(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トレンチ構造を形成する際に、互いに異なるトレンチ幅を規定する単一のマスク部材を用いて前記トレンチ幅マップに従ったマスクパターンを形成する露光を行って、前記マスクを作成する、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された半導体光素子を作製する方法。
前記トレンチ構造を形成する際に、複数の互いに異なるトレンチ幅をそれぞれ規定する複数のレチクルを用いて前記トレンチ幅マップに従ったマスクパターンを形成する露光を行って、前記マスクを作成する、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された半導体光素子を作製する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、マッハツェンダ変調器のコンタクト開口のばらつきに影響を与える要因について検討している。埋込用樹脂の膜厚の面内分布及びエッチングレートの面内分布が、コンタクト開口のばらつきに影響を与える。発明者の知見によれば、例えばウエハ上に埋込用樹脂を塗布するとき、均一ではない埋込用樹脂厚分布が形成される。一方、ウエハ上の埋込用樹脂をエッチングするとき、そのエッチングレートは、上記のような埋込用樹脂の膜厚分布とは独立した面内分布を示す。発明者の実験によれば、このような面内分布(埋込用樹脂膜厚の面内分布及びエッチングレートの面内分布)が、コンタクト開口のばらつきに影響を与える。
【0005】
本発明は、マッハツェンダ変調器のアーム導波路へのコンタクト開口の均一性を高めることができる、半導体光素子を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発明は、半導体光素子を作製する方法に関する。この方法は、(a)当該マッハツェンダ変調器を有する半導体チップのための複数の区画を含む区画配列を作製するウエハサイズを決定する工程と、(b)前記ウエハサイズを有するウエハ上の第1配列構造の配列上に塗布された埋込用樹脂の膜厚を測定して、該膜厚の面内分布を得る工程と、(c)前記ウエハサイズを有するウエハ上の第2配列構造の配列上に塗布された埋込用樹脂の厚さを測定して、埋込用樹脂厚とトレンチ幅との相関関係を得る工程と、(d)前記ウエハサイズを有するウエハ上の埋込用樹脂のエッチングレートを測定して、該エッチングレートの面内分布を測定する工程と、(e)前記膜厚の面内分布、前記エッチングレートの面内分布及び前記相関関係を用いて、前記区画配列内の区画の各々において、導波路メサを規定するトレンチ幅を決定して、ウエハ上におけるトレンチ幅マップを形成する工程と、(f)前記ウエハサイズを有する素子用ウエハと該素子用ウエハ上に導波路構造のための半導体積層とを有するエピタキシャル基板上に、前記トレンチ幅マップに基づくトレンチ幅のパターンを有するマスクを形成する工程と、(g)前記マスクを用いて前記半導体積層をエッチングして、当該マッハツェンダ変調器のアーム導波路のための導波路メサを規定するトレンチの配列を含むトレンチ構造を形成する工程と、(h)前記トレンチ構造上に樹脂を塗布して、前記トレンチ構造を埋め込む工程と、(i)前記導波路メサへのコンタクト開口の配列を前記トレンチ構造の前記樹脂のエッチングにより形成する工程とを備え、前記第1配列構造は、あるトレンチ幅を有するトレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含み、前記第2配列構造は、互いに異なるトレンチ幅のトレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含む。
【0007】
半導体光素子を作製する方法(以下「作製方法」と記す)によれば、当該マッハツェンダ変調器のアーム導波路へのコンタクト開口の均一性を得ることができる。
【0008】
発明者の検討によれば、例えばウエハ上の埋込用樹脂を塗布するとき、均一ではない埋込用樹脂厚分布が形成される。一方、ウエハ面内のエッチングレートは、上記のような埋込用樹脂の膜厚分布とは独立した面内分布を示す。
【0009】
これらの面内分布とは別に、上記の第2配列構造を用いた検討によれば、埋込用樹脂で埋め込まれるトレンチ構造のトレンチ幅の違いに起因して該埋込用樹脂の膜厚の差異を示す。また、第1配列構造を用いることにより、導波路のための半導体メサを規定するトレンチ構造上の埋込用樹脂の膜厚分布を得ることができる。第1配列構造及び第2配列構造上の埋込用樹脂の膜厚分布の違いを利用するとき、下地の構造を利用して埋込用樹脂の膜厚を調整できる。この調整の考慮に、ウエハ面内のエッチングレートに係る面内分布を加えることができれば、コンタクト開口のばらつきを低減できる。
【0010】
このばらつきの低減は、マッハツェンダ変調器を有する半導体チップのための複数の区画を含む区画配列を素子用ウエハの面内に規定する際に、半導体メサを規定するトレンチ構造のトレンチ幅を第2配列構造からの知見に基づき区画配列の区画において変更することにより可能になる。
【0011】
本発明に係る作製方法では、前記樹脂はBCB樹脂を含むことができる。この作製方法によれば、導波路構造を埋め込む樹脂としてBCB樹脂を好適に用いることができる。
【0012】
本発明に係る作製方法は、前記トレンチ構造を形成した後に、前記トレンチ構造上に前記樹脂を塗布する前に、前記トレンチ構造上に絶縁膜を形成する工程と、前記樹脂のエッチングを行った後に、前記絶縁膜のエッチングを行って前記導波路メサの表面を部分的に露出させる工程とを備えることができる。本発明に係る作製方法では、前記絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、又はシリコン窒化膜を含むことができる。この作製方法によれば、絶縁膜として、シリコン酸化膜(例えばSiO
2)、シリコン酸窒化膜(例えばSiON)、又はシリコン窒化膜(例えばSiN)を用いることができる。
【0013】
本発明に係る作製方法では、前記トレンチ構造は、第1半導体テラス、前記導波路メサ、当該マッハツェンダ変調器の一対のアーム導波路の他方の別の導波路メサ、及び第2半導体テラスを含み、前記第1半導体テラス、前記導波路メサ、前記別の導波路メサ、及び前記第2半導体テラスは、当該マッハツェンダ変調器のアーム導波路の延在方向に交差する方向に、順に配列されており、前記第1半導体テラスと前記導波路メサとの間隔及び前記第2半導体テラスと前記別の導波路メサとの間隔は前記トレンチ幅にとられ、前記素子用ウエハの区画配列うちの一区画における前記トレンチ幅は、前記素子用ウエハの前記区画配列うちの別の区画における前記トレンチ幅と異なることができる。
【0014】
この作製方法によれば、トレンチ幅の調整は、第1半導体テラスと導波路メサとの間隔、及び第2半導体テラスと別の導波路メサとの間隔に対して為される。
【0015】
本発明に係る作製方法では、前記素子用ウエハの区画配列うちの一区画において、第1半導体テラスと前記導波路メサとの間隔は第1トレンチ幅を有し、前記素子用ウエハの前記区画配列うちの別の区画において、前記第1半導体テラスと前記導波路メサとの間隔は第2トレンチ幅を有し、前記第1トレンチ幅は前記第2トレンチ幅と異なることができる。
【0016】
この作製方法によれば、ウエハ面内に配列され半導体チップのための区画の配列において、その一の区画のトレンチ幅は別の区画のトレンチ幅と異なる。この違いにより、一の区画におけるコンタクト開口及び別の区画におけるコンタクト開口に関して、高い均一性を達成できる。
【0017】
本発明に係る作製方法では、前記マスクは、前記トレンチ内にダミー導波路メサを形成するためのパターンを有し、前記トレンチ構造は、前記トレンチのダミー導波路メサを含み、前記ダミー導波路メサは、前記導波路メサの方向に延在し、前記ダミー導波路メサの幅は前記導波路メサの幅より小さいことができる。
【0018】
この作製方法によれば、トレンチ内には、樹脂が充填される。この樹脂体の熱膨張率は、半導体の熱膨張率と異なるので、面内において、拡大されたトレンチ幅が用いられるとき、この熱膨張率の違いから、樹脂体の剥がれが生じる可能性が高まる。しかしながら、トレンチ内にダミー導波路メサを延在させることにより、トレンチは複数のサブトレンチから成り、またトレンチ幅により調整される樹脂厚にあまり影響を与えることなく、個々のトレンチ内の樹脂体の体積を小さくできる。これにより、熱膨張率の違いに起因する樹脂体剥がれの可能性を低減できる。
【0019】
本発明に係る作製方法では、前記ダミー導波路メサと前記導波路メサとの間隔は、3μm以上であることができる。
【0020】
この作製方法によれば、ダミー導波路メサと導波路メサとの電気的、及び光学的な結合は、マッハツェンダ変調器の動作特性を低下させる可能性がある。電気的な結合を小さくするために、ダミー導波路メサと導波路メサとの間隔を3μm以上の距離で離すことが好ましい。
【0021】
本発明に係る作製方法では、前記トレンチ構造を形成する際に、互いに異なるトレンチ幅を規定する単一のマスク部材を用いて前記トレンチ幅マップに従ったマスクパターンを形成する露光を行って、前記マスクを作成することができる。
【0022】
この作製方法によれば、トレンチ幅を素子用ウエハの区画において変更することは、マスクアライナーを用いた露光用のマスクパターンにより実現される。
【0023】
本発明に係る作製方法では、前記トレンチ構造を形成する際に、互いに異なるトレンチ幅を規定する複数のレチクルを用いて前記トレンチ幅マップに従ったマスクパターンを形成する露光を行って、前記マスクを作成することができる。
【0024】
この作製方法によれば、トレンチ幅を素子用ウエハの区画において変更することは、ステップアンドリピート露光を用いた露光用レチクルのパターンにより実現される。
【0025】
本発明に係る発明は、半導体光素子を作製する方法に関する。この方法は、(a)当該半導体光素子を有する半導体チップのための複数の区画を含む区画配列を作製するウエハサイズを決定する工程と、(b)前記ウエハサイズを有するウエハ上の第1配列構造の配列上に塗布された埋込用樹脂の膜厚を測定して、該膜厚の面内分布を得る工程と、(c)前記ウエハサイズを有するウエハ上の第2配列構造の配列上に塗布された埋込用樹脂の厚さを測定して、埋込用樹脂厚とトレンチ幅との相関関係を得る工程と、(d)前記ウエハサイズを有するウエハ上の埋込用樹脂のエッチングレートを測定して、該エッチングレートの面内分布を測定する工程と、(e)前記膜厚の面内分布、前記エッチングレートの面内分布及び前記相関関係を用いて、前記区画配列内の区画の各々において、導波路メサを規定するトレンチ幅を決定して、ウエハ上におけるトレンチ幅マップを形成する工程と、(d)前記ウエハサイズを有する素子用ウエハと該素子用ウエハ上に当該半導体光素子のための導波路構造のための半導体積層とを有するエピタキシャル基板上に、前記トレンチ幅マップに基づくトレンチ幅のパターンを有するマスクを形成する工程と、(e)前記マスクを用いて前記半導体積層をエッチングして、当該半導体光素子のための導波路メサを規定するトレンチの配列を含むトレンチ構造を形成する工程と、(f)前記トレンチ構造上に樹脂を塗布して、前記トレンチ構造を埋め込む工程と、(g)前記導波路メサへのコンタクト開口の配列を前記トレンチ構造上の前記樹脂のエッチングにより形成する工程とを備え、前記第1配列構造は、あるトレンチ幅を有するトレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含み、前記第2配列構造は、互いに異なるトレンチ幅のトレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含む。
【0026】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、マッハツェンダ変調器のアーム導波路へのコンタクト開口の均一性を高めることができる、半導体光素子を作製する方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、マッハツェンダ変調器を作製する方法、及び半導体光素子を作製する方法に係る本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0030】
図1及び
図2を参照しながら、本発明の概要を説明する。半導体光素子のためのハイメサ構造を有する半導体にベンゾシクロブテン(BCB)を塗布すると、導波路の近傍の下地形状に応じて半導体メサ上のBCBの膜厚やメサ側面上のBCBの膜厚がウエハ面内で異なる。ウエハ上にメサ幅やメサ間隔が異なるときにも、BCBの膜厚がウエハ面内で異なる。また、このようなBCB埋込領域をエッチングする際には、ウエハ面内でBCBのエッチングレート差が生じる。これらBCB膜厚分布及びエッチングレートの分布がウエハ全体に存在する。半導体メサにコンタクトを形成するために半導体メサ上のBCB樹脂に開口を形成するとき、BCB樹脂の塗布及びBCBのエッチングは、ウエハ単位で行われるので、BCB膜厚分布及びエッチングレートの分布は製造ばらつきの原因となり、ウエハ面内の位置によってBCBの開口形状が異なるものとなる。
【0031】
例えば、ウエハ中心部より外周部のBCBのエッチングレートが大きい場合において、メサ上部のBCB樹脂に帯状の開口を形成するとき、ウエハ中心部分と外周部分の代表的な形状を模式的に
図1に示す。
【0032】
図1の(a)部は、ウエハ中心付近における断面を示す。半導体メサの上面にBCB樹脂の開口が形成されており、ほぼ理想的な形状が形成されている。これは、ウエハ中心部のメサ上のBCB樹脂が適切にエッチングされて帯状の開口が形成された時点でエッチングを停止させるエッチング条件を用いているからである。ウエハ中心部ではBCB開口部におけるBCBの高さとメサの高さが同程度である。一方、
図1の(b)部は、ウエハ周辺付近における断面を示す。ウエハ外周部ではBCB開口部におけるBCB樹脂の高さがメサ高さよりも低くなっている。これは、ウエハ外周部のエッチングレートが、ウエハ中心部よりも大きいので、BCBのエッチングが過剰になっていることを示す。
【0033】
また、半導体メサ上のBCB樹脂の膜厚は、半導体メサの深さによっても変化する。例えば、半導体メサの深さが大きいとき、半導体メサ上のBCB樹脂が薄くなる。このため、異なるメサ深さの半導体メサをBCB樹脂で埋め込む構造を有するウエハにおいて、半導体メサ上のBCB樹脂を同時に開口するとき、半導体メサ上のBCB樹脂が薄いウエハ部分の開口付近が過剰にエッチングされる。
【0034】
半導体メサ幅より幅広の電極を作製する場合、BCB樹脂が過剰にエッチングされる形態ではエッチングされたBCB表面と半導体メサの上面とに段差が形成される。この段差により、電極の段切れが発生する可能性がある。また、BCB開口の形状がウエハ面内において分布するとき、デバイス特性のばらつきを引き起こす可能性がある。これ故に、ウエハ面内において、エッチングされたBCB面と導波路メサの上面とがほぼ同じ高さになることが望ましい。
【0035】
図2は、半導体光素子のための導波路のための半導体メサをトレンチによって規定する形態の断面を示す。トレンチは、半導体メサと半導体テラスとによって規定される。半導体メサ及び半導体テラスをBCB樹脂で埋め込むとき、発明者の知見によれば、導波路メサ上のBCB樹脂の膜厚は、トレンチ幅(導波路と、該導波路の脇にある半導体テラスとの間のトレンチの幅)に応じて変化する。一例の構造では、導波路の高さは3μmであり、導波路幅は1.5μmである。半導体積層のエッチングにより導波路を含むトレンチ構造を作製した後に、ウエハ全体に絶縁膜(例えばSiO2)を成膜する。この後に、トレンチ構造を埋め込むようにBCB樹脂を塗布する。導波路メサと半導体テラスとの間隔を狭めると、導波路上のBCB膜厚が厚くなる。逆に、導波路メサと半導体テラスとの間隔を広げると、導波路上のBCB膜厚が薄くなる。
【0036】
光導波路を含む光学デバイスには、様々な導波路メサ幅や様々な導波路メサ間隔が存在するので、導波路構造を埋め込むBCB樹脂の厚さを全ての導波路メサにおいて揃えることは煩雑であると考えられる。
【0037】
しかしながら、発明者は、導波路メサと半導体テラスとの間隔に応じて、導波路上のBCB膜厚を変化させることができることに着目している。導波路メサの近くに意図的に半導体テラス(ここでは「ダミーテラス」と呼ぶ)を配置することにより、導波路上のBCB膜厚を調整できることを見出した。つまり、所望のBCB膜厚を得るために、ウエハ面内の場所に応じて、導波路メサとダミーテラスとの間隔を変化させることにより、ウエハ面内の導波路メサ上のBCB膜厚分布を制御できる。これは、ウエハ面内でメサ上のBCB膜厚のばらつきを小さくできることを示している。
【0038】
加えて、又は、上記と独立して、BCBのエッチングレートに面内分布が不可避であるとき、あらかじめエッチングレートの差異を補うようにBCB膜厚を変化させることができる。このBCB膜厚を厚く、または、薄くすることによって、エッチング後のBCBの開口形状のばらつきをウエハ面内にわたって小さくして、その均一性を高めることができる。
【0039】
ダミーテラスの利用は、上記のような技術的な寄与を提供することができる。所望のBCB膜厚を達成するために、ダミーテラスが導波路メサから離れると、トレンチ中のBCBの体積が増える。BCB堆積の増加により、BCBの応力も増大する可能性がある。常にではないが、応力により、BCBがダミーテラスの側面や導波路メサの側面からはがれる可能性がある。
【0040】
導波路メサ上のBCBに開口を形成すると、開口付近のBCBが剥がれやすくなることがある。BCBのはがれは、その後のレジストワークを困難にする。また、BCBはがれは、配線の断線を引き起こすことがある。発明者の検討によれば、BCBのはがれを防ぐためには、ダミーテラスと導波路メサとの間にダミー導波路メサ又はダミーメサを設けることが有効である。この構造では、これらのメサの幅が太いとき、導波路メサ上のBCB樹脂の膜厚に影響を与える。この影響を低減するために、ダミー導波路メサ及びダミーメサの幅は導波路メサの幅以下であることが望ましく、また導波路メサの幅より細いことが好ましい。また、追加されたダミー導波路と本来の導波路路との容量結合により、デバイス特性に影響する可能性がある。容量結合を防ぐために、ダミー導波路メサは、導波路メサから3μm以上の間隔で離されることが好ましい。ここで、ダミー導波路メサは、導波路として使用することを目的とせず作成されるものであり、例えばダミーメサ及びダミー導波路メサに、導波路メサのようなクラッド及びコアは必須ではないが、本実施の形態では、導波路メサのためのエピ構造を流用するので、ダミーメサ及びダミー導波路メサは導波路構造を有している。
【0041】
実施の形態を詳細に説明する。
図3及び
図4は、本実施の形態に係る半導体光素子を作製する方法における主要な工程を示す図面である。引き続く説明では、樹脂埋込の導波路メサ上に開口を有する構造を形成する製造方法により作製される半導体光素子としてマッハツェンダ変調器について説明する。
【0042】
図3に示されるように、工程S101では、当該マッハツェンダ変調器を有する半導体チップのための複数の区画を含む区画配列を作製するウエハサイズを決定する。
図5は、露光のためのショット、及び半導体チップのための複数の区画を含む区画配列を示す。
図5を参照すると、ウエハ15が示されている。ウエハ15の主面15aには、露光のためのショット11のマップが示されている。ショット11は、例えばフォトリソグラフに縮小投影露光を用いるときの露光の単位に対応する。ショット11の各々は、半導体チップのための複数の区画13を含むことができる。ショット11は、単一の区画からなることができ、或いは複数の区画からなることができる。ウエハサイズが決定されるとき、ウエハ主面15a上に、複数の区画13を含む区画配列を決定できる。
【0043】
工程S102では、トレンチ幅マップを作成するための測定を行う。決定されたウエハサイズを有するいくつかのウエハを準備する。ウエハは例えば半絶縁性InPウエハであることができる。
【0044】
工程S103では、マッハツェンダ変調器のアーム導波路のための導波路メサを規定するトレンチの配列を含むトレンチ構造と、これを埋め込む樹脂の厚さに関連する測定を行う。
図6の(a)部に示されるように、この測定のために準備されたウエハ15上に、第1クラッド層17a、コア層17b及び第2クラッド層17cを順に成長して、エピタキシャル基板E1を作製する。エピタキシャル基板E1は、ウエハ15及び半導体積層17を含む。
【0045】
工程S104では、エピタキシャル基板E1上に、第1配列構造及び第2配列構造を形成する。第1配列構造及び第2配列構造の各々は、トレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含む。
図6の(b)部に示されるように、半導体メサ19a、19b、トレンチ20、及びダミーテラス21を形成する。これらの形成は、マスク及びエッチングにより行われる。次いで、
図6の(c)部に示されるように、半導体メサ19a、19bの素子領域23aをダミーテラス21のダミー領域23bから分離するために導電性の第1クラッド層を除去して、素子分離領域23cを形成する。これによって素子分離が行われる。素子分離のための領域の形成は、マスク及びエッチングにより行われる。
【0046】
第1配列構造は、あるトレンチ幅(単一のトレンチ幅)を有するトレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含む。この第1配列構造は、ウエハ主面15aの全体にわたって、同一幅のトレンチにより規定される半導体メサを各区画13が含むように設けられる。この配列を用いて、トレンチ及び半導体メサを含む下地構造物上の樹脂厚の面内分布を測定できる。また、この第2配列構造は、複数の互いに異なるトレンチ幅のトレンチによりそれぞれ規定される導波路のための半導体メサを含む。この第2配列構造は、ウエハ主面15aの全体にわたって、導波路のための半導体メサを複数の区画13が含むように設けられることができる。
【0047】
図6の(d)部に示されるように、工程S105では、導波路メサ及びダミーテラスを含む第1配列構造及び第2配列構造を覆うように、絶縁膜25を形成する。絶縁膜25は例えばSiO
2を含むことができる。絶縁膜25を形成した後に、工程S106では、第1配列構造及び第2配列構造を埋め込むように樹脂を塗布して樹脂体27を形成する。塗布される樹脂は例えばBCB樹脂であることができる。
【0048】
工程S107では、決定されたウエハサイズを有するウエハ15上の第1配列構造の配列上に塗布された埋込用樹脂27の膜厚を測定して、該膜厚の面内分布を得る。この測定では、ウエハ主面15aの全体にわたって、ダミーテラス、トレンチ及び半導体メサを含む下地構造上の塗布される樹脂の面内分布を測定する。第1配列構造を用いて、別の導波路メサの配列を含む下地構造を覆う樹脂の厚さの面内分布を得ることができる。
【0049】
工程S108では、決定されたウエハサイズを有するウエハ15上の第2配列構造の配列上に塗布された埋込用樹脂27の厚さを測定して、埋込用樹脂27の厚さとトレンチ幅WTとの相関関係を得る。第2配列構造を用いて、半導体メサを規定するための複数の異なる互いに異なるトレンチ幅WTによりそれぞれ規定された構造上の樹脂の厚さの分布を測定できる。この測定により、トレンチ幅と樹脂厚との相関関係を得ることができる。
【0050】
工程S109では、決定されたウエハサイズを有するウエハ上の埋込用樹脂のエッチングレートを測定して、該エッチングレートの面内分布を測定する。この測定のために別のウエハ(符号「15」として参照する)を準備する。このウエハ15上に、
図7の(a)部に示されるように、第1クラッド層17a、コア層17b及び第2クラッド層17cを順に成長して、エピタキシャル基板E1と同様の構造を有する別のエピタキシャル基板E2を作製する。別のエピタキシャル基板E2は、ウエハ15及び半導体積層17を含む。
【0051】
工程S110では、導波路のための下地構造を形成することなく、
図7の(b)部に示されるように、エピタキシャル基板E2の表面上に絶縁膜29を形成する。絶縁膜29は例えばSiO
2を含むことができる。絶縁膜29を形成した後に、工程S111では、エピタキシャル基板E2の平坦な表面上の絶縁膜29上に樹脂を塗布して樹脂体31を形成する。塗布される樹脂は例えばBCB樹脂であることができる。
【0052】
工程S112では、コンタクト開口に対応する開口の配列を規定するマスク33を樹脂体31上に形成する。このマスク33はレジストマスクを含む。マスク33は開口33aの配列を有する。
【0053】
工程S113では、マスク33を用いて樹脂体31をエッチングする。このエッチング条件として、樹脂体31へのコンタクト開口の形成のために条件を用いることができる。マスク33の開口33aには、面内のエッチングレートの分布に応じた深さの凹部が形成される。
【0054】
工程S114では、エッチングされた樹脂体31aにおける凹部31bの配列の深さを測定して、凹部深さの面内分布を得る。凹部深さの面内分布から、エッチングレートの面内分布を計算することができる。凹部深さの面内分布はエッチングレートの面内分布と実質的に等価であると考えられる。
【0055】
工程S107で得られた膜厚の面内分布、工程S108で得られた相関関係、及び工程S114で得られたで得られたエッチングレート面内分布を用いて、工程S115では、区画配列内の区画の各々において、導波路メサを規定するトレンチ幅を決定して、素子用ウエハ上におけるトレンチ幅マップを形成する。このトレンチ幅マップの実行により、マッハツェンダ変調器のアーム導波路へのコンタクト開口の均一性を高めることができる。
【0056】
このトレンチ幅マップを実行するために、工程S116では、縮小投影露光用のレチクル又はマスクアライナー用のフォトマスクを準備する。
【0057】
マッハツェンダ変調器の導波路メサのためのトレンチ構造(トレンチ構造47)を形成する際に、互いに異なるトレンチ幅を規定する単一のフォトマスク部材を用いて、トレンチ幅マップに従ったマスクパターンを形成する露光を行って、エピタキシャル基板上にマスクを作成することができる。素子用ウエハの区画においてトレンチ幅を分布させることは、マスクアライナーを用いた露光用フォトマスクのマスクパターンにより実現される。
【0058】
或いは、マッハツェンダ変調器の導波路メサのためのトレンチ構造(トレンチ構造47)を形成する際に、互いに異なるトレンチ幅を規定する複数のレチクルを用いてトレンチ幅マップに従ったマスクパターンを形成する露光を行って、マスクを作成することができる。トレンチ幅を素子用ウエハの区画において変更することは、ステップアンドリピート露光を用いた露光レチクルのパターンにより実現される。
【0059】
工程S117では、決定されたウエハサイズを有する素子用ウエハ41を準備する。工程S118では、この素子用ウエハ41上に、
図8の(a)部に示されるように、第1クラッド層17a、コア層17b及び第2クラッド層17cを順に成長して、エピタキシャル基板E3を作製する。エピタキシャル基板E3は、素子用ウエハ41と、該素子用ウエハ41上に導波路構造のための半導体積層43とを有する。
【0060】
工程S119では、
図8の(b)部に示されるように、導波路メサ及びダミーテラスのためのパターンを有するマスク45をエピタキシャル基板E3上に形成する。このマスク45は、エピタキシャル基板E3の半導体積層上において、トレンチ幅マップに基づくトレンチ幅のパターンを有する。工程S120では、
図8の(b)部に示されるように、このマスク45を用いて半導体積層43をエッチングして、エピタキシャル基板E3上の半導体積層43からトレンチ構造47を形成する。トレンチ構造47は、導波路メサ49a、49b、ダミーテラス53、及びトレンチ溝55a、55bを含む。トレンチ構造47は、トレンチ幅マップに従ったトレンチ幅の分布を有する。エッチングの後にマスク45を除去する。トレンチ構造47はダミー導波路メサ51を含むことができ、ダミー導波路メサ51はトレンチ55内に設けられ、導波路メサ49bとダミーテラス53との間に延在することができる。ダミー導波路メサ51は、トレンチ55をトレンチ溝55a、55bに分ける。必要な場合には、
図8の(c)部に示されるように、素子分離形成のためのマスク形成を行い、このマスクを用いたエッチングを行う。素子分離溝57をトレンチ55(トレンチ溝55a)内に形成して、ダミーテラス53から導波路メサ49を電気的に分離する。
【0061】
工程S120の結果、マスク45を用いた半導体積層43のエッチングにより、トレンチ構造47が形成される。このトレンチ構造47は、当該マッハツェンダ変調器のアーム導波路のための導波路メサ49a、49bを規定するトレンチ55の配列を含む。
【0062】
工程S121では、
図8の(d)部に示されるように、トレンチ構造47上に絶縁膜59を形成する。絶縁膜59は、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、又はシリコン窒化膜を含むことができる。この作製方法によれば、絶縁膜59として、シリコン酸化膜(例えばSiO
2)、シリコン酸窒化膜(例えばSiON)、又はシリコン窒化膜(例えばSiN)を用いることができる。工程S121の結果、トレンチ構造47を形成した後に、トレンチ構造47上に樹脂を塗布する前に、導波路メサ上において所望の膜厚を有するように、トレンチ構造47上に絶縁膜59が形成される。
【0063】
工程S122では、
図8の(d)部に示されるように、トレンチ幅マップに基づくトレンチ構造47上の絶縁膜59を覆うように樹脂を塗布して、樹脂体61を形成する。樹脂体61の厚さは、トレンチ幅マップに基づくトレンチ幅に応じた面内分布を有する。この面内分布は、導波路メサ上の開口を所望の形状で形成することを可能にする。工程S122の結果、トレンチ構造47上に樹脂を塗布して形成された樹脂体61が、トレンチ構造47を埋め込む。
【0064】
図8に示されるように、マスク45がトレンチ内にダミー導波路メサ51を形成するためのパターンを有することができる。このとき、トレンチ構造47は、トレンチのダミー導波路メサ51を含む。ダミー導波路メサ51は、導波路メサ49a、49bの方向に延在し、本実施例では、ダミー導波路メサ51の幅は導波路メサ49a、49bの幅より小さい。樹脂の塗布により、トレンチ幅内には樹脂体61が充填される。この樹脂体61の熱膨張率は半導体の熱膨張率と異なるので、トレンチ幅の拡大が行われるとき、この熱膨張率の違いから、樹脂体61の剥がれが生じる可能性が生じる。しかしながら、トレンチ内にダミー導波路メサ51を延在させることにより、トレンチ幅により調整した樹脂厚にあまり影響を与えることなく、トレンチ内の樹脂体積を小さく分けることができる。これにより、熱膨張率の違いに起因する樹脂体61が剥がれの可能性を低減できる。ダミー導波路メサ51と導波路メサ49bとの間隔は3μm以上であることができる。ダミー導波路メサ51と導波路メサ49bとの電気的な結合は、マッハツェンダ変調器の動作特性を低下させる可能性がある。電気的、及び光学的な結合を小さくするために、ダミー導波路メサ51と導波路メサ49bとの間隔を3μm以上の距離で離すことが好ましい。
【0065】
工程S123では、
図8の(e)部に示されるように、樹脂体61上にマスク63を形成する。マスク63は、導波路メサ49a、49b上に位置する開口63aを有する。この開口63aは、コンタクト開口を形成するために設けられる。
【0066】
工程S124では、
図8の(e)部に示されるように、マスク63を用いて樹脂体61をエッチングして、エッチングされた樹脂体65を形成する。エッチングされた樹脂体65はコンタクト開口65a、65bを有しており、コンタクト開口65a、65bは、それぞれ、導波路メサ49a、49b上に位置するする。さらに、導波路メサ49a、49b上の絶縁膜59をエッチングで除去して、導波路メサ49a、49bの上面49c、49dを露出させる。この工程S124の結果、導波路メサ49a、49bへのコンタクト開口65a、65bの配列が、トレンチ構造47の樹脂体61のエッチングにより形成される。工程S124の結果、樹脂のエッチングを行った後に、絶縁膜59のエッチングを行って導波路メサ49a、49bの表面を部分的に露出させる。
【0067】
工程S125では、
図9に示されるように、電極67a、67bをエッチングされた樹脂体65上に形成する。電極67a、67bは、それぞれ、導波路メサ49a、49b上に位置するコンタクト開口61bを介して、導波路メサ49a、49bの上面49c、49dに接触を成す。この結果、
図9に示されるようなマッハツェンダ変調器70が作製される。
【0068】
このようなマッハツェンダ変調器70を作製する方法によれば、当該マッハツェンダ変調器70のアーム導波路69a、69aへのコンタクト開口の均一性を得ることができる。マッハツェンダ変調器70は、アーム導波路69a、69aの一端に接続された光カプラ(例えばMMI)68a、及びアーム導波路69a、69aの他端に接続された光カプラ(例えばMMI)68bを含む。
【0069】
発明者の検討によれば、例えばウエハ15上に埋込用樹脂61を塗布するとき、均一ではない埋込用樹脂厚分布が形成される。一方、ウエハ面内のエッチングレートは、上記のような埋込用樹脂の膜厚分布とは独立した面内分布を示す。
【0070】
これらの面内分布とは別に、上記の第2配列構造を用いた検討によれば、埋込用樹脂で埋め込まれるトレンチ構造のトレンチ幅の違いに起因して該埋込用樹脂の膜厚に差異が生じる。また、第1配列構造を用いることにより、導波路のための半導体メサを規定するトレンチ構造上の埋込用樹脂の膜厚分布を得ることができる。第1配列構造及び第2配列構造上の埋込用樹脂の膜厚分布の違いから、下地の構造を利用して埋込用樹脂膜厚の調整量を見積もることができる。この調整量の考慮に、ウエハ面内のエッチングレートに係る面内分布を加えることができれば、コンタクト開口のばらつきを低減できる。また、エッチングレートの面内分布を打ち消すように上記の調整量を変更することができる。
【0071】
このばらつき低減は、マッハツェンダ変調器70を有する半導体チップのための複数の区画を含む区画配列を素子用ウエハの面内に規定する際に、半導体メサを規定するトレンチ構造のトレンチ幅を第2配列構造からの知見に基づき区画配列の区画において変更することにより可能になる。
【0072】
図10は、
図9に示されたI−I線にそってとられた断面を示す図面である。
図10を参照すると、トレンチ構造47は、第1半導体テラス53、当該マッハツェンダ変調器の一対のアーム導波路69a、69bの一方の導波路メサ49a、一対のアーム導波路69a、69bの他方の導波路メサ49b、及び第2半導体テラス54を含む。第1半導体テラス53、導波路メサ49a、導波路メサ49b、及び第2半導体テラス54は、当該マッハツェンダ変調器70のアーム導波路69a、69bの延在方向に交差する方向に、順に配列されている。第1半導体テラス53と導波路メサ49bとの間隔は、トレンチ幅マップに従うトレンチ幅にとられることができ、第2半導体テラス54と導波路メサ49bとの間隔はトレンチ幅マップに従うトレンチ幅にとられることができる。トレンチ幅の調整は、半導体テラス53と導波路メサ49bとの間隔、及び半導体テラス54と導波路メサ49aとの間隔に対して為される。
【0073】
トレンチ幅の調整がウエハ全体にわたって行われているので、素子用ウエハ41の区画配列うちの一区画において、半導体テラス53と導波路メサ49bとの間隔は第1トレンチ幅を有すると共に、素子用ウエハ41の区画配列うちの別の区画において、第1半導体テラス53と導波路メサ49bとの間隔は第2トレンチ幅を有する。このとき、第1トレンチ幅は第2トレンチ幅と異なることになる。この作製方法によれば、半導体チップのための、ウエハ面内に配列された区画において、その一の区画のトレンチ幅は別の区画のトレンチ幅と異なる。この違いにより、一の区画におけるコンタクト開口及び別の区画におけるコンタクト開口に関して、高い均一性を達成できる。
【0074】
(実施例)
まず、BCBの開口形状をウエハ面内で均一にするための、トレンチ幅を補正したマスクの設計方法を説明する。本実施例では、ステッパーを使用した露光について説明する。しかしながら、その説明は、マスクアライナーを用いる露光にも適用可能である。
【0075】
トレンチ幅と導波路メサ上のBCBの膜厚の関係を取得するために、導波路メサ高さと導波路メサ幅と導波路メサ上のBCB膜厚を決める。以下に一例を示す。
メサ高さ:3μm。
アイソレーションメサ深さ:0.8μm。
導波路メサ幅:1.5μm。
導波路メサ上のBCB膜厚:3μm。
使用するレチクルは、2種類のパターンを含む。単一のレチクルは、ウエハ面内でBCB膜厚分布を測定するために、導波路メサ脇のトレンチ幅を固定したパターン(例えば、トレンチ幅は130μm)を含み、またトレンチ幅と導波路メサ上BCB膜厚の関係を測定するためにトレンチ幅を離散的に徐々に変化させたパターン(例えば、トレンチ幅を20μm間隔で20μmから240μmまで変化させたパターン)を含む。この2種類のパターンは別々のレチクルに作製してもよいが、利便性のため一緒に作製したほうがよい。
【0076】
次に、2枚のウエハを用意する。これらのウエハ上に、有機金属気相成長法によって半導体基板上に第1クラッド層、コア層、第2クラッド層の順に形成して、エピタキシャル基板を準備する(例えば
図6の(a)部)。ウエハは、半絶縁性の半導体基板であり、InP等のIII−V族化合物半導体からなる。第1クラッド層は、InP等のIII−V族化合物半導体からなる。コア層は、例えば、AlGaInAs等のIII−V族化合物半導体からなる。第2クラッド層は、例えばInP等のIII−V族化合物半導体からなる。
【0077】
まず、2枚のエピタキシャル基板の一方を加工し、導波路を形成する(例えば
図6の(b)部)。エピタキシャル成長の後に、導波路形成のためのマスク用のSiNからなる絶縁層をエピタキシャル層上に堆積し、この後に、導波路のためのパターンを有するレジストマスクを形成する。絶縁層は、例えば化学気相成長法によって形成することができる。レジストマスクは、例えばスピン塗布法によって絶縁層上の全面にレジスト層を形成した後にフォトリソグラフィによりレジスト層にパターン形成することにより形成される。このとき、露光用のレチクルは、トレンチ幅を補正していないパターンを有する。本実施例では、ショットサイズが9mm×9mmであり、3インチウエハ上において、
図5に示されるショットマップを用いる。レチクルは、
図11に示されるように、ショットサイズ9mm×9mmのエリアにマッハツェンダ変調器のための半導体チップの区画MZと、テストエレメントグループチップの区画TEGとを含む。また、区画TEGは、2種類のパターンを有する。第1配列構造のための第1パターン72は、
図12の(a)部に示されるように、同一のトレンチ幅を有する導波路メサ及び半導体テラスを規定しており、導波路メサと半導体テラス導波路との間隔(トレンチ幅)を一定にするようなメサ及び半導体テラスの交互の配列を含む。この第1パターン72は、例えばあるトレンチ幅を有するトレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含む第1配列構造の作成でのために利用される。第2配列構造のための第2パターン73は、
図12の(b)部に示されるように、互いに異なるトレンチ幅を有する導波路メサ及び半導体テラスを規定しており、導波路メサと半導体テラス導波路との間隔(トレンチ幅)を徐々に変化させるようなメサ及び半導体テラスの交互の配列を含む。第2パターン73は、例えば互いに異なるトレンチ幅のトレンチにより規定され導波路のための半導体メサを含む第2配列構造の作成でのために利用される。
【0078】
続いて、例えばCF
4ガスを含むエッチングガスを用いて反応性イオンエッチング法により絶縁層をエッチングして、レジストマスクのパターンを絶縁層に転写する。これにより、絶縁膜マスクが形成される。その後に、O2ガスを用いたアッシング処理、及び有機溶剤による溶解処理等によってレジストマスクを除去する。
【0079】
絶縁膜マスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチング法等のドライエッチング法によって第2クラッド層とコア層をエッチングすると共に第1クラッド層の一部をエッチングする。エッチングの後に、絶縁膜マスクをバッファードフッ酸で除去する。この工程により、導波路メサを形成する。
【0080】
次に、露出した第1クラッド層の一部を基板までエッチングして、素子分離メサを形成する(例えば
図6の(c)部)。このために、まず、導波路を形成した基板生産物に、SiNからなる絶縁層を堆積すると共に、この絶縁層上にレジストマスクを形成する。続いて、例えばCF4ガスを含むエッチングガスを用いて反応性イオンエッチング法によりレジストマスクで絶縁層をエッチングして、レジストパターンを絶縁層に転写する。その後、O2ガスを用いたアッシング処理や有機溶剤による溶解処理等によってレジストマスクを除去する。
【0081】
次いで、パターニングされた絶縁層をマスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチング法等のドライエッチング法によって、第1クラッド層と基板の一部をエッチングする。続いて、マスクとして用いた絶縁層をバッファードフッ酸で除去する。このようにして素子分離メサを形成する。
【0082】
続いて、素子分離メサと、素子分離メサ上の導波路メサの半導体が露出する全面に、SiO
2からなる保護層を形成する(
図6の(d)部)。保護層の形成には、例えば化学気相成長法が適用されることができる。保護層の厚さは、例えば200nm〜400nmであることができる。
【0083】
保護層で覆われた素子分離メサ及び導波路メサを、例えばスピン塗布法によって上の全面にベンゾシクロブテン(BCB)からなる樹脂層をその表面が平坦になるように形成する(
図6の(d)部)。導波路メサ上のBCBの厚さは、例えば1.5μm〜3.0μmであることができる。本実施例では、BCBは、導波路メサ上のBCB厚が3μmになるように塗布される。このようにして、基板生産物が作製される。
【0084】
InPウエハ、下地の導波路構造、SiN保護層及びBCB樹脂体を含む基板生産物のへき開を、ウエハ中心のショットを通りオリエンテーションフラット(OF)に平行な方向に行う。このへき開の断面に現れる各ショットの導波路メサ上のBCB膜厚及びトレンチ間隔を測定する。
図13は、導波路メサ上のBCB樹脂厚の面内分布を示す図面である。
図14は、トレンチ間隔と、導波路メサ上のBCB樹脂厚との相関関係を示す図面である。
【0085】
続いて、残りの1枚のエピタキシャル基板の加工を行う。エピタキシャル基板の露出する全面にSiO
2等からなる保護層を形成する(
図7の(b)部)。この保護層の形成は、例えば化学気相成長法によって行なわれる。保護層の厚さは、例えば200nm〜400nmであることができる。
【0086】
次に、この保護層の全面上に例えばスピン塗布法によってBCBからなる樹脂層をその表面を平坦化するように形成する(
図7の(c)部)。導波路メサ上のBCBの厚さは、例えば1.5μm〜3.0μmであることができる。本実施例では、導波路メサ上のBCB厚が3μmになるように塗布される。
【0087】
このBCB樹脂層上にレジストマスクを形成する(
図7の(d)部)。レジストマスクは、導波路上の領域に位置する開口パターンを有する。これらの開口パターンは導波路に沿って形成されている。このようなレジストマスクの形成は、樹脂層上全面にレジスト層を塗布した後に、フォトリソグラフィによってレジスト層をパターン形成することにより行なわれる。
【0088】
次に、CF4ガスとO2ガスを含むエッチングガスで反応性イオンエッチング法によりレジストマスクを用いて樹脂層をエッチングして、深さ2μm程度の凹部を形成する(
図7の(e)部)。エッチングの後に、有機溶剤による溶解処理等によってレジストマスクを除去する。その後に、ウエハ面内に配列された凹部のBCB厚を段差計で測定して、ショット毎のエッチングレートを導出する。
図15は、InPウエハ、下地のエピタキシャル膜構造、SiN保護層及びBCB樹脂体を含む基板生産物におけるウエハ中心のショットを通りオリエンテーションフラット(OF)に平行な方向のショット毎のBCBエッチングレートの面内分布を示す図面である。
【0089】
図16は、導波路メサ上のBCB膜厚分布と、BCBエッチングレートとから、導波路メサ上のBCBをすべてエッチングする時間を導出した値の面内分布を示す図面である。導出した結果に基づき、ウエハ面内で最もエッチング時間がかかる場所のメサ上のBCB膜厚が、BCB膜厚の目標値(本実施例では3μm)より薄い場合や厚い場合には、BCB塗布時のスピン回転数を調整して、目標のBCB膜厚の範囲内の膜厚を実現する。本実施例では、例えば導波路メサ上のBCB厚が2.9μm〜3.1μmの範囲を目標値の達成としている。必要に応じて、目標のBCB膜厚の範囲の膜厚を達成するようにBCB塗布時の回転数を調整する。その場合は、BCB塗布時のスピナーの回転数を調整しながら、上記工程を繰り返すことがよい。この調整のために、予め異なるスピン回転数で塗布したBCB膜を含むサンプルを用意することが好ましい。
【0090】
次の工程に進む。
図16を参照すると、導波路上のBCBをすべてエッチングして開口を形成できるまでの時間がわかる。これを利用して、その時間だけエッチングをした場合に、それぞれのショットの導波路上メサのBCBがどれだけオーバーエッチングされるかの面内分布を
図17のように導出できる。
図17は、InPウエハ、下地のエピタキシャル膜構造、SiN保護層及びBCB樹脂体を含む基板生産物上の、ウエハ中心のショットを通りオリエンテーションフラット(OF)に平行な方向のショット毎のオーバーエッチング量の面内分布を示す図面である。BCBのオーバーエッチング量が多いエリアでは、その後の工程で電極を形成した場合段切れする可能性があるので、オーバーエッチング量は、適切な範囲に収める必要がある。BCBのオーバーエッチング量は、例えば150nm以下であることが好ましく、さらには100nm以下であることが好ましい。
【0091】
この実施例では、一ショットが9mm×9mmであるので、3インチウエハでは外側の2つのショットのBCBオーバーエッチング量が100nmを超えている。外側のショットのトレンチ幅の補正を行うことが良い。また、
図14から、導波路メサ上のBCB膜厚が3μm程度にするためにトレンチ幅を読み取ると、ウエハ中心からの距離が27mmのショットではトレンチ幅が100.9μm、であり、18mmのショットではトレンチ幅が111.7μmであり、−18mmのショットではトレンチ幅が116.5μm、であり、−27mmのショットではトレンチ幅が997.3μmであることが良い。レチクルの枚数を減らすために、BCB膜厚の分布が小さいエリアは、例えばウエハ中心からの距離の絶対値(半径)が同じエリアは、そのエリアの平均による値を代表値として扱うことができる。この場合では、ウエハ中心からの距離が18mm(−18mm及び+18mm)のショットでは、114.1μmであることができ、ウエハ中心からの距離が27mm(−27mm及び+27mm)のショットでは、99.1μmであることができる。
【0092】
これらのマッピング情報をもとに、個々のショットに応じてトレンチ幅を変更できるように、異なるトレンチ幅を有する複数のレチクルを作製する。これらのレチクルを用いて、見直したマッピング情報に対応するトレンチ幅を有する導波路メサを作製し、そのトレンチ構造上のBCBを塗布した後に、BCB開口を行う。
【0093】
このための2枚のウエハを用意する。これらの半導体基板には、有機金属気相成長法によって第1クラッド層、コア層、及び第2クラッド層の順に形成して、エピタキシャル基板を作製する。これまでと同様に導波路を作製した後に、エピタキシャル成長後にウエハ上にSiNからなる絶縁層を形成する。レジスト層を例えばスピン塗布法によって絶縁層上の全面にレジスト層を形成した後に、フォトリソグラフィにより所定のパターンを形成する。このときのレチクルとしては、トレンチ幅を補正していないレチクルとトレンチ幅を補正したレチクルとをウエハ毎に使い分ける。本実施例では、3インチウエハ上に、9mm×9mmサイズのショットを、
図18に示されるショット配置を従って実現する。トレンチ幅を補正するウエハでは、
図18の(a)部に示されるように、ウエハ中心から半径0mmまでのショットにおいてはトレンチ幅130μmのレチクルS1を用い、ウエハ中心から半径19mmのショットではトレンチ幅が114.1μmのレチクルS2を用い、ウエハ中心から半径27mmのショットではトレンチ幅が99.1μmのレチクルS3を用いる。一方、トレンチ幅を補正しないウエハでは、
図18の(b)部に示されるように、すべてのショットでトレンチ幅130μmのレチクルS1を用いる。
【0094】
次いで、例えばCF
4ガスを含むエッチングガスを用いて反応性イオンエッチング法を行って、レジストマスクを用いて絶縁層をエッチングする。絶縁層には、レジストパターンが転写される。その後に、O2ガスを用いたアッシング処理や有機溶剤による溶解処理等によってレジストマスクを除去する。
【0095】
続いて、パターン形成された絶縁層をマスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチング法等のドライエッチング法によって第2クラッド層及びコア層と、第1クラッド層の一部とをエッチングする。絶縁膜マスクをバッファードフッ酸で除去する。このようにして導波路メサが形成される。
【0096】
次に、露出した第1クラッド層の一部を基板までエッチングして、素子分離メサを形成する。このように導波路を形成した基板生産物に、SiNからなる絶縁層とレジストマスクを順に形成する。続いて、例えばCF4ガスをエッチングガスとして用いた反応性イオンエッチング法により、レジストマスクとして絶縁層をエッチングする。レジストパターンが絶縁層に転写される。レジストマスクは、O2ガスを用いたアッシング処理や有機溶剤による溶解処理等によって除去される。さらに、パターニングされた絶縁層をマスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチング法等のドライエッチング法によって、第1クラッド層と基板の一部をエッチングして、素子分離メサが形成される。この後に、絶縁膜マスクをバッファードフッ酸で除去する。
【0097】
次に、導波路メサ及び素子分離メサの全面にSiO
2の絶縁材料からなる保護層を形成する。保護層の形成は、例えば、化学気相成長法によって行うことができる。保護層の厚さは、例えば200nm〜400nmであることができる。次に、例えばスピン塗布法によって保護層上の全面にBCB樹脂層をその表面が平坦化するように形成する。導波路メサ上のBCBの厚さは、例えば1.5μm〜3.0μmであることができる。本実施例では、導波路メサ上のBCBの厚さが3μmになるように塗布する。
【0098】
続いて、BCB樹脂層上にレジストマスクを形成する。レジストマスクは、導波路上の領域に開口を形成するためのパターンを有する。開口パターンは導波路メサに沿って帯状に形成されている。このようなレジスト形成は、レジスト塗布及びフォトリソグラフィによって行われることができる。
【0099】
次に、CF4ガスとO2ガスを含むエッチングガスの反応性イオンエッチング法により、レジストマスクを用いて、BCB樹脂層をエッチングして、その下の保護層を露出させる。その後に、有機溶剤による溶解処理等によってレジストマスクを除去する。
【0100】
そして、ウエハ中心のショットを通りOFに平行な方向に基板生産物をへき開する。この劈開断面におけるBCBのオーバーエッチング量を断面SEMを用いて測長した。
図19は、オーバーエッチング量の面内分布を示す図面である。トレンチ幅を補正しなかった場合は、最大で450nm程度オーバーエッチングしているけれども、トレンチ幅を補正した場合には最大で92nm程度のオーバーエッチング量である。BCBオーバーエッチング量はウエハ面内で100nm以下となり、後の工程において電極の段切れを避けて電極形成することができる。
【0101】
本実施例では、ステッパーを用いた方法を記載したが、マスクアライナを使用した時も同様の方法でマスクを作製できる。マスクアライナを使用した場合は、単一のマスク内で徐々にトレンチ幅を変えることができることが利点である。
【0102】
本実施例では、導波路メサと半導体テラスの間にダミー半導体メサを設けていないけれども、導波路メサと半導体テラスの間隔が広い場合には、BCBで埋め込んだ後に導波路メサ上のBCBに開口を形成するとき、
図20に示されるように、半導体メサを覆っている保護層とBCBとの界面においてはがれが発生することがある。この実施例においては、導波路メサと半導体テラスの間隔が100μm以上離れているとき、部分的にBCBのはがれが観察されることがある。そこで、導波路メサと半導体テラスと間に、例えばほぼ中央に、幅3μmのダミー半導体メサを設けて、再度BCB開口を形成するときには、BCBのはがれは観察されていない。ダミー半導体メサの幅が3μm以下であるとき、導波路メサ上BCB膜厚に影響がない。マッハツェンダ変調器のアーム導波路へのコンタクト開口は帯状の形状を有しており、本実施の形態の作製方法は、特にこのような形状の開口の均一性を高めることができる。
【0103】
本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。