(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942721
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
B60R16/02 645Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-201688(P2012-201688)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-54951(P2014-54951A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田原 秀哲
(72)【発明者】
【氏名】石原 章生
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−287576(JP,A)
【文献】
特開平02−183609(JP,A)
【文献】
特開2004−103396(JP,A)
【文献】
特開平11−241646(JP,A)
【文献】
特開2004−295702(JP,A)
【文献】
特開2002−187504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1導線と、夫々の一端が導体に接続される複数の第2導線と、夫々が前記第1導線の一端、及び、前記第2導線の他端に各別に接続してあり、前記第1導線を介してバッテリによって給電される複数の負荷とを備える電源装置において、
前記複数の負荷の中の一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線の間に接続されるコンデンサを備え、
前記一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線は、前記一の負荷及びコンデンサの間では並置されており、他の領域では並置されていないこと
を特徴とする電源装置。
【請求項2】
複数の第1導線と、夫々の一端が導体に接続される複数の第2導線と、夫々が前記第1導線の一端、及び、第2導線の他端夫々に接続してあり、前記第1導線を介してバッテリによって給電される複数の負荷とを備える電源装置において、
前記複数の負荷の中の一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線の間に接続されるコンデンサを備え、
前記一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線は、前記一の負荷及びコンデンサの間では撚り合わされており、他の領域では撚り合されていないこと
を特徴とする電源装置。
【請求項3】
前記バッテリに接続される第1端と、
前記一の負荷に接続してある前記第1導線の他端に接続される第2端と、
前記一の負荷を除く他の一又は複数の負荷夫々に接続してある一又は複数の前記第1導線の他端に接続される第3端と
を有する第3導線を備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリから負荷に給電する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両にはバッテリから負荷に給電する電源装置が搭載されており、電源装置が備える負荷には、給電によって動作し、動作時に雑音を発生する負荷、例えばモータが含まれている。バッテリ及び負荷は導線によって接続されており、負荷が発生した雑音に係る電流(以下では雑音電流と記載する)は、負荷の一方の端子から電源装置内を還流して、負荷の他方の端子に戻る。
【0003】
このように、雑音電流が電源装置内を還流した場合、雑音電流が有する周波数成分と同様の周波数成分を有する電磁波が輻射される。電源装置周辺にあるアンテナは、輻射された電磁波を無線信号と共に受信する。ここで、該電磁波を構成する周波数帯域と無線信号を構成する周波数帯域とが重なる場合、輻射された電磁波は無線信号に対して雑音として作用し、アンテナが受信した無線信号に基づいて動作する電気機器の動作に問題が生じる。
【0004】
例えば、アンテナが携帯機器から受信した無線信号に基づいて、携帯機器を認証してドアの開錠又は施錠を行う電気機器ついては、無線信号に雑音が含まれているために、携帯機器が正しく認証されず、ドアの開錠又は施錠が適正に行われない虞がある。
【0005】
また、アンテナが受信した無線信号に係るラジオ放送に基づいて音声を出力する電気機器については、無線信号に雑音が含まれているために、雑音が重畳された音声を出力する虞がある。
このため、雑音電流の還流によって輻射される電磁波の強度を低減し、無線信号に含まれる雑音を低減する必要がある。
【0006】
特許文献1には雑音電流の還流によって輻射される電磁波の強度を低減する電源装置が開示されている。この電源装置では、バッテリの正極端子、及び、負荷の一方の端子を接続している導線と、バッテリの負極端子、及び、負荷の他方の端子を接続している導線とを並置することによって、輻射される電磁波の強度を低減している。
【0007】
図4は、雑音電流の還流によって輻射される電磁波の強度の低減を説明するための説明図である。
図4には、バッテリ80の正極端子、及び、動作時に雑音を発生する負荷81の一方の端子の間に導線82が接続してあり、バッテリ80の負極端子、及び、負荷81の他方の端子間に導線83が接続してある電源装置8が示されている。電源装置8では導線82,83が並置されている。
【0008】
以上のように構成された電源装置8では、負荷81の一方の端子から雑音電流が導線82、バッテリ80及び導線83の順に流れ、負荷81の他方の端子に戻るため、導線82,83夫々に流れる雑音電流の量は同一であり、導線83に流れる雑音電流の方向は、導線82に流れる雑音電流の方向と反対である。
【0009】
このため、雑音電流が流れることによって導線82の周囲に発生する磁界M8の方向は、導線82,83間の領域を除く他の領域では、雑音電流が流れることによって導線83の周囲に発生する磁界M9の方向と反対方向である。更に、導線82,83に流れる雑音電流の量が同一であるため、磁界M8,M9の強度は略同じである。これにより、磁界M8,M9の大部分が打ち消し合い、雑音電流の還流によって輻射される電磁波の強度は低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−269579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、車両に搭載される電源装置では、通常、1つのバッテリが複数の負荷に給電している。
図5は、従来の電源装置の要部構成を示す回路図である。この電源装置9では、
図5に示すように、負荷90,91,92夫々の一方の端子は、ヒューズF7,F8のいずれか1つを介してバッテリ93の正極端子に接続してある。また、負荷90,91,92夫々の他方の端子、及び、バッテリ93の負極端子は、導体94、例えば車両のボディに接続してある。ヒューズF7,F8は電源ボックス95に収容されている。電源ボックス95内では、導線が分岐しており、バッテリ93の正極端子は、電源ボックス95を介して負荷90,91,92夫々に接続している。
【0012】
以上のように構成された電源装置9では、電源ボックス95内で導線が分岐しており、バッテリ93の負極端子が導体94を介して負荷90,91,92夫々の他方の端子と接続してある。このため、負荷90,91,92のいずれか1つが雑音電流を流した場合に雑音電流の量が同じで雑音電流の方向が互いに反対となる一対の導線は設けられていない。
【0013】
負荷90,91,92の中で動作時に雑音を発生する負荷について、
図4に示すように、一方の端子をバッテリ93の正極端子に、分岐していない導線で直接に接続し、他方の端子をバッテリ93の負極端子に、分岐していない導線で直接に接続し、雑音を発生する負荷に接続してある2つの導線を並置させることも可能である。これにより、雑音電流の還流によって輻射する電磁波の強度を低減することができる。
【0014】
しかしながら、以上のような接続を行った場合、導線の分岐ができず、更には、導体を用いた接続を行うことができないため、多数の導線が必要であり、電源装置が大型化するという問題点がある。
【0015】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少ない数の導線で構成され、雑音電流の還流によって輻射する電磁波の強度が弱い小型の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る電源装置は、複数の第1導線と、夫々の一端が導体に接続される複数の第2導線と、夫々が前記第1導線の一端、及び、前記第2導線の他端に各別に接続してあり、前記第1導線を介してバッテリによって給電される複数の負荷とを備える電源装置において、前記複数の負荷の中の一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線の間に接続されるコンデンサを備え、
前記一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線は、前記一の負荷及びコンデンサの間
では並置されて
おり、他の領域では並置されていないことを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、複数の負荷夫々は第1導線の一端と、第2導線の他端に接続しており、第1導線を介してバッテリによって給電される。第2導線の一端は導体、例えば、車両のボディに接続してある。複数の負荷の中の一の負荷、例えば、動作時に雑音電流を発生するモータに接続してある第1及び第2導線の間にコンデンサが接続してあ
る。一の負荷に接続してある第1及び第2導線は
、一の負荷及びコンデンサの間では並置されて
おり、他の領域では並置されていない。
【0018】
このため、雑音電流、より詳細には、雑音電流の高周波成分は、一の負荷の一方の端子から第1導線、コンデンサ及び第2導線に順に流れ、一の負荷の他方の端子に戻る。雑音電流の高周波成分については、第1及び第2導線に流れる電流の量が略同じで、電流が流れる方向が互いに反対である。
【0019】
従って、雑音電流の高周波成分が第1導線に流れることによって発生する磁界は、雑音電流の高周波成分が第2導線に流れることによって発生する磁界と、第1及び第2導線間の領域を除く他の領域で打ち消し合う。このため、雑音電流の還流によって輻射する電磁波の強度は弱い。
【0020】
また、第1及び第2導線間にコンデンサを接続することによって、雑音電流の高周波成分を還流させているため、一の負荷に接続してある第1及び第2導線夫々を直接にバッテリの一方及び他方の端子に接続する必要がない。従って、接続に用いられる導線の本数が少なく、装置が小型である。
【0021】
本発明に係る電源装置は、複数の第1導線と、夫々の一端が導体に接続される複数の第2導線と、夫々が前記第1導線の一端、及び、第2導線の他端夫々に接続してあり、前記第1導線を介してバッテリによって給電される複数の負荷とを備える電源装置において、前記複数の負荷の中の一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線の間に接続されるコンデンサを備え、
前記一の負荷に接続してある前記第1及び第2導線は、前記一の負荷及びコンデンサの間
では撚り合わされて
おり、他の領域では撚り合されていないことを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、複数の負荷夫々は第1導線の一端と、第2導線の他端に接続しており、第1導線を介してバッテリによって給電される。第2導線の一端は導体、例えば、車両のボディに接続してある。複数の負荷の中の一の負荷、例えば、動作時に雑音電流を発生するモータに接続してある第1及び第2導線の間にコンデンサが接続してあ
る。一の負荷に接続してある第1及び第2導線は
、一の負荷及びコンデンサの間では撚り合わされて
おり、他の領域では撚り合されていない。
【0023】
このため、雑音電流、より詳細には、雑音電流の高周波成分は、一の負荷の一方の端子から第1導線、コンデンサ及び第2導線の順に流れ、一の負荷の他方の端子に戻る。雑音電流の高周波成分については、第1及び第2導線に流れる電流の量が略同じである。
【0024】
また、撚り合いによって構成される複数の環夫々では、雑音電流の高周波成分が第1及び第2導線を流れることによって磁界が発生する。一の環から発生する磁界の強度は、一の環に隣り合う環から発生する磁界の強度と略同じであり、一の環から発生する磁界の方向は、一の環に隣り合う環から発生する磁界の方向と反対である。
【0025】
従って、一の環から発生する磁界は、一の環に隣り合う環から発生する磁界と打消し合う。このため、雑音電流の還流によって輻射する電磁波の強度は弱い。
【0026】
また、第1及び第2導線間にコンデンサを接続することによって、雑音電流の高周波成分を還流させているため、一の負荷に接続してある第1及び第2導線夫々を直接にバッテリの一方及び他方の端子に接続する必要がない。従って、接続に用いられる導線の本数が少なく、装置が小型である。
【0027】
本発明に係る電源装置は、前記バッテリに接続される第1端と、前記一の負荷に接続してある前記第1導線の他端に接続される第2端と、前記一の負荷を除く他の一又は複数の負荷夫々に接続してある一又は複数の前記第1導線の他端に接続される第3端とを有する第3導線を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明にあっては、第3導線は第1端、第2端及び第3端を有し、第1端にはバッテリが、第2端には一の負荷に接続してある第1導線の他端が、第3端には、一の負荷を除く他の一又は複数の負荷夫々に接続してある一又は複数の第1導線の他端が接続される。
【0029】
このため、バッテリは、一の負荷と、他の一又は複数の負荷とに各別に給電する。従って、一の負荷が発生した雑音に係る電流は、一の負荷の一方の端子から、他の一又は複数の負荷に流れず、バッテリを経由して一の負荷の他方の端子に戻る。従って、一の負荷が発生した雑音が他の負荷に影響を及ぼすことがない。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、少ない数の導線で構成され、雑音電流の還流によって輻射する電磁波の強度が弱い小型の電源装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施の形態1に係る電源装置の要部構成を示す回路図である。
【
図2】車両における電源装置の各構成部の配置を説明するための説明図である。
【
図3】実施の形態2に係る電源装置の要部構成を示す回路図である。
【
図4】雑音電流の還流によって輻射される電磁波の強度の低減を説明するための説明図である。
【
図5】従来の電源装置の要部構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電源装置の要部構成を示す回路図であり、
図2は、車両における電源装置の各構成部の配置を説明するための説明図である。この電源装置1は、
図2に示すように、車両2に好適に搭載され、負荷としてモータ3及びECU(Electronic Control Unit)40,41を備える。モータ3は、パワーウィンドウを開閉するモータ、又は、ワイパーを駆動するモータ等であり、車両2の前方右側に配置されている。ECU40,41夫々は、図示しないエンジンの動作を制御するECU、又は、メータパネル若しくはドア等の電装品の動作を制御するECU等であり、車両2の中央部に配置されている。モータ3及びECU40,41を含む複数の負荷は、特許請求の範囲における複数の負荷に該当する。
【0033】
電源装置1は、更に、導線3a,3b,40a,40b,41a,41b,50,51、バッテリ5、コンデンサC1、スイッチS1及びヒューズF1,F2,F3を備える。第1導線として機能する導線3a,40a,41a夫々の一端は、モータ3及びECU40,41の一方の端子に接続してある。第2導線として機能する導線3b,40b,41b夫々の一端は導体6に接続される。導線3b,40b,41b夫々の他端は、モータ3及びECU40,41の他方の端子に接続してある。
【0034】
一の負荷に該当するモータ3に接続してある導線3a,3bの間にコンデンサC1は接続され、モータ3及びコンデンサC1の間に接続してある導線3a,3bは並置されている。導線3aの他端は、スイッチS1の一方の端子に接続してあり、スイッチS1の他方の端子はヒューズF1の一方の端子に接続してある。導線40a,41a夫々の他端はヒューズF2,F3の一方の端子に接続してある。
【0035】
第3導線として機能する導線50は、第1端50a、第2端50b及び第3端50cを有し、第1端50aはバッテリ5の正極端子に、第2端50bはヒューズF1の他方の端子に、第3端50cはヒューズF2,F3夫々の他方の端子に接続する。バッテリ5の負極端子は、導線51によって導体6に接続してある。
なお、分岐してある導線50については、1つの直線状の導線における両端間の接続ノードに、他の直線状の導線の一端を接続することによって作成してもよい。
【0036】
ヒューズF1、スイッチS1及びコンデンサC1は電源ボックス30内に収容してあり、ヒューズF2,F3は電源ボックス42内に収容してある。導線50の第3端50cは、電源ボックス42内でヒューズF2,F3夫々の他方の端子に接続してある。
【0037】
ECU40,41夫々は、導線40a,41aを介してバッテリ5によって給電され、モータ3は、スイッチS1がオンである場合に、導線3aを介してバッテリ5によって給電される。
【0038】
モータ3は動作時に雑音を発生する負荷である。例えば、モータ3がブラシ付のDC(Direct Current)モータである場合、モータ3が回転して整流子が切替わるときに、雑音として作用する突発的な電流が発生し、この雑音に係る電流、即ち、雑音電流がモータ3の一方の端子から流れる。
【0039】
雑音電流の高周波成分は、
図1の破線で示すように、モータ3の一方の端子から、導線3a、コンデンサC1及び導線3bの順に流れ、モータ3の他方の端子に戻る。このため、雑音電流の高周波成分については、導線3aを流れる電流の量と、導線3bを流れる電流の量とは略同一であり、導線3aを流れる電流の方向は、導線3bを流れる電流の方向と反対である。
【0040】
従って、導線3aに雑音電流の高周波成分が流れることによって発生する磁界M1の方向は、導線3a,3b間の領域を除く他の領域において、導線3bに雑音電流の高周波成分が流れることによって発生する磁界M2の方向と反対であり、太線で示されている磁界M1,M2の強度は略同じである。これにより、磁界M1,M2は、導線3a,3b間の領域を除く他の領域において互いに打ち消し合う。このため、雑音電流の還流によって発生する電磁波の強度は弱い。
【0041】
従って、雑音電流の高周波成分の還流によって、該高周波成分と同様の周波数成分を有する電磁波は輻射するが、輻射される電磁波の強度は弱い。これにより、雑音電流の高周波成分と同様の周波数成分を有する無線信号が、雑音電流の還流によって輻射された電磁波に干渉されることは殆どなく、無線信号は電源装置1の近傍に配してある図示しないアンテナに正しく受信される。
【0042】
モータ3、導線3a、コンデンサC1及び導線3bで構成される閉回路を還流する雑音電流の高周波成分は、コンデンサC1の容量に依存し、コンデンサC1の容量は、電源装置1の周辺にある図示しないアンテナが受信する無線信号の周波数に応じて適宜決定される。
【0043】
以上のように、導線3a,3bの間にコンデンサC1を接続することによって、雑音電流の高周波成分を還流させている。このため、モータ3の一方の端子、及び、バッテリ5の正極端子を、分岐がない導線で直接に接続し、モータ3の他方の端子、及び、バッテリ5の負極端子を、分岐がない導線で直接に接続する必要がない。従って、電源装置1内での各構成部の接続に用いられる導線の本数は少なく、電源装置1は小型である。
【0044】
なお、導線3a,3bの間隔は短い程、磁界M1,M2が互いに打消し合う量が多く、雑音電流の高周波成分の還流によって輻射される電磁波の強度は弱い。また、コンデンサC1及びモータ3間の導線3a,3b夫々の距離の差は短い程、好ましい。ハーネスを用いて、モータ3、ECU40,41及びバッテリ5を接続する場合、導線3a,3bは同一のハーネス内に含まれていることが好ましい。
【0045】
導線50については、第1端50aはバッテリ5の正極端子に接続され、第2端50bはモータ3に接続してある導線3aの他端に接続され、第3端50cはECU40,41夫々に接続してある導線40a,41aの他端にヒューズF2,F3を介して接続される。バッテリ5は、電源ボックス30を介してモータ3に給電し、電源ボックス42を介してモータ3を除く他の負荷であるECU40,41夫々に給電する。
【0046】
このように、電源装置1には、バッテリ5がモータ3と、ECU40,41からなる負荷群とに各別に給電するように給電経路が設けられている。
ここで、電流がヒューズF1の他方の端子からバッテリ5を介して導体6に流れる経路のインピーダンスは、電流がヒューズF1の他方の端子から電源ボックス42を介して導体6に流れる経路のインピーダンスよりも小さい。
【0047】
このため、モータ3から流れた雑音電流の低周波成分は、スイッチS1、ヒューズF1及びバッテリ5を介して導体6に流れ、電源ボックス42を介してECU40,41に流れることはない。導体6に流れた雑音電流の低周波成分は導線3bを介してモータ3の他方の端子に戻る。
【0048】
従って、モータ3が発生した雑音に係る電流の低周波成分は、モータ3の一方の端子から、ECU40,41に流れず、バッテリ5を経由してモータ3の他方の端子に戻る。このため、電源ボックス30に接続してあるモータ3が発生した雑音が、電源ボックス42に接続してあるECU40,41に影響を及ぼすことはない。
【0049】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係る電源装置の要部構成を示す回路図である。この電源装置7は、実施の形態1に係る電源装置1と比較して、モータ3の両端子夫々に接続する導線3a,3bの接続形態が異なる。
【0050】
実施の形態2では、導線3a,3bの接続形態について説明し、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。なお、実施の形態2における各構成部の接続関係は、実施の形態1における各構成部の接続関係と同様である。
【0051】
実施の形態1における電源装置1では導線3a,3bは並置されているのに対して、実施の形態2における電源装置7では、モータ3及びコンデンサC1の間を接続してある導線3a,3bは
図3に示すように、撚り合わされている。モータ3が発生した雑音に係る電流、即ち、雑音電流の高周波成分は、
図3の破線で示すように、モータ3の一方の端子から導線3a,コンデンサC1及び導線3bの順に流れ、モータ3の他方の端子に戻る。
【0052】
従って、雑音電流の高周波成分については、導線3a,3bに流れる電流の量は略同じである。また、導線3a,3bの撚り合いによって構成される複数の環夫々について、一の環において流れる電流の方向と、一の環に隣り合う環において流れる電流の方向とは逆である。例えば、一の環において電流が右回りに流れる場合、一の環に隣り合う環では電流が左回りに流れる。導線3a,3bの撚り合いによって構成される複数の環に雑音電流の高周波成分が流れた場合に発生する各環の磁界が、
図3では太線で示されている。
【0053】
以上のように構成された電源装置7では、一の環から発生する磁界の強度は、一の環に隣り合う環から発生する磁界の強度と略同じであり、一の環から発生する磁界の方向は、一の環に隣り合う環から発生する磁界の方向と反対である。従って、一の環から発生する磁界は、一の環に隣り合う環から発生する磁界と打ち消し合う。このため、雑音電流の還流によって輻射する電磁波の強度は弱い。
【0054】
モータ3、導線3a、コンデンサC1及び導線3bで構成される閉回路を還流する雑音電流の高周波成分は、実施の形態1と同様に、コンデンサC1の容量に依存し、コンデンサC1の容量は、電源装置1の周辺にある図示しないアンテナが受信する無線信号の周波数に応じて適宜決定される。
【0055】
電源装置7では、実施の形態1における電源装置1と同様に、導線3a,3bの間にコンデンサC1を接続することによって、雑音電流の高周波成分を還流させている。このため、モータ3の一方の端子、及び、バッテリ5の正極端子を、分岐がない導線で直接に接続し、モータ3の他方の端子、及び、バッテリ5の負極端子を、分岐がない導線で直接に接続する必要がない。従って、電源装置1内での各構成部の接続に用いられる導線の本数は少なく、電源装置7は小型である。
【0056】
なお、電源装置7では、実施の形態1における電源装置1と同様に、モータ3が発生した雑音に係る電流の低周波成分は、モータ3の一方の端子から、ECU40,41に流れず、バッテリ5を経由してモータ3の他方の端子に戻る。このため、電源ボックス30に接続してあるモータ3が発生した雑音が、電源ボックス42に接続してあるECU40,41に影響を及ぼすことはない。
【0057】
なお、実施の形態1及び2において、コンデンサC1を配置する場所は電源ボックス30内に限定されず、コンデンサC1は導線3a,3b間を接続していればよい。また、電源ボックスの数は2つに限定されず、1つでもよい。即ち、導線50の代わりに、直線状の導線を用い、該導線について、一端をバッテリ5の正極端子に接続し、他端をヒューズF1,F2,F3を介して導線3a,40a,41a夫々の他端に接続してもよい。
【0058】
この場合においても、導線3a,3bの並置又は撚り合わせが行われており、導線3a,3bの間にコンデンサC1が接続されているため、雑音電流の還流によって輻射する電磁波の強度は弱く、電源装置1又は7内での各構成部の接続に用いられる導線の本数が少なく、電源装置1又は7は小型である。
【0059】
負荷の数は、3つに限定されず、2つ以上であればよい。また、2つの導線の並置又は撚り合わせを行って該2つの導線間にコンデンサを設けて、雑音電流の還流によって生じる電磁波を低減する負荷はモータに限定されない。更に、該負荷の数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。また、電源装置1,7夫々が備える負荷は、モータ又はECUに限定されない。
【0060】
開示された実施の形態1,2夫々は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1,7 電源装置
3 モータ
3a,3b,40a,40b,41a,41b,50,51 導線
40,41 ECU
5 バッテリ
50a 第1端
50b 第2端
50c 第3端
C1 コンデンサ