特許第5943135号(P5943135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5943135
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】合成床版用鋼材パネルおよび合成床版
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   E01D19/12
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-226124(P2015-226124)
(22)【出願日】2015年11月18日
【審査請求日】2015年11月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豪
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−013410(JP,A)
【文献】 特開2008−297817(JP,A)
【文献】 特開2009−243134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00〜 24/00
E21D 10/00〜 19/06
E04B 1/00〜 5/43
E04C 5/00〜 5/20
E04C 3/00〜 3/46
E04G 21/00〜 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底鋼板と、
前記底鋼板の一方の面に自身の長手方向がお互いに略平行となるように配置された複数の山形鋼と、
前記底鋼板の前記一方の面に設けられたずれ止めと、
を備え、
前記山形鋼の一方の板状部は前記底鋼板の前記一方の面に溶接されており、
前記底鋼板に溶接された前記山形鋼の前記一方の板状部と前記底鋼板とのなす角は90°未満であり、前記山形鋼の他方の板状部は前記底鋼板から遠ざかる方向に傾斜している合成床版用鋼材パネルであって、
前記山形鋼の前記一方の板状部のうちの少なくとも一部は前記底鋼板から離れており、前記山形鋼の前記一方の板状部のうち、前記底鋼板から離れている部位の少なくとも一部の下方には、その長手方向が前記山形鋼の長手方向と略平行に延びる支点部フラットバーが配置されており、該支点部フラットバーは前記山形鋼の前記一方の板状部に溶接されていることを特徴とする合成床版用鋼材パネル
【請求項2】
前記他方の板状部の前記底鋼板と対向する面は、前記底鋼板となす角が2°以上45°以下であることを特徴とする請求項1に記載の合成床版用鋼材パネル。
【請求項3】
前記他方の板状部の前記底鋼板と対向する面は、前記底鋼板となす角が5°以上40°以下であることを特徴とする請求項1に記載の合成床版用鋼材パネル。
【請求項4】
前記山形鋼はJIS規格品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の合成床版用鋼材パネル。
【請求項5】
前記ずれ止めはスタッドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合成床版用鋼材パネル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の合成床版用鋼材パネルを用いて構成された合成床版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成床版用鋼材パネルおよび合成床版に関し、詳細には山形鋼を用いた合成床版用鋼材パネルおよび合成床版に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼とコンクリートの合成床版は、耐久性や施工性等に優れるため、各地において採用が進んできている。
【0003】
合成床版には数多くのタイプがあり、合成床版の中には形鋼を用いたタイプがある。図7は、形鋼を用いた合成床版の一例である(特許文献1参照)。
【0004】
図7に示す合成床版100は、上部フランジ101aの上面に突起101bを有するT形鋼101を並列配置し、T形鋼101のウェブ部101cの下端部を底鋼板102に溶接してなる構造を備えている。図7において、符号103は、T形鋼101と直交するように配設された配力鉄筋である。
【0005】
合成床版100において、T形鋼101が補強材とずれ止めの機能を兼ね備えており、T形鋼101による底鋼板102に対する補剛効果ならびに鋼(底鋼板102およびT形鋼101)とコンクリート104との合成効果を得ることができる。このため、合成床版100は高剛性の床版となっており、床版支間が6mを超える少数主桁橋や細幅箱桁橋等の長支間床版への適用が可能となっている。
【0006】
しかしながら、合成床版100の施工において、T形鋼101の間隔が密になるとコンクリートの流動性に十分に配慮することが必要となる。また、T形鋼101の上部フランジ101aの下面は略水平な面となっているので、T形鋼101の上部フランジ101aの下方には空隙が生じやすいと考えられ、この点でも、合成床版100の施工においては、コンクリートの流動性に十分に配慮することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−195205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、施工時にコンクリートを流動させやすい構造であって、かつ、高剛性の合成床版を得やすい合成床版用鋼材パネルならびに施工時にコンクリートを流動させやすい構造であって、かつ、高剛性である合成床版を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の合成床版用鋼材パネルおよび合成床版により、前記課題を解決したものである。
【0010】
即ち、本発明に係る合成床版用鋼材パネルは、底鋼板と、前記底鋼板の一方の面に自身の長手方向がお互いに略平行となるように配置された複数の山形鋼と、前記底鋼板の前記一方の面に設けられたずれ止めと、を備え、前記山形鋼の一方の板状部は前記底鋼板の前記一方の面に溶接されており、前記底鋼板に溶接された前記山形鋼の前記一方の板状部と前記底鋼板とのなす角は90°未満であり、前記山形鋼の他方の板状部は前記底鋼板から遠ざかる方向に傾斜している合成床版用鋼材パネルであって、前記山形鋼の前記一方の板状部のうちの少なくとも一部は前記底鋼板から離れており、前記山形鋼の前記一方の板状部のうち、前記底鋼板から離れている部位の少なくとも一部の下方には、その長手方向が前記山形鋼の長手方向と略平行に延びる支点部フラットバーが配置されており、該支点部フラットバーは前記山形鋼の前記一方の板状部に溶接されていることを特徴とする合成床版用鋼材パネルである。
【0011】
ここで、「前記底鋼板に溶接された前記山形鋼の前記一方の板状部と前記底鋼板とのなす角」とは、「前記底鋼板に溶接された前記山形鋼の前記一方の板状部」の、他方の板状部とは反対側の側面が前記底鋼板となす角のことであり、図5の場合、角度αのことである。
【0012】
また、他方の板状部が「底鋼板から遠ざかる方向に傾斜」とは、他方の板状部において、当該山形鋼の2つの板状部の交点部から遠い部位ほど底鋼板から遠い位置に位置する状態のことである。
【0013】
前記他方の板状部の前記底鋼板と対向する面は、前記底鋼板となす角が2°以上45°以下であることが好ましい。
【0014】
ここで、前記他方の板状部の前記底鋼板と対向する面が前記底鋼板となす角とは、前記他方の板状部の前記底鋼板と対向する面を仮想的に延長した面が前記底鋼板となす角のことである(本願において、以下同様)。
【0015】
また、前記他方の板状部の前記底鋼板と対向する面は、前記底鋼板となす角が5°以上40°以下であることがより好ましい。
【0016】
前記山形鋼としては、JIS規格品を用いてもよい。
【0017】
前記ずれ止めとしては、例えば、スタッドを用いることができる。
【0018】
本発明に係る合成床版は、前記合成床版用鋼材パネルを用いて構成された合成床版である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る合成床版用鋼材パネルによれば、底鋼板に溶接された山形鋼の一方の板状部と底鋼板とのなす角は90°未満であり、山形鋼の他方の板状部は底鋼板から遠ざかる方向に傾斜しているので、施工時にコンクリートを流動させやすく、コンクリートの充填性が良好な合成床版を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係る合成床版用鋼材パネルによれば、山形鋼の他方の板状部は、底鋼板と接触しておらず、底鋼板からある程度の距離があるため、高剛性の合成床版を得ることができる。
【0021】
また、本発明に係る合成床版によれば、底鋼板に溶接された山形鋼の一方の板状部と底鋼板とのなす角は90°未満であり、山形鋼の他方の板状部は底鋼板から遠ざかる方向に傾斜しているので、施工時にコンクリートを流動させやすく、コンクリートの充填性を良好にすることができる。
【0022】
また、本発明に係る合成床版によれば、山形鋼の他方の板状部は、底鋼板と接触しておらず、底鋼板からある程度の距離があるため、高剛性にすることができる。
【0023】
また、本発明に係る合成床版用鋼材パネルおよび合成床版に用いる山形鋼としては、汎用品であるJIS規格品の山形鋼を用いることもでき、汎用品であるJIS規格品の山形鋼を用いた場合には、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る合成床版用鋼材パネルを斜め上方から見た斜視図
図2】本発明の実施形態に係る合成床版用鋼材パネルを上方から見た平面図
図3】本発明の実施形態に係る合成床版の支間部の断面図(図2のIII−III線断面に対応する断面図)
図4】本発明の実施形態に係る合成床版の支点部の断面図(図2のIV−IV線断面に対応する断面図)
図5】本発明の実施形態において用いる1つの山形鋼とその下方に位置する底鋼板を拡大して示す断面図
図6】山形鋼14の傾斜角度と、底鋼板12および山形鋼14からなる鋼材の断面2次モーメントとの関係を示すグラフ
図7】特許文献1に記載された、形鋼を用いた合成床版の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る合成床版用鋼材パネル10を斜め上方から見た斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る合成床版用鋼材パネル10を上方から見た平面図である。図3は、本発明の実施形態に係る合成床版50の支間部の断面図(図2のIII−III線断面に対応する断面図)であり、図4は、本発明の実施形態に係る合成床版50の支点部の断面図(図2のIV−IV線断面に対応する断面図)である。本発明の実施形態に係る合成床版50は、本発明の実施形態に係る合成床版用鋼材パネル10を用いて構成された合成床版である。なお、図3および図4では、スタッド21を切断しない断面を想定しており、スタッド21は描いていない。図5は、本発明の実施形態において用いる1つの山形鋼14とその下方に位置する底鋼板12を拡大して示す断面図である。図5に記載の底鋼板12は、山形鋼14の配置ピッチに対応する幅を想定して描いている。
【0027】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る合成床版用鋼材パネル10は、底鋼板12と、複数の山形鋼14と、側鋼板16と、端部連結フラットバー18と、支点部フラットバー20と、スタッド21とを備えてなり、合成床版用鋼材パネル10の上部にコンクリートを打設することにより、本発明の実施形態に係る合成床版50を製作することができる。
【0028】
底鋼板12は、合成床版50の下面を構成し、主鉄筋および配力鉄筋の役割を果たし、合成床版50の主要な引張強度部材となるとともに、コンクリート打設中、型枠としても機能する部材である。底鋼板12が型枠としても機能するため、合成床版50を製作する際には型枠の設置は不要であり、通常のRC床版を現場打ちコンクリートで製作する場合よりも施工性が良好である。
【0029】
底鋼板12は、隣り合う主桁同士の間に位置する水平な底鋼板の部位だけでなく、図1に示すように、ハンチ部底鋼板12A、主桁部底鋼板12B、張り出し部底鋼板12Cも備えている。ハンチ部底鋼板12Aおよび主桁部底鋼板12Bは、合成床版50が主桁80A、80B、80C、80D、80E(以下、主桁80A等と記すことがある)と連結する部位を構成している。ハンチ部底鋼板12Aは、合成床版50が主桁80A等と連結する部位のハンチ部を形成する底鋼板12の部位である。主桁部底鋼板12Bは、主桁80A等の上面に載置される底鋼板12の部位である。張り出し部底鋼板12Cは、合成床版50の張り出し部に位置する底鋼板12の部位である。
【0030】
山形鋼14は、底鋼板12の一方の面(合成床版50として供用される時の上側の面)に、自身の長手方向がお互いに略平行となるように複数配置されている。合成床版50が主桁上に配置された状態においては、山形鋼14の長手方向は床版支間の方向(隣り合う主桁間を差し渡す方向)になる。
【0031】
山形鋼14の一方の板状部14Aの下辺は底鋼板12に溶接されて取り付けられており、これにより山形鋼14は底鋼板12に取り付けられている。山形鋼14の他方の板状部14Bは、底鋼板12と接触しておらず、底鋼板12からある程度の距離があるため、合成床版50の曲げ剛性(床版支間に発生する曲げモーメントに対する曲げ剛性)を向上させることに寄与する。このため、本実施形態に係る合成床版50は、床版支間に発生する曲げモーメントに対する剛性が大きくなっている。
【0032】
また、山形鋼14は、合成床版50のコンクリート56が床版支間の方向(山形鋼14の長手方向と直交する水平方向)に移動することを拘束するだけでなく、山形鋼14の他方の板状部14Bが、コンクリート56が底鋼板12から剥離する方向(底鋼板12と直交する方向)に移動することも拘束するので、山形鋼14は、ずれ止めとしての機能も有しており、合成床版50の合成構造としての機能維持にも寄与している。
【0033】
山形鋼14が底鋼板12に取り付けられた状態においては、図5に示すように、山形鋼14の一方の板状部14Aの外面(山形鋼14の他方の板状部14Bとは反対側の側面)と底鋼板12とがなす角αが90°よりも小さい鋭角となっている。その結果、山形鋼14の他方の板状部14Bは、底鋼板12から遠ざかる方向に傾斜しており、他方の板状部14Bにおいて、山形鋼14の2つの板状部14A、14Bの交点部14Cから遠い部位ほど底鋼板12から遠い位置に位置するようになっている。
【0034】
このため、合成床版用鋼材パネル10の上方にコンクリートを打設した際、山形鋼14の他方の板状部14Bの下方においても気泡は抜けやすくなっており、本実施形態に係る合成床版50においては、コンクリート56の充填性を向上させることができる。また、隣り合う山形鋼14同士の間隔をある程度小さくして配置しても、コンクリート56の充填性を確保しやすくなっている。
【0035】
山形鋼14の他方の板状部14Bの底鋼板12と対向する面(図3図5において下側の面)と底鋼板12とのなす角は、2°以上45°以下であることが好ましい。2°未満では山形鋼14の他方の板状部14Bの下方から気泡を抜けやすくする効果が不十分となる虞がある。一方、45°を超えると、山形鋼14の他方の板状部14Bの位置が全体として底鋼板12と近くなり過ぎ、床版支間に発生する曲げモーメントに対する剛性への寄与が小さくなってしまう。
【0036】
本実施形態において用いる山形鋼14の種類は特に限定されず、汎用品であるJIS規格品の山形鋼を用いることもでき、汎用品であるJIS規格品の山形鋼を用いた場合には、コストを低減することができる。
【0037】
側鋼板16は、合成床版50の側端部(橋軸直角方向の端部)を構成する鋼板であり、合成床版50の側端部を補強するとともに、コンクリート打設時においては合成床版50の側端部の型枠の役割も担っている。
【0038】
端部連結フラットバー18は、山形鋼14の端部を張り出し部底鋼板12Cおよび側鋼板16と連結する役割を担っている。端部連結フラットバー18の一方の先端部は側鋼板16にボルトまたは溶接により連結されており、端部連結フラットバー18の下辺は張り出し部底鋼板12Cに溶接されて連結されている。また、端部連結フラットバー18の他方の端部の側面は山形鋼14の一方の板状部14Aの外面(山形鋼14の他方の板状部14Bとは反対側の側面)にボルトまたは溶接により連結されている。前述したように、山形鋼14の一方の板状部14Aの外面(山形鋼14の他方の板状部14Bとは反対側の側面)と底鋼板12とがなす角αは90°よりも小さい鋭角となっている(図5参照)ため、端部連結フラットバー18も同様の角度αで傾斜した取り付け状態になっている。
【0039】
支点部フラットバー20は、合成床版50の主桁80A等との連結部(合成床版50の厚さが厚くなっている部位)(図2および図4参照)において、山形鋼14が底鋼板12から離れる部位を補強する役割を担っている。支点部フラットバー20の上面は、山形鋼14の一方の板状部14Aの下辺に溶接されて連結されている。
【0040】
スタッド21は、底鋼板12の上面に設けられており、鋼とコンクリートとの合成効果を確実に向上させる役割を有する。
【0041】
また、合成床版50の断面において、上方の位置には、主鉄筋52および配力鉄筋54が配置されている(図3および図4参照)。主鉄筋52および配力鉄筋54は、主桁80A等の上部に位置する合成床版50の部位に作用する負の曲げモーメントに対して抵抗する役割を有する。
【0042】
以上、本発明の実施形態に係る合成床版用鋼材パネル10および合成床版50を構成する各部材について説明してきたが、橋梁に合成床版50を実際に適用する際には、施工段階において、橋軸方向に隣り合う合成床版用鋼材パネル10同士を連結する必要がある。そのため、合成床版用鋼材パネル10の底鋼板12の橋軸方向端部にはボルト用貫通孔12Dが設けられており、連結鋼板22およびボルト24によって橋軸方向に隣り合う合成床版用鋼材パネル10同士を連結できるようになっている。連結鋼板22には、ボルト用貫通孔22Aが設けられている。
【0043】
輸送上や架設上の制約により合成床版用鋼材パネル10を分割する場合には、主桁80C上で合成床版用鋼材パネル10が分割された構造とすることが好ましい。このような構造を採用する場合、主桁80C上で底鋼板12および山形鋼14を分割し、主桁80C上の負の曲げモーメントに対しては、主鉄筋52とコンクリート56とによるRC断面で抵抗するように設計を行う。
【0044】
また、合成床版用鋼材パネル10は、工場で製作するが、合成床版50を製作する際のコンクリートの打設は現場で行っても、工場で行ってもどちらでもよい。
【0045】
コンクリートの打設を工場で行う場合、本実施形態に係る合成床版50を工場で製作し、現場に搬入することになる。この場合、現場でのコンクリート打設の作業は合成床版用鋼材パネル10同士の連結部近傍のみとなり、工場での作業によって合成床版50をほとんど完成させることができるので、現場での施工期間を短縮することができる。反面、重量の大きい完成後の合成床版50を現場に搬入して据え付ける作業を行うことが必要となるので、輸送や搬入作業および据え付け作業においては不利となる。
【0046】
一方、合成床版用鋼材パネル10を現地において据え付けた後にコンクリートの打設を行う場合、合成床版用鋼材パネル10は完成後の合成床版50と比べて重量が小さいので、輸送や搬入作業および据え付け作業においては有利となるが、現場でのコンクリート打設作業および現場でのコンクリートの養生管理が必要となる。
【0047】
本実施形態に係る合成床版50を製作する際、コンクリートの打設を工場で行うか現場で行うかについては、施工現場の状況等を勘案して決定すればよい。
【0048】
次に、山形鋼14のより好ましい傾斜角度についてさらに検討する。具体的には、山形鋼14を底鋼板12に傾けて取り付ける際の傾斜角度と剛性(断面2次モーメント)との関係の計算結果を示して、山形鋼14のより好ましい傾斜角度について説明する。
【0049】
図5に示す底鋼板12と山形鋼14とからなる鋼材の断面2次モーメントを、次のような前提で計算した。
(1)山形鋼14の間隔を500mmとし、1つの山形鋼14において計算に含める底鋼板12の幅を500mmとする。
(2)山形鋼14のサイズは、75mm×75mm×9mmとする。
(3)山形鋼14の一方の板状部14Aの外面(山形鋼14の他方の板状部14Bとは反対側の側面)と底鋼板12とがなす角αを、90°から引いた角度を山形鋼14の傾斜角度とする。即ち、山形鋼14の傾斜角度=90°−αとする。
【0050】
上記の前提(1)〜(3)に基づいて計算した断面2次モーメントの計算結果を次の表1に示すとともに、そのグラフを図6に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1および図6に示す結果から、山形鋼14の傾斜角度が5°以上40°以下のとき、断面2次モーメントが400(cm4)を超えていることがわかる。したがって、合成床版50の高剛性化の観点からは、山形鋼14の傾斜角度を5°以上40°以下とすることが好ましい。合成床版50のさらなる高剛性化の観点からは、山形鋼14の傾斜角度を8°以上35°以下とすることがより好ましい。
【0053】
なお、本発明の実施形態では、ずれ止めとしてスタッド21を用いたが、ずれ止めはスタッドに限定されるわけではなく、所定のずれ止め性能を有するずれ止めであれば、適宜に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…合成床版用鋼材パネル
12…底鋼板
12A…ハンチ部底鋼板
12B…主桁部底鋼板
12C…張り出し部底鋼板
12D、22A…ボルト用貫通孔
14…山形鋼
14A…一方の板状部
14B…他方の板状部
14C…交点部
16…側鋼板
18…端部連結フラットバー
20…支点部フラットバー
21…スタッド
22…連結鋼板
24…ボルト
50…合成床版
52…主鉄筋
54…配力鉄筋
56…コンクリート
80A、80B、80C、80D、80E…主桁
α…山形鋼14の一方の板状部14Aの外面と底鋼板12とがなす角(ただし、本明細書においては、角度αと記載したときには、なす角αの角度の大きさを示す)
【要約】      (修正有)
【課題】施工時にコンクリートを流動させやすい構造であって、かつ、高剛性の合成床版を得やすい合成床版用鋼材パネルならびに施工時にコンクリートを流動させやすい構造であって、かつ、高剛性である合成床版を提供する。
【解決手段】底鋼板12と、底鋼板12の一方の面に自身の長手方向がお互いに略平行となるように配置された複数の山形鋼14と、底鋼板12の前記一方の面に設けられたずれ止め21と、を備え、山形鋼14の一方の板状部は底鋼板12の前記一方の面に溶接されており、底鋼板12に溶接された山形鋼14の一方の板状部と底鋼板12とのなす角は90°未満であり、山形鋼14の他方の板状部は底鋼板12から遠ざかる方向に傾斜している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7