(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1の制御モードにおいて、前記交差角検知部および前記角度変化検知部の両方の出力に基づいて、前記本体部の前記ピッチ方向への角度変化が0となるように前記第1の駆動部を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の手押し車。
前記切替部は、前記支持部における前記本体部または前記第1の車輪の回転軸に支持されている側の端部に連結されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の手押し車。
前記本体部または前記第1の車輪の回転軸に対するピッチ方向への前記支持部の所定角度以上の回転を阻止する阻止部を備える、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の手押し車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば進行方向に大きな段差が存在した場合、ユーザは、当該歩行補助車の補助輪(前輪)だけを地面から浮かせて段差を乗り越えようとする可能性がある。
【0006】
しかしながら、倒立振子制御では、本体部の角度変化が0になるように一対の車輪(後輪)の回転を制御する。そのため、ユーザが当該歩行補助車の補助輪(前輪)だけを地面から浮かせようとしたとき、一対の車輪(後輪)が回転して歩行補助車が意図せず動いてしまう可能性がある。
【0007】
そこで、この発明は、ユーザが前輪を地面から浮かせようとしたときに手押し車が意図せず動くことを防止する手押し車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の手押し車は、第1の車輪と、第1の車輪に対してピッチ方向に回転可能に支持されている本体部と、第1の車輪を駆動する第1の駆動部と、を備えている。さらに、本発明の手押し車は、本体部または第1の車輪の回転軸に対してピッチ方向に回転可能に支持されている支持部と、第1の車輪の回転による支持部の進行方向に対して第1の車輪より前方で支持部に回転可能に支持されている第2の車輪と、本体部のピッチ方向の傾斜角の角度変化を検知する角度変化検知部と、本体部と支持部とが成す交差角を検出する交差角検知部と、を備えている。本体部の他端には把持部が設けられる。
【0009】
さらに、本発明の手押し車は、交差角検知部の出力に基づいて、本体部のピッチ方向への角度変化が0となるように第1の駆動部を制御する第1の制御モードと、角度変化検知部の出力に基づいて、本体部のピッチ方向への角度変化が0となるように第1の駆動部を制御する第2の制御モードと、を有する制御部と、第1の制御モードと第2の制御モードとを切り替える切替部と、を備えている。
【0010】
この構成においてユーザは、把持部を握る、或いは前腕等を把持部に載せ、手押し車を地面上で前後方向へ動かす。手押し車は、第1の制御モードにおいて倒立振子制御を行い、ユーザの歩行を補助する。
【0011】
そして、手押し車の第2の車輪だけを地面から浮かせて段差を乗り越えようとする場合、ユーザは、切替部によって第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。これにより、制御部は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。また、ユーザが支持部をピッチ方向へ回転させる。そのため、支持部に支持されている第2の車輪もピッチ方向へ回転し、手押し車は、前輪である第2の車輪だけが地面から浮いたティッピング状態になる。このティッピング状態において制御部は、角度変化検知部の出力に基づいて第2の制御モードの倒立振子制御を行い、ユーザの歩行を補助する。
【0012】
手押し車をティッピング状態にした後、第2の車輪が段差の上方に到達するまで、ユーザは、手押し車を進行方向へ移動する。そして、第2の車輪が段差の上方に到達した後、ユーザは、把持部を持って、第1の車輪を段差上に乗り越えさせる。
【0013】
ここで、ユーザが手押し車の第2の車輪だけを地面から浮かせようとしたとき、交差角検知部から出力される本体部と支持部の交差角は変化する。
【0014】
しかし、第2の制御モードの倒立振子制御では制御部が、角度変化検知部の出力に基づいて、本体部の角度変化が0になるように第1の車輪の回転を制御している。すなわち、第2の制御モードの倒立振子制御では制御部が、交差角検知部の出力に基づいて倒立振子制御を行っていない。
【0015】
そのため、ユーザが手押し車の第2の車輪だけを地面から浮かせようとしたとき、交差角検知部の出力に基づいて第1の車輪が回転して手押し車が意図せず動くことが無くなる。
【0016】
したがって、手押し車によれば、ユーザが第2の車輪を地面から浮かせようとしたときに手押し車が意図せず動くことを防止できる。
【0017】
また、制御部は、第1の制御モードにおいて、交差角検知部および角度変化検知部の両方の出力に基づいて、本体部のピッチ方向への角度変化が0となるように第1の駆動部を制御する、ことが好ましい。
【0018】
この構成において、交差角検知部および角度変化検知部の両方の出力に基づいて倒立振子制御を行う第1の制御モードは、角度変化検知部の出力に基づいて倒立振子制御を行う第2の制御モードに比べて、精度の高い倒立振子制御を行うことができる。
【0019】
また、切替部は、支持部における本体部または第1の車輪の回転軸に支持されている側の端部に連結されている、ことが好ましい。
【0020】
この構成において、手押し車の第2の車輪だけを地面から浮かせて段差を乗り越えようとする場合、ユーザは、切替部を押下する。これにより、制御部は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。さらに、切替部が押下することで、支持部における第1の車輪の回転軸または本体部に支持されていない側の端部がピッチ方向へ回転する。そのため、当該端部に設けられている第2の車輪もピッチ方向へ回転し、手押し車は、第2の車輪だけが地面から浮いたティッピング状態になる。
【0021】
また、本体部または第1の車輪の回転軸に対するピッチ方向への支持部の所定角度以上の回転を阻止する阻止部を備えることが好ましい。
【0022】
この構成においてユーザは、第2の車輪が段差の上方に到達した後、阻止部により阻止されるまで支持部が回転し、その支持部に支持されている第2の車輪をてこの支点にすることで、第1の車輪を段差上に持ち上げることができる。
【0023】
また、支持部を能動的にピッチ方向に回転させる第2の駆動部を備え、
制御部は、切替部によって第2の制御モードに切り替えられたとき、支持部をピッチ方向に回転させるよう第2の駆動部に指示する、ことが好ましい。
【0024】
この構成では、手押し車の第2の車輪だけを地面から浮かせて段差を乗り越えようとする場合、ユーザは、切替部を操作する。これにより、制御部は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替えるとともに、支持部をピッチ方向へ第2の駆動部によって回転させる。すなわち、手押し車は、前輪である第2の車輪だけが地面から浮いたティッピング状態になる。
【0025】
したがって、この構成の手押し車によれば、切替部の操作により支持部が自動的にピッチ方向へ回転するため、ユーザの使い勝手が向上する。
【0026】
また、手押し車は、段差を検出する段差検出部を備え、前記切替部は、前記段差検出部の検出結果に基づいて、前記第1の制御モードと前記第2の制御モードとを切り替える態様としてもよい。この場合、自動で第1の制御モードと第2の制御モードとを切り替えることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、ユーザが第2の車輪を地面から浮かせようとしたときに手押し車が意図せず動くことを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1実施形態である手押し車100について説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態である手押し車100の外観斜視図である。
図2は、
図1に示す手押し車100の側面図である。
図3は、
図1に示す手押し車100の正面図である。
図4は、
図1に示す手押し車100の模式側面図である。
【0031】
手押し車100は、本体部110と、一対の主輪111と、支持部112と、補助輪113と、阻止部118と、切替レバー119と、傾斜角センサ20と、ジャイロセンサ24と、駆動部25と、支持部用ロータリエンコーダ27と、を備えている。
【0032】
この実施形態において手押し車100は、高齢者、身障者等のユーザの歩行を補助する歩行補助車である。その他、手押し車100は例えば、ベビーカーやショッピングカートとして利用される。
【0033】
なお、主輪111が、本発明の「第1の車輪」に相当する。補助輪113が、本発明の「第2の車輪」に相当する。切替レバー119が、本発明の「切替部」に相当する。また、ジャイロセンサ24が、本発明の「角度変化検知部」に相当する。また、駆動部25が、本発明の「第1の駆動部」に相当する。また、支持部用ロータリエンコーダ27が、本発明の「交差角検知部」に相当する。
【0034】
一対の主輪111は、互いに対向するよう駆動軸に取り付けられ、同期して回転する。一つの補助輪113は、手押し車100の進行方向Pに対して主輪111より前方で支持部112に回転可能に支持されている。そのため、手押し車100では、一対の主輪111が後輪であり、一つの補助輪113が前輪である。また、各主輪111の直径は、補助輪113の直径より長い。駆動部25は、支持部112の底面に設けられており、一対の主輪111を駆動する。
【0035】
なお、一対の主輪111は、それぞれ個別に駆動させ、回転させることも可能である。また、この実施形態においては、主輪111は2輪である例を示しているが、2輪に限られるものではない。同様に、補助輪113も1輪である例を示しているが、1輪に限られるものではない。
【0036】
本体部110は、鉛直方向へ延伸する枠状の部材である。本体部110には、ジャイロセンサ24が取り付けられている。本体部110の一端は、一対の主輪111に対してピッチ方向へ回転可能に支持されている。また、本体部110の主輪111とは逆側の他端には円柱状の把持部116が設けられている。
【0037】
支持部112は、手押し車100の進行方向Pに対して、水平な地面Gと平行に延びる板状の部材である。支持部112の上面には傾斜角センサ20が取り付けられている。支持部112は、一対の主輪111の回転軸に対してピッチ方向に回転可能に支持されている。
【0038】
支持部112における主輪111に支持されている側の一端部には、詳細を後述する第1の制御モードと第2の制御モードとを切り替える切替レバー119が連結されている。また、支持部112における主輪111に支持されていない側の他端部の下方には、補助輪113が設けられている。これにより、主輪111と補助輪113の両方が地面Gに接するようになっている。
【0039】
また、支持部112の底面には、詳細を後述する支持部用ロータリエンコーダ27と、阻止部118と、が設けられている。阻止部118は、一対の主輪111の回転軸に対するピッチ方向への支持部112の所定角度(例えば30度)以上の回転を阻止する。
【0040】
なお、本実施形態における支持部112は、一対の主輪111の回転軸に対してピッチ方向に回転可能に支持されているが、これに限るものではない。実施の際の支持部112は、本体部110に対してピッチ方向に回転可能に支持されていてもよい。
【0041】
把持部116には、ユーザインタフェース(後述の
図5に示すユーザI/F28)が設けられている。ユーザI/F28には、手押し車100の電源スイッチ、等が設けられている。
【0042】
以上の構成においてユーザは、補助輪113側から把持部116を握る、或いは前腕等を把持部116に載せ、手押し車100を地面G上で前後方向へ動かす。
【0043】
次に、手押し車100の構成および基本動作について説明する。
【0044】
図5は、
図1に示す手押し車100のハードウェア構成を示すブロック図である。手押し車100は、傾斜角センサ20、制御部21、ROM22、RAM23、ジャイロセンサ24、駆動部25、主輪用ロータリエンコーダ26、支持部用ロータリエンコーダ27、およびユーザI/F28を備えている。
【0045】
制御部21は、手押し車1を統括的に制御する機能部であり、ROM22に記憶されているプログラムを読み出し、当該プログラムをRAM23に展開することで種々の動作を実現する。
【0046】
主輪用ロータリエンコーダ26は、主輪111の回転角度を検知し、検知結果を制御部21に出力する。制御部21は、主輪用ロータリエンコーダ26から入力される主輪111の回転角度を微分し、主輪111の角速度を算出する。
【0047】
支持部用ロータリエンコーダ27は、本体部110と支持部112との成す角度である交差角を検知し、検知結果を制御部21に出力する。
【0048】
傾斜角センサ20は、鉛直方向に対する支持部112の傾斜角を検知し、制御部21に出力する。
【0049】
ジャイロセンサ24は、本体部110のピッチ方向(
図1における主輪111の回転軸を中心とする回転方向)の角速度を検知し、制御部21に出力する。
【0050】
なお、本実施形態では、交差角を検知する手段として、支持部用ロータリエンコーダ27を用いる例を示したが、これに限るものではなく、その他どの様なセンサを用いてもよい。
【0051】
同様に、本実施形態では、本体部110のピッチ方向の傾斜角の角度変化を検知する手段として、ジャイロセンサ24を用いる例を示したが、これに限るものではない。ジャイロセンサ24の代わりに傾斜角センサ(不図示)を本体部110に備えている場合、当該傾斜角センサで検知した本体部110の傾斜角度を微分して本体部110の傾斜角速度を算出する。また、加速度センサを用いることも可能であるし、その他どの様なセンサを用いてもよい。
【0052】
制御部21は、第1の制御モードと第2の制御モードとを有する。
【0053】
詳述すると、制御部21は、第1の制御モードにおいて、ジャイロセンサ24および支持部用ロータリエンコーダ27の検知結果に基づいて、本体部110のピッチ方向の角度変化が0となるように、かつ本体部110の鉛直方向に対する傾斜角度が目標値(例えば、0や0に近い値)になるように、駆動部25により主輪111を回転し、倒立振子制御を行う。
【0054】
一方、制御部21は、第2の制御モードにおいて、ジャイロセンサ24の検知結果に基づいて、本体部110のピッチ方向の角度変化が0となるように、かつ本体部110の鉛直方向に対する傾斜角度が目標値(例えば、0や0に近い値)になるように、駆動部25により主輪111を回転し、倒立振子制御を行う。
【0055】
この倒立振子制御について以下詳述する。
【0056】
図6は、
図5に示す制御部21の構成を示す制御ブロック図である。
【0057】
制御部21は、目標角速度計算部211、トルク指令生成部212、斜度推定部213、傾斜角度検出部214、および傾斜角速度検出部216、を有している。
【0058】
傾斜角度検出部214は、第1の制御モードにおいて、支持部用ロータリエンコーダ27から出力された本体部110と支持部112の交差角θ2から、現時点の本体部110の傾斜角度θ1を算出する(
図4参照)。
【0059】
詳述すると、前述のように、支持部112は、水平な地面Gと平行になるように主輪111の回転軸に支持されている。そのため、交差角θ2が90度である場合に本体部110の傾斜角度θ1が0度になる。傾斜角度検出部214は、交差角θ2が大きくなる場合に本体部110が進行方向Pに対して後方に傾斜し、交差角θ2が小さくなる場合に本体部110が進行方向Pに対して前方に傾斜しているとして、現時点の本体部110の傾斜角度θ1を推定する。
【0060】
一方、傾斜角度検出部214は、第2の制御モードにおいて、ジャイロセンサ24の出力値(傾斜角速度)を積分して、現時点の本体部110の傾斜角度θ1を算出する。
【0061】
そして、目標角速度計算部211は、予め設定された目標傾斜角度(ここでは、鉛直方向に対して0度より少し後方に傾いた傾斜角度)と、傾斜角度検出部214で算出された現時点の本体部110の傾斜角度θ1と、の差分値を入力し、この差分値が0となるような本体部110の傾斜角速度を算出する。
【0062】
傾斜角速度検出部216は、第1、第2の制御モードの両方において、ジャイロセンサ24の出力に基づいて本体部110の傾斜角速度を算出する。
【0063】
なお、この実施形態では、現時点の本体部110の傾斜角速度がジャイロセンサ24から入力されているが、これに限るものではない。実施の際、傾斜角速度検出部216は、第1の制御モードに限り、支持部用ロータリエンコーダ27から入力された本体部110と支持部112の交差角θ2を微分して、現時点の本体部110の傾斜角速度を算出してもよい。
【0064】
そして、トルク指令生成部212は、目標角速度計算部211で算出された傾斜角速度と、傾斜角速度検出部216で算出された現時点の本体部110の傾斜角速度と、の差分値を入力し、この差分値が0となるような印加トルクを算出する。
【0065】
一方、斜度推定部213は、傾斜角センサ20の値に基づいて推定した地面Gの傾斜角に応じて、当該地面Gの傾斜角によって生じる重力トルクを補償するためのオフセットトルクを算出する。
【0066】
このようにして、制御部21は、トルク指令生成部212で算出された印加トルクに、オフセットトルクを加算し、駆動部25に出力する。
【0067】
駆動部25は、主輪111に取り付けられた軸を回転させるモータを駆動する。駆動部25は、制御部21から入力されたトルクを主輪111のモータに印加し、主輪111を回転させる。
【0068】
以上のようにして手押し車100は、第1、第2の制御モードにおいて倒立振子制御を行い、本体部110が鉛直方向を向いている状態を維持する。そのため、ユーザが把持部116を握って把持部116を前方向へ押した場合でも、主輪111が回転して支持部112も前方向へ移動し、本体部110の姿勢は一定に保たれる。
【0069】
反対に、ユーザが把持部116を握って把持部116を後方向へ引いた場合でも、主輪111が回転して支持部112も後方向へ移動し、本体部110の姿勢は一定に保たれる。このようにして手押し車100は、第1、第2の制御モードにおいて倒立振子制御を行い、ユーザの歩行を補助する。
【0070】
なお、ジャイロセンサ24及び支持部用ロータリエンコーダ27の両方の出力に基づいて倒立振子制御を行う第1の制御モードは、ジャイロセンサ24の出力のみに基づいて倒立振子制御を行う第2の制御モードに比べて、精度の高い倒立振子制御を行うことができる。
【0071】
次に、ユーザUが手押し車100の補助輪113だけを地面Gから浮かせて段差Sを乗り越えようとする場面について説明する。
【0072】
図7は、
図1に示す手押し車100がユーザUの歩行を補助している時の手押し車100の模式側面図である。
図8は、
図1に示す手押し車100のティッピング時の模式側面図である。
図9は、
図1に示す手押し車100において前輪が段差Sを乗り越えた時の模式側面図である。
図10は、
図1に示す手押し車100において後輪が段差Sを乗り越える時の模式側面図である。
図11は、
図1に示す手押し車100において前輪および後輪が段差Sを乗り越えた時の模式側面図である。
【0073】
ここで、前述したように、手押し車100では、一対の主輪111が後輪であり、一つの補助輪113が前輪である。また、本実施形態において段差Sの高さは、主輪111の半径より大きい高さとする。
【0074】
ユーザUが第1の制御モードで手押し車100に補助されて進行方向Pへ歩行しているとき、
図7に示すように、大きな段差Sに差し掛かる場合がある。このとき、手押し車100は、ジャイロセンサ24及び支持部用ロータリエンコーダ27の両方の出力に基づいて第1の制御モードの倒立振子制御を行い、ユーザUの歩行を補助している。
【0075】
手押し車100の補助輪113だけを地面Gから浮かせて段差Sを乗り越えようとする場合、ユーザUは、切替レバー119を踏み、切替レバー119を押下する。これにより、制御部21は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。さらに、切替レバー119が押下することで、
図8に示すように、支持部112における主輪111に支持されていない側の他端部がピッチ方向Qへ回転する。そのため、当該他端部に支持されている補助輪113もピッチ方向Qへ回転し、手押し車100は、前輪である補助輪113だけが地面Gから浮いたティッピング状態になる。このティッピング状態において制御部21は、ジャイロセンサ24のみの出力に基づいて第2の制御モードの倒立振子制御を行い、ユーザUの歩行を補助する。
【0076】
手押し車100をティッピング状態にした後、
図9に示すように一対の主輪111が段差Sに接触するまで、ユーザUは、手押し車100を進行方向Pへ移動する。
【0077】
そして、一対の主輪111が段差Sに接触したとき、ユーザUは、
図10に示すようにてこの原理を利用して、一対の主輪111を段差S上に乗り越えさせる。
【0078】
詳述すると、支持部112の回転角度は、前述したように、阻止部118により所定角度(例えば30度)の範囲内に制限されている。そのため、ユーザUは、阻止部118により阻止されるまで支持部112が最大限回転し、その支持部112に支持されている補助輪113をてこの支点にすることで、一対の主輪111を段差S上に持ち上げることができる。
【0079】
図11に示すように、補助輪113及び一対の主輪111が段差Sを乗り越えた後、ユーザUは、切替レバー119を持ち上げて元の状態に戻し、補助輪113をピッチ方向Rへ回転させる。これにより、手押し車100のティッピング状態が解消され、補助輪113及び一対の主輪111が段差Sの上面に接地する。また、制御部21は、制御モードを第2の制御モードから第1の制御モードに切り替える。
【0080】
そのため、手押し車100は、ジャイロセンサ24及び支持部用ロータリエンコーダ27の両方の出力に基づいて第1の制御モードの倒立振子制御を段差S上で行い、ユーザUの歩行を補助する。
【0081】
ここで、
図8に示すように、ユーザUが手押し車100の補助輪113だけを地面Gから浮かせようとしたとき、支持部用ロータリエンコーダ27から出力される本体部110と支持部112の交差角θ2は変化する。
【0082】
しかし、第2の制御モードの倒立振子制御では制御部21が、ジャイロセンサ24のみの出力に基づいて、本体部110の角度変化が0になるように一対の主輪111の回転を制御している。すなわち、第2の制御モードの倒立振子制御では制御部21が、支持部用ロータリエンコーダ27の出力に基づいて、倒立振子制御を行っていない。
【0083】
そのため、ユーザUが手押し車100の補助輪113だけを地面Gから浮かせようとしたとき、支持部用ロータリエンコーダ27の出力に基づいて一対の主輪111が回転して手押し車100が意図せず動くことが無くなる。
【0084】
したがって、手押し車100によれば、ユーザUが補助輪113を地面Gから浮かせようとしたときに手押し車100が意図せず動くことを防止できる。
【0085】
以下、本発明の第2実施形態である手押し車200について説明する。
【0086】
図12は、本発明の第2実施形態である手押し車200の模式側面図である。
【0087】
第2実施形態の手押し車200が第1実施形態の手押し車100と相違する点は、切替レバー119の代わりに切替ワイヤー219を備える点である。切替ワイヤー219の一端は、把持部116に連結しており、切替ワイヤー219の他端は、支持部112における主輪111に支持されていない側の他端部に連結している。その他の構成については、手押し車100と同じであるため、説明を省略する。
【0088】
この実施形態では、手押し車200の補助輪113だけを地面Gから浮かせて段差Sを乗り越えようとする場合、ユーザUは、把持部116側から切替ワイヤー219を手前に引っ張る。これにより、制御部21は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。さらに、支持部112における主輪111に支持されていない側の他端部が、切替ワイヤー219に引っ張られてピッチ方向へ回転する。すなわち、手押し車200は、前輪である補助輪113だけが地面Gから浮いたティッピング状態になり、第2の制御モードで倒立振子制御を行う。
【0089】
したがって、手押し車200によれば、手押し車100と同様の効果を奏する。
【0090】
以下、本発明の第3実施形態である手押し車300について説明する。
【0091】
図13は、本発明の第3実施形態である手押し車300の模式側面図である。
【0092】
第3実施形態の手押し車300が第1実施形態の手押し車100と相違する点は、切替レバー119の代わりに駆動部319及び切替スイッチを備える点である。駆動部319が、本発明の「第2の駆動部」に相当し、切替スイッチが、本発明の「切替部」に相当する。その他の構成については、手押し車100と同じであるため、説明を省略する。
【0093】
詳述すると、支持部112には、支持部112を能動的にピッチ方向に回転させる駆動部319が設けられている。
【0094】
ユーザI/F28には、第1の制御モードと第2の制御モードとを切り替える切替スイッチが設けられている。
【0095】
制御部21は、切替スイッチによって第2の制御モードに切り替えられたとき、支持部112をピッチ方向に回転させるよう駆動部319に指示する。
【0096】
そのため、この実施形態では、手押し車300の補助輪113だけを地面Gから浮かせて段差Sを乗り越えようとする場合、ユーザUは、切替スイッチを操作する。これにより、制御部21は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替えるとともに、支持部112における主輪111に支持されていない側の他端部をピッチ方向へ駆動部319によって回転させる。すなわち、手押し車300は、前輪である補助輪113だけが地面Gから浮いたティッピング状態になり、第2の制御モードで倒立振子制御を行う。
【0097】
したがって、手押し車300によれば、手押し車100と同様の効果を奏する。さらに、手押し車300では、切替スイッチの操作により支持部112が自動的にピッチ方向へ回転するため、ユーザの使い勝手が向上する。
【0098】
なお、手押し車300においても、手押し車100または手押し車200のようにユーザが手動でティッピング状態に移行させる構成を備えていてもよい。
【0099】
次に、
図14は、段差検出部を備えた手押し車100Aの外観斜視図である。
図1と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
図15は、手押し車100Aの構成を示すブロック図である。
図5と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0100】
手押し車100Aは、段差検出部29およびLEDランプ30を備えている。段差検出部29は、進行方向の前方に存在する段差を検出する。段差検出部29は、具体的には、レーザレーダ、ミリ波レーダ、または超音波センサ等の測距センサからなる。制御部21は、段差検出部29が検出した物標との距離が所定の値(例えば0.5m)未満となった場合に、段差が存在すると判断する。あるいは、段差検出部29は、カメラ等の撮像素子であってもよい。カメラ等による画像認識で段差を検出する場合、2台のカメラの画像差(視差)から段差までの距離を測定することも可能である。また、ショックセンサにより段差を検出することも可能である。制御部21は、ショックセンサが障害物との接触を検知した場合、補助輪113が段差に接触したと判断する。
【0101】
制御部21は、段差検出部29により段差を検出した場合、LEDランプ30を点灯または点滅させ、進行方向の前方に段差が存在する旨をユーザに報知することで、ティッピング状態への移行を促す。ただし、報知は、LEDランプ等の視覚的な表示による態様に限らず、「段差があります」等の音声により報知を行う態様であってもよい。
【0102】
さらに、制御部21は、段差検出部29により段差を検出した場合、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える動作を行う。これにより、ユーザがティッピング状態に移行させるときに、主輪111が回転して手押し車100が意図せず動くことは無い。
【0103】
なお、
図13に示した手押し車300のように、駆動部319を備えている場合、制御部21は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替えるとともに、駆動部319によって補助輪113を地面Gから浮かせる動作を行ってもよい。この場合、制御部21が本発明の「切替部」に相当することになる。
【0104】
そして、制御部21は、段差検出部29により段差を検出しなくなった場合、例えば自装置の移動距離が測距センサで測定した距離を超えた場合に第1の制御モードに復帰する。自装置の移動距離は、主輪用ロータリエンコーダ26の値から算出することができる。あるいは、制御部21は、所定時間経過後に第1の制御モードに復帰するか、またはユーザによるティッピングが解除されたときに第1の制御モードに復帰するようにしてもよい。
【0105】
最後に、前記実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。