(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942565
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】太陽電池用封止材組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20160616BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K5/14
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-95590(P2012-95590)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-221145(P2013-221145A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明渡 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】椙江 政博
(72)【発明者】
【氏名】西川 徹
【審査官】
岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−528389(JP,A)
【文献】
国際公開第03/055946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/08
C08K 5/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)
10〜40重量%と、
下記式(2)で表されるt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)
60〜90重量%と、
を含有する(前記成分(a−1)・(a−2)の合計は100重量%である)、架橋剤混合物
(A)と、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)とを含有する太陽電池用封止材組成物であって、
前記成分(B)100重量部に対して前記架橋剤混合物(A)を0.5〜1.0重量部含む、太陽電池用封止材組成物。
【化1】
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
特定の架橋剤混合
物を含む太陽電池用封止材に係り、詳しくは、太陽電池用封止材として不可欠な耐熱性に必要な架橋密度を損なう事なく、架橋時間の短縮を図ることができると共に、太陽電池モジュール製造時にエチレン−酢酸ビニル共重合体が発泡しない架橋剤混合
物を含む太陽電池用封止材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題からクリーンなエネルギー源として太陽光エネルギーが注目されており、この太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽電池の開発が盛んに行われている。この開発によって発電効率等の性能が著しく向上し、価格の低下が進んだ事に加え、国や自治体が太陽光発電システム導入促進事業を進めてきたことから、太陽電池市場は急拡大している。このような背景から、太陽電池モジュールの製造における生産性向上が求められている。
【0003】
太陽電池モジュールは、一般的に、単結晶もしくは多結晶のシリコンや、アモルファスシリコン、化合物半導体などを用いた太陽電池素子をガラスなどの上部透明保護部材と下部保護部材とで保護し、太陽電池素子と保護部材とを太陽電池用封止材で接着一体化した構造となっている。
【0004】
この太陽電池用封止材は、接着性、透明性、防湿性などが不可欠であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用されている。EVAは、一般的に、太陽電池の使用環境下で流動しない耐熱性を付与するために架橋する必要がある。太陽電池用封止材は、架橋剤である有機過酸化物や保護部材との接着力を高めるシランカップリング剤、架橋助剤、光安定剤などを配合し、押出し成形あるいはカレンダーロール成形でシート状に成形して製造されている。
【0005】
太陽電池モジュールは、上部透明保護部材、太陽電池用封止材、電池素子、太陽電池用封止材、下部保護部材をこの順で積層し、加熱圧着して、EVAを発泡させることなく架橋させて接着一体化して封止することにより製造されている。ここで、EVAの発泡は、電池素子や各保護部材との間に隙間を生じさせ、太陽電池の耐候性低下の原因となり問題となる。また、EVAの架橋はEVAに耐熱性を付与するために必要である。このEVAの架橋剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートが使用できることは公知(特許文献1参照)である。しかし、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートによるEVAの架橋は長時間を要するため、生産性の観点から問題となっている。従って、耐熱性に必要な架橋密度を損なうことなく、架橋時間を短縮する事ができると共に、太陽電池モジュール製造時にEVAが発泡しない太陽電池用封止材が望まれている。
【0006】
これに対し、特許文献2や特許文献3では、架橋剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)やt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)などの単独または2種類以上の混合物が使用できるとされている。
【0007】
また、特許文献4では、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートと共にt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートも混用することで、架橋時間の短縮を図っている。具体的には、架橋剤として少なくともt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)および少なくともt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)を含む混合物であって、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)が混合物の総重量に対して0.001重量%から45重量%の範囲の含有されている。すなわち、その重量%が(a−1):(a−2)=99.999:0.001〜55:45の範囲について示されている。これによれば、架橋剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)のみを使用した場合と比較すると、当該架橋剤混合物は、耐熱性に必要な架橋密度を損なうことなく、架橋時間(t
C(90))を約6%短縮する事が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−258255号公報
【特許文献2】CN101942145(A)
【特許文献3】CN101671457(A)
【特許文献4】特表2011−528389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2,3では、架橋剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)やt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)などの単独または2種類以上の混合物が使用できるとされているが、架橋剤を単独で使用したものについては具体的に記載さているものの、2種類以上の混合物についてはなんら具体的なデータは記載されておらず、ましてや混合の比率などに関する記述はない。
【0010】
一方、特許文献4では、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)とt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)とを混合していることでEVAの発泡現象は生じないが、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)のみを使用した場合と比べて架橋時間の短縮の程度が約6%では決して十分とは言えない。
【0011】
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)とt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)とを所定の割合で混合した架橋剤混合物を用いる事によって上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、太陽電池用封止材として不可欠な耐熱性に必要な架橋密度を損なうことなく架橋時間をより短縮できると共に、太陽電池モジュール製造時にEVAが発泡しない架橋剤混合
物を含む太陽電池用封止材組成物を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、
本発明は、下記式(1)で表されるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)
10〜40重量%と、下記式(2)で表されるt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)
60〜90重量%とを含有する(前記成分(a−1)・(a−2)の合計は100重量%である)、
架橋剤混合物(A)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)と、を含有する太陽電池用封止材組成物である。そして、前記成分(B)100重量部に対して前記架橋剤混合物(A)を0.5〜1.0重量部含む。
【化1】
【化2】
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池用封止材として不可欠な耐熱性に必要な架橋密度を損なうことなく架橋時間をより短縮できると共に、太陽電池モジュール製造時にEVAが発泡しない架橋剤混合
物を含む太陽電池用封止材組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔架橋剤混合物(A)〕
本発明における架橋剤混合物(A)は、上記式(1)で表されるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)と、上記式(2)で表されるt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)との混合物である。
【0017】
架橋剤混合物(A)中において、架橋剤(a−1)の含有量は0.1〜45重量%であり、架橋剤(a−2)の含有量は99.9〜55重量%である。なお、架橋剤(a−1)と架橋剤(a−2)との合計重量は100重量%である。架橋剤(a−1)の含有量が45重量%より大きく、且つ架橋剤(a−2)の含有量が55重量%より小さくなると、架橋速度が低下するため好ましくない。一方、架橋剤(a−1)の含有量が0.1重量%より小さく、且つ架橋剤(a−2)の含有量が99.9重量%より大きくなると、太陽電池モジュール製造時にEVAが発泡してしまい問題となる。
【0018】
〔太陽電池用封止材組成物〕
そのうえで、本発明の太陽電池用封止材組成物は、EVA(B)100重量部に対して、上記架橋剤混合物(A)が0.1〜1.5重量部添加されている。架橋剤混合物(A)の添加量が0.1重量部より少なくなると、太陽電池用封止材として必要不可欠な耐熱性に必要な架橋密度が得られなくなる。逆に、架橋剤混合物(A)の添加量が1.5重量部よりも多くなると、太陽電池モジュールの製造時に封止材の着色や発泡の原因となる。
【0019】
本発明におけるEVA(B)は、従来からこの種の太陽電池用封止材に使用されている公知のEVAであれば特に制限されないが、酢酸ビニルより形成される構造単位を25〜35重量%有するEVAが好ましい。酢酸ビニルより形成される構造単位が25重量%よりも少なくなると、加工性が低下し、得られる封止材が硬質になり、太陽電池モジュール製造時に発電素子に損傷を与えやすくなる。逆に、酢酸ビニルより形成される構造単位が35重量%よりも多くなると、粘着性が増大して取扱いが困難となる。
【0020】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物には、必要に応じて、その他種々の添加剤を含有させる事もできる。このような添加剤として、具体的にはシランカップリング剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、光拡散剤、老化防止剤、変色防止剤などを挙げる事ができる。
【0021】
シランカップリング剤は、太陽電池用封止材と各保護部材との接着性を高める事ができる。その例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基などの不飽和基及び、グリシジル基、アミノ基、メルカプト基などとともに、アルコキシ基のような加水分解性基を有する化合物を挙げる事ができる。シランカップリング剤として具体的には、ビニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。尚、シランカップリング剤は、単独で用いても二種類以上を併用してもよい。シランカップリング剤の添加量は、EVA(B)100重量部に対し5.0重量部以下であることが好ましい。
【0022】
架橋助剤は、太陽電池用封止材の架橋密度を高める事ができる。その例としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を挙げる事ができる。架橋助剤として具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。なお、架橋助剤は単独で用いても二種類以上を併用してもよい。架橋助剤の添加量は、EVA(B)100重量部に対し、10重量部以下であることが好ましい。
【0023】
紫外線吸収剤は、紫外線吸収性能を付与するために添加することができる。その例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系の化合物が使用できる。なお、紫外線吸収剤は単独で用いても二種類以上を併用してもよい。紫外線吸収剤の添加量は、EVA(B)100重量部に対し、3.0重量部以下であることが好ましい。
【0024】
また、光安定剤、酸化防止剤、光拡散剤、老化防止剤、変色防止剤なども、この種の太陽電池用封止材において一般的に使用されている公知のものを、本発明の物性を損なわない範囲内において使用できる。
【0025】
次に、架橋剤混合物および太陽電池用封止材組成物の調製方法について説明する。架橋剤混合物(A)は、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)およびt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)を従来から公知な方法によって混合する事により得られる。得られた架橋剤混合物(A)とEVA(B)、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を、押出機、バンバリーミキサー、オープンロールなどの混練機に供給し、実質的に架橋剤が分解しない温度、例えば50〜100℃で混合して、太陽電池用封止材組成物を調製する。
【0026】
当該太陽電池用封止材組成物は、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−1)およびt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(a−2)をあらかじめ混合する事なく、混練機でEVA(B)にそれぞれ直接添加して混合してもよい。得られた太陽電池用封止材組成物は、一般的には押出成形やカレンダー成形等によりシート状に成形される。シート状に成形する場合、その厚みは0.1〜5.0mmが好ましい。なお、太陽電池用封止材の形状は、太陽電池モジュールの形状などに合せて適宜変更可能であり、シート状に限定されるものではない。
【0027】
その後は、従来から公知の方法にて本発明の太陽電池用封止材組成物からなる封止材を用いて太陽電池モジュールを製造すればよい。すなわち、太陽電池素子を少なくとも2枚の太陽電池用封止材で挟み、ガラスやポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステルなどの上部透明保護部材と、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単層もしくは多層のシートからなる下部保護部材を重ね合わせた状態で、有機過酸化物の分解温度以上でかつ保護部材に適した温度で、加熱圧着して、接着一体化して封止することで、太陽電池モジュールを製造できる。なお、より接着性を高めるため、各保護部材を予めプライマー処理しておくと好ましい。また、加熱圧着は、有機過酸化物がほぼ完全に分解するまで行う事が好ましい。加熱圧着により、EVAが架橋され、太陽電池用封止材とその他の構成要素とを強固に接着する事ができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例、比較例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り本実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用いる試験方法は以下の通りである。
【0029】
<架橋試験>
(架橋時間)
架橋時間の指標として、JIS K6300−2:2001に準じてt
C(90)とt
C(Δ80)を評価した。ここで、t
C(90)とt
C(Δ80)は以下の定義による。
t
C(90):架橋時間、または最大トルク値(M
H)−最小トルク値(M
L)の90%に達するのに必要な時間(分)
t
C(Δ80):架橋速度の目安、またはt
C(90)−t
C(10)で求められる時間(分)
ここでいうt
C(10)とは、最大トルク値(M
H)−最小トルク値(M
L)の10%に達するのに必要な時間(分)である。
【0030】
架橋時間の評価は、振動式加硫試験機(JSRトレーディング(株)製キュラストメーターV型)を用いて、上型および下型の温度を135℃に設定し、±1°の振幅角度で実施した。t
C(90)が短いほど最適架橋点までの時間が短くなり、t
C(Δ80)が短いほど架橋開始点から最適架橋点までの時間が短くなり、短時間で架橋を完了する事ができる。
【0031】
(架橋密度)
架橋密度の指標として、JIS K 6300−2:2001に準じてM
Hを評価した。評価は振動式加硫試験機(JSRトレーディング(株)製キュラストメーターV型)を用いて、上型および下型の温度を135℃に設定し、±1°の振幅角度で実施した。M
Hは大きくなるに従って、EVAの架橋が進行している事を示す。架橋したEVAは耐熱性が向上する。太陽電池用封止材として使用するには、0.25N・m以上の架橋密度(EVAのゲル分率では80%以上に相当する)が要求される。
【0032】
<発泡試験>
各封止材を、縦3cm×横6cmに切り出し、MSパウチフィルム(株式会社明光商会製)に挟み、加熱してラミネート加工したものを135℃で60分間加熱し、その際に発生するガスによるフィルムの膨れを目視で観察し、評価した。
比較例2−1と同レベルの発泡の場合○、比較例2−1よりも発泡が顕著な場合を×として評価した。
【0033】
[実施例1−1〜1−2]
まずは、架橋剤混合物(A)を調製した。架橋剤混合物(A)は、以下の架橋剤(a−1)・(a−2)を表1に示す重量%で混合する事で調製した。
架橋剤(a−1):t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製 パーブチル(登録商標)E)
架橋剤(a−2):t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製 パーアミル(登録商標)E)
【0034】
[比較例1−1〜1−3]
実施例1−1〜1−2と同様に、各架橋剤(a−1)・(a−2)を表1に示す重量%で混合する事で架橋剤混合物(A)を調製した。
【0035】
【表1】
【0036】
<太陽電池用封止材組成物>
次に、太陽電池用封止材組成物を調製した。
[実施例2−1〜2−3]
前述の架橋剤混合物(A)とEVA(B)(酢酸ビニル含有量28重量%)とを表2に示す組成で配合し、混練機に供給して60℃で混練する事により太陽電池用封止材組成物を調製した。得られた太陽電池用封止材組成物の架橋時間及び架橋密度、発泡試験を上記試験方法により測定した。その結果も表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
[比較例2−1〜2−5]
太陽電池用封止材組成物の組成を表3に示す様に変更した以外は、実施例2−1〜2−3と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。得られた太陽電池用封止材組成物の架橋時間及び架橋密度、発泡試験を上記試験方法により測定した。その結果も表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表2および表3の結果より、実施例2−1〜2−3と比較例2−1〜2−5を比較すると、実施例2−1〜2−3の太陽電池用封止材組成物は、t
C(90)が28分未満であり、t
C(Δ80)が26分未満の短い時間で架橋できると共に、M
Hが0.25N・m以上の架橋密度を有していた。一方、比較例2−1〜2−4の太陽電池用封止材組成物はt
C(90)が28分以上であり、t
C(Δ80)が26分以上の時間を要した。比較例2−4〜2−5の太陽電池用封止材組成物は、発泡試験において多くの発泡が生じた。このように、本発明である実施例2−1〜2−3の太陽電池用封止材組成物は、太陽電池用封止材として不可欠な耐熱性に必要な架橋密度を損なう事なく、架橋時間の短縮を図ることができ、さらに太陽電池モジュール製造時にEVAが発泡しない太陽電池用封止材を提供できる。