(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、汚泥を原料としながら高い発熱量を有し、かつ蓄熱発火性及び粉塵爆発性の低い固形燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
汚泥の乾燥により得られる粒状物であり、
粒径1mm以上5mm以下の粒子の割合が80質量%以上、
含水率が30質量%以下、
発熱量が4,000kcal/kg以上の固形燃料である。
【0008】
当該固形燃料は、所定の粒径及び含水率としているため帯電し難く、その結果蓄熱発火性が低い。また、当該固形燃料は、乾燥により得られる粒状物であるため、炭化処理されたもの等と比較して脆さが無く、粉塵になりにくいため粉塵爆発性が低い。さらに、当該固形燃料は、所定の含水率としていること等により発熱量が4,000kcal以上と高く、燃料として好適である。なお、上記汚泥として有機性の活性汚泥だけでなくラテックスを用い、これらの混合比を調整すること、及び含水率を調整することなどにより、発熱量4,000kcal/kg以上の固形燃料とすることができる。
【0009】
当該固形燃料は、界面活性剤と、微粒子状の合成樹脂又はゴムとを含有することが好ましい。このように微粒子状の合成樹脂又は合成ゴムを含むことで発熱量が高まる。また、これらの成分がバインダーとして機能するため、脆さ、すなわち粉塵爆発性をより抑えることができる。さらには界面活性剤が含有されていることで、合成樹脂やゴムを均一に分散させることができるため、発熱量の安定性を高め、かつ蓄熱発火性を抑えることができる。
【0010】
上記汚泥が活性汚泥とラテックスとを含むことが好ましい。このようにラテックスを含む汚泥を用いることで、上述の界面活性剤及び微粒子状の合成樹脂又はゴムの含有による機能を効果的に発現させることができる。また、活性汚泥とラテックスとを混合して用いることで、得られる固形燃料の蓄熱発火性も低減させることができる。さらには、活性汚泥とラテックスとの混合比等を調整することなどで、発熱量の調整も容易になる。
【0011】
当該固形燃料の爆発下限界濃度としては100g/m
3以上が好ましい。このような高い爆発限界濃度を有することで、当該固形燃料の粉塵爆発性を抑え、取扱性を高めることができる。
【0012】
当該固形燃料の最小着火エネルギーとしては200mJ以上が好ましく、300mJ以上がより好ましい。このような高い最小着火エネルギーを有することによっても当該固形燃料の粉塵爆発性の低減や取扱性の向上を図ることができる。
【0013】
ここで、「汚泥」とは、下水処理や工場廃水処理などの過程で生じる有機物を含む沈殿物をいう。「粒径」とは、JIS Z8801−1「試験用ふるい」に規定する金属製網ふるいを用い、JIS A1204(2009)土の粒度試験方法「ふるい分析」に準じて求めた値をいう。「爆発下限界濃度」とは、JIS Z8818(2202)可燃性粉じんの爆発下限濃度測定方法に準じて「吹上げ式試験装置」を用いて測定した値をいう。「最小着火エネルギー」とは、IEC 61241−2−3Section3:粉じん/空気の混合物の最小着火エネルギー測定法に準じて測定した値をいう。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の固形燃料は、汚泥を原料としながら発熱量が高く、かつ蓄熱発火性及び粉塵爆発性が低い。従って、当該固形燃料は取扱性に優れ、例えば火力発電、セメント製造、ボイラーなどの燃料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の固形燃料の実施の形態を説明する。
【0017】
当該固形燃料は、汚泥の乾燥により得られる粒状物である。以下、上記汚泥としてラテックスと活性汚泥との混合汚泥を用いる場合における当該固形燃料の製造方法の一例を説明する。
【0018】
(製造方法)
当該固形燃料は、例えば、
図1に示すように
ラテックスを含む排水を前処理する工程(1)
他の排水を前処理する工程(2)、
上記工程(1)及び(2)で発生した汚泥を混合する工程(3)
上記混合工程で得られる混合汚泥を脱水する工程(4)、並びに
脱水処理された上記混合汚泥を乾燥及び造粒する工程(5)
を有する製造方法により得ることができる。
【0019】
ここで、当該固形燃料の製造において、原料の汚泥として有機性の活性汚泥だけでなくラテックス(ラテックス系汚泥)を用い、これらの混合比を調整すること、及び含水率を調整することなどにより、発熱量4,000kcal/kg以上の固形燃料を得ることができる。なお、
図2は活性汚泥及びラテックスの混合比及び得られる固形燃料の含水率を変化させたときの固形燃料の発熱量を表したものである。この関係は実験又は推定計算により予め求めることができる。
【0020】
工程(1)
この工程(1)では、ラテックスを含む排水を凝集等により処理し、ラテックス由来の汚泥と水とに分離する。上記ラテックスとは、水中に微粒子状の高分子が分散して存在する分散系をいう。上記高分子としては、合成樹脂、合成ゴム、天然の樹脂や油脂、天然ゴム等を挙げることができる。これらの中でも、工業廃水を有効に利用できる点や高い発熱量を有する点などから、合成樹脂又は合成ゴムが好ましい。
【0021】
上記合成樹脂又は合成ゴムとしては、例えば、酢酸ビニル重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、イソプレン共重合体、クロロプレン共重合体、ウレタン系重合体、及びこれらの重合体を構成する単量体の2種以上を組み合わせた共重合体等を挙げることができる。上記共重合体としては、ランダム共重合、グラフト共重合及びブロック共重合したものを挙げることができる。
【0022】
上記ラテックスは、通常、分散剤(乳化剤)としての界面活性剤を含有している。上記界面活性剤としては、特に限定されず、例えば脂肪族石鹸、ロジン酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル及びポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤、その他、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0023】
上記ラテックスを含む排水には、その他の成分、例えば水溶性高分子や無機物等が含有されていてもよい。
【0024】
この工程(1)における凝集処理としては特に限定されず、凝集剤を用いた凝集沈殿法等を行うことができる。上記凝集剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、硫酸バンド、ポリ(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物等のカチオン系の凝集剤、及びポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム等のアニオン系の凝集剤等を挙げることができる。これらの凝集剤を用いることで、得られる固形燃料の造粒性、低臭性、高発熱性等を高めることができる。
【0025】
この工程(1)を経て得られるラテックス由来の汚泥の固形分濃度としては、例えば、1質量%以上10質量%以下程度である。なお、この汚泥は工程(3)に供する前に、貯留槽等に一時貯留しておくこともできる。
【0026】
工程(2)
この工程(2)では、工程(1)に供する排水以外の排水を処理する。この他の排水としては、生活排水やラテックス以外の工業排水等を挙げることができる。
【0027】
上記工程(2)においては、一般的な活性汚泥法による排水処理を行うことができる。具体的には、曝気槽と沈殿槽とを備える処理設備を用いて処理し、処理された水を放出する。一方、沈殿槽に沈殿した活性汚泥の一部をポンプ等により曝気槽に送り、余剰の活性汚泥を余剰汚泥としてポンプ等により沈殿槽から排出する。なお、上記沈殿槽には公知の凝集剤を添加して効率的な沈殿を行う。この凝集剤はアルミニウム元素を含む凝集剤が好ましい。
【0028】
この余剰汚泥(活性汚泥)の固形分濃度としては、例えば、1質量%以上10質量%以下程度である。なお、この汚泥は工程(3)に供する前に、貯留槽等に一時貯留しておくこともできる。
【0029】
工程(3)
この工程(3)では、工程(1)で分離されたラテックス由来の汚泥(以下、「ラテックス系汚泥」ともいう。)と、工程(2)で排出される活性汚泥(余剰汚泥)とを混合する。この工程は、例えば、ラテックス系汚泥を輸送する配管と活性汚泥を輸送する配管とを結合させて、配管中で2種の汚泥を混合させることで行えばよい。その他、例えば混合槽などを用いて2種の汚泥を混合させてもよい。
【0030】
この混合の際の活性汚泥とラテックス系汚泥(すなわち高濃度に濃縮されたラテックス)との混合比(活性汚泥/ラテックス系汚泥)としては、特に限定されないが、固形分換算の質量比で0.25以上1以下が好ましく、0.3以上0.7以下がより好ましく、0.4以上0.5以下がさらに好ましい。このような比で混合することで、より発熱量が高く、蓄熱発火性及び粉塵爆発性の低い固形燃料を得ることができる。
【0031】
工程(4)
この工程(4)では、工程(3)で得られた混合汚泥(以下、単に汚泥ともいう)を脱水する。この脱水は公知の脱水機を用いて行うことができる。上記脱水機としては、スクリュープレス、ベルトプレス、遠心分離器等を挙げることができる。
【0032】
この脱水工程においては、上記混合比(ラテックス系汚泥/活性汚泥)に応じて上記脱水機(スクリュープレス及びベルトプレス)を使い分けることが好ましい。上記混合比が0.33未満又は0.5超の場合はスクリュープレスを用い、他の混合比の場合はベルトプレスを用いることが好ましい。また、上記混合比を0.33以上0.5以下に調整しておけばどちらの脱水機も用いることができるため好ましい。
【0033】
この脱水工程を経た汚泥の固形分濃度としては、例えば10質量%以上30質量%以下程度である。この汚泥は、工程(5)に供する前に、貯留槽等に一時貯留しておくこともできる。
【0034】
工程(5)
この工程(5)においては、脱水処理された上記汚泥(脱水汚泥ケーキ)を乾燥及び造粒する。この乾燥を行う乾燥機としては、特に限定されず公知の熱風乾燥機、間接加熱式乾燥機等を用いることができるが、間接加熱式撹拌乾燥機を用いることが好ましく、スチームチューブドライヤーを用いることがより好ましい。スチームチューブドライヤーを用いることで、乾燥と造粒とを同時に行うことができる。
【0035】
以下、
図3を参照にスチームチューブドライヤー1を用いた汚泥の乾燥及び造粒方法について説明する。
図3のスチームチューブドライヤー1は、機台2と、この機台2上に配設される本体シェル3と、本体シェル3内に配設される多管式加熱管4とを主に備えている。このスチームチューブドライヤー1においては、多管式加熱管4の内部に熱媒としての蒸気を流すと共に、この多管式加熱管4を回転させることで、被乾燥物を本体シェル3内に滞留させつつ多管式加熱管4と接触させて乾燥を行う。
【0036】
本体シェル3は、略円筒形状を有する中空部材である。本体シェル3は、被乾燥物投入口5、乾燥物排出口6、キャリアガス供給口7及びキャリアガス排出口8を主に備える。本体シェル3及び多管式加熱管4は、被乾燥物投入口5側が乾燥物排出口6側より幾分か高くなるように傾斜して機台2に配設されている。
【0037】
多管式加熱管4は、軸方向に配設された複数の管を有し、本体シェル3内で本体シェル3の軸中心に回転可能に設けられている。多管式加熱管4内を流通する蒸気は、蒸気供給口9から供給され、ドレン排出口10から少なくとも一部が凝集液となって排出される。また、スチームチューブドライヤー1は、多管式加熱管4を回転させるモータ11を備える。
【0038】
また、本体シェル3内には、複数のリフタ12が、多管式加熱管4とともに回転可能に設けられている。このリフタ12により、被乾燥物は掻き上げられて多管式加熱管4と接触すると共に被乾燥物投入口5から乾燥物排出口6側に進むこととなる。
【0039】
このスチームチューブドライヤー1の使用の際は、キャリアガスがキャリアガス供給口7から本体シェル内に供給される。多管式加熱管4の加熱により被乾燥物から揮発する揮発成分は、キャリアガスと共にキャリアガス排出口8から排出される。排出されるキャリアガスには、揮発成分の他に被乾燥物から発生する微粉等も含まれるため、排出口8以降の経路上に除塵装置等を設置することができる。
【0040】
さらに、除塵されたキャリアガスは、コンデンサ等を用いて除湿され排気される。この際、この排気するキャリアガスを焼却炉等の酸素供給口に投入し、キャリアガスに含まれる揮発成分を燃焼させることが好ましい。このようにすることで、スチームチューブドライヤー1、すなわち被乾燥物から発生する臭気(揮発成分)を効率的に低減することができる。
【0041】
このスチームチューブドライヤー1を用いて上記汚泥(混合汚泥)を乾燥させる場合、汚泥を被乾燥物投入口5から投入し、乾燥された汚泥は乾燥物排出口6から排出される。この際の汚泥の滞留時間としては、6時間以上30時間以下が好ましく、12時間以上20時間以下がより好ましい。また、乾燥機内(本体シェル3内)の温度としては、60℃以上100℃以下が好ましく、70℃以上95℃以下がより好ましい。このように比較的低温で長時間乾燥させることで、使用エネルギー量を抑えつつ、十分に乾燥を行うことができる。また、このように、炭化処理を行わず、長時間かつ低温の乾燥を行うことで、汚泥を比較的強固な粒状物とすることができる。
【0042】
乾燥の際の乾燥機内(本体シェル3内)の圧力としては、特に制限されず、大気圧下でよい。
【0043】
なお、汚泥の乾燥機1への投入の際は、ある程度乾燥した汚泥(乾燥汚泥)を本体シェル3内へ存在させておいた状態で投入を行うとよい。単に汚泥を投入すると、汚泥が加熱管4に付着して、乾燥効率が低下したり、造粒がうまく行われなかったりする場合がある。そこで、このように予め乾燥汚泥をある程度本体シェル内に存在させておくことで、この乾燥汚泥が核となり造粒が効果的に行われる。
【0044】
ここで、上記混合工程(3)を経ずに、別々に脱水させたラテックス系汚泥と、活性汚泥とをこの乾燥・造粒工程において混合させることもできる。この際、二種の汚泥を同時にスチームチューブドライヤー1へ投入することもできるし、別々に投入することもできる。例えば、先にラテックス系汚泥を投入し、次に活性汚泥を投入することで、ラテックス系汚泥が核となり、これを活性汚泥で被覆した造粒物ができる。この場合、蓄熱発火性が比較的高いラテックス系汚泥が活性汚泥により被覆された状態となるため、蓄熱発火性を低減することができる。逆に、先に活性汚泥を投入し、次にラテックス系汚泥を投入することで、活性汚泥が核となり、これをラテックス系汚泥で被覆した造粒物ができる。この場合、臭気の強い活性汚泥をラテックス系汚泥で被覆することで、比較的臭気が抑えられた粒状物とすることができる。
【0045】
この乾燥造粒工程を経て得られた造粒物(乾燥物)は、必要に応じて一時貯蔵され、出荷又は自社設備内での使用等に供することができる。
【0046】
(固形燃料)
当該固形燃料は、このように乾燥により得られる粒状物であるため、炭化処理されたもの等と比して脆さが低減され、粉塵爆発性が低い。また、当該固形燃料において、粒径1mm以上5mm以下の粒子の割合は80質量%以上であり、90質量%以上が好ましい。当該固形燃料がこのような比較的小さいサイズの粒状物からなることで、取扱性に優れ、また、帯電しがたいため蓄熱発火性が低い。
【0047】
当該固形燃料の含水率としては、30質量%以下であり、0.1質量%以上25質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。当該固形燃料は、このような低含水率であることで高発熱量を有すると共に、帯電しがたく蓄熱発火性が低い。
【0048】
当該固形燃料の発熱量は4,000kcal/kg以上である。当該固形燃料は、このように汚泥から得られる乾燥物であるにもかかわらず、高い発熱量を有する。この発熱量としては、4,500kcal/kg以上7,000kcal/kg以下が好ましい。
【0049】
当該固形燃料は、界面活性剤と、微粒子状の合成樹脂又はゴムとを含有することが好ましい。このように微粒子状の合成樹脂又は合成ゴムを含むことで発熱量が高まり、これらの成分がバインダーとして機能し、より脆さひいては粉塵爆発性を抑えることができる。さらに界面活性剤が含有されていることで、合成樹脂やゴムを均一に分散させることができるため、発熱量の安定性を高め、かつ蓄熱発火性を抑えることができる。
【0050】
上記汚泥が活性汚泥とラテックス(ラテックス系汚泥)とを含むことが好ましい。このようにラテックスを含む汚泥を用いることで、上述の界面活性剤及び微粒子状の合成樹脂又はゴムの含有による機能を効果的に発現させることができる。また、活性汚泥とラテックスとを混合して用いることで、得られる固形燃料の蓄熱発火性も低減させることができる。活性汚泥とラテックスとの質量比(活性汚泥/ラテックス)としては、0.25以上1以下が好ましく、0.3以上0.7以下がより好ましく、0.4以上0.5以下がさらに好ましい。このような質量比とすることで、より発熱量が高く、蓄熱発火性及び粉塵爆発性の低い固形燃料とすることができる。
【0051】
当該固形燃料の爆発下限界濃度としては100g/m
3以上が好ましく、120g/m
3以上250g/m
3以下がより好ましい。このような高い爆発限界濃度を有することで、当該固形燃料の粉塵爆発性を抑え、取扱性を高めることができる。
【0052】
当該固形燃料の最小着火エネルギーとしては200mJ以上が好ましく、300mJ以上がより好ましい。このような高い最小着火エネルギーを有することによっても当該固形燃料の粉塵爆発性の低減や取扱性の向上を図ることができる。
【0053】
当該固形燃料の灰分としては、5質量%以上40質量%以下が好ましく、12質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0054】
当該固形燃料の灰溶融温度は、1,500℃を超えることが好ましい。このように灰融点温度が高いため、ボイラーで燃焼した際のスラッキングやファウリングの発生を抑制することができる。当該固形燃料は、上述のような製造方法で得られ、好ましくはラテックスと活性汚泥とを原料としていること等により、高い灰融点温度を有すると考えられる。なお、この灰溶融温度はJIS M8801「灰の溶融特性温度測定」に準拠して測定される値である。
【0055】
当該固形燃料は、以上説明したように汚泥を原料としながら発熱量が高く、かつ蓄熱発火性及び粉塵爆発性が低い。従って、当該固形燃料は取扱性に優れ、例えば火力発電、セメント製造、ボイラーなどの燃料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
なお、各測定は以下の方法にて行った。
【0058】
[粒径]
JIS Z8801−1「試験用ふるい」に規定する金属製網ふるいを用い、JIS A1204(2009)土の粒度試験方法「ふるい分析」に準じて求めた。
【0059】
[含水率]
JIS K2580「カールフィッシャー法」に準じ、京都電子工業社製のMKA−520型を使用して求めた。
【0060】
[発熱量]
SHIMADZU社製のCA−4AJ 燃研式自動ボンベ熱量計を用いて測定した。
【0061】
[爆発下限界濃度]
JIS Z8818(2202)可燃性粉じんの爆発下限濃度測定方法に準じて「吹上げ式試験装置」を用いて測定した。
【0062】
[最小着火エネルギー]
IEC 61241−2−3Section3:粉じん/空気の混合物の最小着火エネルギー測定法に準じて測定した。
【0063】
[灰溶融温度]
JIS M8801「灰の溶融特性温度測定」に準拠して測定した。
【0064】
[実施例1]
ラテックスを含む排水を硫酸バンドを用いて凝集させて、ラテックス系汚泥を得た。また、その他の工場排水を既設の排水処理施設を用いた活性汚泥法により処理し、活性汚泥を得た。この活性汚泥法に用いた凝集剤も硫酸バンドを用いた。
上記活性汚泥とラテックス系汚泥とを1/2.2(0.45)の比で混合し、ベルトプレスを用いて固形分濃度20質量%にまで脱水した。この脱水した混合汚泥を、大川原製作所社製の間接加熱式撹拌乾燥機(
図1の形状のスチームチューブドライヤー)を用いて乾燥させ、実施例1の固形燃料を得た。熱媒として150℃の蒸気を用いた。乾燥機内の温度は80〜90℃の範囲内で制御し、約16時間滞留させた。また、乾燥機内に汚泥を投入する前に、乾燥済みの汚泥を少量投入しておいた。
【0065】
得られた固形燃料(乾燥物)は粒状であった。この粒径、含水率及び発熱量を測定したところ、粒径1mm以上5mm以下の粒子の割合が90質量%、含水率は15質量%、発熱量は5,700kcal/kgであった。また、爆発下限界濃度は165g/m
3、最小着火エネルギーは300mJを超えていた。
【0066】
[実施例2〜5]
活性汚泥とラテックス系汚泥との混合比、得られる固形燃料の含水率を表1のとおりとしたこと、及び実施例2〜4についてはベルトプレスの代わりにスクリュープレスを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜5の各固形燃料を得た。含水率は乾燥機への滞留時間を変化させることで調整した。各固形燃料の発熱量、爆発下限界濃度及び最小着火エネルギーを表1に示す。なお、実施例2〜5の各固形燃料における粒径1mm以上5mm以下の粒子の割合は、いずれも80質量%を超えていた。
【0067】
【表1】
【0068】
また、実施例1〜5で得られた固形燃料の灰融点温度を測定したところ、いずれも1,500℃を超えていた。
【0069】
[比較例1]
スチームチューブドライヤーの代わりに熱風式乾燥機を用いたこと以外は実施例1と同様にして固形燃料を得た。固形燃料は粉末状となり、造粒できなかった。
【0070】
[比較例2]
スチームチューブドライヤーの代わりにスクリューコンベア式乾燥機を用いたこと以外は実施例1と同様にして固形燃料を得た。固形燃料は粉末を含む粒状となった。粒径を測定したところ、1mm未満の粒子の割合が約40質量%であった。