(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。ここでは、入力装置として自動取引装置1を例に説明する。
図2は第1の実施の形態に関する自動取引装置のシステム構成図である。自動取引装置1は、銀行等の金融機関の営業店やコンビニエンスストア等の店舗に設置され、利用者操作により金融取引を自動で行うものである。この自動取引装置1は、操作表示部2、レシートプリンタ5、カードリーダ6、通帳記帳部7、紙幣入出金部8、硬貨入出金部9、ジャーナル記録部10、カメラ11、スピーカ12、制御部13、記憶部14から構成されている。
【0011】
操作表示部2は自動取引装置1の前面に設けられ、光学式タッチパネルからなるタッチパネル部3とLCD等の表示画面を有する画面表示部4との組合せで構成される。画面表示部4は取引の操作案内用のイラストや文字及び入力用の複数の入力ボタン等を表示する。一方、タッチパネル部3は画面表示部4を覆うように設けられ、スイッチ機能を有する。これにより利用者からのキー押下を受付ける。
【0012】
レシートプリンタ5は取引内容を印刷した取引明細票を発行する。取引明細票は、入金、出金、残高照会、振込、振替等の利用者が行った金融取引に関する情報が印刷される紙片である。カードリーダ6は、金融機関が発行したコードや利用者の口座番号,氏名等の利用者情報が記憶されたキャッシュカードや振込カードから前述の情報を読み出す機能を有する。このカードリーダ6の前面側に設けられたカード挿入返却口(後述する
図3(b)に示す自動取引装置21の場合はカード挿入返却口26)により、キャッシュカードや振込カードの挿入や返却が行なわれる。なお、前述のキャッシュカード及び振込カードには利用者の氏名、口座番号等の情報を記録した磁気ストライプを備える。近時では前述の情報を格納する部材としては、カード基材内に埋め込まれたIC(集積回路)とすることもある。
【0013】
通帳記帳部7は通帳に印字する機能を有する。ここで、通帳は金融機関が利用者に対して発行した冊子状の媒体であり、入金、出金、振込、振替等の金融取引の記録が印字されるものである。通帳記帳部7は通帳が挿入される通帳挿入返却口を備える。この通帳挿入返却口内には、通帳を搬送する搬送機構、通帳に取引記録を印字する印字ヘッド及び通帳の磁気ストライプやICに格納された情報の読み取り、上書き、消去等を行うための磁気ヘッド等が配設される。
【0014】
紙幣入出金部8は、利用者により入金される紙幣を真偽鑑別,計数し、図示しない金種別収納庫に収納する。また、利用者に支払われる紙幣を金種別収納庫より繰り出すものである。紙幣入出金部8には紙幣入出金口(後述する
図3(b)に示す自動取引装置21の場合は紙幣入出金部28)を備え、利用者が投入した紙幣を受付けるための紙幣入金口及び利用者に紙幣を引渡すための紙幣出金口として機能する。
【0015】
硬貨入出金部9は利用者により入金される硬貨を真偽鑑別,計数し、搬送して図示しない金種別収納庫に収納する。また、利用者に支払われる硬貨を金種別収納庫より繰り出すものである。硬貨入出金部9には硬貨入出金口(後述する
図3(b)に示す自動取引装置21の場合は硬貨入出金部29)を備え、利用者が投入した硬貨を受付けるための硬貨入金口及び利用者に硬貨を引渡すための硬貨出金口として機能する。
【0016】
ジャーナル記録部10は、利用者が自動取引装置1を利用して金融取引を実行した場合に、取引通番、取引科目、日時、更には店舗や機械番号を記録する。このジャーナル記録部10は、記録形式として紙媒体への印刷出力や電子媒体への電子的な記録がある。カメラ11は、利用者の立ち位置画像として主に上半身部分と画面操作する利用者の手元画像を撮影する。この撮影した画像の1フレーム(コマ)を取引記録と関連づけて前述したジャーナル記録部10に記録することもできる。なお、このカメラ11の撮像から利用者の存在を始め、右手で操作しているか、又は左手で操作しているかなどを認識することもできる。
【0017】
音声案内用のスピーカ12は制御部13により制御され、画面表示部4の画面誘導に加え、さらに音声により補助誘導する。記憶部14は制御部13が実行する取引処理プログラムや制御部13による処理結果等が格納される。
【0018】
制御部13は、図示しないインタフェース部を介してWebサーバ16と通信回線17より接続されている。Webサーバ16は記憶装置160を有する。この記憶装置160内には画面や文書などの取引情報が蓄積されている。Webサーバ16は制御部13からの要求に応じて通信回線17を介して、それらの取引情報を制御部13に送信できる。なお、Webサーバ16は蓄積した取引情報の検索や編集を行い、その結果を出力することもできる。更に、Webサーバ16は専用回線18によりホストコンピュータ19に接続されている。ホストコンピュータ19の記憶装置190には、利用者の住所,氏名やその口座番号や暗証番号、口座残高情報などを始めとした各種情報が記憶されている。
【0019】
ここで、タッチパネル部3について説明する。タッチパネル部3は光学式であり、肉眼では見えない赤外線を発する発光ダイオード(LED)とフォトトランジスタをペアで配置し、複数の光軸を網目状(マトリクス)に形成する。例えば、上端側と左端側に発光ダイオードの列を配し、下端側と右端側にフォトトランジスタの列を配置する。この発光ダイオード(光源)を順次ON/OFFすることで表示画面上を走査し、指等で光軸が遮光されるとその場所のうち一の座標を検知座標として算出する仕組みになっている。この算出動作は制御部13が生の遮光軸データを処理する。なお、タッチパネルデバイスとして提供されたものでは、タッチパネル内部に構成されたメモリ等に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいてCPU等の制御手段により制御されるものもある。
【0020】
図3は第1の実施の形態に関する自動取引装置と利用者の立ち位置関係を示す説明図である。
図3(a)は自動取引装置1と利用者Hを上方から見た場合を示す。利用者Hは略水平に設けた操作表示部2の前側に立つことになる。図示するように利用者Hが右手で操作する場合には、操作表示部2に対して右下方向に手首が位置し、指先は手首位置より左上方向に伸びることになる。言い換えると、人体(胴体)側を起点とした場合に腕及び手先が操作表示部2側に突き出ることになる。このように操作表示部2を略水平に配設した場合には、爪、指先、そして衣服の袖(手首に装着しているブレスレットなどを含む)の一部が触れることが想定される。
【0021】
図3(b)は操作表示部22が略垂直状態に配設された自動取引装置21の例である。この自動取引装置21はコンビニエンスストアなどに設置する省スペース型の紙幣入出金専用機である。自動取引装置21は操作表示部22、カード挿入返却口26、紙幣入出金部28及び硬貨入出金部29を有する。この自動取引装置21の場合には、操作表示部22に対して下方に手首が位置し、指先は手首位置より上方向に伸びることになる。言い換えると、人体(胴体)側を起点とした場合に腕及び手先が操作表示部22側に下方から突き出ることになる。このように操作表示部22を略垂直状態に配設した場合には、肘(関節)の曲げ角度の関係から袖やブレスレッドの一部が触れる可能性は低いが、長爪の先が触れる可能性は高くなる。以後、タッチパネル部3の下端側に利用者Hの手首が位置するものとして説明する。
【0022】
次に、指先及び長爪の先がタッチパネル部3に触れた場合の説明を行う。
図4は第1の実施の形態に関するキー押下状態を示す説明図である。なお、図においては、X方向及びY方向に網目状に記載した実線は「光軸」を意味するもので、視認できるものではない。
【0023】
図4(a)はタッチパネル部3に長い爪(装飾目的等のつけ爪も含む)を有する利用者Hがタッチパネル部3に触れた場合の指先拡大図である。図示するように指先Fと長爪の先Nがタッチパネル部3に位置する。
図4(b)は指先Fと長爪の先Nによって光軸が遮光される場合を示す。同図に示すようにX軸では矢印で示す光軸5個(x4〜x8)、Y軸では矢印で示す6個(y3、y6〜y10)が遮光される場合である。この遮光されたX軸及びY軸の交差する交点群からなる領域を以後、検知領域という。なお、Y軸においては遮光されない光軸が2個(y4、y5)存在する。同図において、T1は長爪の先Nの検知領域を示す。T2は指先Fの検知領域を示す。N1は長爪の先Nの検知領域T1の中心位置を示す。F1は指先Fの検知領域T2の中心位置を示す。
【0024】
また、タッチパネル部3は、遮光軸数として例えば、X軸、Y軸いずれかが10本以上であると判断する場合がある。その場合に制御部13は異常な接触検知があったと判断し、押下を無効としてエラーを通知するが、その詳細説明は省略する。
【0025】
図5は第1の実施の形態に関する二点入力となる押下状態を示す説明図である。二点入力とは、該当する検知領域のいずれにも入力ボタンが架かる場合である。一方のみの場合には、二点入力として判定処理しない。
図5(a)は指先Fと長爪の先Nがタッチパネル部3に触れた場合を示す。また、
図5(b)は、利用者がタッチパネル部3を指先Fで押下した際、手首側の衣服の袖Wもタッチパネル部3に触れてしまった状態例を示す。同図において、T3は袖Wの検知領域を示す。
【0026】
次にタッチパネル部3における複数点座標検出の動作説明を行う。
図1は第1の実施の形態に関する自動取引装置の動作を示すフローチャートである。まず、制御部13は操作表示部2に取引に関する入力画面を表示させ、かつ、表示画面上の走査を開始し、利用者Hによる入力操作を待つ。即ち、タッチパネル部3への接触(ボタン押下)の有無を監視する。ボタン押下が検知されると、その押下情報を一定時間だけ保持する。
【0027】
S101:制御部13は、遮光が検知された場合に、検知された検知領域Tが複数であるか否かを判定する。例えば、
図4(b)に示したように長爪の先Nと指先Fがタッチパネル部3に触れた場合には、長爪の先Nの検知領域T1と指先Fの検知領域T2との二つの検知領域が存在することになる。複数の検知領域Tが存在する場合には次ステップ102に移行する。検知領域Tが複数でない場合はステップ112へ移行する。
【0028】
S102:複数の検知領域Tが存在する場合に制御部13は、その入力画面が「特定画面」であるか否かを判断する。ここで特定画面とは、仮に利用者の意思に反して処理が実行された場合に利用者に不利益となるおそれのある取引画面であり、取引の確認時に表示される取引確認画面等である。具体的に取引科目に応じて決めるのではなく、出金金額の確認画面、入金金額の確認画面、振込取引(振込先)の確認画面や暗証番号の入力画面等が該当する。なお、これらの特定画面は自動取引装置1のシステム提供者や運用者が予め決定して設定してある。制御部13は複数の検知領域が存在する画面が特定画面ではない場合、ステップ103に移行する。特定画面の場合はステップ112へ移行する。
【0029】
S103:複数の検知領域が存在する場合に制御部13は、それぞれの検知領域Tの中心間距離Lを算出する。
図4(b)に示す例では、指先Fの検知領域T2は、X軸方向が5個(x4〜x8)とY軸方向が5個(y6〜y10)の四角形となり、長爪の先Nの検知領域T1ではX軸方向が5個(x4〜x8)とY軸方向の1個(y3)の四角形となる。これらの四角形の中心位置F1及びN1を遮光座標位置から算出し、その中心間距離L1を求める。同様に
図5(b)に示した場合には、指先Fの検知領域T2と袖Wの検知領域T3の中心間距離L2を求める。
【0030】
これらの長爪の先N〜指先F〜袖Wまでの距離は人間工学的に算出することができる。本実施の形態では、中心間距離Lが光軸1個以上(およそ2〜4mm以上)から40mm未満を長爪の先Nから指先Fの距離の閾値(以後、第1の閾値と称する)とする。更に、中心間距離Lが40mm〜200mmまでを指先Fから袖Wまでの距離の閾値(以後、第2の閾値と称する)とする。これはタッチ操作時の手の曲げ方を考慮するものである。例えば親指の付け根部の接触や
図5(b)に示すように指を内側に丸めたときにその部位が触れる可能性がある為である。第1,第2の閾値はこれらの要因を考慮して設定する。なお、指先から手首までの長さは概ね180から190mm程度である。
【0031】
中心間距離Lにより次ステップが切り替わる。即ち、中心間距離Lが第1の閾値内の場合、制御部13はステップ104に移行する。また、中心間距離Lが第1の閾値外の場合には、制御部13はステップ105に移行する。
【0032】
S104:中心間距離Lが第1の閾値内であるので、長爪の先Nと指先Fがタッチパネル部3に接触したと判断できる。従って、制御部13は、利用者Hに近い側のキー押下、即ち指先Fの検知領域T2に該当するキー押下と判定する。
【0033】
S105:制御部13は、中心間距離Lが第2の閾値内であるかを判断する。第2の閾値内の場合にはステップ106に移行する。なお、制御部13は第2の閾値外の場合には、ステップ107に移行する。
【0034】
S106:指先Fと袖Wがタッチパネル部3に接触したと判断できる。従って、制御部13は利用者Hから遠い側のキー押下として、指先Fの検知領域T2に該当するキー押下と判定する。
【0035】
S107:制御部13は、同一の利用者(口座番号等)情報の過去の操作履歴の照会を行う。まず、制御部13は、通信回線17を介して、Webサーバ16に利用者(口座番号等)情報の照会指示を送信する。照会を受けたWebサーバ16は記憶装置160内の利用者操作履歴を検索する。
【0036】
図6は第1の実施の形態に関する操作履歴情報を示す説明図である。図示するように、口座番号ごとに取引日、取引科目、取引画面とその押下ボタン名称等が記録されている。例えば、2012年5月1日付けの「お支払い」取引では1万円の出金操作が行われたことが記録され、金額入力画面において「1」ボタン→「万」ボタン→「円」ボタン→「確認」ボタンが順に押下され、明細票発行選択画面にて「発行する」ボタンが押下されたことが記録されている。また、同年5月10日にも「お支払い」取引が行われたことが記録されている。
【0037】
S108:制御部13はWebサーバ16から、過去の取引履歴情報を受信する。過去の取引履歴情報が存在する場合には、例えば、直近の10取引分の取引履歴情報を受信して記憶部14に格納する。続けて制御部13は、今回の操作画面におけるその入力操作と同じ取引における取引履歴情報の中が存在するかを検索する。存在する場合には次ステップ109に移行する。
【0038】
S109:制御部13は、記憶部14に格納した取引履歴情報の中に、今回の操作画面におけるその入力操作と同じ「操作履歴」が所定回数以上(例えば、2回以上とする)あるかを検索する。2回以上存在すると判断された場合には次ステップ110に移行する。
【0039】
S110:制御部13は、過去の取引履歴情報の中に同一取引において、押下頻度が高い入力ボタンの検知領域の中心座標と、今回の検知領域の中心座標とが一致又は許容範囲内であるかを比較する。なお、過去における画面レイアウトはそれ以降の変更なく、今回の操作画面と同一とすることは言うまでもない。
【0040】
S111:制御部13は、過去の同一取引における押下頻度が高い入力ボタンを押下位置と判定する。これにより、利用者が押下しようとしたであろう入力ボタンとして特定できる。よって、再入力操作を不要にできるという効果がある。
【0041】
S112:前述したステップ101における、検知領域が単一の場合及びステップ102における特定画面の場合には、自動判定処理を実行しない。また、ステップ108における過去の操作履歴情報が存在しない場合、ステップ109における同じ操作履歴が所定回数以下(例えば、1回)のとき、更にはステップ110において取引履歴における検知領域の中心座標と検知領域の中心座標が不一致の場合にも自動判定処理は実行しない。
【0042】
以上説明した例では、
図4(b)に示すように指先FがY軸に平行な場合である。この場合、指先Fの検知領域T2と長爪の先Nの検知領域T1は、Y軸方向において同一の光軸となる。ここで、同伴者のいる利用者や車椅子の利用者などの場合、指先Fが斜めとなることが想定される。また、指先FがX軸に平行となる場合もあることが想定される。
【0043】
図7は第1の実施の形態に関する他のキー押下状態を示す説明図である。
図7(a)は指先Fが斜めとなり、袖Wが接触した場合を示す。指先Fによる検知領域To2と袖Wによる検知領域To3は、利用者Hが直接的にタッチしている部分である。光学タッチパネルの場合、光軸が遮断された領域が検知領域となるため、第1の検知領域V1と第2の検知領域V2という領域も「タッチ」と判定される。この場合に制御部13は、カメラ11の撮像の解析から第1の検知領域V1と第2の検知領域V2を判定対象から除外する。即ち、
図7(a)に示すような4か所の検知領域To2、To3、V1及びV2を検知しても操作表示部2上に手や袖が存在しない検知領域V1及びV2は無視するように制御すればよい。
【0044】
また、
図7(b)は指が横向きとなる場合を示す。この場合、ステップ104のように利用者から「遠い側」と「近い側」という判定はできない。この場合には、制御部13は、検知領域T1又はT2の面積の大小により判定する。即ち、検知領域T1又はT2の面積の大きい方を「指先」として判定すればよい。
【0045】
第1の実施の形態におけるステップ103及びステップ104において、複数の検知領域Tの中心間距離Lを算出し、中心間距離Lが第1の閾値内及び第2の閾値内であるかどうかを判断することを説明したが、これに限らない。即ち、複数の検知領域Tの面積を算出し、これらの面積を比較するようにしてもよい。即ち、検知領域Tの面積は、遮光された光軸数に光軸ピッチ(値)を乗算したものである。光軸ピッチは物理的な発光ダイオードやフォトトランジスタの実装ピッチではなく、分解能(例えば、実装ピッチの1/2等)相当とする。そして、長爪の先Nの検知領域T1の面積は、指先Fの検知領域T2の面積より小さいので、これらを判定条件とすることができる。
【0046】
第1の実施の形態においては、入力装置として自動取引装置を例に説明したが、可搬型の携帯可能な電子機器としてのタブレットパソコン、携帯電話、電子辞書、電子コンパスにも利用できることは言うまでもない。特に携帯型の電子機器としてのタッチパネルにおいては、パスワード入力画面はサイズが小さく、表示文字数が多く、かつ、パスワード文字数が不定(例えば、6〜18文字)であることから、本発明は有用である。