(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態を説明する印刷システムのシステム構成図である。同図において、本システムはLAN(local area network)等のネットワーク、又はUSB(universal serial bus)によって、ホストコンピュータ(ホスト機器)1とプリンタ装置(印刷装置)2が接続されている。尚、配布文書を作成する配布元、及び後述する保存先コードの情報に基づいて配布文書の印刷を行う配布先の何れも、
図1に示す構成のホストコンピュータ1を使用するものである。
【0012】
ホストコンピュータ1は、プリンタ監視ツール3、プリンタドライバ4、エコ関連集計ツール5、印刷ナビゲーション部6、LAN通信制御部7、USB通信制御部8、及びメール送受信部9で構成されている。プリンタ監視ツール3は監視制御部10a、及び一発エコ設定部10bで構成され、監視制御部10aはプリンタ装置2から送信されるエコ関連情報の入力を監視する。また、一発エコ設定部10bは、例えば両面印刷の設定や、マルチページ印刷の設定、トナーセーブ印刷の設定等のエコロジー(電力・消耗品節約)に関する設定を一括して不図示の節電ボタンを操作することなく、自動設定できる機能を有する。
【0013】
プリンタドライバ4はアプリケーション(API)設定部11、印刷本実行部12a、印刷仮実行部12b、及びUI(ユーザインターフェイス)部13で構成され、API設定部11に設定されたアプリケーションに従って、印刷データを作成する。印刷本実行部12a及び印刷仮実行部12bはAPI設定部11によって作成された印刷データをプリンタ装置2の対応した中間データに変換し、上記LAN通信制御部7又はUSB通信制御部8を介して、プリンタ装置2に送信する。
【0014】
エコ関連集計ツール5はデータ集計部14、データ処理部15、及び表示部16で構成され、データ集計部14はプリンタ装置2から送信されるエコロジーに関するログデータを集計し、データ処理部15に送信する。尚、エコロジーに関するログデータは、例えば前述の両面印刷や、マルチページ印刷、トナーセーブ印刷等の省電力、消耗品節約に関するログデータである。
【0015】
データ処理部15では上記データの処理を行い、表示部16にエコロジー関連の集計データを表示する。このエコロジー関連の集計データとしては、上記両面印刷や、マルチページ印刷、トナーセーブ印刷の利用率や、スリープモードの設定により削減された電力のCO2換算値等のデータである。
【0016】
印刷ナビゲーション部6は、印刷プレビュー部17と設定部18で構成され、印刷プレビュー部17に印刷データの情報、例えば印刷データのジョブ名やドキュメント名、印刷データの総印刷ページ数等の情報を表示する。また、設定部18は印刷プレビュー部17に表示された情報をユーザに確認させ、必要に応じてユーザに各種設定を行わせる。例えば、後述する配布元(配布文書の配布者)のユーザ名や、当該ユーザの認証情報、文書ファイル名(ジョブ名)の情報、更に当該文書ファイルの保存期間等の設定を行うことができる。
【0017】
メール送受信部9は配布元のホストコンピュータ1から配布先のホストコンピュータ1に後述する保存先コードを含むメールを送信する際に使用する。前述のように、
図1は配布文書の配布元と配布先の両方のホストコンピュータの構成を説明するものであり、配布元のホストコンピュータ1の場合メール送受信部9はメール送信部として機能し、配布先のホストコンピュータ1の場合メール送受信部9はメール受信部として機能する。
【0018】
一方、プリンタ装置2は制御部19、及びプリンタ部20で構成されている。制御部19はCPU21、LAN通信制御部22、USB通信制御部23、コマンド解析制御部24、記憶装置制御部25、記憶装置(ハードディスク(HDD))26、ICカードリーダ制御部27、通信制御部28、印刷実行制御部29、及びパネル表示部30で構成されている。CPU21はホストコンピュータ1から送信された印刷データを受信し、コマンド解析を行って画像データを作成し、プリンタ部20に送信する。また、記憶装置(HDD)26はプリンタ装置2のシステムプログラムを記憶し、CPU21はこのプログラムに従って処理を行う。また、記憶装置(HDD)26は配布元のホストコンピュータ1から送信された文書ファイルを記憶する。
【0019】
尚、ICカードリーダ制御部27は不図示のカードリーダライタに接続され、ICカードに記録された認証情報の読み取りを行い、例えば認証印刷の際、ユーザの認証処理に使用される。
【0020】
また、プリンタ部20は印刷制御部31、印刷機構部32、及び給紙装置制御部33で構成され、制御部19から送信された画像データに従って印刷制御部31は印刷機構部32を制御し、給紙装置制御部33の制御に従って印刷機構部32に記録紙(用紙)を供給し、画像データに従った印刷処理を行う。
【0021】
以上の構成において、以下に本実施形態の処理動作を説明する。
図2は本例の処理動作を説明する概念図であり、先ず本例の処理動作の全体の流れを同図を利用して説明する。先ず、配布文書の配布元はホストコンピュータ1の印刷ナビゲーション部6(プリンタドライバ4)を使用して認証印刷データを作成し(
図2に示すa)、プリンタ装置2の記憶装置(HDD)26に印刷データファイルとしてジョブ登録する(
図2に示すb)。次に、前述の配布者(配布元)のユーザ名や、認証情報、前記登録した印刷データファイルのファイル名(ジョブ名)の情報を使用して登録済み印刷データファイルの保存先コード(配布先利用許可情報)を生成し(
図2に示すc)、メールで暗号化された保存先コードを配布先Aに配布する(
図2に示すd)。
【0022】
配布先Aは配布元から送信された保存先コードを含むメールを受信し(
図2に示すe)、この保存先コードをセットした専用コマンドを作成してプリンタ装置2に送付する(
図2に示すf)。プリンタ装置2はこの専用コマンドの指示に従って上記配布元が登録した印刷データファイルを印刷出力する(
図2に示すg)。この処理は、他の配布先B等の他の配布先でも同様に行い、受信した保存先コードをセットした専用コマンドをプリンタ装置2に送付し、配布元が登録した印刷データファイルを印刷出力する。このように、配布者がプリンタ装置2の記憶装置26に登録した印刷データファイルは、配布者がメールで印刷データの保存を知らせた配布先で、印刷することができるようになる。
【0023】
次に、上記本例の処理動作を具体的にフローチャートを使用して説明する。
図3は本例の処理動作を説明するフローチャートであり、最初に配布元の処理動作を説明する。先ず、文書ファイルを作成する(ステップ(以下、Sで示す)1)。すなわち、前述のAPI設定部11のアプリケーションを使用して文書ファイルを作成する。
【0024】
次に、印刷設定を行う(S2)。この処理は、API設定部11によって作成された文書ファイルの印刷データをプリンタ装置2に対応した中間コードに変換し、更に前述の印刷ナビゲーション部6を使用して各種設定を行う。
【0025】
具体的には、印刷プレビュー部17に印刷データファイルの情報、例えば印刷データのジョブ名やドキュメント名、印刷データの総印刷ページ数の情報等を表示する。そして、設定部18によって上記印刷プレビュー部17に表示された情報をユーザに確認させ、必要に応じてユーザに上記各種設定を行わせる。例えば、認証印刷を指定し(S3)、当該印刷データファイルの保存期間を設定する(S4)。
【0026】
また、前述の配布者(配布元)のユーザ名や、認証情報、印刷データファイル名(ジョブ名)の情報を保存先コード(配布先利用許可情報)として設定し、印刷ナビゲーション部6を経由して印刷指示を行う(S5)。すなわち、印刷ナビゲーション部6で設定した上記保存先コードを含む印刷データをLAN通信制御部7を介して、プリンタ装置2に送信する。
さらに、配布元のホストコンピュータ1は保存先コードを印刷プレビュー部17に表示し(S6)、この保存先コードを配布先にメールする(S7)。
【0027】
一方、配布先のホストコンピュータ1は配布元から送信されたメールを受信し(S8)、メールに含まれる保存先コードを読み出し、専用ツールを使用して専用コマンドに保存先コードを設定する(S9)。また、この専用コマンドに当該配布先のユーザ名を自動的に設定し(S10)、プリンタ装置2に送信する(S11)。このプリンタ装置2への専用コマンドの送信は、例えば前述のLAN通信制御部7を使用して行う。
【0028】
プリンタ装置2は、上記配布先から専用コマンドが入力すると、当該専用コマンドをLAN通信制御部22を介して受信し(S12)、コマンド解析を行う(S13)。そして、保存先コードを含む専用コマンドであると判断すると(S14がYES)、保存先コードに含まれる配布者(配布元)のユーザ名や、認証情報、印刷データファイル名(ジョブ名)の情報に基づいて、先に記憶装置(HDD)26に登録記憶されている対応する印刷データファイルを読み出し(S15)、印刷処理を実行する(S16)。尚、受信したコマンドが上記保存先コードを含むコマンドではない場合(S14がNO)、プリンタ装置2は受信したコマンドに従った処理を行う。また、配布先のホストコンピュータ1には、配布元のホストコンピュータ1に備えられている印刷プレビュー部が備えられており、記憶装置26に記憶されている印刷データを読み取ることにより、印刷データに基づく簡易の印刷画像を確認することが出来、配布元が配布した印刷データを、印刷出力する前に、確認することが出来る。
【0029】
その後、プリンタ装置2は印刷ログの情報を保存する(S17)。この印刷ログの保存は配布先のユーザ名を使用して行う。また、プリンタ装置2による印刷出力は前述の配布元の印刷設定に従って行われる(S18)。例えば、前述の印刷設定において、両面印刷の設定や、マルチページ印刷の設定、トナーセーブ印刷の設定等のエコロジーに関する設定が行われている場合、当該設定に従った印刷出力が行われる。
【0030】
上記保存先コードを含むメールは複数の配布先に送信されており、他の配布先(例えば、前述の配布先B等)のホストコンピュータ1も同様の印刷処理を行う。すなわち、配布元から送信されたメールを受信し(S8)、専用ツールを使用して専用コマンドに保存先コード等を設定し、プリンタ装置2に送付する(S9〜S11)。プリンタ装置2側では、上記コマンドを受信し(S12)、コマンド解析を行って(S13)、保存先コードに含まれる配布者(配布元)のユーザ名や、認証情報、印刷データファイル名(ジョブ名)の情報に基づいて、対応する印刷データファイルを読み出し、印刷処理を行う(S14〜S18)。
【0031】
以上のように処理することによって、セキュリティを確保して複数人に同じ印刷データファイルを印刷出力させることができ、言わば同じ印刷データファイルの認証印刷を複数人に対して行うことができる。また、メールによって送信されるデータは文書ファイルではなく、文書ファイルを特定させるための保存先コードであり、従来のように通信回線のトラフィックを圧迫させることもない。
【0032】
一方、プリンタ装置2に保存された印刷データファイルの削除は、以下の2つ方法によって行われる。例えば、
図4のフローチャートに示す方法は上記印刷データファイルの登録があった(ステップ(以下、STで示す)1がYES)後、保存期間の経過を判断し(ST2)、保存期間が経過すると(ST2がYES)、印刷データファイルの削除を行う(ST3)。上記保存期間は配布元による前述の処理(S4)によって設定されており、例えば配布先の人数や印刷データファイルを使用する会議等の日時によって設定される。
【0033】
また、
図5に示すフローチャートはもう1つの印刷データファイルの削除方法であり、配布元による印刷データファイルの削除方法である。この場合、先ず専用ツールを使用し、前述の保存先コードを設定し(ステップ(以下、STPで示す)1)、この専用コマンドにユーザ名を自動的に設定し(STP2)、削除専用コマンドとしてプリンタ装置2に送信する(STP3)。
【0034】
プリンタ装置2では上記削除専用コマンドを受信し(STP4)、コマンド解析を行う(STP5)。そして、保存先コードを含む削除専用コマンドであると判断すると(STP6がYES)、更にユーザ名が一致するか判断し(STP7)、ユーザ名も一致すると(STP7がYES)、当該印刷データファイルを削除する(STP8)。このように処理することによって、保存期間の経過前においても、例えば全ての保存先による印刷データファイルの印刷出力が完了した場合等において配布元のユーザは自己が作成した印刷データファイルの削除を行うことができる。
【0035】
尚、本実施形態の説明において、配布先のユーザはホストコンピュータ1を使用して保存先コードをメールで受信し、プリンタ装置2に専用コマンドを作成して印刷データファイルの印刷指示を行ったが、配布先のユーザは必ずしもホストコンピュータ1を使用する必要はなく、例えば通信機能を有する携帯電話等を使用してプリンタ装置2に印刷指示を行うように構成してもよい。また、配布先のユーザが配布元の作成登録した印刷データファイルを利用可能にするための配布先利用許可情報(保存先コード)は、上記実施形態の説明では、配布元の認証情報と登録した印刷データファイルのファイル名情報とで構成される例を示したが、配布元が配布先に使用許可を与える情報と印刷データファイルを識別するための情報を組み合わせたものであれば、他の種類の情報を利用することもできる。例えば、認証情報の代わりに配布元が作成した鍵情報であっても良いし、印刷データファイル名(ジョブ名)の代わりに印刷データファイルの管理番号や、管理コード情報などを用いることもできる。
【0036】
本発明はいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下、本件特許出願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0037】
付記1
印刷データの配布元及び配布先の端末機器と印刷装置とがネットワークを介して接続された印刷システムにおいて、
前記印刷データの配布元の端末機器は、
前記印刷データを作成し、該印刷データに配布先利用許可情報を記録し、前記印刷データを前記印刷装置に送信する印刷データ作成送信部と、
前記配布先利用許可情報をメールによって前記配布先の端末機器に送信するメール送信部と、を有し、
前記配布先の端末機器は、
前記配布元の端末機器からメールによって送信された前記配布先利用許可情報を受信し、該配布先利用許可情報を含む印刷指示情報を前記印刷装置に送信する印刷指示情報作成送信部を有し、
前記印刷装置は、
前記配布元の端末機器から送信された、前記配布先利用許可情報を含む印刷データを受信し、記憶部に記憶する制御部と、
前記配布先の端末機器から送信された印刷指示情報を受信し、該印刷指示情報に含まれる前記配布先利用許可情報に基づいて前記記憶部を検索し、前記配布先利用許可情報が一致する印刷データを読み出し、印刷出力する印刷処理部と、
を有することを特徴とする印刷システム。
【0038】
付記2
前記配布先利用許可情報は、前記配布元の認証情報及び印刷データファイル名情報を含むことを特徴とする付記1記載の印刷システム。
【0039】
付記3
前記印刷データには前記配布元の端末機器が設定した該印刷データの印刷設定情報も記録されており、前記印刷装置は前記印刷設定情報に従った印刷出力を行うことを特徴とする付記1、又は2に記載の印刷システム。
【0040】
付記4
印刷データの配布元及び配布先の端末機器とネットワークを介して接続された印刷装置において、
前記配布元の端末機器から送信された、前記配布先利用許可情報を含む印刷データを受信し、記憶部に記憶する制御部と、
前記配布元からメールによって送信された前記配布先利用許可情報に基づいて作成した配布先からの印刷指示情報を受信し、該印刷指示情報に含まれる前記配布先利用許可情報が前記記憶部に記憶された前記印刷データに含まれる前記配布先利用許可情報と一致する時、前記印刷データを前記記憶部から読み出し、印刷出力する印刷処理部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【0041】
付記5
前記配布先利用許可情報は、前記配布元の認証情報及び印刷データファイル名情報を含むことを特徴とする付記4記載の印刷装置。
【0042】
付記6
前記印刷データには前記配布元の端末機器が設定した該印刷データの印刷設定情報も記録されており、前記印刷処理部は前記印刷設定情報に従った印刷出力を行うことを特徴とする付記4、又は5に記載の印刷装置。
【0043】
付記7
印刷データの配布元及び配布先の端末機器とネットワークを介して接続された印刷装置の制御方法において、
前記配布元の端末機器から送信された、前記配布先利用許可情報を含む印刷データを受信し、記憶部に記憶する処理と、
前記配布元からメールによって送信された前記配布先利用許可情報に基づいて作成した配布先からの印刷指示情報を受信し、該印刷指示情報に含まれる前記配布先利用許可情報が前記記憶部に記憶された前記印刷データに含まれる前記配布先利用許可情報と一致する時、前記印刷データを前記記憶部から読み出し、印刷出力する印刷処理と、
を行うことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【0044】
付記8
前記配布先利用許可情報は、前記配布元の認証情報及び印刷データファイル名情報を含むことを特徴とする付記7記載の印刷装置の制御方法。