特許第5943141号(P5943141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943141
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ステータの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/06 20060101AFI20160616BHJP
   H02K 15/095 20060101ALI20160616BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20160616BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20160616BHJP
   H02K 3/48 20060101ALI20160616BHJP
   H02K 3/18 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   H02K15/06
   H02K15/095
   H02K15/04 E
   H02K3/50 Z
   H02K3/48
   H02K3/18 P
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-501483(P2015-501483)
(86)(22)【出願日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2014053962
(87)【国際公開番号】WO2014129521
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-32409(P2013-32409)
(32)【優先日】2013年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 睦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】岩月 和也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真吾
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−151668(JP,A)
【文献】 特開2010−104232(JP,A)
【文献】 特開2005−160143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00−15/02
H02K 15/04−15/16
H02K 3/18
H02K 3/48
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアにおける複数のティースに、角線導体を巻回した集中巻コイルをそれぞれ装着し、該集中巻コイルの端部を他の該集中巻コイルの端部と溶接して、ステータを製造する方法において、
第1集中巻コイルと第2集中巻コイルとを上記ティースに装着した後、第3集中巻コイルを上記ティースに装着しているときに、上記第1集中巻コイルの端部と上記第2集中巻コイルの端部との溶接を開始することを特徴とするステータの製造方法。
【請求項2】
上記集中巻コイルの端部同士の溶接は、上記各ティースに対して上記集中巻コイルを装着するごとに繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載のステータの製造方法。
【請求項3】
上記ステータは、上記集中巻コイルがU相、V相、W相の3相に分けられて、該3相の集中巻コイルが同じ配列順序で上記ステータコアの周方向に隣り合って繰り返し上記各ティースに装着された3相回転電機用のステータであり、
上記ステータコアを所定の回転角度ずつ周方向に順次回転させて、上記3相の集中巻コイルを同じ配列順序で上記ティースに装着するとともに、該装着された集中巻コイルを周方向に順次溶接することを特徴とする請求項1又は2に記載のステータの製造方法。
【請求項4】
上記第2集中巻コイルは、上記第3集中巻コイルを上記ティースに装着する一つ前に、上記ティースに装着されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のステータの製造方法。
【請求項5】
各相の上記集中巻コイルごとにそれぞれ連結される3相の連コイルにおいて、一端に位置する各相の上記集中巻コイルの端部には、該各相の集中巻コイルの端部ごとにリード導体を溶接して3相のリード部を形成するとともに、他端に位置する各相の上記集中巻コイルの端部には、該各相の集中巻コイルの端部を互いに溶接して中性点を形成することを特徴とする請求項3又は4に記載のステータの製造方法。
【請求項6】
ステータコアにおける複数のティースに、角線導体を巻回した集中巻コイルを順次装着するコイル装着手段と、
上記集中巻コイルの端部を他の上記集中巻コイルの端部と溶接する溶接手段と、を備え、
上記コイル装着手段によって、上記ティースに第3集中巻コイルを装着しているときに、上記溶接手段によって、上記ティースに既に装着した第1集中巻コイルの端部と、上記ティースに既に装着した第2集中巻コイルの端部との溶接を開始するよう構成されていることを特徴とするステータの製造装置。
【請求項7】
上記ステータコアを、その中心軸線の回りに回転させる回転手段を備え、
上記コイル装着手段と上記溶接手段とは、上記ステータコアの周方向に所定の間隔離れた状態で、それぞれ上記集中巻コイルの装着と上記集中巻コイルの端部同士の溶接とを行うよう構成されていることを特徴とする請求項6に記載のステータの製造装置。
【請求項8】
上記溶接手段による上記集中巻コイルの端部同士の溶接は、上記コイル装着手段によって上記各ティースに対して上記集中巻コイルを装着するごとに繰り返し行うよう構成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のステータの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアにおける複数のティースに集中巻コイルをそれぞれ装着したステータの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平角線等を用いて回転電機のステータを製造するに当たっては、ステータコアにおける複数のスロットにコイルをそれぞれ配置し、又はステータコアにおける複数のティースにコイルをそれぞれ装着し、全てのコイルの配置又は装着を行った後に、コイルの端部同士を互いに溶接している。
例えば、特許文献1の回転電機、特許文献2のモータ固定子においては、ステータコアに対して、平角線からなるコイルを配置した後に、各コイルの平角線の端部同士を溶接等によって接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−110122号公報
【特許文献2】特開2008−220093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ステータコアへの全てのコイルの配置が終わった後に溶接を行う場合には、コイルの配置を行う工程と、溶接を行う工程とにおいて、重複した装置を準備する必要がある。そして、重複した装置が工場内において占めるスペースが増大してしまう。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、ステータを製造するために使用する装置を低減させることができ、この装置がステータの製造工程において占めるスペースを低減させることができるステータの製造方法及び製造装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ステータコアにおける複数のティースに、角線導体を巻回した集中巻コイルをそれぞれ装着し、該集中巻コイルの端部を他の該集中巻コイルの端部と溶接して、ステータを製造する方法において、
第1集中巻コイルと第2集中巻コイルとを上記ティースに装着した後、第3集中巻コイルを上記ティースに装着しているときに、上記第1集中巻コイルの端部と上記第2集中巻コイルの端部との溶接を開始することを特徴とするステータの製造方法にある。
【0007】
本発明の他の態様は、ステータコアにおける複数のティースに、角線導体を巻回した集中巻コイルを順次装着するコイル装着手段と、
上記集中巻コイルの端部を他の上記集中巻コイルの端部と溶接する溶接手段と、を備え、
上記コイル装着手段によって、上記ティースに第3集中巻コイルを装着しているときに、上記溶接手段によって、上記ティースに既に装着した第1集中巻コイルの端部と、上記ティースに既に装着した第2集中巻コイルの端部との溶接を開始するよう構成されていることを特徴とするステータの製造装置にある。
【発明の効果】
【0008】
上記ステータの製造方法においては、角線導体を巻回した集中巻コイルをステータコアのティースに装着する場合に、ステータコアへのコイルの装着とコイルの端部同士の溶接とを、同じスペースにおいて行う工夫をしている。
具体的には、ステータコアのティースには、いずれかの集中巻コイルである第1集中巻コイルと他の集中巻コイルである第2集中巻コイルとを装着する。そして、さらに他の集中巻コイルである第3集中巻コイルをティースに装着しているときに、第1集中巻コイルの端部と第2集中巻コイルの端部とを溶接する。
【0009】
これにより、集中巻コイルの装着と溶接とを、ステータを製造する同じ工程で行うことができ、ステータを製造するために使用する装置を低減させることができる。また、ステータを製造するために使用する装置が、ステータの製造工程において占めるスペースを低減させることができる。
【0010】
上記ステータの製造装置においては、コイル装着手段及び溶接手段を用いることにより、上記ステータの製造方法と同様の作用効果を得ることができる。また、コイル装着手段及び溶接手段を、ステータを製造する同じ工程で用いることにより、これらの手段に付属して用いる治具等の装置を併合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1にかかる、ステータ製造装置を示す斜視説明図。
図2】実施例1にかかる、ステータを示す平面説明図。
図3】実施例1にかかる、ステータを製造する状態を示す平面説明図。
図4】実施例1にかかる、ステータを製造する状態を示す平面説明図。
図5】実施例1にかかる、ステータを製造する状態を示す平面説明図。
図6】実施例1にかかる、ステータを製造する状態を示す平面説明図。
図7】実施例1にかかる、ステータコアのスロットに装着する集中巻コイルを、ステータコアの内周側から見た状態で示す説明図。
図8】実施例2にかかる、ステータを製造する状態を示す平面説明図。
図9】実施例2にかかる、ステータを製造する状態を示す平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したステータの製造方法及び製造装置における好ましい実施の形態につき説明する。
上記ステータの製造方法及び製造装置において、上記角線導体とは、略矩形状、扁平形状等の断面を有する導体のことをいう。また、上記集中巻コイルは、一本の角線導体を巻回して形成されていてもよい。
また、上記第1集中巻コイルの端部と上記第2集中巻コイルの端部との溶接は、上記第3集中巻コイルを上記ティースに装着している時間内に完了してもよく、この時間内に完了しなくてもよい。すなわち、上記第3集中巻コイルを上記ティースに装着している時間と、上記第1集中巻コイルの端部と上記第2集中巻コイルの端部とを溶接している時間とがオーバラップしていればよい。
【0013】
上記ステータの製造方法においては、上記集中巻コイルの端部同士の溶接は、上記各ティースに対して上記集中巻コイルを装着するごとに繰り返し行ってもよい。
この場合には、集中巻コイルの端部同士の溶接と、各ティースに対する集中巻コイルの装着とを、同じ時間帯に繰り返し行うことができる。そのため、ステータを製造する時間を容易に短縮することができる。
【0014】
上記ステータは、上記集中巻コイルがU相、V相、W相の3相に分けられて、該3相の集中巻コイルが同じ配列順序で上記ステータコアの周方向に隣り合って繰り返し上記各ティースに装着された3相回転電機用のステータであり、上記ステータコアを所定の回転角度ずつ周方向に順次回転させて、上記3相の集中巻コイルを同じ配列順序で上記ティースに装着するとともに、該装着された集中巻コイルを周方向に順次溶接してもよい。
この場合には、ステータの製造を行う装置を簡略化することができる。
【0015】
また、上記第1集中巻コイル及び上記第2集中巻コイルは、同相の上記集中巻コイルであり、上記第3集中巻コイルは、上記第1集中巻コイル及び上記第2集中巻コイルとは異なる相の上記集中巻コイルであってもよい。
この場合には、他相の集中巻コイルをティースに装着しているときに、同相の集中巻コイルの溶接をすることができる。これにより、各相の集中巻コイルの装着に使用する装置又はこの装置に装着された集中巻コイルと、各相の集中巻コイルの溶接に使用する装置とが、互いに干渉しないようにして、各相の集中巻コイルの装着及び溶接を効率的に行うことができる。
【0016】
また、上記第2集中巻コイルは、上記第3集中巻コイルを上記ティースに装着する一つ前に、上記ティースに装着されたものであってもよい。
この場合には、ステータを製造する時間をできるだけ短くすることができる。
【0017】
各相の複数の上記集中巻コイルのうちの少なくとも2つ以上は、上記角線導体の巻き端部の一方が、内周側位置及び外周側位置のいずれか一方の位置において、上記ステータコアの軸方向外方に引き出された引出部を形成するとともに、上記角線導体の巻き端部の他方が、内周側位置及び外周側位置の他方の位置において、上記ステータコアの軸方向外方に引き出された後、同相の他の上記コイルの上記引出部まで引き延ばされた渡り部を形成していてもよい。
この場合には、集中巻コイルの引出部と、同相の他の集中巻コイルの渡り部とを互いに溶接して連結することができる。
【0018】
また、各相の上記集中巻コイルごとにそれぞれ連結される3相の連コイルにおいて、一端に位置する各相の上記集中巻コイルの端部には、該各相の集中巻コイルの端部ごとにリード導体を溶接して3相のリード部を形成するとともに、他端に位置する各相の上記集中巻コイルの端部には、該各相の集中巻コイルの端部を互いに溶接して中性点を形成してもよい。
この場合には、ステータを製造する同じ工程において、ステータコアへのコイルの装着とコイルの端部同士の溶接とを行うだけでなく、3相のリード導体の溶接と、中性点の溶接とを行うこともできる。そのため、ステータをより短時間で、かつ少ない装置によって製造することができる。
【0019】
上記ステータの製造装置は、上記ステータコアを、その中心軸線の回りに回転させる回転手段を備え、上記コイル装着手段と上記溶接手段とは、上記ステータコアの周方向に所定の間隔離れた状態で、それぞれ上記集中巻コイルの装着と上記集中巻コイルの端部同士の溶接とを行うよう構成されていてもよい。
この場合には、コイル装着手段と溶接手段との干渉を避けて、ステータコアを回転させながらステータの製造を行うことができる。
【0020】
また、上記ステータの製造装置においては、上記溶接手段による上記集中巻コイルの端部同士の溶接は、上記コイル装着手段によって上記各ティースに対して上記集中巻コイルを装着するごとに繰り返し行うよう構成されていてもよい。
この場合には、集中巻コイルの端部同士の溶接と、各ティースに対する集中巻コイルの装着とを、同じ時間帯に繰り返し行うことができる。そのため、ステータを製造する時間を容易に短縮することができる。
【実施例】
【0021】
以下に、ステータの製造方法及び製造装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のステータ5の製造方法においては、図1に示すごとく、ステータコア6における複数のティース61に、角線導体711を巻回した3相の集中巻コイル71U,71V,71Wをそれぞれ装着し、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72aを他の同相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72bと溶接して、ステータ5を製造する。このステータ5の製造に当たっては、第1集中巻コイルと第2集中巻コイルとをティース61に装着する。次いで、第1集中巻コイル及び第2集中巻コイルとは異なる相の第3集中巻コイルをティース61に装着しているときに、第1集中巻コイルの端部72aと第2集中巻コイルの端部72bとの溶接を開始する。また、第2集中巻コイルは、第3集中巻コイルをティース61に装着する一つ前に、ティース61に装着されたものである。
【0022】
以下に、本例のステータ5の製造方法及び製造装置1につき、図1図6を参照して詳説する。
(実施例1)
図2に示すごとく、本例のステータ5は、集中巻コイル71U,71V,71WをU相、V相、W相の3相の連コイル7U,7V,7Wごとに分けて、ステータコア6の各ティース61に装着する3相回転電機用のステータ5である。ステータコア6は、その内周側に、スロット62及びティース61を放射状に有するものであり、インナーロータの外周側に配置されるものである。集中巻コイル71U,71V,71Wは、略矩形状、扁平形状等の断面を有する角線導体(平角線)711を、ティース61の外周に沿った形状に巻回して形成されている。角線導体711は、銅材料からなる導体層と、導体層の外周を被覆する絶縁樹脂からなる絶縁層とによって形成されている。各集中巻コイル71U,71V,71Wは、一本の角線導体711を巻回して形成されている。
【0023】
ステータ5においては、3相の集中巻コイル71U,71V,71Wが同じ数だけ、同じ配列順序でステータコア6の周方向Cに隣り合って繰り返しティース61に装着されている。そして、ステータコア6の軸方向一端側の端部において、同相の集中巻コイル71U(又は71V,71W)の端部72a,72b同士が溶接によって接合されている。ステータコア6には、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wが各相ごとにそれぞれ連なった3相の連コイル7U,7V,7Wが配置されている。3相の連コイル7U,7V,7Wはスター結線されている。3相の連コイル7U,7V,7Wの一端には3相のリード部73が形成され、3相の連コイル7U,7V,7Wの他端には中性点74が形成されている。
【0024】
3相の連コイル7U,7V,7Wの一端に位置する各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72aには、この各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72aごとにリード導体731が溶接されて、3相のリード部73が形成されている。また、3相の連コイル7U,7V,7Wの他端に位置する各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72cには、この各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72cが互いに溶接されて中性点74が形成されている。
【0025】
図2に示すごとく、3相のリード部73は、ステータコア6の軸方向端面に取り付けられた端子台8に対して配置されている。3相のリード導体731は、端子台8に予め取り付けられている。そして、端子台8上のリード導体731と、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72aとが溶接されて、3相のリード部73が形成される。
【0026】
また、図7に示すごとく、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wにおいては、ステータコア6の外周側の位置に引き出された一方の端部72aと、他相の集中巻コイル71U,71V,71Wの軸方向外方を通過して、ステータコア6の内周側の位置から外周側の位置まで引き出された他方の端部72bとが形成されている。なお、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wにおいて、中性点74を形成する端部72cは、ステータコア6の内周側の位置に引き出されている。
【0027】
外周側の位置に引き出された一方の端部72aは、角線導体711の一方の巻き端部からなる。一方の端部72aは、ステータコア6の軸方向外方に引き出された引出部を形成している。ステータコア6の内周側の位置から外周側の位置まで引き出された他方の端部72bは、角線導体711の他方の巻き端部からなる。他方の端部72bは、ステータコア6の軸方向外方に引き出された後、同相の他のコイル71U,71V,71Wの一方の端部72aまで引き延ばされた渡り部を形成している。
引出部としての一方の端部72a及び渡り部としての他方の端部72bは、中性点74を形成する端部72c以外に形成されている。
【0028】
図1に示すごとく、本例のステータ5を製造する際には、コイル装着手段2、溶接手段3及び回転手段4を備えたステータ製造装置1を用いる。
コイル装着手段2は、ステータコア6における複数のティース61に、角線導体711を巻回した集中巻コイル71U,71V,71Wを順次装着するよう構成されている。コイル装着手段2は、集中巻コイル71U,71V,71Wを保持する保持部21を有している。コイル装着手段2の保持部21は、ステータコア6における各ティース61に順次対向され、ティース61に向かって前進して、保持部21に保持する集中巻コイル71U,71V,71Wをティース61に装着するよう構成されている。
【0029】
溶接手段3は、TIG溶接(タングステン−不活性ガス溶接)を行う溶接トーチ31を有している。溶接トーチ31は、ロボット(移動装置)に取り付けて、集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72a,72bが位置する各溶接部位へ移動させることができる。
また、コイル装着手段2と溶接手段3とは、ステータコア6の周方向Cに所定の間隔離れた状態で、それぞれ集中巻コイル71U,71V,71Wの装着と、集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72a,72b同士の溶接とを行うよう構成されている。
【0030】
ステータコア6は、回転手段4に保持されている。回転手段4は、ステータコア6を保持し、ティース61の周方向Cへの形成間隔に対応した角度ずつ、ステータコア6を、その中心軸線の回りに回転させるよう構成されている。なお、回転手段4は、ステータコア6を回転させる構成とする以外にもコイル装着手段2を回転させる構成とすることもできる。また、溶接トーチ31は、適宜箇所に固定しておくこともできる。
【0031】
ステータ製造装置1は、溶接手段3によって溶接した部位が正常に溶接されているかを監視する監視カメラを備えていてもよい。監視カメラは、画像処理を行って溶接状態の良否を確認することができる。この場合には、監視カメラは、溶接手段3が溶接を行う部位ごとに、集中巻コイル71U,71V,71Wのティース61への装着、又は集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72a,72b同士の溶接を行っているときに、各溶接部位の良否を判断することができる。
【0032】
次に、ステータ製造装置1を用いてステータ5を製造する方法及びその作用効果につき説明する。
本例においては、3相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72a,72b同士の溶接は、各ティース61に対して集中巻コイル71U,71V,71Wを装着するごとに繰り返し行う。また、ステータコア6を所定の回転角度ずつ周方向Cに順次回転させて、3相の集中巻コイル71U,71V,71Wを同じ配列順序でティース61に装着するとともに、該装着された集中巻コイル71U,71V,71Wを周方向Cに順次溶接する。
【0033】
まず、図3に示すごとく、ステータコア6の軸方向端面に3相のリード導体731が設けられた端子台8を取り付けておく。そして、コイル装着手段2によって、U相、V相、W相の3相の集中巻コイル71U,71V,71Wをステータコア6のティース61に装着する。この集中巻コイル71U,71V,71Wは、リード部73を形成するために各相の連コイル7U,7V,7Wの一端に位置するものである。
【0034】
コイル装着手段2によって、U相の連コイル7Uの一端に位置するU相の集中巻コイル71Uaをティース61に装着した後には、V相の連コイル7Vの一端に位置するV相の集中巻コイル71Vaをティース61に装着しているときに、溶接手段3によって、端子台8上のリード導体731と、U相の集中巻コイル71Uaの一方の端部72aとを溶接して、U相のリード部73を形成することができる(図2参照)。また、W相の集中巻コイル71Waをティース61に装着するときについても同様に、V相のリード部73を形成することができる(図2参照)。以下に、一端とは、各連コイル7U,7V,7Wの一端を意味する。
【0035】
次いで、図4に示すごとく、コイル装着手段2によって、一端から2つ目に位置するU相の集中巻コイル71Ubをスロット62に装着する。このとき、一端から2つ目に位置するU相の集中巻コイル71Ubの一方の端部72aと、一端に位置するU相の集中巻コイル71Uaの他方の端部72bとが対面する。そして、このU相の集中巻コイル71Ubを装着しているときに、溶接手段3によって、端子台8上のリード導体731と、一端に位置するW相の集中巻コイル71Waの一方の端部72aとを溶接して、W相のリード部73を形成することができる(図2参照)。
【0036】
次いで、図5に示すごとく、コイル装着手段2によって、一端から2つ目に位置するV相の集中巻コイル71Vb(第3集中巻コイル)をスロット62に装着する。このとき、一端から2つ目に位置するV相の集中巻コイル71Vb(第3集中巻コイル)の一方の端部72aと、一端に位置するV相の集中巻コイル71Vaの他方の端部72bとが対面する。そして、このV相の集中巻コイル71Vb(第3集中巻コイル)を装着しているときに、一端から2つ目に位置するU相の集中巻コイル71Ub(第2集中巻コイル)の一方の端部72aと、一端に位置するU相の集中巻コイル71Ua(第1集中巻コイル)の他方の端部72bとを、溶接手段3によって溶接することができる。
【0037】
次いで、図6に示すごとく、コイル装着手段2によって、一端から2つ目に位置するW相の集中巻コイル71Wb(第3集中巻コイル)をスロット62に装着する。このとき、一端から2つ目に位置するW相の集中巻コイル71Wb(第3集中巻コイル)の一方の端部72aと、一端に位置するW相の集中巻コイル71Waの他方の端部72bとが対面する。そして、このW相の集中巻コイル71Wb(第3集中巻コイル)を装着しているときに、一端から2つ目に位置するV相の集中巻コイル71Vb(第2集中巻コイル)の一方の端部72aと、一端に位置するV相の集中巻コイル71Va(第1集中巻コイル)の他方の端部72bとを、溶接手段3によって溶接することができる。
【0038】
以降、同様にして、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wを装着している時間を利用して、既に装着が行われた各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72a,72b同士を、溶接手段3によって溶接することができる。
また、各相の全ての集中巻コイル71U,71V,71Wの装着が行われた後には、溶接手段3によって、3相の連コイル7U,7V,7Wの他端に位置する各相の集中巻コイル71U,71V,71Wの端部72cを互いに溶接して、中性点74を形成することができる(図2参照)。また、溶接手段3による各相のリード部73の形成は、中性点74を形成するときに行うこともできる。
【0039】
本例においては、ステータコア6の周方向Cにおいて、一方の端部72aが位置する側から他方の端部72bが位置する側へ回る一方向C1に向けて、順次、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wを同じ配列順序でステータコア6のスロット62に装着する。
図7に示すごとく、各相の集中巻コイル71U(又は71V,71W)をスロット62に装着するときには、この集中巻コイル71U(又は71V,71W)の引出部としての一方の端部72aを、スロット62に先に装着された他の2相の集中巻コイル71V,71W(又は71U,71W、あるいは71U,71V)の渡り部としての他方の端部72bに対する軸方向内方を通過させる。そのため、他方の端部72bがステータコア6の軸方向外方に引き出された位置は、一方の端部72aがステータコア6の軸方向外方に引き出された位置よりも、軸方向外方に位置する。
【0040】
本例においては、ステータ製造装置1を用いることにより、集中巻コイル71U,71V,71Wの装着と溶接とを、ステータ5を製造する同じ工程で行うことができる。そして、コイル装着手段2及び溶接手段3を、ステータ5を製造する同じ工程で用いることにより、これらの手段2,3に付属して用いる治具等の装置を併合することができる。そのため、ステータ5を製造するために使用する装置を低減させることができる。また、ステータ5を製造するために使用する装置が、ステータ5の製造工程において占めるスペースを低減させることもできる。
【0041】
(実施例2)
本例は、図8に示すように、上記実施例1で示したステータコア6の一方向C1と反対側の他方向C2に向けて、順次、各相の集中巻コイル71U,71V,71Wを、同じ配列順序で装着する例である。本例の各集中巻コイル71U,71V,71Wは、ステータコア6の周方向Cにおいて、他方の端部72bが位置する側から一方の端部72aが位置する側へ回るように、順次、ステータコア6のスロット62に装着される。
【0042】
本例の集中巻コイル71U,71V,71Wは、その渡り部としての他方の端部72bを、ステータコア6のスロット62に既に装着した集中巻コイル71U,71V,71Wの引出部としての一方の端部72a、及び集中巻コイル71U,71V,71Wの渡り部としての他方の端部72bの間を通過させながら、スロット62に装着する。そして、集中巻コイル71U(又は71V,71W)の一方の端部72aを、スロット62に先に装着された他の2相の集中巻コイル71V,71W(又は71U,71W、あるいは71U,71V)の他方の端部72bに対する軸方向内方を通過させる必要がない。これによって、一方の端部72a及び他方の端部72bがステータコア6の軸方向外方に引き出された位置を、できるだけステータコア6の軸方向端面に近づけることができ、ステータコア6の軸方向端面から突出するコイルエンド部の突出量をできるだけ小さくすることができる。
【0043】
また、本例においては、コイル装着手段2又はコイル装着手段2に装着された集中巻コイル71U,71V,71Wと、溶接手段3との干渉を容易に避けるために、コイル装着手段2による装着位置と、溶接手段3による溶接位置とをできるだけ離している。コイル装着手段2を用いて、U相、V相及びW相の集中巻コイル71U,71V,71Wをステータコア6の他方向C2に向けて2回繰り返してスロット62に装着した後に、溶接手段3を用いた溶接を開始する。
【0044】
図8においては、W相の連コイル7Wの一端から3つ目に位置するW相の集中巻コイル71Wをスロット62に装着しているときに、V相の連コイル7Vの一端に位置するV相の集中巻コイル71Vの一方の端部72aと、V相の連コイル7Vの一端から2つ目に位置するV相の集中巻コイル71Vの他方の端部72bとの溶接を行う状態を示す。また、図9においては、V相の連コイル7Vの一端から3つ目に位置するV相の集中巻コイル71Vをスロット62に装着しているときに、U相の連コイル7Uの一端に位置するU相の集中巻コイル71Uの一方の端部72aと、U相の連コイル7Uの一端から2つ目に位置するU相の集中巻コイル71Uの他方の端部72bとの溶接を行う状態を示す。
【0045】
その他の集中巻コイル71U,71V,71Wについても同様に、ステータコア6の他方向C2に回るように、順次、装着及び溶接を行う。
本例においても、その他の構成及び図中の符号は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9