(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のピックアップ機能付サドルの実施の形態を適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0017】
<第一実施形態>
図1のピックアップ機能付サドル1は、一般的には駒を介して弦楽器の胴部の表面側に突設され、複数の弦を支持するものである。当該ピックアップ機能付サドル1は、細長い板状体であり、その長手方向を胴部の表面と略平行に、その広い平面となる板面を胴部の表面と略垂直に配設される。当該ピックアップ機能付サドル1は、サドル本体2と、このサドル本体2内に配設される圧電センサ3とを備える。以下、このピックアップ機能付サドル1の構造を具体的に説明する。
【0018】
サドル本体2は、上面に弦Xが当接する複数の弦当接位置を有する。サドル本体2は、略直方体形状のサドル上部2aと、このサドル上部2aの下面に位置する略直方体形状のサドル下部2bとからなる。サドル本体2は、内部(サドル上部2aとサドル下部2bとの間)に圧電センサ3が収納される内部空間部5aを有し、さらに圧電センサ3に接続されるリード線4を内部空間部5aからサドル下部2bの下側に挿通させるリード線挿通孔5bを有する。
【0019】
サドル上部2aは、サドル下部2bよりも高い剛性を有する。つまり、サドル上部2aはサドル下部2bよりも弦当接方向の曲げ応力に対して変形を起こしにくい。この剛性の差異は、サドル上部2aを形成する材料のヤング率をサドル下部2bを形成する材料のヤング率よりも大きくすることで得ることができる。ここでサドル下部2bの形成材料のヤング率に対するサドル上部2aの形成材料のヤング率の比としては、5倍以上が好ましい。サドル下部2bに対するサドル上部2aのヤング率比が前記範囲未満であると、サドル上部2aとサドル下部2bとの剛性に差が生じ難くなり、胴の振動によってサドル上部2a及びサドル下部2bが共に撓み、圧電センサ3が胴振動を検知しやすくなるおそれがある。
【0020】
サドル上部2a及びサドル下部2bの形成材料は、一定の強度を有しつつ、両者のヤング率を前記範囲に異ならせることができる組合せであれば特に限定されない。例えば、サドル上部2aに比較的ヤング率の高い金属又はセラミックを用い、サドル下部2bに比較的ヤング率の低い合成樹脂、象牙、牛骨等を用いることができる。さらに好ましくは、サドル上部2aの形成材料として真鍮を用い、サドル下部2bの形成材料としてユリア系樹脂を用いることができる。このような形成材料の組合せによれば、サドル下部2bに対するサドル上部2aのヤング率を5倍以上とすることができる。また、当該ピックアップ機能付サドル1の加工性及びコスト性を向上させるこができる。
【0021】
サドル上部2aのサイズとしては、当該ピックアップ機能付サドル1が装着される弦楽器の弦を支持できるものであれば特に限定されず、例えば6弦を有するアコースティックギターに装着する場合、長さ(弦の並び方向)が70mm以上90mm以下、幅(弦と平行方向)が2mm以上4mm以下、高さ(弦の当接方向)が3mm以上6mm以下とすることができる。また、サドル下部2bのサイズとしては、長さ及び幅はサドル上部2aと同様とすることができ、高さは3mm以上6mm以下とすることができる。
【0022】
また、サドル上部2aの弦当接面から内部空間部5aまでの距離としては、例えば3mm以上6mm以下とすることができ、内部空間部5aのサイズとしては、例えば長さが65mm以上85mm以下、幅が2mm以上4mm以下、高さが0.5mm以上3mm以下とすることができる。さらに、リード線挿通孔5bの径としては2mm以上5mm以下とすることができる。
【0023】
圧電センサ3は、サドル本体2の長手方向と略平行に(胴部の表面と略平行に)内部空間部5aに配設される。圧電センサ3は、1又は複数の圧電素子を備える平板状のセンサ体であり、一方の端部に電極端子(図示せず)を備え、リード線4がこの電極端子に接続される。弦Xの振動は、サドル上部2aを介して圧電センサ3が備える圧電素子に圧力として伝わり、電気信号に変換されてリード線4から外部へと出力される。また、圧電センサ3は、サドル本体2の複数の弦当接位置の並び方向に略平行であることが好ましい。このように圧電センサ3を配置することによって複数の弦からの振動を受けやすくすることができる。
【0024】
圧電センサ3の構造は、サドル本体2内に配設可能であれば特に限定されず、例えば、圧電膜を2枚の電極で挟んだ圧電素子が基板上に配設されたセンサ体や、圧電膜フィルムの両面に電極をスクリーン印刷等で印刷したセンサ体等を用いることができる。また、圧電センサ3が有する圧電素子は単一のものであってもよいし、各弦と対偶するように複数に分割されたものであってもよい。
【0025】
圧電センサ3は、サドル上部2aの下面に固着されている。圧電センサ3をサドル上部2aに固着させる方法としては特に限定されず、例えば、接着剤によって接着させる方法を用いることができる。
【0026】
前記圧電センサ3のサイズとしては特に限定されず、例えば厚みが50μm以上3mm以下、幅が0.5mm以上3mm以下、長さが30mm以上70mm以下とすることができる。
【0027】
圧電センサ3に用いる圧電膜の材質としては、圧電効果により電圧を生じさせるものであれば特に限定されず、例えば各種の酸化物や窒化物、高分子等を挙げることができる。圧電膜の材質の具体例としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、ランガサイト系結晶などの単結晶、酸化亜鉛や窒化アルミニウムなどの配向結晶、ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができ、これらの中でも高い圧電性を有するジルコン酸チタン酸鉛が特に好ましい。
【0028】
圧電センサ3に用いる電極の材質としては、電気伝導性を有すれば特に限定されず、例えば白金、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、銅、パラジウム、クロム、あるいはこれらの合金等を挙げることができる。これらの中でも電気伝導率や化学的な安定性の観点から白金または金が好ましい。
【0029】
圧電センサ3の電極端子へのリード線4の接続方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、半田付け、圧着金具による接続、導電性接着剤による接着、ワイヤボンディング等を挙げることができる。
【0030】
なお、サドル上部2aとサドル下部2bとは、例えばピン止め、ネジ止め、接着剤による接合等の手段で固定される。
【0031】
当該ピックアップ機能付サドル1は、サドル上部2aの剛性がサドル下部2bの剛性より大きいので、サドル上部2aによって胴振動(曲げ振動)による曲げ変形が規制され、弦の振動が直に圧電センサ3に伝わるとともに、サドル上部2aとサドル下部2bとのヤング率の差が大きいため、胴振動による撓みがサドル下部2bに発生しやすい。すなわち、サドル下部2bでは胴振動が減衰されている。また、当該ピックアップ機能付サドル1は、サドル上部2aの下面に圧電センサ3を固着しているため、圧電センサ3に胴振動による圧力が加わりにくくなる。これにより、圧電センサ3が胴振動を検出することを抑制することができる。その結果、当該ピックアップ機能付サドル1は、胴振動の混入を抑えながら、弦振動を変換した電気信号を出力することができる。
【0032】
<第二実施形態>
図2のピックアップ機能付サドル11は、前記
図1のピックアップ機能付サドル1と同様であり、サドル本体12と、このサドル本体12内に配設される圧電センサ3とを備える。この圧電センサ3と、サドル本体12内の内部空間部5a及びリード線挿通孔5bとは、前記ピックアップ機能付サドル1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0033】
サドル本体12は、前記サドル本体1と同様の形状であり、略直方体状のサドル上部12aと、サドル下部とからなる。このサドル下部は、サドル上部12aの下面に位置する略直方体状の第一下部12bと、この第一下部12bの下面に積層される略直方体状の第二下部12cとからなる。
【0034】
第一下部12bは、サドル上部12a及び第二下部12cよりも高い剛性を有する。このような剛性の関係は、例えば、第一下部12bを形成する材料のヤング率をサドル上部12a及び第二下部12cを形成する材料のヤング率よりも高くすることで得ることができる。ここでサドル上部12a及び第二下部12cの形成材料のヤング率に対する第一下部12bの形成材料のヤング率の比としては、5倍以上が好ましい。サドル上部12a及び第二下部12cに対する第一下部12bのヤング率比が前記範囲未満であると、サドル上部12a及び第二下部12cと第一下部12bとの剛性に差が生じ難くなり、胴の振動によってサドル上部12a、第一下部12b及び第二下部12cが共に撓み、圧電センサ3が胴振動を検知しやすくなるおそれがある。
【0035】
サドル上部12a、第一下部12b及び第二下部12cの形成材料は、一定の強度を有しつつ、ヤング率を前記範囲に異ならせることができる組合せであれば特に限定されない。例えば、第一下部12bに比較的ヤング率の高い金属又はセラミックを用い、サドル上部12a及び第二下部12cに比較的ヤング率の低い合成樹脂、象牙、牛骨等を用いることができる。さらに好ましくは、第一下部12bの形成材料として真鍮を用い、サドル上部12a及び第二下部12cの形成材料としてユリア系樹脂を用いることができる。このような形成材料の組合せによれば、サドル上部12a及び第二下部12cに対する第一下部12bのヤング率を5倍以上とすることができる。また、当該ピックアップ機能付サドル11の加工性及びコスト性を向上させるこができる。
【0036】
サドル上部12aのサイズは、
図1のピックアップ機能付サドル1と同様とすることができる。また、第一下部12b及び第二下部12cのサイズとしては、長さ及び幅はサドル上部12aと同様とすることができ、第一下部12bの高さは2mm以上4mm以下、第二下部12cの高さは2mm以上4mm以下とすることができる。
【0037】
また、サドル上部12aの弦当接面から内部空間部5aまでの距離及び内部空間部5aのサイズは、
図1のピックアップ機能付サドル1と同様とすることができる。
【0038】
圧電センサ3は、サドル本体12の長手方向と略平行に(胴部の表面と略平行に)なるように第一下部12bの上面に固着されている。また、圧電センサ3は、サドル本体12の複数の弦当接位置の並び方向に略平行であることが好ましい。このように圧電センサ3を配置することによって複数の弦からの振動を受けやすくすることができる。
【0039】
当該ピックアップ機能付サドル11によれば、第一下部12bの剛性がサドル上部12a及び第二下部12cの剛性より大きいので、胴振動(曲げ振動)による曲げ変形が規制される。また、第一下部12bとサドル上部12a及び第二下部12cとのヤング率の差が大きい。そのため、胴振動による撓みが主に第二下部12cで吸収される。その結果、圧電センサ3の胴振動検出が抑制され、当該ピックアップ機能付サドル11は、胴振動の混入を抑えながら弦振動を変換した電気信号を出力することができる。
【0040】
<第三実施形態>
図3のピックアップ機能付サドル21は、前記
図1のピックアップ機能付サドル1と同様であり、サドル本体22と、このサドル本体22内に配設される圧電センサ3とを備える。この圧電センサ3は、前記ピックアップ機能付サドル1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0041】
サドル本体22は、上面に弦Xが当接する複数の弦当接位置と、内部空間部とを有する。サドル本体22は、サドルの外殻を構成するサドル外体22bと、このサドル外体22bの内部空間部に収納される板状の支持体22aと、内部空間部を充填する充填体22cとからなる。前記内部空間部には支持体22aに固着された圧電センサ3が収納され、充填体22cは、サドル外体22bと圧電センサ3及び支持体22aとの間に充填され、支持体22a及び圧電センサ3を固定する。また、サドル外体22bは、圧電センサ3に接続されるリード線4を内部空間部からサドル外体22bの下側に挿通させるリード線挿通孔を有する。
【0042】
支持体22aは、サドル外体22b及び充填体22cよりも高い剛性を有し、サドル外体22b及び充填体22cよりも弦当接方向の曲げ応力に対して変形を起こしにくい。この剛性の差異は、例えば、支持体22aの形成材料のヤング率を、サドル外体22b及び充填体22cの形成材料のヤング率よりも大きくすることで得ることができる。ここでサドル外体22b及び充填体22cの形成材料のヤング率に対する支持体22aの形成材料のヤング率の比としては、5倍以上が好ましい。サドル外体22b及び充填体22cに対する支持体22aのヤング率比が前記範囲未満であると、支持体22aとサドル外体22b及び充填体22cとの剛性に差が生じにくくなり、胴の振動によって支持体22a、サドル外体22b及び充填体22cが共に撓み、支持体22aに固着された圧電センサ3が胴振動を検知しやすくなるおそれがある。このように、各部材の形成材料のヤング率を変えることによって、サドル本体22の形状を調整することなく、各部材の剛性を異ならせることができる。
【0043】
支持体22aの形成材料は、一定の強度を有しつつ、充填体22cの形成材料に対するヤング率が前記範囲に異なるものであれば特に限定されない。例えば、支持体22aの形成材料としては、比較的ヤング率が高い金属又はセラミックを用いることが好ましく、特にジルコニアを用いることが好ましい。サドル外体22bの形成材料としては、比較的ヤング率が低い合成樹脂、象牙、牛骨等を用いることが好ましく、特にユリア系樹脂を用いることが好ましい。また、充填体22cとしては、合成樹脂を用いることができ、ユリア系樹脂を用いることが好ましい。
【0044】
支持体22aのサイズとしては、圧電センサ3を配設することができれば特に限定されず、例えば長さが30mm以上70mm以下、幅が0.5mm以上3mm以下、高さが50μm上3mm以下とすることができる。
【0045】
サドル外体22bのサイズとしては、当該ピックアップ機能付サドル21が装着される弦楽器の弦を支持できるものであれば特に限定されず、例えば6弦を有するアコースティックギターに装着する場合、長さが70mm以上90mm以下、幅が2mm以上4mm以下、高さが5mm以上15mm以下とすることができる。
【0046】
また、サドル外体22bの弦当接面から内部空間部までの距離及び内部空間部のサイズは、
図1のピックアップ機能付サドル1と同様とすることができる。
【0047】
圧電センサ3は、サドル本体22の長手方向と略平行に(胴部の表面と略平行に)なるように、支持体22aの上面に固着され、充填体22cによって固定されている。また、圧電センサ3は、サドル本体22の複数の弦当接位置の並び方向に略平行であることが好ましい。このように圧電センサ3を配置することによって複数の弦からの振動を受けやすくすることができる。
【0048】
当該ピックアップ機能付サドル21によれば、圧電センサ3が上面に固着される支持体22aの剛性が、サドル外体22b及び充填体22cより大きいので、支持体22aによって胴振動(曲げ振動)による曲げ変形が規制されるとともに、支持体22aとサドル外体22b及び充填体22cとのヤング率の差が大きいため、胴振動による撓みがサドル外体22b及び充填体22cに発生しやすい。また、支持体22aの下面側のサドル外体22b及び充填体22cによって、胴振動の撓みが吸収される。そのため、圧電センサ3の胴振動検出が抑制され、当該ピックアップ機能付サドル21は、胴振動の混入を抑えながら弦振動を変換した電気信号を出力することができる。
【0049】
<第四実施形態>
図4のピックアップ機能付サドル31は、前記
図1のピックアップ機能付サドル1と同様であり、サドル本体32と、このサドル本体32内に配設される圧電センサ3と、サドル本体32の正面及び背面に配設される補強体36とを備える。この圧電センサ3は、前記ピックアップ機能付サドル1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0050】
サドル本体32は、上面に弦Xが当接する複数の弦当接位置と、内部空間部35aとを有する。前記内部空間部35aの下面には圧電センサ3が固着され、内部空間部35aには合成樹脂が充填される。
【0051】
サドル本体32は、圧電センサ3の下方に位置する下方部32bの正面及び背面に平板状の補強体36が接合されている。このため、圧電センサ3の上方に位置する上方部32aに対して下方部32bの剛性が高く、下方部32bが弦当接方向の曲げ応力に対して変形を起こしにくい。なお、下方部32bの剛性を十分に高めることができれば、補強体36はサドル本体32の片面(正面又は背面のどちらか一方)のみに配設してもよい。
【0052】
補強体36の材料としては、一定の剛性を有すれば特に限定されず、例えば、金属、剛性、セラミック等を用いることができる。これらの中でも、ステンレスを用いることが好ましい。
【0053】
補強体36のサイズとしては、下方部32bの剛性を高めることができれば特に限定されず、例えば長さが70mm以上90mm以下、厚みが0.1mm以上2mm以下、高さが0.2mm以上2mm以下とすることができる。
【0054】
サドル本体32のサイズ、サドル本体32の弦当接面から内部空間部35aまでの距離及び内部空間部35aのサイズは、
図3のピックアップ機能付サドル21と同様とすることができる。
【0055】
サドル本体32の材質としては、公知のものを用いることができ、例えば、象牙、牛骨、合成樹脂等を用いることができるが、剛性及びコストの観点から、ユリア系樹脂が特に好ましい。
【0056】
圧電センサ3は、サドル本体32の長手方向と略平行に(胴部の表面と略平行に)なるように内部空間部35aの下面に固着されている。また、圧電センサ3は、サドル本体32の複数の弦当接位置の並び方向に略平行であることが好ましい。このように圧電センサ3を配置することによって複数の弦からの振動を受けやすくすることができる。
【0057】
内部空間部35aに充填する合成樹脂としては、例えばユリア樹脂等を用いることができる。
【0058】
当該ピックアップ機能付サドル31によれば、サドル下方部32bの剛性が、サドル本体32の上方部32aより大きいので、サドル下方部32bによって胴振動(曲げ振動)による曲げ変形が規制される。そのため、圧電センサ3の胴振動検出が抑制され、当該ピックアップ機能付サドル31は、胴振動の混入を抑えながら弦振動を変換した電気信号を出力することができる。
【0059】
<その他の実施形態>
本発明のピックアップ機能付サドルは前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、圧電センサを剛性の高い部材に固着させたが、剛性の低い部位材に固着させても胴振動の検出を抑制する効果を得ることは可能である。
【0060】
また、各実施形態において、サドル内での剛性の高い部位と低い部位との上下方向の位置関係は逆転することも可能である。例えば、前記第一実施形態において、サドル上部2aの剛性(ヤング率)がサドル下部2bの剛性(ヤング率)よりも低い形態も本発明の意図する範囲内である。その場合、剛性の大きなサドル下部2bによって、サドル上部2a側へ胴振動が伝播しないように遮断して、圧電センサ3の胴体振動による振動を抑制することができる。また、第四実施形態において、補強体36を下方部32bではなく上方部32aに接合して、圧電センサの上部と下部との剛性を異ならせてもよい。
【0061】
さらに、前記第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態では材料のヤング率を相違させてサドル部材の剛性を変化させ、前記第四実施形態では補強材によってサドルの剛性を変化させたが、本発明においてサドルを構成する部材の剛性を異ならせる手段は、これらに限定されるものではない。
【0062】
例えば、サドルを構成する部材の曲げ方向に対する幅に差異を持たせることによっても部材の剛性を異ならせることができる。具体的には、第一実施形態において、サドル上部2a及びサドル下部2bを同一材料で形成し、サドル上部2aの幅(弦と平行方向)をサドル下部2bよりも大きくすることで、サドル上部2aの剛性をサドル下部2bよりも高くすることが可能である。
【0063】
また例えば、サドルを構成する部材にリブを付加したり、ノッチを形成したりする等、機械要素の有無に差異を持たせることによって部材の剛性を異ならせることもできる。具体的には、第一実施形態において、例えばサドル上部2a及びサドル下部2bを同一材料で形成し、サドル上部2aの正面又は/及び背面に複数の上下方向のリブを配設することで、サドル上部2aの剛性をサドル下部2bよりも高くすることが可能である。このリブは対角線状に配設されるものであってもよい。また、ノッチを形成する場合、例えばサドル上部2aの正面又は/及び背面を波打ち状にすることによって、サドル上部2aの剛性をサドル下部2bよりも高くすることが可能である。
【0064】
さらに、サドルを構成する部材の素材における添加剤の有無又は添加剤の含有量に差異を持たせることによって部材の剛性を異ならせることもできる。具体的には、第一実施形態において、サドル上部2a及びサドル下部2bを同一材料で形成し、このときサドル上部2aにサドル下部2bよりも添加剤を多く含有させるか、サドル上部2aのみに添加剤を含有させることによって、サドル上部2aの剛性をサドル下部2bよりも高くすることが可能である。このようにサドルを構成する部材の素材に添加する添加剤としては、例えば、炭素繊維、セラミック(例えばアルミナ、窒化アルミ等)、フッ素系粒子、メラミン樹脂粒子、シリコン系粒子、タルク、カオリン、炭酸マグネシュウム、炭酸カリウム、酸化チタン、シリカ、デンプン等の材料で形成されたフィラーを挙げることができる。
【0065】
このような部材の剛性を異ならせる手段は、複数の手段を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
真鍮製のサドル上部とユリア系樹脂製のサドル下部との間に圧電センサを配設し、この圧電センサにリード線を接続してピックアップ機能付サドルを作製した。サドル上部のサイズは長さが80mm、幅が3mm、高さが5mm、サドル下部のサイズは長さが80mm、幅が3mm、高さが5mmである。なお、真鍮のヤング率は約10×10
4MPaであり、ユリア系樹脂のヤング率は約0.7〜1.4×10
4MPaである。
【0068】
[比較例1]
ユリア系樹脂製のサドル上部とユリア系樹脂製のサドル下部との間に圧電センサを配設し、この圧電センサにリード線を接続してピックアップ機能付サドルを作製した。サドル上部及びサドル下部のサイズは、実施例1と同様とした。
【0069】
[評価]
実施例1及び比較例1のピックアップ機能付きサドルをハンマーで打撃し、この打撃力と圧電センサのインパルス応答とから伝達関数(周波数と強度及び相との関係)を算出した。実施例1の伝達関数の測定結果を
図1に、比較例1の伝達関数の測定結果を
図2に示す。
【0070】
図1及び
図2からわかるように、実施例1は比較例1に対して、周波数特性の平坦性に優れる。つまり、実施例1は、比較例1よりも胴振動の検出を抑制することができる。