(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの内側層が1本よりも多いワイヤーを含み、前記外側層のワイヤーを、1本よりも多いワイヤーを含む各内側層のワイヤーと同じピッチを有し且つ同じ巻付け方向のらせんとして巻付ける、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
一方の前記外側層のワイヤーおよび他方の1本よりも多いワイヤーを含む各内側層のワイヤーを集成する各工程を、撚り合せによって実施する、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
前記外側層のワイヤーを撚り合せによって集成する前記工程の後に、撚り均衡化手段に通すことによる最終撚り均衡化工程が続く、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I. 本発明の詳細な説明
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す全てのパーセント(%)は、質量%である。
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、終点aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに至る値の範囲を意味する(即ち、厳格な終点aおよびbを含む)。
【0019】
従って、本発明の方法は、“現場ゴム引き”したタイプの、即ち、その実際の製造中に、ゴムまたはゴム組成物(“充填ゴム”として知られている)によって内側からゴム引きしている、1以上の内側層と1つの外側層を含む複数の同心ワイヤー層を有する多層金属コードの製造を意図し、該方法は、少なくとも、下記の工程:
・少なくとも1つの内側層を、上記ゴムまたは上記ゴム組成物で、少なくとも1つの押出ヘッドに通すことによってシーズする少なくとも1つの工程;
・上記外側層のワイヤーを、上記外側層に隣接する内側層の周りに集成して、そのようにして内側からゴム引きした多層コードを形成する集成工程;
を含み、そして、上前記ゴムが、溶融状態で押出された不飽和熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
【0020】
上記内側層(1つ以上)が複数のワイヤーを含む場合、本発明の方法は、上記内側層(1つ以上)のワイヤーを集成する事前の集成工程(SまたはZのどちらかの方向)を含むものと理解しなければならない。
従って、本発明の方法においては、いわゆる充填ゴムは、コード中に、コードを製造しながら、少なくとも1つの内側層、例えば、上記コードの最内層即ちコアまたはもう1つの内側層のいずれかを或いは上記コードが少なくとも2層の異なる内側層を含む場合の各内側層でさえもシーズすることによって現場導入する;上記シーズ処理自体は、既知の方法で、例えば、溶融状態の充填ゴムを給送する少なくとも1つ(即ち、1以上)の押出ヘッドに通すことによって実施する。
【0021】
下記のいずれかによる2つの実施可能な金属ワイヤーの集成方法が存在することを思い起されたい:
・ケーブル外装による:この場合、ワイヤーは、集成点の前後の同期回転のために、ワイヤー自体の軸の周りでの撚り合せを受けない;
・撚り合せによる:この場合、ワイヤーは、集合的撚り合せおよびワイヤー自体の軸の周りでの個々の撚り合せの双方を受け、それによってワイヤーの各々上およびコード自体上で撚り戻し(untwisting)トルクを生じさせる。
上記方法は双方とも応用可能であるが、好ましくは、上記集成工程の各々において撚り合せ工程を使用する。
【0022】
もう1つの好ましい実施態様によれば、少なくとも1つ(即ち、1つ以上)の内側層が複数のワイヤーを含む場合、一方の外側層および他方の1本よりも多いワイヤーを含む各内側層のワイヤーを集成する各工程は、撚り合せによって実施する。
もう1つの好ましい実施態様によれば、少なくとも1つ(即ち、1つ以上)の内側層が1本よりも多いワイヤーを含む場合、外側層のワイヤーを、1本よりも多いワイヤーを含む各内側層のワイヤーと同じピッチおよび同じ巻付け方向でらせん状に巻付けてコンパクトコードを取得する。
【0023】
上記または各押出ヘッドは、使用する上記TPEの特定の性質およびその熱特性に適合するように容易に調整可能な適切な温度に上げる。好ましくは、上記不飽和TPEの押出温度は、100℃と250℃の間、より好ましくは150℃と200℃の間の温度からなる。典型的には、押出ヘッドは、例えば回転シリンダーの形状を有するシーズ領域を構成し、その直径は、好ましくは0.15mmと1.2mmの間、より好ましくは0.20mmと1.0mmの間からなり、その長さは、好ましくは、1mmと10mmの間からなる。
【0024】
上記押出ヘッドによって給送する充填ゴム量は、最終(即ち、製造し現場ゴム引きしたまま)のコードのグラム当り5mgと40mgの間の量からなる好ましい範囲内に調整する。上記の最低値よりも少ないと、充填ゴムが上記コードの各々の間隙または毛管中に少なくとも部分的に存在することを担保するのがより困難であり、一方、上記最高値よりも多いと、上記コードは、コード周辺での充填ゴムの過度のあふれ出しのリスクを被る。これらの全ての理由により、充填ゴム含有量は、コードのグラム当り5mgと35mgの間、特に5mgと30mgの間の量、特に10〜25mgの範囲からなることが好ましい。
【0025】
溶融状態の上記不飽和熱可塑性エラストマーは、そのようにして、内側層(1つ以上)を、シーズヘッドによって、典型的に数メートル〜数十メートル/分の進行速度で、典型的には数cm
3/分〜数十cm
3/分の押出ポンプ流量にて被覆する。上記内側層(1つ以上)のワイヤーは、必要に応じて、有利には、押出ヘッドを通る前に、例えば、HF発生器または加熱トンネルに通すことによって予熱する。
【0026】
本発明に従う多層コードが2層コードであり、従って、単一の内側層を含む場合、シーズ処理は、勿論、そのコア単独で実施する。そのような場合、コアは、シーズした時点で、好ましくは5μmよりも大きい、典型的には5μmと30μmの間からなる最小厚の不飽和TPEによって被覆される。
【0027】
上記コードが数層(少なくとも2層)の内側層を含む場合、シーズ処理は、コア単独、もう1つの内側層または内側層毎のいずれかにおいて実施する。コアのみをシーズする場合、シーズした時点のコアは、好ましくは20μmよりも厚い、典型的には20μmと100μmの間からなる最小厚の不飽和TPEによって、他の1つ以上の内側層のこのまたはこれらの内側層を乗せた時点でのワイヤーを引続きコーティングし得るに十分な量で被覆される。もう1つの内側層または内側層毎をシーズする場合、外側層に隣接することを意味する最外内側層は、好ましくは5μmよりも大きい、典型的には5μmと30μmの間からなる最小厚の不飽和TPEによって被覆する。
【0028】
その後、外側層のワイヤーを、これらワイヤーに隣接する内側層の周りにケーブル外装するかまたは一緒に撚り合せ(S方向またはZ方向)して、そのように内側からゴム引きした多層コードを形成する。この最終集成においては、上記外側層のワイヤーは、溶融状態の充填ゴムに対し圧迫する結果となり、充填ゴム中に埋込まれた状態になる。充填ゴムは、これらの外側ワイヤーによって加えられた圧力下に移動するとき、上記外側層と上記外側層に隣接する内側層との間のこれらのワイヤーによる空で残った間隙または空洞の各々に浸透する自然な傾向を有する。
【0029】
好ましくは、本発明の方法の全ての工程を、製造するコードのタイプのいずれにおいても(円筒形層状コード同様にコンパクトコードも)、インラインで且つ連続して、全て高速度で実施する。上記方法は、50m/分を超える、好ましくは70m/分を超える、特に100m/分を超える速度(コードが生産ラインを流下する速度)で実施し得る。
【0030】
しかしながら、勿論、本発明のコードは、不連続で、例えば、好ましい3層状コードの場合、先ずは最初にコアストランド(C1+C2)をシーズし、充填ゴムを固化し、その後、このストランドを、第3の最終層(C3)を集成する最終操作の前に、スプールして貯蔵することによっても製造することが可能である;上記エラストマーシースの固化は、容易である;固化は、任意の適切な冷却手段によって、例えば、空冷または水冷によって、水冷の場合はその後乾燥操作によって実施し得る。
【0031】
この段階において、本発明に従うコードの製造は終了する。しかしながら、本発明の好ましい実施態様に従い、上記コードの各層を撚り合せによって集成する場合、撚り均衡化(twist balancing)工程を追加して、撚り均衡化した(または安定化させた)と称するコードを得ることが好ましい;“撚り均衡化”は、この場合、知られている通り、コード上に生じた残留撚り合せ回転の消去(または、跳ね返り(spring-back)の撚り戻し)を意味する。撚り均衡化用具は、撚り合せ技術における熟練者にとっては周知である;これらの用具は、例えば、修正機(straightener)および/または撚糸機および/または撚糸機・修正機(撚糸機の場合はプーリーまたは修正機の場合は小直径ロールからなり、これらのプーリーおよび/またはロールを通ってコードは進行する)からなる。
【0032】
好ましくは、この完成コードにおいては、コードの2本の隣接ワイヤー間の充填ゴムの厚さは、いずれの隣接ワイヤーであり得ても、1〜10μmで変動する。このコードは、例えばカレンダー加工用装置によって処理して、例えばタイヤカーカス補強材として或いはタイヤクラウン補強材として使用することのできる金属/ジエンゴム複合素材を製造する前の貯蔵のために、受入れスプールに巻取り得る。
【0033】
本発明の方法に従って得られた多層金属コードは、現場ゴム引きコードと称し得る、即ち、このコードは、その実際の製造中に、充填ゴムとして知られているゴムまたはゴム組成物によって内側からゴム引きされている。
換言すれば、製造したままの状態において、上記コードの“毛管”または“間隙”(これら2つの用語は、互換的であり、充填ゴムの不存在下に隣接のワイヤーによって形成された自由な空の空間を意味する)の大部分または好ましくは全部が、既に、上記間隙を上記コードの軸に沿って連続してまたは不連続に少なくとも部分的に充たす充填剤ゴムとして特定のゴムを含有している。製造したままのコードとして意味するものは、勿論、上記コードによって後で補強することを意図するタイヤのようなゴム製の半製品または最終物品のジエンゴム(例えば、天然ゴム)マトリックスとまだ接触させていないコードである。
【0034】
この特定のゴムは、単独でまたは必要に応じての添加剤と一緒に(即ち、この場合は、不飽和熱可塑性エラストマー組成物の形で)使用して上記充填ゴムを構成する不飽和熱可塑性エラストマーである。
【0035】
ここで、先ずは最初に、熱可塑性エラストマー(略して“TPE”)は、熱可塑性ブロックをベースとするブロックコポリマーの形の熱可塑性エラストマーであることを思い起されたい。熱可塑性ポリマーの構造とエラストマーの構造との間にある構造をどこかに有して、熱可塑性エラストマーは、知られている通り、可撓性エラストマー配列、例えば、不飽和TPEの場合のポリブタジエンまたはポリイソプレン配列或いは飽和TPEの場合のポリ(エチレン/ブチレン)配列によって連結されている硬質熱可塑性、特にポリスチレン配列から構成されている。
【0036】
このことが、知られている通り、上記TPEブロックコポリマーが、一般に、2つのガラス転移ピーク、即ち、上記TPEコポリマーのエラストマー配列に関連する第1のピーク(低い一般に負の温度)および上記TPEコポリマーの熱可塑性(例えばスチレンブロック)部分に関連する第2のピーク(TPSタイプの好ましいエラストマーにおける典型的には80℃よりも高い正の高い温度)の存在に特徴を有する理由である。
【0037】
これらのTPEは、多くの場合、1つの可撓性セグメントによって連結された2つの硬質セグメントを有するトリブロックエラストマーである。硬質および可撓性セグメントは、線状に、星型状にまたは枝分れ形に配列し得る。また、これらのTPEは、可撓性セグメントに連結した1つの硬質セグメントを有する2ブロックエラストマーでもあり得る。典型的には、これらのセグメントまたはブロックの各々は、少なくとも5個よりも多い、一般的には10個よりも多い基本単位(例えば、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマーの場合のスチレン単位とイソプレン単位)を有する。
【0038】
留意すべきは、本発明の方法において使用するTPEの1つの本質的特徴が不飽和であるということである。不飽和TPEは、定義によれば、また、周知のとおり、エチレン不飽和を有する、即ち、(共役または非共役)炭素‐炭素二重結合を含有するTPEを意味する;逆に、飽和であると称するTPEは、勿論、そのような二重結合を有していないTPEである。
【0039】
不飽和TPEの不飽和性は、不飽和TPEが、イオウによって(共)架橋性、(共)加硫性であって、不飽和TPEを、タイヤの補強を意図する金属素材におけるカレンダー加工用ゴムとして汎用的に使用される天然ゴムをベースとするマトリックスのような不飽和ジエンゴムマトリックスと有利に適合性にすることを意味する。従って、上記コードからの、その製造中の充填ゴムの如何なるあふれ出しも、この欠点が、タイヤの最終硬化中に、不飽和TPEとカレンダー加工用ゴムのジエンエラストマー間の共架橋の実現性により実際に修正され得るので、上記金属素材のカレンダー加工用ゴムへのその後の接着に対して有害ではない。
【0040】
好ましくは、不飽和TPEは、熱可塑性スチレン(略して“TPS”)エラストマー、即ち、熱可塑性ブロックとして、スチレン(ポリスチレン)ブロックを含む熱可塑性スチレンエラストマーである。
さらに好ましくは、不飽和TPSエラストマーは、ポリスチレンブロック(即ち、重合スチレンモノマーから形成されたブロック)とポリジエンブロック(即ち、重合ジエンモノマーから形成されたブロック)を含むコポリマーであり、好ましくは、後者は、ポリイソプレンブロックおよび/またはポリブタジエンブロックである。
【0041】
また、ポリジエンブロック、特に、ポリイソプレンおよびポリジエンブロックは、拡大解釈すれば、本出願においては、ランダムスチレン/イソプレン(SI)またはスチレン/ブタジエン(SB)コポリマーブロックのような、特にイソプレンまたはブタジエンのランダムジエンコポリマーブロックを意味する;これらのポリジエンブロックは、特に、ポリスチレン熱可塑性ブロックと結合して上記の不飽和TPSエラストマーを構成する。
【0042】
スチレンモノマーとは、非置換または置換スチレン系の任意のモノマーを意味するものと理解すべきである;置換スチレンの例としては、メチルスチレン(例えば、o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレンもしくはp‐メチルスチレン、アルファ‐メチルスチレン、アルファ‐2‐ジメチルスチレン、アルファ‐4‐ジメチルスチレン、またはジフェニルエチレン)、パラ‐tert‐ブチルスチレン、クロロスチレン(例えば、o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、2,4‐ジクロロスチレン、2,6‐ジクロロスチレンまたは2,4,6‐トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(例えば、o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、2,4‐ジブロモスチレン、2,6‐ジブロモスチレンまたは2,4,6‐トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(例えば、o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、2,4‐ジフルオロスチレン、2,6‐ジフルオロスチレンまたは2,4,6‐トリフルオロスチレン)、パラ‐ヒドロキシスチレンおよびそのようなモノマーのブレンドがあり得る。
【0043】
ジエンモノマーとは、2個の共役または非共役炭素‐炭素二重結合を担持する任意のモノマー、特に、イソプレン、ブタジエン、1‐メチルブタジエン、2‐メチルブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,4‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、2‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、3‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、4‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ペンタジエン、2,5‐ジメチル‐1,3‐ペンタジエン、1,3‐ヘキサジエン、2‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、3‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、4‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、5‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、2,5‐ジメチル‐1,3‐ヘキサジエン、2‐ネオペンチルブタジエン、1,3‐シクロペンタジエン、1,3‐シクロヘキサジエン、1‐ビニル‐1,3‐シクロヘキサジエンおよびそのようなモノマーのブレンドからなる群から特に選ばれる4〜12個の炭素原子を有する任意の共役ジエンモノマーを意味するものと理解すべきである。
【0044】
そのような不飽和TPSエラストマーは、特に、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)およびスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)の各ブロックコポリマー、並びにこれらのコポリマーのブレンドからなる群から選択する。
【0045】
さらにより好ましくは、この不飽和TPSエラストマーは、少なくとも3つのブロックを含有するコポリマーである;このコポリマーは、特に、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)およびスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)の各ブロックコポリマー、並びにこれらのコポリマーのブレンドからなる群から選択する。
【0046】
本発明の特定の好ましい実施態様によれば、上記不飽和TPSエラストマー中のスチレン含有量は、5%と50%の間の量からなる。5%よりも低いと、上記TPSエラストマーの熱可塑性が不十分であるリスクが存在し、一方、50%よりも高いと、先ずはこのエラストマーの過度の剛性化の、さらに第2には(共)架橋されるべきその能力の低下のリスクが存在する。
【0047】
本発明のもう1つの特定の好ましい実施態様によれば、上記TPE (特に、TPSエラストマー)の数平均分子量(Mnで示す)は、好ましくは5000g/モルと500000g/モルの間からなり、より好ましくは7000g/モルと450000g/モルの間からなる。上記TPSエラストマーの数平均分子量(Mn)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)により、既知の方法で測定する。試験標本を、予め、約1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解し、その後、溶液を、0.45μmの有孔度を有するフィルター上で、注入前に濾過する。使用する装置は、“WATERS alliance”クロマトグラフィーセットである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名“STYRAGEL”(“HMW7”、“HMW6E”および2ロットの“HT6E”)を有する直列の4本のWATERSカラムセットを使用する。ポリマー試験標本溶液の注入容量は、100μlである。検出器は“WATERS 2410”示差屈折計であり、その関連クロマトグラフィーデータ処理ソフトウェアは“WATERS MILLENNIUM”システムである。算出した平均分子量は、ポリスチレン試験標準を使用して得られた較正曲線と関連する。
【0048】
本発明のもう1つの特定の好ましい実施態様によれば、上記不飽和TPE (特に、TPSエラストマー)のTg (エラストマー配列に関連する第1Tgを思い起されたい)は、0℃よりも低く、特に−15℃よりも低い;このパラメーターは、DSC (示差走査熱量測定)によって、例えば規格ASTM D3418‐82に従い、既知の方法で測定する。
本発明のもう1つの特定の好ましい実施態様によれば、上記不飽和TPE (特に、TPSエラストマー)のシュアA硬度(ASTM D2240‐86に従って測定)は、10と100の間からなり、特に20〜90の範囲からなる。
【0049】
例えば、SB、SI、SBS、SIS、SBBSまたはSBISのような不飽和TPSエラストマーは、周知であり、例えば、Kraton社から、商品名“Kraton D”(例えば、製品 D1161、D1118、D1116、D1163)として;Dynasol社から、商品名“Calprene”(例えば、製品 C405、C411、C412)として;Polimeri Europa社から、商品名“Europrene”(例えば、製品SOLT166)として;BASF社から、商品名“Styroflex”(例えば、製品2G66)として;或いは、Asahi社から、商品名“Tuftec”(例えば、製品P1500)として商業的に入手可能である。
【0050】
上記で説明した不飽和熱可塑性エラストマーは、上記充填ゴムが本発明に従うコードの毛管または間隙を塞ぐその機能を完全に果すにはそのままで十分である。しかしながら、各種の他の添加剤を、典型的には少量で(上記不飽和熱可塑性エラストマーに対しゴム100質量部当り好ましくは20質量部よりも少ない、より好ましくは10質量部よりも少ない質量部で)添加し得、これら添加剤としては、例えば、可塑剤、カーボンブラックまたはシリカのような補強用充填剤、非補強用または不活性充填剤、層状充填剤、酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤のような保護剤、各種他の安定剤、例えば充填ゴムを着色することを意図する着色剤がある。また、上記充填ゴムは、不飽和熱可塑性エラストマー画分に対して少量質量画分で、不飽和熱可塑性エラストマー以外のポリマーまたはエラストマーも含み得る。
【0051】
本発明のもう1つの特に好ましい実施態様によれば、2cmに等しい長さのコードの任意の部分に亘って、上記コードの各々の間隙または毛管は、この毛管または間隙を、パラグラフI‐2に従う空気透過性試験において、このコードが2cm
3/分よりも低い、より好ましくは0.2cm
3/分よりも低いかまたは多くとも0.2cm
3/分に等しい平均空気流量に特徴を有するような形で封鎖する少なくとも1個のゴムプラグを含む。
【0052】
本発明のもう1つの特に好ましい実施態様によれば、上記コード中の充填ゴム含有量は、コードのg当り5mgと40mgの間のゴムからなる。上記の最低値よりも少ないと、充填ゴムが上記コードの各々の間隙または毛管中に少なくとも部分的に存在することを担保するのがより困難であり、一方、上記最高値よりも多いと、上記コードは、コード周辺での充填ゴムのあふれ出しのリスクを被る。これらの全ての理由により、充填ゴム含有量は、コードのg当り5mgと35mgの間、特に5mgと30mgの間の量、特に10〜25mgの範囲からなることが好ましい。
【0053】
用語“金属コード”とは、定義によれば、本出願においては、主として(即ち、これらのワイヤーの本数で50%よりも多くが)または全体(ワイヤーの100%)が金属材料からなるワイヤーから形成されているコードを意味するものと理解されたい。
個々に、また、互いに、コア(C1)の1本または複数本のワイヤー、第2層(C2)の複数本のワイヤーおよび第3層(C3)の複数本のワイヤーは、好ましくは鋼製、より好ましくは炭素鋼製である。しかしながら、勿論、他の鋼、例えば、ステンレススチール、或いは他の合金を使用することも可能である
【0054】
炭素鋼を使用する場合、その炭素含有量(鋼のうちの質量%)は、好ましくは0.2%と1.2%の間、特に0.5%と1.1%の間の量からなる;これらの含有量は、タイヤにおいて必要とする機械的性質とワイヤーの具現化可能性との間の良好な妥協点を示す。0.5%と0.6%の間の量からなる炭素含有量が、そのような鋼は延伸するのがより容易であることから、最終的にはそのような鋼をより安価なものとすることに留意すべきである。また、本発明のもう1つの有利な実施態様は、意図する用途にもよるが、特により低コストおよびより高い延伸性故に、例えば0.2%と0.5%の間の量からなる低炭素含有量を有する鋼を、使用することからなる。
【0055】
使用する金属または鋼は、特に炭素鋼またはステンレススチールのいずれであれ、それ自体を、例えば、上記金属コードおよび/またはその構成要素の加工性或いは上記コードおよび/またはタイヤ自体の使用特性、例えば、接着性、耐腐蝕性またはエージングに対する耐性を改良する金属層でコーティングし得る。1つの好ましい実施態様によれば、使用する鋼は、黄銅(Zn‐Cu合金)または亜鉛の層で被覆する;ワイヤーの製造工程中、黄銅または亜鉛コーティングは、ワイヤーの延伸を容易にし、且つワイヤーのゴムへの接着を良好にすることを思い起されたい。しかしながら、上記ワイヤーは、例えばこれらワイヤーの耐腐蝕性および/またはこれらワイヤーのゴムへの接着性を改良する機能を有する黄銅または亜鉛以外の金属の薄層、例えば、Co;Ni;Al;化合物Cu、Zn、Al、Ni、Co、Snの2種以上の合金の薄層によって被覆し得る。
【0056】
本発明の方法に従って得られるコードは、好ましくは、炭素鋼から製造し、好ましくは2500MPaよりも高い、より好ましくは3000MPaよりも高い引張強度(Rm)を有する。上記コードの破断点全体伸び(At)は、その構造性、弾性および塑性伸びの和であって、好ましくは2.0%よりも大きく、より好ましくは少なくとも2.5%に等しい。
【0057】
例えば、本発明の実施を、M本の直径d
1を有するワイヤーから構成されている直径d
cの第1の層またはコア(C1)を含み、このコアの周りには、第2層(C2)として、N本の直径d
2を有するワイヤーがピッチp
2のらせんとして一緒に巻かれており、この第2層の周りには、第3層(C3)として、P本の直径d
3を有するワイヤーがピッチp
3のらせんとして一緒に巻かれている、M+N+P本構造を有する3つの層(C1、C2、C3)を有する好ましいコードの場合においてもっと詳細に説明すると、本発明の方法は、少なくとも、下記の工程を含む:
・最初に、上記コア(C1)の周りにN本のワイヤーの第2層(C2)を集成して、“集成点”と称する点において、M+N本(またはC1+C2)構造の“コアストランド”と称する中間コードを形成する工程;
・上記集成点の上流および/または下流のそれぞれにおいて、上記コアおよび/またはコアストランドを、1以上の押出ヘッドに通すことによって、溶融状態で押出す特定のゴム(またはゴム組成物で) (“充填ゴム”として知られている)でシーズする工程;
・その後の、P本のワイヤーの第3層(C3)を、上記コアストランド(M+N)の周りに集成して、そのようにして内側からゴム引きしたM+N+P本構造のコードを形成させる工程。
【0058】
また、最内層または中心層(C1)は、上記コードの“コア”としても知られており、一方、(C1+C2)を集成した時点の第1(C1)および第2(C2)層は、上記コードのコアストランドとして慣例的に知られているものを構成する。コア(C1)が複数のワイヤーからなるときは、コア(C1)の直径d
cは、その場合、M本の直径d
1を有する中心ワイヤーを取巻く仮想円筒体の回転の直径(またはエンベロープ直径)を示す。
【0059】
3層状コードのこの好ましい例においては、第1の可能性ある実施態様に従い、シーズ処理を、単独のコア(C1)において、即ち、このコアの周りに第2層(C2)のN本のワイヤーの集成点の上流において実施する。その後、第2層(C2)のN本のワイヤーを、それ自体既知の方法で、コア(C1)の周りにケーブル外装するかまたは一緒に撚り合せて(S方向またはZ方向)、コアストランド(C1+C2)を形成する;ワイヤーは、N本のワイヤーをコアの周りに共通の撚り合せ点(または集成点)において集束させることを意図するスプール、分配用グリッドのような供給手段(集成ガイドにカップリングさせてもまたはさせなくても良い)によって給送する。
【0060】
もう1つの実施可能な実施態様によれば、この場合も3層状コードのこの好ましい例において、シーズ処理は、コアストランド(C1+C2)自体において、即ち、上記コアの周りへの第2層(C2)のN本のワイヤーの集成点の下流(上流よりはむしろ)において実施する。
その後、新たな工程の課程において、この場合も3層状コードのこの好ましい例において、最終集成を、コアストランド(M+NまたはC1+C2)の周りに第3層または外側層(C3)のP本のワイヤーをケーブル外装または撚り合せ(S方向またはZ方向)することによって実施する。
【0061】
従って、3層状コードの現場ゴム引きの上記好ましい場合の双方(上記コアまたはコアストランドのいずれかをシーズする)においては、充填ゴムは、単一の押出ヘッドにより、単一で小サイズの固定点において給送し得る;しかしながら、上記現場ゴム引きは、2つの連続するシーズ操作、即ち、コアにおける(従って、集成点の上流における)第1のシーズ操作およびコアストランドにおける(従って、集成点の下流における)第2のシーズ操作においても実施し得る。
【0062】
もう1つの好ましい実施態様によれば、直径d
cのコアまたは中心層(C1)は1〜4本の直径d
1のワイヤーから構成され(即ち、Mは1〜4本の範囲からなり)、Nは5〜15本の範囲からなり、Pは10〜22本の範囲からなる。さらにより好ましくは、Mは1本に等しく、Nは5〜7本の範囲からなり、Pは10〜14本の範囲からなる。
コア(C1)が1本のワイヤーからなる(Mが1に等しい)場合、コアワイヤーの直径d
1は、好ましくは、0.08〜0.40mmの範囲からなる。
【0063】
もう1つの好ましい実施態様によれば、下記の特性を満たす(d
1、d
2、d
3、p
2およびp
3はmmで表す):
・0.08 ≦ d
1 ≦ 0.40;
・0.08 ≦ d
2 ≦ 0.35;
・0.08 ≦ d
3 ≦ 0.35;
・5 π (d
1 + d
2) < p
2 ≦ p
3 < 10 π (d
1 + 2d
2 + d
3)。
【0064】
上記コードのコア(C1)は、好ましくは、1本の個々のワイヤーまたは多くとも2本または3本のワイヤーから構成され、例えば、これらのワイヤーは、平行であるかまたは一緒に撚り合せていてもよい。しかしながら、極めて好ましくは、本発明に従うコードのコア(C1)は1本のワイヤーから構成され、Nは5〜7本の範囲からなり、Pは10〜14本の範囲からなる。
【0065】
ここで、知られている通り、ピッチ“p”は、上記コードの軸に平行して測定した長さを示し、その後、このピッチを有するワイヤーは、上記コード軸の周りで完全な折り返し(turn)をなすことを思い起されたい。
【0066】
上記コードの強度、実現可能性、剛性および曲げ耐久性間の最適の妥協点のためには、層C1、C2およびC3のワイヤーの直径は、これらのワイヤーが互いに同じ直径を有するまたは有さないかのいずれであっても、下記の関係を満たすことが好ましい(d
1、d
2、d
3はmm表す):
・0.10 ≦ d
1 ≦ 0.35;
・0.10 ≦ d
2 ≦ 0.30;
・0.10 ≦ d
3 ≦ 0.30。
【0067】
さらにより好ましくは、下記の関係を満たす:
・0.10 ≦ d
1 ≦ 0.28;
・0.10 ≦ d
2 ≦ 0.25;
・0.10 ≦ d
3 ≦ 0.25。
【0068】
もう1つの特定の実施態様によれば、下記の特徴を満たす:
・N = 5において:0.6 < (d
1 / d
2) < 0.9;
・N = 6において:0.9 < (d
1 / d
2) < 1.3;
・N = 7において:1.3 < (d
1 / d
2) < 1.6。
【0069】
層C2およびC3のワイヤーは、互いに同じまたは異なる直径を有し得る;好ましくは、互いに同じ直径(即ち、d
2 = d
3)のワイヤーを使用する;これは、特に製造を簡素化し、コードのコストを低下させることによる。
好ましくは、下記の関係を満たす:
5 π (d
1 + d
2) < p
2 ≦ p
3 < 5 π (d
1 + 2d
2 + d
3).
【0070】
ピッチp
2およびp
3は、特にd
2 = d
3である場合、より好ましくは5〜30mmの範囲内、さらにより好ましくは5〜20mmの範囲内で選定する。
好ましい実施態様によれば、直径d
2は0.08〜0.35mmの範囲からなり、撚り合せピッチp
2は5〜30mmの範囲からなる。
もう1つの好ましい実施態様によれば、直径d
3は0.08〜0.35mmの範囲からなり、撚り合せピッチp
3はp
2よりも大きいかまたはp
2に等しい。
【0071】
もう1つの好ましい実施態様によれば、p
2とp
3は等しい。これは、特に、2つの層C2およびC3が同じ撚り方向(S/SまたはZ/Z)で巻かれているというさらなる特徴を有する、例えば
図2に略図的に示しているコードのようなコンパクトタイプの層状コードの場合である。そのような“コンパクト”層状コードにおいては、その緻密度は、これらのコードの断面が、
図2(本発明に従うコンパクト1+6+12本コード)または
図3(対照コンパクト1+6+12本コード、即ち、現場ゴム引きしていないコード)において例として示しているように、円筒形よりはむしろ多角形である輪郭を有しているように極めて高い。
【0072】
コア(C1)が1本よりも多いワイヤー(1本以外のM)から構成されている場合、M本のワイヤーを好ましくは集成し、特に、より好ましくは3〜30mmの範囲からなり、特に3〜20mmの範囲からなるピッチp
1で撚り合せる。
【0073】
第3層または外側層C3は、飽和層であるという好ましい特徴を有する、即ち、定義すれば、この層には、少なくとも1本の(P
max+1)番目の直径d
3を有するワイヤーをこの層に加えるに十分なスペースは存在しない;P
maxは、第2層C2の周りの層において巻付けることのできるワイヤーの最大本数を示す。この構造は、その周辺での充填ゴムのあふれ出しのリスクをさらに抑制し且つ、所定のコード直径において、より高い強度を付与するという顕著な利点を有する。
【0074】
従って、ワイヤーの本数Pは、本発明の特定の実施態様に従って極めて大きい度合で変動し得る;ワイヤーPの最大本数は、その直径d
3を第2層のワイヤーの直径d
2と比較して短くして外側層を好ましく飽和状態に保つ場合に増大することを理解されたい。
【0075】
特に好ましい実施態様によれば、第1つ(C1)は1本のワイヤーを含み(Mは1本に等しい)、第2層(C2)は6本のワイヤーを含み(Nは6本に等しい)、第3層(C3)は11本または12本のワイヤーを含む(Pは11本または12本に等しい);換言すれば、本発明に従うコードは、好ましい構造1+6+11本または1+6+12本を有する。これらのコードのうち、特に好ましいコードは、第2層(C2)から第3層(C3)において実質的に同じ直径(即ち、d
2 = d
3)を有するワイヤーから構成されているコードである。
本発明の方法に従って製造したコードは、全ての層状コードと同様に、2つのタイプ、即ち、コンパクト層を有するタイプまたは円筒状層を有するタイプを有し得る。
【0076】
好ましくは、外側層のワイヤーは、1本よりも多いワイヤーを含む内側層(1つ以上)のワイヤーと同じ撚り合せ方向で、即ち、S方向(“S/S”配列)またはZ方向(“Z/Z”配列)のいずれかでらせんとして巻付けて、コンパクトコードを得る。これらの層の同じ方向での巻付けは、有利なことに、これら2つの層間の摩擦を、従って、これらの層を構成するワイヤーの磨耗を最低限にする。さらに好ましくは、これらの層の全てを同じ撚り合せ方向および同じらせんピッチで巻付けて、例えば
図2に示しているようなコンパクトタイプのコードを得る。
【0077】
本発明の方法は、1つの特に好ましい実施態様によれば、周辺に充填ゴムを有さない或いは実質上有さないコードを製造することを可能にする;このことが意味することは、充填ゴムの粒子がコードの周辺に裸眼で目に見えないこと、即ち、当業者が、製造後、裸眼で、3メートル以上の距離から、本発明に従って製造したコードのスプールと現場ゴム引きしていない通常のコードのスプール間の差異を見分けられないことを意味する。
【0078】
しかしながら、上述したように、上記コードの周辺における充填ゴムの可能性ある何らかのあふれ出しは、後でのその金属素材カレンダー加工用ゴムへの接着にとって、上記不飽和熱可塑性エラストマーと上記カレンダー加工用ゴムのジエンエラストマーの共架橋可能な性質のために有害ではない。
【0079】
本発明の方法は、勿論、コンパクトタイプのコード(思い起すべきは、また、定義によれば、これらのコードは、各層が同じピッチで同じ方向に巻付けられているコードである)の製造に該当し、同時に、円筒状層を有するタイプのコード(思い起すべきは、また、定義によれば、これらのコードは、各層が異なるピッチ(撚りの方向は同一かまたは同一でない)でまたは反対方向(ピッチは同一かまたは異なる)に巻付けられているコードである)の製造にも該当する。
【0080】
本発明の上記方法を実施し、例えば、3層状コードの製造に応用することのできる集成およびゴム引き装置は、コードが形成されるときのコードの進行方向の上流から下流までに下記の手段を含む装置である:
・一方の第1つまたはコア(C1)の1本またはM本のワイヤーを供給するための、さらに、他方の第2層(C2)のN本のワイヤーを供給するための供給手段;
・第1つ(C1)の周りに第2層(C2)を適用するためのN本のワイヤーを“集成点”と称する点において集成して、M+N本構造の“コアストランド”と称する中間コードを形成する第1の集成手段;
・そのようにシーズしたコアストランドの周りにP本のワイヤーを集成して、第3層(C3)を適用する第2の集成手段;
・溶融状態の上記熱可塑性エラストマーを給送し、それぞれ、第1の集成手段の上流および/または下流に配置されて、上記コアおよび/または上記M+N本コアストランドをシーズする押出手段。
【0081】
勿論、Mが1本よりも多い場合、上記装置は、これらM本のワイヤーの上記供給手段と第2層(C2)のN本のワイヤーの上記集成手段との間に配置される中心層(C1)のM本のワイヤーを集成する集成手段も含む。二重シーズ(コアおよびコアストランド)の場合は、押出手段は、そのために、第1の集成手段の上流および下流の双方に配置する。
【0082】
添付図面1は、コンパクトタイプのコード(p
2 = p
3、層C2およびC3の撚り合せ方向同じ)の製造において使用することのできる、固定供給口および回転受器を有するタイプの撚り合せ集成装置(10)の例を示している。この装置(10)においては、供給手段(110)が、1本のコアワイヤー(C1)の周りに、集成ガイド(13)にカップリングさせてもまたはさせなくてもよい分配グリッド(12) (軸対称分配器)を通してN本のワイヤー(11)を給送し、このグリッドの後、第2層のN本(例えば、6本)のワイヤーが集成点(14)において集束して1+N本(例えば、1+6本)構造のコアストランド(C1+C2)を形成する。
【0083】
その後、コアストランド(C1+C2))は、形成された時点で、例えばツインスクリュー押出機からなる単一の押出ヘッド(15) (顆粒形のTPEを収容するホッパーから供給する)からなり、サイジングダイをポンプにより供給するシーズ領域に通る。集束点(14)とシーズ点(15)間の距離は、例えば、50cmと1mの間の距離である。例えば12本存在し、供給手段(170)によって給送される外側層(C3)のP本のワイヤー(17)を、矢印の方向に進行するそのようにしてゴム引きしたコアストランド(16)の周りに、撚り合せすることによって集成する。そのようにして形成した最終(C1+C2+C3)コードを、最後に、例えば修正機および/または撚糸機・修正機からなる撚り均衡化手段(18)に通した後、回転受器(19)上で収集する。
【0084】
ここで、当業者にとっては周知であるように、円筒状層を有するタイプのコード(異なるピッチp
2およびp
3、および/または層C2およびC3の異なる撚り合せ方向)を製造するためには、例として上記で説明した1つのみ(
図3)よりはむしろ2つの回転(供給口または受器)部材を含む装置を使用することを思い起されたい。
【0085】
図2は、コード(直線状で且つ静止しているものと想定する)の軸に対して垂直の断面において、本発明に従う上記方法を使用して得ることのできる現場ゴム引きした好ましい1+6+12本コードの1つの例を略図的に示す。
【0086】
このコード(C‐1で示す)は、コンパクトタイプである、即ち、その第2および第3層(それぞれC2およびC3)は、同じ方向(公認された用語を使用してのS/SまたはZ/Z)で、さらにまた、同じピッチ(p
2 = p
3)で巻付けている。このタイプの構造は、これらの第2および第3層(C2、C3)のワイヤー(21、22)が、コア(20)即ち第1つ(C1)の周りに、2つの実質的に同心の層を形成しており、これらの層の各々は、いわゆる円筒状層を有するコードの場合のような円筒体よりはむしろ実質的に多角形(さらに詳細には六角形)である輪郭(E) (点線で示している)を有することを意味している。
【0087】
このコード(C‐1)は、現場ゴム引きコードと称し得る:その3つの層C1、C2およびC3の3本でとみなす隣接ワイヤーによって形成される毛管または間隙(充填ゴムが存在しない空の空間)の各々は、少なくとも部分的に(コード軸に沿って連続してまたは不連続に)、上記充填ゴムで、コードの2cm長に亘って、各毛管が少なくとも1個のゴムのプラグを含むように充たされている。
【0088】
さらに詳細には、充填ゴム(23)は、上記コードの各層(C1、C2、C3)の隣接ワイヤー(3本でとみなす)によって形成され、これらのワイヤーを極めて僅かに離している各毛管(24) (三角符号で示している)を充たしている。これらの毛管または間隙は、コアワイヤー(20)とこのコアワイヤーを取巻いている第2層(C2)のワイヤー(21)とにより、または第2層(C2)の2本のワイヤー(21)とこれら2本に直近する第3層(C3)の1本のワイヤー(23)とにより、さらにまた、第2層(C2)の各ワイヤー(21)と各ワイヤー(21)と直近している第3層(C3)の2本のワイヤー(22)とによって自然に形成されていることを理解し得る;従って、合計して、24の毛管または間隙(24)がこの1+6+12本コードに存在している。
【0089】
好ましい実施態様によれば、このM+N+P本コードにおいては、上記充填ゴムは、上記充填ゴムが覆っている第2層(C2)の周りに連続して延びている。
この形で製造した上記M+N+P本コードは、気密性と称し得る:後のパラグラフII‐1‐Bにおいて説明する空気透過性試験において、上記コードは、好ましくは2cm
3/分よりも低い、より好ましくは0.2cm
3/分よりも低いかまたは多くとも0.2cm
3/分に等しい平均空気流量に特徴を有する。
【0090】
ちなみに、
図3は、断面において、同様に上記コンパクトタイプの通常の1+6+12本コード(C‐2で示す) (即ち、現場ゴム引きされていないコード)の覚えを提供している。充填ゴムの不存在は、特に全てのワイヤー(30、31、32)が互いに接触しており、特にコンパクトであり、ゴムが外側から浸透するのが極めて困難である(不可能とは言わないにしても)構造体をもたらすことを意味している。このタイプのコードの特徴は、各々のワイヤーが3本でチャンネルまたは毛管(34)を形成し、それらの大多数は、閉じて空のままであり、従って、“ウィッキング”作用によって、水のような腐蝕性媒体が伝播することを可能にする。
【0091】
II. 本発明の実施態様
以下の試験により、通常の(ホットメルトではない)ジエンゴムを使用しての従来技術の現場ゴム引き3層状コードと比較することによって、より少量で調整された量の充填ゴムを含有し、コードにより良好な緻密性を保証するという顕著な利点を有し、また、このゴムが、好ましくは、コード内に、特に、その毛管の各々内に均一に分配され、それによってコードに最適な縦方向不透過性をも付与するという多層コードを製造する本発明の能力を実証する;さらにまた、この充填ゴムは、生(即ち、未架橋)状態において望ましくない粘着性を有さないという本質的な利点も有する。
【0092】
II‐1. 使用する測定および試験法
II‐1‐A. 動力測定
金属ワイヤーおよびコードに関しては、Fmで示す破壊強度(Nでの最大荷重)、Rmで示す引張破壊強度(MPaでの)およびAtで示す破断点伸び(%での全伸び)の測定を、1984年の規格ISO 6892に従い、張力下に実施する。
ジエンゴム組成物に関しては、モジュラス測定を、特に断らない限り、1998年の規格ASTM D 412 (試験標本“C”)に従い、張力下に実施する:E10で示しMPaで表す10%伸びにおける“真”の割線モジュラス(即ち、試験標本の実際の断面に対するモジュラス)を、2回目の伸びにおいて(即ち、順応サイクル後に)測定する(1999年の規格ASTM D 1349に従う標準温度および湿度条件)。
【0093】
II‐1‐B. 空気透過性試験
この試験は、一定圧力下に所定時間に亘って試験標本を通過する空気の容量を測定することによって、試験コードの縦方向空気透過性を測定することを可能にする。そのような試験の原理は、当業者にとっては周知であり、コードを空気に対して不透過性にするコード処理の有効性を実証することである。この試験は、例えば、規格ASTM D2692‐98に記載されている。
試験は、この場合、補強しているタイヤまたはゴムプライから引抜いた、従って、硬化状態のゴムによって外側から既にコーティングされているコード、または製造したままのコードのいずれかにおいて実施する。
【0094】
後者の場合、製造したままのコードを、先ずは最初に、コーティングゴムとして知られているゴムで外側から埋込み、コーティングしなければならない。これを実施するためには、互いに平行に配置した10本のコード群(20mmのコード間距離を有する)を、未硬化ジエンゴム組成物の2枚のスキム(計測80×200mmの2枚の矩形物)の間に置く;各スキムは、3.5mmの厚さを有する。その後、アッセンブリ全体をモールド内にクランプ固定し、各コードを、締め付けモジュールを使用して、十分な張力(例えば、2daN)下に保ち、コードがモールド内に置かれている間はコードが真直ぐなままにする。その後、加硫(硬化)過程を、140℃の温度および15バールの圧力(計測80×200mmの矩形ピストン)下に40分に亘って実施する。その後、アッセンブリをモールドから取出し、特性決定のために、計測7×7×20mmの平行6面体の形のそのようにコーティングした10本のコード試験標本に切断する。
【0095】
通常のタイヤゴム組成物をコーティングゴムとして使用する;この組成物は、天然(解凝固)ゴムとN330カーボンブラック(65phr)をベースとし、以下の通常の添加剤も含有する:イオウ(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO (8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、酸化防止剤(1.5phr)およびナフテン酸コバルト(1.5phr);該コーティングゴムのモジュラスE10は、約10MPaである。
【0096】
試験は、そんな訳でその周囲の硬化状態のゴム組成物(またはコーティングゴム)でコーティングした2cm長のコードにおいて、以下のように実施する:1バールの圧力の空気をコードの入口に注入しコードを出る空気の容量を流量計(例えば0から500cm
3/分まで目盛り付けされた)を使用して測定する。測定中、コード試験標本は、圧縮気密シール(例えば、濃密発泡体またはゴムシール)内に固定して、一端から他端にコードの縦軸に沿ってコードを通過する空気量のみを測定するようにする;気密シールの気密性は、固形ゴム試験標本、即ち、コードを含まない試験標本を使用して予めチェックする。
【0097】
コードの縦方向不透過性が高いほど、測定した平均空気流量は低い。測定値は±0.2cm
3/分以内まで正確であるので、0.2cm
3/分以下の測定値は、ゼロであるとみなす;これらの値は、コード軸に沿って(即ち、その縦方向において)気密性であると称し得るコードに相応する。
【0098】
II‐1‐C. 充填ゴム含有量
充填ゴム量は、初期コード(従って、現場ゴム引きコード)の質量と、充填ゴムを適切な抽出溶媒中での処理によって除去したコード質量(従って、そのワイヤーの質量)との差を測定することによって測定する。
手順は、例えば、以下のとおりである。所定長さ(例えば、1メートル)の、それ自体らせん状にしてサイズを減じたコードの試験標本を、1リットルのトルエンを収容する液体密封性ボトル内に入れる。その後、ボトルを、“シェーカー”(Fischer Scientific“Ping Pong 400”)を使用して、室温(20℃)で24時間撹拌する(分当り125回の外方向/戻り運動);溶媒を排除した後、上記操作をもう1回繰返す。そのように処理したコードを回収し、残留溶媒を60℃で1時間真空下に蒸発させる。その後、そのようにして充填ゴムを除去したコードを秤量する。これから、計算を使用して、初期コードg (グラム)当り充填ゴムmg (ミリグラム)で表し、10回の測定に亘って(即ち、合計で10メートルのコードに亘って)平均したコードの充填ゴム含有量を推定し得る。
【0099】
II‐2. コードの製造および試験
以下の試験において、細い黄銅コーティング炭素鋼ワイヤーから構成される1+6+12本構造の層状コードを製造する。
【0100】
上記炭素鋼ワイヤーは、知られている通り、例えば、マシンワイヤー(直径5〜6mm)から製造する;これらのワイヤーを、先ずは最初に、圧延または延伸により加工硬化して、およそ1mmの中間直径まで下げる。使用する鋼は、0.70%の炭素含有量を有する既知の炭素鋼(USA規格AISI 1069)である。中間直径の上記ワイヤーを、そのその後の変換の前に、脱脂およびピクリング処理に供する。黄銅コーティングをこれらの中間ワイヤーに施した後、“最終”加工硬化操作と称する操作を、各ワイヤーにおいて(即ち、最終パテンティング加熱処理後に)、例えば水性エマルジョンまたは分散液の形の延伸用潤滑剤を含む湿式媒体中での冷間延伸によって実施する。ワイヤー周りの黄銅コーティングは、1ミクロンよりも著しく小さい、例えば、0.15〜0.30μm程度の極めて小さい厚さを有し、この厚さは、鋼ワイヤーの直径と比較すれば無視し得る。
【0101】
そのようにして延伸した上記鋼ワイヤーは、以下の直径と機械的性質を有する:
表1
【0102】
その後、これらのワイヤーを1+6+12本層状コードの形に集成する;この構造は、
図1に示しているとおりであり、その機械的性質を下記の表2に示す。
表2
【0103】
従って、本発明に従う1+6+12本コード(C‐1)は、
図1に略図的に示しているように、合計で19本のワイヤー、即ち、直径0.20mmのコアワイヤーおよび周りの全て直径0.18mmを有する18本のワイヤーから形成され、これらのワイヤーを、同じピッチ(P
2 = P
3 = 10.0mm)および同じ撚り合せ方向(S/S)でもって2つの同心層内に巻付けられてコンパクトタイプのコードを得ている。パラグラフI‐3において先に示している方法を使用して測定した充填ゴム含有量は、コードg当たり約18mgである。この充填ゴムは、3本でとみなす各ワイヤーによって形成された24の毛管または間隙の各々中に存在している、即ち、充填ゴムは、これらの毛管の各々を、コードの任意の2cm長に亘って、各毛管または間隙中に少なくとも1個のゴムのプラグが存在するように、完全にまたは少なくとも部分的に充たしている。
【0104】
これらのコードを製造するに当っては、上記で説明し、
図1に略図的に示している装置を使用し、コアストランド(1+6本)をシーズし、その後、撚り合せによって、シーズしたコアストランド上に外側層の12本のワイヤーを集成した。コアストランドは、そのようにして、およそ15μm厚のTPSエラストマーの層で被覆した。不飽和TPSエラストマーからなる充填ゴムは、およそ180℃の温度で、直径0.570mmのサイジングダイをポンプで供給するツインスクリュー押出機(長さ960mm、L/D = 40)を使用して押出した;コアストランド(1+6本)は、シーズされながら、押出方向に対し直角に且つ直線的に移動した。
【0105】
3種の不飽和TPSエラストマー(商業的に入手可能な製品)を、これらの試験において試験した:それぞれ、およそ70、25および90のショアA硬度を有するSBS (スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマー、SIS (スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマー、およびS(SB)Sブロックコポリマー(中心ポリジエンブロック(SBで示す)がランダムスチレン/ブタジエンジエンコポリマーであるスチレン/ブタジエン/スチレンブロック)。
【0106】
その後、そのようにして製造した本発明のコードC‐1を、パラグラフII‐1において説明している空気透過性試験に供し、コードを1分内に通過する空気の容量(cm
3での)を測定した(試験したコード毎に10回測定の平均)。
試験した各コードC‐1および100%の測定(即ち、10本のうちの10本の試験標本)において、試験したどの不飽和TPSエラストマーであっても、ゼロまたは0.2cm
3/分未満の流量を測定した;換言すれば、本発明の方法に従って製造したコードは、その縦軸に沿って気密性と称し得る。
【0107】
さらにまた、現場ゴム引きし且つ上記コードC‐1と同じ構造を有するが通常のジエンゴム組成物(天然ゴムをベースとする)によって現場ゴム引きした対照コードも、上記出願WO 2005/071557号に記載されている方法に従い、不連続の数工程で製造し、中間1+6本コアストランドを、押出ヘッドを使用してシーズし、その後、第2段階において、残りの12本のワイヤーをそのようにしてシーズしたコアストランドの周りにケーブル外装して外側層を形成した。その後、これらの対照コードを、パラグラフI‐2の空気透過性試験に供した。
【0108】
先ずは最初に、これらの対照コードのうちでは、100%(即ち、10本のうちの10本の試験標本)がゼロまたは0.2cm
3/分未満の流量を測定したものはなかったこと、換言すれば、これらの対照コードのうちで、その軸に沿って気密性(完全に気密性)と称し得るものはなかったことに注目した。また、これらの対照コードのうち、最良の不透過性結果(即ち、2cm
3/分辺りの平均流量)を示したコードは、全て、その周辺からの比較的大量の望ましくない充填ゴム(ジエンゴム)のあふれ出しを有しており、これらのコードを、本明細書の導入部において説明した生粘着性の問題故に、工業的条件下での満足し得るカレンダー加工操作にとって不適切なものにしていることも判明した。
【0109】
従って、結論として、本発明に従う方法によって製造したコードは、上記不飽和熱可塑性エラストマーによる適度の浸透を調整された充填ゴム量でもって示して、内部分配(コード軸に沿って連続または不連続である)を担保しており、或いは上記毛管または間隙内のゴムのプラグは十分な数で存在する;従って、上記コードは、水分または空気中の酸素のような何らかの腐蝕性流体のコードに沿った拡散に対して不浸透性となり、それ故に、本明細書の導入部において説明したウィッキング作用を排除する。さらに、使用する上記熱可塑性エラストマーは、製造した後のコード外側上での僅かなあふれ出しの場合に、上記熱可塑性エラストマーを結果として天然ゴムのような不飽和ジエンゴムマトリックスと(共)加硫性としているその不飽和性の故に、望ましくない粘着性の問題をもたらさない。
【0110】
勿論、本発明は、上記で説明した実施態様に限定されない。
従って、例えば、上記コードのコア(C1)は、円形でない断面を有するワイヤー、例えば、塑性的に変形しているワイヤー、特に、実質的に長円形の或いは多角形、例えば、三角形、正方形または長方形の断面を有するワイヤーから構成され得る;また、上記コードは、円形断面を有する前以って成形されたワイヤー、或いは、例えば、波形の、らせんまたはジグザク形状に撚り合せたまたはねじ曲げられたワイヤーからも構成され得る。そのような場合は、勿論、コア(C1)の直径d
cは、中心ワイヤー自体の直径(またはその断面が円形でない場合の任意の他の横方向寸法)よりはむしろ中心ワイヤーを取巻いている仮想回転円筒体の直径(エンベロープ直径)を示すものと認識しなければならない。
【0111】
しかしながら、工業的実施可能性、コストおよび全体的性能を理由として、本発明は、通常の、直線状で、円形断面を有する1本の中心ワイヤー(層C1)でもって実施することが好ましい。
さらに、中心ワイヤーは、そのコード内の位置を考慮すると、コードの製造中に、他のワイヤーよりも応力をあまり受けないので、このワイヤーは、例えば高ねじり延性を有する鋼組成物を使用して製造する必要はない:有利には、任意のタイプの鋼、例えば、ステンレススチールを使用し得る。
【0112】
さらにまた、他の2つの層(C2および/またはC3)のうちの1つの1本(少なくとも1本)の直線状ワイヤーは、同様に、前以って成形したまたは変形させたワイヤーによって、さらに一般的には、直径d
2および/またはd
3を有する他のワイヤーの断面とは異なる断面を有するワイヤーによって置換えて、例えば、上記ゴムまたは他の任意の材料によるコードの浸透性をさらに改良することもできる;この代替ワイヤーの上記エンベロープ直径は、関連層(C2および/またはC3)を構成する上記他のワイヤーの直径(d
2および/またはd
3)よりも小さく、この直径と等しくまたはこの直径よりも大きくあり得る。
【0113】
本発明の精神を変えることなしに、本発明に従うコードを構成するワイヤーの1部は、鋼ワイヤー以外の金属または他のワイヤーによって置き換えることができ、さらに、特に、高機械強度を有する無機または有機材料製のワイヤーまたはスレッド、例えば、液晶有機ポリマー製のモノフィラメントであり得る。