特許第5942945号(P5942945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5942945電動パーキングブレーキ用駆動装置および電動パーキングブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942945
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】電動パーキングブレーキ用駆動装置および電動パーキングブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20160616BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20160616BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20160616BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20160616BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20160616BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20160616BHJP
   F16D 125/48 20120101ALN20160616BHJP
   F16D 125/50 20120101ALN20160616BHJP
【FI】
   B60T13/74 E
   F16H1/28
   F16H1/06
   F16D65/16
   H02K7/116
   F16D121:24
   F16D125:48
   F16D125:50
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-175119(P2013-175119)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44424(P2015-44424A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 優一
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−308696(JP,A)
【文献】 特開2012−34532(JP,A)
【文献】 特開2012−229741(JP,A)
【文献】 特開2008−29175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00−13/74
F16D 49/00−71/04
F16H 1/06
F16H 1/28
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動部材の回転運動を直進運動に変換して移動部材に伝達し、前記移動部材によって付勢されたブレーキパッドが、車輪とともに回転するディスクを押圧することにより前記車輪に制動力を発生させるパーキングブレーキアクチュエータを駆動するための電動パーキングブレーキ用駆動装置であって、
第1ピースと第2ピースとが互いに接合して形成されたギヤボデーと、
前記第1ピースの内周部に固定される取付部材と、
該取付部材と係合または一体化されて、前記ギヤボデー内において所定の方向に位置決めされる電動モータと、
前記第1ピースの内周面と前記電動モータとの間に介装され、前記電動モータを前記取付部材に向けて付勢する押圧部材と、
前記ギヤボデー内に収容され、前記電動モータの駆動力を前記回動部材に伝達する減速機構と、
を備えた電動パーキングブレーキ用駆動装置。
【請求項2】
前記減速機構は、
前記電動モータの出力軸に固着された駆動ギヤと、
前記取付部材と係合して前記所定の方向に位置決めされるとともに、前記ギヤボデーに取り付けられた第1ギヤ軸と、
該第1ギヤ軸上に形成され、前記駆動ギヤよりも多数の歯数を有し、前記駆動ギヤと噛合するとともに、前記回動部材に連結されることにより、前記電動モータの回転を減速して前記回動部材に伝達する第1従動ギヤと、
を含む請求項1記載の電動パーキングブレーキ用駆動装置。
【請求項3】
前記電動モータはモータハウジングを有し、該モータハウジングの回転軸方向の一端面からは、嵌合部が突出するとともに、該嵌合部の突端面からは前記出力軸が軸方向に突出しており、
前記取付部材は、前記モータハウジングの前記一端面と対向するように配置されるとともに、位置決め孔を有しており、該位置決め孔が前記嵌合部の外周面と嵌合することにより、前記電動モータは前記取付部材に対し半径方向に位置決めされ、
前記押圧部材は、前記モータハウジングの他端面を、前記取付部材に向けて付勢することにより、前記一端面を前記取付部材に当接させている請求項2記載の電動パーキングブレーキ用駆動装置。
【請求項4】
前記モータハウジングの前記他端面からは、弾性体保持部が突出し、
前記押圧部材は、
ゴム材料により中央部に保持孔を備えた円板状に形成され、前記保持孔に前記弾性体保持部が嵌合するように、前記第1ピースの内周面と前記他端面との間に配置されている請求項3記載の電動パーキングブレーキ用駆動装置。
【請求項5】
前記減速機構は、
前記第1ギヤ軸上に設けられ、前記第1従動ギヤと一体に回転する伝達ギヤと、
前記ギヤボデーに取り付けられた第2ギヤ軸と、
該第2ギヤ軸上に形成され、前記伝達ギヤよりも多数の歯数を有するとともに、前記伝達ギヤと噛合する第2従動ギヤと、
前記第2ギヤ軸上に設けられ、前記第2従動ギヤと一体に回転するサンギヤと、
前記サンギヤと噛合し、前記サンギヤの回転によって前記サンギヤの外周を公転する複数のプラネタリギヤと、
前記プラネタリギヤの周囲に配置され、内周面において前記プラネタリギヤと噛合するとともに、前記ギヤボデーと係合することによって回転不能なリングギヤと、
複数の前記プラネタリギヤ同士を接続するとともに前記回動部材に連結され、前記プラネタリギヤの公転によって回転され、前記サンギヤの回転を減速して前記回動部材に出力するキャリヤ部材と、
を有する請求項2乃至4のうちのいずれか一項に記載の電動パーキングブレーキ用駆動装置。
【請求項6】
車体に取り付けられたブレーキハウジングと、
前記ブレーキハウジングに対し、軸方向に移動可能かつ回転不能に取り付けられた移動部材と、
車輪とともに回転するディスクと前記移動部材との間に介装されたブレーキパッドと、
第1ピースと第2ピースとが互いに接合して形成され、前記ブレーキハウジングに取り付けられたギヤボデーと、
前記ギヤボデー内に取り付けられた電動モータと、
前記ギヤボデー内に収容され、前記電動モータの駆動力を伝達する減速機構と、
前記移動部材と噛合しており、前記減速機構を介して前記電動モータによって駆動されることにより前記移動部材を軸方向に移動させ、前記移動部材を介して前記ブレーキパッドを前記ディスクに向けて付勢する回動部材と、
を備えた電動パーキングブレーキ装置であって、
前記第1ピースの内周部には、取付部材が固定され、
前記電動モータは、前記取付部材と係合または一体化されて、前記ギヤボデー内において所定の方向に位置決めされ、
前記第1ピースの内周面と前記電動モータとの間には押圧部材が介装され、該押圧部材は、前記電動モータを前記取付部材に向けて付勢する電動パーキングブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駐車時に電動モータにより駆動して、車輪に制動力を付与する電動パーキングブレーキ用駆動装置および電動パーキングブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に取り付けられ、電動モータを作動させることにより車輪に制動力を付与する電動ブレーキ装置に関する従来技術があった(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された電動ブレーキ装置は、電動モータの出力シャフトに固着された小径プーリと、ハウジングに対して回転可能に設けられ、小径プーリとの間にベルトが架けられた大径プーリとを含んでいる。また、大径プーリには同軸上に2段の遊星歯車が連結され、大径プーリとともにギヤ機構が形成されている。
これによって、電動モータの駆動力は、ベルトを含んだ伝達機構と複数段の遊星歯車にて減速され、直線方向の押圧力に変換された後、車輪ブレーキに伝達されて車輪に制動力を付与している。
【0003】
ところで、特許文献1に記載された電動ブレーキ装置は、電動モータの回転軸方向の一端部にブラケットを取り付け、当該ブラケットを介して電動モータをハウジングに取り付けている。そして、電動モータをハウジング内に取り付ける際、ブラケットとハウジングの内周面との間に弾性体を介在させるとともに、電動モータの他端部とハウジングとの間にも、同様に弾性体を介在させている。
これによって、特許文献1に開示された電動ブレーキ装置においては、ハウジングとその中に収容される部材寸法のバラツキを吸収できるとともに、車輪振動に起因して駆動装置に発生する衝撃を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2007/096098号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された電動ブレーキ装置のハウジングは、一対のボデーが互いに接合されて形成されている。通常、ボデー同士を接合するために締付ボルト等を使用すれば、締付代のためにハウジングが大型化するため、締付代を設ける必要のない溶着等によって接合される場合が多い。
しかしながら、上述した従来技術による電動ブレーキ装置において、溶着によって接合されたハウジングを使用した場合、2つのボデーにより電動モータを挟み込む構造であるため、電動モータの両端部に介装された弾性体の付勢力によって、双方のボデーが互いに分離する方向に荷重を受ける。各々のボデーに加えられた荷重は、ハウジングの溶着部に働いて、その接合力を低下させる虞がある。溶着部の接合力の低下は、ハウジング内の各部材のがたつき、それに起因するギヤ同士の噛み合い不良等を招き、電動ブレーキ装置の信頼性を低下させることになる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型で信頼性の高い電動パーキングブレーキ用駆動装置および電動パーキングブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る電動パーキングブレーキ用駆動装置の発明の構成は、回動部材の回転運動を直進運動に変換して移動部材に伝達し、移動部材によって付勢されたブレーキパッドが、車輪とともに回転するディスクを押圧することにより車輪に制動力を発生させるパーキングブレーキアクチュエータを駆動するための電動パーキングブレーキ用駆動装置であって、第1ピースと第2ピースとが互いに接合して形成されたギヤボデーと、第1ピースの内周部に固定される取付部材と、取付部材と係合または一体化されて、ギヤボデー内において所定の方向に位置決めされる電動モータと、第1ピースの内周面と電動モータとの間に介装され、電動モータを取付部材に向けて付勢する押圧部材と、ギヤボデー内に収容され、電動モータの駆動力を回動部材に伝達する減速機構と、を備えたことである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成は、請求項1の電動パーキングブレーキ用駆動装置において、減速機構は、電動モータの出力軸に固着された駆動ギヤと、取付部材と係合して所定の方向に位置決めされるとともに、ギヤボデーに取り付けられた第1ギヤ軸と、第1ギヤ軸上に形成され、駆動ギヤよりも多数の歯数を有し、駆動ギヤと噛合するとともに、回動部材に連結されることにより、電動モータの回転を減速して回動部材に伝達する第1従動ギヤと、を含むことである。
【0008】
請求項3に係る発明の構成は、請求項2の電動パーキングブレーキ用駆動装置において、電動モータはモータハウジングを有し、モータハウジングの回転軸方向の一端面からは、嵌合部が突出するとともに、嵌合部の突端面からは出力軸が軸方向に突出しており、取付部材は、モータハウジングの一端面と対向するように配置されるとともに、位置決め孔を有しており、位置決め孔が嵌合部の外周面と嵌合することにより、電動モータは取付部材に対し半径方向に位置決めされ、押圧部材は、モータハウジングの他端面を、取付部材に向けて付勢することにより、一端面を取付部材に当接させていることである。
【0009】
請求項4に係る発明の構成は、請求項3の電動パーキングブレーキ用駆動装置において、モータハウジングの他端面からは、弾性体保持部が突出し、押圧部材は、ゴム材料により中央部に保持孔を備えた円板状に形成され、保持孔に弾性体保持部が嵌合するように、第1ピースの内周面と他端面との間に配置されていることである。
【0010】
請求項5に係る発明の構成は、請求項2乃至4の電動パーキングブレーキ用駆動装置において、減速機構は、第1ギヤ軸上に設けられ、第1従動ギヤと一体に回転する伝達ギヤと、ギヤボデーに取り付けられた第2ギヤ軸と、第2ギヤ軸上に形成され、伝達ギヤよりも多数の歯数を有するとともに、伝達ギヤと噛合する第2従動ギヤと、第2ギヤ軸上に設けられ、第2従動ギヤと一体に回転するサンギヤと、サンギヤと噛合し、サンギヤの回転によってサンギヤの外周を公転する複数のプラネタリギヤと、プラネタリギヤの周囲に配置され、内周面においてプラネタリギヤと噛合するとともに、ギヤボデーと係合することによって回転不能なリングギヤと、複数のプラネタリギヤ同士を接続するとともに回動部材に連結され、プラネタリギヤの公転によって回転され、サンギヤの回転を減速して回動部材に出力するキャリヤ部材と、を有することである。
【0011】
請求項6に係る電動パーキングブレーキ装置の発明の構成は、車体に取り付けられたブレーキハウジングと、ブレーキハウジングに対し、軸方向に移動可能かつ回転不能に取り付けられた移動部材と、車輪とともに回転するディスクと移動部材との間に介装されたブレーキパッドと、第1ピースと第2ピースとが互いに接合して形成され、ブレーキハウジングに取り付けられたギヤボデーと、ギヤボデー内に取り付けられた電動モータと、ギヤボデー内に収容され、電動モータの駆動力を伝達する減速機構と、移動部材と噛合しており、減速機構を介して電動モータによって駆動されることにより移動部材を軸方向に移動させ、移動部材を介してブレーキパッドをディスクに向けて付勢する回動部材と、を備えた電動パーキングブレーキ装置であって、第1ピースの内周部には、取付部材が固定され、電動モータは、取付部材と係合または一体化されて、ギヤボデー内において所定の方向に位置決めされ、第1ピースの内周面と電動モータとの間には押圧部材が介装され、押圧部材は、電動モータを取付部材に向けて付勢することである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る電動パーキングブレーキ用駆動装置によれば、第1ピースの内周部に固定される取付部材と、取付部材と係合または一体化されて、ギヤボデー内において所定の方向に位置決めされる電動モータと、第1ピースの内周面と電動モータとの間に介装され、電動モータを取付部材に向けて付勢する押圧部材とを備えたことにより、電動モータをギヤボデーに対しがたつきなく固定することができる。
また、押圧部材による付勢力が、第1ピースの内周面と第1ピースに固定された取付部材との間において働くため、第1ピースと第2ピースとを分離させる荷重が発生せず、双方の接合部における接合力の低下を防ぐことができる。
【0013】
請求項2に係る電動パーキングブレーキ用駆動装置によれば、減速機構は、電動モータの出力軸に固着された駆動ギヤと、取付部材と係合して所定の方向に位置決めされるとともに、ギヤボデーに取り付けられた第1ギヤ軸と、第1ギヤ軸上に形成され、駆動ギヤよりも多数の歯数を有し、駆動ギヤと噛合するとともに、回動部材に連結され、電動モータの回転を減速して回動部材に伝達する第1従動ギヤとを含むことにより、電動モータと第1ギヤ軸とが、ともに取付部材上に位置決めされているため、電動モータの出力軸と第1ギヤ軸との間の寸法のばらつきが、取付部材の製造誤差のみに依存する。したがって、双方の間の寸法のばらつきを低減でき、減速機構の作動時の異音や伝達効率の低下を防止することができる。
また、電動モータの出力軸と第1ギヤ軸との間の寸法精度を向上できるため、減速機構の製造時における、駆動ギヤと第1従動ギヤとの間のバックラッシュ調整を不要にすることができる。
【0014】
請求項3に係る電動パーキングブレーキ用駆動装置によれば、取付部材は、モータハウジングの一端面と対向するように配置されるとともに、位置決め孔を有しており、位置決め孔が電動モータの出力軸が突出する嵌合部の外周面と嵌合して、電動モータは取付部材に対し半径方向に位置決めされることにより、取付部材上において、出力軸の第1ギヤ軸に対する位置精度をより向上させることができ、双方の間の寸法のばらつきをいっそう低減できる。
また、押圧部材は、モータハウジングの他端面を取付部材に向けて付勢して、モータハウジングの一端面を取付部材に当接させていることにより、電動モータをギヤボデー内にがたつきなく安定して取り付けることができる。
【0015】
請求項4に係る電動パーキングブレーキ用駆動装置によれば、モータハウジングの他端面からは、弾性体保持部が突出し、押圧部材は、ゴム材料により中央部に保持孔を備えた円板状に形成され、保持孔に弾性体保持部が嵌合するように、第1ピースの内周面と他端面との間に配置されていることにより、ギヤボデー内における押圧部材の位置ずれをなくし、電動モータを取付部材に向けて安定して付勢することができる。
【0016】
請求項5に係る電動パーキングブレーキ用駆動装置によれば、減速機構は、第1ギヤ軸上に設けられ、第1従動ギヤと一体に回転する伝達ギヤと、ギヤボデーに取り付けられた第2ギヤ軸と、第2ギヤ軸上に形成され、伝達ギヤよりも多数の歯数を有するとともに、伝達ギヤと噛合する第2従動ギヤと、第2ギヤ軸上に設けられ、第2従動ギヤと一体に回転するサンギヤと、サンギヤと噛合し、サンギヤの回転によってサンギヤの外周を公転する複数のプラネタリギヤと、プラネタリギヤの周囲に配置され、内周面においてプラネタリギヤと噛合するとともに、ギヤボデーと係合することによって回転不能なリングギヤと、複数のプラネタリギヤ同士を接続するとともに回動部材に連結され、プラネタリギヤの公転によって回転され、サンギヤの回転を減速して回動部材に出力するキャリヤ部材とを有することにより、電動モータの回転が2段のギヤ機構と遊星歯車機構とにより減速されるため、小型で減速効果の大きい電動パーキングブレーキ用駆動装置にすることができる。
【0017】
請求項6に係る電動パーキングブレーキ装置によれば、第1ピースの内周部には、取付部材が固定され、電動モータは、取付部材と係合または一体化されて、ギヤボデー内において所定の方向に位置決めされ、第1ピースの内周面と電動モータとの間には押圧部材が介装され、押圧部材は、電動モータを取付部材に向けて付勢することにより、電動モータをギヤボデーに対しがたつきなく固定することができる。
また、押圧部材による付勢力が、第1ピースの内周面と第1ピースに固定された取付部材との間において働くため、第1ピースと第2ピースとを分離させる荷重が発生せず、双方の接合部における接合力の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による電動パーキングブレーキ装置の車輪に取り付けた状態の外観斜視図
図2図1に示した電動パーキングブレーキ装置を、ディスクロータの回転軸方向にカットした状態を模式的に示した断面図
図3図2に示した電動パーキングブレーキ用駆動装置を、電動モータの出力シャフトの軸方向にカットした場合の断面図
図4】電動パーキングブレーキ用駆動装置のブラケットメンバ、電動モータおよびゴムディスクをブラケットメンバ側から見た場合の分解斜視図
図5図4に示した構成をゴムディスク側から見た場合の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図5に基づき、本発明の一実施形態による電動パーキングブレーキ装置Pについて説明する。本実施形態による電動パーキングブレーキ装置Pは、パーキングブレーキアクチュエータ1と電動パーキングブレーキ用駆動装置3とにより形成され、車両走行中に運転者がブレーキ操作部材を操作することによって、車輪にブレーキ力を付与するフットブレーキ用のブレーキ装置を兼ねている。尚、図2は、電動パーキングブレーキ装置Pの模式的な断面図であり、実際の断面形状を正確に表したものではない。
【0020】
本発明の構成外であるディスクロータ9(ディスクに該当する)は、その回転中心において車両外方へと突出したハット部91と、ハット部91の周囲に形成され、後述するように、第1ブレーキパッド22aおよび第2ブレーキパッド22bによって挟圧されるプレート部92とを有している。
図1に示すように、ハット部91の端面からは、複数のスタッドボルト93が突出している。ディスクロータ9は、これらのスタッドボルト93を用いて、車輪Wのディスクホイールに取り付けられており、これにより車輪Wと一体回転可能とされている。
【0021】
電動パーキングブレーキ装置Pのマウンティング11は、車両のナックルアームN(車体に該当する)に取り付けられて固定されている。マウンティング11には、第1ブレーキパッド22aおよび第2ブレーキパッド22bが保持されている(図1において、第2ブレーキパッド22bのみ示す)。第1ブレーキパッド22aは、ディスクロータ9と後述するピストン20との間に配置されている。
マウンティング11には、一対のスライドピン12を介して、ブレーキハウジング13がディスクロータ9の回転軸φ方向(以下、単に回転軸φ方向という)に移動可能に取り付けられている。ブレーキハウジング13は、ディスクロータ9のプレート部92を跨ぐように、その断面形状が略コの字状に形成されている(図1および図2示)。また、ブレーキハウジング13には、第2ブレーキパッド22bを押圧するための一対の爪部13aが形成されている。
図2に示すように、ブレーキハウジング13には、電動モータ34および減速機構Rを含んだ電動パーキングブレーキ用駆動装置3が取り付けられている。電動パーキングブレーキ用駆動装置3については後述する。
【0022】
ブレーキハウジング13の内部にはシリンダ部13bが形成されており、シリンダ部13b内に突出するように、スクリュー部材14(回動部材に該当する)が設けられている。回転軸φ方向に延びたスクリュー部材14は、ベアリング15を介してシリンダ部13bの底部13cに回転可能に取り付けられており、スクリュー部材14の外周面14aと底部13cとの間には、合成樹脂材料または合成ゴム材料にて形成されたシール部材16が介装されている。
シール部材16が回転軸φ方向に移動することを防止するために、シリンダ部13bの底部13cには、押えプレート17が配置されている。さらに、シリンダ部13bの内周面には、押えプレート17の抜け止めを行うスナップリング18が装着されている。
【0023】
シリンダ部13b内には、スクリュー部材14の半径方向外方に位置するように、ナット部材19が設けられている。ナット部材19は略円筒形状を呈しており、その内周面19aの軸方向端部には、雌ネジ部19bが形成されている。ナット部材19の雌ネジ部19bは、スクリュー部材14の外周面14aに形成された雄ネジ部14bと螺合している。また、ナット部材19の他側の端部19cにおいては、複数の係合部19dが外周面から半径方向外方に延びている。
【0024】
シリンダ部13bには、ピストン20が回転軸φ方向に移動可能に嵌合している。また、シリンダ部13bには、ピストン20の外周面20aと係合するようにピストンシール21が装着されている。ピストンシール21は、前述したシール部材16とともに、シリンダ部13b内を外部から液密的に遮断している。
ピストン20は一端が端部壁20bにより閉じられた略円筒状に形成され、端部壁20bによって第1ブレーキパッド22aと当接可能になっている。ピストン20の内周面20cには、前述したナット部材19が回転軸φ方向に相対移動可能に係合している。また、ピストン20の外周面20aには突部20dが形成され、シリンダ部13bには、スリット13dが回転軸φ方向に延びるように形成されている。ピストン20の突部20dはスリット13dと係合しており、これによって、ピストン20はシリンダ部13bに対して回転不能に形成されている。
【0025】
一方、ピストン20の内周面20cには、回転軸φ方向に延びた複数の摺動溝20eが形成されており、それぞれ前述したナット部材19の係合部19dが挿入されている。したがって、ナット部材19はピストン20に対して回転不能となるため、ピストン20を介してシリンダ部13bに対しても回転不能に形成される。尚、ピストン20とナット部材19とを包括した構成が、移動部材に該当する。
【0026】
スクリュー部材14は、前述した減速機構Rを介して電動モータ34によって回転可能に形成されている。車両の駐車時にスクリュー部材14を回転させると、ナット部材19は回転不能であるため、ピストン20内をディスクロータ9に向けて回転軸φ方向(図2における左方)に移動する。ナット部材19の端部19cはピストン20を押圧し、ピストン20を介して第1ブレーキパッド22aをディスクロータ9に向けて付勢する。
【0027】
一方、第1ブレーキパッド22aに発生する反力は、ピストン20、ナット部材19、スクリュー部材14および減速機構Rを介してブレーキハウジング13へと働き、ブレーキハウジング13をピストン20と反対方向(図2において右方)へと付勢する。これにより、ブレーキハウジング13が回転軸φ方向に移動し、爪部13aが第2ブレーキパッド22bをディスクロータ9に向けて付勢する。したがって、ディスクロータ9は第1ブレーキパッド22aおよび第2ブレーキパッド22bによって挟圧され、車輪Wに制動力が付与される。
【0028】
また、ディスクロータ9に対する制動力の解除時には、電動モータ34を逆回転させ、ナット部材19を図2において右方へと移動させ、ピストン20による第1ブレーキパッド22aへの押圧を停止する。これにより、第1ブレーキパッド22aに発生する反力も消滅するため、ブレーキハウジング13の爪部13aによる、第2ブレーキパッド22bへの押圧も解消し、車輪Wへの制動力が解除される。
【0029】
また、車両走行中に車両を減速させるため運転者がブレーキ操作を行うと、マスタシリンダ(図示せず)から吐出されたブレーキ液圧が、ブレーキ配管(図示せず)を介してシリンダ部13b内に供給される。シリンダ部13b内に供給されたブレーキ液圧は、ピストン20をナット部材19と切り離した状態で回転軸φ方向(図2における左方へ)に押圧し、第1ブレーキパッド22aをディスクロータ9に向けて付勢する。
上述したマウンティング11、スライドピン12、ブレーキハウジング13、第1ブレーキパッド22a、第2ブレーキパッド22b、スクリュー部材14、ナット部材19およびピストン20により、パーキングブレーキアクチュエータ1を構成している。
【0030】
次に、図3乃至図5に基づき、パーキングブレーキアクチュエータ1を駆動する電動パーキングブレーキ用駆動装置3(以下、駆動装置3という)について詳述する。尚、以下、図3における上方を駆動装置3の上方とし、図3における下方を駆動装置3の下方として説明する。
駆動装置3は、ギヤボデー31、電動モータ34、ブラケットメンバ35、ゴムディスク36、スクリュー37および減速機構Rにより形成されている。駆動装置3のギヤボデー31は、それぞれ合成樹脂材料にて一体的に形成されたロアボデー32(第1ピースに該当する)およびアッパボデー33(第2ピースに該当する)が、内部に所定容量の空間を有するように互いに接合することにより形成されている。ギヤボデー31は、前述したブレーキハウジング13に固定されている。
ロアボデー32の外周縁には、電動モータ34の回転軸ψ方向(図3の上下方向であってディスクロータ9の回転軸φと同方向であるが、以下、単に回転軸ψ方向という)に延びる囲繞壁32aが全周に渡って形成されている。一方、アッパボデー33の外周縁には、断面形状が略L字状の対向部33aが全周に形成されている。
【0031】
本実施形態においてロアボデー32とアッパボデー33とを接合する場合、最初にそれぞれの外周縁を対向させることにより、囲繞壁32aと対向部33aとを互いに当接させて双方の位置決めを行う。次に、囲繞壁32aと対向部33aとにより囲まれた塗布空間(図3においてFにて示す)に接着剤を充填する。その後、接着剤を固化させることによって、ロアボデー32とアッパボデー33の外周縁同士を全周に渡って接合する。接着剤により、ロアボデー32とアッパボデー33は、外部からの水等の浸入を防ぐように液密的に接合されている。
【0032】
図3乃至図5に示すように、電動モータ34のモータハウジング34aは略円筒形状を呈しており、上端面34a1(一端面に該当する)からは、シャフト突部34a2(嵌合部に該当する)が上方に突出している。シャフト突部34a2は、上端面34a1の中央部において円柱状に形成され、その突端面34a3からは、出力シャフト34b(出力軸に該当する)が突出している。
また、モータハウジング34aの上端面34a1上には、周縁部を切欠くように一対のモータスリット34a4が、円周上において互いに対向するように形成されている。さらに、上端面34a1からは、一対の係合片34a5が垂直に延びている(図4示)。
一方、モータハウジング34aの下端面34a6(他端面に該当する)からは、ディスクホルダ34a7(弾性体保持部に該当する)が下方に突出している(図5示)。ディスクホルダ34a7は、下端面34a6の中央部において円柱状に突出している。
【0033】
図4および図5に示すように、ブラケットメンバ35(取付部材に該当する)は、合成樹脂材料にて略平板状に形成されている。ブラケットメンバ35の下端面35aの中央部には、内周面35b1が真円状の凹部35bが形成されている(図5示)。凹部35bの上方には、真円状の支持穴35c(位置決め孔に該当する)が形成され、支持穴35cは、ブラケットメンバ35の上端面35dに開口している。支持穴35cの内径寸法は、上述した電動モータ34のシャフト突部34a2と嵌合可能な大きさに設定されている。
また、凹部35bの天井面35eからは、一対の係合突部35fが下方に突出している。さらに、天井面35eからは、一対の挿入溝35gが上方に向けて貫通している(図5示)。
また、上端面35dの周囲には、上端面35dよりも一段低い複数の取付面35hが形成されている。取付面35hには、下端面35aまで貫通した3個のネジ孔35jが形成されている。さらに、取付面35hには、ピン保持穴35kが貫通している(図4および図5示)。
【0034】
ゴムディスク36(押圧部材に該当する)は、ブチルゴム、アクリルゴム、EPDMといった合成ゴム材料によって一体に形成されており、弾性力を有している。ゴムディスク36は、その中央部に真円状のモータ係合孔36a(保持孔に該当する)が厚み方向に貫通していることにより、略円板状に形成されている。モータ係合孔36aの内径寸法は、上述した電動モータ34のディスクホルダ34a7と嵌合可能な大きさに設定されている。モータ係合孔36aは、必ずしもゴムディスク36を貫通していなくてもよく、ゴムディスク36上において、袋状に形成されていてもよい。
ゴムディスク36の下面36bには、複数の当接部36cが円周上に互いに間隔を有して並ぶように形成されている。当接部36cは、ゴムディスク36が電動モータ34に付与する押圧力特性を安定させるために形成されており、下面36bから下方に向けて一段突出している(図5示)。
【0035】
図3に示すように、ブラケットメンバ35は、その下端面35aをロアボデー32の内周面32b(内周部に該当する)に当接させた状態で、ロアボデー32上に固定されている。ブラケットメンバ35は、各々のネジ孔35jに挿通させたスクリュー37(図3において1つのみ示す)を、ロアボデー32に螺合させることによりロアボデー32に固定される。
【0036】
電動モータ34は、ロアボデー32において深く掘り下げた形状に形成されたモータ格納部32c内に収容されており、電動モータ34の上端面34a1はブラケットメンバ35と対向するように配置されている。電動モータ34は、シャフト突部34a2を支持穴35cに嵌合させることにより、ギヤボデー31内において、回転軸ψに対する半径方向(図3における水平方向であって、所定の方向に該当する)に位置決めされる。この時、モータハウジング34aのモータスリット34a4は、ブラケットメンバ35の各々の係合突部35fと嵌合し、モータハウジング34aの係合片34a5は、ブラケットメンバ35の各々の挿入溝35gと係合することにより、それぞれ電動モータ34の回り止めの機能を果たしている。また、モータハウジング34aの外周面とブラケットメンバ35の内周面35b1との間には、僅かな隙間が形成されている(図3示)。
【0037】
一方、モータハウジング34aの下端面34a6とモータ格納部32cの底面32dとの間には、上述したゴムディスク36が介装されている。ゴムディスク36は、モータ係合孔36aにモータハウジング34aのディスクホルダ34a7が嵌合することにより、ディスクホルダ34a7とロアボデー32とにより挟持され、半径方向に位置決めされている(図3示)。
また、ゴムディスク36は、電動モータ34とロアボデー32とによって当接部36cが厚み方向に圧縮されて付勢力を発生しているため、電動モータ34の下端面34a6を、ブラケットメンバ35に向けて回転軸ψ方向(図3における上方)に押圧している。したがって、電動モータ34は、モータハウジング34aの上端面34a1が、ブラケットメンバ35の天井面35eに当接した状態でギヤボデー31に取り付けられ、モータハウジング34aのディスクホルダ34a7とロアボデー32の底面32dとの間には隙間が形成されている(図3示)。
図3に示したように、ロアボデー32の端部には、外部コネクタ(図示せず)を接続するための電源コネクタ部32eが形成されている。ロアボデー32内には、電源コネクタ部32eから電動モータ34へとつながる電力供給線(図示せず)がインサートされている。
【0038】
次に、本実施形態による減速機構Rについて説明する。減速機構Rは、ギヤボデー31内に収容され、電動モータ34の駆動力を減速してスクリュー部材14に伝達する。電動モータ34の出力シャフト34bには、外周面に斜歯38aを有するピニオンギヤ38(駆動ギヤに該当する)が圧入等により固着されている。
上述したブラケットメンバ35のピン保持穴35kには、枢支ピン39(第1ギヤ軸に該当する)が、圧入またはインサート成形により固定されている。枢支ピン39の下端部はロアボデー32のピン固定孔32fと嵌合し、上端部はアッパボデー33のピン保持穴33bに嵌合している。枢支ピン39の両端部は、ロアボデー32およびアッパボデー33に対して圧入またはインサート成形されていてもよい。
【0039】
枢支ピン39には、一対のブッシュ40a、40bを介して、ギヤメンバ41が回転可能に取り付けられている。ギヤメンバ41の上方には、半径方向に突出した第1鍔部41aが形成されている。第1鍔部41aにはインサート成形によって第1ホイルギヤ42(第1従動ギヤに該当する)が固着されている。後述するように、第1ホイルギヤ42は複数の部材を介して、スクリュー部材14と連結されている。
第1ホイルギヤ42は合成樹脂材料にて形成されたヘリカルギヤで、外周面には斜歯42aが設けられている。第1ホイルギヤ42は、前述したピニオンギヤ38の斜歯38aと噛合している。第1ホイルギヤ42はピニオンギヤ38よりも大径に形成され、第1ホイルギヤ42の斜歯42aの歯数は、ピニオンギヤ38の斜歯38aの歯数よりも多く形成されている。
ギヤメンバ41の下方には、外周面上にギヤ部41b(伝達ギヤに該当する)が一体に形成されている。ギヤ部41bは、ピニオンギヤ38と同様に斜歯によって形成されており、第1ホイルギヤ42と一体に回転する。
【0040】
また、アッパボデー33の上面33cには、アッパ軸受部材43aが取り付けられている。
また、ロアボデー32の外周壁32gおよびモータ壁部32hからは、軸受固定面32jが図3における水平方向に延在している。軸受固定面32jは、後述するギヤシャフト44の回転中心に向けて延び、プラネタリギヤ46と第2ホイルギヤ45との間を仕切っている。
軸受固定面32jは外形が真円状に形成され、その中心には支持孔32kが貫通するとともに、上下方向に延びたボス部32mが設けられている。ボス部32mには、ロア軸受部材43bが取り付けられている。アッパ軸受部材43aおよびロア軸受部材43bは、いずれも金属材料にて形成され、インサート成形または誘導加熱溶着等によりアッパボデー33あるいはロアボデー32に固定されている。
【0041】
ロア軸受部材43bには、金属材料製のギヤシャフト44(第2ギヤ軸に該当する)が回転可能に支持されている。ギヤシャフト44の上方には、半径方向に突出した第2鍔部44aが形成されている。第2鍔部44aには、インサート成形によって第2ホイルギヤ45(第2従動ギヤに該当する)が固着されている。ギヤシャフト44は、第2ホイルギヤ45を介して、アッパ軸受部材43aに回転可能に支持されている(図3示)。
第2ホイルギヤ45は、第1ホイルギヤ42と同様に合成樹脂材料にて形成されたヘリカルギヤで、外周面には斜歯45aが設けられている。第2ホイルギヤ45は、前述したギヤメンバ41のギヤ部41bと噛合している。第2ホイルギヤ45はギヤ部41bよりも大径に形成され、第2ホイルギヤ45の斜歯45aの歯数は、ギヤ部41bの歯数よりも多く形成されている。
【0042】
ギヤシャフト44の下端には、サンギヤ部44b(サンギヤに該当する)が一体に形成されている。サンギヤ部44bは、第2ホイルギヤ45と一体に回転する。
サンギヤ部44bの周囲には、サンギヤ部44bと噛合する複数のプラネタリギヤ46が配置されている。本実施形態においては、4個のプラネタリギヤ46が設けられている(図3において2個のみ示す)が、これに限られるものではない。各々のプラネタリギヤ46は金属材料により形成され、サンギヤ部44bの回転によってサンギヤ部44bの外周を公転する。
また、プラネタリギヤ46の周囲には、合成樹脂材料にて形成されたリングギヤ47が配置されている。円環状をしたリングギヤ47は、内周面においてプラネタリギヤ46のそれぞれと噛合するとともに、ロアボデー32と係合し回転不能に形成されている。
【0043】
前述したプラネタリギヤ46には、複数のプラネタリギヤ46同士を接続するようにキャリヤ部材48が係合している。キャリヤ部材48は合成樹脂材料にて形成され、その下端部には出力部材49が接続されている。出力部材49は金属材料にて形成され、上述したスクリュー部材14に接続されている。したがって、キャリヤ部材48は、出力部材49を介してスクリュー部材14に連結されている。
【0044】
上述したサンギヤ部44b、プラネタリギヤ46、リングギヤ47およびキャリヤ部材48によって遊星歯車機構YGが形成される。キャリヤ部材48は、プラネタリギヤ46の公転によって回転され、サンギヤ部44bの回転を減速してスクリュー部材14に出力することができる。
電動モータ34の駆動力は、最初に、ピニオンギヤ38と第1ホイルギヤ42との噛み合いによって減速(1段目の減速)される。その後、ギヤ部41bと第2ホイルギヤ45との噛み合いによって減速(2段目の減速)される。さらに遊星歯車機構YGによって減速(3段目の減速)された後、スクリュー部材14へと伝達される。
【0045】
本実施形態によれば、ロアボデー32の内周面32bに固定されるブラケットメンバ35と、ブラケットメンバ35と係合して、ギヤボデー31内において半径方向に位置決めされる電動モータ34と、ロアボデー32の底面32dと電動モータ34との間に介装され、電動モータ34をブラケットメンバ35に向けて、回転軸ψ方向に付勢するゴムディスク36とを備えたことにより、電動モータ34をギヤボデー31に対しがたつきなく固定することができる。
また、ゴムディスク36による付勢力が、ロアボデー32の底面32dとロアボデー32に固定されたブラケットメンバ35との間において働くため、ロアボデー32とアッパボデー33とを分離させる荷重が発生せず、双方の接合部における接合力の低下を防ぐことができる。
また、ブラケットメンバ35は、電動モータ34とは別体に形成されており、外周に取付部を有しない汎用の電動モータを使用可能であるため、低コストの駆動装置3にすることができる。
また、電動モータ34はゴムディスク36から押圧力を受けているため、ゴムディスク36によって車両走行時の振動が吸収され、電動モータ34へのダメージを低減することができる。
【0046】
また、減速機構Rは、電動モータ34の出力シャフト34bに固着されたピニオンギヤ38と、ブラケットメンバ35と係合して電動モータ34の半径方向に位置決めされるとともに、ギヤボデー31に取り付けられた枢支ピン39と、枢支ピン39上に形成され、ピニオンギヤ38よりも多数の歯数を有し、ピニオンギヤ38と噛合するとともに、スクリュー部材14に連結され、電動モータ34の回転を減速してスクリュー部材14に伝達する第1ホイルギヤ42とを含むことにより、電動モータ34と枢支ピン39とが、ともにブラケットメンバ35上に位置決めされているため、電動モータ34の出力シャフト34bと枢支ピン39との間の寸法のばらつきが、ブラケットメンバ35の製造誤差のみに依存する。したがって、双方の間の寸法のばらつきを低減でき、減速機構Rの作動時の異音や伝達効率の低下を防止することができる。
また、電動モータ34の出力シャフト34bと枢支ピン39との間の寸法精度を向上できるため、減速機構Rの製造時における、ピニオンギヤ38と第1ホイルギヤ42との間のバックラッシュ調整を不要にすることができる。
【0047】
また、ブラケットメンバ35は、モータハウジング34aの上端面34a1と対向するように配置されるとともに、支持穴35cを有しており、支持穴35cが電動モータ34の出力シャフト34bが突出するシャフト突部34a2の外周面と嵌合して、電動モータ34はブラケットメンバ35に対し半径方向に位置決めされることにより、ブラケットメンバ35上において、出力シャフト34bの枢支ピン39に対する位置精度をより向上させることができ、双方の間の寸法のばらつきをいっそう低減できる。
また、ゴムディスク36は、モータハウジング34aの下端面34a6をブラケットメンバ35に向けて付勢して、モータハウジング34aの上端面34a1をブラケットメンバ35に当接させていることにより、電動モータ34をギヤボデー31内にいっそう安定して取り付けることができる。
【0048】
また、モータハウジング34aの下端面34a6からは、ディスクホルダ34a7が突出し、ゴムディスク36は、ゴム材料により中央部にモータ係合孔36aを備えた円板状に形成され、モータ係合孔36aにディスクホルダ34a7が嵌合するように、ロアボデー32の底面32dと下端面34a6との間に配置されていることにより、ギヤボデー31内におけるゴムディスク36の位置ずれをなくし、電動モータ34をブラケットメンバ35に向けて安定して付勢することができる。
【0049】
また、減速機構Rは、枢支ピン39上に設けられ、第1ホイルギヤ42と一体に回転するギヤ部41bと、ギヤボデー31に取り付けられたギヤシャフト44と、ギヤシャフト44上に形成され、ギヤ部41bよりも多数の歯数を有するとともに、ギヤ部41bと噛合する第2ホイルギヤ45と、ギヤシャフト44上に設けられ、第2ホイルギヤ45と一体に回転するサンギヤ部44bと、サンギヤ部44bと噛合し、サンギヤ部44bの回転によってサンギヤ部44bの外周を公転する複数のプラネタリギヤ46と、プラネタリギヤ46の周囲に配置され、内周面においてプラネタリギヤ46と噛合するとともに、ギヤボデー31と係合することによって回転不能なリングギヤ47と、複数のプラネタリギヤ46同士を接続するとともにスクリュー部材14に連結され、プラネタリギヤ46の公転によって回転され、サンギヤ部44bの回転を減速してスクリュー部材14に出力するキャリヤ部材48とを有することにより、電動モータ34の回転が2段のギヤ機構と遊星歯車機構YGとにより減速されるため、小型で減速効果の大きい電動パーキングブレーキ用駆動装置3にすることができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
ブラケットメンバ35は、ロアボデー32に取り付ける以前に、モータハウジング34aに予め固定されていてもよいし、あるいはモータハウジング34aに一体化されていてもよい。
また、ロアボデー32またはアッパボデー33に固定された枢支ピン39に対し、ブラケットメンバ35のピン保持穴35kを嵌合させながら、ブラケットメンバ35をロアボデー32に取り付けてもよい。
また、枢支ピン39の代わりに、ギヤボデー31に対し軸受を介してシャフト軸を回転可能に取り付け、第1ホイルギヤ42およびギヤ部41bを当該シャフト軸に形成してもよい。
また、ゴムディスク36に代えて、金属材料にて形成された板バネまたは金属製の線材により形成されたコイルスプリングを使用してもよい。
また、本発明は、ディスクロータ9を、ブレーキパッド22a、22bを介してブレーキハウジング13の爪部13aとピストン20とで挟圧する浮動型のディスクブレーキのみではなく、ディスクロータ9の双方の側面を個別のピストンにて押圧する対向型のディスクブレーキにも適用可能である。
また、電動モータ34には、同期機、誘導機、直流機等のあらゆるモータが使用可能である。
【符号の説明】
【0051】
図面中、1はパーキングブレーキアクチュエータ、3は電動パーキングブレーキ用駆動装置、9はディスクロータ(ディスク)、13はブレーキハウジング、14はスクリュー部材(回動部材)、19はナット部材(移動部材)、20はピストン(移動部材)、22aは第1ブレーキパッド(ブレーキパッド)、22bは第2ブレーキパッド(ブレーキパッド)、31はギヤボデー、32はロアボデー(第1ピース)、32bは内周面(内周部)、32dは底面(内周面)、33はアッパボデー(第2ピース)、34は電動モータ、34aはモータハウジング、34a1は上端面(一端面)、34a2はシャフト突部(嵌合部)、34a3は突端面、34a6は下端面(他端面)、34a7はディスクホルダ(弾性体保持部)、34bは出力シャフト(出力軸)、35はブラケットメンバ(取付部材)、35cは支持穴(位置決め孔)、36はゴムディスク(押圧部材)、36aはモータ嵌合孔(保持孔)、38はピニオンギヤ(駆動ギヤ)、39は枢支ピン(第1ギヤ軸)、41bはギヤ部(伝達ギヤ)、42は第1ホイルギヤ(第1従動ギヤ)、44はギヤシャフト(第2ギヤ軸)、44bはサンギヤ部(サンギヤ)、45は第2ホイルギヤ(第2従動ギヤ)、46はプラネタリギヤ、47はリングギヤ、48はキャリヤ部材、Nはナックルアーム(車体)、Pは電動パーキングブレーキ装置、Rは減速機構、Wは車輪を示している。
図1
図2
図3
図4
図5