特許第5942836号(P5942836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942836
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】非接触電力伝送装置及び送電機器
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/00 20160101AFI20160616BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160616BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20160616BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160616BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20160616BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
   H02J7/00 P
   H02J7/00 301D
   B60M7/00 X
   B60L11/18 C
   B60L5/00 B
   H01M10/46
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-278248(P2012-278248)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-124026(P2014-124026A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】松倉 啓介
(72)【発明者】
【氏名】戸叶 博樹
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−141977(JP,A)
【文献】 特開2010−252497(JP,A)
【文献】 特開2010−141976(JP,A)
【文献】 特開2012−135109(JP,A)
【文献】 特開2014−121142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00
B60L 5/00
B60L 11/18
B60M 7/00
H01M 10/46
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力が入力される1次側コイルを有する送電機器と、
前記送電機器から非接触で前記交流電力を受電可能なものであって車両に搭載された受電機器と、
を備えた非接触電力伝送装置において、
前記受電機器は、
前記1次側コイルから非接触で前記交流電力を受電可能な2次側コイルと、
負荷と、
前記2次側コイルと前記負荷との間に設けられ、インピーダンスが可変の可変インピーダンス変換部と、
前記2次側コイルの位置に関する情報であって前記車両固有の車両固有情報が記憶された受電側記憶部と、
を備え、
前記送電機器は、前記1次側コイルの位置に関する情報であって前記送電機器固有の送電機器固有情報が記憶された送電側記憶部を備え、
前記非接触電力伝送装置は、前記送電機器固有情報と前記車両固有情報とから導出される前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に基づいて、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定する決定部を備えていることを特徴とする非接触電力伝送装置
【請求項2】
前記1次側コイル及び前記2次側コイルは車高方向に対向し得るものであり、
前記送電機器固有情報には、前記車両が設置される設置面に対する前記1次側コイルの高さ情報が含まれており、
前記車両固有情報には、前記設置面に対する前記2次側コイルの高さ情報が含まれている請求項1に記載の非接触電力伝送装置
【請求項3】
前記決定部は、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスに関する情報と、前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に関する情報とが対応付けられたデータを用いて、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定する請求項1又は請求項2に記載の非接触電力伝送装置
【請求項4】
前記可変インピーダンス変換部は2次側可変インピーダンス変換部であり、
前記送電機器は、インピーダンスが可変の1次側可変インピーダンス変換部を備え、
前記決定部は、前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に関する情報に対して前記1次側可変インピーダンス変換部のインピーダンスに関する情報及び前記2次側可変インピーダンス変換部のインピーダンスに関する情報の双方が対応付けられたデータを有し、当該データを用いて前記1次側可変インピーダンス変換部のインピーダンス、及び、前記2次側可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定する請求項1又は請求項2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
交流電力が入力される1次側コイルを備え、車両に搭載されたものであって2次側コイルを有する受電機器に、非接触で前記交流電力を送電可能な送電機器において、
インピーダンスが可変の可変インピーダンス変換部と、
前記1次側コイルの位置に関する情報であって前記送電機器固有の送電機器固有情報が記憶された送電側記憶部と、
前記送電機器固有情報と前記2次側コイルの位置に関する情報であって前記車両固有の車両固有情報とから導出される前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に基づいて、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定決定部と、
を備えていることを特徴とする送電機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送装置及び送電機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源コードや送電ケーブルを用いない非接触電力伝送装置として、例えば磁場共鳴を用いたものが知られている。例えば特許文献1の非接触電力伝送装置は、交流電源と、交流電源から交流電力が入力される1次側コイルとを有する送電機器を備えている。また、非接触電力伝送装置は、1次側コイルと磁場共鳴可能な2次側コイルを有する受電機器を備えている。そして、1次側コイルと2次側コイルとが磁場共鳴することにより、送電機器から受電機器に交流電力が伝送される。受電機器にて受電された交流電力は、受電機器に設けられたバッテリの充電に用いられる。また、特許文献2には、送電機器に、インピーダンス整合を行う整合部と、送電機器及び受電機器間の距離を検出するセンサとを設け、上記距離に応じて整合部の定数を可変制御する構成について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【特許文献2】特開2012−147632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、伝送効率の向上等を図るべく、所望のインピーダンスに変換するインピーダンス変換部を設ける場合がある。この場合、例えば1次側コイル及び2次側コイルの相対位置が予め定められた基準位置から変動すると、インピーダンス変換部にて変換されたインピーダンスが所望のインピーダンスからずれる場合がある。すると、伝送効率が低下する等の不都合が生じ得る。
【0005】
これに対して、インピーダンスが可変の可変インピーダンス変換部を設け、可変インピーダンス変換部のインピーダンスの可変制御を行うことが考えられる。しかしながら、可変インピーダンス変換部のインピーダンスの可変制御を行う際に、インピーダンス測定等の処理を要する場合、構成の複雑化及び制御の複雑化といった不都合が懸念される。
【0006】
なお、上述した事情は、磁場共鳴によって電力伝送を行う構成に限られず、例えば電磁誘導によって電力伝送を行う構成についても同様である。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、可変インピーダンス変換部のインピーダンスの可変制御を好適に行うことができる非接触電力伝送装置及び送電機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する非接触電力伝送装置は、交流電力が入力される1次側コイルを有する送電機器と、前記送電機器から非接触で前記交流電力を受電可能なものであって車両に搭載された受電機器と、を備え前記受電機器は、前記1次側コイルから非接触で前記交流電力を受電可能な2次側コイルと、負荷と、前記2次側コイルと前記負荷との間に設けられ、インピーダンスが可変の可変インピーダンス変換部と、前記2次側コイルの位置に関する情報であって前記車両固有の車両固有情報が記憶された受電側記憶部と、を備え、前記送電機器は、前記1次側コイルの位置に関する情報であって前記送電機器固有の送電機器固有情報が記憶された送電側記憶部を備え、前記非接触電力伝送装置は、前記送電機器固有情報と前記車両固有情報とから導出される前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に基づいて、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定する決定部を備えていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、送電機器固有情報と車両固有情報とから導出される各コイル間の距離に基づいて可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定することにより、可変インピーダンス変換部のインピーダンスを、各コイル間の距離に対応した値に設定することができる。よって、上記距離の変動に好適に追従することができる。
【0009】
特に、各コイル間の距離は送電機器固有情報及び車両固有情報から導出されるため、インピーダンス測定等の処理を要することなく、比較的容易に各コイル間の距離を導出することができる。これにより、構成の簡素化及び制御の簡素化等を図ることができる。
【0010】
以上のことから、可変インピーダンス変換部のインピーダンスの可変制御を好適に行うことができる。
上記非接触電力伝送装置について、前記1次側コイル及び前記2次側コイルは車高方向に対向し得るものであり、前記送電機器固有情報には、前記車両が設置される設置面に対する前記1次側コイルの高さ情報が含まれており、前記車両固有情報には、前記設置面に対する前記2次側コイルの高さ情報が含まれていると好ましい。かかる構成によれば、各高さ情報に基づいて各コイル間の距離を導出することにより、車種に応じた2次側コイルの高さばらつき及び1次側コイルの高さばらつきに対応した各コイル間の距離を導出することができる。これにより、車種や送電機器の仕様等に起因して各コイル間の距離が変動する場合であっても、可変インピーダンス変換部のインピーダンスを好適に決定することができる。
【0011】
上記非接触電力伝送装置について、前記決定部は、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスに関する情報と、前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に関する情報とが対応付けられたデータを用いて、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定すると好ましい。かかる構成によれば、各コイル間の距離に関する情報と可変インピーダンス変換部のインピーダンスに関する情報とが対応付けられたデータを用いることにより、可変インピーダンス変換部のインピーダンスを容易に決定することができる。これにより、制御の簡素化を図ることができる。
【0012】
上記非接触電力伝送装置において、前記可変インピーダンス変換部は2次側可変インピーダンス変換部であり、前記送電機器は、インピーダンスが可変の1次側可変インピーダンス変換部を備え、前記決定部は、前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に関する情報に対して前記1次側可変インピーダンス変換部のインピーダンスに関する情報及び前記2次側可変インピーダンス変換部のインピーダンスに関する情報の双方が対応付けられたデータを有し、当該データを用いて前記1次側可変インピーダンス変換部のインピーダンス、及び、前記2次側可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定すると好ましい
【0013】
上記目的を達成する送電機器は、交流電力が入力される1次側コイルを備え、車両に搭載されたものであって2次側コイルを有する受電機器に、非接触で前記交流電力を送電可能なものにおいて、インピーダンスが可変の可変インピーダンス変換部と、前記1次側コイルの位置に関する情報であって前記送電機器固有の送電機器固有情報が記憶された送電側記憶部と、前記送電機器固有情報と前記2次側コイルの位置に関する情報であって前記車両固有の車両固有情報とから導出される前記1次側コイル及び前記2次側コイル間の距離に基づいて、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定決定部と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、送電機器固有情報と車両固有情報とから導出される各コイル間の距離に基づいて可変インピーダンス変換部のインピーダンスを決定することにより、可変インピーダンス変換部のインピーダンスを、各コイル間の距離に対応した値に設定することができる。よって、上記距離の変動に好適に追従することができる。
【0015】
また、各コイル間の距離は送電機器固有情報及び車両固有情報から導出されるため、インピーダンス測定等の処理を要することなく、比較的容易に各コイル間の距離を導出することができる。これにより、構成の簡素化及び制御の簡素化等を図ることができる。
【0016】
以上のことから、可変インピーダンス変換部のインピーダンスの可変制御を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
可変インピーダンス変換部のインピーダンスの可変制御を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】非接触電力伝送装置の模式図。
図2】非接触電力伝送装置の回路図。
図3】車両側充電開始処理を示すフローチャート。
図4】マップの構成を示す概念図。
図5】電源側充電開始処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、送電機器、受電機器及び非接触電力伝送装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、非接触電力伝送装置(非接触電力伝送システム)10は、地上に設けられた送電機器(地上側機器、送電装置)11と、車両Cに搭載された受電機器(車両側機器、受電装置)21とを備えている。
【0020】
送電機器11は、所定の周波数の高周波電力(交流電力)を出力可能な高周波電源12(交流電源)を備えている。高周波電源12は、系統電力を用いて、電力値が異なる複数種類の高周波電力を出力可能に構成されている。
【0021】
高周波電源12から出力された高周波電力は、非接触で受電機器21に伝送され、受電機器21に設けられた車両用バッテリ22(蓄電部)の充電に用いられる。具体的には、非接触電力伝送装置10は、送電機器11及び受電機器21間の電力伝送を行うものとして、送電機器11に設けられた送電器13と、受電機器21に設けられた受電器23とを備えている。送電器13には高周波電力が入力される。
【0022】
送電器13及び受電器23は磁場共鳴可能に構成されている。具体的には、送電器13は、並列に接続された1次側コイル13a及び1次側コンデンサ13bからなる共振回路で構成されている。受電器23は、並列に接続された2次側コイル23a及び2次側コンデンサ23bからなる共振回路で構成されている。両者の共振周波数は同一である。
【0023】
かかる構成によれば、高周波電源12から高周波電力が送電器13(1次側コイル13a)に入力された場合、送電器13と受電器23(2次側コイル23a)とが磁場共鳴する。これにより、受電器23は送電器13のエネルギの一部を受け取る。すなわち、受電器23は、送電器13から高周波電力を受電する。
【0024】
ちなみに、受電器23(2次側コイル23a)は、車両Cの底部に配置されている。そして、送電器13は、車高方向において受電器23と対向可能となるように、車両Cが設置される設置面(地面)Pに配置されている。つまり、送電器13及び受電器23は、車高方向に対向し得るものである。
【0025】
ここで、車高方向における各コイル13a,23a間の距離である各コイル13a,23a間の高さHは、車両Cが設置される設置面Pに対する1次側コイル13aの高さ(車高方向の距離)と、設置面Pに対する2次側コイル23aの高さ(車高方向の距離)とによって決まる。
【0026】
受電機器21は、受電器23にて受電した高周波電力を直流電力に整流する整流部としての整流器24と、整流器24と車両用バッテリ22との間に設けられ、整流器24により整流された直流電力の電圧変換を行うDC/DCコンバータ25とを備えている。DC/DCコンバータ25から出力された直流電力が車両用バッテリ22に入力されることにより、車両用バッテリ22が充電される。なお、本実施形態では、整流器24の入力端から車両用バッテリ22までが負荷Lに対応する。
【0027】
ちなみに、DC/DCコンバータ25は、周期的にスイッチング(オンオフ)を行うスイッチング素子を有している。そして、DC/DCコンバータ25の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスは、当該スイッチング素子のオンオフのデューティ比によって規定される。
【0028】
受電機器21は、車両用バッテリ22の充電状態(SOC、充電量)を検知する検知センサ26を備えている。検知センサ26は、その検知結果を、受電機器21に設けられた車両側コントローラ27に送信する。これにより、車両側コントローラ27は、車両用バッテリ22の充電状態を把握することができる。
【0029】
送電機器11は、車両側コントローラ27と無線通信可能に構成された電源側コントローラ14を備えている。電源側コントローラ14は、車両側コントローラ27と情報のやり取りを行うことにより、高周波電源12の制御を行う。
【0030】
図2に示すように、受電機器21は、定数(インピーダンス)が可変の2次側可変インピーダンス変換部30を備えている。2次側可変インピーダンス変換部30は、受電器23から車両用バッテリ22までの電力伝送経路上に設けられており、詳細には受電器23と整流器24との間に設けられている。受電器23にて受電された高周波電力は、2次側可変インピーダンス変換部30を介して、整流器24以降に入力される。
【0031】
同様に、送電機器11は、定数(インピーダンス)が可変の1次側可変インピーダンス変換部40を備えている。1次側可変インピーダンス変換部40は、高周波電源12と送電器13との電力伝送系路上に設けられており、高周波電源12から出力された高周波電力は、1次側可変インピーダンス変換部40を介して送電器13に入力される。なお、定数(インピーダンス)は、変換比とも、インダクタンスやキャパシタンスとも言える。
【0032】
ここで、本発明者らは、受電器23(2次側コイル23a)の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスの実部が、送電器13及び受電器23間の伝送効率に寄与していることを見出した。具体的には、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスの実部には、相対的に他の抵抗値よりも高い伝送効率となる特定抵抗値Routが存在することを見出した。換言すれば、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスの実部には、所定の抵抗値(第1抵抗値)よりも伝送効率が高くなる特定抵抗値Rout(第2抵抗値)が存在することを見出した。
【0033】
詳細には、仮に送電器13の入力端に仮想負荷X1を設けた場合において、仮想負荷X1の抵抗値をRa1とし、受電器23(詳細には受電器23の出力端)から仮想負荷X1までの抵抗値をRb1とすると、特定抵抗値Routは√(Ra1×Rb1)である。
【0034】
2次側可変インピーダンス変換部30は、上記知見に基づいて、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンス(2次側可変インピーダンス変換部30の入力端のインピーダンス)が特定抵抗値Routに近づく(好ましくは一致する)ように、負荷LのインピーダンスZLをインピーダンス変換する。
【0035】
ここで、高周波電源12から出力される高周波電力の電力値は、高周波電源12の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンス(1次側可変インピーダンス変換部40の入力端のインピーダンス)に依存する。
【0036】
かかる構成において、1次側可変インピーダンス変換部40は、高周波電源12から所望の電力値の高周波電力が出力されるべく、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが特定抵抗値Routに近づいている状況における送電器13の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスZinをインピーダンス変換する。
【0037】
例えば、車両用バッテリ22に対して入力される直流電力の電力値が充電に適した電力値となるのに要する高周波電源12の出力電力の電力値を、充電に適した電力値の高周波電力とする。そして、高周波電源12から充電に適した電力値の高周波電力が出力されるための高周波電源12の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスを、充電に適した入力インピーダンスZtとする。この場合、1次側可変インピーダンス変換部40は、高周波電源12の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが上記充電に適した入力インピーダンスZtに近づく(好ましくは一致する)ように、送電器13の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスZinをインピーダンス変換する。
【0038】
換言すれば、高周波電源12は、高周波電源12の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが上記充電に適した入力インピーダンスZtである条件下で、所望の電力値の高周波電力を出力可能に構成されているとも言える。
【0039】
ここで、特定抵抗値Routは、送電器13及び受電器23の構成(各コイル13a,23aの形状及びインダクタンスや各コンデンサ13b,23bのキャパシタンス等)、送電器13及び受電器23の相対位置によって決定されるものである。このため、送電器13及び受電器23が予め定められた基準位置からずれた場合、すなわち送電器13及び受電器23の相対位置が変動した場合、特定抵抗値Routは変動する。
【0040】
これに対して、本非接触電力伝送装置10は、送電器13及び受電器23間の相対位置の変動に追従可能となっている。この点について、各可変インピーダンス変換部30,40の詳細な構成と合わせて以下に説明する。
【0041】
図2に示すように、2次側可変インピーダンス変換部30は、複数(例えば3つ)のインピーダンス変換器(2次側インピーダンス変換部)31〜33を備えている。各インピーダンス変換器31〜33は、互いに並列に設けられている。各インピーダンス変換器31〜33はそれぞれL型のLC回路で構成されており、各インピーダンス変換器31〜33の定数はそれぞれ異なっている。
【0042】
2次側可変インピーダンス変換部30は、受電器23及び整流器24(車両用バッテリ22)の接続先を、各インピーダンス変換器31〜33のうちいずれかに切り替える2次側リレー34を備えている。2次側リレー34は、各インピーダンス変換器31〜33の両側に設けられている。2次側リレー34が切り替わることにより、受電器23にて受電された高周波電力が伝送されるインピーダンス変換器が切り替わるようになっている。
【0043】
2次側可変インピーダンス変換部30と同様に、1次側可変インピーダンス変換部40は、定数が相違する複数(例えば3つ)のインピーダンス変換器(1次側インピーダンス変換部)41〜43を備えている。そして、1次側可変インピーダンス変換部40は、高周波電源12及び送電器13の接続先(高周波電力が伝送されるインピーダンス変換器)を、複数のインピーダンス変換器41〜43のうちいずれかに切り替える1次側リレー44を備えている。なお、各インピーダンス変換器41〜43は、例えば逆L型のLC回路で構成されている。
【0044】
以上の通り、各可変インピーダンス変換部30,40は、定数が可変となっているため、送電器13及び受電器23間の相対位置の変動に応じて定数を変更することができる。
かかる構成において、各コントローラ14,27は、送電器13及び受電器23の少なくとも一部(好ましくは全部)が車高方向に対向している場合に、互いに情報のやり取りを行うことにより、車両用バッテリ22の充電を開始するための充電開始処理を実行する。そして、各コントローラ14,27は、当該充電開始処理において、電源側コントローラ14の所定の記憶領域に記憶されている送電機器固有情報14aと、車両側コントローラ27の所定の記憶領域に記憶されている車両固有情報27a及びマップ27bとを用いて、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の可変制御を行う。
【0045】
送電機器固有情報14aは、送電機器11、詳細には1次側コイル13aの位置に関する情報であって送電機器11固有の情報である。送電機器固有情報14aには、設置面Pに対する1次側コイル13aの高さ情報が含まれている。車両固有情報27aは、受電機器21、詳細には2次側コイル23aの位置に関する情報であって受電機器21固有の情報である。車両固有情報27aには、設置面Pに対する2次側コイル23aの高さ情報が含まれている。
【0046】
なお、送電機器11固有の情報とは、送電機器11の仕様に基づいて予め定められている情報である。また、受電機器21固有の情報とは、車両Cの仕様(車種)によって予め定められている情報である。
【0047】
ちなみに、車両Cに対する受電器23の位置は固定されている。このため、設置面Pに対する2次側コイル23aの高さと、車高とは相関関係となっている。よって、車両固有情報27aは車高に関する情報であるとも言える。
【0048】
次に、マップ27bの詳細な構成と合わせて、各コントローラ14,27にて実行される充電開始処理について説明する。説明の便宜上、先ず車両側コントローラ27にて実行される車両側充電開始処理について説明した後、電源側コントローラ14にて実行される電源側充電開始処理について説明する。
【0049】
図3に示すように、車両側充電開始処理においては、まずステップS101にて、送電機器固有情報14aを受信するまで待機する。送電機器固有情報14aは、電源側コントローラ14から送信されるものである。
【0050】
送電機器固有情報14aを受信した場合には、ステップS102に進み、車両固有情報27aを把握する。そして、ステップS103にて、上記各固有情報14a,27aから各コイル13a,23a間の高さHを導出する。詳細には、車両固有情報27aにて導出される2次側コイル23aの高さから、送電機器固有情報14aにて導出される1次側コイル13aの高さを差し引く。
【0051】
続くステップS104では、上記各コイル13a,23a間の高さHに基づいて、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する定数決定処理を実行する。定数決定処理では、マップ27bを参照することにより、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する。
【0052】
図4に示すように、マップ27bには、上記高さHに対して、1次側可変インピーダンス変換部40の各インピーダンス変換器41〜43の番号情報である1次側番号情報Z1(x)と、2次側可変インピーダンス変換部30の各インピーダンス変換器31〜33の番号情報である2次側番号情報Z2(x)とが対応付けられて設定されている。なお、以降の説明において、1次側番号情報Z1(x)を単にZ1(x)とも言い、2次側番号情報Z2(x)を単にZ2(x)とも言う。これらZ1(x)及びZ2(x)が、インピーダンスに関する情報に対応する。
【0053】
詳細には、H1<H≦H2(H1<H2)の高さ範囲には、1次側可変インピーダンス変換部40の第1インピーダンス変換器41固有のZ1(1)と、2次側可変インピーダンス変換部30の第1インピーダンス変換器31固有のZ2(1)とが設定されている。
【0054】
H2<H≦H3(H2<H3)の高さ範囲には、1次側可変インピーダンス変換部40の第2インピーダンス変換器42固有のZ1(2)と、2次側可変インピーダンス変換部30の第2インピーダンス変換器32固有のZ2(2)とが設定されている。
【0055】
H3<H≦H4(H3<H4)の高さ範囲には、1次側可変インピーダンス変換部40の第3インピーダンス変換器43固有のZ1(3)と、2次側可変インピーダンス変換部30の第3インピーダンス変換器33固有のZ2(3)とが設定されている。
【0056】
ここで、1次側可変インピーダンス変換部40の各インピーダンス変換器41〜43の定数及び2次側可変インピーダンス変換部30の各インピーダンス変換器31〜33の定数と、各コイル13a,23a間の高さHとの関係について説明する。
【0057】
2次側可変インピーダンス変換部30の第1インピーダンス変換器31の定数は、H1<H≦H2である条件下において、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが特定抵抗値Routに近づくよう設定されている。そして、1次側可変インピーダンス変換部40の第1インピーダンス変換器41の定数は、H1<H≦H2である条件下において、充電に適した入力インピーダンスZtに近づくよう設定されている。
【0058】
同様に、2次側可変インピーダンス変換部30の第2インピーダンス変換器32の定数は、H2<H≦H3である条件下において、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが特定抵抗値Routに近づくように設定されている。そして、1次側可変インピーダンス変換部40の第2インピーダンス変換器42の定数は、H2<H≦H3である条件下において、充電に適した入力インピーダンスZtに近づくように設定されている。
【0059】
さらに、2次側可変インピーダンス変換部30の第3インピーダンス変換器33の定数は、H3<H≦H4である条件下において、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが特定抵抗値Routに近づくように設定されている。そして、1次側可変インピーダンス変換部40の第3インピーダンス変換器43の定数は、H3<H≦H4である条件下において、充電に適した入力インピーダンスZtに近づくように設定されている。
【0060】
図3のステップS104の定数決定処理の説明に戻り、定数決定処理では、マップ27bを参照することにより、ステップS103にて導出された各コイル13a,23a間の高さHに対応したZ1(x)及びZ2(x)を把握する。
【0061】
そして、ステップS105では、2次側可変インピーダンス変換部30の各インピーダンス変換器31〜33のうち、ステップS104にて把握されたZ2(x)に対応するものが受電器23及び整流器24に接続されるように、2次側リレー34を制御する。
【0062】
続くステップS106では、1次側可変インピーダンス変換部40の定数情報、すなわちステップS104にて把握されたZ1(x)を電源側コントローラ14に送信する。そして、本処理を終了する。
【0063】
次に、図5を用いて電源側充電開始処理について説明する。まず、ステップS201にて、送電機器固有情報14aを車両側コントローラ27に送信する。その後、ステップS202にて、Z1(x)を受信するまで待機する。Z1(x)は、車両側充電開始処理のステップS106にて送信されるものである。
【0064】
Z1(x)を受信した場合には、ステップS203に進み、1次側可変インピーダンス変換部40の定数の可変制御を行う。詳細には、1次側可変インピーダンス変換部40の各インピーダンス変換器41〜43のうち受信したZ1(x)に対応するインピーダンス変換器が高周波電源12及び送電器13に接続されるよう1次側リレー44を制御する。
【0065】
その後、ステップS204にて、高周波電源12から高周波電力が出力されるように高周波電源12を制御して、本処理を終了する。これにより、送電機器11から受電機器21に向けて高周波電力が伝送され、車両用バッテリ22の充電が開始される。
【0066】
次に本実施形態の作用について説明する。
送電機器11の仕様によって予め定められている送電機器固有情報14aと、車両Cの仕様によって予め定められている車両固有情報27aとに基づいて、各コイル13a,23a間の高さHが導出され、その各コイル13a,23a間の高さHに基づいて各可変インピーダンス変換部30,40の定数が決定される。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)1次側コイル13aの位置に関する情報であって送電機器11固有の送電機器固有情報14aと、2次側コイル23aの位置に関する情報であって受電機器21固有の車両固有情報27aとに基づいて、各コイル13a,23a間の高さHを導出し、その高さHに基づいて各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する構成とした。これにより、高周波電源12からの高周波電力の出力や、各コイル13a,23a間の高さHを検出するためのセンサ等を要することなく、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定することができる。よって、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の決定に係る構成の簡素化及び制御の簡素化を図ることができる。
【0068】
(2)各コイル13a,23aは車高方向に対向し得る構成とした。具体的には、1次側コイル13aを、車両Cが設置される設置面Pに配置し、2次側コイル23aを車両Cの底部に配置する構成とした。かかる構成において、送電機器固有情報14aには設置面Pに対する1次側コイル13aの高さ情報が含まれており、車両固有情報27aには設置面Pに対する2次側コイル23aの高さ情報が含まれている構成とした。これにより、送電機器11の仕様に応じた1次側コイル13aの高さのばらつきや、車種に応じた2次側コイル23aの高さのばらつきに対応した各コイル13a,23a間の高さHを導出することができる。よって、送電機器11の仕様や車種に起因して各コイル13a,23a間の高さHが変動する場合であっても、各可変インピーダンス変換部30,40のインピーダンスを好適に決定することができる。
【0069】
(3)各コイル13a,23a間の高さHに対して、各可変インピーダンス変換部30,40の定数に関する情報(Z1(x)及びZ2(x))が対応付けられたデータであるマップ27bを設け、そのマップ27bを参照することにより、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する構成とした。これにより、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を算出するといった複雑な処理を行うことなく、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定することができる。よって、処理の簡素化を図ることができ、それを通じて、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の決定に要する時間の短縮等を図ることができる。
【0070】
処理の簡素化について詳述すると、例えば伝送される高周波電力の電圧波形や電流波形を測定し、その測定結果に基づいて各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する構成の場合、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の変動によって測定結果が変動する。このため、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の可変制御を行う順番等を考慮する必要が生じ得る。
【0071】
これに対して、上記のように各コイル13a,23a間の高さHに対応させて、各可変インピーダンス変換部30,40の定数が予め設定されている構成を採用することにより、上記のように順番等を考慮することなく、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定することができる。これにより、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の可変制御の処理の簡素化を、より好適に図ることができる。
【0072】
(4)各可変インピーダンス変換部30,40は、定数が相違する複数のインピーダンス変換器31〜33,41〜43にて構成されている。そして、各コイル13a,23a間の高さHに対応させて、各インピーダンス変換器31〜33,41〜43のうちいずれかが選択され、切り替わるようになっている。これにより、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の可変制御を、より簡素に行うことができるとともに、可変範囲が過度に広い素子等を用いることなく、所望の定数を実現することができる。
【0073】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、車高方向における各コイル13a,23a間の距離である各コイル13a,23a間の高さHに基づいて、各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する構成であったが、これに限られない。例えば、設置面Pに沿う方向の各コイル13a,23aの位置ずれ(車高方向から見た場合の各コイル13a,23aの位置ずれ)を考慮して、各コイル13a,23a間の距離を導出し、その距離に基づいて各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する構成としてもよい。
【0074】
上記構成の一例としては例えば、設置面Pには、車両Cの駐車位置を規定する規定部(例えば車輪止め)が設けられている。そして、送電機器固有情報14aには、設置面Pに沿う方向における規定部に対する1次側コイル13aの位置を示す位置情報が含まれている。そして、車両固有情報27aには、設置面Pに沿う方向における車両Cにおける2次側コイル23aの位置(例えばタイヤに対する2次側コイル23aの位置)を示す位置情報が含まれている。かかる構成において、規定部にて規定される位置に車両Cが駐車された場合に、車両側コントローラ27は、各位置情報に基づいて、設置面Pに沿う方向における各コイル13a,23aの位置ずれを導出し、その位置ずれと各コイル13a,23a間の高さHとに基づいて、各コイル13a,23a間の距離を導出する。
【0075】
○ 実施形態では、各コイル13a,23aは車高方向に対向し得る構成であったが、これに限られず、例えば車両Cの前後方向に対向する構成であってもよい。この場合、例えば設置面Pから起立した壁部に1次側コイル13aを配置し、車両Cの背面に2次側コイル23aを設置し、さらに設置面Pに、車両Cの前後方向の位置を規定する規定部、例えば車輪止めを設ける。そして、送電機器固有情報14aに、車両Cの前後方向における壁部に対する1次側コイル13aの距離情報と、壁部に対する車輪止めの距離情報とを含め、車両固有情報27aには、車両Cの前後方向におけるタイヤに対する2次側コイル23aの距離情報を含める。かかる構成において、各コントローラ14,27は、タイヤと車輪止めとが当接している状況において、車両Cの前後方向における壁部に対する車輪止めの距離情報と、車両Cの前後方向におけるタイヤに対する2次側コイル23aの距離情報とに基づいて、壁部に対する2次側コイル23aの距離を導出する。そして、各コントローラ14,27は、その導出結果と1次側コイル13aの距離情報とに基づいて各コイル13a,23a間の距離を導出する。
【0076】
○ 送電機器11及び受電機器21の少なくとも一方に車高検出部を設け、車両用バッテリ22の充電中において、車高検出部の検出結果に基づいて、各可変インピーダンス変換部30,40の可変制御を行う構成としてもよい。これにより、車両用バッテリ22の充電中における車高の変動に追従することができる。
【0077】
○ 実施形態では、各可変インピーダンス変換部30,40の各インピーダンス変換器31〜33,41〜43の定数は固定であったが、これに限られず、これらの定数を可変としてもよい。この場合、各固有情報14a,27aから導出される各コイル13a,23a間の高さHに基づいてインピーダンス変換器を選択し、車両用バッテリ22の充電中においては、選択されたインピーダンス変換器の定数を可変制御する構成としてもよい。これにより、車両用バッテリ22の充電中における車高の変動に追従することができる。
【0078】
なお、上記選択されたインピーダンス変換器の定数の可変制御は、例えば送電機器11及び受電機器21の少なくとも一方に設けられ、電圧波形及び電流波形を測定する測定器の測定結果や、車高検出部の検出結果に基づいて行うとよい。
【0079】
○ 設置面Pは、車両Cが設置される面であれば任意であり、例えば立体駐車場の駐車テーブルのテーブル面であってもよい。
○ 実施形態では、送電器13は設置面Pに配置されている構成であったが、これに限られず、例えば地中に埋め込む構成であってもよい。この場合、設置面Pに対する1次側コイル13aの高さとは、設置面Pからの1次側コイル13aの深さである。
【0080】
○ 実施形態では、車両側コントローラ27にマップ27bが設けられており、車両側コントローラ27が定数決定処理を実行する構成であったが、これに限られず、定数決定処理の制御主体は任意である。例えば電源側コントローラ14にマップ27bを設け、電源側コントローラ14が定数決定処理を実行する構成としてもよいし、各コントローラ14,27とは別に専用のコントローラを設けてもよい。
【0081】
○ 実施形態では、送電機器11及び受電機器21の双方に可変インピーダンス変換部30,40が設けられていたが、いずれか一方を省略してもよい。また、いずれか一方のインピーダンス変換部の定数を固定としてもよい。
【0082】
○ 実施形態では、送電機器11及び受電機器21に1つずつ可変インピーダンス変換部30,40が設けられていたが、これに限られず、例えば2つ以上設けられている構成であってもよい。
【0083】
○ 実施形態では、各可変インピーダンス変換部30,40は、定数が相違する複数のインピーダンス変換器を備えている構成であったが、これに限られず、例えばキャパシタンスが可変の可変キャパシタ及びインダクタンスが可変の可変インダクタの少なくとも一方を有するLC回路を備えている構成であってもよい。この場合、各コイル13a,23a間の高さHと定数とが対応付けられたマップを設け、そのマップを参照することにより定数を特定し、その定数に近づくように定数の可変制御を行う。
【0084】
○ 実施形態では、各インピーダンス変換器41〜43は逆L型のLC回路で構成されており、各インピーダンス変換器31〜33はL型のLC回路で構成されていたが、具体的な回路構成は任意である。例えばπ型、T型などを用いてもよい。また、各インピーダンス変換器31〜33,41〜43はLC回路に限られず、例えばトランスでもよい。
【0085】
○ 1次側可変インピーダンス変換部40は、力率が改善される(リアクタンスが0に近づく)ように、送電器13の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスZinをインピーダンス変換するものであってもよい。
【0086】
○ DC/DCコンバータ25のスイッチング素子のオンオフのデューティ比を調整することにより、DC/DCコンバータ25の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスを調整し、それを通じて、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスを特定抵抗値Routに近づける構成としてもよい。この場合、DC/DCコンバータ25が「可変インピーダンス変換部」に対応し、車両用バッテリ22が「負荷」に対応する。つまり、「負荷」とは、受電器23(2次側コイル23a)にて受電される高周波電力又はそれが整流された直流電力が入力されるものである。なお、DC/DCコンバータ25を省略してもよい。
【0087】
○ 高周波電源12として電力源を採用し、各可変インピーダンス変換部30,40を、インピーダンス整合させるのに用いてもよい。詳細には、1次側可変インピーダンス変換部40は、高周波電源12の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが高周波電源12の出力インピーダンスと整合するように、送電器13の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスZinをインピーダンス変換するものであってもよい。
【0088】
また、2次側可変インピーダンス変換部30は、受電器23の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが受電器23の出力端から高周波電源12までのインピーダンスと整合するように、負荷LのインピーダンスZLをインピーダンス変換してもよい。
【0089】
かかる構成においては、各コントローラ14,27は、各反射波電力が小さくなるように各可変インピーダンス変換部30,40の定数の可変制御を行うとよい。この場合、各可変インピーダンス変換部30,40の定数の可変制御を同時に行うとよい。
【0090】
○ 実施形態では、送電器13の共振周波数と受電器23の共振周波数とは同一に設定されていたが、これに限られず、電力伝送が可能な範囲内で両者を異ならせてもよい。
○ 実施形態では、送電器13と受電器23とは同一の構成であったが、これに限られず、異なる構成であってもよい。
【0091】
○ 実施形態では、各コンデンサ13b,23bを設けたが、これらを省略してもよい。この場合、各コイル13a,23aの寄生容量を用いて磁場共鳴させる。
○ 実施形態では、1次側コイル13aと1次側コンデンサ13bとは並列に接続されていたが、これに限られず、両者は直列に接続されていてもよい。同様に、2次側コイル23aと2次側コンデンサ23bとは、直列に接続されていてもよい。
【0092】
○ 実施形態では、非接触の電力伝送を実現させるために磁場共鳴を用いたが、これに限られず、電磁誘導を用いてもよい。
○ 実施形態では、受電器23にて受電された高周波電力は車両用バッテリ22の充電に用いられたが、これに限られず、例えば別の機器の駆動に用いてもよい。
【0093】
○ 高周波電源12は、電力源、電圧源及び電流源のいずれであってもよい。
○ 実施形態では、高周波電源12が設けられていたが、これに限られず、これを省略して、系統電源と1次側可変インピーダンス変換部40とを直接接続してもよい。
【0094】
○ 送電器13は、1次側コイル13a及び1次側コンデンサ13bからなる共振回路と、その共振回路と電磁誘導で結合する1次側結合コイルとを有する構成であってもよい。同様に、受電器23は、2次側コイル23a及び2次側コンデンサ23bからなる共振回路と、その共振回路と電磁誘導で結合する2次側結合コイルとを有する構成であってもよい。
【0095】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)交流電力が入力される1次側コイルを有する送電機器から非接触で前記交流電力を受電可能なものであって車両に搭載された受電機器において、前記1次側コイルから非接触で前記交流電力を受電可能な2次側コイルと、負荷と、前記2次側コイルと前記負荷との間に設けられ、インピーダンスが可変の可変インピーダンス変換部と、を備え、前記可変インピーダンス変換部のインピーダンスは、前記送電機器に関する情報であって前記送電機器固有の送電機器固有情報に基づいて決定されることを特徴とする受電機器。
【0096】
上記技術的思想に着目した場合、例えば、送電機器固有情報14aのみで2次側可変インピーダンス変換部30の定数を決定する構成としてもよい。例えば、車両側コントローラ27に、各コイル13a,23a間の距離に関する情報としての1次側コイル13aの高さ範囲と、Z2(x)とが対応付けられたマップを記憶させておく。そして、車両側コントローラ27は、送電機器固有情報14aを受信した場合、そのマップを参照して上記送電機器固有情報14aに含まれる1次側コイル13aの高さ情報に対応したZ2(x)を特定する構成としてもよい。
【0097】
なお、上記構成において、2次側可変インピーダンス変換部30の各インピーダンス変換器31〜33の定数は、それぞれ対応付けられている1次側コイル13aの高さ範囲に1次側コイル13aが配置されている場合に伝送効率が高くなるように、2次側コイル23aの高さ(車高)を考慮して設定されているとよい。
【0098】
(ロ)交流電力が入力される1次側コイルを備え、車両に搭載されたものであって2次側コイルを有する受電機器に非接触で前記交流電力を送電可能な送電機器において、インピーダンスが可変の可変インピーダンス変換部を備え、当該可変インピーダンス変換部のインピーダンスは、前記車両に関する情報であって前記車両固有の車両固有情報に基づいて決定されることを特徴とする送電機器。
【0099】
上記技術的思想に着目した場合、例えば、車両固有情報27aのみで1次側可変インピーダンス変換部40の定数を決定する構成としてもよい。例えば、電源側コントローラ14に、各コイル13a,23a間の距離に関する情報としての2次側コイル23aの高さ範囲と、Z1(x)とが対応付けられたマップを記憶させておく。そして、電源側コントローラ14は、車両固有情報27aを受信した場合、そのマップを参照して上記車両固有情報27aに含まれる2次側コイル23aの高さ情報に対応したZ1(x)を特定する構成としてもよい。
【0100】
なお、1次側可変インピーダンス変換部40の各インピーダンス変換器41〜43の定数は、それぞれ対応付けられている2次側コイル23aの高さ範囲に2次側コイル23aが配置されている場合に、高周波電源12の出力端のインピーダンスが充電に適した入力インピーダンスZtに近づくように、1次側コイル13aの高さを考慮して設定される。
【0101】
ちなみに、上記(イ)及び(ロ)においては、車両側コントローラ27に、車両固有情報として、受電器23の情報、例えば共振周波数や2次側コイル23aの形状に関する情報を記憶する構成としてもよい。同様に、電源側コントローラ14に、送電機器固有情報として、送電器13の情報、例えば共振周波数や1次側コイル13aの形状に関する情報を記憶する構成としてもよい。そして、これらの情報に基づいて各可変インピーダンス変換部30,40の定数を決定する構成としてもよい。
【0102】
また、送電機器固有情報として送電機器11の識別情報を記憶させておき、送電機器11の識別情報と2次側可変インピーダンス変換部30の定数情報とが対応付けられたマップを用いて、2次側可変インピーダンス変換部30の定数を決定してもよい。
【0103】
さらに、車両固有情報として車両Cの識別情報を記憶させておき、車両Cの識別情報と1次側可変インピーダンス変換部40の定数情報とが対応付けられたマップを用いて、1次側可変インピーダンス変換部40の定数を決定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10…非接触電力伝送装置、11…送電機器、12…高周波電源、13a…1次側コイル、14…電源側コントローラ、14a…送電機器固有情報、21…受電機器、22…車両用バッテリ、23a…2次側コイル、27…車両側コントローラ、27a…車両固有情報、27b…マップ、30,40…可変インピーダンス変換部。
図1
図2
図3
図4
図5