(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の支持基材の表面に第1の固定樹脂層を設け、次いで、前記第1の固定樹脂層と半導体ウエハの機能面を対向させて第1の固定樹脂層と半導体ウエハを貼り合せること、または半導体ウエハの機能面に第1の固定樹脂層を設け、次いで、前記第1の固定樹脂層と第1の支持基材を貼り合わせることにより第1の支持基材/第1の固定樹脂層/半導体ウエハがこの順に積層された第1の積層体を得る工程と、
前記半導体ウエハの裏面を研削し、さらに、半導体ウエハの裏面に電極を形成する半導体ウエハ裏面加工工程と、
前記半導体ウエハの裏面と第2の支持基材を第2の固定樹脂層を介して貼り合せることにより第1の支持基材/第1の固定樹脂層/半導体ウエハ/第2の固定樹脂層/第2の支持基材がこの順に積層された第2の積層体を得る工程と、
前記第2の積層体を加熱することにより、前記第2の積層体から第1の支持基材を剥離する第1の剥離工程と、
前記半導体ウエハの機能面に複数の半導体装置を実装することにより第2の支持基材/第2の固定樹脂層/半導体ウエハ/半導体装置がこの順に積層された第3の積層体を得る工程と、
前記第3の積層体から第2の支持基材を剥離する第2の剥離工程と、
を有し、
前記第1の固定樹脂層が、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であり、前記第1の剥離工程が、第1の支持基材側から活性エネルギー線を照射した後、熱分解性の固定樹脂層を熱分解することにより第1の支持基材を剥離する工程である電子装置の製造方法。
(i)前記第2の固定樹脂層が、熱分解性または熱軟化性の固定樹脂層であり、前記第2の剥離工程において、前記第3の積層体を加熱して、前記熱分解性または熱軟化性の固定樹脂層を熱分解または熱軟化すること、
(ii)前記第2の固定樹脂層が、光熱変換層を有する固定樹脂層であり、前記第2の剥離工程において、前記第3の積層体を照射して、前記光熱変換層を有する固定樹脂層を分解すること、あるいは
(iii)前記第2の固定樹脂層が、溶剤溶解性を有する固定樹脂層であり、前記第2の剥離工程において、前記第3の積層体に溶剤を供給して、前記溶剤溶解性を有する固定樹脂層を溶剤溶解させること、
により第2の支持基材を剥離する請求項10に記載の電子装置の製造方法。
前記第2の固定樹脂層が、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であり、前記第2の剥離工程が、第2の支持基材側から活性エネルギー線を照射した後、熱分解性の固定樹脂層を熱分解する工程である請求項11に記載の電子装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電子装置の製造方法は、第1の支持基材の表面に第1の固定樹脂層を設け、次いで、前記第1の固定樹脂層と半導体ウエハの機能面を対向させて第1の固定樹脂層と半導体ウエハを貼り合せること、または半導体ウエハの機能面に第1の固定樹脂層を設け、次いで、前記第1の固定樹脂層と第1の支持基材を貼り合わせることにより第1の支持基材/第1の固定樹脂層/半導体ウエハがこの順に積層された第1の積層体を得る工程と、
前記半導体ウエハの裏面を研削し、さらに、半導体ウエハの裏面に電極を形成する半導体ウエハ裏面加工工程と、
前記半導体ウエハの裏面と第2の支持基材を第2の固定樹脂層を介して貼り合せることにより第1の支持基材/第1の固定樹脂層/半導体ウエハ/第2の固定樹脂層/第2の支持基材がこの順に積層された第2の積層体を得る工程と、
前記第2の積層体から第1の支持基材を剥離する第1の剥離工程と、
前記半導体ウエハの機能面に複数の半導体装置を実装することにより第2の支持基材/第2の固定樹脂層/半導体ウエハ/半導体装置がこの順に積層された第3の積層体を得る工程と、
前記第3の積層体から第2の支持基材を剥離する第2の剥離工程と、
を有することを特徴とする電子装置の製造方法である。
【0010】
つまり、本発明の電子装置の製造方法は、第1の積層体を得る工程と、半導体ウエハ裏面加工工程と、第2の積層体を得る工程と、第1の剥離工程と、第3の積層体を得る工程と、第2の剥離工程と、を有する。なお、半導体ウエハの機能面とは、トランジスターやダイオードなどの半導体素子やそれらを接続する回路がその表面に形成された面をいう。
本発明の電子装置の製造方法においては、半導体ウエハに第1の支持基材を固定するための第1の固定樹脂層および半導体ウエハに第2の支持基材を固定するための第2の固定樹脂層として、熱分解性の固定樹脂層、活性エネルギー線を照射することにより熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層、熱軟化性の固定樹脂層、光熱変換層を有する固定樹脂層、溶剤溶解性を有する固定樹脂層の5つを挙げることができ、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として、どのタイプの固定樹脂層を使用するかにより実施形態が異なる。
【0011】
なお、熱分解性の固定樹脂層とは、剥離工程において、熱分解温度以上の温度で加熱することにより、固定樹脂層が熱分解して、詳細には、固定樹脂層を構成している成分が熱分解して、積層体から支持基材を剥離することができる固定樹脂層を指す。そのため、剥離工程では、積層体を熱分解性の固定樹脂層の熱分解温度以上の温度で加熱することにより、熱分解性の固定樹脂層を熱分解させて、支持基材を剥離する。剥離工程で熱分解性の固定樹脂層を熱分解させるために、積層体を加熱するときの加熱温度は、好ましくは120〜420℃、特に好ましく150〜350℃である。
また、熱分解性の固定樹脂層には、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する固定樹脂層がある。活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を用いる場合は、剥離工程において、先に固定樹脂層に活性エネルギー線を照射させて固定樹脂層の熱分解温度を低下させた後、積層体を、低下した熱分解温度以上の温度で加熱することにより、熱分解性の固定樹脂層を熱分解させて、支持基材を剥離する。そのため、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を用いることにより、剥離工程での積層体の加熱温度を低くすることができる。剥離工程で活性エネルギー線を照射した後の熱分解性の固定樹脂層を熱分解させるために、積層体を加熱するときの加熱温度は、好ましくは100〜400℃、特に好ましく120〜300℃である。
【0012】
また、熱軟化性の固定樹脂層とは、剥離工程において、軟化温度以上の温度で加熱することにより、固定樹脂層の溶融粘度が低下して、積層体から支持基材を剥離することができる固定樹脂層を指す。そのため、剥離工程では、積層体を熱軟化性の固定樹脂層の熱軟化温度以上の温度で加熱することにより、熱軟化性の固定樹脂層を軟化させて、支持基材を剥離する。剥離工程で熱軟化性の固定樹脂層を熱軟化させるために、積層体を加熱するときの加熱温度は、好ましくは100〜350℃、特に好ましくは120〜300℃である。
【0013】
また、光熱変換層を有する固定樹脂層とは、剥離工程において、活性エネルギー線を照射することにより、光熱変換層に含まれている光吸収剤が熱エネルギーを発生し、発生した熱エネルギーにより、光熱変換層に含まれている熱分解性樹脂が熱分解して、光熱変換層中にボイドが生じるために、積層体から支持基材を剥離することができる固定樹脂層を指す。そのため、剥離工程では、先に光熱変換層に活性エネルギー線を照射させて、光熱変化層中の熱分解性樹脂を熱分解させてボイドを生じさせた後、支持基材を剥離する。なお、ボイドとは層間に生じる気泡などの間隙をいう。また、光熱変換層を有する固定樹脂層には、光熱変換層のみからなるものと、光熱変換層および接着層からなるものとがある。
【0014】
また、溶剤溶解性を有する固定樹脂層とは、剥離工程において、支持基材に設けられている貫通孔から、固定樹脂層に溶剤を供給することにより、固定樹脂層が溶解して、積層体から支持基材を剥離することができる固定樹脂層を指す。そのため、剥離工程では、固定樹脂層に溶剤を供給して固定樹脂層を溶解させることにより、支持基材を剥離する。
【0015】
本発明の電子装置の製造方法の実施形態を表1に示す。
【0016】
【表1】
1)先に活性エネルギー線を照射した後、熱分解することを指す。
【0017】
第1の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層または熱軟化性の固定樹脂層を使用する場合、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層には、第2の固定樹脂層の熱分解温度または熱軟化温度が、第1の固定樹脂層の熱分解温度よりも高いものを用いる。これにより、第1の剥離工程において第1の固定樹脂層の熱分解温度よりも高く、かつ、第2の固定樹脂層の熱分解温度または熱軟化温度よりも低い温度で積層体を加熱することにより、選択的に第1の支持基材を剥離することができるとともに、第2の支持基材の剥離や位置ずれを防止することができる。なお、第1の固定樹脂層が、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であり、第1の剥離工程で先に活性エネルギー線を照射する場合、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層には、第2の固定樹脂層の熱分解温度(第2の固定樹脂層が、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であり、第2の剥離工程で先に活性エネルギー線を照射する場合は、活性エネルギー線が照射される前の熱分解温度)または熱軟化温度が、第1の剥離工程で活性エネルギー線を照射した後の第1の固定樹脂層の熱分解温度よりも高いものを用いる。
【0018】
また、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として両方とも熱分解性の固定樹脂層を用いる場合、同じ組成の熱分解性の固定樹脂層を用いてもよいし、別の組成の熱分解性の固定樹脂層を用いてもよい。
【0019】
同じ組成の熱分解性の固定樹脂層を用いる場合、例えば、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を用いて、第1の剥離工程で第1の固定樹脂層に活性エネルギー線を選択的に照射することで、第1の固定樹脂層の熱分解温度を低下させることができる。これにより、第1の剥離工程において、第2の固定樹脂層の熱分解温度を、活性エネルギー線が照射された後の第1の固定樹脂層の熱分解温度よりも高くすることができる。
【0020】
また、別の組成の熱分解性の固定樹脂層を用いる場合、例えば、第1の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂の熱分解温度を、第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂の熱分解温度よりも低くすることにより、第2の固定樹脂層の熱分解温度を第1の固定樹脂層の熱分解温度よりも高くすることができる。
【0021】
なお、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として両方とも活性エネルギー線を照射することにより熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用する場合は、第1の剥離工程で、第1の支持基材側から活性エネルギー線が照射されたときに、半導体ウエハが第2の固定樹脂層に活性エネルギー線が照射されるのを防ぐので、第1の固定樹脂層にのみ活性エネルギー線が照射される。
【0022】
第1の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用する場合、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層には、第2の固定樹脂層の熱分解温度または熱軟化温度が、第1の固定樹脂層の熱軟化温度よりも高いものを用いる。これにより、第1の剥離工程において、第1の固定樹脂層の熱軟化温度よりも高く、かつ、第2の固定樹脂層の熱分解温度または熱軟化温度よりも低い温度で積層体を加熱することにより、選択的に第1の支持基材を剥離することができるとともに、第2の支持基材の剥離や位置ずれを防止することができる。なお、第2の固定樹脂層が、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であり、第2の剥離工程で先に活性エネルギー線を照射する場合、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層には、活性エネルギー線が照射される前の第2の固定樹脂層の熱分解温度が、第1の固定樹脂層の熱軟化温度よりも高いものを用いる。
【0023】
また、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として両方とも熱軟化性の固定樹脂層を用いる場合、第2の固定樹脂層の熱軟化温度を第1の固定樹脂層の熱軟化温度よりも高くする。
第2の固定樹脂層の熱軟化温度を第1の固定樹脂層の熱軟化温度よりも高くする方法としては、例えば、第1の固定樹脂層に含まれる熱軟化性樹脂の熱軟化温度を、第2の固定樹脂層に含まれる熱軟化性樹脂の熱軟化温度よりも低くすることが挙げられる。
【0024】
第1の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層または熱軟化性の固定樹脂層を使用する場合、第1の剥離工程において、光熱変換層に活性エネルギー線が照射されることにより、光熱変換層に含まれている光吸収剤から熱エネルギーが発生し、発生した熱により、熱分解性樹脂が分解する。ここで、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層には、第2の固定樹脂層の熱分解温度(第2の固定樹脂層が、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂であり、第2の剥離工程で先に活性エネルギー線を照射する場合は、活性エネルギー線が照射される前の熱分解温度)または熱軟化温度が、第1の剥離工程で光吸収剤が発生する熱で積層体が加熱されて光熱変換層が達する温度よりも高いものを用いる。これにより、第1の剥離工程において、第1の固定樹脂層が、第1の固定樹脂層の光熱変換層に含まれる熱分解性樹脂の熱分解温度よりも高い温度に加熱され、かつ、第2の固定樹脂層が、第2の固定樹脂層の熱分解温度または熱軟化温度よりも低い温度に加熱されるので、選択的に第1の支持基材を剥離することができるとともに、第2の支持基材の剥離や位置ずれを防止することができる。
【0025】
また、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として両方とも光熱変換層を有する固定樹脂層を使用する場合、同じ組成の光熱変換層を用いてもよいし、別の組成の光熱変換層を用いてもよい。
【0026】
また、第1の固定樹脂層として、光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層、または光熱変換層を有する固定樹脂層を使用する場合は、第1の剥離工程で、第1の支持基材側から活性エネルギー線が照射されたときに、半導体ウエハが第2の固定樹脂層に活性エネルギー線が照射されるのを防ぐので、第1の固定樹脂層の光熱変換層のみに活性エネルギー線が照射される。
【0027】
同じ組成の光熱変換層を有する固定樹脂層を用いる場合、第1の固定樹脂層の光熱変換層に活性エネルギー線を選択的に照射することで、第1の固定樹脂層中の光熱変換層のみにボイドを形成することができる。
また、別の組成の光熱変換層を有する固定樹脂層を用いる場合、例えば、光熱変換層中の熱分解性樹脂の熱分解温度、光吸収剤の種類および配合量を調整することにより、第1の固定樹脂層中の光熱変換層のみに選択的にボイドを形成することができる。
【0028】
また、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として両方とも溶剤溶解性の固定樹脂層を用いる場合、同じ組成の溶剤溶解性の固定樹脂層を用いてもよいし、別の組成の溶剤溶解性の固定樹脂層を用いてもよい。
【0029】
同じ組成の溶剤溶解性の固定樹脂層を用いる場合、第1の固定樹脂層のみに選択的に溶剤を供給することにより、第1の固定樹脂層のみを溶解させることができる。
また、別の組成の溶剤溶解性の固定樹脂層を用いる場合、例えば、第1の固定樹脂層に含まれる溶剤溶解性の樹脂の溶剤に対する溶解性を、第2の固定樹脂層に含まれる溶剤溶解性の樹脂の溶剤に対する溶解性よりも高くすることにより、第1の剥離工程において、第1の固定樹脂層を選択的に溶剤に溶解させることができる。
【0030】
以下、本発明の好ましい例を説明するが、本発明はこれらの例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
まず、本発明の電子装置の製造方法の中でも好ましい形態である第1の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を用いた5つの実施形態について詳細に説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層および第2の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程で先に活性エネルギー線を照射した後熱分解を行い、第2の剥離工程で先に活性エネルギー線を照射した後熱分解を行う実施形態である。
【0032】
(第1の積層体を得る工程)
先ず、図(1−a)に示すように、第1の支持基材1上に、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の第1の固定樹脂層10を形成する。第1の実施形態では、後述する第1の剥離工程で先に第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射し、第2の剥離工程で先に第2の支持基材4側から活性エネルギー線を照射するため、第1の支持基材1および第2の支持基材4としては活性エネルギー線を透過する支持基材を用いる。
【0033】
ここで、活性エネルギー線を透過する第1の支持基材1および第2の支持基材4としては、特に限定されるわけではないが、紫外線、レーザー光を透過する硬質基板が挙げられ、より具体的には、ガラス基板等が挙げられる。
【0034】
図1に示す第1の実施形態では、第1の支持基材1上に第1の固定樹脂層10を設けた後に、第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2の機能面を貼着するようにしたが、第1の固定樹脂層10を半導体ウエハ2の機能面側に設けた後に、第1の固定樹脂層10と第1の支持基材1を貼着してもよい。なお、この点については、本発明について同様であり、本発明の第2〜25の実施形態等の他の実施形態についても同じである。
【0035】
また、第1の固定樹脂層10を設ける方法として、例えば、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フィルム転写法、スリットコート法、スキャン塗布法等の公知の方法を用いることができるため、新たな設備投資が必要ないという利点がある。
なお、第1の固定樹脂層10を設ける方法としては、スピンコート法が好ましく、均一で平坦な薄膜を形成することができる。
【0036】
次に、第1の実施形態の第1の固定樹脂層10および第2の固定樹脂層20で使用する熱分解性の固定樹脂層について説明する。
第1の実施形態の第1の固定樹脂層10および第2の固定樹脂層20は、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であり、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の樹脂組成物により構成されている。例えば、第1の固定樹脂層10および第2の固定樹脂層20は、活性エネルギー線の照射により酸を発生する光酸発生剤または光塩基発生剤と、光酸発生剤が発生する酸または光塩基発生剤が発生する塩基により熱分解温度が低下する熱分解性樹脂とを含む固定樹脂層である。なお、光酸発生剤が発生する酸または光塩基発生剤が発生する塩基により熱分解温度が低下する熱分解性樹脂を、熱分解性樹脂(1)とも記載する。
【0037】
第1の固定樹脂層10に含まれる熱分解性樹脂(1)は、95%重量減少温度と5%重量減少温度との差が、5℃≦(95%重量減少温度)−(5%重量減少温度)≦100℃である熱分解性樹脂を含む熱分解性の樹脂組成物が好ましい。また、第2の固定樹脂層20に含まれる熱分解性樹脂(1)は、95%重量減少温度と5%重量減少温度との差が、5℃≦(95%重量減少温度)−(5%重量減少温度)≦100℃である熱分解性樹脂が好ましい。
なお、熱分解性樹脂の5%重量減少温度、50%重量減少温度および95%重量減少温度は、熱分解性樹脂を約10mg精秤し、TG/DTA装置(セイコーインスツルメンツ社製)により測定(雰囲気:窒素、昇温速度:5℃/分)することができる。また、熱分解性樹脂の熱分解温度が低下するとは、熱分解性樹脂の5%重量減少温度が低下することを指す。
【0038】
上記熱分解性の固定樹脂層が、95%重量減少温度と5%重量減少温度との差が、5℃以上100℃以下という範囲に規定されている熱分解性樹脂を含むことにより、熱分解性の固定樹脂層の熱分解に要する温度範囲が狭く、熱分解に要する時間を短縮でき、半導体ウエハへのダメージを抑制することができる。また、加工後の半導体ウエハの脱離が容易で、かつ半導体ウエハに固定樹脂層が残留し難いという効果を奏する。また、安定に使用可能な温度領域が広く確保できるため、支持基材を半導体ウエハに仮固定したまま、種々の加工工程に供することが可能となる。また、表面が平滑で十分な精度を有する支持基材上に薄膜として形成できるため、半導体ウエハに接続端子を形成し、さらに、半導体ウエハと半導体装置の接合体を得る等の加工の精度が高いという効果を奏する。
【0039】
ここで、安定に使用可能な温度領域とは、熱分解性の固定樹脂層が分解せずに、半導体ウエハを安定して保持できる温度領域のことである。第1の実施形態に係る固定樹脂層は、この温度領域が広く確保できるため、半導体ウエハを支持基材に仮固定したままで、加温が必要である裏面加工工程にも供することが可能となる。そのため、異なる工程を連続的に行うことができるという利点を有する。
【0040】
また、前記熱分解性樹脂(1)は、5%重量減少温度が50℃以上であることが好ましい。これによれば、後述する、半導体ウエハに電極を形成し、さらに、半導体ウエハと半導体装置の接合体を得る等の電子装置製造プロセス中で固定樹脂層が熱分解しないという効果を得ることができる。
【0041】
また、前記熱分解性樹脂(1)は、50%重量減少温度が400℃以下であることが好ましい。これによれば、後述する、剥離工程で半導体ウエハが熱履歴により損傷することを防止することができるという効果を得ることができる。
【0042】
ここで、前記95%重量減少温度と5%重量減少温度との差が、5℃以上100℃以下という範囲に規定されている熱分解性樹脂(1)は、限定されるわけではないが、例えば、酸または塩基により加水分解する結合を主鎖に有し、主鎖の結合強度が低い樹脂を選択し、分子量等を調整することにより得られる。
【0043】
光酸発生剤が発生する酸または光塩基発生剤が発生する塩基により熱分解温度が低下し且つ95%重量減少温度と5%重量減少温度との差を、5℃以上100℃以下という範囲に規定することができる熱分解性樹脂(1)としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。これらの熱分解性樹脂を適用することにより、後述する、積層体を得る工程、半導体ウエハ裏面加工工程等の電子装置製造プロセス中における固定樹脂層の熱分解を防止することができ、さらに、剥離工程における固定樹脂層の熱分解時間を短縮することができる。
【0044】
これらの熱分解性樹脂(1)の中でも、電子装置製造プロセス中の固定樹脂層の熱分解を効果的に防止することができ、さらに、剥離工程における固定樹脂層の熱分解時間を効果的に短縮することができるため、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0045】
前記熱分解性樹脂(1)がポリカーボネート系樹脂である場合、5%重量減少温度における分解時間が、1分以上60分以下であることが好ましい。
熱分解時間を上記下限値以上とすることで、固定樹脂層の急激な熱分解を抑制することができ、熱分解したガスを排気装置で排気することが可能となるため、電子装置や電子装置を作製する設備の汚染を防止することができる。また、上記上限値以下とすることで、剥離工程において熱分解に要する時間を短縮することができるため、電子装置の生産性を向上することができる。
【0046】
前記ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,4−ブチレンカーボネート、cis−2,3−ブチレンカーボネート、trans−2,3−ブチレンカーボネート、α,β−イソブチレンカーボネート、α,γ−イソブチレンカーボネート、cis−1,2−シクロブチレンカーボネート、trans−1,2−シクロブチレンカーボネート、cis−1,3−シクロブチレンカーボネート、trans−1,3−シクロブチレンカーボネート、ヘキセンカーボネート、シクロプロペンカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、(メチルシクロヘキセンカーボネート)、(ビニルシクロヘキセンカーボネート)、ジヒドロナフタレンカーボネート、ヘキサヒドロスチレンカーボネート、シクロヘキサンプロピレンカーボネート、スチレンカーボネート、(3−フェニルプロピレンカーボネート)、(3−トリメチルシリロキシプロピレンカーボネート)、(3−メタクリロイロキシプロピレンカーボネート)、パーフルオロプロピレンカーボネート、ノルボルネンカーボネート、並びにこれらの組合せの骨格を有するポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0047】
前記ポリカーボネート系樹脂としては、より具体的には、例えば、ポリプロピレンカーボネート/ポリシクロヘキセンカーボネート共重合体、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]、及びポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]、ポリシクロヘキセンカーボネート/ポリノルボルネンカーボネート共重合体等が挙げられる。
【0048】
前記ポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜800,000であることがさらに好ましい。
前記重量平均分子量を上記下限値以上とすることにより、半導体ウエハまたは支持基材に固定樹脂層を形成するときに、固定樹脂層の半導体ウエハまたは支持基材に対する濡れ性が向上すること、さらに、成膜性を向上するという効果を得ることができる。また、上記上限値以下とすることで、固定樹脂層を構成する各種成分との相溶性や各種溶剤に対する溶解性、さらには、剥離工程における固定樹脂層の熱分解性を向上するという効果を得ることができる。
なお、重量平均分子量(Mw)は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としてGPC(ゲル浸透クロマトグラム)により、ポリスチレン換算値として算出することにより測定される。また、濡れ性とは樹脂の溶液を半導体ウエハや支持基材などの固体表面に塗布した際の溶液の濡れ広がりやすさをいう。
【0049】
前記ポリカーボネート系樹脂の重合方法は、特に限定されるわけではないが、例えば、ホスゲン法(溶剤法)または、エステル交換法(溶融法)等の公知の重合方法が用いられる。
【0050】
前記熱分解性樹脂(1)の含有量は、熱分解性の固定樹脂層の10重量%〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは、30重量%〜100重量%である。熱分解性樹脂(1)の含有量を上記下限値以上とすることで、後述する剥離工程後に、固定樹脂層が半導体ウエハまたは支持基材に残留することを防止できる。
【0051】
前記熱分解性樹脂(1)として、特に好ましいのは、ポリプロピレンカーボネート重合体、1,4−ポリブチレンカーボネート重合体、ポリシクロヘキセンカーボネート/ポリノルボルネンカーボネート共重合体である。
【0052】
また、前記熱分解性樹脂(1)を含む熱分解性の固定樹脂層は、活性エネルギー線の照射によってエネルギーを加えることにより酸を発生する光酸発生剤または塩基を発生する光塩基発生剤を含む。これにより、前記熱分解性樹脂(1)の熱分解温度を低下させることができる。
【0053】
前記光酸発生剤としては、特に限定されないが、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ−(p−t−ブチル)フェニルヨードニウム、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ−(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)、トリス{4−[(4−アセチルフェニル)チオ]フェニル}スルフォニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド及びこれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0054】
これらの中でも特に、前記熱分解性樹脂(1)の熱分解温度を効率的に下げることができるという理由から、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)が好ましい。
【0055】
前記光塩基発生剤としては、特に限定されないが、5−ベンジルー1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン、1−(2−ニトロベンゾイルカルバモイル)イミダゾール等が挙げられる。これらの中でも特に、前記熱分解性樹脂(1)の熱分解温度を効率的に下げることができるという理由から、5−ベンジルー1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン及び5−ベンジルー1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン骨格を有する誘導体が好ましい。
【0056】
前記光酸発生剤または光塩基発生剤の含有量は、熱分解性の固定樹脂層の0.01〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜30重量%である。上記下限値以上とすることで、前記熱分解性樹脂(1)の熱分解温度を安定的に下げることが可能となり、上記上限値以下とすることで固定樹脂層が半導体ウエハまたは支持基板に残渣として残留することを効果的に防止することが可能となる。
【0057】
前記ポリカーボネート系樹脂、光酸発生剤または光塩基発生剤の組み合わせとして、特に好ましいのは、ポリカーボネート系樹脂としては、ポリプロピレンカーボネート重合体、1,4−ポリブチレンカーボネート重合体、ネオペンチルカーボネート重合体、シクロヘキセンカーボネート/ノルボルネンカーボネート共重合体であり、光酸発生剤または光塩基発生剤としてはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス{4−[(4−アセチルフェニル)チオ]フェニル}スルフォニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチドである。
【0058】
この場合、ポリカーボネート系樹脂の含有量は、熱分解性の固定樹脂層の30〜100重量%、光酸発生剤または光塩基発生剤の含有量は、熱分解性の固定樹脂層の0.1〜30重量%であり、ポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5,000〜800,000であることが好ましい。このことにより、半導体ウエハまたは支持体に対する濡れ性、熱分解性の固定樹脂層の成膜性、熱分解性の固定樹脂層を構成する各種成分との相溶性や各種溶剤に対する溶解性、さらには、剥離工程における固定樹脂層の熱分解性を確保することができる。
【0059】
前記ポリカーボネート系樹脂は、前記光酸発生剤または光塩基発生剤の存在下で、ポリカーボネート系樹脂の主鎖の熱切断が容易となる構造を形成するため、又は、ポリカーボネート系樹脂自身が容易に熱分解する熱閉環構造を形成する(熱閉環反応)ため、熱分解温度が低下すると考えられる。
【0060】
下記の反応式(1)は、ポリプロピレンカーボネート樹脂の主鎖の熱切断及び熱閉環構造の形成のメカニズムを示す。
先ず、前記光酸発生剤由来のH
+が、ポリプロピレンカーボネート樹脂のカルボニル酸素をプロトン化し、さらに極性遷移状態を転移させ不安定な互変異性中間体[A]及び[B]を生じる。
次に、主鎖の熱切断の場合には、中間体[A]は、アセトン及びCO
2として断片化する。
熱閉環構造の形成(a又はb)の場合には、中間体[B]は炭酸プロピレンを生成し、炭酸プロピレンはCO
2及びプロピレンオキシドとして断片化される。
【0062】
また、前記熱分解性の固定樹脂層の形成については、熱分解性樹脂(1)および光酸発生剤または光塩基発生剤や、その他熱分解性の固定樹脂層を構成する成分を溶媒に溶解または分散させて、溶媒を含有する樹脂組成物を調製し、得られた溶媒を含有する樹脂を、支持基材または半導体ウエハ上で成膜し、溶媒を乾燥除去することにより、熱分解性の固定樹脂を形成させることができる。溶媒としては、特に限定されるものではないが、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類等が挙げられる。熱分解性の樹脂組成物が溶媒を含有することにより、熱分解性の樹脂組成物の粘度を調整することが容易となり、半導体ウエハまたは支持基材に熱分解性の固定樹脂層の薄膜を形成するのが容易となる。
【0063】
前記溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、溶媒を含有する樹脂組成物中、5〜98重量%であることが好ましく、10〜95重量%であることが特に好ましい。
【0064】
前記熱分解性の固定樹脂層は、光酸発生剤または光塩基発生剤とともに、特定のタイプまたは波長の活性エネルギー線に対する光酸発生剤または光塩基発生剤の反応性を発現あるいは増大させる機能を有する成分である増感剤を含んでいても良い。
【0065】
前記増感剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンツピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン−9−オン、2‐イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4‐プロポキシチオキサントン、およびこれらの混合物等が挙げられる。このような増感剤の含有量は、前述した光酸発生剤または光塩基発生剤100重量部に対して、100重量部以下であるのが好ましく、20重量部以下であるのがより好ましい。
【0066】
また、前記熱分解性の固定樹脂層は、酸化防止剤を含んでいてもよい。前記酸化防止剤は、望ましくない酸の発生や、熱分解性の固定樹脂層の自然酸化を防止する機能を有している。
【0067】
前記酸化防止剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ニューヨーク州タリータウンのCiba Fine Chemicals社から入手可能なCiba IRGANOX(登録商標) 1076又はCiba IRGAFOS(登録商標) 168が好適に用いられる。
【0068】
また、他の酸化防止剤としては、例えば、Ciba Irganox(登録商標) 129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標) 1790、Ciba Irganox 3114、Ciba Irganox 3125等を用いることもできる。
【0069】
前記酸化防止剤の含有量は、前記熱分解性樹脂(1)100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
【0070】
また前記熱分解性の固定樹脂層は、必要によりアクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤等を含んでも良い。
【0071】
前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、単独でも2種以上混合して用いてもよい。
前記熱分解性の固定樹脂層がシランカップリング剤を含むことにより、半導体ウエハまたは支持基材との密着性を向上することが可能となる。
【0072】
前記希釈剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、シクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイド等のシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのシクロアリファティックビニルエーテル化合物等が挙げられる。
前記熱分解性の固定樹脂層の形成に用いる熱分解性の樹脂組成物が希釈剤を含むことにより、熱分解性の樹脂組成物の流動性を向上することができ、熱分解性の樹脂組成物の半導体ウエハまたは支持基材に対する濡れ性を向上することが可能となる。
【0073】
次に、図(1−b)に示すように、第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2の機能面を対向させて第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2を貼り合せることにより第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2がこの順に積層された第1の積層体60を得る。
【0074】
第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2を貼着する方法は、特に制限されるわけでないが、真空プレス装置、ウエハボンダー等が挙げられる。
【0075】
また、第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2を貼着する条件としては、特に制限されるわけではないが、温度:50〜350℃、圧力:0.01〜3MPa、時間:10〜600秒の条件で行うことができ、温度:70〜300℃、圧力:0.03〜2MPa、時間:20〜500秒の条件で貼着するのが好ましく、温度:100〜250℃、圧力0.05:〜1MPa、時間:30〜400秒の条件で貼着するのが特に好ましい。これにより、第1の支持基材1と半導体ウエハ2間に気泡が発生することを効果的に防止することができるため、半導体ウエハ2を研削(後述する)した後の半導体ウエハ2の厚みばらつきを低減することができる。
さらに、減圧下で第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2を貼着することが好ましく、第1の支持基材1と半導体ウエハ2間に発生する気泡をより効果的に防止することができる。
【0076】
(半導体ウエハ裏面加工工程)
次に、図(1−c)に示すように、半導体ウエハ2の裏面を研削し、さらに、電極3を形成する半導体ウエハ裏面加工工程を行う。
【0077】
半導体ウエハ2の裏面研削を行う方法は、特に制限されるわけではないが、市販されているバックグラインド装置で半導体ウエハ2の裏面研削を行うことができる。第1の実施形態において、半導体ウエハ2の機能面は、第1の固定樹脂層10で保護されているためバックグラインド時の塵埃や水分が機能面に付着することを効果的に防止することができる。
【0078】
また、半導体ウエハ2の厚みは、特に制限されるわけではないが、10〜100μmが好ましく、20〜80μmが特に好ましい。半導体ウエハ2の厚みを上記範囲とすることで、電子装置の厚みを低減することができる。
【0079】
半導体ウエハ2裏面の電極は、特に制限されるわけではないが、半田、銅、金、銀、ニッケル等の金属材料で形成されていることが好ましく、半導体チップ等の半導体装置との接合性に優れる、半田バンプ、金スタッドバンプで形成されているのが特に好ましい。前記半田バンプ、金スタッドバンプを、公知の方法により半田バンプ、金スタッドバンプを作製することができる。また、半導体ウエハの電極および半導体チップ等の半導体装置の少なくともいずれか一方の電極は半田が形成されているのが好ましい。これにより、半導体ウエハ/半導体チップの積層体の接合部を半田と異種金属の合金とすることができるため、半導体ウエハ/半導体装置の接合部の電気特性および機械特性を向上させることができる。
【0080】
また、半導体ウエハ裏面加工工程では、半導体ウエハ2の裏面を研削し、さらに電極3を形成する以外に、例えば、TSV(Through Silicon Via)を形成する等の他のプロセスを行ってもよい。
【0081】
(第2の積層体を得る工程)
次に、図(1−d)に示すように、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を第1の固定樹脂層10と同じ組成で構成される第2の固定樹脂層20を介して貼り合せることにより、第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2/第2の固定樹脂層20/第2の支持基材4がこの順に積層された第2の積層体70を得る。なお、第1の固定樹脂層10の組成と第2の固定樹脂層20の組成は異なっていてもよい。
【0082】
半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を第2の固定樹脂層20を介して貼着する方法は、特に制限されるわけでないが、真空プレス装置、ウエハボンダー等を用いて、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を第2の固定樹脂層20を介して貼着することができる。
【0083】
また、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を第2の固定樹脂層20を介して貼着する条件としては、特に制限されるわけではないが、温度:50〜350℃、圧力:0.01〜3MPa、時間:10〜600秒の条件で行うことができ、温度:70〜300℃、圧力:0.03〜2MPa、時間:20〜500秒の条件で貼着するのが好ましく、温度:100〜250℃、圧力:0.05〜1MPa、時間:30〜400秒の条件で貼着するのが特に好ましい。これにより、第2の支持基材4と半導体ウエハ2間に気泡が発生することを効果的に防止することができるため、半導体ウエハ2を研削(後述する)した後の半導体ウエハ2の厚みばらつきを低減することができる。
【0084】
ここで、第2の積層体70の作製方法としては、第2の固定樹脂層20を半導体ウエハ2の裏面に予め形成し、第2の支持基材4を貼着してもよいし、第2の固定樹脂層20を第2の支持基材4に予め形成し、半導体ウエハ2の裏面を貼着してもよい。なお、この点については、本発明について同様であり、本発明の第2〜25の実施形態等の他の実施形態についても同じである。
【0085】
(第1の剥離工程)
次に、図(1−e)に示すように、第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射する。
【0086】
前記活性エネルギー線としては、g線、i線、エキシマレーザ等の近紫外線、遠赤外線が挙げられる。
【0087】
このように、先に第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射することにより、第1の固定樹脂層10の熱分解温度を低下させることができる。例えば、第1の固定樹脂層10が、光酸発生剤と熱分解性樹脂(1)とを含む熱分解性の固定樹脂の場合、第1の固定樹脂層10に活性エネルギー線が照射されることにより、第1の固定樹脂層10内で光酸発生剤が酸を発生させ、光酸発生剤が発生させる酸により、第1の固定樹脂層10に含まれる熱分解性樹脂(1)の熱分解温度が低下するので、第1の固定樹脂層10の熱分解温度が低下する。一方、半導体ウエハ2が第2の固定樹脂層20への活性エネルギー線の照射を遮蔽する作用を示すため、第2の固定樹脂層20の熱分解温度は低下しない。以上のように、第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射することにより、第1の固定樹脂層10の熱分解温度を第2の固定樹脂層20の熱分解温度よりも低くすることができる。
【0088】
次に、図(2−a)に示すように、第2の積層体70を加熱することにより、第2の積層体70から第1の支持基材1を剥離する。
【0089】
具体的には、活性エネルギー線を照射した後の第1の固定樹脂層10の熱分解温度よりは高く、第2の固定樹脂層20の熱分解温度よりは低い温度に加熱することにより、第1の固定樹脂層10のみを選択的に熱分解させ、第1の支持基材1を剥離する。
【0090】
第1の支持基材1を剥離する方法は、特に限定されるものではないが、加熱しながら、半導体ウエハ2の裏面に対して垂直方向に脱離する方法や、半導体ウエハ2の裏面に対して水平方向にスライドさせて脱離する方法や第1の支持基材1片側から第1の支持基材1を浮かして脱離する方法等が挙げられる。
【0091】
第1の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層に含まれている熱分解性樹脂(1)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。なお、第1の剥離工程の時点では、第2の固定樹脂層には未だ活性エネルギーは照射されていないので、T2は、活性エネルギー線が照射される前の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解樹脂(1)の熱分解温度である。
【0092】
第1の剥離工程後、必要に応じて、第1の支持基材1または半導体ウエハ2に残留した第1の固定樹脂層10を除去してもよい。残留した第1の固定樹脂層10の除去方法としては、特に限定されるものではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理などが挙げられる。
【0093】
第1の実施形態の電子装置の製造方法では、第1の固定樹脂層10が熱分解し低分子化されるので、ストレス無く第1の支持基材1の脱離が可能であるため、第1の支持基材1および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。また、低分子化した第1の固定樹脂層10の成分は、加熱の際に揮散し、第1の支持基材1および半導体ウエハ2に第1の固定樹脂層10が残留し難いという効果を奏する。そのため、洗浄等の後工程を簡素化でき、ハンドリング性が向上するといった利点もある。
【0094】
(第3の積層体を得る工程)
次に、図(2−b)に示すように、半導体ウエハ2の機能面に複数の半導体装置100を実装することにより第2の支持基材4/第2の固定樹脂層20/半導体ウエハ2/半導体装置100がこの順に積層された第3の積層体80を得る。
【0095】
ここで、半導体装置100とは、特に限定されるものではないが、半導体チップ等が挙げられる。半導体装置100は、単層であっても、予め半導体チップを積層したような複数層の半導体装置100であってもよい。
【0096】
半導体ウエハ2の機能面に複数の半導体装置100を実装する方法は、特に限定されるわけではないが、例えば、半導体装置100の半導体ウエハ2の機能面と対向する面に予め半田、金等の金属材料で構成されるバンプを形成しておき、半導体ウエハ2の機能面の電極3と前記バンプを接合することにより実装する方法が挙げられる。
【0097】
半導体ウエハ2の機能面に複数の半導体装置100を実装する方法をより具体的に説明するために、半導体装置100として半導体チップを用いた場合について説明する。
まず、半導体ウエハと対向する面に半田バンプを有する半導体チップを用意する。次に、半導体ウエハの機能面の電極(金電極)と前記半田バンプの位置合わせを行ってから、半田リフロー処理を行い、半田バンプと金電極を金属結合させる。半田リフロー処理において、第1の実施形態では活性エネルギー線が照射される前の第2の固定樹脂層20は、活性エネルギー線が照射されていないので熱分解温度が高く、熱分解し難いため、半導体ウエハ2が位置ずれすることを防止することができ、半導体装置100を確実に実装することができる。次に、半導体チップと半導体ウエハの間隙に熱硬化性の液状封止材を充填し、さらに液状封止材を熱硬化させることにより、半導体チップを実装することができる。
【0098】
また、半導体チップを実装する別の方法としては、半導体チップの半田バンプを有する面にフラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物層を形成する。フラックス機能とは半田バンプなどの金属表面の酸化物膜などの汚れを溶解除去することにより、金属同士の接合を容易にする機能をいう。フラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物層を形成する方法は、特に限定されるわけではなく、液状のフラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物をディスペンス、印刷、スピンコートすることにより形成する方法、フィルム状のフラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物をラミネートする方法が挙げられる。次に、前記半田バンプと前記金電極を位置合わせし、加圧および加熱することにより半田バンプと金電極を接合することができる。この際、フラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物層は、半田バンプ表面の酸化膜を除去するため、フラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物を形成することにより、確実に半田バンプと金電極を接合することができる。半田バンプと金電極を接合した後、フラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物層は、半田バンプおよび金電極の周囲に充填されているため、フラックス機能を有する熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物層を熱硬化させることにより、半導体チップの実装が完了する。
【0099】
上記第1の実施形態の説明では、半導体チップの半田バンプと半導体ウエハの金電極を接合する実施形態について説明したが、これに限定されることはなく、金バンプと半田電極の接合、半田バンプと銅電極の接合等を用いてもよい。
【0100】
(封止工程)
次に、第3の積層体80を得る工程を経た後に、半導体装置100を封止する封止工程を行ってもよい。半導体装置100を封止することにより、水分や塵埃の混入を防止することができるため、電子装置の信頼性を高めることができる。
【0101】
半導体装置100を封止するための封止材としては、特に限定されるわけではなく、液状封止材でも固形封止材でもよい。また、封止方法としては、特に限定されるわけではなく、トランスファー成型でも圧縮成型でもよいが、第3の積層体80が位置ずれを起こし難い圧縮成型が好ましい。
【0102】
(第2の剥離工程)
次に、第2の支持基材4側から活性エネルギー線を照射する。
【0103】
前記活性エネルギー線としては、g線、i線、エキシマレーザ等の近紫外線、遠赤外線が挙げられる。
【0104】
次に、図(2−c)に示すように、第3の積層体80を加熱することにより、第3の積層体80から第2の支持基材4を剥離する。これにより、半導体ウエハ2の機能面に半導体装置100が実装された電子装置200を得ることができる。
【0105】
具体的には、活性エネルギー線が照射された後の第2の固定樹脂層20の熱分解温度よりも高い温度に加熱することにより、第2の固定樹脂層20を熱分解させ、第2の支持基材4を剥離する。
【0106】
第2の支持基材4を剥離する方法は、特に限定されるものではないが、加熱しながら、半導体ウエハ2の裏面に対して垂直方向に脱離する方法や、半導体ウエハ2の裏面に対して水平方向にスライドさせて脱離する方法や第2の支持基材4片側から第2の支持基材4を浮かして脱離する方法等が挙げられる。
【0107】
第2の剥離工程後、必要に応じて、第2の支持基材4または半導体ウエハ2に残留した第2の固定樹脂層20を除去してもよい。残留した第2の固定樹脂層20の除去方法としては、特に限定されるものではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理などが挙げられる。
【0108】
第1の実施形態の電子装置の製造方法では、第2の固定樹脂層20が熱分解し低分子化されるので、ストレス無く第2の支持基材の脱離が可能であるため、第2の支持基材4および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。また、低分子化した第2の固定樹脂層20の成分は、加熱の際に揮散し、第2の支持基材4および半導体ウエハ2に第2の固定樹脂層20が残留し難いという効果を奏する。そのため、洗浄等の後工程を簡素化でき、ハンドリングが向上するといった利点もある。
【0109】
(個片化工程)
次に、図(2−d)に示すように、半導体ウエハに半導体装置100が実装された電子装置200を個片化する個片化工程を行うことができる。
【0110】
個片化する方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、第2の剥離工程後に、半導体ウエハ2裏面にダイシングテープを貼り付け、ダイシング装置によりダイシングすることにより個片化することができる。
【0111】
また、半導体装置100が実装された電子装置200を個片化する方法としては、第3の積層体80を得る工程後、あるいは、半導体装置100を封止する場合は封止工程後に、半導体ウエハ2を第2の支持基材4に貼り合わせたままの状態で行ってもよい。これにより、上述したダイシングテープを貼り付けてダイシングする場合に比べて工程を簡略化することができるという効果を奏することができる。
【0112】
第1の実施形態では、半導体ウエハ裏面加工工程(半導体ウエハ裏面の研削、電極の形成)および第3の積層体80を得る工程(半導体ウエハの機能面に半導体装置を実装する)を、半導体ウエハ2を第1の支持基材1または第2の支持基材4で支持した状態で行うことができる。第1の支持基板1で支持することにより、半導体ウエハ裏面加工工程において耐熱性の低いバックグラインドテープ脱着をする必要がない。また、第2の支持基材4で支持することにより、第2の支持基材4に、第1の剥離工程から第3の積層体80を得る工程まで搬送するための支持機能と半導体装置100を半導体ウエハ2に実装する際の支持機能を兼用させることができる。以上より、電子装置の製造プロセスを簡便化することができるとともに歩留りよく安価に電子装置300を製造することができる。
【0113】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
【0114】
第2の実施形態は、第2の剥離工程で先に活性エネルギー線の照射を行わない点が、第1の実施形態とは相違する。第2の剥離工程では、活性エネルギー線の照射を行わないため、第2の固定樹脂層は、熱分解温度以上の温度で加熱することにより熱分解する固定樹脂層であればよい。そのため、活性エネルギー線を照射しても熱分解温度が低下しない熱分解性の固定樹脂層であっても、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であってもよい。つまり、第2の実施形態は、第2の剥離工程では活性エネルギー線の照射を行わずに熱分解させる点および第2の固定樹脂層が、活性エネルギー線を照射しても熱分解温度が低下しない熱分解性の固定樹脂層であっても、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であってもよい点以外は、第1の実施形態と同様である。そのため、以下の説明では、第1の実施形態の説明で用いた
図1及び
図2を参照して、第2の実施形態について説明する。
【0115】
(第1の積層体を得る工程)
先ず、図(1−a)に示すように、第1の実施形態と同様に、第1の支持基材1上に、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の第1の固定樹脂層10を形成する。第2の実施形態では、第1の剥離工程で先に第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射するため、第1の支持基材1としては活性エネルギー線を透過する支持基材を用いる。第2の実施形態の第1の積層体を得る工程は、第1の実施形態の第1の積層体を得る工程と同様である。
【0116】
第2の実施形態の活性エネルギー線を透過する第1の支持基材1は、第1の実施形態の活性エネルギー線を透過する第1の支持基材1と同様である。
【0117】
第2の実施形態の第1の固定樹脂層10は、第1の実施形態の第1の固定樹脂層10と同様である。
【0118】
次に、図(1−b)に示すように、第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2の機能面を対向させて第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2を貼り合せることにより第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2がこの順に積層された第1の積層体60を得る。
【0119】
第2の実施形態において、第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2を貼着する方法は、第1の実施形態において、第1の固定樹脂層10と半導体ウエハ2を貼着する方法と同様である。
【0120】
(半導体ウエハ裏面加工工程)
次に、図(1−c)に示すように、半導体ウエハ2の裏面を研削し、さらに、電極3を形成する半導体ウエハ裏面加工工程を行う。第2の実施形態の半導体ウエハ裏面加工工程は、第1の実施形態の半導体ウエハ裏面加工工程と同様である。
【0121】
(第2の積層体を得る工程)
次に、図(1−d)に示すように、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を第1の固定樹脂層10と同じ組成で構成される第2の固定樹脂層20を介して貼り合せることにより、第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2/第2の固定樹脂層20/第2の支持基材4がこの順に積層された第2の積層体70を得る。第2の実施形態の第2の積層体を得る工程は、第2の固定樹脂層として、活性エネルギー線を照射しても熱分解温度が低下しない熱分解性の固定樹脂層または活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用すること以外は、第1の実施形態の第2の積層体を得る工程と同様である。また、第2の支持基材4としては、活性エネルギー線を透過する支持基材であっても、活性エネルギー線を透過しない支持基材であってもよく、第1の実施形態の活性エネルギー線を透過する第1の支持基材や、半導体ウエハ、金属板等の活性エネルギー線を透過しない支持基材が挙げられる。
【0122】
第2の実施形態の第2の固定樹脂層20に使用する熱分解性の固定樹脂層は、熱分解温度以上の温度で加熱することにより熱分解する固定樹脂層である。そのため、活性エネルギー線を照射しても熱分解温度が低下しない熱分解性の固定樹脂層であっても、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層であってもよい。第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層20は、熱分解性の樹脂組成物により構成されており、例えば、熱分解性樹脂を含む固定樹脂層である。なお、加熱することにより熱分解する樹脂を、熱分解性樹脂(2)とも記載する。
第2の固定樹脂層20に含まれる熱分解性樹脂(2)は、95%重量減少温度と5%重量減少温度との差が、5℃≦(95%重量減少温度)−(5%重量減少温度)≦100℃である熱分解性樹脂が好ましい。
【0123】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層20が、95%重量減少温度と5%重量減少温度との差が、5℃以上100℃以下という範囲に規定されている熱分解性樹脂(2)を含むことにより、熱分解性の固定樹脂層の熱分解に要する温度範囲が狭く、熱分解に要する時間を短縮でき、半導体ウエハへのダメージを抑制することができる。また、加工後の半導体ウエハの脱離が容易で、かつ半導体ウエハに固定樹脂層が残留し難いという効果を奏する。また、安定に使用可能な温度領域が広く確保できるため、支持基材を半導体ウエハに仮固定をしたまま、種々の加工工程に供することが可能となる。また、表面が平滑で十分な精度を有する支持基材上に薄膜として形成できるため、半導体ウエハに接続端子を形成し、さらに、半導体ウエハと半導体装置の接合体を得る等の加工の精度が高いという効果を奏する。
【0124】
ここで、安定に使用可能な温度領域とは、熱分解性の固定樹脂層が分解せずに、半導体ウエハを安定して保持できる温度領域のことである。第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層は、この温度領域が広く確保できるため、半導体ウエハを支持基材に仮固定をしたままで、加温が必要である裏面加工工程にも供することが可能となる。そのため、異なる工程を連続的に行うことができるという利点を有する。
【0125】
また、第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)は、5%重量減少温度が50℃以上であることが好ましい。これによれば、後述する、半導体ウエハに電極を形成し、さらに、半導体ウエハと半導体装置の接合体を得る等の電子装置製造プロセス中で固定樹脂層が熱分解しないという効果を得ることができる。
【0126】
また、第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)は、50%重量減少温度が400℃以下であることが好ましい。これによれば、後述する、剥離工程で半導体ウエハが熱履歴により損傷することを防止することができるという効果を得ることができる。
【0127】
ここで、第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる95%重量減少温度と5%重量減少温度との差が5℃以上100℃以下という範囲に規定されている熱分解性樹脂(2)は、限定されるわけではないが、主鎖の結合強度が低い樹脂の分子量等を調整することにより得られる。
【0128】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる95%重量減少温度と5%重量減少温度との差を、5℃以上100℃以下という範囲に規定することができる熱分解性樹脂(2)としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。これらの熱分解性樹脂を適用することにより、電子装置製造プロセス中における固定樹脂層の熱分解を防止することができ、さらに、剥離工程における固定樹脂層の熱分解時間を短縮することができる。
これらの第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)の中でも、電子装置製造プロセス中の固定樹脂層の熱分解を効果的に防止することができ、さらに、剥離工程における固定樹脂層の熱分解時間を効果的に短縮することができるため、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0129】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)がポリカーボネート系樹脂である場合、5%重量減少温度における熱分解時間が、1分以上60分以下であることが好ましい。
熱分解時間を上記下限値以上とすることで、固定樹脂層の急激な熱分解を抑制することができ、熱分解したガスを排気装置で排気することが可能となるため、電子装置や電子装置を作製する設備の汚染を防止することができる。また、上記上限値以下とすることで、剥離工程において熱分解に要する時間を短縮することができるため、電子装置の生産性を向上することができる。
【0130】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれるポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,4−ブチレンカーボネート、cis−2,3−ブチレンカーボネート、trans−2,3−ブチレンカーボネート、α,β−イソブチレンカーボネート、α,γ−イソブチレンカーボネート、cis−1,2−シクロブチレンカーボネート、trans−1,2−シクロブチレンカーボネート、cis−1,3−シクロブチレンカーボネート、trans−1,3−シクロブチレンカーボネート、ヘキセンカーボネート、シクロプロペンカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、(メチルシクロヘキセンカーボネート)、(ビニルシクロヘキセンカーボネート)、ジヒドロナフタレンカーボネート、ヘキサヒドロスチレンカーボネート、シクロヘキサンプロピレンカーボネート、スチレンカーボネート、(3−フェニルプロピレンカーボネート)、(3−トリメチルシリロキシプロピレンカーボネート)、(3−メタクリロイロキシプロピレンカーボネート)、パーフルオロプロピレンカーボネート、ノルボルネンカーボネート、並びにこれらの組合せの骨格を有するポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0131】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれるポリカーボネート系樹脂としては、より具体的には、例えば、ポリプロピレンカーボネート/ポリシクロヘキセンカーボネート共重合体、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]、及びポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]、ポリシクロヘキセンカーボネート/ポリノルボルネンカーボネート共重合体等が挙げられる。
【0132】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれるポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜800,000であることがさらに好ましい。
前記重量平均分子量を上記下限以上とすることにより、半導体ウエハまたは支持基材に固定樹脂層を形成するときに、固定樹脂層の半導体ウエハまたは支持基材に対する濡れ性が向上すること、さらに、成膜性を向上するという効果を得ることができる。また、上記上限値以下とすることで、固定樹脂層を構成する各種成分との相溶性や各種溶剤に対する溶解性、さらには、剥離工程における固定樹脂層の熱分解性を向上するという効果を得ることができる。
【0133】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれるポリカーボネート系樹脂の重合方法は、特に限定されるわけではないが、例えば、ホスゲン法(溶剤法)または、エステル交換法(溶融法)等の公知の重合方法が挙げられる。
【0134】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)の含有量は、熱分解性の第2の固定樹脂層の10重量%〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは、30重量%〜100重量%である。第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)の含有量を上記下限値以上とすることで、剥離工程後に、固定樹脂層が半導体ウエハまたは支持基材に残留することを防止できる。
【0135】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)として、特に好ましいのは、ポリプロピレンカーボネート重合体、1,4−ポリブチレンカーボネート重合体、ポリシクロヘキセンカーボネート/ポリノルボルネンカーボネート共重合体である。
【0136】
また、第2の実施形態においては、第2の固定樹脂層として、第1の実施形態で使用した活性エネルギー線を照射することにより熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用することもできる。
【0137】
また、第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層は、酸化防止剤を含んでいてもよい。第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる酸化防止剤は、第1の実施形態の固定樹脂層に含まれる酸化防止剤と同様である。
【0138】
第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる酸化防止剤の含有量は、第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解性樹脂(2)100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
【0139】
また、第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層は、必要によりアクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤等を含んでも良い。第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層に含まれるシリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤は、第1の実施形態の固定樹脂層に含まれるシリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤と同様である。
【0140】
(第1の剥離工程)
次に、図(1−e)に示すように、第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射する。次に、図(2−a)に示すように、第2の積層体70を加熱して、第2の積層体70から第1の支持基材1を剥離する。第2の実施形態の第1の剥離工程は、第1の実施形態の第1の剥離工程と同様である。
【0141】
第2の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層に含まれている熱分解性樹脂(2)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0142】
第1の剥離工程後、必要に応じて、第1の支持基材1または半導体ウエハ2に残留した第1の固定樹脂層10を除去してもよい。残留した第1の固定樹脂層10の除去方法としては、特に限定されるものではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理などが挙げられる。
【0143】
(第3の積層体を得る工程)
次に、図(2−b)に示すように、半導体ウエハ2の機能面に複数の半導体装置100を実装することにより第2の支持基材4/第2の固定樹脂層20/半導体ウエハ2/半導体装置100がこの順に積層された第3の積層体80を得る。第2の実施形態の第3の積層体を得る工程は、第1の実施形態の第3の積層体を得る工程と同様である。
【0144】
(封止工程)
次に、第3の積層体80を得る工程を経た後に、半導体装置100を封止する封止工程を行ってもよい。半導体装置100を封止することにより、水分や塵埃の混入を防止することができるため、電子装置の信頼性を高めることができる。
【0145】
(第2の剥離工程)
次に、図(2−c)に示すように、第3の積層体80を加熱して、第3の積層体80から第2の支持基材4を剥離する。これにより、半導体ウエハ2の機能面に半導体装置100が実装された電子装置200を得ることができる。
【0146】
具体的には、第2の固定樹脂層20の熱分解温度よりも高い温度に加熱することにより、第2の固定樹脂層20を熱分解させ、第2の支持基材4を剥離する。
【0147】
第2の支持基材4を剥離する方法は、特に限定されるものではないが、半導体ウエハ2の裏面に対して垂直方向に脱離する方法や、半導体ウエハ2の裏面に対して水平方向にスライドさせて脱離する方法や第2の支持基材4片側から第2の支持基材4を浮かして脱離する方法等が挙げられる。
【0148】
第2の剥離工程後、必要に応じて、第2の支持基材4または半導体ウエハ2に残留した第2の固定樹脂層20を除去してもよい。残留した第2の固定樹脂層20の除去方法としては、特に限定されるものではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理などが挙げられる。
【0149】
第2の実施形態の電子装置の製造方法では、第2の固定樹脂層20が熱分解し低分子化されるので、ストレス無く第2の支持基材の脱離が可能であるため、第2の支持基材4および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。また、低分子化した第2の固定樹脂層20の成分は、加熱の際に揮散し、第2の支持基材4および半導体ウエハ2に第2の固定樹脂層20が残留し難いという効果を奏する。そのため、洗浄等の後工程を簡素化でき、ハンドリングが向上するといった利点もある。
【0150】
(個片化工程)
次に、図(2−d)に示すように、半導体ウエハに半導体装置100が実装された電子装置200を個片化する個片化工程を行うことができる。第2の実施形態の個片化工程は、第1の実施形態の個片化工程と同様である。
【0151】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程で先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では加熱することにより固定樹脂層の熱軟化を行う実施形態である。
【0152】
第3の実施形態は、第2の剥離工程で活性エネルギー線の照射を行わない実施形態である。第3の実施形態は、第2の剥離工程で活性エネルギー線照射工程を行わず、加熱することにより熱軟化させる点、および第2の固定樹脂層が、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層ではなく、熱軟化性の固定樹脂層である点が、第1の実施形態とは相違するが、それら以外は第1の実施形態と同様である。そのため、第3の実施形態では、第1の実施形態と共通する部分の説明は省略し、第1の実施形態と異なる部分の説明を中心に記載する。
【0153】
第3の実施形態において、活性エネルギー線が照射された後の第1の固定樹脂層の熱分解温度は、第2の固定樹脂層である熱軟化性の固定樹脂層の軟化点よりも低い。これにより、熱分解性の固定樹脂層の熱分解温度よりも高く、熱軟化性の固定樹脂層の軟化点よりも低い温度で加熱することにより、選択的に熱分解性の第1の固定樹脂層のみを熱分解させることができるため、第1の剥離工程で確実に第1の支持基材のみを剥離することができる。
【0154】
(第1の積層体を得る工程)
第3の実施形態の第1の積層体を得る工程は、第1の実施形態の第1の積層体を得る工程と同様である。
まず、図(3−a)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第1の支持基材1上に、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の第1の固定樹脂層10を形成する。第3の実施形態の固定樹脂層10は、第1の実施形態の固定樹脂層10と同様である。第3の実施形態では、第1の剥離工程で先に第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射するため、第1の支持基材1としては活性エネルギー線を透過する支持基材を用いる。第2の支持基材としては、活性エネルギー線を透過する支持基材であっても、活性エネルギー線を透過しない支持基材であってもよい。
【0155】
次に、図(3−b)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第1の積層体61を得る。
【0156】
(半導体ウエハ裏面加工工程)
次に、図(3−c)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、半導体ウエハ裏面加工工程を行う。
【0157】
(第2の積層体を得る工程)
次に、図(3−d)に示すように、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を熱軟化性の第2の固定樹脂層30を介して貼り合せることにより、第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2/第2の固定樹脂層30/第2の支持基材4がこの順に積層された第2の積層体71を得る。
【0158】
半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を熱軟化性の第2の固定樹脂層30を介して貼着する方法は、特に制限されるわけでないが、真空プレス装置、ウエハボンダー等が挙げられる。
【0159】
また、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を熱軟化性の第2の固定樹脂層30を介して貼着する条件としては、特に制限されるわけではないが、温度:25〜300℃、圧力:0.01〜3MPa、時間:1〜300秒の条件で行うことができ、温度:30〜250℃、圧力:0.03〜2MPa、時間:3〜250秒の条件で貼着するのが好ましく、温度:50〜200℃、圧力:0.05〜1MPa、時間:5〜200秒の条件で貼着するのが特に好ましい。これにより、第2の支持基材4と半導体ウエハ2間に気泡が発生することを効果的に防止することができるため、半導体ウエハ2を研削(後述する)した後の半導体ウエハ2の厚みばらつきを低減することができる。
【0160】
ここで、第2の積層体71の作製方法としては、熱軟化性の第2の固定樹脂層30を半導体ウエハ2の裏面に予め形成し、第2の支持基材4を貼着してもよいし、熱軟化性の第2の固定樹脂層30を第2の支持基材4に予め形成し、半導体ウエハ2の裏面を貼着してもよい。
【0161】
次に、第2の固定樹脂層30で使用する熱軟化性の固定樹脂層について説明する。第2の固定樹脂層30は、熱軟化性の樹脂組成物により構成されている。
熱軟化性の第2の固定樹脂層30は、第1の剥離工程での加熱温度では粘度が低下せずに、第2の剥離工程での加熱温度で加熱することにより、溶融粘度が低下するものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、熱軟化性の第2の固定樹脂層としては、第1の剥離工程での加熱温度における粘度が、500Pa・s以上であるのが好ましく、1000Pa・s以上であるのが特に好ましく、また、第2の剥離工程での加熱温度における粘度が、300Pa・s以下であるのが好ましく、250Pa・s以下であるのが特に好ましい。これにより、第1の剥離工程で半導体ウエハ2が位置ずれを起こすことを防止することができるとともに、半導体ウエハ2に確実に半導体装置100を実装することができる。なお、熱軟化性の固定樹脂層の熱軟化温度とは、固定樹脂層の溶融粘度が300Pa・sになる温度を指す。
【0162】
熱軟化性の固定樹脂層は、熱軟化性の樹脂を含有する。前記熱軟化性の樹脂は、第2の剥離工程における加熱により軟化する熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸エステルモノマーを主成分とするアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン共重合体等のゴム系樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。上述のように、第2の剥離工程における加熱により熱軟化性の樹脂が軟化するため、半導体ウエハ2を損傷することなく第2の支持基材4を剥離することができる。
【0163】
熱軟化性の固定樹脂層は、特に限定されるわけではなく、熱軟化性の樹脂以外に酸化防止剤、凝集剤、可塑剤、界面活性剤、ワックス、フィラー等の添加剤を含有していてもよい。
【0164】
熱軟化性の第2の固定樹脂層30の形成については、熱軟化性の樹脂や、その他熱軟化性の固定樹脂層を構成する成分を溶媒に溶解または分散させて、溶媒を含有する樹脂組成物を調製し、得られた溶媒を含有する樹脂組成物を、支持基材または半導体ウエハ上で成膜し、溶媒を乾燥除去することにより、熱軟化性の固定樹脂層を形成させることができる。溶媒としては、特に限定されるものではないが、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類等が挙げられる。熱軟化性の樹脂組成物が溶媒を含有することにより、熱軟化性の樹脂組成物の粘度を調整することが容易となり、半導体ウエハまたは支持基材に熱軟化性の樹脂組成物の薄膜を形成するのが容易となる。
【0165】
また、熱軟化性の第2の固定樹脂層30の形成については、熱軟化性の樹脂や、その他熱軟化性の固定樹脂層を構成する成分を前述の溶媒に溶解し、溶媒を含有する樹脂組成物を得、次いで、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の基材に溶媒を含有する樹脂組成物を塗布、さらに、加熱することにより溶剤を揮散させることでフィルム状の樹脂組成物を得、次いで、フィルム上の樹脂組成物を、支持基材または半導体ウエハ上にラミネートして、熱軟化性の固定樹脂層を形成させることができる。
【0166】
(第1の剥離工程)
次に、第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射する。
【0167】
次に、図(4−a)に示すように、第2の積層体71を加熱して、第2の積層体71から第1の支持基材1を剥離する。第3の実施形態の第1の剥離工程は、第1の実施形態の第1の剥離工程と同様である。
【0168】
具体的には、活性エネルギー線が照射された後の第1の固定樹脂層10の熱分解温度よりは高く、第2の固定樹脂層30の熱軟化温度よりは低い温度に加熱することにより、第1の固定樹脂層10のみを選択的に熱分解させ、第1の支持基材1を剥離する。
【0169】
第3の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層の熱軟化温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0170】
第1の剥離工程後、必要に応じて、第1の支持基材1または半導体ウエハ2に残留した第1の固定樹脂層10を除去してもよい。残留した第1の固定樹脂層10の除去方法としては、特に限定されるものではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理などが挙げられる。
【0171】
第3の実施形態の電子装置の製造方法では、第1の固定樹脂層10が熱分解し低分子化されるので、ストレス無く第1の支持基材の脱離が可能であるため、第1の支持基材1および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。
また、低分子化した第1の固定樹脂層10の成分は、加熱の際に揮散し、第1の支持基材1および半導体ウエハ2に第1の固定樹脂層1が残留し難いという効果を奏する。そのため、洗浄等の後工程を簡素化でき、ハンドリングが向上するといった利点もある。
【0172】
(第3の積層体を得る工程)
次に、図(4−b)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第3の積層体81を得る。
【0173】
(第2の剥離工程)
次に、図(4−c)に示すように、熱軟化性の第2の固定樹脂層30の軟化温度以上の温度で、第3の積層体81を加熱することにより、第3の積層体81から第2の支持基材4を剥離する、第2の剥離工程を行う。これにより、半導体ウエハ2の機能面に半導体装置100が実装された電子装置200を得ることができる。
【0174】
第3の実施形態の電子装置の製造方法では、第2の固定樹脂層30が熱軟化するので、ストレス無く第2の支持基材4の脱離が可能であるため、第2の支持基材4および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。
【0175】
(個片化工程)
次に、図(4−d)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に半導体ウエハ2に半導体装置100が実装された電子装置200を個片化する個片化工程を行うことができる。
【0176】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程で先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では活性エネルギー線を照射することにより、光熱変換層の分解を行う実施形態である。第4の実施形態は、第2の剥離工程では活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行う点および第2の固定樹脂層が光熱変換層を有する固定樹脂層である点で、第1の実施形態とは相違するが、それら以外は、第1の実施形態と同様である。そのため、第3の実施形態では、第1の実施形態と共通する部分の説明は省略し、第1の実施形態と異なる部分の説明を中心に記載する。
【0177】
第4の実施形態において、活性エネルギー線が照射された後の第1の固定樹脂層の熱分解温度は、第2の固定樹脂層が有する光熱変換層にボイドが形成される温度よりも低い。これにより、熱分解性の固定樹脂層の熱分解温度よりも高く、光熱変換層が熱分解しボイドを形成するよりも低い温度に加熱することにより、選択的に熱分解性の固定樹脂層のみを熱分解させることができるため、第1の剥離工程で確実に第1の支持基材のみを剥離することができる。
【0178】
(第1の積層体を得る工程)
第4の実施形態の第1の積層体を得る工程は、第1の実施形態の第1の積層体を得る工程と同様である。
まず、図(5−a)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第1の支持基材1上に、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の第1の固定樹脂層10を形成する。第4の実施形態の固定樹脂層10は、第1の実施形態の固定樹脂層10と同様である。第4の実施形態では、第1の剥離工程で先に第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射するため、第1の支持基材1としては活性エネルギー線を透過する支持基材を用いる。また、第4の実施形態では、第2の剥離工程で活性エネルギー線を照射するため、第2の支持基材としては、活性エネルギー線を透過する支持基材を用いる。
【0179】
次に、図(5−b)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第1の積層体62を得る。
【0180】
(半導体ウエハ裏面加工工程)
次に、図(5−c)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、半導体ウエハ裏面加工工程を行う。
【0181】
(第2の積層体を得る工程)
次に、図(5−d)に示すように、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を光熱変換層42および接着層41を有する第2の固定樹脂層40を介して貼り合せることにより、第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2/第2の固定樹脂層40/第2の支持基材4がこの順に積層された第2の積層体72を得る。なお、図(5−d)では、第2の固定樹脂層が、光熱変換層および接着層を有する固定樹脂層である旨を記載したが、第4の実施形態の第2の固定樹脂層は、光熱変換層のみからなる固定樹脂層であってもよい。
【0182】
図5および
図6に示す第4の実施形態においては、第2の固定樹脂層40として接着層41および光熱変換層42を有する固定樹脂層を使用するため、第2の積層体72は、より具体的には、第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2/接着層41/光熱変換層42/第2の支持基材4がこの順で積層された構造を有している。
【0183】
(光熱変換層)
ここで、第4の実施形態で使用する光熱変換層42および接着層41について説明する。
前記光熱変換層42は、特に限定されるわけではないが、光吸収剤と熱分解性樹脂を含有することが好ましい。光熱変換層42に含有される熱分解性樹脂を、熱分解性樹脂(3)とも記載する。光熱変換層42が、光吸収剤および熱分解性樹脂(3)を含有することにより、光熱変換層42に活性エネルギー線を照射することにより、熱エネルギーが発生し、光熱変換層42の温度が急激に上昇する。光熱変換層42の温度が、熱分解性樹脂(3)の分解温度に達すると、熱分解性樹脂(3)が分解し揮散するため、光熱変換層42にボイドができることとなる。
【0184】
ここで、前記活性エネルギー線は、特に限定されるものではないが、300〜2000nmの波長のレーザー光が挙げられ、より具体的には、1064nmの波長の活性エネルギー線を発生するYAGレーザー、532nmの波長の2倍高調波YAGレーザー、780〜1300nmの波長の半導体レーザーを挙げることができる。これらの中でも、現状の汎用的な設備を利用することができる、YAGレーザーが好ましい。
【0185】
前記光吸収剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト粉、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、亜鉛等の金属微粒子粉末、スクアリリウム系化合物、シアニン系色素、メチン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの染料が挙げられる。これらの中でも、活性エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換することができるカーボンブラックが好ましい。
【0186】
前記光吸収剤の含有量は、光吸収剤の種類、形状、光熱変換層42中での分散性などによっても異なるが、光熱変換層の1〜80体積%であるのが好ましく、3〜70体積%であるのが好ましい。前記下限値未満の含有量では、光熱変換層42の発熱が乏しく、熱分解性樹脂(3)が分解し難い場合がある。また、上記上限値を超えると、光熱変換層42の成膜性が悪く均一な光熱変換層42を形成できない場合がある。
【0187】
熱分解性樹脂(3)としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ゼラチン、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリフェノール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル等が挙げられ、これらは、単独又は2種以上混合であってもよい。また、熱分解性樹脂(3)の熱分解によりボイドを形成して分離した光熱変換層42が再接着しないように、熱分解性樹脂(3)のガラス転移温度は室温(25℃)以上であることが望ましく、再接着を防止するために、さらに好ましいガラス転移温度は100℃以上である。また、第2の支持基材がガラスである場合、ガラスと光熱変換層42の接着力を高めるために、ガラス表面のシラノール基と水素結合しうる極性基(例えば、−COOH、−OHなど)を分子内に持つ熱分解性樹脂(3)を用いることができる。さらに、ケミカルエッチングなどの薬液処理を必要とする用途への応用では、光熱変換層42に耐薬品性を付与するために、熱処理により自己架橋しうる官能基を分子内に持つ熱分解性樹脂(3)や、紫外線、可視光で架橋可能な熱分解性樹脂(3)を用いることもできる。
【0188】
前記光熱変換層42は、熱分解性樹脂および光吸収剤以外に、必要に応じて、フィラー、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、発泡剤、昇華剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0189】
(接着層)
第3の実施形態おいて接着層41は、半導体ウエハ2を光熱変換層42を介して第2の支持基材4に固定するために用いられる。光熱変換層42の熱分解による半導体ウエハ2と第2の支持基材4との剥離の後には、接着層41が付着した半導体ウエハ2が得られる。接着層41は半導体ウエハ2を第2の支持基材4に固定するための十分な接着力を有するが、半導体ウエハ2と第2の支持基材4との剥離の後には、接着層41が半導体ウエハ2から容易に剥離できるものが好ましい。
【0190】
前記接着層41を形成するために使用可能な接着剤としては、特に限定されるわけではないが、ゴム、エラストマーなどを溶剤に溶解したゴム系接着剤、エポキシ、ウレタンなどをベースとする一液熱硬化型接着剤、エポキシ、ウレタン、アクリルなどをベースとする二液混合反応型接着剤、ホットメルト型接着剤、アクリル、エポキシなどをベースとする紫外線(UV)もしくは電子線硬化型接着剤、水分散型接着剤等が挙げられる。より具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート又はポリエステルアクリレートなどの(メタ)アクリル基を有するオリゴマー及び/又は(メタ)アクリルモノマーに光重合開始剤、及び、必要により、添加剤を添加したUV硬化型接着剤が挙げられる。また、添加剤としては、増粘剤、可塑剤、分散剤、フィラー、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0191】
特に、半導体ウエハ2は、回路パターン等の凹凸を有するため、半導体ウエハ2の凹凸に接着層41を充填させ、接着層41を均一な厚さとするためには、接着層41は液状の接着剤を用いて形成されていることが好ましく、半導体ウエハ2へ塗布する際の温度(例えば、25℃)で液状の接着剤の粘度が10Pa・s以下が好ましく、5Pa・s以下が特に好ましい。
【0192】
また、接着層41を半導体ウエハ2へ形成した後の25℃における弾性率は、100MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であること特に好ましい。また、接着層41を半導体ウエハ2へ形成した後の260℃における弾性率は、1MPa以上であることが好ましく、5Mpa以上であることが特に好ましい。これにより、後述する半導体装置100を半導体ウエハ2に実装する際に発生する応力によって、半導体ウエハ2が破損したり、半導体ウエハ2が位置ずれすることを好適に防止することができる。
【0193】
また、接着層41としては両面接着テープを用いることもできる。このような両面接着テープは、通常、基材フィルムの両面に粘着剤層が設けられている。前記粘着剤としては、特に限定されるわけではないが、アクリル、ウレタン、天然ゴムなどを主成分とする粘着剤、あるいは、これらに加えて架橋剤を含む粘着剤が挙げられる。好ましくはアクリル酸エステルを主成分とする共重合体を含む粘着剤である。また、基材フィルムとしては、特に限定されるわけではないが、紙やプラスティックなどの基材フィルムが用いられる。ここで、基材フィルムは半導体ウエハ2からの接着層41の剥離を容易にすることができる可撓性基材フィルムが好ましい。
【0194】
前記接着層41の厚さは、厚み均一性と半導体ウエハの凸凹を充填できる厚みであれば、特に限定されるわけではないが、10〜200μmが好ましく、20〜150μmが特に好ましい。
【0195】
(第1の剥離工程)
次に、第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射する。
【0196】
次に、図(5−e)に示すように、第2の積層体72を加熱して、第2の積層体72から第1の支持基材1を剥離する、第1の剥離工程を行う。第4の実施形態の第1の剥離工程は、第1の実施形態の第1の剥離工程と同様である。
【0197】
第4の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層の光熱変換層に含まれている熱分解性樹脂(3)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0198】
(第3の積層体を得る工程)
次に、図(6−a)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第3の積層体82を得る。第4の実施形態の第3の積層体を得る工程は、第1の実施形態の第3の積層体を得る工程と同様である。
【0199】
(第2の剥離工程)
次に、図(6−b)に示すように、第2の支持基材4側から活性エネルギー線を照射することにより、光熱変換層42中に熱エネルギーが発生し、光熱変換層42中の熱分解性樹脂(3)が熱分解し、光熱変換層42中にボイド5が生成する。ここで、光熱変換層42は、全て熱分解する必要はなく、一部が熱分解することにより光熱変換層42中にボイド5が形成されればよい。
【0200】
次に、図(6−c)に示すように、第3の積層体82から第2の支持基材4を剥離する。第4の実施形態では、先に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層42にボイド5が形成されており、接着層41と第2の支持基材4との接着面積が減少しているため、第2の支持基材4を容易に剥離することができる。
【0201】
第4の実施形態の電子装置の製造方法では、光熱変換層42にボイド5が形成されるので、ストレス無く第2の支持基材4の脱離が可能であるため、第2の支持基材4および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。
【0202】
次いで、半導体ウエハ2に接している接着層41を除去する。接着層41の除去方法は、特に限定されるわけではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、単なる引き剥がし等が挙げられるが、半導体装置100が積層された半導体ウエハ2に対するダメージを低減することができる、単なる引き剥がしが好ましい。
【0203】
また、第4の実施形態では、第2の支持基材4を再利用する場合、第2の支持基材4に残留する光熱変換層42を除去する方が好ましい。光熱変換層42を除去する方法は、特に限定されるわけではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理等が挙げられる。
【0204】
また、第4の実施形態の第2の固定樹脂層が、光熱変換層のみからなる固定樹脂層の場合、第2の支持基材4側から活性エネルギー線を照射することにより、光熱変換層中の熱分解性樹脂(3)を熱分解させて、光熱変換層にボイドを発生させて、第2の支持基材を剥離する。次いで、必要に応じて、半導体ウエハ2に残留した光熱変換層(第2の固定樹脂層)を、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理などの方法を用いて除去する。
【0205】
(個片化工程)
次に、図(6−d)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に半導体ウエハに半導体装置100が実装された電子装置200を個片化する個片化工程を行う。
【0206】
<第5の実施形態>
本発明の第5の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程で先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では第2の固定樹脂層の溶剤溶解を行う実施形態である。第5の実施形態は、第2の剥離工程で第2の固定樹脂層を溶剤溶解させる点および第2の固定樹脂層が、溶媒溶解性を有する固定樹脂層である点が、第1の実施形態と相違するが、それら以外は、第1の実施形態と同様である。そのため、第5の実施形態では、第1の実施形態と共通する部分の説明は省略し、第1の実施形態と異なる部分の説明を中心に記載する。
【0207】
第5の実施形態において、活性エネルギーを照射された後の第1の固定樹脂層の熱分解温度は、第2の固定樹脂層である溶剤溶解性を有する固定樹脂層の軟化温度よりも低い。これにより、活性エネルギー線が照射された後の熱分解性の第1の固定樹脂層の熱分解温度よりも高く、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層の熱軟化温度よりも低い温度に加熱することにより、熱分解性の固定樹脂層のみを熱分解させることができるため、第1の剥離工程で確実に第1の基材のみを剥離することができる。なお、溶剤溶解性を有する固定樹脂層の熱軟化温度とは、固定樹脂層の溶融粘度が300Pa・sになる温度を指す。
【0208】
(第1の積層体を得る工程)
第5の実施形態の第1の積層体を得る工程は、第1の実施形態の第1の積層体を得る工程と同様である。
まず、図(7−a)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第1の支持基材1上に、活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の第1の固定樹脂層10を形成する。第5の実施形態の固定樹脂層10は、第1の実施形態の固定樹脂層10と同様である。第5の実施形態では、第1の剥離工程の前に第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射するため、第1の支持基材1としては活性エネルギー線を透過する支持基材を用いる。
【0209】
(第1の積層体を得る工程)
次に、図(7−b)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、第1の積層体63を得る。
【0210】
(半導体ウエハ裏面加工工程)
次に、図(7−c)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、半導体ウエハ裏面加工工程を行う。
【0211】
(第2の積層体を得る工程)
次に、図(7−d)に示すように、半導体ウエハ2の裏面と第2の支持基材4を溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50を介して貼り合せることにより、第1の支持基材1/第1の固定樹脂層10/半導体ウエハ2/溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50/第2の支持基材4がこの順に積層された第2の積層体73を得る。
【0212】
第5の実施形態における第2の支持基板4は、図(7−d)に示すように、その厚さ方向に貫通孔6が設けられている方が好ましい。これにより、後述する第2の剥離工程で貫通孔6から溶剤を供給することができ、溶剤と溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50の接触面積が高まるため、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50を迅速に溶解させることができる。
【0213】
ここで、第5の実施形態で使用する溶剤溶解性の固定樹脂層について説明する。
溶剤溶解性の第2の固定樹脂層50は、溶剤溶解性の樹脂組成物により構成されており、溶剤溶解性の樹脂を含むものであれば特に限定されるものではない。
【0214】
前記溶剤溶解性の樹脂としては、第2の剥離工程で供給する溶剤に溶解性がある樹脂、すなわち、溶剤溶解性の樹脂であれば、特に限定されるものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂等のノボラック系フェノール樹脂、ジアミンおよび酸無水物の反応により得られるポリイミド前駆体樹脂、さらには、ポリイミド前駆体樹脂を脱水閉環させることにより得られるポリイミド樹脂、(メタ)アクリレート系モノマーを重合することにより得られるアクリル系樹脂等が挙げられる。なお、溶剤溶解性の樹脂とは、25℃の溶剤100gに1g以上溶解する樹脂を指す。
【0215】
また、溶剤溶解性を有する固定樹脂層は、必要に応じて、酸化防止剤、凝集剤、可塑剤、界面活性剤、ワックス、フィラー等の添加剤を含有していてもよい。
【0216】
溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50の形成については、溶剤溶解性を有する樹脂や、その他溶剤溶解性を有する固定樹脂層を構成する成分を溶媒に溶解または分散させて、溶媒を含有する樹脂組成物を調製し、得られた溶媒を含有する樹脂組成物を、支持基材または半導体ウエハ上で成膜し、溶媒を乾燥除去することにより、熱軟化性の固定樹脂層を形成させることができる。溶媒としては、特に限定されるものではないが、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類等が挙げられる。熱軟化性の樹脂組成物が溶媒を含有することにより、熱軟化性の樹脂組成物の粘度を調整することが容易となり、半導体ウエハまたは支持基材に熱軟化性の樹脂組成物の薄膜を形成するのが容易となる。
【0217】
また、溶剤溶解性の第2の固定樹脂層50の形成については、溶剤溶解性を有する樹脂や、その他溶剤溶解性を有する固定樹脂層を構成する成分を前述の溶媒に溶解し、溶媒を含有する樹脂組成物を得、次いで、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の基材に溶媒を含有する樹脂組成物を塗布、さらに、加熱することにより溶剤を揮散させることでフィルム状の樹脂組成物を得、次いで、フィルム上の樹脂組成物を、支持基材または半導体ウエハ上にラミネートして、熱軟化性の固定樹脂層を形成させることができる。
【0218】
(第1の剥離工程)
次に、第1の支持基材1側から活性エネルギー線を照射する。
【0219】
(第1の剥離工程)
次に、図(7−e)に示すように、第2の積層体73を加熱して、第2の積層体73から第1の支持基材1を剥離する。第5の実施形態の第1の剥離工程は、第1の実施形態の第1の剥離工程と同様である。
【0220】
具体的には、活性エネルギー線が照射された後の第1の固定樹脂層10の熱分解温度よりは高く、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層の熱軟化温度よりは低い温度に加熱することにより、第1の固定樹脂層10のみを選択的に熱分解させ、第1の支持基材1を剥離する。
【0221】
第5の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層の熱軟化温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0222】
第1の剥離工程後、必要に応じて、第1の支持基材1または半導体ウエハ2に残留した第1の固定樹脂層10を除去してもよい。残留した第1の固定樹脂層10の除去方法としては、特に限定されるものではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理などが挙げられる。
【0223】
第5の実施形態に係る電子装置の製造方法では、第1の固定樹脂層10が熱分解し低分子化されるので、ストレス無く第1の支持基材の脱離が可能であるため、第1の支持基材1および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。
また、低分子化した第1の固定樹脂層1の成分は、加熱の際に揮散し、第1の支持基材1および半導体ウエハ2に第1の固定樹脂層10が残留し難いという効果を奏する。そのため、洗浄等の後工程を簡素化でき、ハンドリングが向上するといった利点もある。
【0224】
(第3の積層体を得る工程)
次に、図(8−a)に示すように、前述した第1の実施形態にと同様に、第3の積層体83を得る。
【0225】
(第2の剥離工程)
次に、図(8−b)に示すように、第2の支持基材4の貫通孔6から溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50を溶解させることができる溶剤を供給する。
第5の実施形態では、第2の支持基材4の貫通孔6より溶剤を供給することができるため、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50の厚さ方向の断面のみに溶剤を供給する場合と比較して、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50と溶剤の接触面積を大きくすることができる。そのため、短時間で溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50を除去することができ、さらに、半導体ウエハ2および第2の支持基材4に残存する残渣を低減することができる。
【0226】
溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層を溶解させるための溶剤としては、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50を溶解させるものであればよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、単独でも2種以上混合であってもよい。
【0227】
次に、図(8−c)に示すように、第3の積層体83から第2の支持基材4を剥離する。第5の実施形態では、先に第2の固定樹脂層50(溶剤溶解性)が溶剤に溶解し、第2の支持基材4と溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50の接着面積が減少しているため、第2の支持基材4を容易に剥離することができる。
【0228】
第5の実施形態に係る電子装置の製造方法では、溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50が溶剤に溶解するので、ストレス無く第2の支持基材4の脱離が可能であるため、第2の支持基材4および半導体ウエハ2の破損が生じにくいという効果を奏する。
【0229】
第5の実施形態では、第2の剥離工程後に、半導体ウエハ2に付着している溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50を除去する。溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50の除去方法は、特に限定されるわけではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、単なる引き剥がし等が挙げられるが、半導体装置100が積層された半導体ウエハ2に対するダメージを低減することができる、単なる引き剥がしが好ましい。
【0230】
また、第5の実施形態では、第2の支持基材4を再利用する場合、第2の支持基材4に残留する溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層50を除去する方が好ましい。第2の固定樹脂層50を除去する方法は、特に限定されるわけではないが、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理等が挙げられる。
【0231】
(個片化工程)
次に、図(8−d)に示すように、前述した第1の実施形態と同様に半導体ウエハ2に半導体装置100が実装された電子装置200を個片化する個片化工程を行う。
【0232】
本発明の第6〜第10の実施形態は、第1の固定樹脂層として、熱分解性の固定樹脂層を使用し、且つ、第1の剥離工程で、固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく、積層体を加熱することにより固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。第6〜第10の実施形態の熱分解性の第1の固定樹脂層は、第2の実施形態の熱分解性の第2の固定樹脂層と同様であり、第6〜第10の実施形態の第1の剥離工程は、第2の実施形態の第2の剥離工程と同様であり、第6〜第10の実施形態の第2の剥離工程は、それぞれ、第1〜第5の実施形態の第2の剥離工程と同様である。
【0233】
本発明の第6の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
第6の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層に含まれている熱分解性樹脂(1)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。なお、第1の剥離工程の時点では、第2の固定樹脂層には未だ活性エネルギーは照射されていないので、T2は、活性エネルギー線が照射される前の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解樹脂(1)の熱分解温度である。
【0234】
本発明の第7の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
第7の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層に含まれている熱分解性樹脂(2)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0235】
本発明の第8の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行う実施形態である。
第8の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、熱軟化性の第2の固定樹脂層の熱軟化温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0236】
本発明の第9の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として光熱変化層を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行う実施形態である。
第9の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度度をT1(℃)とし、光熱変換層に含まれている熱分解性樹脂(3)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0237】
本発明の第10の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行い、第2の剥離工程では第2の固定樹脂層の溶剤溶解を行う実施形態である。
第10の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、溶剤溶解性を有する固定樹脂層の熱軟化温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0238】
本発明の第11〜第15の実施形態は、第1の固定樹脂層として、熱軟化性の固定樹脂層を使用し、且つ、第1の剥離工程で、第2の積層体を加熱することにより、熱軟化性の第1の固定樹脂層を熱軟化させる実施形態である。第11〜第15の実施形態の熱軟化性の第1の固定樹脂層は、第3の実施形態の熱軟化性の第2の固定樹脂層と同様であり、第11〜第15の実施形態の第1の剥離工程は、第3の実施形態の第2の剥離工程と同様であり、第11〜第15の実施形態の第2の剥離工程は、それぞれ、第1〜第5の実施形態の第2の剥離工程と同様である。
【0239】
本発明の第11の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行い、第2の剥離工程では先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
第11の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層に含まれている熱分解性樹脂(1)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。なお、第1の剥離工程の時点では、第2の固定樹脂層には未だ活性エネルギーは照射されていないので、T2は、活性エネルギー線が照射される前の第2の固定樹脂層に含まれる熱分解樹脂(1)の熱分解温度である。
【0240】
本発明の第12の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
第12の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、第2の固定樹脂層に含まれている熱分解性樹脂(2)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0241】
本発明の第13の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行う実施形態である。
第13の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、熱軟化性の第2の固定樹脂層の熱軟化温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0242】
本発明の第14の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行い、第2の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行う実施形態である。
第14の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、光熱変換層に含まれている熱分解性樹脂(3)の5%重量減少温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0243】
本発明の第15の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行い、第2の剥離工程では第2の固定樹脂層の溶剤溶解を行う実施形態である。
第15の実施形態では、第1の剥離工程における第2の積層体の加熱温度をT1(℃)とし、溶剤溶解性を有する固定樹脂層の熱軟化温度をT2(℃)とすると、「T1<T2」であり、好ましくは「T1+20<T2」である。
【0244】
本発明の第16〜第20の実施形態は、第1の固定樹脂層として、光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、且つ、第1の剥離工程で、光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより、光熱変換層の分解を行う実施形態である。第16〜第20の実施形態の光熱変換層を有する第1の固定樹脂層は、第4の実施形態の光熱変換層を有する第2の固定樹脂層と同様であり、第16〜第20の実施形態の第1の剥離工程は、第4の実施形態の第2の剥離工程と同様であり、第16〜第20の実施形態の第2の剥離工程は、それぞれ、第1〜第5の実施形態の第2の剥離工程と同様である。
【0245】
本発明の第16の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行い、第2の剥離工程では先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
【0246】
本発明の第17の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
【0247】
本発明の第18の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行う実施形態である。
【0248】
本発明の第19の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行い、第2の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行う実施形態である。
【0249】
本発明の第20の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として光熱変換層を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行い、第2の剥離工程では第2の固定樹脂層の溶剤溶解を行う実施形態である。
【0250】
本発明の第21〜第25の実施形態は、第1の固定樹脂層として、溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、且つ、第1の剥離工程で、第1の固定樹脂層に溶剤を供給することにより、溶剤溶解性を有する第1の固定樹脂層を溶剤溶解させる実施形態である。第21〜第25の実施形態の溶剤溶解性を有する第1の固定樹脂層は、第5の実施形態の溶剤溶解性を有する第2の固定樹脂層と同様であり、第21〜第25の実施形態の第1の剥離工程は、第5の実施形態の第2の剥離工程と同様であり、第21〜第25の実施形態の第2の剥離工程は、それぞれ、第1〜第5の実施形態の第2の剥離工程と同様である。
【0251】
本発明の第21の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として活性エネルギー線の照射により熱分解温度が低下する熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の溶剤溶解を行い、第2の剥離工程では先に固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行った後に固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
【0252】
本発明の第22の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱分解性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の溶剤溶解を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層への活性エネルギー線の照射を行うことなく固定樹脂層の熱分解を行う実施形態である。
【0253】
本発明の第23の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として熱軟化性の固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の溶剤溶解を行い、第2の剥離工程では固定樹脂層の熱軟化を行う実施形態である。
【0254】
本発明の第24の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として光熱変化層を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の溶剤溶解を行い、第2の剥離工程では光熱変換層に活性エネルギー線を照射することにより光熱変換層の分解を行う実施形態である。
【0255】
本発明の第25の実施形態の電子装置の製造方法は、第1の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第2の固定樹脂層として溶剤溶解性を有する固定樹脂層を使用し、第1の剥離工程では固定樹脂層の溶剤溶解を行い、第2の剥離工程では第2の固定樹脂層の溶剤溶解を行う実施形態である。
【0256】
このように、本発明に係る固定樹脂層を使用してCOW構造を有するWL−CSP型電子装置を製造することにより、製造プロセスが簡便であり、歩留りが良く安価で信頼性の高い電子装置を得ることができるという効果を奏することができる。
【0257】
以上、本発明の電子装置の製造方法の具体例を、実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、本発明の電子装置の製造方法は、必要に応じて任意の工程が追加されてもよい。