(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外表面を意匠面とする外板部と、前記外板部よりも車内側に配置された内板部と、前記外板部及び前記内板部の間に中空部を区画形成する隔壁とを備える自動車用外装品であって、
前記隔壁には、前記外板部を通じて自動車の内方へ向かう外力が加わった場合のエネルギーを吸収する吸収部として、少なくとも1段目の第1吸収部と2段目の第2吸収部とが自動車の内外方向に並んだ状態で設けられており、
前記第1吸収部及び前記第2吸収部は、前記外力に応じ前記第1吸収部が変形してエネルギーを吸収し、前記第1吸収部によるエネルギー吸収の後に前記第2吸収部が変形を開始してエネルギーを吸収する形態に形成されており、
前記第1吸収部は、前記外板部の近傍に設けられ、前記第2吸収部は、前記第1吸収部よりも前記内板部側に設けられており、
前記第2吸収部は、前記第1吸収部より高い強度を有しており、
前記隔壁は複数の仕切り部により多角筒状に形成され、
一部の前記第1吸収部及び一部の前記第2吸収部は、前記仕切り部において、隣の仕切り部との境界部分とは異なる箇所に設けられた主吸収部を構成し、
前記主吸収部は、前記第1吸収部として、前記外板部から前記内板部に向けて延びる板状の外側主脆弱部を備えているとともに、前記第2吸収部として、それぞれ板状をなして、互いに離間した状態で前記内板部から前記外板部に向けて延びる一対の内側主脆弱部と、前記自動車の内外方向に直交する方向に延びて、前記外側主脆弱部の車内側の端部と前記各内側主脆弱部の車外側の端部とを連結する連結主脆弱部を備えており、
一部の前記第1吸収部及び一部の前記第2吸収部は、隣り合う仕切り部の境界部分に設けられた副吸収部を構成し、
前記副吸収部は、前記第1吸収部として、筒状をなして前記外板部から前記内板部に向けて延び、かつ車外側の端部が蓋部により閉塞された外側副脆弱部を備えているとともに、前記第2吸収部として、前記外側副脆弱部よりも径の大きな筒状をなして前記内板部から前記外板部に向けて延びる内側副脆弱部と、前記自動車の内外方向に直交する面において環状をなし、前記外側副脆弱部の車内側の端部と前記内側副脆弱部の車外側の端部とを連結する連結副脆弱部とを備えており、
前記外板部は、前記主吸収部における前記外側主脆弱部の車外側の面と、前記副吸収部における前記蓋部の車外側の面とに対し接着固定されていることを特徴とする自動車用外装品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記自動車用フードを含む従来の自動車用外装品では、内板部72の一部が破断された後に、内板部72の残部が硬質の支持部材76にすぐに当接する。この当接後には、エネルギーの吸収は行なわれない。そのため、自動車用外装品が吸収するエネルギーの量は少なく、より多くのエネルギー吸収が要求される場合には対応が困難である。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エネルギー吸収性能を高め、歩行者に加わる衝撃を一層緩和することのできる自動車用外装品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する自動車用外装品は、外表面を意匠面とする外板部と、前記外板部よりも車内側に配置された内板部と、前記外板部及び前記内板部の間に中空部を区画形成する隔壁とを備える自動車用外装品であって、前記隔壁には、前記外板部を通じて自動車の内方へ向かう外力が加わった場合のエネルギーを吸収する吸収部として、少なくとも1段目の第1吸収部と2段目の第2吸収部とが自動車の内外方向に並んだ状態で設けられており、前記第1吸収部及び前記第2吸収部は、前記外力に応じ前記第1吸収部が変形してエネルギーを吸収し、
前記第1吸収部によるエネルギー吸収の後に前記第2吸収部が変形を開始してエネルギーを吸収する形態に形成されており、前記第1吸収部は、前記外板部の近傍に設けられ、前記第2吸収部は、前記第1吸収部よりも前記内板部側に設けられており、前記第2吸収部は、前記第1吸収部より高い強度を有しており、前記隔壁は複数の仕切り部により多角筒状に形成され、一部の前記第1吸収部及び一部の前記第2吸収部は、前記仕切り部において、隣の仕切り部との境界部分とは異なる箇所に設けられた主吸収部を構成し、前記主吸収部は、前記第1吸収部として、前記外板部から前記内板部に向けて延びる板状の外側主脆弱部を備えているとともに、前記第2吸収部として、それぞれ板状をなして、互いに離間した状態で前記内板部から前記外板部に向けて延びる一対の内側主脆弱部と、前記自動車の内外方向に直交する方向に延びて、前記外側主脆弱部の車内側の端部と前記各内側主脆弱部の車外側の端部とを連結する連結主脆弱部を備えており、一部の前記第1吸収部及び一部の前記第2吸収部は、隣り合う仕切り部の境界部分に設けられた副吸収部を構成し、前記副吸収部は、前記第1吸収部として、筒状をなして前記外板部から前記内板部に向けて延び、かつ車外側の端部が蓋部により閉塞された外側副脆弱部を備えているとともに、前記第2吸収部として、前記外側副脆弱部よりも径の大きな筒状をなして前記内板部から前記外板部に向けて延びる内側副脆弱部と、前記自動車の内外方向に直交する面において環状をなし、前記外側副脆弱部の車内側の端部と前記内側副脆弱部の車外側の端部とを連結する連結副脆弱部とを備えており、前記外板部は、前記主吸収部における前記外側主脆弱部の車外側の面と、前記副吸収部における前記蓋部の車外側の面とに対し接着固定されている。
【0010】
ここで、変形には、撓み、屈曲のほか、破断も含まれる。
上記の構成によれば、自動車の歩行者との接触により、自動車用外装品に対し、外板部を通じて自動車の内方へ向かう外力が加わると、その外力は第1吸収部及び第2吸収部を介して内板部に伝達される。このように伝達される外力により、1段目の第1吸収部が変形することで、接触のエネルギーが吸収され、自動車から歩行者に加わる衝撃が緩和される。第1吸収部の変形開始後に2段目の第2吸収部が変形を開始する。この第2吸収部の変形により、接触のエネルギーがさらに吸収され、歩行者に加わる衝撃がさらに緩和される。このように、第1吸収部によるエネルギーの吸収が行なわれた後にも第2吸収部によるエネルギーの吸収が続けられる。従って、1段目のエネルギー吸収のみが行なわれるものに比べ、エネルギーがより多く吸収される。その分、歩行者に加わる衝撃が小さくなる。
【0012】
上記の構成によれば、自動車の歩行者との接触により、自動車用外装品に対し外力が加わると、1段目の第1吸収部が変形することで、接触のエネルギーが吸収され、歩行者に加わる衝撃が緩和される。第1吸収部によるエネルギー吸収が終った後に2段目の第2吸収部が変形を開始することで、エネルギーがさらに吸収され、歩行者に加わる衝撃がさらに緩和される。従って、第1吸収部によるエネルギー吸収の途中から第2吸収部によるエネルギー吸収が開始されるものよりも長い期間にわたり、エネルギーが吸収される。
【0013】
上記の構成によれば、自動車の歩行者との接触により、自動車用外装品に対し外力が加わると、最初に、外板部の近傍に設けられた1段目の第1吸収部が変形することで、接触のエネルギーが吸収される。第1吸収部によるエネルギー吸収が終った後に、その第1吸収部よりも内板部側に設けられた2段目の第2吸収部が変形することで、エネルギーがさらに吸収される。
【0015】
上記の構成によれば、自動車の歩行者との接触により、自動車用外装品に対し外力が加わると、その外力の一部は、隔壁を構成する仕切り部において、隣の仕切り部との境界部
分とは異なる箇所、すなわち、各仕切り部の多くの部分に設けられた主吸収部に加わる。主吸収部では、上記外力は板状の
外側主脆弱部、
連結主脆弱部及び板状の一対の
内側主脆弱部を介して内板部に伝達される。このように伝達される外力により、最初に、
外側主脆弱部が変形することで、接触のエネルギーが吸収される。上記
外側主脆弱部によるエネルギー吸収が終った後に、
連結主脆弱部及び両
内側主脆弱部が変形することで、エネルギーがさらに吸収される。
【0017】
上記の構成によれば、自動車の歩行者との接触により、自動車用外装品に対し外力が加わると、その外力は、副吸収部では、筒状の
外側副脆弱部、環状の
連結副脆弱部、及び
外側副脆弱部よりも径の大きな筒状の
内側副脆弱部を介して内板部に伝達される。このように伝達される外力により、最初に、
外側副脆弱部が変形することで、接触のエネルギーが吸収される。上記
外側副脆弱部によるエネルギー吸収が終った後に、
連結副脆弱部及び
内側副脆弱部が変形することで、エネルギーがさらに吸収される。
【0019】
上記の構成によれば、外板部は主吸収部及び副吸収部に対し接着固定される。ここで、仮に、隔壁に吸収部として主吸収部のみが設けられている(副吸収部が設けられていない)とすると、外板部は主吸収部の
外側主脆弱部においてのみ接着固定されることとなる。ところが、主吸収部の
外側主脆弱部は板状をなしていて、車外側の面において外板部との接着が行なわれるため、接着面積を広く取るにも限度がある。しかし、隔壁には上記主吸収部に加え、
外側副脆弱部を有する副吸収部が設けられていて、その
外側副脆弱部の蓋部においても外板部との接着が行なわれる。蓋部の車外側の面は、主吸収部における
外側主脆弱部の車外側の面よりも広い。従って、蓋部が接着に加わる分、外板部の主吸収部及び副吸収部に対する接着面積が拡大され、外板部が主吸収部及び副吸収部に対しより強固に接着される。
【0020】
上記自動車用外装品において、前記第1吸収部及び前記第2吸収部の少なくとも一方にはスリットが形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、第1吸収部及び第2吸収部の強度は、スリットが形成されることで低下する。これに伴い、スリットが形成された第1吸収部及び第2吸収部が変形しやすくなって、第1吸収部及び第2吸収部が吸収し得るエネルギーの量が、スリットのないものとは異なってくる。従って、スリットを適宜形成することで、エネルギー吸収性能を簡単に調整することが可能である。
【0021】
また、第1吸収部及び第2吸収部のうちスリットが形成されたものは、スリットが形成されないものよりも軽量となる。
上記自動車用外装品において、前記外板部、前記隔壁及び前記内板部のうち少なくとも1つは樹脂により形成されていることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、外板部、隔壁及び内板部のうち少なくとも1つが樹脂により形成されることで、全部が金属によって形成されたものよりも軽量となる。
【発明の効果】
【0023】
上記自動車用外装品によれば、接触のエネルギーを吸収する吸収部として、少なくとも第1吸収部及び第2吸収部を自動車の内外方向に並んだ状態で設け、第1吸収部によりエネルギーを吸収した後にも第2吸収部によりエネルギーの吸収を継続するようにしたため、エネルギー吸収性能を高め、歩行者に加わる衝撃を一層緩和することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、自動車用外装品の一実施形態について、
図1〜
図6を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、エンジンルームの中央部に近づく側を「車内側」とし、同中央部から遠ざかる側を「車外側」とするものとする。また、各図においては、「車内側」、「車外側」をそれぞれ「内」、「外」と記載するものとする。別例を示す
図7(A),(B)及び
図8(A),(B)と、従来技術を示す
図9(A),(B)とについても同様である。
【0026】
自動車の前部には、エンジンルームを開閉する自動車用フードが自動車用外装品として設けられている。自動車用フードはエンジンルームを上側から塞ぎ得る平面形状に形成されている。
【0027】
図1は、自動車用フードCHの一部を示している。この自動車用フードCHは、二点鎖線で示す外板部10、内板部20及び複数の隔壁30を備えている。
外板部10は、自動車用フードCHにおいて最も車外側に位置する部材であり、全体を金属によって形成した一般的な自動車用フードにおけるアウタパネルに相当する。外板部10は、例えば、タルク等のフィラーの混入されたポリプロピレン(PPF)を用い、射出成形を行なうことによって形成されている。外板部10の外表面は、自動車用フードCHの意匠面を構成している。
【0028】
内板部20は平板状をなし、外板部10よりも車内側において、外板部10に対し略平行となる状態で配置されている。
各隔壁30は、外板部10及び内板部20の間に配置された複数(6つ)の仕切り部31によって低六角筒状に形成されている。六角筒状の隔壁30が互いに隣り合った状態で多数設けられることで外板部10及び内板部20間にハニカム部32が形成されている。隣り合う隔壁30は、1枚の仕切り部31を共通にしている。そして、このハニカム部32と、ハニカム部32を両側から挟み込む外板部10及び内板部20とによってハニカム構造体33が構成されている。外板部10、隔壁30及び内板部20によって囲まれた領域は低六角柱状の中空部34となっている。
【0029】
上記内板部20及び複数の隔壁30は、全体を金属によって形成した一般的な自動車用フードにおけるインナパネルに相当する。内板部20及び複数の隔壁30は、例えばカーボンフィラーの混入されたポリプロピレン(CFPP)を用い、射出成形を行なうことにより一体に成形されている。そして、この樹脂成形後に、上記外板部10が隔壁30に対し、接着固定されている。
【0030】
ハニカム構造体33は、一般的なものと同様、外板部10及び内板部20に加わってそれらを曲げようとする力を、ハニカム部32を伸縮させる力に変えることによって高い強度を発揮する。ハニカム構造体33には、剛性(面剛性)が高く変形しにくいという特徴がある。
【0031】
各隔壁30には、外板部10を通じて自動車の内方(エンジンルーム側)へ向かう外力が加わった場合のエネルギーを吸収する吸収部として、主吸収部40及び副吸収部50が設けられている。主吸収部40及び副吸収部50は各隔壁30の6箇所に設けられている。
【0032】
図2に示すように、各主吸収部40は、各仕切り部31において、隣の仕切り部31との境界部分とは異なる箇所、すなわち、各仕切り部31の多くの部分に設けられている。各主吸収部40は、外板部10の近傍に設けられた1段目の第1吸収部41と、その第1吸収部41に対し車内側(内板部20側)となる箇所に並んだ状態で設けられた第2吸収部43とによって構成されている。
【0033】
より詳しくは、
図3に示すように、主吸収部40の第1吸収部41は、外板部10から内板部20に向けて延びる板状の外脆弱部42によって構成されている。この外脆弱部42の車外側の面42Aは、上記外板部10との接着面とされている。
【0034】
主吸収部40の第2吸収部43は、一対の内脆弱部44と連結脆弱部45とによって構成されている。両内脆弱部44は、それぞれ板状をなして、互いに離間した状態で内板部20から外板部10に向けて延びている。連結脆弱部45は、自動車の内外方向に直交する方向(
図3の左右方向及び紙面に直交する方向)へ延び、外脆弱部42の車内側の端部と各内脆弱部44の車外側の端部とを連結している。
【0035】
上記の構成により、主吸収部40では、第2吸収部43が第1吸収部41よりも高い強度を有している。そのため、自動車用フードCHに外力が加わった場合、主吸収部40では、まず第1吸収部41が変形してエネルギーを吸収し、その後に第2吸収部43が変形してエネルギーをさらに吸収する。
【0036】
なお、外脆弱部42と連結脆弱部45との境界部分は角張っており、同境界部分が曲面状に形成された場合よりも、応力が集中しやすい形状となっている。
図2に示すように、各副吸収部50は、隣り合う仕切り部31の境界部分、表現を代えると隔壁30の各角部に設けられている。各副吸収部50は、外板部10の近傍に設けられた1段目の第1吸収部51と、その第1吸収部51に対し車内側(内板部20側)となる箇所に並んだ状態で設けられた第2吸収部54とによって構成されている。
【0037】
より詳しくは、
図4に示すように第1吸収部51は、外板部10から内板部20に向けて延びる略円筒状の外脆弱部52によって構成されている。外脆弱部52の車外側の端部は、円板状の蓋部53によって閉塞されている。蓋部53の車外側の面53Aは、上記外脆弱部42の車外側の面42Aにおける幅Wよりも大きな径Rを有しており(
図2参照)、上記外板部10との接着面とされている。
【0038】
第2吸収部54は、内脆弱部55及び連結脆弱部56を備えている。内脆弱部55は、略円筒状をなしていて、内板部20から外板部10に向けて延びている。内脆弱部55の車外側端部の径は、外脆弱部52の車内側端部の径よりも大きく設定されている。連結脆弱部56は、自動車の内外方向に直交する面において円環状をなし、外脆弱部52の車内側の端部と内脆弱部55の車外側の端部とを連結している。
【0039】
なお、外脆弱部52及び内脆弱部55は、いずれも車内側(内板部20側)ほど拡径している。これは、樹脂成形後に外脆弱部52及び内脆弱部55から金型をスムーズに離型させるためである。
【0040】
上記の構成により、副吸収部50では、第2吸収部54が第1吸収部51よりも高い強度を有している。そのため、自動車用フードCHに外力が加わった場合、副吸収部50では第1吸収部51が変形してエネルギーを吸収し、その後に第2吸収部54が変形してエネルギーをさらに吸収する。
【0041】
なお、外脆弱部52と連結脆弱部56との境界部分は角張っており、同境界部分が曲面状に形成された場合よりも、応力が集中しやすい形状となっている。
外板部10は主吸収部40及び副吸収部50に対し接着固定されている。ここで、仮に、隔壁30に吸収部として主吸収部40のみが設けられている(副吸収部50が設けられていない)とすると、外板部10は主吸収部40の外脆弱部42においてのみ接着固定されることとなる。ところが、主吸収部40の外脆弱部42は板状をなしていて、その車外側の面42Aにおいて外板部10との接着が行なわれるため、接着面積を広く取るにも限度がある。しかし、隔壁30には上記主吸収部40に加え、外脆弱部52を有する副吸収部50が設けられていて、その外脆弱部52の蓋部53においても外板部10との接着が行なわれる。蓋部53の車外側の面53Aは円形状をなし、主吸収部40における外脆弱部42の上記面42Aよりも広い(
図2参照)。従って、蓋部53が接着の対象箇所として加わる分、外板部10の主吸収部40及び副吸収部50に対する接着面積が増大され、外板部10が主吸収部40及び副吸収部50に対しより強固に接着される。
【0042】
上記のようにして、本実施形態の自動車用フードCHが構成されている。次に、この自動車用フードCHの作用について、
図5及び
図6を参照して説明する。
本実施形態の自動車用フードCHが搭載された自動車では、歩行者に接触した場合、歩行者が倒れ込んで、その頭部等が自動車用フードCHに接触(衝突)することがある。この接触(衝突)により、
図5(A)に示すように、自動車用フードCHに対し、外板部10を通じて自動車の内方へ向かう外力Fが加わる。この外力Fは、主吸収部40では、第1吸収部41及び第2吸収部43を介して内板部20に伝達される。また、
図6(A)に示すように、上記外力Fは、副吸収部50では、第1吸収部51及び第2吸収部54を介して内板部20に伝達される。
【0043】
より詳しくは、
図5(A)に示すように、各主吸収部40では、外力Fは板状の外脆弱部42、連結脆弱部45及び板状の一対の内脆弱部44を介して内板部20に伝達される。
【0044】
このように伝達される外力Fにより、最初に、外板部10の近傍に設けられた1段目の第1吸収部41である外脆弱部42が変形することで、接触のエネルギーが吸収され、自動車から歩行者に加わる衝撃が緩和される。ここでの変形には、
図5(B)に示すように、外脆弱部42が屈曲することが含まれる。上述したように、外脆弱部42と連結脆弱部45との境界部分が角張っており、同境界部分に応力が集中しやすいため、外脆弱部42はこの境界部分で屈曲しやすい。
【0045】
第1吸収部41が上記のように屈曲して接触のエネルギーを吸収した後、すなわち第1吸収部41の変形開始後に、第1吸収部41よりも内板部20側に設けられた2段目の第2吸収部43である連結脆弱部45及び両内脆弱部44が変形を開始する。ここでの変形には、
図5(C)に示すように、屈曲した外脆弱部42が車内側の端部において破断され、連結脆弱部45を突き破って外板部10を伴って車内側へ移動することが含まれる。また、上記変形には、
図5(D)において二点鎖線で示すように、内脆弱部44が屈曲することが含まれる。この屈曲は、車内側へ移動する外板部10が第2吸収部43(連結脆弱部45の残部)に当接した後も、その移動を続けて、内脆弱部44を押圧することにより行なわれる。上記第2吸収部43の変形により、接触のエネルギーがさらに吸収され、歩行者に加わる衝撃がさらに緩和される。
【0046】
このように、第1吸収部41によるエネルギーの吸収が行なわれた後にも第2吸収部43によるエネルギーの吸収が続けられる。従って、1段目のエネルギー吸収のみが行なわれる場合に比べ、エネルギーがより多く吸収される。その分、歩行者に加わる衝撃が小さくなる。
【0047】
また、
図6(A)に示すように、各副吸収部50では、外力Fは略円筒状の外脆弱部52、連結脆弱部56及び略円筒状の内脆弱部55を介して内板部20に伝達される。
このように伝達される外力Fにより、最初に、外板部10の近傍に設けられた1段目の第1吸収部51である外脆弱部52が変形することで、接触のエネルギーが吸収され、自動車から歩行者に加わる衝撃が緩和される。ここでの変形には、
図6(B)に示すように、外脆弱部52が屈曲することが含まれる。上述したように、外脆弱部52と連結脆弱部56との境界部分が角張っており、同境界部分に応力が集中しやすいため、外脆弱部52はこの境界部分で屈曲しやすい。
【0048】
第1吸収部51が上記のように屈曲して接触のエネルギーを吸収した後、すなわち第1吸収部51の変形開始後に、第1吸収部51よりも内板部20側に設けられた2段目の第2吸収部54である連結脆弱部56及び内脆弱部55が変形を開始する。ここでの変形には、
図6(C)に示すように、屈曲した外脆弱部52が車内側の端部において破断され、連結脆弱部56を突き破って外板部10を伴って車内側へ移動することが含まれる。また、上記変形には、
図6(D)において二点鎖線で示すように、内脆弱部55が屈曲することが含まれる。この屈曲は、車内側へ移動する外板部10が第2吸収部54(連結脆弱部56の残部)に当接した後も、その移動を続けて、内脆弱部55を押圧することにより行なわれる。上記第2吸収部54の変形により、接触のエネルギーがさらに吸収され、歩行者に加わる衝撃がさらに緩和される。
【0049】
このように、第1吸収部51によるエネルギーの吸収が行なわれた後にも第2吸収部54によるエネルギーの吸収が続けられる。従って、1段目のエネルギー吸収のみが行なわれる場合に比べ、エネルギーがより多く吸収される。その分、歩行者に加わる衝撃が小さくなる。
【0050】
さらに、本実施形態の自動車用フードCHは、以下の構成を採用したことにより軽量となる。
(i)自動車用フードCHの略全体がハニカム構造体33によって形成されていること(
図1)。
【0051】
(ii)ハニカム構造体33が、六角筒状をなす多数の隔壁30からなるハニカム部32と、同ハニカム部32を自動車の内外両方向から挟み込んで各隔壁30を封止する外板部10及び内板部20とによって構成されていること(
図1)。
【0052】
各隔壁30を六角筒状とすることで、それらの内部空間(中空部34)の容積が採り得る最大容積となり、隔壁30の材料が少なくてすむ。このことは、ハニカム構造体33がより軽くなることに繋がる。
【0053】
(iii )ハニカム構造体33の構成部材である外板部10、ハニカム部32及び内板部20がいずれも樹脂によって形成されていること(
図1)。
以上のことから、本実施形態の自動車用フードCHは、金属製のアウタパネルの車内側(エンジンルーム側)に金属製のインナパネルを配置した一般的な金属製自動車用フードよりも軽量となる。また、本実施形態の自動車用フードCHは、その略全体が金属製のハニカム構造体によって形成されたものに比べても軽量となる。
【0054】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)外板部10及び内板部20の間に中空部34を区画形成する隔壁30を備える自動車用フードCH(
図1)にあって、隔壁30に、外板部10を通じて自動車の内方へ向かう外力Fが加わった場合のエネルギーを吸収する吸収部として、1段目の第1吸収部41,51と2段目の第2吸収部43,54とを自動車の内外方向に並べた状態で設ける。第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54を、外力Fに応じ第1吸収部41,51が変形してエネルギーを吸収し、第2吸収部43,54が第1吸収部41,51の変形開始後に変形を開始してエネルギーを吸収する形態に形成している(
図5、
図6)。
【0055】
そのため、第1吸収部41,51によるエネルギー吸収が行なわれた後にも第2吸収部43,54によるエネルギー吸収を続け、1段目のエネルギー吸収のみが行なわれる場合(特許文献1がこれに該当する)に比べ、エネルギーをより多く吸収することができる。エネルギー吸収性能を高め、歩行者に加わる衝撃を一層緩和することができる。
【0056】
(2)第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54を、第1吸収部41,51によるエネルギー吸収の後に第2吸収部43,54が変形してエネルギーを吸収する形態に形成している(
図5、
図6)。
【0057】
そのため、第1吸収部41,51によるエネルギー吸収の途中から第2吸収部43,54によるエネルギー吸収が開始される場合に比べ、エネルギーを長い期間にわたり吸収することができる。
【0058】
(3)第1吸収部41,51を外板部10の近傍に設け、第2吸収部43,54を第1吸収部41よりも内板部20側に設けている(
図3、
図4)。
そのため、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54を外板部10から内板部20に向けて順に変形させて、接触のエネルギーを順に吸収し、歩行者に加わる衝撃を順に緩和することができる。
【0059】
(4)接触のエネルギーを吸収する吸収部として、仕切り部31において、隣の仕切り部31との境界部分とは異なる箇所、すなわち、各仕切り部31の多くの部分に主吸収部40を設ける(
図2)。主吸収部40の第1吸収部41を、外板部10から内板部20に向けて延びる板状の外脆弱部42によって構成する。主吸収部40の第2吸収部43を、それぞれ板状をなして、互いに離間した状態で内板部20から外板部10に向けて延びる一対の内脆弱部44と、自動車の内外方向に直交する方向に延びて、外脆弱部42の車内側の端部と各内脆弱部44の車外側の端部とを連結する連結脆弱部45とによって構成している(
図3)。
【0060】
そのため、各主吸収部40では、最初に、外脆弱部42を変形(屈曲)させることで、接触のエネルギーを吸収し、その後に、連結脆弱部45及び両内脆弱部44を変形(破断、屈曲)させることで、エネルギーをさらに吸収することができる。
【0061】
(5)接触のエネルギーの吸収部として、隣り合う仕切り部31の境界部分に副吸収部50を設ける(
図2)。副吸収部50の第1吸収部51を、外板部10から内板部20に向けて延びる略円筒状の外脆弱部52によって構成する。第2吸収部54を、外脆弱部52よりも径の大きな略円筒状をなして内板部20から外板部10に向けて延びる内脆弱部55と、自動車の内外方向に直交する面において円環状をなし、外脆弱部52の車内側の端部と内脆弱部55の車外側の端部とを連結する連結脆弱部56とによって構成している(
図4)。
【0062】
そのため、各副吸収部50では、最初に、外脆弱部52を変形(屈曲)させることで、接触のエネルギーを吸収し、その後に、連結脆弱部56及び内脆弱部55を変形(破断、屈曲)させることで、エネルギーをさらに吸収することができる。
【0063】
(6)上記(5),(6)に関連するが、主吸収部40の第1吸収部41を、外板部10から内板部20に向けて延びる板状の外脆弱部42によって構成する(
図3)。副吸収部50の第1吸収部41を、略円筒状をなして外板部10から内板部20に向けて延び、かつ車外側の端部が円板状の蓋部53によって塞がれた外脆弱部52によって構成する(
図4)。そして、外板部10を、主吸収部40における外脆弱部42の車外側の面42Aと、副吸収部50における蓋部53の車外側の面53Aとに接着固定している。
【0064】
そのため、外板部10の主吸収部40及び副吸収部50に対する接着面積を拡大し、外板部10を主吸収部40及び副吸収部50に対しより強固に接着させることができる。
(7)自動車用フードCHを構成する部材である外板部10、隔壁30及び内板部20の全てを樹脂によって形成している。
【0065】
そのため、外板部10、隔壁30及び内板部20の少なくとも1つが金属によって形成されたものよりも自動車用フードCHを軽量にすることができる。また、外板部10、隔壁30及び内板部20により中空部34を形成しているため、自動車用フードCHをさらに軽量にすることができる。こうした軽量化により、自動車を作動させるために必要なエネルギーを少なくし、自動車の燃費向上を図ることができる。
【0066】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<隔壁30について>
・隔壁30は、六角筒状以外の多角筒状に形成されてもよい。
【0067】
・隔壁30の開口における各辺が均一でなくてもよい。例えば、偏平な六角筒状(相対向する1組の辺のみが、相対向する他の組の辺よりも長い場合)がこれに該当する。
・自動車用フードCHの歩行者との接触箇所が、エンジンルームに配置された自動車構成部材から大きく離れている箇所であれば、外力が加わると、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54が変形することに加え、外板部10が車内側(エンジンルーム側)に向かって撓むことによっても、接触のエネルギーが吸収される。この外板部10が撓むことによるエネルギー吸収の分、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54が変形することによるエネルギー吸収量が少なくてすむ。従って、自動車構成部材との間隔の広い箇所では、間隔の狭い箇所よりも各隔壁30が大きく形成されても、外板部10が撓むことと第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54が変形することとの双方で、自動車構成部材との干渉を招くことなく接触のエネルギーが吸収される。
【0068】
また、外板部10の歩行者との接触箇所が、エンジンルーム内の自動車構成部材に近い箇所であれば、外力が加わった場合、外板部10が撓むことのできる空間は狭い。外板部10がエンジンルームに向かって撓むことによって吸収できるエネルギー量が少なくなる。その分、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54が変形することによって吸収すべきエネルギーの量が多くなる。
【0069】
そこで、自動車用フードCHの自動車構成部材との間隔の狭い箇所において、間隔の広い箇所よりも隔壁30が小さく形成されることが望ましい。このようにすれば、多くの小さな隔壁30が変形することにより、自動車構成部材との干渉を招くことなくエネルギーが吸収される。軽量化とエネルギー吸収性能の向上とを、より高い次元で実現することが可能となる。
【0070】
なお、例えば、各隔壁30において中空部34の中心軸線を挟んで相対向する一対の仕切り部31の間隔を隔壁30のピッチとすると、このピッチを可変とすることで、各隔壁30の大きさを変更可能である。例えば、ピッチを小さくすることにより隔壁30を小さくし、ピッチを大きくすることにより隔壁30を大きくすることが可能である。
【0071】
<吸収部について>
・主吸収部40及び副吸収部50においては、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54が必須であるが、これらに加え、第2吸収部43,54の変形開始後、望ましくは変形後に変形を開始する別の吸収部が1段以上設けられてもよい。
【0072】
・第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54は、外力Fに応じ第1吸収部41,51が変形してエネルギーを吸収し、第2吸収部43,54が第1吸収部41,51の変形開始後に変形を開始してエネルギーを吸収するものであればよい。
【0073】
従って、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54は、第1吸収部41,51によるエネルギー吸収が終了する前に、第2吸収部43,54が変形を開始してエネルギーを吸収する形態に形成されてもよい。
【0074】
・主吸収部40及び副吸収部50のいずれか一方が割愛されてもよい。
・上記実施形態とは逆に、第2吸収部43,54が外板部10側(車外側)に設けられ、第1吸収部41,51が内板部20側(車内側)に設けられてもよい。この場合には、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54は、第1吸収部41,51によるエネルギー吸収の後に第2吸収部43,54が変形を開始してエネルギーを吸収する形態に形成される必要がある。
【0075】
・第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54の少なくとも一方にスリットが形成されてもよい。
図7(A),(B)及び
図8(A),(B)にその一例を示す。
図7(A),(B)は、主吸収部40にスリット46が形成された例を示している。このスリット46は、第2吸収部43を構成する連結脆弱部45及び両内脆弱部44に形成されている。なお、スリットは、主吸収部40の上記とは異なる箇所、例えば外脆弱部42に形成されてもよい。
【0076】
図8(A),(B)は、副吸収部50にスリット57,58が形成された例を示している。スリット57は、第1吸収部51(外脆弱部52)に形成され、スリット58は第2吸収部54(内脆弱部55)に形成されている。なお、スリット57,58の一方のみが形成されてもよい。また、スリットは、第1吸収部51(外脆弱部52)及び第2吸収部54(内脆弱部55)に跨って形成されてもよい。
【0077】
このようにすると、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54の強度は、スリット46,57,58が形成されることで低下する。
これに伴い、スリット46が形成された第2吸収部43が変形しやすくなって、主吸収部40が吸収し得るエネルギーの量が、スリット46の形成されていないものとは異なってくる。
【0078】
また、スリット57,58が形成された第1吸収部51及び第2吸収部54が変形しやすくなって、副吸収部50が吸収し得るエネルギーの量が、スリット57,58の形成されていないものとは異なってくる。
【0079】
従って、スリット46,57,58を適宜形成することで、自動車用フードCHのエネルギー吸収性能を簡単に調整することが可能である。自動車の種別毎に要求されるエネルギー吸収性能が異なっていても、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54からなる基本構造を維持しつつ、スリット46,57,58を形成することで簡単に対応することができる。
【0080】
また、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54のうちスリット46,57,58が形成されたものは、スリットが形成されないものに比べ軽量となる。
・副吸収部50における第1吸収部51(外脆弱部52)及び第2吸収部54(内脆弱部55)の少なくとも一方は、非円筒状、例えば楕円筒状、多角筒状等に形成されてもよい。
【0081】
<ハニカム構造体33について>
・自動車用フードCHは、その略全体がハニカム構造体33によって形成されてもよいし、一部のみがハニカム構造体33によって形成されてもよい。例えば、自動車用フードCHの中央部やその近傍部分、フードヒンジの近傍部分、及び左右のフードヒンジによって挟まれた後縁部近傍部分のみがハニカム構造体33によって形成されてもよい。
【0082】
・内板部20に代えて外板部10が隔壁30と一体に形成されてもよい。この場合、内板部20は隔壁30とは別に成形され、その成形後に、隔壁30に接着等の接合手段によって固定されてもよい。
【0083】
・内板部20に、エンジンが発する音を低減するための吸音材が積層されてもよい。吸音材としては、例えば、グラスウール等の繊維材料、ウレタンフォーム等の発泡樹脂等を用いることができる。
【0084】
・ハニカム構造体33の構成部材の材料は、エンジンルーム内の温度に耐え得る耐熱性を有する樹脂材料の中から、第1吸収部41,51及び第2吸収部43,54の変形によるエネルギー吸収特性の設定の容易性や取り扱い性、さらには、コスト等を考慮して、適宜に選択されて用いられることが望ましい。
【0085】
こうした観点から、上記材料として繊維強化樹脂が用いられてもよい。繊維強化樹脂としては、例えば、PP、PA、PET等の合成樹脂を母材とし、これに繊維長の比較的短い炭素繊維、ガラス繊維等の繊維を強化材として含有した複合材料が挙げられる。
【0086】
・外板部10は、接着とは異なる接合手段、例えば溶着によって、隔壁30(主吸収部40、副吸収部50)に固定されてもよい。
<その他>
・自動車用外装品は、自動車用フードCHのほかにも、自動車のボディの前部であって、衝撃緩和による歩行者保護が要求される外装品、例えばフロントフェンダにも適用可能である。