(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各センサICの複数の検出部から出力される複数の検出信号に基づいて前記検出対象の状態量をそれぞれ検出するとともに、これら複数の検出結果の比較に基づいて前記各センサICからの複数の検出信号のいずれが異常であるかを特定する
請求項1に記載のセンサ装置。
前記異常な検出信号を特定したとき、前記各センサICの複数の検出部から出力される複数の検出信号のうち、異常な検出信号を除く残りの複数の検出信号から求められる複数の検出結果の比較に基づき前記残りの複数の検出信号のいずれが異常であるかを更に特定する
請求項2に記載のセンサ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のセンサ装置では、例えば第1の加算信号が上限側閾値を超えた場合、第1の差動増幅信号が異常値となり、ステアリングシャフトの回転角θを演算することができなくなる。また、特許文献1に記載のセンサ装置では、第1の加算信号が上限側閾値を超えた場合、+sinθ信号及び−sinθ信号のいずれかが異常であることは分かるものの、それらのいずれが異常であるかを特定することはできない。仮に第1の加算信号が上限閾値を超えた要因が+sinθ信号の異常によるものである場合、これを特定することができれば、正常な−sinθ信号と、+cosθ信号又は−cosθ信号とを用いてステアリングシャフトの回転角θの演算を継続することができる。よって、冗長性が大幅に向上するため、異常が生じた検出信号を特定することのできるセンサ装置が望まれている。
【0006】
なお、このような課題は、ステアリングシャフトの回転角を検出するセンサ装置に限らず、ステアリングシャフトに作用するトルクを検出するセンサ装置など、任意の検出対象の状態量を検出する各種センサ装置に共通する課題である。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の検出信号のいずれに異常が生じているかを特定することができるとともに、製造が容易なセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、同一の検出対象について同一の状態量を検出してその検出結果に応じた検出信号を出力する複数の検出部を有するセンサICを複数備
え、前記各センサICは、それぞれ複数の信号線を有し、前記各信号線を介して前記検出信号を出力することを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、各センサICからの複数の検出信号のいずれかが異常となった場合、異常な検出信号から求められる検出結果だけが異常となり、それ以外の複数の検出信号から求められる検出結果は正常となる。このため、各検出信号から求められる検出結果を比較することで、いずれの検出信号が異常であるかを容易に特定することができる。これにより、異常な検出信号を除く残りの検出信号を用いて検出対象の状態量を検出すれば、検出対象の状態量の検出を継続することができる。よって、冗長性が向上する。また、複数の検出部を有するセンサICを複数設けるだけでよいため、センサ装置の製造も容易である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセンサ装置において、各センサICの複数の検出部から出力される複数の検出信号に基づいて前記検出対象の状態量をそれぞれ検出するとともに、これら複数の検出結果の比較に基づいて前記各センサICからの複数の検出信号のいずれが異常であるかを特定することを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、各センサICからの複数の検出信号のいずれが異常であるかを容易に特定することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のセンサ装置において、前記異常な検出信号を特定したとき、前記各センサICの複数の検出部から出力される複数の検出信号のうち、異常な検出信号を除く残りの複数の検出信号から求められる複数の検出結果の比較に基づき前記残りの複数の検出信号のいずれが異常であるかを更に特定することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、各センサICからの複数の検出信号について異常な信号の特定が一旦行われた後も、その異常であると特定された検出信号を除く残りの検出信号について異常な信号の特定が更に行われる。これにより、過去に異常であると判断された全ての検出信号を除く残りの検出信号に基づいて検出対象の状態量を検出すれば、検出対象の状態量の検出を継続することができる。よって、冗長性が更に向上する。
【0015】
請求項
4に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ装置において、前記各センサICは、その電源電圧を前記検出部に対応した所定の電圧に定電圧化するレギュレータを前記複数の検出部毎に備えることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、複数のレギュレータのいずれかに異常が生じた場合、異常が生じたレギュレータに対応する検出部からの検出信号が異常となり、それ以外の検出部からの検出信号は正常となる。このため、各センサICの複数の検出信号からそれぞれ求められる検出結果を比較することで、レギュレータに異常を有する検出部を容易に特定することができる。これにより、レギュレータに異常が生じた検出部からの検出信号を除く残りの検出信号に基づいて検出対象の状態量を検出すれば、検出対象の状態量を適切に検出することができる。よって、冗長性が向上する。
【0017】
請求項
5に記載の発明は、請求項1〜
4のいずれか一項に記載のセンサ装置において、前記各センサICは、前記複数の検出部に共通の発振器を備え、前記複数の検出部は、前記共通の発振器で生成されるクロック信号を用いて前記検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部をそれぞれ備えることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、発振器に異常が生じると、センサICから出力される検出信号のデジタル信号パターンが異常となるため、異常が生じたセンサICを容易に特定することができる。これにより、異常が生じたセンサICを除く残りのセンサICからの検出信号を用いれば、検出対象の状態量を適切に検出することができる。よって、冗長性が向上する。また、複数の検出部に個別に発振器を設ける場合と比較すると、センサICの部品点数を削減することもできる。
【0019】
請求項
6に記載の発明は、請求項1〜
5のいずれか一項に記載のセンサ装置において、前記各センサICは、給電線を個別に備えることを要旨とする。
同構成によれば、複数のセンサICの給電線のいずれかが断線しても、給電線が断線していない残りのセンサICから検出信号が出力されるため、検出対象の状態量を検出することができる。よって、冗長性が向上する。
【0020】
請求項
7に記載の発明は、請求項1〜
6のいずれか一項に記載のセンサ装置において、前記各センサICは、接地線を個別に備えることを要旨とする。
同構成によれば、複数のセンサICのいずれかの接地線が断線しても、接地線が断線していない残りのセンサICから検出信号が出力されるため、検出対象の状態量を検出することができる。よって、冗長性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のセンサ装置によれば、複数の検出信号のいずれに異常が生じているかを特定することができるとともに、製造が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を車両のパワーステアリング装置のトルクセンサに適用した一実施形態について
図1〜
図8を参照して説明する。はじめに、
図1を参照して、車両のパワーステアリング装置の概要を説明する。
【0024】
図1に示すように、このパワーステアリング装置は、運転者のステアリングホイール10の操作に基づき転舵輪18を転舵させる操舵機構1、及び運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構2を備えている。
【0025】
操舵機構1は、ステアリングホイール10の回転軸となるステアリングシャフト11を備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10の中心に連結されるコラムシャフト12、コラムシャフト12の下端部に連結されるインターミディエイトシャフト13、及びインターミディエイトシャフト13の下端部に連結されるピニオンシャフト14からなる。ピニオンシャフト14の下端部にはラックアンドピニオン機構15を介してラックシャフト16が連結されている。これにより、運転者のステアリング操作に伴いステアリングシャフト11が回転すると、その回転運動がラックアンドピニオン機構15を介してラックシャフト16の軸方向の往復直線運動に変換される。このラックシャフト16の往復直線運動がその両端に連結されたタイロッド17を介して転舵輪18に伝達されることにより転舵輪18の転舵角が変化し、車両の進行方向が変更される。
【0026】
アシスト機構2は、コラムシャフト12にアシストトルクを付与する電動モータ20を備えている。この電動モータ20の回転がギア機構21を介してコラムシャフト12に伝達されることによりステアリングシャフト11にモータトルクが付与され、ステアリング操作が補助される。
【0027】
また、このパワーステアリング装置には、ステアリングホイール10の操作量や車両の状態量を検出する各種センサが設けられている。例えばコラムシャフト12には、運転者のステアリング操作に際してステアリングシャフト11に付与されるトルク(操舵トルク)Thを検出するトルクセンサ4が設けられている。車両には、その走行速度Vを検出する車速センサ5が設けられている。電動モータ20には、その回転角θmを検出する回転角センサ6が設けられている。これらのセンサの出力は制御装置3に取り込まれている。制御装置3は、各センサの出力に基づいて目標アシストトルクを設定し、電動モータ20からコラムシャフト12に付与されるアシストトルクが目標アシストトルクとなるように電動モータ20に供給される電流をフィードバック制御する。
【0028】
次に、
図2及び
図3を参照して、トルクセンサ4の構造について説明する。
図2に示すように、コラムシャフト12は、ステアリングホイール10側のインプットシャフト12aとインターミディエイトシャフト13側のロアシャフト12bとをトーションバー12cを介して同一軸線m上で連結した構造からなる。そして、ステアリングホイール10の操作に伴いインプットシャフト12aに操舵トルクThが付与されると、この操舵トルクThがインプットシャフト12aからトーションバー12cを介してロアシャフト12bに伝達される際にトーションバー12cに捩れ変形が生じる。これにより、インプットシャフト12aとロアシャフト12bとの間に操舵トルクThに応じた相対的な回転変位が生じる。
【0029】
トルクセンサ4は、インプットシャフト12aの下端部に外嵌される筒状の保持部材40、及び保持部材40と所定の隙間を隔ててその周囲を囲むようにロアシャフト12bに固定される円環状の2つのヨーク41,42を備えている。
【0030】
保持部材40の外周面には、N極及びS極の各磁極が周方向に交互に配置された多極磁石40aが設けられている。
第1のヨーク41の内周面には、軸線mに平行に下方に延びる爪部41aが形成されている。第2のヨーク42の内周面には、軸線mに平行に上方に延びる爪部42aが形成されている。
図3は、2つのヨーク41,42及び保持部材40を平面上に展開した展開図である。
図3に示すように、2つのヨーク41,42のそれぞれの爪部41a,42aは、周方向に交互に配置されている。また、爪部41a,42aは多極磁石40aに対向するように配置されている。
【0031】
図2に示すように、トルクセンサ4は、第1のヨーク41と所定の隙間を隔ててその周囲を囲むように配置される円環状の第1の集磁リング43、及び第2のヨーク42と所定の隙間を隔ててその周囲を囲むように配置される円環状の第2の集磁リング44を備えている。これらの集磁リング43,44は磁性材料からなる。
【0032】
第1の集磁リング43及び第2の集磁リング44は、それぞれ対をなすように所定の隙間を隔てて互いに対向配置される集磁部43a,44a、及び集磁部43b,44bを備えている。集磁部43a,44aの間、及び集磁部43b,44bの間には、付与される磁気(磁界)の強度に応じた信号を出力するセンサIC50,60がそれぞれ配置されている。
【0033】
このトルクセンサ4では、インプットシャフト12aに操舵トルクThが入力されてインプットシャフト12aとロアシャフト12bとの間に相対的な回転変位が生じると、保持部材40と2つのヨーク41,42との位置関係が変化し、各ヨーク41,42に集磁される磁気が変化する。これにより、2つのセンサIC50,60に付与される磁気の強度が変化し、インプットシャフト12aとロアシャフト12bとの間の相対的な回転変位に応じた信号が各センサIC50,60から出力される。換言すれば、トーションバー12cの捩れ角に応じた信号が各センサIC50,60から出力される。
【0034】
次に、
図4〜
図6を参照してセンサIC50,60の構造について詳述する。
図4に示すように、第1のセンサIC50は、給電線Wb1を介して制御装置3の給電端子Tb1に接続されている。また、第1のセンサIC50は、接地線Wg1を介して制御装置3の接地端子Tg1に接続されている。第1のセンサIC50は、制御装置3の給電端子Tb1から給電線Wb1を介して印加される電圧「+Vcc」を動作電源としている。第1のセンサIC50は、トーションバー12cの捩れ角に応じた2つの検出信号S11,S12を信号線Ws1,Ws2を介して制御装置3に出力する。
【0035】
図5に示すように、第1のセンサIC50は、検出信号S11を出力する第1の検出部51、及び検出信号S12を出力する第2の検出部52を備えている。
第1の検出部51は、付与される磁気の強度に応じたホール電圧を出力するホール素子51aを備えている。また、第1の検出部51は、第1のセンサIC50の電源電圧「+Vcc」を検出部51に対応した所定の電圧に定電圧化するレギュレータ51b、及びレギュレータ51bで生成される電圧を基にホール素子51aにバイアス電圧を印加するホールバイアス回路51cを備えている。
【0036】
この第1の検出部51では、ホール素子51aから出力される電圧信号がアンプ51dで増幅された後、A/D変換部(アナログ/デジタル変換部)51eでアナログ信号からデジタル信号に変換される。A/D変換部51eは、デジタル信号の生成の際、アンプ51dからのアナログ信号を所要に補正する信号処理を行う。詳しくは、A/D変換部51eは、第1のセンサIC50に設けられた不揮発性のメモリ53から信号処理に必要な情報を読み込む。メモリ53は例えばEEPROMなどからなる。メモリ53には、オフセット補正値や温度補正値などの補正に必要な各種情報が予め記憶されている。A/D変換部51eは、メモリ53から読み込んだ情報に基づいてアンプ51dからのアナログ信号を補正して検出信号S11を生成した後、この検出信号S11をアナログ信号からデジタル信号に変換する。なお、A/D変換部51eは、第1のセンサIC50に設けられた発振器54からのクロック信号に基づいてデジタル信号の生成を行う。A/D変換部51eで生成される検出信号S11は、その値がトーションバー12cの捩れ角に対してリニアに変化する信号である。この検出信号S11は、インターフェース55から信号線Ws1を介して制御装置3に入力される。
【0037】
第2の検出部52は、第1の検出部51と基本的に同様の構造を有している。すなわち、第2の検出部52も、ホール素子52a、レギュレータ52b、ホールバイアス回路52c、アンプ52d、及びA/D変換部52eを備えている。A/D変換部52eは、メモリ53に記憶されている情報に基づいてアンプ52dからのアナログ信号を補正して検出信号S12を生成した後、この検出信号S12をアナログ信号からデジタル信号に変換する。また、このA/D変換部52eも、第1のセンサIC50に設けられた発振器54からのクロック信号に基づいてデジタル信号の生成を行う。検出信号S12も、検出信号S11と同様に、その値がトーションバー12cの捩れ角に対してリニアに変化する信号である。この検出信号S12は、インターフェース56から信号線Ws2を介して制御装置3に入力される。
【0038】
一方、
図4に示すように、第2のセンサIC60は、給電線Wb2を介して制御装置3の給電端子Tb2に接続されている。また、第2のセンサIC60は、接地線Wg2を介して制御装置3の接地端子Tg2に接続されている。第2のセンサIC60は、制御装置3から給電線Wb2を介して印加される電圧「+Vcc」を動作電源としている。
【0039】
この第2のセンサIC60は、第1のセンサIC50と同様の構造からなる。すなわち、第2のセンサIC60は、第1のセンサIC50の検出信号S11と同様の検出信号S13を出力する。また、第2のセンサIC60は、第1のセンサIC50の検出信号S12と同様の検出信号S14を出力する。そして、第2のセンサIC60から出力される2つの検出信号S13,S14は信号線Ws3,Ws4を介して制御装置3に入力される。
【0040】
制御装置3は、2つのセンサIC50,60から出力される検出信号S11〜S14に基づいて上記トーションバー12cの捩れ角を求める。詳しくは、制御装置3は、各センサIC50,60からの検出信号S11〜S14を取り込むと、所定のマップを用いて各検出信号S11〜S14に対応するトーションバー12cの捩れ角をそれぞれ演算する。そして、制御装置3は、演算された捩れ角にトーションバー12cのばね定数を乗算することで操舵トルクThを演算する。
【0041】
一方、本実施形態の制御装置3は、各検出信号S11〜S14から求められた捩れ角を比較することで検出信号S11〜S14の異常を検出する。また、制御装置3は、全ての検出信号S11〜S14の信号パターンを監視することで、信号線Ws1〜Ws4間の短絡、及び各センサIC50,60の発振器54の異常を検出する。以下、それぞれの検出原理について説明する。
【0042】
図6(a)に示すように、検出信号S11〜S14の全てが正常であるとき、検出信号S11〜S14からそれぞれ求められる捩れ角は全て同一の値θnとなる。これに対し、例えば第1のセンサIC50の第1の検出部51においてホール素子51aやレギュレータ51bに異常が生じて、第1のセンサIC50から出力される検出信号S11が異常となったとする。この場合、
図6(b)に示すように、検出信号S12〜S14から求められる捩れ角は同一の値θnとなるが、検出信号S11から求められる捩れ角はθnと異なる値θeとなる。よって、検出信号S11〜S14からそれぞれ求められる検出結果を比較してそれらの多数決を取れば、検出信号S11から求められる捩れ角が異常値であることを判定することができる。これにより、検出信号S11が異常であると特定することができる。
【0043】
一方、
図7(a)に示すように、信号線Ws1〜Ws4の全てが短絡していない場合、検出信号S11〜S14は正常なデジタル信号パターンをそれぞれ示す。これに対し、
図4に二点鎖線で示すように、例えば第1のセンサIC50の信号線Ws1,Ws2間が短絡したとする。この場合、第1のセンサIC50から信号線Ws1,Ws2に出力される検出信号S11,S12が干渉する。これらの検出信号S11,S12がデジタル信号である場合、それらが干渉すると、各検出信号S11,S12の信号パターンが異常となる。よって、
図7(b)に示すように、制御装置3に入力される検出信号S11,S12の信号パターンが異常となり、それ以外の検出信号S13,S14の信号パターンが正常となる。よって、制御装置3では、全ての検出信号S11〜S14の信号パターンを監視すれば、信号線Ws1〜Ws4の短絡を検出することができる。
【0044】
また、例えば
図5に示す第1のセンサIC50の発振器54に何らかの異常が発生したとする。この場合、第1の検出部51のA/D変換部51eで生成される検出信号S11の信号パターン、及び第2の検出部52のA/D変換部52eで生成される検出信号S12の信号パターンが異常となる。すなわち、
図7(b)に例示したように、制御装置3に入力される検出信号S11,S12の信号パターンが異常となり、それ以外の検出信号S13,S14の信号パターンが正常となる。よって、信号線Ws1〜Ws4間の短絡を検出するのと同様に、全ての検出信号S11〜S14の信号パターンを監視することで発振器54の異常を検出することができる。
【0045】
次に、
図8を参照して、制御装置3がこうした原理を利用して行う異常検出処理についてその作用とともに説明する。
図8に示すように、制御装置3はまず、検出信号S11〜S14の全ての信号パターンが正常であるか否かを判断する(ステップS1)。ここで、信号線Ws1〜Ws4間が短絡した場合、あるいは2つのセンサIC50,60に設けられた発振器54に異常が生じた場合には、検出信号S11〜S14のうちの少なくとも2つの検出信号の信号パターンが異常となる。制御装置3は、検出信号S11〜S14の中に信号パターンが異常なものが存在する場合(ステップS1:NO)、信号パターンが異常であると判断された検出信号の使用を禁止する(ステップS2)。
【0046】
また、制御装置3は、ステップS2の処理を実行した場合、あるいは検出信号S11〜S14の全ての信号パターンが正常である場合には(ステップS1:YES)、全ての検出信号S11〜S14から捩れ角をそれぞれ演算する(ステップS3)。ここで、2つのセンサIC50,60に設けられた検出部51,52のいずれかに異常が生じた場合、検出信号S11〜S14のいずれかが異常となる。よって、検出信号S11〜S14からそれぞれ求められる捩れ角のいずれか一つが他の演算結果と異なる値を示す。制御装置3は、検出信号S11〜S14からそれぞれ求められた捩れ角のいずれか一つが他の演算結果と異なる異常値を示した場合(ステップS4:YES)、異常値を示した検出信号の使用を禁止する(ステップS5)。そして、制御装置3は、ステップS5の処理を実行した場合、あるいは検出信号S11〜S14からそれぞれ求められる捩れ角が全て同一の値となった場合には(ステップS4:NO)、所定の周期の経過後に
図8に示す処理を再び実行する。
【0047】
なお、制御装置3は、ステップS2の処理、あるいはステップS5の処理で検出信号の使用を禁止した場合には、使用の禁止された検出信号を除く残りの複数の検出信号について
図8に示す処理を行う。これにより、過去に使用が禁止された全ての検出信号を除く残りの検出信号について
図8に示す処理が継続して行われることとなる。
【0048】
このような構成によれば、例えば第1のセンサIC50の第1の検出部51に異常が生じて検出信号S11が異常になった場合でも、制御装置3は、それ以外の検出信号S12〜S14から求められる捩れ角を用いて操舵トルクThを演算することができる。さらにその後、例えば第2のセンサIC60から出力される検出信号S14が異常になった場合でも、制御装置3は、残りの検出信号S12,S13から求められる捩れ角を用いて操舵トルクThを演算することができる。
【0049】
また、信号線Ws1,Ws2間が短絡したり、第1のセンサIC50の発振器54に異常が生じることにより第1のセンサIC50の検出信号S11,S12の信号パターンが異常となった場合でも、制御装置3は、第2のセンサIC60の検出信号S13,S14から求められる捩れ角を用いて操舵トルクThを演算することができる。
【0050】
さらに、
図4に示すように、2つのセンサIC50,60には給電線Wb1,Wb2及び接地線Wg1,Wg2が個別に設けられているため、仮にそれらのいずれか一つが断線しても、センサIC50,60のいずれか一方が正常に動作する。このため、制御装置3は、正常なセンサICから出力される検出信号を用いれば、操舵トルクThを演算することができる。
【0051】
このように本実施形態のトルクセンサ4によれば、上述した各種異常が発生しても操舵トルクThを継続して演算することができるため、冗長性が向上する。
以上説明したように、本実施形態のトルクセンサ4によれば、以下のような効果が得られる。
【0052】
(1)トルクセンサ4には、トーションバー12cの捩れ角を検出し、その検出結果に応じた検出信号S11,S12を出力する第1のセンサIC50、及び検出信号S13,S14を出力する第2のセンサIC60を設けた。これにより、検出信号S11〜S14からそれぞれ求められる捩れ角を比較することで、検出信号S11〜S14のいずれが異常であるかを特定することができる。よって、異常な検出信号を除く残りの検出信号を用いて捩れ角を検出すれば、操舵トルクThの検出を継続することができるため、冗長性が向上する。また、2つの検出信号S11,S12を出力する第1のセンサIC50と同様の構造を有する第2のセンサIC60を設けるだけでよいため、トルクセンサ4の製造も容易である。
【0053】
(2)制御装置3では、各センサIC50,60からの検出信号S11〜S14に基づいて捩れ角をそれぞれ検出し、検出した捩れ角の比較に基づいて検出信号S11〜S14のいずれが異常であるかを特定することとした。これにより、検出信号S11〜S14のいずれが異常であるかを容易に特定することができる。
【0054】
(3)制御装置3では、異常な検出信号を特定したとき、特定した異常な検出信号を除く残りの検出信号から捩れ角をそれぞれ検出し、検出した捩れ角の比較に基づき残りの検出信号のいずれが異常であるかを更に特定することとした。これにより、過去に異常であると判断された全ての検出信号を除く残りの検出信号に基づいて捩れ角を検出すれば、操舵トルクThの検出を継続することができるため、冗長性が更に向上する。
【0055】
(4)各センサIC50,60では、検出信号S11〜S14をデジタル信号として制御装置3に出力することとした。これにより、制御装置3では、検出信号S11〜S14のそれぞれの信号パターンを監視すれば、信号線Ws1〜Ws4間の短絡を容易に検出することができる。よって、短絡が検出された信号線を除く残りの信号線から出力される検出信号に基づいて捩れ角を検出すれば、操舵トルクThの検出を継続することができるため、冗長性が更に向上する。
【0056】
(5)各センサIC50,60には、レギュレータ51b,52bを検出部51,52毎に設けた。これにより、レギュレータ51b,52bに異常が生じたとき、検出信号S11〜S14からそれぞれ求められる捩れ角を比較することで、各センサIC50,60の検出部51,52のいずれのレギュレータに異常が生じたかを容易に特定することができる。よって、レギュレータに異常が生じた検出部からの検出信号を除く残りの検出信号を用いて捩れ角を検出すれば、操舵トルクThの検出を継続することができるため、冗長性が向上する。
【0057】
(6)各センサIC50,60には、2つの検出部51,52に共通の発振器54を設けた。これにより、制御装置3では、検出信号S11〜S14のそれぞれの信号パターンを監視することで、発振器54に異常が生じたセンサICを容易に特定することができる。よって、発振器54に異常が生じたセンサICとは別のセンサICからの検出信号に基づいて捩れ角を検出すれば、操舵トルクThの検出を継続することができるため、冗長性が更に向上する。また、2つの検出部51,52に個別に発振器を設ける場合と比較すると、センサIC50,60の部品点数を削減することができる。
【0058】
(7)各センサIC50,60には給電線Wb1,Wb2を個別に設けた。これにより、センサIC50,60の給電線Wb1,Wb2のいずれかが断線しても、給電線が断線していないセンサICから出力される検出信号を用いれば、操舵トルクThの検出を継続することができる。よって、冗長性が向上する。
【0059】
(8)各センサIC50,60には接地線Wg1,Wg2を個別に設けた。これにより、センサIC50,60の接地線Wg1,Wg2のいずれかが断線しても、接地線が断線していないセンサICから出力される検出信号を用いれば、操舵トルクThの検出を継続することができる。よって、冗長性が向上する。
【0060】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、第1のセンサIC50の検出信号S11,S12を2つの信号線Ws1,Ws2を介して制御装置3に別々に取り込んだが、第1のセンサIC50の検出信号S11,S12を一つの信号線を介して制御装置3に取り込んでもよい。詳しくは、
図9に示すように、第1のセンサIC50にマルチプレクサ57を設け、2つの検出部51,52のそれぞれの検出信号S11,S12をマルチプレクサ57に取り込む。マルチプレクサ57は、検出部51,52からの検出信号S11,S12をインターフェース58を介して制御装置3に選択的に出力する。なお、第2のセンサIC60についても同様の構成を採用してもよい。このような構成でも、上記実施形態に準じた効果を得ることができる。
【0061】
・上記実施形態では、検出信号S11〜S14のそれぞれの信号パターンを利用して異常の検出を行うとともに、検出信号S11〜S14から求められる捩れ角を利用して異常の検出を行ったが、それらの一方だけを実行してもよい。詳しくは、前者の異常検出だけを行う場合には、制御装置3が
図8に例示した異常検出処理のステップS1及びS2の処理のみを実行すればよい。また、後者の異常検出だけを行う場合には、制御装置3が
図8に例示した異常検出処理のステップS3〜S5の処理のみを実行すればよい。
【0062】
・上記実施形態では、2つのセンサIC50,60に給電線Wb1,Wb2及び接地線Wg1,Wg2を個別に設けたが、2つのセンサIC50,60が一つの給電線を共用したり、一つの接地線を共用してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、センサIC50,60において2つの検出部51,52に共通の発振器54を設けたが、2つの検出部51,52に発振器を個別に設けてもよい。
・上記実施形態では、センサIC50,60において2つの検出部51,52にレギュレータ51b,52bを個別に設けたが、それらに共通のレギュレータを設けてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、センサIC50,60から出力される検出信号S11〜S14がデジタル信号であったが、これらはアナログ信号であってもよい。
・上記実施形態では、本発明のセンサ装置をトルクセンサ4に適用したが、例えば上述した特許文献1のセンサ装置のようにステアリングシャフト11の回転角を検出する装置など、適宜のセンサ装置に適用してもよい。また、本発明は車両に設けられるセンサ装置に限らず、車両以外の任意のセンサ装置に適用可能である。その際、検出対象に応じてセンサIC50,60の検出部51,52の構造を適宜変更してもよい。例えば、検出部51,52に設けられるホール素子51a,52aを磁気抵抗素子などに変更してもよい。要は、同一の検出対象について同一の状態量を検出し、その検出結果に応じた2つの検出信号を出力するセンサICを2つ備えるものであればよい。
【0065】
・上記実施形態では、各センサIC50,60に2つの検出部51,52を設けたが、3つ以上の検出部を設けてもよい。また、センサ装置に3つ以上のセンサICを設けてもよい。