(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を
図1〜5に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るエアバッグ装置の回路図である。
図1に示すようにエアバッグ装置100は、バッテリー1、昇圧回路2、セーフィングFET5、セーフィングFET制御回路6、目標電圧設定部7、基準電源8、端子電圧モニタ部9、および複数のチャネル(11〜13)を備えている。チャネル11〜13は、いずれも同様の構成となっており、スクイブに流れる電流を制御する回路(点火回路)としての機能を果たす。たとえばチャネル11は、ハイサイドFET制御回路111、ハイサイドFET112、スクイブ113、ローサイドFET制御回路114、およびローサイドFET115を備えている。なお、チャネル12やチャネル13についても同様の構成であるため、個々の説明は省略する。
【0014】
バッテリー1は、例えば、出力電圧V0(定格出力12V)の二次電池である。バッテリー1の負極端子は車両のボディに接続され、正極端子は昇圧回路2に接続されている。昇圧回路2は、バッテリー1より供給される直流電圧V0を昇圧して出力する回路である。昇圧回路2の出力電圧はたとえば25Vである。昇圧回路2の出力端子は、逆流防止用のダイオード3を介してセーフィングFET5のドレインに接続されている。なお、バッテリー1は、その他の電気負荷(図示略)にも接続されており、電気負荷の変動などによってバッテリー1の出力電圧V0は定格電圧12V以上に上昇することがある。このため、バッテリー1の出力電圧V0の最大値は、16V程度に見積もられている。
【0015】
マイクロコンピュータMは、車両が備える各種センサ(図略)の出力に基づいて、車両の衝突を検出した場合に、セーフィングFET制御回路6に点火命令を出力する装置である。また、セーフィングFET制御回路6への点火命令と同時に、各チャネル(11〜13)が備えるハイサイドFET制御回路(111や121)、およびローサイドFET制御回路(114や124)にも点火命令を出力する。マイクロコンピュータMの出力端子は、セーフィングFET制御回路6などの各制御回路が備えるマイクロコンピュータM用の入力端子と接続されている。なお、本明細書中では各部の接続関係を明らかにするため、各部が備える入力端子および出力端子を、その接続先に応じて区別して記載するが、各部の通信は公知のSPI(Serial Peripheral Interface)通信で実現すれば良い。また、
図1において、マイクロコンピュータMと、各ハイサイドFET制御回路(111,121)および各ローサイドFET制御回路(114,124)との信号線は、図の簡略化のため省略している。なお、このマイクロコンピュータMは、衝突検出時にエアバッグ装置100を駆動させるための点火命令を出力する機能があればよく、その他の回路を用いてマイクロコンピュータMの機能を実現してもよい。また、本実施形態におけるマイクロコンピュータMは、より詳細には、公知のマイクロコンピュータと、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とを組み合わせて実現する。
【0016】
セーフィングFET5は、ダイオード3を介して昇圧回路2と接続され、各チャネル11〜13に供給される電圧を制御するスイッチング素子である。セーフィングFET5のドレインは、ダイオード3に接続されている。セーフィングFET5のソースは各チャネル11〜13が備えるハイサイドFET(112や122)のドレインに接続されるほか、セーフィングFET制御回路6が備えるフィードバック用入力端子にも接続されている。セーフィングFET5のゲートは、セーフィングFET制御回路6の出力端子に接続されている。本実施形態ではセーフィングFET5としてNチャネルMOS−FETを用いるが、もちろん、その他の公知のスイッチング素子であってもよい。このセーフィングFET5が請求項に記載のセーフィングスイッチング素子に相当する。
【0017】
セーフィングFET制御回路6は、マイクロコンピュータMからの点火命令が入力されると、セーフィングFET5の出力電圧(ソース電圧)が、後述する目標電圧設定部7で設定される目標電圧Vsとなるように、セーフィングFET5を駆動させる回路である。セーフィングFET制御回路6は、マイクロコンピュータMが備える出力端子と接続する入力端子、セーフィングFET5のソースと接続するフィードバック用入力端子、および目標電圧設定部7の出力端子と接続する目標電圧設定部7用の入力端子を備えている。また、セーフィングFET制御回路6の出力端子は、セーフィングFET5のゲートと接続している。
【0018】
セーフィングFET制御回路6は、フィードバック用入力端子から取得するソース電圧に基づいて、ソース電圧が目標電圧Vsに等しくなるようにセーフィングFET5を制御する構成とすればよい。このセーフィングFET制御回路6が請求項に記載のセーフィングSW制御回路に相当する。
【0019】
ハイサイドFET112は、スクイブ113に接続され、スクイブ113に流れる電流を制御するためのスイッチング素子である。ハイサイドFET112のドレインは、セーフィングFET5のソースと接続されており、セーフィングFET5のソース電圧が印加される。また、ハイサイドFET112のソースはスクイブ113の一端(113a)と、ゲートはハイサイドFET制御回路111の出力端子と、それぞれ接続している。このハイサイドFET112が請求項に記載のハイサイドスイッチング素子に相当する。
【0020】
ハイサイドFET制御回路111は、マイクロコンピュータMからの点火命令が入力された場合に、スクイブ113に流れる電流が所定の電流(点火電流Isq)となるようにハイサイドFET112を駆動するための回路である。点火電流Isqの大きさは、要求される時間内にエアバッグ装置100が作動するように適宜設計されればよく、本実施形態においては1.2Aとする。ハイサイドFET制御回路111の入力端子はマイクロコンピュータMの出力端子に、ハイサイドFET制御回路111の出力端子はハイサイドFET112のゲートに、それぞれ接続されている。このハイサイドFET制御回路111が請求項に記載のハイサイドSW制御回路に相当する。
【0021】
ローサイドFET115は、スクイブ113に接続され、スクイブ113を接地するためのスイッチング素子である。ローサイドFET115のドレインはスクイブ113の他端(113b)に、ソースは接地に、それぞれ接続されている。また、ゲートはローサイドFET制御回路114の出力端子に接続されている。
【0022】
ローサイドFET制御回路114は、マイクロコンピュータMからの点火命令が入力された場合に、ローサイドFET115を駆動するための回路である。ローサイドFET制御回路114の入力端子はマイクロコンピュータMに、出力端子はローサイドFET115のゲートにそれぞれ接続されている。
【0023】
スクイブ113は、点火電流Isqが所定の時間(たとえば2ミリ秒)流れることで点火し、エアバッグ(図略)を展開させるための素子である。スクイブ113の一端113aはハイサイドFET112のソースに、他端113bはローサイドFET115のドレインにそれぞれ接続されている。さらに、スクイブ113の端子113aおよび113bは、後述する端子電圧モニタ部9が備える複数の入力端子にもそれぞれ接続されている。
【0024】
以上では、チャネル11の構成について説明したが、その他のチャネル12、13の構成も同様であるため、個々の説明は省略する。また、以下の説明においても便宜上、エアバッグ装置100が備える複数のチャネルについて、チャネル11を例にとって説明する。
【0025】
端子電圧モニタ部9は、各スクイブの端子電圧を検出するための機能であって、
図2に示すように複数の入力端子を備えている。各チャネルが備えるスクイブの両端(たとえば113aおよび113b)の端子電圧は、端子電圧モニタ部9が備える入力端子にそれぞれ入力される。端子電圧モニタ部9が備える入力端子の数は、1つのチャネルにおいて2つ(スクイブの両端用)必要となるため、エアバッグ装置100がチャネルをn個備える場合には、2×n個となる。この端子電圧モニタ部9が請求項に記載の端子電圧取得部に相当する。なお、本実施形態では、スクイブ113の両側の端子(113a、113b)の電圧を検出する構成としているが、他の実施形態として、スクイブ113の備える端子のうちの何れか一方の電圧を検出する構成としてもよい。
【0026】
端子電圧モニタ部9に入力された各端子電圧は、最大値選択回路91に入力される。この最大値選択回路91は、入力されている端子電圧のうち最も大きい電圧を出力するものであって、公知のアナログ回路(たとえば特開2006−59750)を用いて実現すればよい。端子電圧モニタ部9の出力端子は、目標電圧設定部7が備える端子電圧モニタ部9用の入力端子に接続しており、入力されている端子電圧のうち最も大きい電圧(最大端子電圧)Vsqが、目標電圧設定部7に出力される。この最大値選択回路91が請求項に記載の最大電圧選択部に相当する。
【0027】
なお、本実施形態では便宜上、エアバッグ装置100が備える複数のチャネルを、ひとつのIC内で実現するものとするが、実際のエアバッグ装置100には多数のチャネルが必要となるため、複数のICで分担して実現されることが考えられる。
【0028】
そこで、端子電圧モニタ部9に拡張用入力端子を備えさせ、他のICに備えられているチャネルのスクイブの端子電圧も取得できるようにしても良い。その場合、何れか1つのIC(これを代表ICとする)に端子電圧モニタ部9を備えさせ、他のICの端子電圧は、代表ICが備える端子電圧モニタ部9の拡張用入力端子に入力する。これによって、他のICに端子電圧モニタ部9を備えさせるためのコストを削減することができる。
【0029】
基準電源8の負極端子は車両のボディに接続され、正極端子は目標電圧設定部7が備える基準電源8用の入力端子に接続されている。基準電源8の電圧Vref(請求項に記載のデフォルト電圧)は、バッテリー1の出力電圧の最大値(16V)よりも小さい値であって、かつ、スクイブ113に点火電流Isqを流すために必要な値となっている。本実施形態では次に示す式1にもとづいて決定される。
【0030】
(式1) Vref=Isq×(Rsq+Rfet×2+Rh)
Isqは上述したように所定時間内にスクイブを点火するために必要な電流の大きさであって、1.2Aである。Rsqは、スクイブ113自体の抵抗値であり、たとえば4Ωとする。Rfetは、ハイサイドFET112およびローサイドFET115などのスイッチング素子が有する抵抗値であって、一例として1つあたり2Ωとする。点火電流Isqがチャネル11を流れる経路において、ハイサイドFET112、スクイブ113、およびローサイドFET115は直列に接続しているため、合成抵抗の値は足し算で概算することできる。なお、Rhは、それぞれの素子を接続するハーネスなどが備える抵抗であって、たとえば1Ωとする。これらの値を式1に代入すると、Vref≒11Vとなる。よって、本実施形態では、基準電源8の電圧Vrefを11Vとする。
【0031】
目標電圧設定部7は、セーフィングFET制御回路6がセーフィングFET5の出力電圧(=ソース電圧)を制御する際に目標とする電圧(すなわち目標電圧Vs)を設定する。目標電圧設定部7が備える基準電源8用の入力端子は、基準電源8の正極端子と接続しており、電圧Vrefが入力されている。目標電圧設定部7が備える端子電圧モニタ部9用の入力端子は、端子電圧モニタ部9の出力端子と接続しており、端子電圧モニタ部9で検出した端子電圧のうちの最大値である最大端子電圧Vsqが入力されている。
【0032】
目標電圧設定部7の出力端子は、セーフィングFET制御回路6の目標電圧設定部7用の入力端子に接続されている。目標電圧設定部7は、2つの入力に対して値の大きい方を選択して出力する回路構成となっており、たとえば公知の最大値選択回路で実現すれば良い。すなわち、目標電圧設定部7は、入力されているデフォルト電圧Vrefと最大端子電圧Vsqのうち大きい方の値をセーフィングFET制御回路6に目標電圧Vsとして出力する。
【0033】
ここで、目標電圧設定部7の動作について
図3を用いて説明する。目標電圧設定部7は、セーフィングFET制御回路6の動作にかかわらず、イグニッションスイッチ(図示略)がオンとなっている間、
図3のフローを常時実施している。ステップS10は、バッテリーショートなどによってスクイブ113の端子113aや113bに接続する配線上にデフォルト電圧Vref以上の電圧が印加されていない状態(正常時)において、目標電圧Vsを設定するステップを表している。ステップS10で、目標電圧Vsをデフォルト電圧Vrefに設定する。そして、ステップS11において目標電圧設定部7は基準電源8より入力されているデフォルト電圧Vref(=Vs)と、端子電圧モニタ部9より入力されている最大端子電圧Vsqとを比較する。VrefのほうがVsqよりも大きい場合はステップS10がYESとなってステップS11に戻り、目標電圧Vs=Vrefの状態を維持する。一方、VsqのほうがVrefよりも大きい場合はステップS11がNOとなってステップS12に進む。
【0034】
ステップS12では、目標電圧Vsを最大端子電圧Vsqに設定してセーフィングFET制御回路6に出力する。そして、ステップS13では、最大端子電圧Vsq(=Vs)と、デフォルト電圧Vrefとを比較する。VsqがVrefより大きい間はステップS13がYESとなって、ステップS12に戻って目標電圧Vsを最大端子電圧Vsqと一致するように更新する。一方、最大端子電圧Vsqが下がっていき、Vrefより小さくなるとステップS13がNOとなって、ステップS10に戻る。
【0035】
したがって、正常時においては、デフォルト電圧Vrefが目標電圧Vsとなる。また、最大端子電圧Vsqがデフォルト電圧Vrefより大きい間は、ステップS13がYESとなって、ステップS12〜S13を繰り返す。すなわち、Vsqの変化が逐次目標電圧設定部7の入力電圧に反映されるため、目標電圧設定部7より出力される目標電圧Vsも、たとえば
図4に示すように線形的に変化する。
図4の点線はVrefを、一点鎖線はVsqを示しており、太線が目標電圧設定部7より出力される目標電圧Vsを示している。たとえば時刻T1まではVref>Vsqであるため、目標電圧VsとしてVrefが出力される。T1においてVrefとVsqが同じ値になった後、T1からT2の間、目標電圧VsはVsqに追従するように設定される。また、T2以降はVref>Vsqとなるため、再び目標電圧VsはVrefに設定される。
【0036】
以上で述べた構成において、次に、本実施形態におけるエアバッグ装置100の具体的な動作について説明する。
図1において、イグニッションスイッチがオンすると、バッテリー1の出力電圧V0が、昇圧回路2で昇圧され、エアバッグ装置100に供給される。また、車両に備えられている各種センサ(図略)、およびマイクロコンピュータMは動作を開始する。また、目標電圧設定部7は、上述したように、端子電圧モニタ部9より取得するVsqとデフォルト電圧Vrefを逐次比較し、大きい方の値を目標電圧VsとしてセーフィングFET制御回路6に入力している。
【0037】
その後、車両が衝突すると、マイクロコンピュータMは各種センサの出力に基づいて衝突を検出し、各スクイブを点火させるための点火命令を出力する。マイクロコンピュータMから点火命令が出力されると、セーフィングFET制御回路6は、セーフィングFET5のソース電圧が、目標電圧VsになるようにセーフィングFET5を駆動させる。また、ハイサイドFET制御回路111およびローサイドFET制御回路114は、スクイブ113に流れる電流が点火電流1.2Aとなるように、ハイサイドFET112およびローサイドFET115を制御する。これにより、スクイブ113に1.2Aの電流が流れて点火し、エアバッグが展開される。もちろん、その他のチャネルも同様に動作する。
【0038】
以上のエアバッグを展開させる処理を実施している過程において、いずれのスクイブの端子にもデフォルト電圧Vref以上の電圧が印加されていない場合は、目標電圧VsがVrefとなって、各チャネル11〜13のハイサイドFETにはVrefが供給されている。一方、いずれかのスクイブの端子にデフォルト電圧Vref以上の電圧が印加されている場合は、目標電圧VsがVsqとなって、各チャネル11〜13のハイサイドFETにはVsqが供給される。
【0039】
ここで、本発明の効果を説明する前に、従来の構成における課題について、本実施形態の回路
図1を用いて説明する。たとえば、チャネル11のスクイブライン(ハイサイドFET112のソースからローサイドFET115のドレインまでの経路)においてバッテリーショートしている場合、ハイサイドFET112のソース側にはバッテリー1の出力電圧V0が印加される。
【0040】
このバッテリーショート時において、もし目標電圧Vsがバッテリー1の出力電圧V0よりも低く設定されている場合に、ハイサイドFET112がオンになると、ソース側の電位がドレイン側よりも高いため、ハイサイドFET112を電流が逆流してしまう。このバッテリー1を供給源とする逆流電流は、他の回路(チャネル12など)に流入する。このとき、チャネル11のハイサイドFET112に電流が集中し、ハイサイドFET112を破壊する恐れがある。
【0041】
従来の構成においては、以上の逆流を防止するために、目標電圧Vsを常にバッテリー1の最大値16Vより大きい値となるように設定していた。ところで、一般的にFETなどのスイッチング素子は、想定される印加電圧が大きいほど、その印加電圧に対応するため、素子のサイズは大きくなってしまう。すなわち、従来の構成において、各チャネルが備えるハイサイドFET112は、バッテリー1の最大値16Vより大きい値に対応したサイズとなっている。
【0042】
本実施形態によれば、バッテリーショートなどによってスクイブの端子に、デフォルト電圧Vrefよりも大きい電圧が印加されている場合には、端子電圧取得部9でその電圧Vsqを取得し、目標電圧がVsqとなるように設定される。したがって、ハイサイドFETに逆向きの電圧が印加されることはなく、電流が逆流する可能性を低減することができる。
【0043】
また、正常時の目標電圧は、デフォルト電圧Vref、すなわち、バッテリーの出力電圧の最大値よりも低い値に設定される。各チャネル(点火回路)が備えるハイサイドFETは、このデフォルト電圧が許容出来ればよく、バッテリーの出力電圧の最大値よりも高い目標電圧を許容できなくてもよい。従って、ハイサイドFETは、従来技術における目標電圧よりも低い電圧を許容出来ればよいため、ハイサイドFETのサイズを小さくすることができる。このハイサイドFETの小型化に伴って、点火回路も小型化することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、最大端子電圧Vsqがデフォルト電圧Vrefを超えた場合(S11がNOとなる場合であり、以降では単にバッテリーショート時とする)の目標電圧Vsを、最大端子電圧Vsqと等しくなるように設定したがこれに限らない。一般的に、FETの逆流方向には、寄生ダイオードによる電圧降下が存在する。従って、ハイサイドFETの寄生ダイオードによる電圧降下(いわゆるダイオードドロップ)分を考慮した値に、バッテリーショート時の目標電圧Vsを設定してもよい(変形例)。たとえば、バッテリーショート時の目標電圧Vsは、次の式2で表される条件を満たす範囲において適宜設定されればよい。
【0045】
(式2) Vs>Vsq−Vf
ここでのVsqはバッテリーショート時を想定しているため、その時点でのバッテリーの出力電圧と一致する。また、Vfは、ハイサイドFETの寄生ダイオードによる電圧降下分を表している。
【0046】
また、他の実施形態として、バッテリーショート時の目標電圧Vsを、Vsqに所定の裕度(たとえば1V)を追加した値となるよう設定する構成としてもよい。しかしながら、裕度を加えた分だけ、ハイサイドFET112には、より大きな電圧が印加されることとなる。想定される印加電圧より大きな電圧がFETに印加される場合、その電圧が大きいほど、FETには負担がかかって発熱する。従って、バッテリーショート時の目標電圧Vsを、ハイサイドFETでの逆流を防止出来る範囲において、より低い値に設定することで、ハイサイドFETにかける負担を低減することができる。
【0047】
また、デフォルト電圧Vrefを正常時におけるハイサイドFETへの印加電圧とし、このデフォルト電圧を許容出来るように各FET(112)の性能を決定する。このため、目標電圧Vsが異常電圧(すなわち端子電圧Vsq)となっているときに、点火命令が入力されて各FET(5、112、115)がオンとなると、各FET(112)には許容できる電圧(許容電圧)以上の電圧Vsqが印加される場合がある。このとき、Vsqの大きさによっては、FETが発熱してサーマルシャットダウンが働く可能性がある。しかしながら、本実施形態のように目標電圧Vsを線形的にVsqに追従するように設定する構成とすることで、許容電圧以上の電圧が印加された場合でも点火電流を所定時間流してエアバッグ装置100を動作させる可能性を高めることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、Vrefを11Vとしたが、たとえば12Vなど、バッテリー1の出力電圧V0の最大値よりも小さい範囲において、その他の値に適宜設定されても良い。ただし、本実施形態のように、スクイブを発火させるに要する点火電流と、点火電流が流れる経路上の抵抗とから求まる電圧を、デフォルト電圧Vrefに設定することで、ハイサイドFETのソースに印加される電圧の想定値を限界まで低減することができる。すなわち、印加電圧の想定値をより低減することで、点火回路が備えるハイサイドFETのサイズをより縮小することができ、回路全体をさらに縮小することができる。一例として、印加電圧の想定値を従来の16V以上から11Vに下げることで、回路全体のサイズは50%ほど縮小することができる。
【0049】
なお、FETなどのスイッチング素子は、そのサイズが小さくなるほど、スイッチング素子自身が備える抵抗値は増加する傾向がある。従って、デフォルト電圧Vref(すなわち正常時の印加電圧)を下げることでスイッチング素子をダウンサイジングするにつれて、デフォルト電圧Vrefを算出する上で用いる抵抗値Rfetは増加する。これにより、式1から算出するデフォルト電圧Vrefの最小値も上昇する。このため、スイッチング素子のサイズは、ある値に収束することが考えられる。本実施形態は、これらのトレードオフを鑑みて収束する値をデフォルト電圧Vrefとして採用し、点火回路のサイズを縮小するものである。
【0050】
また、本実施形態では、端子電圧モニタ部9に入力された各端子電圧のうち最大のもの(最大端子電圧Vsq)を最大値選択回路91によって選択し、目標電圧設定部7には、デフォルト電圧Vrefと、最大端子電圧Vsqとを入力する構成としたが、これに限らない。例えば
図5に示すように、ひとつの最大値選択回路71に、エアバッグ装置100が備える各スクイブの端子電圧と、デフォルト電圧Vrefを入力する構成としてもよい。この
図5に示す例の場合、目標設定部7が端子電圧モニタ部9を兼ねている。
【0051】
これによれば、正常時には、基準電位VrefがセーフィングFET制御回路に入力される。また、もし端子電圧の中に基準電位Vref以上となっているものがあれば、その端子電圧がセーフィングFET制御回路に入力される。従って、一つの最大値選択回路によって目標電圧設定部7と端子電圧モニタ部9とを実現でき、エアバッグ装置100が備える最大値選択回路の数を削減することができる。