(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2組の前記ブラケット各々における前記長尺部は、前記金属布における四方の外縁部のうちの前記第1の外縁部及び前記第2の外縁部以外の第3の外縁部及び第4の外縁部の長さよりも長く形成されている、請求項1に記載の電磁シールド具。
2組の前記ブラケット各々における2つの前記長尺部は、該2つの長尺部の一端を繋ぎ可撓性を有する中継部とともに一連の部材により構成されている、請求項1又は請求項2に記載の電磁シールド具。
前記金属布における四方の外縁部のうちの前記第1の外縁部及び前記第2の外縁部以外の第3の外縁部及び第4の外縁部各々と溶接により接合される金属部材である金属布接合部材をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電磁シールド具。
2組の前記ブラケット各々において、2つの前記長尺部各々における相互に対向する側の内側面に複数の突起が形成されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の電磁シールド具。
2組の前記ブラケット各々において、2つの前記長尺部各々は、それらが相互に対向する側の反対側の外側面において前記金属布と接合されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の電磁シールド具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、編組線は筒状であるため、電線は、基本的にはその末端にコネクタが取付けられる前に、編組線に挿通されることを要する。このことは、一般に先通しと称される。このように電線の先通しが必要となると、ワイヤハーネスの製造及び配線の手順の自由度が制限される。
【0006】
仮に、電線の末端にコネクタが取付けられた後に電線に編組線を取り付けること、即ち、編組線の後付けを可能とするには、電線よりも外形の大きなコネクタなども挿通可能な、無駄に大きな編組線の採用が必要となる。そのようなことは、ワイヤハーネスの配設スペース、重量及び製造コストが増大することになり、非現実的である。
【0007】
また、電線が先通しされた筒状の編組線をシールド枠部に被せる作業において、電線の軸心方向における編組線の位置をずらすことが必要となる。そのため、編組線の両端が、比較的近くに配置された2つの筐体のシールド枠部各々に被せられる場合、編組線の位置をずらすためのスペースの余裕が小さく、編組線をシールド枠部に被せる作業が難しくなる。
【0008】
以上のことから、昨今、シールド部材の取り付けの作業性及び手順の自由度を高めるため、シールド部材の大型化を回避しつつ、電線及び筐体に対するシールド部材の後付けを可能にすることが求められている。
【0009】
そこで、本発明は、ワイヤハーネスの配設スペース、重量及び製造コストの増大を伴わずに、電線及び筐体に対するシールド部材の後付けを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る電磁シールド具は、金属糸の織物である金属布と、2組のブラケットとを備える。2組のブラケットは、上記金属布における四方の外縁部のうちの第1の外縁部及び該第1の外縁部の反対側の第2の外縁部各々を
電線の周囲を囲む環状に保持する。さらに、2組の上記ブラケット各々は、2つの長尺部及び連結部を備える。2つの上記長尺部は、導電性材料からなり、上記金属布の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で上記金属布と接合され、上記電線の両側から相互に組み合わされることによって上記電線を囲む環状に形成される部分である。上記連結部は、2つの上記長尺部各々の端部どうしを連結して2つの上記長尺部を環状に保持する部分である。
上記長尺部各々は、上記金属布の外縁部に圧着されることによって上記金属布と接合されている。
【0011】
本発明の第2の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様に係る電磁シールド具の一態様である。第2の態様に係る電磁シールド具において、2組の上記ブラケット各々における上記長尺部は、上記金属布における四方の外縁部のうちの上記第1の外縁部及び上記第2の外縁部以外の第3の外縁部及び第4の外縁部の長さよりも長く形成されている。
【0012】
本発明の第3の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様又は第2の態様に係る電磁シールド具の一態様である。第3の態様に係る電磁シールド具において、2組の上記ブラケット各々における2つの上記長尺部は、該2つの長尺部の一端を繋ぎ可撓性を有する中継部とともに一連の部材により構成されている。
【0013】
本発明の第4の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様から第3の態様のいずれかに係る電磁シールド具の一態様である。第4の態様に係る電磁シールド具の2組の上記ブラケット各々において、上記連結部は、2つの上記長尺部各々における上記金属布と接合された両端部が重なる状態で2つの上記長尺部を連結する。
【0014】
本発明の第5の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様から第3の態様のいずれかに係る電磁シールド具の一態様である。第5の態様に係る電磁シールド具は、上記金属布における四方の外縁部のうちの上記第1の外縁部及び上記第2の外縁部以外の第3の外縁部及び第4の外縁部各々と溶接により接合される金属部材である金属布接合部材をさらに備える。
【0015】
本発明の第6の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様から第5の態様のいずれかに係る電磁シールド具の一態様である。第6の態様に係る電磁シールド具の2組の上記ブラケット各々において、2つの上記長尺部各々における相互に対向する側の内側面に複数の突起が形成されている。
【0016】
本発明の第7の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様から第6の態様のいずれかに係る電磁シールド具の一態様である。第7の態様に係る電磁シールド具の2組の上記ブラケット各々において、2つの上記長尺部各々は、それらが相互に対向する側の反対側の外側面において上記金属布と接合されている。
【0018】
本発明の第
8の態様に係る電磁シールド具は、第
1の態様
から第7の態様のいずれかに係る電磁シールド具の一態様である。第
8の態様に係る電磁シールド具において、上記長尺部各々の上記金属布に圧着された部分における上記金属布に接する面と端面との境界部分は面取り部である。
【0019】
本発明の第
9の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様から第
8の態様のいずれかに係る電磁シールド具の一態様である。第
9の態様に係る電磁シールド具においては、2組の上記ブラケット各々における2つの上記長尺部各々に、それらが相互に対向する方向へ起立した位置決め用の起立部が形成されている。
【0020】
また、本発明は、電線と、その電線の周囲を囲う第1の態様から第
9の態様のいずれかに係る電磁シールド具と、を備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0021】
第1の態様に係る電磁シールド具において、2組のブラケット各々を構成する2つの長尺部は、金属製の筐体の一部、例えば、筐体のシールド枠部に固定され、金属布と筐体との電気的接続を中継する部材である。金属布は、2組のブラケットを介して筐体と電気的に接続され、筐体接地の状態となる。
【0022】
第1の態様に係る電磁シールド具によれば、導電材料からなる2つの長尺部が、電線の両側から組み合わされて環状に保持されることにより、2つの長尺部と接合された金属布は、電線の周囲を囲む筒状に形成される。
【0023】
即ち、第1の態様に係る電磁シールド具は、予め筒状に形成された部材ではないため、電線に対する後付けが可能である。
【0024】
また、第1の態様に係る電磁シールド具においては、電線の周囲を囲うために過不足のない大きさの金属布が採用されれば良いため、配設スペース、重量及び製造コストの増大を伴うこともない。
【0025】
また、第1の態様に係る電磁シールド具において、2組のブラケット各々を構成する2つの長尺部は、筐体のシールド枠部を挟み込んで環状をなす状態で、連結部により連結される。さらに、連結部が、組み合わされた2つの長尺部を環状に保持することにより、2つの長尺部と接合された金属布は、電線の周囲を囲む筒状に保持される。
【0026】
即ち、2組のブラケットは、金属布を筒状に保持する役割と、金属布と筐体のシールド枠部との電気的な接続を維持する役割とを果たす。従って、第1の態様に係る電磁シールド具が採用された場合、従来の編組線及びかしめ金具の採用によって複数の部材が取り扱われる場合に比べ、部品の管理及び取り扱いの工数が簡素化される。
【0027】
ところで、後述するように、編組線又は金属布は、筐体のシールド枠部とかしめ金具などの他の固定部材との間に挟み込まれて固定されると、シールド枠部から滑って外れやすい。
【0028】
一方、本発明に係る電磁シールド具において、金属布と2組のブラケットの長尺部とは予め接合されている。そのため、2組のブラケットを、金属布を介さずに、筐体のシールド枠部に対して直接固定することが可能である。従って、電磁シールド具が筐体のシールド枠部から外れるという不具合は生じにくい。
【0029】
また、第2の態様に係る電磁シールド具が採用される典型的な第1の場合としては、2組のブラケット各々の固定先である2つの筐体が近くに配置されているために、金属布の長さが特に短い場合が考えられる。このような場合に、後付け可能な電磁シールド具の採用は特に好適である。
【0030】
即ち、後付け可能な電磁シールド具は、筐体への取り付け作業において金属布の位置を電線の長手方向における一方にずらすことを必要としない。そのため、後付け可能な電磁シールド具は、作業スペースの余裕が小さい場合においても、容易な作業により取り付けられる。
【0031】
また、第2の態様に係る電磁シールド具が採用される典型的な第2の場合としては、ブラケットの固定先である筐体のシールド枠部の幅が大きいため、それに合わせてブラケットの長尺部が長く形成されている場合が考えられる。編組線が筐体のシールド枠部と固定部材との間に挟み込まれる構造を有する従来の電磁シールド具は、シールド枠部の幅が大きいほど、固定部材がシールド枠部を締め付ける力が広く分散し、シールド枠部から滑って外れる問題がより顕著となる。
【0032】
一方、前述したように、本発明においては、2組のブラケットを、金属布を介さずに、筐体のシールド枠部に対して直接固定することが可能である。そのため、上記の典型的な第2の場合において、第2の態様に係る電磁シールド具が採用されれば、筐体のシールド枠部から外れにくいという効果がより顕著となる。
【0033】
また、第3の態様によれば、2組のブラケット各々における2つの長尺部がそれぞれ別部材である場合よりも部品点数が減少する。そのため、筐体への電磁シールド具の取り付けの工数を低減することができる。
【0034】
また、第4の態様によれば、金属布は、電線の周囲を囲む方向の両端部をなす2つの外縁部(第3の外縁部及び第4の外縁部)において重なり、ほぼ隙間のない筒状に保持される。そのため、ノイズ電磁波がより確実に遮蔽され、安定したシールド性能が得られる。
【0035】
また、第5の態様によれば、金属布は、電線の周囲を囲む方向の両端部をなす2つの外縁部(第3の外縁部及び第4の外縁部)において金属部材を介して接合される。その結果、金属布は、金属部材と併せて隙間のない筒状に形成される。そのため、ノイズ電磁波がより確実に遮蔽され、安定したシールド性能が得られる。
【0036】
また、第6の態様によれば、長尺部の内側面に形成された複数の突起の作用により、ブラケットと筐体の長尺部との摩擦抵抗が高まり、ひいては筐体のシールド枠部に対するブラケットの保持力が強まる。これにより、電磁シールド具が筐体のシールド枠部から外れるという不具合の発生をさらに抑制できる。
【0037】
また、第7の態様においては、金属布は、長尺部の外側面に接合されるため、長尺部と筐体のシールド枠部との間に挟まれることがない。そのため、金属布の挟み込み防止のために、長尺部において、筐体のシールド枠部に接触する部分と、金属布と接合される部分とが、分離して形成される必要はない。従って、長尺部(ブラケット)の小型化が可能となる。
【0038】
ところで、長尺部と金属布とが溶接によって接合された場合、薄い金属布が損傷する恐れがある。第
1の態様においては、長尺部各々は、金属布の外縁部に圧着されることによって金属布と接合されている。これにより、薄い金属布の損傷を防ぎつつ、長尺部と金属布とを接合することができる。
【0039】
また、第
8の態様においては、長尺部各々の金属布に圧着された部分における金属布に接する面と端面との境界部分は面取り部である。これにより、金属布が長尺部の縁の角に擦れて破損することが防止される。
【0040】
また、第
9の態様においては、長尺部各々に位置決め用の起立部が形成されている。この起立部は、ブラケットが接続される相手部材に形成された位置決め用の孔に嵌め入れられる。これにより、ブラケットと相手部材とを正しい位置関係で接続することが容易となる。
【0041】
本発明の第
10の態様に係るワイヤハーネスが採用されることにより、第1の態様に係る電磁シールド具について述べた効果と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される各実施形態に係る電磁シールド具は、車両に搭載されるワイヤハーネスの電線に取り付けられ、電線の周囲を囲む導電性の金属布によりノイズ電磁波を遮蔽する電装部品である。
【0044】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図6を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電磁シールド具1及び本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス100の構成について説明する。
【0045】
図1に示されるように、電磁シールド具1は、2つのブラケット本体部2と、2つのブラケット本体部2各々と接合された金属布3と、2つのブラケット本体部2各々を金属製の筐体に固定する固定具である2つのネジ4と、により構成されている。
【0046】
一方のブラケット本体部2及び一方のネジ4が1組のブラケットを構成しており、他方のブラケット本体部2及び他方のネジ4が他の1組のブラケットを構成している。以下の説明において、1つのブラケット本体部2及びそれを筐体に固定するための1つのネジ4のことをブラケット2,4と総称する。即ち、電磁シールド具1は、2組のブラケット2,4を備える。
【0047】
2組のブラケット2,4のうちの一方は、電線9の一方の端部が接続される機器を収容する筐体8の一部に固定され、2組のブラケット2,4のうちの他方は、電線9の他方の端部が接続される機器を収容する筐体8の一部に固定される。
【0048】
また、
図4に示されるように、ワイヤハーネス100は、複数の電線9と、複数の電線9の周囲を一括して覆う電磁シールド具1とを備える。
【0049】
<電線>
電線9は、導電材料からなる芯線と、芯線の周囲を覆う絶縁材料からなる絶縁被覆とにより構成された絶縁電線である。通常、電線9の端部の芯線には、不図示の金属端子が接続されている。また、ワイヤハーネス100は、複数の電線9の端部を一定の位置関係で保持するとともに、複数の電線9相互間を電気的に絶縁する樹脂材料からなる不図示の電線群保持部材を備える場合もある。なお、
図1から
図3において、電線9は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0050】
<金属布>
電磁シールド具1を構成する金属布3は、金属糸の織物である。金属布3は、例えば銅を主成分とする金属の糸が縦方向及び横方向に交差して織られた網目構造を有する生地である。また、金属布3は、金属糸の生地に樹脂材料からなる柔軟性を有するフィルムが貼り付けられた構造を有する場合もある。金属布3は、導電性及び柔軟性を有する。
【0051】
以下の説明において、金属布3の四方の外縁部それぞれのことを、第1の外縁部31、第2の外縁部32、第3の外縁部33及び第4の外縁部34と称する。第1の外縁部31は、金属布3の四方の外縁のうち、取り付け対象となる電線9の長手方向における一端をなす外縁から内側へ一定の範囲を占める部分である。第2の外縁部32は、金属布3における第1の外縁部31に対し反対側の外縁から内側へ一定の範囲を占める部分である。
【0052】
また、第3の外縁部33及び第4の外縁部34は、金属布3の四方の外縁部のうち第1の外縁部31及び第2の外縁部32以外の外縁部である。第3の外縁部33及び第4の外縁部34は、金属布3における電線9の周囲を囲む方向の両端部をなす外縁部であるともいえる。
【0053】
電磁シールド具1において、金属布3は、第1の外縁部31において、後述する2組のブラケット2,4のうちの一方と接合されている。同様に、金属布3は、第2の外縁部32において、2組のブラケット2,4のうちの他方と接合されている。金属布3は、2組のブラケット2,4各々を介して2つの金属製の筐体8各々と電気的に接続され、筐体接地の状態となる。その詳細については後述する。
【0054】
また、本実施形態においては、
図2に示されるように、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34は、2つの長尺部10各々の端からわずかにはみ出して形成されている。
【0055】
<ブラケット>
電磁シールド具1の2組のブラケット2,4各々において、ブラケット本体部2は、導電性材料からなる曲がった板状の部材である。ブラケット本体部2は、例えば、銅の合金、鉄又はステンレスなどの金属の部材であり、必要に応じて表面にメッキ層が形成されている。ブラケット本体部2は、金属製の筐体8の一部に固定され、金属布3と筐体8との電気的接続を中継する部材である。
【0056】
図1から
図3に示されるように、ブラケット本体部2は、2つの長尺部10と、それらの一端を繋ぐ中継部19と、2つの長尺部10各々の他端に繋がる2つの庇部20とにより構成されている。
【0057】
<ブラケット本体部:長尺部>
2つの長尺部10各々は、曲がった板状の部分であり、磁気シールドの対象となる複数の電線9を跨いで架け渡される半環状に形成されている。そして、2つの長尺部10は、電線9の両側から相互に組み合わされることによって電線9の周囲を囲む環状に形成される。
【0058】
図1に示される例では、各長尺部10は、電線9を横断する中間部分が平坦な板状に形成されている。しかしながら、各長尺部10の形状は、固定先である筐体8のシールド枠部81の形状により異なる。
【0059】
また、2つの長尺部10は、金属布3の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で金属布3と接合されている。金属布3と長尺部10とは、例えば、溶接により接合されている。2組のブラケット2,4のうちの一方における2つの長尺部10は、金属布3の第1の外縁部31に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。また、2組のブラケット2,4のうちの他方における2つの長尺部10は、金属布3の第2の外縁部32に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。
【0060】
本実施形態においては、2つの長尺部10は、後述する中継部19を介して折り返した経路に沿って形成されている。そのため、2つの長尺部10と接合された金属布3は、2つの長尺部10により、中間部35において折り返された状態で保持されている。
【0061】
また、2組のブラケット2,4各々において、2つの長尺部10各々は、それらが相互に対向する側の反対側の外側面において金属布3と接合されている。一方、2つの長尺部10各々における相互に対向する側の内側面には、複数の突起11が形成されている。
【0062】
複数の突起11は、エンボス加工により形成されている。そのため、2つの長尺部10各々の外側面には、複数の突起11各々に対応する複数の凹み11xが形成されている。
【0063】
<ブラケット本体部:中継部>
また、中継部19は、折り返された板状の部分であり、2つの長尺部10各々の一端に連なって形成されている。即ち、2つの長尺部10及び中継部19は、一連の部材で構成されている。
【0064】
中継部19は、折り返しの角度が変化する方向において可撓性を有している。
図2に示されるように、中継部19の可撓性により、2つの長尺部10は、中継部19を支点として相対的に回動可能である。これにより、ブラケット本体部2は、それら各々の端部が離隔して内側が開放された開状態と、それら各々の端部が接する閉状態とに変形可能である。
【0065】
図2において、開状態のブラケット本体部2が実線で描かれており、閉状態のブラケット本体部2が仮想線(二点鎖線)で描かれている。2つのブラケット本体部2各々が開状態となることにより、2つのブラケット本体部2と接合された金属布3も、第3の外縁部33及び第4の外縁部34が離隔した開状態となる。また、2つのブラケット本体部2各々が閉状態となることにより、2つのブラケット本体部2と接合された金属布3は、第3の外縁部33及び第4の外縁部34が近接して筒状になる。
【0066】
前述したように、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34が、2つの長尺部10各々の端からわずかにはみ出して形成されている。そのため、2つのブラケット本体部2が閉状態となることにより、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34は、ほぼ隙間なく接する。これにより、金属布3は、ほぼ隙間のない筒状になる。
【0067】
<ブラケット本体部:庇部>
2つの庇部20各々は、2つの長尺部10各々の他端に連なり、2つの長尺部10各々から側方へ張り出して形成された平坦な板状の部分である。
【0068】
従って、ブラケット本体部2は、2つの長尺部10と、それらの一端を繋ぐ中継部19と、2つの長尺部10各々の他端に連なる2つの庇部20とが形成された一連の金属部材である。即ち、2つの長尺部10は、それらの一端を繋ぎ可撓性を有する中継部19、及び2つの長尺部10各々の他端に連なる2つの庇部20とともに一連の金属部材により構成されている。
【0069】
2つの長尺部10が環状に組み合わされた状態において、2つの庇部20は重なる。また、2つの庇部20各々には、それらが重なった状態において連通する貫通孔であり、ネジ4が装着されるネジ孔21が形成されている。
【0070】
ブラケット本体部2は、2つの庇部20が重ねられることによって環状に形成される。また、重ねられた2つの庇部20は、ネジ4が装着されることによって合体した状態に保持される。これにより、2つの長尺部10各々の端部どうしが連結され、2つの長尺部10は環状に保持される。
【0071】
ブラケット2,4において、2つの庇部20及びネジ4は、2つの長尺部10各々の端部どうしを連結して2つの長尺部10を環状に保持する連結部の一例である。
【0072】
2つの庇部20各々におけるネジ孔21の内縁部には、ネジ4と螺合するネジ山が形成されていることが望ましい。これにより、ネジ4を庇部20に対して直接締め付けることが可能となり、2つの庇部20を合体させるためのナット部材が必要でなくなる。
【0073】
もちろん、2つの長尺部10を環状に保持する連結部が、貫通孔が形成された2つの庇部20、ネジ4及びネジ4が締め付けられるナット部材により構成されてもよい。この場合、ナット部材が、重なる2つの庇部20の一方に予め溶接などにより固着されていることも考えられる。
【0074】
図1に示されるように、2組のブラケット2,4各々は、2つの長尺部10と、2つの長尺部10の一端を繋ぐ中継部19と、2つの長尺部10の端部を連結する連結部20,4と、を備える。そして、2組のブラケット2,4各々は、金属布3における四方の外縁部のうちの第1の外縁部31及びその反対側の第2の外縁部32各々を電線9の周囲を囲む環状に保持する。
【0075】
<電磁シールド具の寸法>
図4に示されるように、本実施形態においては、2組のブラケット2,4各々における長尺部10の長さL1は、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34の長さL2よりも長い。
【0076】
図4に示されるような寸法構成を有する電磁シールド具1が採用される典型的な第1の場合としては、2組のブラケット2,4各々の固定先である2つの筐体8が近くに配置されているために、金属布3の長さL2が特に短い場合が考えられる。
【0077】
また、同様の寸法構成を有する電磁シールド具1が採用される典型的な第2の場合としては、ブラケット2,4の固定先である筐体8のシールド枠部81の幅が大きいため、それに合わせてブラケット2,4の長尺部10が長く形成されている場合が考えられる。
【0078】
<筐体に対する電磁シールド具の固定の構造>
次に、
図5及び
図6を参照しつつ、筐体8に対する電磁シールド具1の固定の構造について説明する。なお、
図5は、筐体8に取り付けられた状態のワイヤハーネス100の平面図である。
図6は、筐体8に取り付けられた状態のワイヤハーネス100の断面図である。
図6の断面図は、
図5に示されるII−II平面での断面図である。
【0079】
図5及び
図6に示されるように、ワイヤハーネス100の電線9は、金属製の筐体8の外部から筐体8の開口を経て筐体8内へ亘って配線される。また、筐体8における電線導入用の開口の縁には、その開口を取り囲む金属製のシールド枠部81が形成されている。
【0080】
図5及び
図6に示されるように、2組のブラケット2,4のうちの一方は、電線9の一方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定され、2組のブラケット2,4のうちの他方は、電線9の他方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定される。
【0081】
より具体的には、まず、開状態にされた2つのブラケット本体部2各々が、2つの筐体8各々のシールド枠部81の外側に被せられるとともに、同じく開状態(非筒状体)の金属布3が、電線9における2つの筐体8に亘る部分に被せられる。
【0082】
次に、2つのブラケット本体部2各々が、シールド枠部81の外側において閉状態にされる。これにより、2つのブラケット本体部2各々において、2つの長尺部10はシールド枠部81を挟み込み、金属布3は電線9の周囲を囲う筒状となる。このとき、2つの長尺部10の複数の突起11が、シールド枠部81の外側面に強く押し当たる。即ち、2つの長尺部10がシールド枠部81を挟み込む力は、複数の突起11の頭頂部分に集中する。
【0083】
最後に、2つのネジ4各々が、2つのブラケット本体部2各々において重なった2つの庇部20のネジ孔21に挿入され、2つの庇部20が、ネジ4によって重なった状態に保持される。これにより、2つのブラケット本体部2各々は、閉状態に保持され、シールド枠部81に固定される。
【0084】
2組のブラケット2,4各々が、2つの筐体8各々のシールド枠部81に固定された状態において、2つのブラケット本体部2各々と2つの筐体8各々とは電気的に接続される。そのため、2つのブラケット本体部2各々と接合された導電性の金属布3も、2つの筐体8各々に対して電気的に接続される。
【0085】
金属布3は、電線9の周囲を囲む状態で、筐体8と電気的に接続されることにより、電線9に向かうノイズ電磁波を遮蔽する。
【0086】
<効果>
電磁シールド具1において、2組のブラケット2,4各々を構成する2つの長尺部10は、金属製の筐体8におけるシールド枠部81に固定され、金属布3と筐体8との電気的接続を中継する。金属布3は、2組のブラケット2,4を介して筐体8と電気的に接続され、筐体接地の状態となる。
【0087】
電磁シールド具1において、導電材料からなる2つの長尺部10は、電線9の両側から組み合わされて環状に保持され、これにより、2つの長尺部10と接合された金属布3は、電線9の周囲を囲む筒状に形成される。
【0088】
即ち、電磁シールド具1は、予め筒状に形成された部材ではないため、電線9に対する後付けが可能である。より具体的には、電磁シールド具1は、端部にコネクタなどが取り付けられた後の電線9に対して装着されることが可能であるとともに、筐体8の外から内への配線が行われた後の電線9に対して装着されることも可能である。
【0089】
また、電磁シールド具1においては、電線9の周囲を囲うために過不足のない大きさの金属布3が採用されれば良い。そのため、電磁シールド具1の採用にあたり、配設スペース、重量及び製造コストの増大を伴うこともない。
【0090】
また、電磁シールド具1において、2組のブラケット2,4各々を構成する2つの長尺部10は、筐体8のシールド枠部81を挟み込んで環状をなす状態で、庇部20及びネジ4で構成される連結部により連結される。さらに、その連結部が、組み合わされた2つの長尺部10を環状に保持することにより、2つの長尺部10と接合された金属布3は、電線9の周囲を囲む筒状に保持される。
【0091】
即ち、2組のブラケット2,4は、金属布3を筒状に保持する役割と、金属布3と筐体8のシールド枠部81との電気的な接続を維持する役割とを果たす。従って、電磁シールド具1が採用された場合、従来の編組線及びかしめ金具の採用によって複数の部材が取り扱われる場合に比べ、部品の管理及び取り扱いの工数が簡素化される。
【0092】
また、金属布3が柔軟性を有するため、電磁シールド具1は、曲がった経路に沿う電線9の周囲を囲むこともできる。
【0093】
ところで、金属布3の表面は、編組線の表面と同様に、金属の細線により形成される微小な凹凸面であるため、摩擦抵抗が非常に小さい。そのため、金属布3は、筐体のシールド枠部81とかしめ金具などの他の固定部材との間に挟み込まれて固定されると、シールド枠部81から滑って外れやすい。
【0094】
一方、電磁シールド具1において、金属布3と2組のブラケット2,4の長尺部10とは予め接合されている。そのため、2組のブラケット2,4を、金属布3を介さずに、シールド枠部81に対して直接固定することが可能である。従って、電磁シールド具1が筐体8のシールド枠部81から外れるという不具合は生じにくい。
【0095】
また、電磁シールド具1においては、長尺部10の内側面に形成された複数の突起11の作用により、長尺部10とシールド枠部81との摩擦抵抗が高まり、ひいてはシールド枠部81に対するブラケット2,4の保持力が強まる。これにより、電磁シールド具1が筐体8のシールド枠部81から外れるという不具合の発生をさらに抑制できる。
【0096】
また、2組のブラケット2,4各々の固定先である2つの筐体8が近くに配置されている場合、
図4に示されるように、長尺部10の長さL1と、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34の長さL2とが、L1>L2の関係になりがちである。そのように作業スペースの余裕が小さい場合においても、電磁シールド具1は、筐体8への取り付け作業において金属布3の位置を電線9の長手方向における一方にずらすことを必要としないため、容易な作業により取り付け可能である。
【0097】
また、ブラケット2,4の固定先である筐体8のシールド枠部81の幅が大きいため、それに合わせて長尺部10の長さL1が長く、L1>L2の関係になる場合も考えられる。そのような場合においても、シールド枠部81に対して直接固定可能なブラケット2,4を備える電磁シールド具1が採用されれば、筐体8のシールド枠部81から外れにくいという効果がより顕著となる。
【0098】
また、電磁シールド具1においては、2組のブラケット2,4各々における2つの長尺部10は、中継部19とともに一連の部材で構成されている。そのため、電磁シールド具1が採用された場合、2つの長尺部10がそれぞれ別部材である場合よりも部品点数が減少する。そのため、筐体8への取り付けの工数を低減することができる。
【0099】
また、電磁シールド具1において、金属布3は、長尺部10の外側面に接合されるため、長尺部10と筐体8のシールド枠部81との間に挟まれることがない。そのため、金属布3の挟み込み防止のために、長尺部10において、シールド枠部81に接触する部分と、金属布3と接合される部分とが、分離して形成される必要はない。従って、長尺部10(ブラケット本体部2)の小型化が可能となる。
【0100】
<第2実施形態>
次に、
図7から
図9を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電磁シールド具1Aについて説明する。この電磁シールド具1Aは、
図1から
図6に示された電磁シールド具1と比較して、2つの長尺部10が別部材として構成されている点において異なる。
図7から
図9において、
図1から
図6に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Aにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
【0101】
図7は電磁シールド具1Aの取り付け前状態の正面図、
図8は電磁シールド具1Aの第1の取り付け後状態の正面図、
図9は電磁シールド具1Aの第2の取り付け後状態の正面図である。なお、
図7及び
図8において、電線9及び筐体8のシールド枠部81が仮想線(二点鎖線)で描かれている。同様に、
図9において、電線9が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0102】
電磁シールド具1Aは、金属布3と、2組のブラケット2A,4とを備えている。2組のブラケット2A,4各々は、2つのブラケット本体部2Aと2つのネジ4とにより構成されている。2つのブラケット本体部2A各々は、電線9を跨いで架け渡される半環状に形成された1つの長尺部10と、その両端各々に連なって形成された2つの庇部20と有する。
【0103】
即ち、電磁シールド具1Aは、1枚の金属布3と4つのブラケット本体部2Aとを備えている。また、電磁シールド具1Aにおいて、長尺部10各々は、それぞれ独立した部材である4つのブラケット本体部2A各々の一部として構成されている。また、電磁シールド具1Aにおいても、2つの長尺部10が金属布3の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で、長尺部10各々が金属布3と接合されている。
【0104】
より具体的には、2組のブラケット2A,4のうちの一方における2つの長尺部10は、金属布3の第1の外縁部31に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。また、2組のブラケット2A,4のうちの他方における2つの長尺部10は、金属布3の第2の外縁部32に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。金属布3と長尺部10とは、例えば、溶接により接合されている。
【0105】
電磁シールド具1Aにおいて、2つのブラケット本体部2Aが電線9の両側から組み合わされると、2つの長尺部10が環状に形成されるとともに、金属布3における2つのブラケット本体部2A各々と接合された部分の間の中間部35で折り返される。
【0106】
また、2つのブラケット本体部2Aは、2つの長尺部10が筐体8のシールド枠部81を挟み込む状態で組み合わされる。これにより、2つのブラケット本体部2と接合された金属布3は、第3の外縁部33及び第4の外縁部34が近接して筒状になる。
【0107】
図8に示されるように、2組のブラケット2A,4各々において、2つのブラケット本体部2Aは、筐体8のシールド枠部81を間に挟む状態で組み合わされる。これにより、2つの長尺部10はシールド枠部81を挟み込み、金属布3は電線9の周囲を囲う筒状となる。なお、複数の突起11の作用は前述した通りである。
【0108】
さらに、4つのネジ4各々が、二対のブラケット本体部2Aの両端各々において重なった2つの庇部20のネジ孔21に挿入され、2つの庇部20が、ネジ4によって重なった状態に保持される。これにより、二対のブラケット本体部2A各々は、シールド枠部81を間に挟んで環状に保持され、シールド枠部81に固定される。
【0109】
ところで、電磁シールド具1Aは、通常は
図8に示される形態でシールド枠部81に固定されるが、例えば、
図9に示されるように、他の形態で筐体8の一部に固定されることも考えられる。
【0110】
図9に示される例では、電線9の両側から組み合わされた一対のブラケット本体部2Aは、その両端の2箇所の庇部20において、筐体8から張り出して形成された支持板82に対してネジ4により固定される。2つの長尺部10を連結する連結構造が、ブラケット本体部2Aにおける両端の2箇所に設けられているため、電磁シールド具1Aは、
図9に示されるような形態で固定されることも可能である。但し、この場合、長尺部10の突起11は必要ない。
【0111】
<第3実施形態>
次に、
図10から
図12を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る電磁シールド具1B及びそれを備えるワイヤハーネス100Bについて説明する。この電磁シールド具1Bは、
図1から
図6に示された電磁シールド具1と比較して、2つの長尺部10の一方の端部の構造が異なる。
図10から
図12において、
図1から
図6に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Bにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
【0112】
図10は電磁シールド具1Bの正面図、
図11は電磁シールド具1Bの側面図、
図12はワイヤハーネス100Bの側面図である。なお、
図10において、電線9及び筐体8のシールド枠部81が仮想線(二点鎖線)で描かれている。同様に、
図11において、電線9が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0113】
電磁シールド具1Bは、電磁シールド具1と同様に2組のブラケット2B,4を備えている。2組のブラケット2B,4各々において、2つの長尺部10のうちの一方の長尺部10の端部には、庇部20よりも他方の長尺部10側へ張り出して、他方の長尺部10の端部に重なる延長部12が形成されている。そして、金属布3は、長尺部10の延長部12まで亘る大きさで形成されており、金属布3の第1の外縁部31及び第2の外縁部32各々は、長尺部10の延長部12に亘る範囲において長尺部10と接合されている。
【0114】
そして、2組のブラケット2B,4各々において、庇部20とネジ4とにより構成される連結部は、2つの長尺部10各々における金属布3と接合された両端部が重なる状態で2つの長尺部10を連結する。ここで、2つの長尺部10の両端部の一方は、延長部12である。
【0115】
図12に示されるように、電磁シールド具1Bにおいて、金属布3は、電線9の周囲を囲む方向の両端部をなす第3の外縁部33及び第4の外縁部34において重なり、ほぼ隙間のない筒状に保持される。そのため、ノイズ電磁波がより確実に遮蔽され、安定したシールド性能が得られる。
【0116】
<第4実施形態>
次に、
図13及び
図14を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係る電磁シールド具1C及びそれを備えるワイヤハーネス100Cについて説明する。この電磁シールド具1Cは、
図1から
図6に示された電磁シールド具1に対し、金属布接合部材5が追加された構成を有している。
図13及び
図14において、
図1から
図6に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Cにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
【0117】
図13は電磁シールド具1Cの側面図、
図14は電磁シールド具1Cと電線9とを備えるワイヤハーネス100Cの側面図である。なお、
図13において、電線9が仮想線(二点鎖線)で描かれている。なお、
図13は、開状態の電磁シールド具1Cを表している。
【0118】
電磁シールド具1Cが備える金属布接合部材5は、金属布3における第3の外縁部33及び第4の外縁部34各々と溶接により接合される板状の金属部材である。開状態の電磁シールド具1Cにおいて、金属布接合部材5は、金属布3における第3の外縁部33及び第4の外縁部34のうちのいずれか一方に接合されている。そして、電磁シールド具1Cが、閉状態にされて電線9及び筐体8のシールド枠部81に取り付けられた後に、金属布接合部材5と、金属布3における第3の外縁部33及び第4の外縁部34のうちの残りの一方とが溶接により接合される。
【0119】
また、金属布3の第3の外縁部33は、金属布接合部材5の一方の面に接合され、金属布3の第4の外縁部34は、金属布接合部材5の他方の面に接合される。従って、金属布3における第3の外縁部33及び第4の外縁部34の両方が金属布接合部材5に接合された状態において、第3の外縁部33及び第4の外縁部34は重なった状態で保持される。
【0120】
金属布3どうしを溶接などによって接合することは難しいが、金属製の金属布接合部材5が、金属布3における2箇所の縁部の間に介在することにより、金属布3における2箇所の縁部をそれらが重なる状態で溶接により接合することが容易となる。
【0121】
電磁シールド具1Cが採用されることにより、金属布3は、金属布接合部材5と併せて隙間のない筒状に形成される。そのため、ノイズ電磁波がより確実に遮蔽され、安定したシールド性能が得られる。
【0122】
また、複数の金属布接合部材5が、金属布3における第3の外縁部33及び第4の外縁部34に対して間隔を空けて接合されているため、金属布3の柔軟性が損なわれない。そのため、電磁シールド具1Cは、曲がった経路に沿う電線9の周囲を囲むこともできる。
【0123】
<第5実施形態>
次に、
図15〜19を参照しつつ、本発明の第5実施形態に係る電磁シールド具1D及びそれを備えるワイヤハーネス100Dについて説明する。この電磁シールド具1Dは、
図7〜9に示された電磁シールド具1Aと比較して、ブラケット本体部の長尺部と金属布との接合の構造が異なる。また、ワイヤハーネス100Dは、電磁シールド具1Dと複数の電線9とを備え、さらに、複数の電線9の端部を一定の位置関係に保持する電線保持部材91を備えている。
図15〜19において、
図1〜14に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Dにおける電磁シールド具1Aと異なる点についてのみ説明する。
【0124】
図15は電磁シールド具1Dの平面図、
図16は電磁シールド具1Dにおける長尺部と金属布との接合部(圧着部)の断面図、
図17は電磁シールド具1Dの正面図である。ここで、
図16は、
図15におけるII−II断面の図である。また、
図18はワイヤハーネス100Dの正面図、
図19はワイヤハーネス100Dの平面図である。なお、
図17において、電線9及び電線保持部材91が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0125】
図15に示されるように、電磁シールド具1Dは、電磁シールド具1,1Aと同様に、金属布3と、2組のブラケット2C,4とを備えている。2組のブラケット2C,4各々は、2つのブラケット本体部2Cと2つのネジ4とにより構成されている。2つのブラケット本体部2C各々は、電線9を跨いで架け渡される半環状に形成された1つの長尺部10Aと、その両端各々に連なって形成された2つの庇部20と有する。
【0126】
即ち、電磁シールド具1Dは、1枚の金属布3と4つのブラケット本体部2Cとを備えている。また、電磁シールド具1Cにおいて、長尺部10A各々は、それぞれ独立した部材である4つのブラケット本体部2C各々の一部として構成されている。また、電磁シールド具1Cにおいても、2つの長尺部10Aが金属布3の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で、長尺部10A各々が金属布3と接合されている。
【0127】
より具体的には、2組のブラケット2C,4のうちの一方における2つの長尺部10Aは、金属布3の第1の外縁部31に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。また、2組のブラケット2A,4のうちの他方における2つの長尺部10Aは、金属布3の第2の外縁部32に沿って直列に並ぶ状態で金属布3に接合されている。
【0128】
ブラケット本体部2Cにおいて、長尺部10A各々は、金属布3の外縁部に圧着されることによって金属布3と接合されている。即ち、2組のブラケット本体部2Cのうちの一方における2つの長尺部10A各々は、金属布3における第1の外縁部31に圧着されることによって金属布3と接合されている。同様に、2組のブラケット本体部2Cのうちの他方における2つの長尺部10A各々は、金属布3における第3の外縁部33に圧着されることによって金属布3と接合されている。
【0129】
長尺部10A各々は、金属布3の外縁部に圧着されるための以下の構造を有している。即ち、
図15,16に示されるように、長尺部10A各々は、基部13とその基部13に連なった折り返し部14とを有している。
【0130】
長尺部10Aの基部13は、金属布3の外縁部(第1の外縁部31又は第2の外縁部32)に沿う部分である。基部13に連なった折り返し部14は、基部13に重ねられて折り返され、基部13との間に金属布3の外縁部を挟み込む部分である。長尺部10Aは、基部13と折り返し部14との間に金属布3の外縁部を挟み込むことにより金属布3の外縁部に圧着されている。なお、
図15において、折り返される前の折り返し部14が仮想線で描かれている。
【0131】
また、
図16に示されるように、長尺部10A各々の金属布3に圧着された部分における金属布3に接する面である第一主面101と端面103との境界部分は面取り部104である。この面取り部104の表面は、第一主面101と端面103との境界をなし、外側へ凸状の湾曲面である。なお、長尺部10Aが金属布3に圧着された状態において、長尺部10Aの第一主面101は金属布3に接する内側面であり、第一主面101の反対側の第二主面102は金属布3に対し反対側の外側面である。
【0132】
例えば、長尺部10Aの元となる板材が、板状の金属の母材に対する打ち抜き加工によって得られる場合、長尺部10Aの第一主面101は、打ち抜き加工においてパンチ刃が当てられる側の面であり、長尺部10Aの第二主面102は、打ち抜き加工においてダイにより支持される面である。この場合、打ち抜き加工により生じるバリ105は、第二主面102と端面103との境界部分に形成され、そのようなバリ105は金属布3の損傷の原因とならない。また、パンチ刃及びダイの形状が工夫されることにより、特別な面取り加工を要することなく面取り部104を形成することも可能となる。
【0133】
続いて、
図18,19を参照しつつ、電磁シールド具1Cを備えるワイヤハーネス100Dについて説明する。ワイヤハーネス100Dにおいて、電線保持部材91は、非導電性材料からなり、複数の電線9の端部を一定の位置関係に保持するとともに、複数の電線9相互間を電気的に絶縁する部材である。
【0134】
例えば、電線保持部材91は、非導電性の合成樹脂の部材である。この場合、電線保持部材91が、並列配置された複数の電線9の端部をインサート部とするインサート成形により成形された熱可塑性樹脂の部材であることが考えられる。電線保持部材91は、筐体に形成された開口に嵌め入れられ、これにより、筐体の開口における電線9と筐体との間の隙間が塞がれる。
【0135】
図18に示されるように、ワイヤハーネス100Dの電磁シールド具1Dは、筐体8の一部に固定される。
図18に示される例では、電線9の両側から組み合わされた一対のブラケット本体部2Cは、その両端の2箇所の庇部20において、筐体8から張り出して形成された支持板82に対してネジ4により固定されている。2つの長尺部10を連結する連結構造が、ブラケット本体部2Cにおける両端の2箇所に設けられているため、電磁シールド具1Dは、
図18に示されるような形態で固定されることが可能である。
【0136】
また、
図19に示されるように、ワイヤハーネス100Dの電磁シールド具1Dにおいても、
図4に示される電磁シールド具1と同様に、2組のブラケット2C,4各々における長尺部10Aの長さL1が、金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34の長さL2よりも長いことが考えられる。
【0137】
電磁シールド具1Dが採用された場合、電磁シールド具1,1Aが採用される場合と同様の効果が得られる。また、電磁シールド具1Dにおいては、長尺部10A各々は、金属布3の外縁部に圧着されることによって金属布3と接合されている。そのため、薄い金属布3が溶接によって損傷する恐れを回避することができる。従って、薄い金属布3の損傷を防ぎつつ、長尺部10Aと金属布3とを接合することができる。
【0138】
また、電磁シールド具1Dにおいては、長尺部10A各々の金属布3に圧着された部分における金属布3に接する第一主面101と端面103との境界部分は面取り部104である。これにより、金属布3が長尺部の縁の角に擦れて破損することが防止される。
【0139】
<第6実施形態>
次に、
図20〜22を参照しつつ、本発明の第6実施形態に係る電磁シールド具1E及びそれを備えるワイヤハーネス100Eについて説明する。この電磁シールド具1Eは、
図15〜19に示された電磁シールド具1Dに長尺部の一部の要素が追加された構造を有している。
図20〜22において、
図1〜19に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Eにおける電磁シールド具1Dと異なる点についてのみ説明する。
【0140】
図20は電磁シールド具1Eの平面図、
図21は電磁シールド具1Eの正面図である。また、
図22はワイヤハーネス100Eの正面図である。なお、
図21において、電線9及び電線保持部材91が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0141】
図20,21に示されるように、電磁シールド具1Eは、電磁シールド具1,1A,1Eと同様に、金属布3と、2組のブラケット2D,4とを備えている。2組のブラケット2D,4各々は、2つのブラケット本体部2Dと2つのネジ4とにより構成されている。2つのブラケット本体部2D各々は、電線9を跨いで架け渡される半環状に形成された1つの長尺部10Bと、その両端各々に連なって形成された2つの庇部20と有する。
【0142】
即ち、電磁シールド具1Eは、1枚の金属布3と4つのブラケット本体部2Dとを備えている。また、電磁シールド具1Eにおいて、長尺部10B各々は、それぞれ独立した部材である4つのブラケット本体部2D各々の一部として構成されている。また、電磁シールド具1Eにおいても、2つの長尺部10Bが金属布3の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で、長尺部10B各々が金属布3に対して圧着により接合されている。
【0143】
また、長尺部10B各々は、1つの基部13とその基部13に連なった複数の折り返し部14とを有している。
図20〜22に示される例では、長尺部10B各々は、間隔を空けて形成された2つの折り返し部14を有している。
【0144】
また、2組のブラケット2D,4各々における2つの長尺部10B各々に、それらが相互に対向する方向へ起立した位置決め用の起立部15が形成されている。
図20〜22に示される例では、位置決め用の起立部15は、長尺部10Bにおける2つの折り返し部14の間の位置に形成されている。また、
図20〜22に示される例では、起立部15は、板状の長尺部10Bの一部が折り曲げられた部分である。
【0145】
図22に示されるように、ワイヤハーネス100Eも、ワイヤハーネス100Dと同様に複数の電線9と電磁シールド具1Eと電線保持部材91とを備えている。
図22に示される例では、ワイヤハーネス100Eは6本の電線9を備えており、これら6本の電線9は、第1の三相交流電流を伝送する3本の電線9と第2の三相交流電流を伝送する3本の電線9とを含む。
【0146】
また、
図22に示されるように、起立部15は、ブラケット本体部2Dが接続される相手部材である電線保持部材91に形成された位置決め用の孔911に嵌め入れられる。これにより、ブラケット本体部2Dと電線保持部材91とを正しい位置関係で接続することが容易となる。
図22に示される例では、位置決め用の孔911は、電線保持部材91における、第1の三相交流電流を伝送する3本の電線9を保持する部分と第2の三相交流電流を伝送する3本の電線9部分との間に形成されている。
【0147】
<その他>
以上に示された各実施形態において、相互に組み合わされる2つの長尺部10が同じ形状で形成されているが、相互に組み合わされる2つの長尺部10が異なる形状で形成されることも考えられる。
【0148】
また、電磁シールド具1,1A,1B,1C,1D,1Eにおいて、長尺部10,10A,10Bの長さL1と金属布3の第3の外縁部33及び第4の外縁部34の長さL2との関係は、必ずしもL1>L2である場合に限られず、L1<L2である場合、或いはL1=L2である場合も考えられる。
【0149】
なお、本発明に係る電磁シールド具及びワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態を自由に組み合わせること、或いは実施形態を適宜、変形又は一部省略することによって構成されることも可能である。