特許第5942543号(P5942543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5942543-供試体試験装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942543
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】供試体試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/02 20060101AFI20160616BHJP
   G01M 13/02 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   G01M15/02
   G01M13/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-78665(P2012-78665)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-210202(P2013-210202A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】永岡 万朋
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−252957(JP,A)
【文献】 特開2002−267552(JP,A)
【文献】 特開2004−354328(JP,A)
【文献】 特開2003−121340(JP,A)
【文献】 特開2009−276211(JP,A)
【文献】 特開2004−233223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/02
G01M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体に試験負荷を与えるダイナモと、
前記供試体の回転軸を直接連結したトルク計と、
前記ダイナモと前記トルク計との間に配置した中間軸受と
前記中間軸受によって回転可能に支持され、一端側を前記ダイナモの回転軸に接続し且つ他端側を前記トルク計に接続した中間軸とを備え、
前記ダイナモの回転軸と前記供試体の回転軸とを前記トルク計、前記中間軸及び前記中間軸受を介して同心軸状に連結した供試体試験装置であり、
前記トルク計に所定温度範囲に調節した温調空気を当てるブロワと、
前記トルク計の温度を直接的又は間接的に計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて前記ブロワから供給する前記温調空気の温度を制御する温調空気制御部と
前記トルク計及び前記中間軸受を覆う恒温槽とを備えていることを特徴とする供試体試験装置。
【請求項2】
前記トルク計にそれぞれ連結する前記供試体側の軸及び前記中間軸受側の軸と前記トルク計との間にそれぞれ熱絶縁体を介在させた請求項1に記載の供試体試験装置。
【請求項3】
前記中間軸受自体を油冷する油冷手段を備えている請求項1又は2の何れかに記載の供試体試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の供試体に試験負荷を与えるダイナモを備えた供試体試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータ等の供試体に試験負荷を与えるダイナモと、供試体の回転軸が連結される中間軸受と、ダイナモと中間軸受との間に配置されるトルク計とを備えた供試体試験装置が知られている。ここで、トルク計は、ダイナモ及び供試体の回転による回転軸のねじれによって歪みが発生する起歪部と、起歪部に張り付けられた歪みゲージの歪みを検出する歪センサから構成されていて、歪センサにより歪みを電気量に変換して、供試体の回転速度に対する伝達トルク等の諸特性を測定することが可能なものである。
【0003】
このような供試体試験装置において、供試体、トルク計、中間軸受、ダイナモの順番で直列に接続した場合には、供試体、中間軸受、トルク計、ダイナモの順番で直列に接続した場合と比較して、トルク計が中間軸受のメカロス(機械損失)の影響を受けないため、トルク計の計測精度は向上する。しかしながら、上述の構成であれば、トルク計は供試体及び中間軸受の発熱の影響を受け易くなり、トルク計の温度管理を適正に行うことが要求される。特に、歪センサは所定の温度範囲でのみ適正に作動するのが通常であるため、トルク計の温度管理は歪センサの定められた温度範囲内で行うことが必要となる。
【0004】
特許文献1には、トルク計の周囲温度の変動である温度ドリフトの特性と温度−定格トルク特性を予め計測したマップとテーブルとして用意しておき、これら特性とトルク計の現在の温度とを基にしてトルク検出信号に含まれる現在の温度ドリフト分と定格トルク特性の比率を取り出してトルク検出信号を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−130751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、温度ドリフトの特性や温度−定格トルク特性に基づいてトルク計の検出信号を補正する構成では、これら各特性を予め計測したマップ及びテーブルを用意しなければならず、また、補正処理の計算量が多く、時間もかかるというデメリットがある。さらに、回転速度が異なれば、補正処理時に参照すべきマップやテーブルも異なることから、マップやテーブルも相当数用意していなければ、全ての回転速度に応じて適切な補正処理を行うことはできず、この点でも不利である。
【0007】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、トルク計の温度ドラフトの発生自体を防止・抑制することによって、高精度のトルク制御を実現可能な供試体試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、供試体に試験負荷を与えるダイナモと、供試体の回転軸を直接連結したトルク計と、ダイナモとトルク計との間に配置した中間軸受と、中間軸受によって回転可能に支持され、一端側をダイナモの回転軸に接続し且つ他端側をトルク計に接続した中間軸とを備え、ダイナモの回転軸と供試体の回転軸とをトルク計及び中間軸受を介して同心軸状に連結した供試体試験装置に関するものである。ここで、供試体としては、例えば電気自動車用か否かに拘わらず、発電機や電動機、又は変速機等の自動車部品を挙げることができる。
【0009】
そして、本発明に係る供試体試験装置は、トルク計に所定温度範囲に調節した温調空気を当てるブロワと、トルク計の温度を直接的又は間接的に計測する計測手段と、計測手段の計測結果に基づいてブロワから供給する温調空気の温度を制御する温調空気制御部と、トルク計及び中間軸受を覆う恒温槽とを備えていることを特徴としている。
【0010】
このような供試体試験装置であれば、供試体や中間軸受の熱がトルク計に伝達されてトルク計の温度が変動し得る場合であっても、トルク計の温度が歪センサの定められた温度範囲内となるように設定された所定温度に温調空気制御部によって制御した温調空気をブロワでトルク計に当てることにより、トルク計の温度を安定させることができ、温度ドラフトの影響を受けることなく、高精度のトルク制御を行うことができる。そして、このような高精度のトルク制御下で供試体に関する各種性能試験を行うことが可能な本発明の供試体試験装置によって、供試体に関する適正な試験結果を得ることができる。また、このような試験装置であれば、例えば予め計測した温度ドリフトの特性や温度−定格トルク特性に基づいてトルク計の検出信号を補正する構成と比較して、各特性を予め計測したマップやテーブルを用意する必要もなく、トルク計の検出信号を補正するという煩雑な補正処理も不要であり、既知の供試体試験装置にも比較的容易に適用することができる点においても有利である。
【0011】
特に、本発明において、少なくともトルク計を覆う恒温槽を備えた供試体試験装置を構成すれば、トルク計のみならず、トルク計の周辺温度も温調空気に応じた温度に維持することができ、トルク計の周囲温度の変動に起因するトルク計の温度ドラフトをも防止・抑制することができる。
【0012】
本発明の供試体試験装置では、計測手段として、例えばトルク計の温度を直接的に計測するトルク計温度計測部のみによって構成することも可能であるが、トルク計の温度を間接的に計測する計測部によって構成することも可能である。後者の計測手段を構成する計測部(トルク計の温度を間接的に計測する計測部)の一例としては、ブロワから供給される温調空気の温度を計測する供給温調空気計測部や、恒温槽内の温度を計測する恒温槽内計測部を挙げることができる。そして、計測手段が、トルク計の温度を間接的に計測する計測部として、供給温調空気計測部又は恒温槽内計測部の少なくとも何れか一方を有するものである場合には、温調空気制御部として、供給温調空気計測部又は恒温槽内計測部の少なくとも何れか一方の計測結果に基づいてブロワから供給する温調空気の温度を制御するものを適用することができる。
【0013】
さらに、本発明の供試体試験装置では、トルク計にそれぞれ直接する供試体側の軸及び中間軸受側の軸とトルク計との間にそれぞれ熱絶縁体を介在させることができる。このような構成を採用すれば、上述の熱絶縁体をトルク計との間に介在させた軸を有する供試体及び中間軸受からトルク計に熱が伝達しないか、極めて伝達し難く、温調空気の温度を温調空気制御部によって所定温度に制御する際の調整範囲も相対的に小さくなり、好適である。
【0014】
また、本発明の供試体試験装置が、中間軸受自体を油冷する油冷手段を備えたものであれば、中間軸受の発熱自体を油冷手段によって抑えることができ、トルク計が中間軸受からの発熱の影響を受ける程度を効果的に低減することができる。
【0015】
さらに本発明の供試体試験装置においては、トルク計に結露が発生することを防止する事態を回避するために、トルク計にドライエアを当てるドライヤを設ければよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明であれば、温調空気制御部によって所定温度に制御した温調空気をブロワでトルク計に当てることにより、トルク計の温度を安定させることができ、トルク計の温度ドラフトの発生を防止・抑制して、高精度のトルク制御を実現可能な供試体試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る供試体試験装置の全体概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る供試体試験装置Xは、例えば図1に示すように、例えば電気自動車のモータ等の回転動作を伴う供試体Mに擬似負荷を与えるダイナモ1(「ダイナモメータ」とも称する)と、一端側に供試体Mの回転軸M1が接続されたトルク計2と、トルク計2とダイナモ1との間に配置した中間軸受3と、中間軸受3によって回転可能に支持されている中間軸4と、中間軸4とダイナモ1の回転軸11とを連結するカップリング5とを備え、トルク計2、中間軸受3、中間軸4及びカップリング5を介してダイナモ1の回転軸11及び供試体Mの回転軸M1を同心軸状に連結し、一体回転可能に構成したものである。本実施形態では、ダイナモ1及び中間軸受3を共通のベース6に固定している。このベース6には、供試体Mを取り付けるための供試体ブラケット7も固定している。なお、供試体Mは、ベース6を載置している床面F上を転動可能なキャスタM21を有する供試体MカバーM2によって被覆されている。
【0020】
ここで、トルク計2は、例えばトルク伝達軸21の回転による捩れによって歪みが発生する起歪部(図示省略)を内部に有し、この起歪部に付帯させた歪ゲージの歪みを電気量に変換して、伝達トルクを測定するものである。図1では、トルク伝達軸21の一端部に供試体用フランジ部22を設け、トルク伝達軸の他端部に中間軸用フランジ部23を設けたフランジ型のトルク計2を示しているが、他のタイプのトルク計を適用することもできる。供試体Mがモータである場合には、ダイナモ1は「疑似負荷」となり、トルク計2によって供試体Mであるモータの回転数に対する伝達トルク等の特性を測定する。
【0021】
本実施形態の供試体試験装置Xでは、トルク計2の一端側に、供試体ブラケット7により回転可能に支持されている供試体Mの回転軸M1が接続されており、トルク計2の他端側に、中間軸4の一端側が接続されている。そして、トルク計2の一端側と供試体Mの回転軸M1との間に熱絶縁体A1を介在させるとともに、トルク計2の他端側と中間軸4と供試体Mの回転軸M1の間に熱絶縁体A2を介在させている。具体的には、トルク計2の供試体用フランジ部22とトルク計用フランジ部M11との間に熱絶縁体A1を介在させるとともに、トルク計2の中間軸用フランジ部23と中間軸4の一端側に設けたフランジ部41との間に熱絶縁体A2を介在させている。図1では説明の便宜上、各熱絶縁体(熱絶縁体A1,熱絶縁体A2)をパターンを付して示している。各熱絶縁体(熱絶縁体A1,熱絶縁体A2)は、相互に同じ素材から形成したものであってもよいし、異なる素材から形成したものであってもよい。本実施形態では、各熱絶縁体(熱絶縁体A1,熱絶縁体A2)として、例えばトルク伝達方向の寸法(厚み)を所定値(例えば10mm)以上に設定したガラスエポキシからなる円環状のものを適用している。
【0022】
中間軸受3は、中間軸4を回転可能に支持する軸受本体31と、軸受本体31を支持した状態でベース6上に固定される支持台32とを備えたものである。本実施形態の供試体試験装置Xは、中間軸受3全体を油冷する油冷手段Bを備えている。図1では油冷手段Bのうち中間軸受3を被覆し且つ潤滑油経路(図示省略)を有する中間軸受カバーB1を一点鎖線で模式的に示している。そして、中間軸受カバーB1の潤滑油経路内に適宜の潤滑油貯蔵槽から潤滑油を供給することによって、中間軸受3の温度を常温(例えば23度±5度)か常温より低く維持することができるように設定している。ここで、中間軸受3を常温或いは常温よりも低い温度(低温)に温度調節するためには、当然のことながら常温または低温の潤滑油を用いることになり、このことが、潤滑油の粘度の低下、ひいては中間軸受3のダンパー機能の向上に貢献している。したがって、本実施形態の供試体試験装置Xでは、複雑なダンパー機構などを用いることなく、ダイナモ1の回転軸11と供試体Mの回転軸M1との間でトルクの脈動が伝達される事態を防止することができる。
【0023】
カップリング5は、ダイナモ1の回転軸11に接続可能なダイナモ連結フランジ部51と、一端部をダイナモ連結フランジ部51に一体回転可能に接続したカップリング軸52と、カップリング軸52の他端部に一体回転可能に設けた軸受連結フランジ部53とを備えたものである。カップリング5のダイナモ連結フランジ部51は、ダイナモ1の回転軸11のうち端部に形成した中間軸受側フランジ12に固定し、軸受連結フランジ部53は、中間軸4のうちダイナモ1側の端部に形成したフランジ部42に固定している。本実施形態では、カップリング軸52及び各連結フランジ部(ダイナモ連結フランジ部51、軸受連結フランジ部53)を金属製にしているため、強度が高く、高トルク及び高速回転を両立することができる。
【0024】
このような供試体試験装置Xにおいて、供試体Mの回転軸M1又はダイナモ1の回転軸11のうち何れか一方の回転軸(例えば供試体Mの回転軸M1)が回転すると、そのトルクは、トルク計2、中間軸受3、カップリング5を通じて他方の回転軸(例えばダイナモ1の回転軸11)に伝達される。したがって、本実施形態の供試体試験装置Xは、供試体Mの回転軸M1とダイナモ1の回転軸11との間で動力(トルク)を伝達することができ、供試体Mの各種特性を測定することができる。以下の説明において「トルク伝達方向」とは供試体Mの回転軸M1とダイナモ1の回転軸11との間でトルクが伝達する方向を意味し、供試体Mの回転軸M1やダイナモ1の回転軸11の軸方向と一致する。
【0025】
そして、本実施形態の供試体試験装置Xは、トルク計2に所定温度範囲に調節した温調空気を当てるブロワCと、トルク計の温度を間接的に計測する計測手段と、この計測手段の計測結果に基づいてブロワCから供給する温調空気の温度を制御する温調空気制御部Eとを備えている。本実施形態では、計測手段として、ブロワCから供給される温調空気の温度を計測する供給温調空気計測部Dを有するものを適用し、温調空気制御部Eは、トルク供給温調空気計測部Dの結果に基づいてブロワCから供給する温調空気の温度を制御するように構成している。
【0026】
ブロワCは、トルク計2(トルク計2の歪センサ)が正常に作動する温度範囲に対応する所定の設定値(例えば23度±5度)よりも5度乃至2度低い温度を所定温度範囲として、この所定温度範囲に調節した風(温調空気)をトルク計2に吹き付けるものである。本実施形態の供試体試験装置Xは、少なくともトルク計2を被覆する恒温槽Fを備えており、この恒温槽F内にブロワCから温調空気を吹き付けるように構成している。ブロワCは、温調空気制御部Eを構成するトルク計用温調装置E1内に配置され、ブロワCの吹出口C1をトルク計用温調装置E1の吐出ポートE2に連通させている。ここで、本実施形態の温調空気制御部Eは、トルク計用温調装置E1の吐出ポートE2近傍に配置した供給温調空気計測部Dの計測結果に基づいて、温調空気の温度を制御するとともに、ブロワCから送り出す風量も制御するものである。なお、供給温調空気計測部Dは、既知の温度センサなどによって構成することができる。
【0027】
本実施形態では、恒温槽Fとして、トルク計2全体を含む所定領域、具体的には、トルク伝達方向において上述の供試体ブラケット7に連続する位置から、中間軸受3のうちトルク計2側の所定位置(例えば中間軸受3のうちトルク計2側の半分に相当する位置)までの領域を包囲し得るものを適用している(図1参照)。恒温槽F内には、恒温槽F内の温度を計測する恒温槽内計測部Gを備えている。この恒温槽内計測部Gは、供給温調空気計測部Dと同様に既知の温度センサなどによって構成することができる。
【0028】
また、本実施形態の供試体試験装置Xは、恒温槽F内においてトルク計2に吹き付けた温調空気を温調装置E1の吸入ポートE3を通じて温調装置E1内に排出し、温調空気制御部Eを構成する温調装置E1内で所定範囲の温度に調整した温調調空気としてブロワC及び吐出ポートE2を通じて恒温槽F内に吹き出すことができるように構成している。
【0029】
また、本実施形態の供試体試験装置Xは、恒温槽F内にドライエアを供給するドライヤHを備えている。
【0030】
そして、供試体の回転軸をトルク計の一端側に直接連結するとともに、中間軸受に支持されている中間軸をトルク計の他端側に直接連結した既知の供試体試験装置では、試験時に供試体や中間軸受の熱がトルク計に伝達され易いため、トルク計の温度ドラフトを考慮してトルク計の計測値を補正する必要があるが、本実施形態に係る供試体試験装置Xを用いて試験を行えば、温調空気制御部Eによって所定温度に制御した温調空気をブロワCからトルク計2に吹き付けることにより、トルク計2の温度を安定させることができ、温度ドラフトの影響を受けることなく、高精度のトルク制御を行うことができる。このような高精度のトルク制御下で供試体Mに関する各種性能試験を行うことが可能な本実施形態の供試体試験装置Xによって、供試体Mに関する適正な試験結果を得ることができる。また、このような供試体試験装置Xであれば、既知の供試体試験装置にも比較的簡単に適用することができ、例えば予め計測した温度ドリフトの特性や温度−定格トルク特性に基づいてトルク計の検出信号を補正する構成と比較して、各特性を予め計測したマップやテーブルを用意する必要もなく、トルク計の検出信号を補正する処理も不要である。
【0031】
さらに、本実施形態の供試体試験装置Xは、少なくともトルク計2を覆う恒温槽Fを備えているため、トルク計2のみならず、トルク計2の周辺温度もブロワCから供給される温調空気に応じた温度に維持することが可能であり、トルク計2の周囲温度の変動に起因するトルク計2の温度ドラフトをも防止・抑制することができる。
【0032】
特に、本実施形態に係る供試体試験装置Xでは、トルク計2にそれぞれ直接連結する供試体M側の軸M1とトルク計2との間、及び中間軸4とトルク計2との間にそれぞれ熱絶縁体A1,A2を介在させているため、供試体Mや中間軸受3からトルク計2へ熱が伝達する事態そのものを効果的に防止・抑制することができ、温調空気制御部Eによって所定温度に調整した温調空気をブロワCからトルク計2に吹き付けることと相俟って、トルク計2の温度ドラフトの発生を回避することができる。
【0033】
また、本実施形態の供試体試験装置Xは、中間軸受3自体を油冷する油冷手段Bを備えているため、中間軸受3の発熱を油冷手段Bによって抑えることができ、トルク計2に中間軸受3側から熱が伝達される事態をより一層効果的に抑制することができる。
【0034】
加えて、本実施形態の供試体試験装置Xは、恒温槽F内のトルク計2にドライエアを供給するドライヤHを備えているため、恒温槽F内に結露が発生することを防止することができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロアにより供給される所定温度範囲に調節した温調空気がドライエアであってもよい。
【0036】
また、恒温槽を備えず、外部に露出しているトルク計に対してブロアから温調空気(ドライエアであってもよい)を吹き付けるように構成した供試体試験装置であっても構わない。
【0037】
上述した実施形態では、トルク計の温度を間接的に計測する計測手段の一例として、ブロワから供給される温調空気の温度を計測する供給温調空気計測部を有する計測手段を挙げるとともに、この供給温調空気計測部の計測結果に基づいてブロアから吹き出す温調空気の温度を制御する制御部を例示したが、トルク計の温度を間接的に計測する計測手段を、恒温槽内の温度を計測する恒温槽内計測部G(図1参照)のみを用いて構成することもできる。この場合には、制御部が、恒温槽内計測部Gの計測結果に基づいてブロアから供給する温調空気の温度を制御するようにすればよい。これは、ブロアから吹き出す温調空気の温度が恒温槽内の温度とほぼ比例であることを実験結果として得ている点、及び恒温槽内の温度とトルク計の温度は強い相関関係にある点に基づく技術思想である。また、計測手段が、供給温調空気計測部及び恒温槽内計測部の両方を有する場合には、これら供給温調空気計測部及び恒温槽内計測部の両方の計測結果に基づいてブロワから供給する温調空気の温度を制御する制御部を採用してもよい。
【0038】
また、計測手段を、トルク計自体の温度を直接的に計測するトルク計温度計測部を用いて構成することもできる。この場合には、制御部が、トルク計自体の温度を直接的に計測するトルク計温度計測部の計測結果のみ、或いはこのトルク計温度計測部の計測結果に加えて、供給温調空気計測部又は恒温槽内計測部の少なくとも何れか一方の計測結果に基づいてブロワから供給する温調空気の温度を制御するものであってもよい。トルク計温度計測部としては、回転するトルク計の温度を非接触で計測可能なワイヤレスタイプの温度センサを挙げることができる。
【0039】
また、トルク計にそれぞれ連結する供試体側の軸及び中間軸受側の軸のうち何れか一方の軸とトルク計との間にのみ熱絶縁体を介在させた態様や、何れの軸とトルク計との間にも熱絶縁体を介在させない態様を採用してもよい。
【0040】
また、中間軸受自体を油冷する油冷手段を備えていない態様や、ドライヤを備えていない態様であってもよい。
【0041】
また、供試体として、モータ以外の供試体、例えば電動機又は変速機等を適用したり、ダイナモが擬似負荷ではなく擬似駆動源として機能するものであっても構わない。
【0042】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…ダイナモ
11…ダイナモの回転軸
2…トルク計
3…中間軸受
A1,A2…熱絶縁体
B…油冷手段
C…ブロワ
D…計測手段、供給温調空気計測部
E…温調空気制御部
F…恒温槽
G…恒温槽内計測部
H…ドライヤ
M…供試体
M1…供試体の回転軸
X…供試体試験装置
図1