(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942740
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ラダー型フィルタ及び分波器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/64 20060101AFI20160616BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20160616BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20160616BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20160616BHJP
H03H 9/70 20060101ALI20160616BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/72
H03H9/145 Z
H03H9/54 Z
H03H9/70
H03H9/17 F
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-210933(P2012-210933)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-68123(P2014-68123A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 明雄
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/025055(WO,A1)
【文献】
特開2010−109894(JP,A)
【文献】
特開平06−061783(JP,A)
【文献】
特開平09−116379(JP,A)
【文献】
特開2009−207116(JP,A)
【文献】
特開2000−077972(JP,A)
【文献】
特開2004−015397(JP,A)
【文献】
特開2002−217676(JP,A)
【文献】
特開平10−150342(JP,A)
【文献】
特開2003−332884(JP,A)
【文献】
特開2005−191797(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/145056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/64
H03H 9/145
H03H 9/17
H03H 9/54
H03H 9/70
H03H 9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを結ぶ直列腕に設けられた直列腕共振子と、
前記直列腕とグラウンド電位との間に接続される複数の並列腕を有し、複数の並列腕にそれぞれ設けられた複数の並列腕共振子とを備え、
前記複数の並列腕共振子の共振周波数が、前記直列腕共振子の共振周波数よりも低く、前記直列腕共振子と共に通過帯域を形成している第1の並列腕共振子と、前記直列腕共振子の反共振周波数よりも共振周波数が高い第2の並列腕共振子とを有し、
前記第2の並列腕共振子として、1つの並列腕において、互いに直列に接続されており、かつ反共振周波数が異なる複数の第2の並列腕共振子を有する、ラダー型フィルタ。
【請求項2】
前記第2の並列腕共振子が、複数本の電極指を有するIDT電極と、弾性表面波伝搬方向において該IDT電極の両側に配置された反射器とを有する弾性表面波共振子からなる、請求項1に記載のラダー型フィルタ。
【請求項3】
少なくとも1つの第2の並列腕共振子のIDT電極の電極指ピッチが、残りの第2の並列腕共振子のIDT電極の電極指ピッチと異なっている、請求項1に記載のラダー型フィルタ。
【請求項4】
少なくとも1つの第2の並列腕共振子のIDT電極のメタライゼーション比が、残りの第2の並列腕共振子のメタライゼーション比と異なっている、請求項2または3に記載のラダー型フィルタ。
【請求項5】
少なくとも1つの第2の並列腕共振子におけるIDT電極の膜厚が、残りの第2の並列腕共振子のIDT電極の膜厚と異なっている、請求項2〜4のいずれか1項に記載のラダー型フィルタ。
【請求項6】
前記第2の並列腕共振子と前記入力端子との間に、少なくとも1つの前記直列腕共振子、及び少なくとも1つの第1の並列腕共振子を有する前記並列腕のうち少なくとも一方が設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のラダー型フィルタ。
【請求項7】
第1の端子と、第2の端子と、第3の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に電気的に接続されており、かつ請求項1〜6のいずれか1項に記載のラダー型フィルタからなる第1のフィルタと、
前記第1の端子と前記第3の端子との間に電気的に接続されており、前記第1のフィルタの通過帯域である第1の通過帯域よりも高域側に位置している第2の通過帯域を構成している第2のフィルタとを備える、分波器。
【請求項8】
前記第2の通過帯域内に、前記第2の並列腕共振子の共振周波数が位置している、請求項7に記載の分波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列腕共振子と並列腕共振子とを有するラダー型フィルタ及びラダー型フィルタを用いた分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機の分波器などにおいては、送信フィルタとしてラダー型フィルタが広く用いられている。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、送信フィルタと受信フィルタとを有する分波器が開示されている。ここでは、送信フィルタがラダー型フィルタからなる。このラダー型フィルタにおいて、1つの並列腕共振子をノッチフィルタもしくは帯域阻止フィルタとして使用することにより、送信フィルタの副共振周波数帯における副共振応答を抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−109894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、ラダー型フィルタにおける1つの並列腕共振子をノッチフィルタとして用いている。この構成では、通過帯域外において、減衰量が充分に大きい周波数帯域の幅を広げることが困難であった。
【0006】
また、上記構成では、送信フィルタの通過帯域と受信フィルタの通過帯域とが近接する際に、送信フィルタと受信フィルタとの間のアイソレーション特性が低下することがあった。
【0007】
本発明の目的は、減衰量を大きく確保したい減衰帯域の幅を効果的に広げることができ、かつ分波器に用いられた場合にフィルタ間のアイソレーション特性を改善し得るラダー型フィルタを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、フィルタ間のアイソレーション特性を改善し得る分波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るラダー型フィルタは、入力端子と、出力端子とを備える。入力端子と出力端子とを結ぶ直列腕に直列腕共振子が設けられている。直列腕とグラウンド電位との間に複数の並列腕が接続されている。各並列腕には、並列腕共振子が設けられている。従って、本発明のラダー型フィルタは、複数の並列腕共振子を備える。
【0010】
本発明では、複数の並列腕共振子が、直列腕共振子の共振周波数よりも低く、直列腕共振子と共に通過帯域を形成している第1の並列腕共振子と、前記直列腕共振子の反共振周波数よりも共振周波数が高い第2の並列腕共振子とを有する。そして、第2の並列腕共振子として、1つの並列腕において、互いに直列に接続されておりかつ反共振周波数が異なる複数の第2の並列腕共振子を有する。
【0011】
本発明に係るラダー型フィルタのある特定の局面では、前記第2の並列腕共振子が、複数本の電極指を有するIDT電極と、弾性表面波伝搬方向においてIDT電極の両側に配置された反射器とを有する弾性表面波共振子からなる。
【0012】
本発明に係るラダー型フィルタの他の特定の局面では、少なくとも1つの第2の並列腕共振子のIDT電極の電極指ピッチが、残りの第2の並列腕共振子のIDT電極の電極指ピッチと異なっている。
【0013】
本発明に係るラダー型フィルタのさらに他の特定の局面では、少なくとも1つの第2の並列腕共振子のIDT電極のメタライゼーション比が、残りの第2の並列腕共振子のメタライゼーション比と異なっている。
【0014】
本発明に係るラダー型フィルタのさらに別の特定の局面では、少なくとも1つの第2の並列腕共振子におけるIDT電極の膜厚が、残りの第2の並列腕共振子のIDT電極の膜厚と異なっている。
【0015】
本発明に係るラダー型フィルタのさらに他の特定の局面では、前記第2の並列腕共振子と前記入力端子との間に、少なくとも1つの前記直列腕共振子と、少なくとも1つの第1の並列腕共振子を有する前記並列腕とのうちの少なくとも一方が設けられている。
【0016】
本発明に係る分波器は、第1の端子と、第2の端子と、第3の端子とを備える。そして、第1の端子と第2の端子との間に、本発明に従って構成されたラダー型フィルタからなる第1のフィルタが電気的に接続されている。第1のフィルタの通過帯域を第1の通過帯域とする。また、第1の端子と第3の端子との間に、第2のフィルタが電気的に接続されている。第2のフィルタは、第1の通過帯域の高域側に位置している第2の通過帯域を構成している。
【0017】
本発明に係る分波器のある特定の局面では、前記第2の通過帯域内に、前記第2の並列腕共振子の共振周波数が位置している。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るラダー型フィルタによれば、減衰量が大きい減衰帯域の幅を広げることが可能となる。
【0019】
また、本発明の分波器によれば、第1のフィルタが本発明のラダー型フィルタからなるため、第2の通過帯域内におけるアイソレーション特性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分波器の回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る分波器の模式的正面断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態で用いられている第2の並列腕共振子の電極構造を示す模式的平面図である。
【
図4】第1の比較例の分波器の略図的回路図である。
【
図5】第1の比較例の分波器における送信フィルタの減衰量周波数特性を示す図である。
【
図6】第1の比較例の分波器のSd32アイソレーション特性を示す図である。
【
図7】第2の比較例の分波器における送信フィルタの減衰量周波数特性を示す図である。
【
図8】第2の比較例の分波器のアイソレーション特性を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態及び第2の比較例の分波器に用いられている第2の並列腕共振子のインピーダンス特性を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態の変形例に係る分波器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る分波器の略図的回路図である。本実施形態の分波器は、UMTS−BAND8に用いられるデュプレクサである。UMTS−BAND8の送信周波数帯は、880MHz〜915MHzであり、受信周波数帯は、925MHz〜960MHzである。
【0023】
分波器1は、アンテナ端子2と、送信端子3と、受信端子4とを有する。すなわち、アンテナ端子2が、第1の端子を構成している。送信端子3が第2の端子を、受信端子4が第3の端子を構成している。
【0024】
アンテナ端子2と送信端子3との間に送信フィルタ5が電気的に接続されている。送信フィルタ5は、後述するように、ラダー型フィルタからなる。
【0025】
アンテナ端子2と受信端子4との間に受信フィルタ6が電気的に接続されている。送信フィルタ5の送信帯域が、本発明における第1の通過帯域であり、受信フィルタ6の通過帯域である受信帯域が本発明の第2の通過帯域である。
【0026】
送信フィルタ5は、アンテナ端子2と送信端子3とを結ぶ直列腕を有する。この直列腕において、互いに直列に複数の直列腕共振子S1〜S4が接続されている。なお、直列腕共振子は1個のみが用いられてもよい。
【0027】
直列腕とグラウンド電位とを結ぶように、複数の並列腕8a〜8cが設けられている。並列腕8a,8b、8cには、それぞれ、並列腕共振子P1,P2,P3が設けられている。さらに、並列腕8cにおいては、第2の並列腕共振子P3aと、第2の並列腕共振子P3bとが互いに直列に接続されている。
【0028】
上記複数の直列腕共振子S1〜S4及び並列腕共振子P1,P2,P3,P3a,P3bは、本実施形態では弾性表面波共振子により構成されている。
【0029】
図3に、一例として、第2の並列腕共振子P3aの電極構造を模式的に示す。この第2の並列腕共振子P3aでは、IDT電極11とIDT電極11の表面波伝搬方向両側に配置された反射器12,13とが備えられている。圧電基板上にIDT電極11及び反射器12,13を設けることにより、一ポート型の弾性表面波共振子が構成される。ただし、反射器は省略して、IDT電極のみで一ポート型の弾性表面波共振子を構成してもよい。
【0030】
IDT電極11は、それぞれが複数本の電極指を有する第1,第2の櫛歯電極11a,11bを有する。第1,第2の櫛歯電極11a,11bの複数本の電極指同士が互いに間挿し合っている。
【0031】
図2は、本実施形態の分波器の模式的正面断面図である。
図2に示すように、分波器1では、送信フィルタ5を構成している弾性表面波フィルタチップ5Aと、受信フィルタ6を構成している弾性表面波フィルタチップ6Aとが、配置基板14上にフリップチップボンディング工法により実装されている。そして、弾性表面波フィルタチップ5A,6Aの周囲が樹脂外装15により被覆されている。
【0032】
弾性表面波フィルタチップ5Aでは、圧電基板上に、直列腕共振子S1〜S4及び並列腕共振子P1,P2,P3,P3a,P3bを構成するための電極構造及び引き回し配線が形成されている。このような圧電基板としては、LiTaO
3や、LiNbO
3などの適宜の圧電単結晶や圧電セラミックスを用いることができる。また、上記電極構造を形成する導電性材料としては、Al、Cu、Pt、Auなどの適宜の金属もしくは合金を用いることができる。
【0033】
本実施形態の分波器1の特徴は、上記送信フィルタ5であるラダー型フィルタにおいて、複数の第2の並列腕共振子P3a,P3bが設けられていることにある。それによって、送信フィルタ5のフィルタ特性上において受信帯域における高減衰帯域の幅を広げることができる。高減衰帯域とは、減衰量が近傍の周波数域よりも充分に大きい周波数帯域である。また、受信帯域におけるアイソレーション特性を効果的に改善することができる。これを、以下において詳述する。
【0034】
送信フィルタ5においては、並列腕共振子P1,P2,P3の共振周波数よりも、直列腕共振子S1〜S4の共振周波数が高くされている。従って、周知のラダー型フィルタと同様に、並列腕共振子P1,P2,P3の共振周波数を低域側の減衰極とし、直列腕共振子S1〜S4の反共振周波数を高域側の減衰極とする、通過帯域が構成される。
【0035】
他方、第2の並列腕共振子P3a,P3bの共振周波数は、直列腕共振子S1〜S4の共振周波数及び並列腕共振子P1,P2,P3の共振周波数よりも高く、かつ受信帯域内に設定されている。また、第2の並列腕共振子P3a,P3bの静電容量は、直列腕共振子S1〜S4及び並列腕共振子P1,P2,P3の静電容量よりも低く、好ましくは50%以下とされている。ここで静電容量とは、共振子の等価回路におけるスタティック容量(等価容量)を指すものとする。
【0036】
なお、第2の並列腕共振子P3a,P3bの静電容量を低める方法は特に限定されるものではない。IDT電極11及び反射器12,13を有する電極構造の場合、静電容量はIDT電極における交差幅と電極指の本数との積に比例する。従って、並列腕共振子P3a,P3bの交差幅と電極指の本数との積を、他の共振子の交差幅と電極指の本数との積の平均値よりも小さくすればよい。なお、異なった電位に接続された隣り合う電極指がIDT電極により励振される弾性表面波の伝搬方向に重なり合っている電極指の延びる方向の長さを交差幅とする。
【0037】
さらに、本実施形態では、第2の並列腕共振子P3aと、第2の並列腕共振子P3bの共振周波数が異なっている。
【0038】
本実施形態における直列腕共振子S1〜S4、並列腕共振子P1,P2及び第2の並列腕共振子P3a,P3bの共振周波数fr及び反共振周波数faの値を示す。
【0039】
直列腕共振子S1〜S4のfr=900、fa=930MHz。
【0040】
並列腕共振子P1,P2のfr=865、fa=900MHz。
【0041】
並列腕共振子P3のfr=962、fa=995MHz。
【0042】
第2の並列腕共振子P3aのfr=962、fa=995MHz。
【0043】
第2の並列腕共振子P3bのfr=964、fa=997MHz。
【0044】
また、第2の並列腕共振子P3a,P3bの静電容量は、残りの共振子の静電容量の平均値の10%の値とした。
【0045】
比較のために
図4に略図的回路図で示す第1の比較例を用意した。この比較例は、上記第1の実施形態から第2の並列腕共振子P3a,P3bを除去した構成に相当する。
【0046】
図5は、第1の比較例の分波器における送信フィルタの減衰量周波数特性を示す。
図6は、第1の比較例の分波器におけるアイソレーション特性を示す。
【0047】
図7は、第2の比較例の分波器の送信フィルタの減衰量周波数特性を示す。
図8は第2の比較例の分波器のアイソレーション特性を示す。
【0048】
また、
図9は、
図1において破線で囲んだ領域Aで示した本実施形態及び第1の比較例の並列腕に設けた共振子のインピーダンス特性を示す図である。実線が実施形態を、破線が第1の比較例のインピーダンス特性を示す。
【0049】
図5と
図7とを対比すれば明らかなように、第1の比較例では、上記第1の比較例に比べ、受信帯域において矢印Bで示す阻止帯域が設けられていることがわかる。すなわち、第2の並列腕共振子P3a,P3bの共振周波数が通過帯域内にあるため、上記矢印Bで示す阻止帯域が形成されている。従って、阻止帯域内における減衰量を大きくしたい部分において減衰量を大きくすることが可能とされている。そのため、
図6と
図8とを対比すれば明らかなように、受信帯域におけるアイソレーション特性が改善されている。
【0050】
さらに、
図9から明らかなように、本実施形態では、共振周波数が異なる第2の並列腕共振子P3a,P3bが直列に接続されているので、反共振周波数におけるインピーダンスを低めることが可能とされている。本実施形態では、第2の並列腕共振子P3aの反共振周波数と、第2の並列腕共振子P3bの反共振周波数とが異なっているため、
図9に示すようにピークXを鈍らせることが可能とされている。それによっても、上記のように阻止帯域の帯域幅を広げかつアイソレーション特性をより一層改善することが可能とされている。
【0051】
よって、本実施形態によれば、第2の並列腕共振子P3a,P3bが直列に接続されており、両者の共振周波数が異なっているため、第2の並列腕共振子P3a,P3bの共振周波数におけるインピーダンス値による阻止帯域の帯域幅を広げることが可能とされている。特に、本実施形態では、受信帯域に、第2の並列腕共振子P3a,P3bの共振周波数が位置しているため、受信帯域において、帯域幅の広い阻止帯域を形成することが可能とされている。それによって、受信帯域における分波器1のアイソレーション特性が効果的に改善されている。
【0052】
なお、第2の並列腕共振子P3aの反共振周波数と、第2の並列腕共振子P3bの反共振周波数を異ならせるには、様々な手法を用いることができる。例えば、第2の並列腕共振子P3aを構成するIDT電極11の電極指ピッチと、第2の並列腕共振子P3bを構成するIDT電極11の電極指ピッチとを異ならせてもよい。あるいは、第2の並列腕共振子P3aを構成するIDT電極11のメタライゼーション比と、第2の並列腕共振子P3bを構成するIDT電極のメタライゼーション比を異ならせてもよい。さらに、第2の並列腕共振子P3aと第2の並列腕共振子P3bとで、IDT電極の膜厚を異ならせてもよい。さらに、これらの各手法を2種以上併用して、第2の並列腕共振子P3aの反共振周波数と、第2の並列腕共振子P3bの反共振周波数とを異ならせてもよい。なお、電極指の幅とは、電極指が延びる方向と直交する方向に沿う電極指の幅寸法である。メタライゼーション比とは、電極指の幅寸法を、電極指の幅寸法と電極指が延びる方向と直交する方向に沿う隣り合う電極指間の隙間寸法との和で除した比率である。電極指ピッチとは、互いに異なる電位を有する隣り合う電極指の周期寸法であって、電極指の幅寸法と電極指間の隙間寸法とが一定の場合は、電極指の幅寸法と電極指間の隙間寸法との和に等しい。
【0053】
弾性表面波共振子では、IDT電極の電極指ピッチ、メタライゼーション比、IDT電極の膜厚等は設計及び製造段階で容易に調整することができる。従って、第2の並列腕共振子P3aの反共振周波数と、第2の並列腕共振子P3bの反共振周波数を容易に異ならせることができる。
【0054】
なお、上記第2の並列腕共振子P3a,P3bの反共振点によるピークをさらに鈍らせるには、第2の並列腕共振子P3a,P3bのインピーダンス比を小さくすることが望ましい。インピーダンス比とは、反共振周波数におけるインピーダンスの共振周波数におけるインピーダンスに対する比である。
【0055】
なお、第2の並列腕共振子P3a,P3bのインピーダンス比を低めるには、様々な方法を用いることができる。例えば、反射器の電極指の本数を、他の並列腕共振子P1,P2における反射器の電極指の本数よりも少なくする方法が挙げられる。また、第2の並列腕共振子P3a,P3bにおけるIDT電極11の交差幅を他の並列腕共振子P1,P2の電極指交差幅より小さくする方法を用いてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、第2の並列腕共振子P3a,P3bは弾性表面波共振子により構成されたが、弾性境界波を用いた弾性共感波共振子により構成されてもよい。他の並列腕共振子P1,P2及び直列腕共振子S1〜S4についても、弾性境界波共振子により構成されてもよい。
【0057】
上記実施形態では、第2の並列腕共振子P3aと第2の並列腕共振子P3bとが用いられていたが、本発明においては3以上の第2の並列腕共振子が用いられてもよい。その場合においても、少なくとも1つの第2の並列腕共振子が反共振周波数を、残りの第2の並列腕共振子の反共振周波数と異ならせればよい。それによって、上記実施形態と同様に、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0058】
また、
図10に示す、本発明の実施形態の変形例である、第2の並列腕共振子P3a,P3bが並列腕8cに設けられている。すなわち、複数の第2の並列腕共振子P3a,P3bを直列接続されている構成を用いてもよい。
【0059】
また、本発明の分波器は、上述したデュプレクサに限らず、トリプレクサなどの様々なマルチプレクサにも適用することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、分波器1の送信フィルタ5に本発明のラダー型フィルタが用いられていたが、本発明のラダー型フィルタは他の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0061】
1…分波器
2…アンテナ端子
3…送信端子
4…受信端子
5…送信フィルタ
5A…弾性表面波フィルタチップ
6…受信フィルタ
6A…弾性表面波フィルタチップ
8a〜8c…並列腕
11…IDT電極
11a,11b…第1,第2の櫛歯電極
12,13…反射器
14…配線基板
15…樹脂外装
P1,P2,P3…並列腕共振子
P3a,P3b…第2の並列腕共振子
S1〜S4…直列腕共振子