によって固定される。電子機器回路150(
図2参照)は、筐体20内部に収容されている。電子機器回路150の入力端子151は、筐体20の第1面(例えば、筺体20の長手方向の一方の側面)から外部に突設され、出力端子152は、筺体20の第2面(例えば、筺体20の長手方向の他方の側面)から外部に突設されている。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係るDC−DCコンバータユニットの分解斜視図である。
【0024】
ベースプレート100は、例えば、アルミニウム等の金属により形成され、電子機器回路150を装着する底部101と、底部101の周縁部に立設され、電子機器回路150を収容する収容空間Sの側面を区画する壁部102とを有する。底部101は、略矩形であり、故に、壁部102は、上方(ここで、ベースプレート100に対して電子機器回路150が装着される方向を上という)から見て、つまり平面視で、略矩形の枠状になっている。底部101と、壁部102により、電子機器回路150が収容される上方が開口された略直方体の収容空間Sが形成される。
【0025】
壁部102は、その四隅に、カバー200を固定するためのねじ300が締結されるねじ止め部103(103A〜103D)を有する。また、壁部102は、長手方向の壁部102の中心から出力側(出力端子152)寄りの位置に、2つのねじ止め部103(103E、103F)を有する。
【0026】
電子機器回路150は、入力平滑部、制御部、スイッチング部、トランス、整流部、及び出力平滑部を有する。本実施形態では、2つのねじ止め部103E及び103Fより入力側(入力端子151側)の入力側領域153には、入力平滑部、制御部、及びスイッチング部が備えられ、2つのねじ止め部103E及び103Fより出力側の出力側領域154には、トランス、整流部、及び出力平滑部が備えられる。本実施形態では、電子機器回路150の制御部の基板のサイズが比較的大きい(具体的には、その基板が、筐体20の長手方向に沿った長さの半分よりも長い)ので、2つのねじ止め部103E及び103Fが、長手方向に壁部102の中心から出力側寄りの位置に配置している。このように、ねじ止め部103を出力側寄りに配置しているので、カバー200の出力側の部分の衝撃等に対する変形量を抑えることができ、例えば、比較的衝撃に弱い(例えば、入力側領域153より衝撃に弱い)出力側領域154に備えられているトランスの磁性体コアが損傷することを適切に防止することができる。
【0027】
カバー200は、電子機器回路150の上部を覆う上部カバー部201と、ベースプレート100の壁部102の外側面の上端部分を覆う外側面カバー部202とを有する。上部カバー部201は、収容空間Sを覆う上部中央部201aと、ベースプレート100の壁部102の上面に対応する平面を有する上部周縁部201bとを有する。カバー200がねじ止め部103の上面(接触面)に接触したときにカバー200が電子機器回路150と接触しないよう、上部カバー部201は上部周縁部201bから上方に高さを有する。上部カバー部201は、ベースプレート100の壁部102の各ねじ止め部103に対向する部分に、カバー固定部203を有する。
【0028】
図3は、
図2における、ねじ止め部103Aを含む図示範囲の拡大図である。なお、以下、ねじ止め部103Aを有する部分を主に説明するが、その説明は、ねじ止め部103Aを有する部分に限らず、他のねじ止め部についても同様である。また、本実施形態では、壁部102の入力端子151の近傍の部分は、入力端子151に応じた形状となっているので、ここでは、その部分については除外して説明する。
【0029】
ねじ止め部103Aの上面103aは、平面であり、カバー200を固定するためのねじ300を締結するねじ穴104が設けられている。
【0030】
ねじ止め部103Aの上面103aは、壁部102の上面102aよりも高い位置(例えば、1mm程度高い位置)にある。つまり、壁部102の上面102aにおいて、ねじ止め部103Aが、壁部102の上面102aより高くなっている。ねじ止め部の上面103aは、略水平であり、壁部102の上面102aの高さは、ねじ止め部103Aの上面103aにカバー200が接触した状態において、カバー200に接触しないような高さ(つまり、カバー200との間に空間が生じる高さ)である。
【0031】
本実施形態では、壁部102におけるねじ止め部103Aの上面103aについて、機械加工により平面度を向上し、その他(その周囲)の部分の上面102aに対しては、平面度を向上するための機械加工はしていない。このため、ベースプレート100における機械加工に係る加工コストを低減することができる。
【0032】
ねじ止め部103Aの上面103aと接触する、カバー固定部203の裏面は、平面となっている。カバー固定部203には、ねじ300の軸が間挿するための開口204が形成されている。また、カバー固定部203の隅部分には、切り欠き205が形成されている。
【0033】
カバー200の周縁部分には、下方に延びる外側面カバー部202が形成されている。外側面カバー部202の下方向の長さは、例えば、5mm程度となっている。カバー200をベースプレート100に被せると、カバー固定部203の裏面と、ねじ止め部103の上面103aとが接触し、外側面カバー部202の縁は、壁部102の上面102aよりも低い位置となる。外側面カバー部202は、壁部102の外側面と接触しても良い。ねじ止め部103Aの上面103aはその周囲より高い位置にあるので、上部カバー部201の下面と壁部102の上面102aとの間には空間ができる。しかしながら、外側面カバー部202の下方への長さが、ねじ止め部103Aの上面103aと壁部102の上面102aとの高さの違いに比して十分な長さを有しているので、上部カバー部201と壁部102の上面102aとの間の空間を、外側面カバー部202により完全に覆うことができる。
【0034】
また、切り欠き205によって、壁部102の外側面に外側面カバー部202によって覆われていない部分が存在することになるが、カバー200がベースプレート100に被せられた状態では、切り欠き205は、壁部102の外側面に位置し、外側面カバー部202が壁部102の外側面に接触することとなり、また上部カバー部201側に設けられた円弧上の切り欠き205は、ねじ止め部103Aの上面103aに位置するので、収容空間Sの内部へ連通する隙間の発生を防止することができる。また、切り欠き205と開口204が近くなりすぎて、この切り欠き205と開口204が繋がってしまい、ネジ300とカバー200との固定がされなくなってしまうことを防止するために、ねじ穴104は、ネジ止め部103の上面103aの中心よりも電子機器回路150側にオフセットされて設けられている。こうすることで、上面103aは、壁部102側の平面部分を広めに設けることができ、上部カバー部201側に設けられた円弧上の切り欠き205をより確実に上面103aに位置することができる。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態に係るカバーの一部の構成及びカバーの作成方法を説明する図である。
【0036】
本実施形態では、例えば、平板上の板金に対してプレス加工を施して上部カバー部201の形状を作成し、その後、上部カバー部201の周縁部分を、外側面カバー部202の形状(切り欠き205を含む)に切断するとともに、6か所の開口204を穿設し、その後、外側面カバー部202を折り曲げることによりカバー200を作成している。なお、カバー200の作成方法はこれに限られない。
【0037】
外側面カバー部202の折り曲げ加工を行う前の状態は、
図4に示すように、カバー固定部203と、外側面カバー部202とは、同一平面上にあり、この状態から外側面カバー部202が下側に向くように、線Mにおいて山折りとなる折り曲げ加工が行われる。本実施形態では、折り曲げ加工の前において、切り欠き205が形成されているので、折り曲げ加工を行っても、切り欠き205を挟んだ2つの外側面カバー部202が重なってしまうことを適切に防止することができる。本実施形態のカバー200は、このような簡易な工程により作成することができるので、加工コストを削減することができる。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られず、他の様々な態様に適用可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、ねじ止め部103を6か所設けるようにしていたが、本発明はこれに限られず、それ以上のねじ止め部103を備えるようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、ねじ止め部103E及び103Fを出力側に寄せた位置に配置していたが、本発明はこれに限られず、例えば、入力側に比較的衝撃に弱い部品が搭載されている場合は、入力側に寄せた位置に配置してもよい。
【0041】
また、電子機器回路は、車載用のDC−DCコンバータのような電源回路(例えばスイッチング電源回路)に限らず、他種の電子機器回路でよい。
【符号の説明】
【0042】
10…DC−DCコンバータユニット100…ベースプレート、101…底部、102…壁部、103…ねじ止め部、104…ねじ穴、200…カバー、201…上部カバー部、202…外側面カバー部、203…カバー固定部、204…開口、205…切り欠き、300…ねじ