(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブランクが外端部の増肉完了後に前記メイン把持部材により把持された状態で所望形状に成形された後、該メイン把持部材の径方向外側に前記サブ把持部材を挿入して隣接させることにより該メイン把持部材からの該ブランクの払い出しを行うように、前記外径可変機構を駆動する払出時制御手段を備えることを特徴とする請求項2記載の成形装置。
前記ブランクは、薄肉円環状のスポーク部と、前記スポーク部の径方向外側に接続し、軸方向に向けて延びる円筒状のドラム部と、前記ドラム部の軸方向端から径方向外側に向けて延びるフランジ部と、を有する所望形状に成形されると共に、
前記ブランクが外端部の増肉完了後に前記メイン把持部材により把持された状態で前記フランジ部が成形される際、前記サブ把持部材を前記メイン把持部材の径方向外側に挿入して隣接させることにより該サブ把持部材に該フランジ部の軸方向端面を支持させるように、前記外径可変機構を駆動するフランジ支持時制御手段を備えることを特徴とする請求項2又は3記載の成形装置。
前記増肉工具は、前記ブランクの外端を前記第1の所定径位置まで押圧するうえで用いられる第1の増肉工具と、前記第1の増肉工具とは別体で構成された、前記ブランクの外端を前記第2の所定径位置まで押圧するうえで用いられる第2の増肉工具と、を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の成形装置。
前記把持部材は、前記ブランクを把持する側の表面において該ブランクの軸回りのすべりを抑制する突起を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の成形装置。
把持部材により薄肉円盤状のブランクを該ブランクの外端部を該把持部材の外周面から径方向外側へ向けて突出させつつ軸方向で把持した状態で、前記ブランクの径方向外側に配置された増肉工具を前記把持部材の中心軸回りでの相対回転に従動して自転させながら該増肉工具の有する断面凹形状に形成された凹部で該ブランクの外端を前記把持部材の中心軸に向けて押圧することにより、該ブランクの外端部を増肉させる増肉工程を備える成形方法であって、
前記増肉工程は、
前記把持部材の外径を第1の径に設定した状態で、前記凹部により前記ブランクの外端を第1の所定径位置まで押圧することにより、該ブランクの外端部を増肉させる第1の増肉工程と、
前記第1の増肉工程において前記ブランクの外端部が増肉された後、前記把持部材の外径を前記第1の径よりも小さな第2の径に設定した状態で、前記凹部により該ブランクの外端を前記第1の所定径位置よりも内径側の第2の所定径位置まで押圧することにより、該ブランクの外端部を増肉させる第2の増肉工程と、
を有することを特徴とする成形方法。
前記ブランクが外端部の増肉完了後に前記メイン把持部材により把持された状態で所望形状に成形された後、該メイン把持部材の径方向外側に前記サブ把持部材を挿入して隣接させることにより、該メイン把持部材からの該ブランクの払い出しを行う払出工程を備えることを特徴とする請求項8記載の成形方法。
前記ブランクは、薄肉円環状のスポーク部と、前記スポーク部の径方向外側に接続し、軸方向に向けて延びる円筒状のドラム部と、前記ドラム部の軸方向端から径方向外側に向けて延びるフランジ部と、を有する所望形状に成形されると共に、
前記ブランクが外端部の増肉完了後に前記メイン把持部材により把持された状態で前記フランジ部が成形される際、前記サブ把持部材を前記メイン把持部材の径方向外側に挿入して隣接させることにより、該サブ把持部材に該フランジ部の軸方向端面を支持させることを特徴とする請求項8又は9記載の成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明に係る成形装置及び成形方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例である成形装置により成形された成形後部材12が搭載される装置14の要部断面図を示す。また、
図2は、本実施例の成形装置により成形された成形後部材12を含む構造体16の斜視図を示す。尚、
図2には、構造体16の一部がカットされた状態を示す。
【0012】
本実施例の成形装置は、薄肉円盤状の鋼板製のブランクを形状変化(変形)させることによりそのブランクから成形後部材12を成形・製造する装置である。成形後部材12は、例えば、いわゆる1モータ用方式のハイブリッド車両用駆動装置に用いられるモータ装置としての装置14に搭載される部材である。
【0013】
成形後部材12は、構造体16としてのロータシャフト(ロータハブ)を構成し、モータロータ18を径方向内側から支持するロータ支持部材である。モータロータ18は、径方向で所定の隙間20を空けてモータステータ22に対向している。成形後部材12は、薄肉円環状のスポーク部24と、内周面の軸方向中途でスポーク部24の外周端に接続される円筒状のドラム部26と、ドラム部26の軸方向端部から径方向外側へ向けて延びるフランジ部28と、を有する形状に形成されている。
【0014】
スポーク部24は、軸方向に所定厚さを有しており、ドラム部26の内周面の軸方向中央近傍から径方向内側に延びるように形成されている。ドラム部26は、径方向外側でモータロータ18を保持する。モータロータ18は、ドラム部26の径方向外側において軸方向でフランジ部28に支持されながらカシメ固定される。スポーク部24とドラム部26とフランジ部28とは、一体的に形成されている。
【0015】
構造体16は、上記の成形後部材12と、支持円筒部30と、からなる。支持円筒部30は、外周面の軸方向途中で成形後部材12のスポーク部24の内周端に接続されており、そのスポーク部24の内周端に対して軸方向両側に延在するように形成されている。すなわち、成形後部材12のスポーク部24は、また、支持円筒部30の外周面の軸方向中央近傍から径方向外側に延びるように形成されている。成形後部材12と支持円筒部30とは、別体で形成されており、それぞれの成形後に取り付け固定される。
【0016】
支持円筒部30の径方向内側には、軸受32を介して筒状突出部34が挿入されている。筒状突出部34は、装置14の各部品を収容するケース36と一体的に形成された、軸方向に向けて突出する円筒状の部材である。構造体16は、ケース36や筒状突出部34に対して軸受け32を介して軸回りに回転可能に支持されており、モータロータ18を保持しつつ軸回りに回転する。
【0017】
次に、本実施例の成形装置10により成形後部材12を成形する手法を説明する。
図3は、本実施例の成形装置10により薄肉円盤状のブランク40から成形後部材12を成形する工程を表した図を示す。
図4は、本実施例の成形装置10の構成図を示す。尚、
図4(A)には成形開始時の状態を、また、
図4(B)には成形完了時の状態を、それぞれ示す。また、
図5は、本実施例の成形装置10が備えるクランプ44の有するマンドレル46,48の要部構成図を示す。尚、
図5(A)にはマンドレル46,48を軸方向から見た際の図を、
図5(B)には
図5(A)に示すマンドレル46,48の要部拡大図を、
図5(C)には
図5(A)に示すマンドレル46,48のA−A断面図を、また、
図5(D)には
図5(A)に示すマンドレル46,48のX矢視図を、それぞれ示す。
【0018】
本実施例の成形後部材12は、成形装置10により、薄肉円盤状に形成された鋼板製のブランク40が形状変化(塑性変形)されることにより成形・製造される。成形開始前において、ブランク40は、成形完了後の成形後部材12の外径よりも大きな外径を有している。また、ブランク40の軸中心には、成形装置10による成形中に該ブランク40を支持するための貫通穴42が設けられている。
【0019】
成形装置10は、ブランク40を把持するクランプ44を備えている。クランプ44は、成形中に薄肉円盤状のブランク40をその軸方向両側から挟持することにより軸方向で把持するマンドレル部材であって、それぞれ円柱状に形成される2つのマンドレル46,48を有している。2つのマンドレル46,48は、それぞれの円形面46a,48aが互いに軸方向で対向するように同軸上に配置されている。円形面46a,48aは、互いに略同じ外径を有している。クランプ44のマンドレル46,48は、外部からの回転指令に従って中心軸回りに回転することが可能である。
【0020】
円形面46a,48aは、ブランク40の軸方向に向いた両端面に接触し得る把持面である。ブランク40は、両面がマンドレル46,48の円形面46a,48aに接触しながら挟持されることにより軸方向でマンドレル46,48に把持される。クランプ44のマンドレル46,48は、成形開始前、外周面からブランク40の外端部を径方向外側へ向けて突出させた状態でそのブランク40を軸方向で把持する。以下、一方(
図4における左側)のマンドレル46を主軸側マンドレル46と、また、他方(
図4における右側)のマンドレル48を心押し側マンドレル48と、それぞれ称す。
【0021】
主軸側マンドレル46の円形面46aには、軸方向に向けて突出する突起50が設けられている。また、心押し側マンドレル48の円形面48aには、軸方向に向けて凹んだ凹み穴52が設けられている。突起50は、ブランク40の貫通穴42の径に合致しかつ心押し側マンドレル48の凹み穴52の内径に合致した外径を有しており、その貫通穴42及びその凹み穴52に挿入可能である。ブランク40は、成形開始前にその貫通穴42に主軸側マンドレル46の突起50が挿入されるようにセットされる。
【0022】
主軸側マンドレル46及び心押し側マンドレル48は、軸方向に相対移動(スライド)することが可能である。具体的には、成形開始前にブランク40がセットされる主軸側マンドレル46は、原則として(具体的には、後述のサブクランプを除いて)固定設置されている。一方、主軸側マンドレル46とは反対の心押し側マンドレル48は、メインスライド装置54に取り付けられており、そのメインスライド装置54により主軸側マンドレル46に対して軸方向に移動することが可能である。
【0023】
以下、主軸側マンドレル46と心押し側マンドレル48とがブランク40を把持するときの心押し側マンドレル48の軸方向位置を把持位置と、また、主軸側マンドレル46と心押し側マンドレル48とがブランク40を把持しないときに心押し側マンドレル48が待機する軸方向位置を待機位置と、それぞれ称す。メインスライド装置54は、コントローラ56からの指示に従って、心押し側マンドレル48を主軸側マンドレル46に対して移動させて待機位置と把持位置との間で変位させることが可能である。心押し側マンドレル48は、メインスライド装置54により待機位置と把持位置との間で変位することが可能である。
【0024】
主軸側マンドレル46は、内径側と外径側とで2分割されており、内径側に位置する円柱状のメインクランプ(主軸側メインクランプ)60と、外径側に位置する円筒状・円環状のサブクランプ(主軸側サブクランプ)62と、を有している。主軸側サブクランプ62は、主軸側メインクランプ60の径方向外側にその主軸側メインクランプ60の外周面を囲うように配置されている。主軸側メインクランプ60は、予め定められた外径を有するように円柱状に形成されており、固定設置された不動の部材である。また、主軸側サブクランプ62は、予め定められた径方向厚さを有するように円筒状・円環状に形成されている。
【0025】
主軸側サブクランプ62は、主軸側サブスライド装置64に取り付けられており、その主軸側サブスライド装置64により主軸側メインクランプ60に対してその主軸側メインクランプ60の外周面に沿って軸方向に移動することが可能である。以下、主軸側サブクランプ62がブランク40を把持するときに位置する軸方向位置を作動位置と、また、主軸側サブクランプ62がブランク40を把持しないときに位置する軸方向位置を退避位置と、それぞれ称す。主軸側サブスライド装置64は、コントローラ56からの指示に従って、主軸側サブクランプ62を主軸側メインクランプ60に対して移動させて退避位置と作動位置との間で変位させることが可能であって、例えば油圧制御により主軸側サブクランプ62を変位させる。主軸側サブクランプ62は、主軸側サブスライド装置64により退避位置と作動位置との間で変位することが可能である。
【0026】
また、心押し側マンドレル48は、主軸側マンドレル46と同様に、内径側と外径側とで2分割されており、内径側に位置する円柱状のメインクランプ(心押し側メインクランプ)70と、外径側に位置する円筒状・円環状のサブクランプ(心押し側サブクランプ)72と、を有している。心押し側サブクランプ72は、心押し側メインクランプ70の径方向外側にその心押し側メインクランプ70の外周面を囲うように配置されている。心押し側メインクランプ70は、主軸側メインクランプ60の外径と略同じ外径を有するように円柱状に形成されている。また、心押し側サブクランプ72は、主軸側サブクランプ62の径方向厚さと略同じ径方向厚さを有するように円筒状・円環状に形成されている。
【0027】
心押し側サブクランプ72は、心押し側サブスライド装置74に取り付けられており、その心押し側サブスライド装置74により心押し側メインクランプ70に対してその心押し側メインクランプ70の外周面に沿って軸方向に移動することが可能である。以下、心押し側サブクランプ72がブランク40を把持するときに位置する軸方向位置を作動位置と、また、心押し側サブクランプ72がブランク40を把持しないときに位置する軸方向位置を退避位置と、それぞれ称す。心押し側サブスライド装置74は、コントローラ56からの指示に従って、心押し側サブクランプ72を心押し側メインクランプ70に対して移動させて退避位置と作動位置との間で変位させることが可能であって、例えば油圧制御により主軸側サブクランプ62を変位させる。心押し側サブクランプ72は、心押し側サブスライド装置74により退避位置と作動位置との間で変位することが可能である。
【0028】
尚、コントローラ56は、主軸側サブスライド装置64と心押し側サブスライド装置74とを同期させて作動させることで、主軸側サブクランプ62と心押し側サブクランプ72とを同期させて退避位置と作動位置との間で変位させる。このため、主軸側サブクランプ62と心押し側サブクランプ72とは、同期して退避位置と作動位置との間で変位する。すなわち、主軸側サブクランプ62が退避位置にあるときは心押し側サブクランプ72も退避位置にあり、また、主軸側サブクランプ62が作動位置にあるときは心押し側サブクランプ72も作動位置にある。
【0029】
主軸側マンドレル46のブランク40を把持する円形面46aの表面及び心押し側マンドレル48のブランク40を把持する円形面48aの表面にはそれぞれ、把持したブランク40の軸回りのすべりを抑制する突起76が設けられている。突起76は、軸方向に突起しつつ、中心軸側から径方向外側に向けて延びており、周方向に所定角度(
図5においては45°)を空けて複数箇所(
図5においては8箇所)配置されていると共に、一箇所につき周方向に複数(
図5においては3つ)並んで配置されている。
【0030】
また、成形装置10は、クランプ44により把持されているブランク40を加工して形状変化させるローラ78を備えている。ローラ78は、クランプ44の径方向外側すなわちクランプ44により把持されるブランク40の径方向外側に配置されている。ローラ78は、成形開始前の薄肉円盤状のブランク40から成形後部材12を成形する工程に合わせて複数種類設けられている。複数種類のローラ78は、クランプ44の径方向外側に環状に配置されている。
【0031】
各ローラ78はそれぞれ、外部からの指令に従って径方向に移動可能であると共に、自ローラ78の中心軸回りに従動回転(自転)可能であり、また、クランプ44の回転中心軸回りに従動回転(公転)可能である。各ローラ78はそれぞれ、成形工程に合わせて径方向内側に向けて移動されると共に、その径方向内側に向けて移動した際に、回転中心軸回りに回転するクランプ44に把持されるブランク40に接触することにより、そのブランク40の成形加工を行う。
【0032】
薄肉円盤状のブランク40からスポーク部24とドラム部26とフランジ部28とを有する成形後部材12への成形加工は、(1)ブランク40の外端部を増肉させる増肉工程と、(2)増肉工程にて増肉した箇所を軸方向に2分割するスプリット工程と、(3)スプリット工程にて2分割された両分割部位のうちの一方を軸方向外側に倒しながら引き延ばしてドラム部26の胴部を成形するドラム成形工程と、(4)ドラム成形工程にてドラム部26の胴部の軸方向一方の端部に残っている肉(すなわち、スプリット工程にて2分割された両分割部位のうちの他方)をクランプ44の回転中心軸に対して径方向外側へ立たせてフランジ部28を成形するフランジ成形工程と、からなる。
【0033】
上記した複数種類のローラ78は、上記(1)〜(4)の各工程に合わせたものであり、増肉工程にて使用する増肉ローラ78a及び支持ローラ78bと、スプリット工程及びドラム成形工程にて使用するV字型ローラ78cと、フランジ成形工程にて使用するフランジローラ78dと、からなる。
【0034】
増肉ローラ78aと支持ローラ78bとは、クランプ44の径方向外側においてクランプ44の回転中心軸を挟んで対向する位置に配置されている。増肉ローラ78aは、クランプ44の回転中心軸に平行に延びる中心軸を有するように略円柱状に形成されると共に、外周面の軸方向略中心に凹形状の溝80が自己の中心軸回りに環状に設けられた、中心軸に直交する方向から見て或いは断面的にコの字型のローラである。増肉ローラ78aの溝80は、ブランク40の外端部に形成すべき所望増肉量に対応して、所定の深さ及び容量に形成されており、例えば底面が丸みを帯びた断面U字型に形成されている。
【0035】
増肉ローラ78aは、薄肉円盤状のブランク40の外端部を増肉させる第1の増肉ローラ78a−1と、その第1の増肉ローラ78a−1とは別体で構成された、その第1の増肉ローラ78a−1を用いて増肉したブランク40の外端部を更に増肉させる第2の増肉ローラ78a−2と、の2種類存在する。第1の増肉ローラ78a−1と第2の増肉ローラ78a−2とは、クランプ44の径方向外側においてクランプ44の回転中心軸回りの周方向に並んで配置されている。
【0036】
第1の増肉ローラ78a−1は、その溝80−1の深さ又は容量が比較的小さく、ブランク40の外端を第1の所定径位置まで押圧してその外端部の増肉量を第1の所定量とするうえで用いられるローラである。また、第2の増肉ローラ78a−2は、その溝80−2の深さ又は容量が比較的大きく、ブランク40の外端を上記した第1の所定径位置よりも内径側の第2の所定径位置まで押圧してその外端部の増肉量を第2の所定量(最終的な所望増肉量)とするうえで用いられるローラである。
【0037】
支持ローラ78bは、クランプ44の回転中心軸に平行に延びる中心軸を有するように略円柱状に形成されると共に、外周面の軸方向略中心に凹形状の溝82が自己の中心軸回りに環状に設けられた、中心軸に直交する方向から見て或いは断面的にコの字型のローラである。支持ローラ78bは、増肉ローラ78aがブランク40の外端をクランプ44の回転中心軸に向けて押圧することでブランク40の外端部を増肉させる際に、その増肉ローラ78aとクランプ44の回転中心軸を挟んで対向する反対側位置でそのブランク40を把持するクランプ44を支持してそのクランプ44の径方向への折れを防止する部材である。支持ローラ78bの溝82は、成形開始前の薄肉円盤状のブランク40がクランプ44に挟持されてからそのブランク40を塑性変形させてそのブランク40の外端部の増肉を完了するまでの過程でブランク40に接触しない所定の深さ及び容量に形成されており、断面U字型に形成されている。
【0038】
支持ローラ78bは、第1の増肉ローラ78a−1に対応した第1の支持ローラ78b−1と、その第1の支持ローラ78b−1とは別体で構成された、第2の増肉ローラ78a−2に対応した第2の支持ローラ78b−2と、の2種類存在する。第1の支持ローラ78b−1と第2の支持ローラ78b−2とは、クランプ44の径方向外側においてクランプ44の回転中心軸回りの周方向に並んで配置されている。尚、第1の支持ローラ78b−1の溝82−1と第2の支持ローラ78b−2の溝82−2とは、ブランク40が接触しなければ、略同じ深さ又は容量に形成されていてもよく、また、互いに異なる深さ又は容量に形成されていてもよい。
【0039】
V字型ローラ78cは、クランプ44の径方向外側においてクランプ44の回転中心軸を挟んで対向するように2つ設けられている。各V字型ローラ78cはそれぞれ、クランプ44の回転中心軸に平行に延びる中心軸を有し、軸方向略中心に自己の中心軸から見て径方向外側に向けてV字型に尖った尖り部84が環状に設けられた、中心軸に直交する方向から見て或いは断面的にV字型のローラである。尖り部84は、その径方向外側先端が軸方向左右で対称の角度をなすように形成されている。
【0040】
また、フランジローラ78dは、クランプ44の回転中心軸に対して所定角度をなす中心軸を有し、軸方向略中心に自己の中心軸から見て径方向外側に向けてV字型に尖った尖り部86が環状に設けられた、中心軸に直交する方向から見て或いは断面的にV字型のローラである。尖り部86は、フランジローラ78dの中心軸に対する径方向外側先端が丸みを帯びつつ、その径方向外側先端がなす角度が90°未満となるように形成されている。尚、尖り部86は、その径方向外側先端が軸方向左右で非対称の角度をなすように形成されていることとしてもよい。
【0041】
フランジローラ78dは、尖り部86の先端がクランプ44の回転中心軸に対して最内径側に位置しかつフランジローラ78d全体の中でクランプ44の軸方向における一端に位置するように配置されている。すなわち、フランジローラ78dは、尖り部86がクランプ44の回転中心軸に対して内径側に尖りかつクランプ44の軸方向一方側(すなわち、互いに軸方向に対向する主軸側マンドレル46及び心押し側マンドレル48のうち主軸側マンドレル46側;
図3において左方側)に対して尖るように配置されている。フランジローラ78dは、フランジ成形工程にてドラム部26の胴部の軸方向一方の端部に残っている肉からフランジ部28を成形すると共に、ドラム部26の胴部を仕上げ成形する部材である。
【0042】
図6は、本実施例の成形装置10において薄肉円盤状のブランク40の外端部を増肉する工程を表した斜視図及び断面図を示す。また、
図7は、本実施例の成形装置10において薄肉円盤状のブランク40の外端部を増肉する工程での動作を説明するための図を示す。
【0043】
本実施例の成形装置10において、薄肉円盤状のブランク40からスポーク部24とドラム部26とフランジ部28とを有する成形後部材12を成形するうえでは、まず、薄肉円盤状のブランク40が、その貫通穴42にクランプ44の主軸側マンドレル46の突起50が挿入されるようにその主軸側マンドレル46にセットされる(
図6(A))。そしてその後、心押し側マンドレル48が、メインスライド装置54により主軸側マンドレル46に対して軸方向に近づくように移動されて把持位置に達することで、そのブランク40が両マンドレル46,48の円形面46a,48aに接触して挟持されてクランプ44に把持される(
図3(A))。この際、両マンドレル46,48は共に、サブクランプ62,72が作動位置にあり、メインクランプ60,70の径方向外側にサブクランプ62,72が挿入されて隣接する状態となるので、円形面46a,48aの外径が比較的大きくなるように設定されつつ薄肉円盤状のブランク40を把持する。
【0044】
薄肉円盤状のブランク40が上記の如くクランプ44に把持されると、次に、クランプ44が回転中心軸回りに回転され、かつ、全ローラ78のうち第1の増肉ローラ78a−1及び第1の支持ローラ78b−1がクランプ44に対して径方向内側に向けて移動される。この際、第1の支持ローラ78b−1は、クランプ44のマンドレル46,48の側壁面(具体的には、サブクランプ62,72の外周面)に接触する直前まで移動されると共に、第1の増肉ローラ78a−1は、その溝80−1の底面がクランプ44に把持されているブランク40の外端に接触されるまで移動される(
図6(B)及び
図7(A))。
【0045】
そして、第1の増肉ローラ78a−1がブランク40の外端に接触した後に更にクランプ44に対して径方向内側に向けて移動されると、ローラ78がクランプ44の回転に伴ってそのクランプ44の回転中心軸回りに従動回転しつつ、その第1の増肉ローラ78a−1が溝80−1でブランク40の外端を全周に亘ってクランプ44の回転中心軸に向けて押圧することにより、そのブランク40の外端部が全周に亘って増肉される。ブランク40は、その外端が第1の増肉ローラ78a−1の溝80−1によりクランプ44の回転中心軸に向けて第1の所定径位置に押圧されるまで増肉されて塑性変形される。
【0046】
尚、第1の増肉ローラ78a−1のクランプ44に対する径方向内側への移動に伴って第1の増肉ローラ78a−1の外周面がクランプ44のマンドレル46,48のサブクランプ62,72の外周面に接触する直前に達すると、ブランク40の外端が第1の所定径位置まで押圧されてその外端部の増肉量が第1の所定量となる(
図3(B)、
図6(C)及び
図7(B))。
【0047】
ブランク40の外端部の増肉量が上記の如く第1の所定量に達すると、次に、主軸側マンドレル46の主軸側サブクランプ62が、主軸側サブスライド装置64により作動位置から退避位置へ変位されてブランク40の把持を解除すると共に、心押し側マンドレル48の心押し側サブクランプ72が心押し側サブスライド装置74により作動位置から退避位置へ変位されてブランク40の把持を解除する。一方、この際にも、主軸側マンドレル46の主軸側メインクランプ60及び心押し側マンドレル48の心押し側メインクランプ70は、ブランク40の把持を継続する。このため、両マンドレル46,48のサブクランプ62,72が退避位置に退避すると、サブクランプ62,72がメインクランプ60,70の径方向外側から軸方向に引き抜かれてメインクランプ60,70の径方向外側に隣接しない状態となるので、両マンドレル46,48の円形面46a,48aの外径が共に比較的小さくなる。
【0048】
また、上記したサブクランプ62,72の退避位置への退避と同時に或いはその後、ローラ78のツールチェンジが実施され、具体的には、第1の増肉ローラ78a−1及び第1の支持ローラ78b−1がクランプ44に対して径方向外側に向けて移動されると共に、第2の増肉ローラ78a−2及び第2の支持ローラ78b−2がクランプ44に対して径方向内側に向けて移動される。この際、第2の支持ローラ78b−2は、クランプ44のマンドレル46,48の側壁面(具体的には、メインクランプ60,70の外周面)に接触する直前まで移動されると共に、第2の増肉ローラ78a−2は、その溝80−2の底面がクランプ44に把持されているブランク40の外端に接触されるまで移動される(
図6(D)及び
図7(C))。
【0049】
そして、第2の増肉ローラ78a−2がブランク40の外端に接触した後に更にクランプ44に対して径方向内側に向けて移動されると、ローラ78がクランプ44の回転に伴ってそのクランプ44の回転中心軸回りに従動回転しつつ、その第2の増肉ローラ78a−2が溝80−2でブランク40の外端を全周に亘ってクランプ44の回転中心軸に向けて押圧することにより、そのブランク40の外端部が全周に亘って更に増肉される。ブランク40は、その外端が第2の増肉ローラ78a−2の溝80−2によりクランプ44の回転中心軸に向けて第2の所定径位置に押圧されるまで増肉されて塑性変形される。
【0050】
尚、第2の増肉ローラ78a−2のクランプ44に対する径方向内側への移動に伴って第2の増肉ローラ78a−の外周面がクランプ44のマンドレル46,48のメインクランプ60,70の外周面に接触する直前に達すると、ブランク40の外端が第2の所定径位置まで押圧されてその外端部の増肉量が第2の所定量(所望増肉量)となる(
図3(C)及び
図7(D))。
【0051】
従って、上記の如く成形装置10での増肉ローラ78a及び支持ローラ78bを2段階で切り替えることにより、薄肉円盤状のブランク40の外端部を所望増肉量まで増肉させる増肉工程を実現することができる。
【0052】
上記の如く増肉工程にて薄肉円盤状のブランク40の外端部が所望増肉量に増肉されると、次に、ローラ78のツールチェンジが実施される。具体的には、第2の増肉ローラ78a−2及び第2の支持ローラ78b−2がクランプ44に対して径方向外側に向けて移動されると共に、V字型ローラ78cがクランプ44に対して径方向内側に向けて移動される。
【0053】
そして、V字型ローラ78cが、ブランク40の外端部に形成された増肉箇所に接触した後に更にクランプ44に対して径方向内側に向けて移動されると、ローラ78がクランプ44の回転に伴ってそのクランプ44の回転中心軸回りに従動回転しつつ、そのV字型ローラ78cが、その尖り部84でブランク40の外端部の増肉された箇所を全周に亘って軸方向に2分割する。V字型ローラ78cの径方向内側への移動は、V字型ローラ78cの尖り部84の先端が所定の径位置に到達するまで行われる。ブランク40は、その外端部がクランプ44の回転中心軸に対して直交する方向から見てY字形状になるように塑性変形される(
図3(D))。これにより、ブランク40の外端部の増肉箇所が全周に亘って軸方向に2分割される上記したスプリット工程が実現される。
【0054】
上記の如くスプリット工程にてブランク40の外端部の増肉箇所がV字型ローラ78cにより全周に亘って軸方向に2分割されると、次に、そのV字型ローラ78cが、クランプ44に対して径方向内側に移動された径方向位置に維持されたままクランプ44の軸方向他方側(すなわち、互いに軸方向に対向する主軸側マンドレル46及び心押し側マンドレル48のうち心押し側マンドレル48側;
図3において右方側)に移動されることで、ブランク40の外端部の増肉箇所の2分割された両分割部位のうちの一方(
図3において右側のもの)を全周に亘って軸方向外側に倒して軸方向他方側に端部まで引き延ばして、ドラム部26の胴部が成形されるようにブランク40を塑性変形させる(
図3(E))。これにより、ブランク40の外端部の分割部位の一方から全周に亘ってドラム部26の胴部を仮成形するドラム成形工程が実現される。
【0055】
そして、上記の如くドラム成形工程にてドラム部26の胴部がV字型ローラ78cにより全周に亘って仮成形されると、次に、ローラ78のツールチェンジが実施される。具体的には、V字型ローラ78cがクランプ44に対して径方向外側に向けて移動されると共に、フランジローラ78dがクランプ44に対して径方向内側に向けて移動され、かつ、主軸側マンドレル46の主軸側サブクランプ62が主軸側サブスライド装置64により退避位置から変位される。
【0056】
主軸側サブクランプ62の退避位置からの変位は、その主軸側サブクランプ62の円形面46a側がブランク40の外端部の増肉箇所の2分割された両分割部位のうちの他方(
図3において左側のもの)に接触するまで行われる。この際、主軸側サブクランプ62は、上記の分割部位のうちの他方を軸方向一方側で支持する壁として機能する。また、フランジローラ78dの径方向内側への移動は、その尖り部86の先端が所定の径位置に到達するまで行われる。
【0057】
フランジローラ78dがブランク40の上記の分割部位のうちの他方に接触した後に更にクランプ44に対して径方向内側に向けて移動されると、ローラ78がクランプ44の回転に伴ってそのクランプ44の回転中心軸回りに従動回転しつつ、フランジローラ78dの尖り部86と主軸側サブクランプ62の円形面46aとが上記の分割部位のうちの他方を軸方向で挟むことにより、そのブランク40の軸方向一方の端部に残っている肉をクランプ44の回転中心軸に対して径方向外側へ立たせて、ブランク40を塑性変形させる(
図3(F))。これにより、端面が軸方向に確実に向くフランジ部28を成形するフランジ成形工程が実現される。
【0058】
また、上記の如くフランジ成形工程にてフランジ部28がフランジローラ78dにより全周に亘って成形されると、次に、フランジローラ78dが、クランプ44に対して径方向内側に移動された径方向位置に維持されたままクランプ44の軸方向他方側に移動されることで、ブランク40の軸方向他方側に引き延ばされていた箇所(すなわち、仮成形されていたドラム部26の胴部)を更に全周に亘って軸方向他方側に引き延ばして、所望の外径を有するドラム部26の胴部が成形されるようにブランク40を塑性変形させる。これにより、所望の外径を有するドラム部26の胴部を本成形するドラム仕上工程が実現される。
【0059】
そして最後に、上記の如くドラム仕上工程にてフランジローラ78dによりドラム部26の胴部が本成形されると、次に、そのフランジローラ78dがクランプ44に対して径方向外側に移動されると共に、クランプ44の心押し側マンドレル48がメインスライド装置54により把持位置から待機位置へ変位することで両マンドレル46,48(具体的には、メインクランプ60,70及びサブクランプ62)によるブランク40の把持が解除される。
【0060】
図8は、本実施例において成形完了後のブランク40(成形後部材12)をクランプ44から払い出す際の手法を説明するための図を示す。尚、
図8(A)には払い出し直前を、また、
図8(B)には払い出し後を、それぞれ示す。
【0061】
ところで、ブランク40の成形が完了し両マンドレル46,48のメインクランプ60,70による把持が解除されても、
図8(A)に示す如く、そのブランク40のドラム部26の内周側にメインクランプ60,70(特に、ドラム部26の大半が占める心押し側メインクランプ70)が挿入された状態に維持されることがある。
【0062】
そこで、本実施例においては、上記の如く両マンドレル46,48のメインクランプ60,70によるブランク40の把持が解除された後、サブクランプ62,72(特に、心押し側サブクランプ72)が、サブスライド装置64,74により退避位置→作動位置→退避位置の順でクランプ44の回転軸方向に一往復変位される。この場合には、メインクランプ60,70の径方向外側にサブクランプ62,72が挿入されて隣接する状態が形成される。かかる状態が形成されると、サブクランプ62,72が軸方向へ移動する力によってメインクランプ60,70から成形後部材12が払い出される払出工程が実現される。
【0063】
このように、本実施例によれば、成形装置10を用いて、増肉工程、スプリット工程、ドラム成形工程、及びフランジ成形工程(更には、ドラム仕上工程)を順に実施することにより、薄肉円盤状のブランク40から、スポーク部24とドラム部26とフランジ部28とを有するブランク40(成形後部材12)を成形することができる。また、そのブランク40の成形完了後、サブスライド装置64,74を用いてメインクランプ60,70の径方向外側にサブクランプ62,72を挿入して隣接させる状態を形成することにより、
図8(B)に示す如く、サブクランプ62,72によって、成形が完了したブランク40をメインクランプ60,70から払い出すことができる。尚、モータ装置14に搭載される成形後部材12は、上記の如く払い出されたブランク40の軸中心にある貫通穴42の周囲が所望の内径を有するようにカットされることにより所望形状に形成される。
【0064】
また、本実施例において、成形後部材12を成形するうえで必要な工程である薄肉円盤状のブランク40の外端部を増肉させる増肉工程は、クランプ44の外径を可変させつつ実施される。
【0065】
具体的には、増肉工程において、当初は、クランプ44の両マンドレル46,48のメインクランプ60,70の径方向外側にサブクランプ62,72を挿入して隣接させてクランプ44の外径を比較的大きくした状態で、薄肉円盤状のブランク40を両マンドレル46,48で挟持させつつ、比較的浅めの溝80−1を有する第1の増肉ローラ78a−1を用いてそのブランク40の外端をクランプ44の回転中心軸に向けて第1の所定径位置まで押圧することにより、そのブランク40の外端部を所望増肉量よりも少ない第1の所定量まで増肉させる。
【0066】
そしてその後、メインクランプ60,70の径方向外側からサブクランプ62,72をクランプ44の回転軸方向に引き抜いてその径方向外側にサブクランプ62,72を隣接させずクランプ44の外径を比較的小さくした状態で、外端部が第1の所定量に増肉されたブランク40を両マンドレル46,48で挟持させつつ、比較的深めの溝80−2を有する第2の増肉ローラ78a−2を用いてそのブランク40の外端をクランプ44の回転中心軸に向けて第2の所定径位置まで押圧することにより、そのブランク40の外端部を所望増肉量まで増肉させる。
【0067】
かかる処理によれば、増肉工程において、クランプ44の両マンドレル46,48に把持されて外端部が増肉加工されるブランク40の外径に合わせて、そのマンドレル46,48の外径を可変させることができる。具体的には、ブランク40の外径が成形開始から第1の所定径位置に達するまではマンドレル46,48の外径を比較的大きくし、一方、ブランク40の外径が第1の所定径位置に達してからその第1の所定径位置よりも内径側の第2の所定径位置に達するまではマンドレル46,48の外径を比較的小さくすることができる。
【0068】
この点、増肉工程において、ブランク40の外径が比較的大きい間はそのブランク40を比較的大きな外径のクランプ44で把持する一方、ブランク40の外径が比較的小さくなった後はそのブランクを比較的小さな外径のクランプ44で把持することができる。従って、本実施例の成形装置10によれば、増肉工程においてブランク40を把持するクランプ44の外径を可変させることで、ブランク40の、マンドレル46,48の外周面から径方向外側へ向けて突出する外端部の径方向長さ(突出長)Lを常に短くすることができる。
【0069】
このため、本実施例によれば、ブランク40の外端部を多量に増肉させるうえで成形開始前の薄肉円盤状のブランク40の外径が比較的大きくされても、クランプ44により把持されるブランク40の外端が増肉ローラ78aの溝80により中心軸に向けて押圧されることでそのブランク40の外端部が増肉される増肉工程で、そのブランク40が座屈するのを確実に防止することができる。
【0070】
ここで、ブランク40の座屈を防止するうえでは、成形開始前の薄肉円盤状のブランク40の軸方向の厚さを大きくすることが考えられるが、かかる構造では、ブランク40の重量増が招来する。これに対して、本実施例においては、成形開始前の薄肉円盤状のブランク40の軸方向の厚さが小さくても、ブランク40の座屈を防止することができるので、ブランク40の板厚増による重量増を避けつつその座屈防止を図ることができる。
【0071】
また、成形開始前の薄肉円盤状のブランク40の軸方向の厚さが小さくても、その外径が大きくされれば、その外端部への多量の増肉は可能である。従って、本実施例によれば、成形開始前の薄肉円盤状のブランク40の軸方向の厚さが比較的小さく更にその外径が比較的大きくても、そのブランク40を座屈させることなくその外端部への多量の増肉を実現することができる。
【0072】
尚、上記の実施例においては、クランプ44が特許請求の範囲に記載した「把持部材」に、増肉ローラ78aが特許請求の範囲に記載した「増肉工具」に、増肉ローラ78aの溝80が特許請求の範囲に記載した「凹部」に、主軸側メインクランプ60及び心押し側メインクランプ70が特許請求の範囲に記載した「メイン把持部材」に、主軸側サブクランプ62及び心押し側サブクランプ72が特許請求の範囲に記載した「サブ把持部材」に、主軸側サブスライド装置64及び心押し側サブスライド装置74がサブクランプ62,72を作動位置と退避位置とで軸方向に変位させることでクランプ44の外径を可変する機構が特許請求の範囲に記載した「外径可変機構」に、メインクランプ60,70の外径にサブクランプ62,72の径方向厚さを足したものが特許請求の範囲に記載した「第1の径」に、メインクランプ60,70の外径が特許請求の範囲に記載した「第2の径」に、それぞれ相当している。
【0073】
また、上記の実施例においては、コントローラ56が、ブランク40(成形後部材12)の成形完了後、サブスライド装置64,74によりサブクランプ62,72を退避位置→作動位置→退避位置の順で軸方向に一往復変位させて、メインクランプ60,70の径方向外側にサブクランプ62,72を挿入して隣接させることにより、メインクランプ60,70から成形が完了したブランク40を払い出すことが特許請求の範囲に記載した「払出時制御手段」に、コントローラ56が、ブランク40が外端部の増肉完了後に主軸側メインクランプ60及び心押し側メインクランプ70により把持された状態でフランジ部28が成形される際、主軸側サブクランプ62を主軸側メインクランプ60の径方向外側に挿入して隣接させることにより、その主軸側サブクランプ62にフランジ部28の軸方向端面を支持させることが特許請求の範囲に記載した「フランジ支持時制御手段」に、第1の増肉ローラ78a−1が特許請求の範囲に記載した「第1の増肉工具」に、第2の増肉ローラ78a−2が特許請求の範囲に記載した「第2の増肉工具」に、それぞれ相当している。
【0074】
ところで、上記の実施例においては、ブランク40の外径に合わせたクランプ44の外径の可変を、サブスライド装置64,74を用いてメインクランプ60,70の径方向外側にサブクランプ62,72を隣接させるか否かを切り替えて2段階で行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、3段階以上で行うこととしてもよい。
【0075】
また、上記の実施例においては、サブスライド装置64,74を用いてメインクランプ60,70の径方向外側にサブクランプ62,72を隣接させるか否かを切り替えることで、クランプ44の外径を可変することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、クランプ44の外周面を中心軸側から径方向外側に向けて移動可能とすることで、クランプ44の外径を可変することとしてもよい。
【0076】
また、上記の実施例においては、ブランク40を把持するクランプ44を中心軸回りに回転させることで、クランプ44の径方向外側に配置されたローラ78とクランプ44とをクランプ44の中心軸回りに相対回転させつつその相対回転に従動してローラ78を自転させながら、クランプ44により把持されるブランク40を加工成形することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、逆に、クランプ44の径方向外側に配置されたローラ78をクランプ44の中心軸回りに公転させることで、そのローラ78とクランプ44とをクランプ44の中心軸回りに相対回転させつつその相対回転に従動してローラ78を自転させながら、そのブランク40を加工成形することとしてもよい。
【0077】
更に、上記の実施例は、薄肉円盤状のブランク40からスポーク部24とドラム部26とフランジ部28とを有するロータシャフトを構成する成形後部材12を成形する過程で行うブランク40の外端部への増肉を行うものに適用するものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも薄肉円盤状のブランク40の外端部への増肉を行うものに適用するものであればよく、ロータシャフトを構成する成形後部材12以外のものを成形する際のものに適用することとしてもよく、また、モータ装置14以外のものに適用することとしてもよい。