特許第5943065号(P5943065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943065接合方法、電子装置の製造方法、および電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943065
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】接合方法、電子装置の製造方法、および電子部品
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20160616BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20160616BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20160616BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20160616BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20160616BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20160616BHJP
   C22C 9/01 20060101ALI20160616BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20160616BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20160616BHJP
   B23K 101/36 20060101ALN20160616BHJP
【FI】
   B23K1/00 310B
   B23K1/00 330E
   B23K1/19 K
   H05K3/34 501D
   B23K35/26 310A
   C22C13/00
   C22C13/02
   C22C9/01
   C22C9/00
   H01L21/60 311S
   B23K101:36
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-503720(P2014-503720)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2013053026
(87)【国際公開番号】WO2013132953
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年8月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-48025(P2012-48025)
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】中野 公介
(72)【発明者】
【氏名】高岡 英清
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−179336(JP,A)
【文献】 特開2003−332731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00
B23K 1/19
B23K 35/26
C22C 9/00
C22C 9/01
C22C 13/00
C22C 13/02
H01L 21/60
H05K 3/34
B23K 101/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属を有する第1金属部材と、第2金属を有する第2金属部材とを、前記第1金属および/または前記第2金属よりも融点の低い低融点金属を主たる成分とする接合材料を用いて接合するための接合方法であって、
前記接合材料を構成する前記低融点金属が、SnまたはSnを含む合金であり、
前記第1金属および前記第2金属の少なくとも一方が、Alを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金を主成分とするものであり、かつ、
前記第1金属部材と第2金属部材との間に前記接合材料を配置した状態で、前記接合材料を構成する前記低融点金属が溶融する温度で熱処理することにより、前記接合材料を構成する低融点金属と、前記第1金属および/または前記第2金属を構成する前記Cu−Al合金との反応により生成する金属間化合物を含む接合部を介して、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを接合する熱処理工程を備えていること
を特徴とする接合方法。
【請求項2】
第1金属を有する第1金属部材と、第2金属を有する第2金属部材とを備え、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された構造を有する電子装置の製造方法であって、
前記第1金属部材と、前記第2金属部材とを、請求項1記載の接合方法により接合する工程を備えていること
を特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項3】
SnまたはSnを含む合金からなる低融点金属を含む接合材料による接合に供される電極を備えた電子部品であって、
前記接合材料に接する前記電極が、Alを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金を有していること
を特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、電子装置の製造方法、および電子部品に関し、詳しくは、例えば、電子部品を実装する場合などに用いられる接合方法、電子装置の製造方法、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の実装の際には、はんだ(ソルダペースト)を用いた接合方法が広く用いられている。
ところで、従来から広く用いられてきたSn−Pb系はんだにおいては、高温系はんだとして、例えばPbリッチのPb−5Sn(融点:314〜310℃)、Pb−10Sn(融点:302〜275℃)などを用いて330〜350℃の温度ではんだ付けし、その後、例えば、低温系はんだのSn−37Pb共晶(183℃)などを用いて、上記の高温系はんだの融点以下の温度ではんだ付けすることにより、先のはんだ付けに用いた高温系はんだを溶融させることなく、はんだ付けによる接続を行う温度階層接続の方法が広く適用されている。
【0003】
このような温度階層接続は、例えば、チップをダイボンドするタイプの半導体装置や、フリップチップ接続するタイプの半導体装置などに適用されており、半導体装置の内部ではんだ付けによる接続を行った後、さらに、該半導体装置自体をはんだ付けにより基板に接続するような場合に用いられる重要な技術である。
【0004】
この用途に用いられるソルダペーストとして、例えば、(a)Cu,Al,Au,Agなどの第2金属またはそれらを含む高融点合金からなる第2金属(または合金)ボールと、(b)SnまたはInからなる第1金属ボール、の混合体を含むはんだペーストが提案されている(特許文献1参照)。
また、この特許文献1には、はんだペーストを用いた接合方法や、電子機器の製造方法が開示されている。
【0005】
この特許文献1のはんだペーストを用いてはんだ付けを行った場合、図2(a)に模式的に示すように、低融点金属(例えばSn)ボール51と、高融点金属(例えばCu)ボール52と、フラックス53とを含むはんだペーストが、加熱されて反応し、はんだ付け後に、図2(b)に示すように、複数個の高融点金属ボール52が、低融点金属ボールに由来する低融点金属と、高融点金属ボールに由来する高融点金属との間に形成される金属間化合物54を介して連結され、この連結体により接合対象物が接続・連結される(はんだ付けされる)ことになる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1のはんだペーストを用いた接合方法の場合、はんだ付け工程ではんだペーストを加熱することにより、高融点金属(例えばCu)と低融点金属(例えばSn)との金属間化合物を生成させるようにしているが、Cu(高融点金属)とSn(低融点金属)との組み合わせでは、その拡散速度が遅いため,低融点金属であるSnが残留する。そして、Snが残留していると、高温下での接合強度が大幅に低下して、接合すべき製品の種類によっては使用することができなくなる場合がある。また、はんだ付けの工程で残留したSnは、その後の別のはんだ付け工程で溶融して流れ出すおそれがあり、温度階層接続に用いられる高温はんだとしては信頼性が低いという問題点がある。
【0007】
すなわち、例えば半導体装置の製造工程において、はんだ付けを行う工程を経て半導体装置を製造した後、その半導体装置を、リフローはんだ付けの方法で基板に実装しようとした場合、半導体装置の製造工程におけるはんだ付けの工程で残留したSnが、リフローはんだ付けの工程で溶融して流れ出してしまうおそれがある。
【0008】
また、Snが残留しないように、低融点金属を完全に金属間化合物にするためには、はんだ付け工程において、高温かつ長時間の加熱が必要となるが、生産性との兼ね合いもあり、実用上不可能であるのが実情である。
【0009】
さらに、特許文献1のはんだペーストを用いた場合、図3に示すように、リフロー後の接合対象物61,62と接合材料(はんだ)63との界面に、例えば、Cu3SnやCu6Sn5といった金属間化合物64が層状に形成される。このような層状の金属間化合物64が形成されると、界面に応力が集中するためクラックの発生等により界面の接合強度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−254194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、第1金属部材と第2金属部材を十分な接合強度を確保しつつ接合することが可能で、かつ、温度階層接続における再リフローなどの段階での接合材料の流れ出しを抑制、防止することが可能な接合方法、電子装置の製造方法、および電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の接合方法は、
第1金属を有する第1金属部材と、第2金属を有する第2金属部材とを、前記第1金属および/または前記第2金属よりも融点の低い低融点金属を主たる成分とする接合材料を用いて接合するための接合方法であって、
前記接合材料を構成する前記低融点金属が、SnまたはSnを含む合金であり、
前記第1金属および前記第2金属の少なくとも一方が、Alを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金を主成分とするものであり、かつ、
前記第1金属部材と第2金属部材との間に前記接合材料を配置した状態で、前記接合材料を構成する前記低融点金属が溶融する温度で熱処理することにより、前記接合材料を構成する低融点金属と、前記第1金属および/または前記第2金属を構成する前記Cu−Al合金との反応により生成する金属間化合物を含む接合部を介して、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを接合する熱処理工程を備えていること
を特徴としている。
【0013】
また、本発明の電子装置の接合方法は、
第1金属を有する第1金属部材と、第2金属を有する第2金属部材とを備え、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された構造を有する電子装置の製造方法であって、
前記第1金属部材と、前記第2金属部材とを、上記本発明の接合方法により接合する工程を備えていること
を特徴としている。
【0014】
また、本発明の電子部品は、
SnまたはSnを含む合金からなる低融点金属を含む接合材料による接合に供される電極を備えた電子部品であって、
前記接合材料に接する前記電極が、Alを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金を有していること
を特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接合方法は、第1金属を有する第1金属部材と、第2金属を有する第2金属部材とを、第1金属と第2金属の少なくとも一方より融点の低い低融点金属を含む接合材料を介して接合するにあたって、接合材料を構成する低融点金属を、SnまたはSnを含む合金とし、第1金属および第2金属の少なくとも一方を、Alを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金を主成分とするものとし、かつ、第1金属部材と第2金属部材との間に接合材料を配置した状態で、接合材料を構成する低融点金属が溶融する温度で熱処理するようにしているので、接合材料を構成する低融点金属(SnまたはSnを含む合金)と、第1金属および/または前記第2金属を構成する前記Cu−Al合金との反応により生成する金属間化合物を含む接合部を生成させ、該接合部を介して、第1金属部材と第2金属部材とを確実に接合することができる。その結果、耐熱性や耐熱衝撃性に優れた信頼性の高い接合構造を得ることが可能になる。
【0016】
すなわち、本発明の接合方法によれば、第1金属部材と第2金属部材との間に接合材料を配置して熱処理する工程で、低融点金属と第1金属および/または第2金属との反応により金属間化合物を生成する結果、第1金属および/または第2金属の低融点金属への相互拡散が飛躍的に進行し、より高融点の金属間化合物への変化が促進される。したがって、耐熱強度が大きく、かつ、十分な接合強度、耐衝撃性を有する接合を行うことが可能になる。
【0017】
なお、第1および/または第2金属(Cu合金)を構成するAlは、Cuより第1イオン化エネルギーが小さく、CuにAlが固溶しているため、Cuよりも、Alが先に酸化されることになる。その結果、酸化されていないCuの、溶融した低融点金属(SnまたはSnを含む合金)への拡散が促進され、非常に短時間のうちに、低融点金属との間で金属間化合物を生成する。したがって、その分だけ接合部における低融点金属の含有量が低下し、接合部の融点が上昇して耐熱強度が向上する。
【0018】
すなわち、接合材料を用いて、第1金属部材と、第2金属部材を接合する場合、第1および第2の金属部材間に接合材料を位置させた状態で熱処理を行う。このとき、温度が、接合材料を構成する低融点金属(SnまたはSnを含む合金)の融点以上に達すると、低融点金属が溶融する。そして、第1金属および/または第2金属と、溶融した低融点金属とが速やかに拡散して、金属間化合物を生成する。
【0019】
その後さらに加熱が続くと、低融点金属と、第1金属および/または第2金属とはさらに反応し、低融点金属と、第1金属および/または第2金属の組成比などが望ましい条件にある場合には、低融点金属が実質的にすべて金属間化合物となり、接合部の耐熱性に優れた接合構造を得ることが可能になる。
【0020】
また、接合材料を構成する低融点金属(SnまたはSnを含む合金)と、第1金属および/または第2金属とを、速やかに反応させて金属間化合物とする見地からは、第1金属部材および/または第2金属部材の表面が、Alを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金を主成分とする金属から構成されていることが望ましい。
【0021】
本発明の接合方法によれば、例えば、第1金属部材が電子部品の外部電極であり、第2金属部材が基板の実装用電極である場合に、電子部品がはんだ付け実装された後の段階で、複数回のリフローが実施された場合や、実装された電子部品(例えば、車載用電子部品)が、高温環境下で使用された場合にも、接合部が再溶融することを防止して、電子部品の脱落などを引き起こすことのないような、高温での接合信頼性の高い接合を行うことができる。
【0022】
また、本発明の接合方法において、第1金属部材と第2金属部材との間に接合材料を配置した状態で、接合材料を構成する低融点金属が溶融する温度で熱処理することにより、第1金属部材と第2金属部材の接合が行われるが、このような接合(熱処理)が行われる具体的な態様としては、例えば、
1)第1金属および第2金属が、互いに接合させるべき第1金属部材と第2金属部材を構成する金属材料そのものであって、そのうちの少なくとも一方がAlを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金であり、低融点金属がソルダペーストや板状はんだなどの構成材料として、第1金属部材と第2金属部材の間に供給されている態様や、
2)第1金属および第2金属が、互いに接合させようとしている第1金属部材(電極本体)と第2金属部材(電極本体)の表面に形成されためっき膜を構成する金属材料であって、そのうちの少なくとも一方がAlを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金であり、低融点金属がソルダペーストや板状はんだなどの構成材料として、めっき膜を備えた第1金属部材と第2金属部材の表面間に供給されている態様
などが示される。
【0023】
また、本発明の接合方法において、(a)接合材料を構成する低融点金属と、(b)第1金属および第2金属のうちのCu−Al合金と、の合計量(すなわち(a)と(b)の合計量)に対する、後者(b)の割合が30体積%以上の状態で、熱処理工程を実施することにより、第1金属と第2金属(Cu−Al合金)の、接合材料を構成する低融点材料への拡散が十分に進行して、より高融点の金属間化合物への変化が促進され、低融点金属成分がほとんど残留しなくなるため、さらに耐熱強度の大きい接合を行うことが可能になる。
【0024】
また、「……後者の割合が30体積%以上である状態」とは、下記の式(1)で表される状態をいう。
[(第1金属+第2金属)/{低融点金属+(第1金属+第2金属)}]×100≧30(体積%)…… (1)
【0025】
また、本発明の電子装置の製造方法は、第1金属からなる第1金属部材と、第2金属からなる第2金属部材とを備えた電子装置を製造するにあたって、第1金属部材と第2金属部材とを、上記本発明の接合方法により接合するようにしているので、第1金属部材と、第2金属部材とが、接合材料を介して確実に接合された信頼性の高い電子装置を効率よく製造することができる。
【0026】
また、本発明の電子部品は、SnまたはSnを含む合金からなる低融点金属を含む接合材料による接合に供される電極を備えた電子部品において、電極がAlを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金を有しているので、本発明の接合方法に供するのに適しており、効率よく、信頼性の高い実装を行うことが可能な電子部品を提供することができる。
【0027】
すなわち、例えば、本発明の電子部品を、その電極が、基板上のソルダペーストが付与された実装用電極に対向するように載置し、リフローすることにより、電子部品の電極と、基板の実装用電極とを、接合材料に含まれる低融点金属と、Alを5〜30重量%の範囲で含有するCu−Al合金との反応により生成する金属間化合物を主たる成分とする接合部を介して確実に接合させ、信頼性の高い実装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例にかかる接合方法に接合を行う場合の挙動を模式的に示す図であり、(a)は加熱前の状態を示す図、(b)は加熱が開始され、接合材料が溶融した状態を示す図、(c)はさらに加熱が継続され、接合材料を構成する低融点金属と、第1金属部材および第2金属部材の少なくとも一方との間の金属間化合物が形成された状態を示す図である。
図2】従来のはんだペーストを用いてはんだ付けを行う場合の、はんだの挙動を示す図であり、(a)は加熱前の状態を示す図、(b)ははんだ付け工程終了後の状態を示す図である。
図3】従来のはんだペーストを用いて接合を行った場合の、界面に層状の金属間化合物層が形成された接合構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
<実施形態1>
【0030】
この実施形態1では、図1(a)〜(c)に示すように、第1金属からなる第1金属部材11aと、第2金属からなる第2金属部材11bとを、第1金属および第2金属よりも融点の低い低融点金属を主たる成分とする接合材料10を用いて接合した。
【0031】
この実施形態1においては、接合材料を構成する低融点金属として、表1の試料番号1〜13に示すように、Sn−3Ag−0.5Cu,Sn,Sn−3.5Ag,Sn−0.75Cu,Sn−0.7Cu−0.05Ni,Sn−5Sb,Sn−2Ag−0.5Cu−2Bi,Sn−3.5Ag−0.5Bi−8In,Sn−9Zn,Sn−8Zn−3Biを使用した。
【0032】
なお、上記の接合材料を構成する低融点金属の表記において、例えば、「Sn−3Ag−0.5Cu」は、低融点金属材料が、Agを3重量%、Cuを0.5重量%含有し、残部をSnとする合金(Sn合金)であることを示している。
【0033】
また、第1金属部材および第2金属部材としては、表1の試料番号1〜10に示すように、Cu−10Alからなるものを用いた。
また、比較のため、表1の試料番号11〜13に示すように、第1金属部材および第2金属部材としてCu(試料番号11)、Cu−10Zn(試料番号12)、Cu−10Ge(試料番号13)からなるものを用意した。
【0034】
なお、この実施形態1では、上述のような第1金属部材と第2金属部材を、低融点金属を主たる成分とする接合材料により接合するにあたって、板状に成形された接合材料を、第1金属部材と第2金属部材の間に配置し、荷重をかけながら、250℃、30分の条件でリフローすることにより、第1金属部材と第2金属部材とを接合した。
【0035】
ここで、図1(a)〜(c)を参照しつつ、この実施形態1における接合方法を説明すると以下のようになる。
まず、図1(a)に示すように、第1金属部材11a、第2金属部材11bの間に板状に成形された接合材料10を位置させる。
【0036】
次に、この状態で、荷重をかけながら、250℃、15分の条件でリフローし、図1(b)に示すように、接合材料10を構成する低融点金属(SnまたはSn合金)を溶融させる。そして、さらに所定時間(15分間)、加熱を続ける(すなわち、250℃、30分の条件でリフローする)ことにより、接合材料10を構成する低融点金属を溶融させるとともに、低融点金属と、第1金属部材11a、第2金属部材11bを構成する第1金属および/または第2金属とを反応させて金属間化合物12(図1(c))を生成させる。
【0037】
これにより、リフロー後に凝固した、金属間化合物を含む接合材料により、第1金属部材と第2金属部材とが接合された接合体が得られる。
なお、本発明の接合方法によれば、接合材料中に、Cu−Al−Sn金属間化合物が分散して存在することが確認されている。
【0038】
[特性の評価]
上述のようにして得た接合体を試料として、以下の方法で特性を測定し、評価した。
【0039】
≪接合強度≫
接合強度については、得られた接合体のシアー強度を、ボンディングテスタを用いて測定し、評価した。
シアー強度の測定は、横押し速度:0.1mm・s-1、室温および260℃の条件下で行った。
そして、シアー強度が20Nmm-2以上のものを◎(優)、2Nmm-2以下のものを×(不可)と評価した。
表1に、各試料について調べた接合強度(室温、260℃)と評価結果を併せて示す。
【0040】
≪残留成分評価≫
リフロー後に凝固した、金属間化合物を含む接合材料(反応生成物)を約7mg切り取り、測定温度30℃〜300℃、昇温速度5℃/min、N2雰囲気、リファレンスAl23の条件で示差走査熱量測定(DSC測定)を行った。得られたDSCチャートの低融点金属成分の溶融温度における溶融吸熱ピークの吸熱量から、残留した低融点金属成分量を定量化し、残留低融点金属含有率(体積%)を求めた。そして、残留低融点金属含有率が0〜50体積%の場合を◎(優)、50体積%より大きい場合を×(不可)と評価した。
表1に、残留低融点金属含有率と評価結果を併せて示す。
【0041】
≪流れ出し不良率≫
得られた接合体をエポキシ樹脂で封止して相対湿度85%の環境に放置し、ピーク温度260℃のリフロー条件で加熱して、接合材料が再溶融して流れ出す、流れ出し不良の発生割合を調べた。そして、その結果から流れ出し不良発生率を求め、評価した。
接合材料の流れ出し不良率が0〜50%の場合を◎(優)、50%より大きい場合を×(不可)と評価した。
表1に、流れ出し不良発生率と評価結果を併せて示す。
【0042】
≪熱衝撃試験後のクラック有無,接合強度≫
得られた接合体(試料)を、−40℃/85℃のそれぞれの温度条件で各30分間保持するサイクルを1000回行った後の各試料について、クラック発生状態を観察した。そして、クラック発生の有無を評価した。
【0043】
また、熱衝撃試験後の各試料について、接合強度を、上記と同様に評価した。そして、シアー強度が20Nmm-2以上のものを◎(優)、10Nmm-2より小さいものを×(不可)と評価した。
表1に、熱衝撃試験後のクラック発生の有無、接合強度を併せて示す。なお、クラックの発生については、それ自体が問題というわけではなく、接合強度を低下させる要因となるため、評価している。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、表1において、試料番号に*を付した試料(試料番号11〜13の試料)は本発明の要件を満たさない比較用の試料(比較例)である。
表1に示すように、室温における接合強度については、試料番号1〜10の本発明の要件を備えた実施例の試料および試料番号11〜13の本発明の要件を備えていない比較例の試料のいずれもが、20Nmm-2以上の接合強度を示し、実用強度を備えていることが確認された。
【0046】
一方、260℃における接合強度についてみると、試料番号11〜13の比較例の試料では2Nmm-2以下と接合強度が不十分であったのに対して、試料番号1〜10の実施例の試料では接合強度が20Nmm-2以上(23〜28Nmm-2)であり、実用強度を備えていることが確認された。
【0047】
また、残留低融点金属含有率(残留成分評価)については、試料番号11〜13の比較例の試料の場合には、残留低融点金属含有率が50体積%より大きかったのに対して、試料番号1〜10の実施例の試料の場合、いずれも残留低融点金属含有率を50体積%以下(27〜35体積%)にすることができた。
【0048】
また、接合材料の流れ出し不良率については、試料番11〜13の比較例の試料の場合、流れ出し不良率が50%より大きかったのに対して、試料番号1〜10の実施例の試料では、流れ出し不良率がいずれも50%以下(10〜22%))であることが確認された。
【0049】
また、試料番号1〜10の実施例の試料においては、低融点金属の種類に関係なく同様の高耐熱性を備えていることが確認された。
【0050】
また、熱衝撃試験後における試料観察において、試料番号11〜13の比較例の試料では、1000サイクル試験終了後にクラックの発生が認められた。なお、クラックは、主として、接合材料と、第1、第2金属部材との界面に形成されているCu3Sn層やCu6Sn5層(金属間化合物層)の内部、金属間化合物層と第1、第2金属部材との界面、金属間化合物層と接合材料の界面に発生していた。
これに対し、試料番号1〜10の実施例の試料では、上述のようなクラックの発生は認められなかった。
【0051】
耐熱衝撃性については、試料番号11〜13の比較例の試料では、熱衝撃試験後の接合強度が5〜8Nmm-2と低かったが、本発明の要件を満たす試料番号1〜10の各試料においては、熱衝撃試験後の接合強度が20Nmm-2以上(23〜28Nmm-2)であり、比較例の場合に比べて大幅に向上することが確認された。
【0052】
なお、本発明の要件を備えた試料番号1〜10各試料の場合、接合部の、Cu−Al合金からなる第1、第2金属部材との界面には、Cu3SnやCu6Sn5の層状の金属間化合物が形成されないことが確認されている。
【0053】
試料番号1〜10の本発明の要件を備えた実施例の試料の場合に熱衝撃試験後の接合強度が大きいのは、接合部に低融点金属(SnまたはSn合金)の残留割合が低く、リフロー後に得られる接合体について、熱衝撃試験を行った場合の金属間化合物層の成長やクラックの発生が抑制され、接合強度の低下を引き起こさなかったことによるものと考えられる。
【0054】
また、本発明の要件を満たす試料番号1〜10の試料が高耐熱性を備えているのは、第1金属部材および第2金属部材として、Cu−Al合金を使用しており、第1イオン化エネルギーが746kJ・mol-1であるCuに対して、固溶しているAlの第1イオン化エネルギーが578kJ・mol-1と小さいことが原因と考えられる。すなわち、第1イオン化エネルギーが小さいAlがCuに対して固溶していることで、Alがイオン化すること、すなわち、酸化されることにより、拡散主体であるCuの酸化が抑制され、反応が促進するためと考えられる。
【0055】
一方、比較例のように、第2金属としてCu−Zn合金を使用した場合、Znの第1イオン化エネルギーが906kJ・mol-1で、Cuの第1イオン化エネルギーよりも大きいために、拡散主体であるCuの酸化が顕著となり、金属間化合物の生成反応が効率よく進行せず、耐熱性を向上させることができないものと考えられる。
<実施形態2>
【0056】
この実施形態2は本発明が関連する発明についての実施形態である。
第1金属部材および第2金属部材として、表2の試料番号14〜23に示す、Cu−10Cr合金からなるものを用いたことを除いて、上記実施形態1の場合と同様の方法、条件で、第1金属からなる第1金属部材と、第2金属からなる第2金属部材とを、第1金属および第2金属よりも融点の低い低融点金属(SnまたはSnを含む合金)を主たる成分とする接合材料を用いて接合した。
【0057】
そして、上記実施形態1の場合と同様の方法でその特性を測定し、同様の基準で評価した。
低融点金属や、第1金属および第2金属の組成、特性の評価結果などを表2に併せて示す。なお、表2には、実施形態1で作製した比較例の試料と同一の試料(試料番号11〜13の試料)についての組成、特性の評価結果などを併せて示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、室温における接合強度については、試料番号14〜23の本発明が関連する発明の実施例の試料および試料番号11〜13の比較例の試料(実施形態1で作製した比較例の試料と同一の試料)のいずれもが20Nmm-2以上の接合強度を示し、実用強度を備えていることが確認された。
【0060】
一方、260℃における接合強度についてみると、試料番号11〜13の比較例の試料では2Nmm-2以下と接合強度が不十分であったのに対して、試料番号14〜23の本発明が関連する発明の実施例の試料では接合強度が20Nmm-2以上(23〜30Nmm-2)を保持しており、実用強度を備えていることが確認された。
【0061】
また、残留低融点金属含有率(残留成分評価)については、試料番号11〜13の比較例の試料の場合には、残留低融点金属含有率が50体積%より大きかったのに対して、試料番号14〜23の実施例の試料の場合、いずれも残留低融点金属含有率を50体積%以下(44〜49体積%)にすることができた。
【0062】
また、接合材料の流れ出し不良率については、試料番号11〜13の比較例の試料の場合、流れ出し不良率が50%より大きかったのに対して、試料番号14〜23の実施例の試料では、流れ出し不良率がいずれも50%以下(32〜36%)であることが確認された。
【0063】
また、試料番号14〜23の実施例の試料においては、低融点金属の種類に関係なく同様の高耐熱性を備えていることが確認された。
【0064】
また、熱衝撃試験後における試料観察において、試料番号14〜23の実施例の試料では、クラックの発生は認められなかった。
【0065】
また、耐熱衝撃性については、試料番号11〜13の比較例の試料では、熱衝撃試験後の接合強度が5〜8Nmm-2と低かったが、試料番号14〜23の各試料においては、熱衝撃試験後の接合強度が20Nmm-2以上(24〜28Nmm-2)であり、比較例の場合に比べて、大幅に向上することが確認された。
【0066】
なお、試料番号14〜23各試料の場合、接合部の、Cu−Cr合金からなる第1、第2金属部材との界面には、Cu3SnやCu6Sn5の層状の金属間化合物が形成されないことが確認されている。
【0067】
試料番号14〜23の試料の場合に熱衝撃試験後の接合強度が大きいのは、接合部に低融点金属(SnまたはSn合金)の残留割合が低く、リフロー後に得られる接合体について、熱衝撃試験を行った場合の金属間化合物層の成長やクラックの発生が抑制され、接合強度の低下を引き起こさなかったことによるものと考えられる。
【0068】
また、試料番号14〜23の試料が高耐熱性を備えているのは、第1金属部材および第2金属部材として、Cu−Cr合金を使用した実施例の場合には、第1イオン化エネルギーが746kJ・mol-1であるCuに対して、固溶しているCrの第1イオン化エネルギーが653kJ・mol-1と小さいことが原因と考えられる。すなわち、第1イオン化エネルギーが小さいCrがCuに対して固溶していることで、Crがイオン化すること、すなわち、酸化されることにより、拡散主体であるCuの酸化が抑制され、反応が促進するためと考えられる。
【0069】
一方、比較例のように、第2金属としてCu−Zn合金を使用した場合、Znの第1イオン化エネルギーが906kJ・mol-1で、Cuの第1イオン化エネルギーよりも大きいために、拡散主体であるCuの酸化が顕著となり、金属間化合物の生成反応が効率よく進行しないことによるものと考えられる。
【0070】
上記実施形態1では、第1金属部材と第2金属部材の両方がCu−Al合金である場合を例にとって説明したが、本発明においては、いずれか一方がCu−Al合金であればよい。その場合も金属間化合物を主成分とする接合部が形成されるため、第1金属部材と第2金属部材とを確実に接合することができる。
【0071】
また、上記実施形態1では、Cu−Al合金からなる第1金属部材と第2金属部材を、低融点金属(SnまたはSnを含む合金)を含む接合材料を用いて接合するようにしたが、例えば、ガラスエポキシ基板上のCu−Al合金からなるか、あるいは、それらのめっき膜を備えた実装用電極(本発明における第1金属部材)と、チップコンデンサ(電子部品)のCu−Al合金からなるか、あるいは、それらのめっき膜を備えた外部電極(本発明における第2金属部材)とを、低融点金属(SnまたはSnを含む合金)とフラックスとを配合したソルダペーストを用いて接合する場合にも、上記実施形態1の場合と同様に、第1金属部材と第2金属部材を十分な接合強度を持って確実に接合することができること、温度階層接続における再リフローなどの段階での接合材料の流れ出しを防止することが可能であることなどが確認されている。
【0072】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、接合対象物の種類や、接合工程における条件、接合材料を構成する低融点金属の具体的な組成、第1金属および第2金属の組成などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 板状の接合材料
11a 第1金属部材(第1金属)
11b 第2金属部材(第2金属)
12 金属間化合物
図1
図2
図3