特許第5942815号(P5942815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942815
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】等速ジョイント用ブーツの成形金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/36 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   B29C45/36
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-257532(P2012-257532)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-104619(P2014-104619A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 弘
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 和生
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−126033(JP,A)
【文献】 特開昭59−020637(JP,A)
【文献】 特開平11−245230(JP,A)
【文献】 特開平05−261776(JP,A)
【文献】 特開昭57−072824(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0153540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内金型、及び前記内金型との間でキャビティを形成する外金型を用いて等速ジョイント用ブーツを射出成形する等速ジョイント用ブーツの成形金型であって、
前記内金型は、
円形の外周面を有するとともに軸線が上下方向に延びるように配置されるコアシャフトと、
前記コアシャフトの軸線を中心として、当該コアシャフトの外周面に沿って放射状に配置される複数の分割型と、
前記複数の分割型の下方に配置され、前記コアシャフトが挿通される円筒状のセットリングとを有し、
前記セットリングの上端部の内周側には、下方へ向かって漸次縮径するテーパ面からなり、前記複数の分割型の下端部を導入して係合させるための環状の係合面が形成されており、
前記複数の分割型の下端部が前記セットリングに導入された状態で、前記複数の分割型の上端部を下方に押圧することにより、当該複数の分割型の下端部を前記係合面に係合させて、各分割型を互いに密着させる押圧手段を備えていることを特徴とする等速ジョイント用ブーツの成形金型。
【請求項2】
前記押圧手段は、前記コアシャフトの外周に突設された突出部からなる請求項1に記載の等速ジョイント用ブーツの成形金型。
【請求項3】
前記押圧手段を前記複数の分割型に押圧した状態で保持するために、前記コアシャフトの下端部を下方に引き込む引き込み手段をさらに備えている請求項1又は2に記載の等速ジョイント用ブーツの成形金型。
【請求項4】
前記各分割型の下端部には、当該下端部が前記セットリングに導入された状態で、前記セットリングの外周面に対向する対向面が形成されており、
前記セットリングの外周には、前記対向面に圧接するOリングが装着されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の等速ジョイント用ブーツの成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速ジョイント用ブーツの成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両において、路面に追従して上下動する駆動輪に回転力を伝達するために等速ジョイントが用いられている。この等速ジョイントには、外部の泥水や塵埃から等速ジョイントを保護するとともに、等速ジョイントに給脂された潤滑用のグリースを保持するために、合成樹脂製の等速ジョイント用ブーツが装着されている。等速ジョイント用ブーツは、円筒状の大径部及び小径部と、これら大径部及び小径部を連結する蛇腹部とからなり、ブロー成形法によって成形されるのが一般的である。
【0003】
前記ブロー成形法では、袋状に形成された溶融樹脂を外金型内にセットし、内金型を用いることなく、エアーブローで前記袋状の溶融樹脂を膨張させて外金型に押し付けることにより成形する。このため、ブロー成形法は、等速ジョイント用ブーツの内周面を精度良く成形することができないため、精密な蛇腹構造を必要とする等速ジョイント用ブーツの成形方法として最適であるとはいえない。そこで、特許文献1に示すように、外金型と内金型(コア金型)とを用いて等速ジョイント用ブーツを射出成形する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1の射出成形で用いられる内金型は、上端から下端に向かうに従って漸次拡径するように形成された中芯と、この中芯の外周に沿って配置された複数の分割型とによって構成されている。この内金型は、等速ジョイント用ブーツの成形が完了したときに、その成形体を外金型から取り出すために、中芯及び各分割型を分離した後、再度組み立てられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−126033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された内金型にあっては、中芯と分割型とを組み立てるときに、中芯を押し上げることによって各分割型を径方向外側に押し広げる工程(特許文献1の図3から図1の状態にする工程)が必要になる。このため、中芯を押し上げたときに、周方向に隣接する分割型同士の間に隙間が生じ易くなり、この隙間が生じた状態で射出成形を行うと、成形体にバリが発生するという問題があった。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、射出成形後の成形体にバリが発生するのを防止することができる等速ジョイント用ブーツの成形金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の等速ジョイント用ブーツの成形金型は、内金型、及び前記内金型との間でキャビティを形成する外金型を用いて等速ジョイント用ブーツを射出成形する等速ジョイント用ブーツの成形金型であって、前記内金型は、円形の外周面を有するとともに軸線が上下方向に延びるように配置されるコアシャフトと、前記コアシャフトの軸線を中心として、当該コアシャフトの外周面に沿って放射状に配置される複数の分割型と、前記複数の分割型の下方に配置され、前記コアシャフトが挿通される円筒状のセットリングとを有し、前記セットリングの上端部の内周側には、下方へ向かって漸次縮径するテーパ面からなり、前記複数の分割型の下端部を導入して係合させるための環状の係合面が形成されており、前記複数の分割型の下端部が前記セットリングに導入された状態で、前記複数の分割型の上端部を下方に押圧することにより、当該複数の分割型の下端部を前記係合面に係合させて、各分割型を互いに密着させる押圧手段を備えていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、セットリングに形成された係合面は下方へ向かって漸次縮径しているため、分割型の上端部を押圧手段で押圧することにより、各分割型の下端部は係合面に沿ってコアシャフトの軸線側に移動しながら係合面に係合する。これにより、周方向に隣接する分割型同士を互いに密着させることができるため、射出成形後の成形体にバリが発生するのを防止することができる。
【0009】
前記押圧手段は、前記コアシャフトの外周に突設された突出部からなることが好ましい。この場合、押圧手段をコアシャフトと別体として設ける場合に比べて、成形金型の構造を簡素化することができる。
【0010】
前記成形金型は、前記押圧手段を前記複数の分割型に押圧した状態で保持するために、前記コアシャフトの下端部を下方に引き込む引き込み手段をさらに備えていることが好ましい。
この場合、引き込み手段によりコアシャフトを下方に引き込むことにより、コアシャフトの突出部を複数の分割型の上端部に押圧した状態で保持することできる。これにより、周方向に隣接する分割型同士を互いに密着させた状態で保持することができるため、射出成形後の成形体にバリが発生するのを効果的に防止することができる。
【0011】
前記各分割型の下端部には、当該下端部が前記セットリングに導入された状態で、前記セットリングの外周面に対向する対向面が形成されており、前記セットリングの外周には、前記対向面に圧接するOリングが装着されていることが好ましい。
この場合、各分割型をセットリングに導入したときに、各分割型の下端部はセットリングに装着されたOリングに圧接されるため、この状態から各分割型がセットリングに対して上下動するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の等速ジョイント用ブーツの成形金型によれば、射出成形後の成形体にバリが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る等速ジョイント用ブーツの成形方法が用いられる成形金型を示す断面図である。
図2】上記成形金型の内金型を示す概略平面図である。
図3】上記成形金型の下金型から内金型を取り外す状態を示す断面図である。
図4】上記内金型を分解及び組み立てる分解組立機を示す断面図である。
図5】上記分解組立機の支持部材の作動状態を示す断面図である。
図6】上記支持部材の平面図である。
図7】上記分解組立機の第1クランプの作動状態を示す断面図である。
図8】上記分解組立機のエジェクタ及び第2クランプの作動状態を示す断面図である。
図9】上記成形方法の工程途中を示す分解組立機の断面図である。
図10】上記成形方法の工程途中を示す分解組立機の断面図である。
図11】上記成形方法の工程途中を示す分解組立機の断面図である。
図12】上記分解組立機の分割型の分解手順を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る等速ジョイント用ブーツの成形方法が用いられる成形金型を示す断面図である。図1において、成形金型1は、等速ジョイント用ブーツ9を射出成形するものであり、左右一対の外金型11と、外金型11の内側に配置された内金型12と、外金型11の下側に配置された下金型13とによって構成されている。等速ジョイント用ブーツ9は、円筒状に形成された大径部9a及び小径部9cと、これら大径部9a及び小径部9cを連結する蛇腹部9bとによって構成されている。
【0015】
外金型11は、下金型13の上面において水平方向(図1の左右方向)に移動可能に配置されている。外金型11の内側面には、等速ジョイント用ブーツ9における大径部9a,蛇腹部9b及び小径部9cの各外周面の形状に対応する型面11aが形成されている。この型面11aと内金型12の型面152a〜152h(後述)との間にはキャビティ19bが形成されている。また、外金型11には、前記キャビティ19b等に成形材料を導入するための導入路11bが形成されている。なお、成形材料としては、例えばエラストマー(熱可塑性ポリエステルエラストマーや熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー等)が用いられる。
【0016】
下金型13の上面には、上方に突出する段差部13aが形成されており、この段差部13aには取付孔13bが形成されている。段差部13aの側面には、等速ジョイント用ブーツ9における大径部9aの内周面の形状に対応する型面13cが形成されている。この型面13cと外金型11の型面11aとの間にはキャビティ19cが形成されている。
内金型12は、軸線Xが上下方向に延びるように配置されたコアシャフト14と、このコアシャフト14の径方向外側に配置された複数の分割型15a〜15h(図2参照)と、これら分割型15a〜15hの下方に配置されたセットリング16とによって構成されている。
【0017】
コアシャフト14は、中実の円柱部材からなり、円形の外周面14aを有している。コアシャフト14の上端部の外周には、径方向外側に突出する環状の突出部14b(押圧手段)が一体に形成されており、この突出部14bの下面は、各分割型15a〜15hの上面に当接することで、各分割型15a〜15hの上端部を下方に押圧するようになっている(図2も参照)。
【0018】
突出部14bの外周面には、等速ジョイント用ブーツ9における小径部9cの内周面の形状に対応する型面14cが形成されている。この型面14cと外金型11の型面11aとの間にはキャビティ19aが形成されている。
コアシャフト14の下端部の外周には、凹状の複数の係止部14dが一体に形成されている。これら係止部14dには、コアシャフト14の下端部を下方に引き込む引き込み手段10が係止されるようになっている。引き込み手段10は、前記各係止部14dにそれぞれ係止可能な複数の鉤部10aを有している。
【0019】
図2は、内金型12を示す概略平面図である。図1及び図2において、内金型12は、前記複数の分割型15a〜15hとして、平面視矩形状に形成された第1〜第4分割型15a〜15dと、平面視扇形状に形成された第5〜第8分割型15e〜15hとを備えている。これら分割型15a〜15hは、コアシャフト14の軸線Xを中心として、コアシャフト14の外周面14aに沿って放射状に配置されている。その際、平面視矩形状の分割型15a〜15d、及び平面視扇形状の分割型15e〜15hは、周方向に交互に配置され、全体として平面視円形に形成されている。
【0020】
図1及び図2において、各分割型15a〜15hの内周面151a〜151hは、コアシャフト14の外周面14aに沿って円弧状に形成されている。各分割型15a〜15hの外周面には、等速ジョイント用ブーツ9における大径部9a及び蛇腹部9bの各内周面の形状に対応する型面152a〜152hが形成されている。各分割型15a〜15hの下面は、下金型13の段差部13a上に載置されている。
【0021】
各分割型15a〜15hの下面には、セットリング16の上端部が挿入される第1凹部153a〜153hと、後述する第1〜第8支持部材23a〜23hがそれぞれ挿入される断面四角状の第2凹部154a〜154hとが形成されている。
第1凹部153a〜153hは、分割型15a〜15hが図2に示すように平面視円形に配置された状態で、全体として環状に形成されている。この状態において、第1凹部153a〜153hの内側面には、上端から下方へ向かって漸次縮径するテーパ面となる環状の被係合面15iが形成されている。第1凹部153a〜153hの外側面は、セットリング16の上端部が第1凹部153a〜153hに挿入された状態で、セットリング16の外周面に対向するように形成されている。
【0022】
図1において、セットリング16は、全体が円筒状に形成されており、下金型13の取付孔13b内に着脱可能に装着されている。セットリング16の内周面16aには、コアシャフト14の下部が上下動自在に挿通されている。また、セットリング16の上端部の内周側には、当該上端部が前記第1凹部153a〜153hに挿入された状態で、各分割型15a〜15hの下端部を導入して係合させるための環状の係合面16bが形成されている。この係合面16bは、内周面16aよりも大径に形成されており、上端から下方へ向かって漸次縮径するテーパ面からなる。
【0023】
セットリング16の上端部の外周には、環状溝16cが形成されており、この環状溝16cには、各分割型15a〜15hの第1凹部153a〜153hの外側面(対向面)に圧接するOリング17が装着されている。セットリング16の外周には、前記環状溝16cの下方に、チャック3の複数の爪部3a(図3参照)がそれぞれ係合する複数の第1係合溝16dが形成されている。また、セットリング16の下端部の外周には、後述する保持部材22の係合爪22cが係合する複数の第2係合溝16eが形成されている。
【0024】
図3は、射出成形後に下金型13から内金型12を取り外す状態を示す断面図である。図3において、下金型13には、取付孔13b内に装着されたセットリング16の下面を押し上げるために、棒状に形成された複数(例えば4本)のエジェクタ18が上下動可能に配置されている。これにより、図1の状態にある一対の外金型11を内金型12から離反させるように左右両側へ移動させた後、図3に示すように、各エジェクタ18を上方に移動させることでセットリング16の下面を押し上げることができる。このようにセットリング16を押し上げると、コアシャフト14、分割型15a〜15h及び等速ジョイント用ブーツ9の成形体Wがセットリング16と共に上方へ移動し、内金型12を下金型13の上方に分離させることができる。
さらに、この状態から、チャック3の複数の爪部3aをセットリング16の各係合溝16dに係合して持ち上げることにより、内金型12及び成形体Wを後述する分解組立機2へ移動させることができる。
【0025】
図4は、内金型12を分解及び組み立てる分解組立機2を示す断面図である。図4において、この分解組立機2は、前記チャック3により成形金型1から移動した内金型12を分解して成形体Wを取り出すとともに、分解した内金型12を再び組み立てるものである。分解組立機2は、基台21と、一対の保持部材22と、第1〜第8支持部材23a〜23h(図6参照)と、一対の第1クランプ24(図7参照)と、エジェクタ25(図8参照)と、一対の第2クランプ26(図8参照)とを備えている。
【0026】
図4において、基台21は、コアシャフト14の軸線Xが上下方向に延びている状態で、コアシャフト14の下端部を挿入した状態で支持する円筒部21aを有している。円筒部21aの上面は、コアシャフト14の下端部が挿入されたときに、セットリング16の下面に当接することにより、コアシャフト14の下方移動を規制するようになっている。円筒部21aの底部には、基台21の下方からエジェクタ25を挿通させるための貫通孔21bが形成されている。
【0027】
一対の保持部材22は、セットリング16を基台21の円筒部21a上に配置した状態で保持するものであり、基台21の上方において、水平方向(図4の左右方向)に移動可能に配置されている。各保持部材22の先端部は、水平部22aと垂直部22bとによって断面L字状に形成されており、前記垂直部22bの上端部には、セットリング16の第2係合溝16eに係合する係合爪22cが形成されている。
なお、分解組立機2は、図4の状態において、外金型11の導入路11bにおいて成形されたランナー部4(図4のクロスハッチング部分)をカットする切断手段(図示省略)をさらに備えている。
【0028】
図5は、分解組立機2の第1〜第8支持部材23a〜23hの作動状態を示す断面図である。図4及び図5において、第1〜第8支持部材23a〜23hは、各分割型15a〜15hをセットリング16から分離した状態で支持するものである。各支持部材23a〜23hは、保持部材22の水平部22aと各分割型15a〜15hとの間に配置され、個別に上下方向及び水平方向に移動可能とされている。各支持部材23a〜23hの先端部には、上下方向に延びる棒状の係合部231a〜231hを有している。各係合部231a〜231hは、各分割型15a〜15hの第2凹部154a〜154hにそれぞれ係合されるようになっている。
【0029】
図6は、第1〜第8支持部材23a〜23hの平面図である。図6に示すように、第1〜第8支持部材23a〜23hは、軸線Xを中心として放射状に配置されている。各支持部材23a〜23hの係合部231a〜231hは、各分割型15a〜15hの第2凹部154a〜154hの断面形状に合わせて断面四角状に形成されている。これにより、支持部材23a〜23hに支持された分割型15a〜15hが、支持部材23a〜23hを中心として水平方向に回転するのを規制することができる。
【0030】
図7は、分解組立機2の第1クランプ24の作動状態を示す断面図である。図7において、一対の第1クランプ24は、支持部材23a〜23hにより各分割型15a〜15hが持ち上げられた状態になると、成形体Wを保持するものであり、水平方向(図の左右方向)及び上下方向に移動可能に配置されている。各第1クランプ24の内側面には、成形体Wにおける大径部9a,蛇腹部9b及び小径部9cの各外周面の形状に対応する保持面24aが形成されている。この保持面24aにより成形体Wの外周面を左右両側から挟み込んだ状態で保持することができる。
【0031】
図8は、分解組立機2のエジェクタ25及び第2クランプ26の作動状態を示す断面図である。図8において、エジェクタ25は、基台21の円筒部21aに挿入されているコアシャフト14の下面を押し上げるものであり、基台21の貫通孔21bにその下方から挿通可能な棒状部材からなる。
一対の第2クランプ26は、エジェクタ25により押し上げられたコアシャフト14の上端部を保持しながら上方に引き出すものであり、第1クランプ24の上方において上下動可能に配置されている。各第2クランプ26の先端部には、コアシャフト14の突出部14bの上端角部に係合する係合部26aが形成されている。この係合部26aにより、コアシャフト14の上端部を左右両側から挟み込んだ状態で保持することができる。
【0032】
次に、上述した成形金型1及び分解組立機2を用いた等速ジョイント用ブーツ9の成形方法について説明する。
まず、図1に示すように、成形金型1において、コアシャフト14の下端部の係止部14dに、引き込み手段10の鉤部10aを係止させた状態で、コアシャフト14の下端部を下方に引き込んだ状態で保持する。その際、コアシャフト14の上端部の突出部14bが、内金型12の各分割型15a〜15hを下方に押圧するため、分割型15a〜15hの下端部は、セットリング16のテーパ面である係合面16bに沿って軸線X側に移動しながら係合面16bに係合する。これにより、周方向に隣接する分割型15a〜15h同士を互いに密着させた状態で保持することができる。
【0033】
次に、成形金型1における一対の外金型11、内金型12及び下金型13を用いて等速ジョイント用ブーツ9の成形体Wを射出成形する。具体的には、外金型11の導入路11bから各キャビティ19a〜19cに成形材料を順次導入することで、成形体Wを射出成形する。その際、導入路11bにおいてランナー部4(図3参照)も成形体Wと一体に成形される。成形体Wを射出成形した後は、コアシャフト14の係止部14dから前記工具を取り外し、コアシャフト14の下方への引き込みを解除する。
【0034】
次に、図1の状態から、一対の外金型11を内金型12から分離させるように左右両側へ移動させた後、内金型12を下金型13から分離する。具体的には、図3に示すように、エジェクタ18によりセットリング16の下面を押し上げ、セットリング16をコアシャフト14、分割型15a〜15h及び成形体Wと共に下金型13の上方に移動させる。この状態から、チャック3の各爪部3aをセットリング16の各係合溝16dに係合して持ち上げる。これにより、内金型12を下金型13から分離することができる。
【0035】
次に、チャック3により内金型12を成形体Wと共に分解組立機2に移動させ、図4に示すように、内金型12のコアシャフト14の下端部を基台21の円筒部21a内に挿入し、一対の保持部材22をセットリング16の第2係合溝16eに係合させる。これにより、セットリング16は基台21上に保持される。そして、この状態において、成形体Wと一体に成形されたランナー部4をカットする。
【0036】
次に、図4に示す状態から、第1〜第8支持部材23a〜23hを上方に移動させ、その各係合部231a〜231hを各分割型15a〜15hの第2凹部154a〜154hに係合させる。この状態から、第1〜第8支持部材23a〜23hをさらに上方に移動させて、各分割型15a〜15hを持ち上げる。その際、内金型12全体が持ち上がろうとするが、セットリング16は保持部材22により基台21上に保持されているため、図5に示すように、各分割型15a〜15h及びコアシャフト14がセットリング16に対して上方に移動する。これにより、各分割型15a〜15hを成形体Wと共にセットリング16から分離することができる。
【0037】
次に、図7に示すように、一対の第1クランプ24を、図中の矢印方向にそれぞれ移動させ、成形体Wを左右両側から挟み込んだ状態で保持する。その後、図8に示すように、基台21の貫通孔21bにその下方からエジェクタ25を挿通し、コアシャフト14の下面を押し上げる。その際、セットリング16は保持部材22により保持され、かつ各分割型15a〜15hは成形体Wを介して第1クランプ24により上下動が規制されているため、コアシャフト14のみが上方に移動する。これにより、コアシャフト14の上端部が第1クランプ24の上方に突出した状態となる。
【0038】
さらに、この状態から一対の第2クランプ26によりコアシャフト14の上端部を左右両側から挟み込んだ状態で保持しながら、第2クランプ26を上方に移動させる。これにより、図9(a)に示すように、コアシャフト14をセットリング16及び各分割型15a〜15hから分離することができる。なお、第2クランプ26を上方に移動させるとき、第1クランプ24も成形体Wを保持しながら上方へ移動させている。
【0039】
図9図11は、前記成形方法の工程途中を示す分解組立機2の断面図である。図9(a)に示すように、コアシャフト14、セットリング16及び各分割型15a〜15hを上下方向に分離した後は、各分割型15a〜15hを成形体Wから分離する。具体的には、図9(b)に示すように、各支持部材23a〜23hにより各分割型15a〜15hを、その中心側、つまり軸線X側へ水平にずらす。その際、各分割型15a〜15hの型面152a〜152hが成形体Wの蛇腹部9bと干渉しない位置まで各分割型15a〜15hを移動させる。そして、図10(a)に示すように、各支持部材23a〜23hを下方に移動させることにより、各分割型15a〜15hを下方に引き出して成形体Wから分離する。
【0040】
図12は、各分割型15a〜15hの詳細な分解手順を示す平面図である。まず、図12(a)に示すように平面視円形に形成された複数の分割型15a〜15hのうち、平面視矩形状の第1〜第4分割型15a〜15dを成形体Wから分離する。具体的には、最初に、第1分割型15aを軸線X側へ水平にずらし、図12(b)に示す状態とする。この状態から、第1分割型15aを下方に引き出して成形体Wから分離する。これと同様の方法により、第3分割型15c、第2分割型15b及び第4分割型15dの順に成形体Wから分離し、図12(c)の状態とする。
【0041】
次に、残された平面視扇形状の第5〜第8分割型15e〜15hを成形体Wから分離する。具体的には、最初に、第5分割型15eを軸線X側へ水平にずらし、図12(d)に示す状態とする。この状態から、第5分割型15eを下方に引き出して成形体Wから分離する。これと同様の方法により、第7分割型15g、第6分割型15f及び第8分割型15hの順に成形体Wから分離する。
【0042】
図10(a)に示すように、成形体Wから分離した各分割型15a〜15hは、各支持部材23a〜23hにより前記水平にずらした方向と逆方向に水平移動させてから下方に移動させる。これにより、図10(b)に示すように、各分割型15a〜15hの下端部は、その被係合面15iがセットリング16の係合面16bに沿いながら、セットリング16の上端部の内周側に導入される。
なお、各分割型15a〜15hは、セットリング16に導入された後も、後述するコアシャフト14の下方移動が完了するまで、各支持部材23a〜23hにより支持されている。
【0043】
各分割型15a〜15hを全てセットリング16に導入すると、図10(b)から図11(a)に示す状態となるように、成形体Wを保持している第1クランプ24を水平移動させた後、第1クランプ24による保持を解除して成形体Wを分解組立機2から取り出す。
次に、第2クランプ26に保持されているコアシャフト14を下方に移動させる。すると、図11(b)に示すように、コアシャフト14の下端部は、平面視円形に形成された各分割型15a〜15hの中心部、セットリング16の内周面、及び基台21の円筒部21aの内周面の順に、上方から挿入される。
【0044】
このようにコアシャフト14を挿入すると、コアシャフト14の突出部14bの下面が、各分割型15a〜15hの上面に当接し、これら分割型15a〜15hを同時に下方へ押圧する。これにより、分割型15a〜15hの下端部は、セットリング16のテーパ面である係合面16bに導入されて係合する。その際、分割型15a〜15hは、係合面16bにより下方へ移動するに従って軸線X側に移動しながら係合するため、周方向に隣接する分割型15a〜15h同士を互いに密着させることができる。これにより、各分割型15a〜15hは全体として平面視円形の状態となり、内金型12は元の状態に復元される。
【0045】
内金型12の組立が完了すると、各支持部材23a〜23hを下方に移動させ、各分割型15a〜15hの支持を解除する(図11(b)参照)とともに、保持部材22によるセットリング16の保持を解除する。その後は、セットリング16の第1係合溝16dにチャック3の爪部3aを再び係合して内金型12全体を持ち上げ、図3(図中の成形体Wを取り除いた状態)に示すように、内金型12を成形金型1の所定位置に戻す。そして、この所定位置に戻した状態から、チャック3の係合を解除するとともに、エジェクタ18を下方に移動させ、図1に示すように、内金型12を下金型13の取付孔13b内に装着する。
【0046】
以上、本実施形態の等速ジョイント用ブーツの成形金型によれば、セットリング16に形成された係合面16bは、下方へ向かって漸次縮径するテーパ面とされている。このため、分割型15a〜15hの上端部をコアシャフト14の突出部14bで押圧したときに、各分割型15a〜15hの下端部は係合面16bに沿って軸線X側に移動しながら係合面16bに係合する。これにより、周方向に隣接する分割型15a〜15h同士を互いに密着させることができるため、射出成形後の成形体Wにバリが発生するのを防止することができる。
また、コアシャフト14の上端部の外周に突設された突出部14bを押圧手段としているため、押圧手段をコアシャフト14と別体として設ける場合に比べて、成形金型1の構造を簡素化することができる。
【0047】
また、引き込み手段10によりコアシャフト14を下方に引き込むことにより、コアシャフト14の突出部14bを複数の分割型15a〜15hに押圧した状態で保持することができる。これにより、周方向に隣接する分割型15a〜15h同士を互いに密着させた状態で保持することができるため、射出成形後の成形体Wにバリが発生するのを効果的に防止することができる。
また、各分割型15a〜15hをセットリング16に導入したときに、各分割型15a〜15hの下端部はセットリング16に装着されたOリング17に圧接されるため、この状態から各分割型15a〜15hがセットリング16に対して上下動するのを抑制することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、上記実施形態におけるコアシャフト14は、中実の円柱部材により形成されているが、中空の円筒部材により形成されていてもよい。また、上記実施形態における押圧手段は、コアシャフト14に突設された突出部14bからなるが、コアシャフト14と別体として設けられていてもよい。さらに、上記実施形態におけるコアシャフト14は、セットリング16にその上方から挿入して組み立てられるが、セットリング16にその下方から挿入して組み立てられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:成形金型、9:等速ジョイント用ブーツ、10:引き込み手段、11:外金型、12:内金型、14:コアシャフト、14a:外周面、14b:突出部(押圧手段)、14d:係止部、15a:第1分割型、15b:第2分割型、15c:第3分割型、15d:第4分割型、15e:第5分割型、15f:第6分割型、15g:第7分割型、15h:第8分割型、16:セットリング、16b:係合面、17:Oリング、19b:キャビティ、X:軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12