(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の配線電極と前記第2の配線電極とが重なった部分において電流が同一方向に流れるように前記第1の配線電極および前記第2の配線電極が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
前記フィルタ部品は、前記複数の直列腕共振子および前記複数の並列腕共振子がその一方の主面の所定領域に形成されたフィルタ基板と、前記フィルタ基板が実装されたパッケージ基板とを備え、
前記第1の配線電極が、前記パッケージ基板内に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波モジュール。
前記モジュール基板内に設けられた第3の配線電極により構成され、一端が前記複数の並列腕共振子のうち少なくともひとつに接続され他端がグランドに接続された、前記第1のフィルタの特性調整用の第3のインダクタをさらに備え、
前記第2のインダクタおよび前記第3のインダクタのそれぞれを流れる電流の向きが互いに逆方向になるように、前記第2の配線電極および前記第3の配線電極が構成されている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7に示す例では、フィルタ部品のパッケージ基板500内にフィルタの特性調整用のインダクタLa,Lbが配置されている。そのため、各インダクタLa,Lbを形成する配線電極514,518を配置するための絶縁層503が必要となり、モジュール基板に実装されるフィルタ部品(パッケージ基板500)の厚みが厚くなるという問題がある。
【0009】
また、フィルタ部品が大型化しないように、パッケージ基板500を大型化せずにインダクタLa,Lbを形成するための配線電極514,518の線路長をさらに延伸したり、特性調整用の他のインダクタを形成するために他の配線電極をさらに形成したりする場合に、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、特性調整用のインダクタLa,Lbを形成するための配線電極514,518のパッケージ基板500内における配線密度が大きくなり配線電極514,518が近接配置される。
【0010】
したがって、これらの配線電極514,518どうしが電磁界的に結合して不要な容量成分等が発生することにより、フィルタの減衰特性が変動するおそれがある。また、パッケージ基板500内において、各インダクタLa,Lbを形成する配線電極514,518の配置スペースが限られているので、各インダクタLa,Lbのパターン形状や線路長、太さを変更することによりインダクタンス値を調整してフィルタの減衰特性を調整するのが難しいという問題もあった。
【0011】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、フィルタ部品を低背化すると共に、フィルタの減衰特性が変動するのを防止し、フィルタの減衰特性を容易に調整して改善できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明の高周波モジュールは、RF信号が入力される第1端子、前記第1端子に入力されたRF信号が通過する第1のフィルタ、前記第1のフィルタを通過したRF信号を出力する第2端子、第3端子、および一端が前記第1のフィルタに接続され他端が前記第3端子に接続された第1のインダクタを有するフィルタ部品と、前記フィルタ部品が実装されたモジュール基板と、平面視で前記モジュール基板内の前記フィルタ部品の直下に設けられ、一端が前記第3端子に接続され、他端がグランドに接続された第2のインダクタとを備え、前記第1のフィルタは、前記第1のフィルタの入力端子および出力端子を接続する直列腕に配置される複数の直列腕共振子と、前記直列腕に接続された複数の並列腕共振子とを有し、前記第1のインダクタの前記第1のフィルタに接続された一端は前記複数の並列腕共振子のうちの少なくとも1つに接続され、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとが直列に接続され、前記第1のインダクタを構成する第1の配線電極と、前記第2のインダクタを構成する第2の配線電極とが、平面視において少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴としている。
【0013】
このように構成された発明では、第1のフィルタを所望の減衰特性に調整するためのインダクタの一部が、第2のインダクタとしてモジュール基板に設けられている。そのため、第1のフィルタの減衰特性を調整するためにフィルタ部品内に設けられた第1のインダクタを構成する第1の配線電極の線路長を短くして、第1の配線電極のフィルタ部品内における占有面積を低減することができる。したがって、例えば第1の配線電極が絶縁層に形成されている場合に、絶縁層の数を減らすことができるので、フィルタ部品を低背化することができる。また、第2のインダクタを形成する第2の配線電極を平面視においてフィルタ部品と重なる領域に配置するので、第2の配線電極が形成されるモジュール基板を小面積化することにより高周波モジュールを小型化することができる。
【0014】
また、第1の配線電極の線路長を短くしてフィルタ部品内における第1の配線電極の占有面積を低減することができるので、フィルタ部品内に配置された他のインダクタ等を形成する他の配線電極と第1の配線電極とが電磁界的に結合するのを抑制することができる。したがって、第1のインダクタ等の特性が変化することによる第1のフィルタの減衰特性の変動を防止することができる。
【0015】
また、フィルタ部品と比較すると配線電極の配置自由度が高いモジュール基板内において、第2の配線電極のパターン形状や線路長、太さを容易に変更して第2のインダクタのインダクタンス値を自由に調整することができる。したがって、第1のインダクタおよび第2のインダクタが一体となって構成される特性調整用のインダクタの設計の自由度を高めることができるので、第1のフィルタを容易に所望の減衰特性に調整することができる。
【0016】
また、第1の配線電極と第2の配線電極とが平面視において少なくとも一部が重なるように配置されることにより、第1のインダクタと第2のインダクタとを容易に磁界結合させることができる。そのため、高周波モジュールが小型化されて、第1のインダクタおよび第2のインダクタを配置することができるスペースが制限されている場合であっても、第1のインダクタおよび第2のインダクタが一体となって構成される特性調整用のインダクタのインダクタ特性を向上させることができる。したがって、第1のフィルタの減衰特性をさらに容易に調整して改善することができる。
【0017】
また、前記第1の配線電極と前記第2の配線電極とが重なった部分において電流が同一方向に流れるように前記第1の配線電極および前記第2の配線電極が構成されているとよい。
【0018】
このようにすれば、第1の配線電極と第2の配線電極とをさらに容易に磁界結合させることができるので、第1のインダクタおよび第2のインダクタが一体となって構成される特性調整用のインダクタのインダクタ特性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、スパイラル型およびヘリカル型のいずれか一方の同一のインダクタ構造を有し、前記第1の配線電極および前記第2の配線電極が同一方向に巻回されているとよい。
【0020】
このように構成すると、第1のインダクタで発生する磁界の向きと第2のインダクタで発生する磁界の向きとが同じになるので、第1のフィルタの特性を調整するためのインダクタで発生する磁界の広がりを抑えることができる。したがって、例えば、第1、第2のインダクタと他の回路素子とが磁界結合するのを防止することができる。
【0021】
また、前記フィルタ部品は、前記複数の直列腕共振子および前記複数の並列腕共振子がその一方の主面の所定領域に形成されたフィルタ基板と、前記フィルタ基板が実装されたパッケージ基板とを備え、前記第1の配線電極が、前記パッケージ基板内に設けられているとよい。
【0022】
このように構成すると、第1の配線電極が設けられたパッケージ基板が薄く形成されることにより低背化されたCSP構造のフィルタ部品がモジュール基板に実装された、実用的な構成の高周波モジュールを提供することができる。
【0023】
また、前記フィルタ部品は、前記複数の直列腕共振子および前記複数の並列腕共振子がその一方の主面の所定領域に形成されたフィルタ基板と、前記所定領域を囲繞するように配置された絶縁層と、前記絶縁層上に配置され、前記複数の直列腕共振子および前記複数の並列腕共振子を覆うように設けられたカバー層と、記フィルタ基板、前記絶縁層、及び前記カバー層によって囲繞された空間とを備え、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子それぞれは、前記空間が位置する面とは反対の主面に露出するように設けられ、前記モジュール基板の実装面に設けられた実装用の電極に接続され、前記第1の配線電極が、前記カバー層内に設けられていてもよい。
【0024】
このように構成すると、第1の配線電極が設けられたカバー層が薄く形成されることでさらに低背化されたWL−CSP構造のフィルタ部品がモジュール基板に実装されることにより、さらに低背化および小型化された高周波モジュールを提供することができる。
【0025】
また
、前記モジュール基板内に設けられた第3の配線電極により構成され、一端が前記複数の並列腕共振子のうち少なくともひとつに接続され他端がグラン
ドに接続された、前記第1のフィルタの特性調整用の第3のインダクタをさらに備え、前記第2のインダクタおよび前記第3のインダクタのそれぞれを流れる電流の向きが互いに逆方向になるように、前記第2の配線電極および前記第3の配線電極が構成されているとよい。
【0026】
このようにすれば、第2のインダクタと第3のインダクタとがモジュール基板内において磁界結合するのが抑制される。したがって、第2のインダクタおよび第3のインダクタのインダクタ特性が変動するのが抑制されるので、第1のフィルタの減衰特性が劣化するのを防止して、フィルタの減衰特性の向上を図ることができる。
また、前記第3の配線電極と前記第2の配線電極との距離は、前記第1の配線電極と前記第2の配線電極との距離よりも長くてもよい。このようにすれば、第1のフィルタの減衰特性が劣化するのを防止して、第1のフィルタの減衰特性の向上を図ることができる。
【0027】
また、前記フィルタ部品は、複数の共振子によって構成され、前記第2端子に入力されたRF信号が通過する第2のフィルタと、前記第2のフィルタを通過したRF信号を出力する第4端子とをさらに備え、前記第1のフィルタの通過帯域は送信信号の周波数帯域であり、前記第2のフィルタの通過帯域は受信信号の周波数帯域であるとよい。
【0028】
このようにすると、分離配置された第1、第2のインダクタにより第1のフィルタの減衰特性が改善されるので、アイソレーション特性が改善された第1のフィルタと第2のフィルタとを備える高周波モジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、フィルタ部品の第1のフィルタの減衰特性を調整するための第1、第2のインダクタが、互いに磁界結合し易い状態で分離して配置されることにより、フィルタ部品内における第1の配線電極の配線量を低減することができる。したがって、例えば第1の配線電極が絶縁層に形成されている場合に、絶縁層の数を減らしてフィルタ部品を低背化することができる。また、フィルタ部品内における第1の配線電極の配線密度を低減することができるので、第1の配線電極が他の配線電極と電磁界的に結合して第1のインダクタのインダクタ特性が変化して第1のフィルタの減衰特性が変動するのを防止することができる。また、第2の配線電極の構成を変更して第2のインダクタのインダクタンス値を調整することにより、第1のインダクタおよび第2のインダクタが一体となって構成される特性調整用のインダクタのインダクタ特性を調整することができるので、第1のフィルタの減衰特性を容易に調整して改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
本発明の高周波モジュールの第1実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1は本発明の高周波モジュールの第1実施形態を示す図、
図2は
図1の高周波モジュールの電気的構成を示す回路ブロック図、
図3は第1の配線電極および第2の配線電極の平面視での配置関係を示す図である。
図4は第1のフィルタと第2のフィルタとの間のアイソレーション特性を示す図である。
図5はインダクタを形成する配線電極の変形例を示す図であって、(a)〜(f)それぞれは異なる構造を備える配線電極を示す図である。
【0032】
なお、
図1〜
図3では、本発明にかかる主要な構成のみが図示されており、説明を簡易なものとするために、その他の構成は図示省略されている。また、後の説明で参照する
図6についても、
図1〜
図3と同様に主要な構成のみが図示されているが、以下の説明においてはその説明を省略する。
【0033】
(高周波モジュール)
図1および
図2に示す高周波モジュール1は、携帯電話や携帯情報端末などの通信携帯端末が備えるマザー基板に搭載されるものであり、この実施形態では、第1のフィルタ14および第2のフィルタ15が設けられたフィルタ部品10(デュプレクサ)と、モジュール基板2と、整合回路3と、スイッチICやフィルタ、抵抗、コンデンサ、コイルなどの各種の電子部品(図示省略)とを備え、高周波アンテナスイッチモジュールとして形成されている。
【0034】
また、フィルタ部品10、整合回路3を形成するためのチップ型のインダクタ3a、その他の各種の電子部品の少なくとも一部は、モジュール基板2の実装面2a上に設けられた実装用の電極2bに実装される。そして、各種の部品10,3aや電子部品等と、モジュール基板2の裏面に形成された複数の実装用電極5とは、モジュール基板2に設けられた配線電極4を介して相互に電気的に接続される。また、外部か送信信号が入力される送信電極Txaと、送信電極Txaに入力された送信信号を外部に出力し外部から受信信号が入力される共通電極ANTaと、共通電極ANTaに入力された受信信号を外部に出力する受信電極Rxaと、グランド経路GNDに接続されるグランド電極GNDaとが実装用電極5により形成されている。
【0035】
また、通信携帯端末が備えるマザー基板には、共通経
路やグランド経
路、送信経
路、受信経
路などの各種信号経路に対応する配線電極が設けられている。そして、高周波モジュール1がマザー基板に実装されることにより、これらの各種経
路を形成する配線電極と、共通電極ANTa、グランド電極GNDa、送信電極Txaおよび受信電極Rxaとが接続されて、マザー基板と高周波モジュール1との間で送受信信号の入出力が行われる。
【0036】
モジュール基板2は、この実施形態では、セラミックグリーンシートにより形成された複数の誘電体層が積層されて焼成されることで一体的にセラミック積層体として形成される。
【0037】
また、各誘電体層に、ビア導体および面内導体パターンが適宜形成されることで、モジュール基板2に、配線電極4や実装用電極5、第2のインダクタL2を形成する第2の配線電極6、第3のインダクタL3を形成する第3の配線電極7などが形成される。なお、第2、第3のインダクタL2,L3は、第1のフィルタ14の特性を調整するためのものである。また、誘電体層に形成される面内導体パターンおよびビア導体により、他のインダクタやキャパシタなどの回路素子がさらに形成されていてもよい。また、これらの回路素子が組み合わされてフィルタ回路や整合回路3などの各種回路が形成されていてもよい。各インダクタL2,L3と第1のフィルタ14との接続状態については後で詳細に説明する。
【0038】
なお、モジュール基板2は、樹脂やセラミック、ポリマー材料などを用いた、プリント基板、LTCC、アルミナ系基板、複合材料基板などの多層基板により形成することができ、高周波モジュール1の使用目的に応じて、適宜最適な材質を選択してモジュール基板2を形成すればよい。
【0039】
整合回路3は、この実施形態では、モジュール基板2の実装面2aに実装されたチップ型のインダクタ3aにより形成されている。具体的には、フィルタ部品10の共通端子ANTb(本発明の「第2端子」に相当)と、モジュール基板2の共通電極ANTaとを接続する経路にインダクタ3aの一端が接続されている。そして、インダクタ3aの他端がモジュール基板2に設けられたグランド接続用配線電極を介してグランド電極GNDa
(グランド)に接続されることにより、整合回路3が形成されている。
【0040】
なお、整合回路3は
図2に示す構成に限定されるものではなく、
図2に示すインダクタ3aをキャパシタに置き換えることにより整合回路3が形成されてもよいし、共通電極ANTaと共通端子ANTbとを接続する経路に、インダクタやキャパシタが直列接続されることにより整合回路3が形成されてもよい。また、インダクタおよびキャパシタが組み合わされて整合回路3が形成されてもよい。すなわち、整合回路3は、高周波モジュール1において、共通電極ANTaに接続されるアンテナなどの回路素子と共通端子ANTbに接続されるフィルタ部品10とのインピーダンスを整合させるために一般的に使用されるどのような回路構成を備えていてもよい。また、整合回路3が、送信端子Txbおよび受信端子Txb側にさらに設けられてもよい。
【0041】
(フィルタ部品)
フィルタ部品10は、チップサイズパッケージ(CSP)構造を有し、一方の主面の所定領域に第1のフィルタ14および第2のフィルタ15が形成されたフィルタ基板11と、フィルタ基板11が実装されたパッケージ基板12と、フィルタ基板11を被覆してパッケージ基板12に設けられた樹脂層13と、送信端子Txb(本発明の「第1端子」に相当)と、共通端子ANTbと、受信端子Rxb(本発明の「第4端子」に相当)と、複数のグランド端子GNDb(本発明の「第3端子」に相当)とを備えている。
【0042】
また、送信端子Txbには送信電極Txaから送信信号が入力され、その送信信号は、第1のフィルタ14を通過して共通端子ANTbから共通電極ANTaへ出力される。また、共通端子ANTbには、共通電極ANTaから受信信号が入力され、その受信信号は、第2のフィルタ15を通過して受信端子Rxbから受信電極Rxaへ出力される。
【0043】
フィルタ基板11は、この実施形態では、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、水晶などの圧電体により形成されている。また、フィルタ基板11の一方の主面の所定領域に、AlやCuなどにより形成されたくし歯電極(IDT電極)や反射器が設けられてSAW(表面弾性波)フィルタ素子が構成されることにより、第1のフィルタ14および第2のフィルタ15がフィルタ基板11に形成されている。
【0044】
また、フィルタ基板11には、第1のフィルタ14の入力端子14aおよび出力端子14bと、第2のフィルタ15の入力端子15aおよび出力端子15bと、グランド配線用の外部接続端子GNDcが形成されている。
【0045】
パッケージ基板12は、この実施形態では、モジュール基板2と同様にセラミックグリーンシートにより形成された複数の誘電体層が積層されて焼成されることで一体的にセラミック積層体として形成される。また、モジュール基板2と同様に、各誘電体層に、ビア導体および面内導体パターンが適宜形成されることで、パッケージ基板12に、内部配線電極(図示省略)や実装用電極16、第1のインダクタL1を形成する第1の配線電極17が形成される。なお、実装用電極16により、送信端子Txbと、共通端子ANTbと、受信端子Rxbと、グランド端子GNDbとが形成されている。また、第1のインダクタL1は、第1のフィルタ14の特性を調整するためのものである。
【0046】
なお、パッケージ基板12は、樹脂やセラミック、ポリマー材料などを用いた、プリント基板、LTCC、アルミナ系基板、複合材料基板などの多層基板により形成することができ、高周波モジュール1の使用目的に応じて、適宜最適な材質を選択してパッケージ基板12を形成すればよい。
【0047】
フィルタ基板11は、ボンディングワイヤ(図示省略)や超音波振動を利用して、パッケージ基板12の表面に形成された実装用の電極(図示省略)に接続されてパッケージ基板12に実装される。これにより、図示省略された内部配線電極を介して、第1のフィルタ14の入力端子14aと送信端子Txbとが接続され、第2のフィルタ15の出力端子15bと受信端子Rxbとが接続され、第1のフィルタ14の出力端子14bおよび第2のフィルタ15の入力端子15aと共通端子ANTbとが接続される。また、外部接続端子GNDcとグランド端子GNDbとは、内部配線電極により直接に接続されたり、第1のインダクタL1(第1の配線電極17)を介して接続される。
【0048】
樹脂層13は、エポキシ樹脂等の一般的な熱硬化性のモールド用の樹脂により、フィルタ基板11を被覆するようにパッケージ基板12上に形成される。そして、フィルタ部品10は、実装用電極16に形成されたはんだボール18を介してモジュール基板2の実装面2aの実装用の電極2bに接続される。
【0049】
次に、第1のフィルタ14および第2のフィルタ15の構成について説明する。なお、第1のフィルタ14は送信信号の周波数帯域が通過帯域として設定され、第2のフィルタ15は送信信号の周波数帯域と異なる受信信号の周波数帯域が通過帯域として設定されている。
【0050】
第1のフィルタ14は、
図2に示すように、フィルタ基板11の一方の主面の所定領域にくし歯電極および反射器を有する複数のSAW共振子がラダー型に接続されることにより形成されている。具体的には、第1のフィルタ14は、入力端子14aおよび出力端子14bを接続する直列腕に配置される複数(本実施形態では9個)の共振子S1〜S9と、直列腕とグランド配線用の外部接続端子GNDc(グランド端子GNDb)との間に接続された複数(本実施形態では6個)の並列腕共振子P1〜P6とを備えている。
【0051】
また、並列腕共振子P1は、一端が、直列腕共振子S6,S7間に接続され、他端が、並列腕共振子P2の一端に接続されている。また、並列腕共振子P2の他端が、グランド配線用の外部接続端子GNDcに接続されている。そして、パッケージ基板2内に設けられたインダクタL1の一端が外部接続端子GNDcを介して並列腕共振子P2(第1のフィルタ14)の他端に接続され、インダクタL1の他端がグランド端子GNDbに接続されている。また、インダクタL2の一端がグランド端子GNDbに接続されて第1のインダクタL1の他端に接続され、インダクタL2の他端がグランド電極GNDaに接続されることにより、並列腕共振子P1,P2がグランド電極GNDa
(グランド)に接続されている。
【0052】
また、並列腕共振子P3は、一端が直列腕共振子S3,S4間に接続され、他端が並列腕共振子P4の一端に接続されている。また、並列腕共振子P5は、一端が直列腕共振子S1および入力端子14a間に接続され、他端が並列腕共振子P6の一端に接続されている。また、並列腕共振子P4,P6それぞれの他端が、グランド配線用の外部接続端子GNDcを介してグランド端子GNDbに接続されている。そして、インダクタL3の一端がグランド端子GNDbを介して並列腕共振子P4,P6(第1のフィルタ14)それぞれの他端に接続され、インダクタL3の他端がグランド電極GNDa
(グランド)に接続されることにより、並列腕共振子P3〜P6がグランド電極GNDa
(グランド)に接続されている。
【0053】
また、各インダクタL1〜L3のインダクタンス値が適宜調整されることにより、第1のフィルタ14の減衰特性を調整することができる。具体的には、各インダクタL1〜L3のインダクタンス値を調整することにより、第1のフィルタ14の通過帯域の低域側もしくは高域側の任意の周波数の位置に減衰極を形成することができる。また、各共振子S1〜S9およびP1〜P6は、くし歯電極の表面弾性波の進行方向における両側に反射器が配置されて形成されており、各共振子S1〜S9およびP1〜P6は、図示省略されたフィルタ部品10内の内部配線電極を介してグランド端子GNDbに接続されることによりグランド電極GNDa
(グランド)に接続されている。
【0054】
第2のフィルタ15が備える受信用SAWフィルタ素子は、共通端子ANTbに入力された第2の周波数帯域の受信信号を受信端子Rxbに出力するものである。また、
図2に示すように、第2のフィルタ15はフィルタ基板11の一方の主面の所定領域にくし歯電極および反射器を有する複数の共振子が接続されることにより形成されている。また、第2のフィルタ15は、例えば、移相器を形成する共振子とバンドパスフィルタを形成する縦結合型の共振子が直列接続されることにより形成されるが、その詳細な説明は省略する。また、上記した第1のフィルタ14と同様に、第2のフィルタ15を形成する各共振子は、図示省略されたフィルタ部品10内の内部配線電極およびグランド端子GNDbを介してグランド電極GNDa
(グランド)に接続されている。
【0055】
なお、第2のフィルタ15は、2個の受信端子Rxbが設けられて受信信号を平衡出力するバランス型に形成されていてもよい。
【0056】
(各インダクタL1〜L3の配置関係)
この実施形態では、フィルタ部品10の第1のフィルタ14の特性調整用の第1〜第3のインダクタL1〜L3が設けられており、第1のインダクL1は、パッケージ基板12に形成された第1の配線電極17により形成され、第2、第3のインダクタL2,L3は、モジュール基板2に形成された第2、第3の配線電極6,7により形成されている。また、この実施形態では、
図1に示すように、第2のインダクタL2を形成する第2の配線電極6が、平面視でモジュール基板2内のフィルタ部品10の直下に配置されて、フィルタ部品10と第2のインダクタL2との間にはシールド用のグランド電極が配置されていない。
【0057】
また、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2とは、グランド端子GNDbを介して直列接続されている。また、
図1および
図3に示すように、第1のインダクタL1を形成する第1の配線電極17と、第2のインダクタL2を形成する第2の配線電極6とは、平面視で、少なくとも一部が重なるように配置されている。第1の配線電極17と、第2の配線電極6とは、平面視で重なる部位が多いほど、好ましい。また、この実施形態では、第1の配線電極17と第2の配線電極6とが重なった部分において、第1の配線電極17を流れる電流I1と第2の配線電極6を流れる電流I2とが同一方向に流れるように、第1の配線電極17および第2の配線電極6が形成されている。
【0058】
具体的には、第1のインダクタL1および第2のインダクタL2は、スパイラル型およびヘリカル型のいずれか一方のインダクタ構造に形成された第1の配線電極17および第2の配線電極6により形成されている。また、第1の配線電極17および第2の配線電極6が同一方向に巻回されている。
【0059】
また、第3のインダクタL3を形成する第3の配線電極7がモジュール基板2内に設けられている。また、この実施形態では、第2のインダクタL2および第3のインダクタL3のそれぞれを流れる電流の向きが互いに逆方向となるように、第2の配線電極6および第3の配線電極7が形成されている。また、第3の配線電極7と第2の配線電極6との距離は、第1の配線電極17と第2の配線電極6との距離よりも長いことが好ましい。
【0060】
(製造方法)
次に、
図1の高周波モジュール1の製造方法の一例についてその概略を説明する。
【0061】
まず、所定形状に形成されたセラミックグリーンシートに、レーザーなどでビアホールを形成し、内部に導体ペーストを充填したり、ビアフィルめっきを施すことにより層間接続用のビア導体(配線電極4,6,7)が形成され、面内導体パターン(配線電極4,6,7)、実装面2aの実装用の電極2bおよび実装用電極5などの配線パターンが導体ペーストにより印刷されて、モジュール基板2を構成する各誘電体層を形成するためのセラミックグリーンシートが準備される。なお、それぞれのセラミックグリーンシートには、一度に大量のモジュール基板2を形成できるように、ビア導体や面内導体パターンが複数設けられている。
【0062】
次に、各誘電体層が積層されて積層体が形成される。そして、焼成後に個々のモジュール基板2に分割するための溝が、各モジュール基板2の領域を囲むように形成される。続いて、積層体が低温焼成されることによりモジュール基板2の集合体が形成される。
【0063】
続いて、個々のモジュール基板2に分割される前に、モジュール基板2の集合体の実装面2aに、フィルタ部品10およびインダクタ3aなどの種々の電子部品が実装されて、高周波モジュール1の集合体が完成する。なお、この際に、モジュール基板2の集合体の実装面2aに、フィルタ部品10およびインダクタ3aを被覆するように樹脂が充填されて、これが加熱硬化されることにより樹脂層が設けられてもよい。その後、高周波モジュール1の集合体が個々に分割されて、高周波モジュール1が完成する。
【0064】
このように形成された高周波モジュール1では、マザー基板から、実装用電極5および配線電極4を介してフィルタ部品10の送信端子Txbに出力された送信信号は、第1のフィルタ14に入力されて所定のフィルタ処理が施されて、共通端子ANTbからモジュール基板2側に出力され、配線電極4(整合回路3)および実装用電極5を介して外部に出力される。また、外部から、実装用電極5および配線電極4(整合回路3)を介してフィルタ部品10の共通端子ANTbに入力された受信信号は、第2のフィルタ15に入力されて所定のフィルタ処理が施されて、受信端子Rxbからモジュール基板2側に出力され、配線電極4および実装用電極5を介して外部に出力される。
【0065】
(アイソレーション特性)
次に、高周波モジュール1のアイソレーション特性について説明する。なお、
図4に示すアイソレーション特性は、任意の周波数のRF信号が送信電極Txa(送信端子Txb)に入力されたときに受信電極Rxa(受信端子Rxb)において観測されるRF信号の大きさを示したものである。なお、
図4の横軸は、送信電極Txaに入力されたRF信号の周波数(MHz)を示し、縦軸は、受信電極Rxbで観測されたRF信号の信号レベル(dB)を示す。
【0066】
また、
図4中の実線は、上記したように第1のインダクタLに直列接続された第2のインダクタL2がモジュール基板2内に配置された高周波モジュール1に所定のRF信号が入力されたときのアイソレーション特性を示し、同図中の点線は比較例として第2のインダクタL2を備えていない高周波モジュールに所定のRF信号が入力されたときのアイソレーション特性を示す。
【0067】
図4に示すように、本願実施例においては、比較例に比べると、特に高周波側に設定された受信信号の周波数帯域(本実施例においてはM4の帯域)におけるアイソレーション特性が約3.4dB程度改善されている。
【0068】
(インダクタを形成する配線電極の変形例)
モジュール基板2およびインダクタ部品10内に設けられる各インダクタL1〜L3を形成する配線電極6,7,17の変形例について
図5を参照して説明する。
図5はインダクタを形成する配線電極の変形例を示す図であって、(a)〜(f)それぞれは異なる構造を備える配線電極を示す図である。なお、以下に説明する配線電極は、モジュール基板2やパッケージ基板12を形成する各絶縁体層に形成されたり、必要とされるインダクタの特性に応じて、以下で説明する配線電極がどのように組み合わされてインダクタL1〜L3が構成されてもよい。
【0069】
図5(a)に示す配線電極E1はミアンダ型に形成され、
図5(b)に示す配線電極E2はスパイラル型に形成されている。また、
図5(c)に示す配線電極E3は、スパイラル型に形成されて、一方の引出電極(同図中の点線部分)が配線電極E3の主要部分と異なる絶縁体層に形成されビア導体により配線電極E3の主要部分と接続されている。また、
図5(d)に示す配線電極E4は直線状に形成されている。
【0070】
また、
図5(e)に示す配線電極E5は、複数の絶縁体層それぞれに形成された複数の略L字状の面内導体パターンE5aを備えている。また、上から1層目、3層目の略L字状の面内導体パターンE5aは、同じ向きに配置され、上から2層目、4層目の略L字状の面内導体パターンE5aは、1層目、3層目の面内導体パターンE5aを約180°回転させた向きに配置されている。そして、1層目の面内導体パターンE5aの短辺側の一端と、2層目の面内導体パターンE5aの長辺側の他端とがビア導体E5bにより接続され、2層目の面内導体パターンE5aの短辺側の一端と3層目の面内導体パターンE5aの長辺側の他端とがビア導体E5bにより接続され、3層目の短辺側の一端と、4層目の面内導体パターンE5aの長辺側の他端とがビア導体E5bにより接続されることにより、螺旋状の配線電極E5が形成されている。
【0071】
また、
図5(f)に示す配線電極E6は、環状のトロイダル型のコイルコアE6aの周囲を螺旋状に巻回するように形成されている。
【0072】
以上のように、この実施形態では、フィルタ部品10の第1のフィルタ14を所望の減衰特性に調整するためのインダクタの一部が、第2のインダクタL2としてモジュール基板2に設けられている。そのため、第1のフィルタ14の減衰特性を調整するためにフィルタ部品10内に設けられた第1のインダクタL1を形成する第1の配線電極17の線路長を短くして、第1の配線電極17のフィルタ部品内における占有面積を低減することができる。したがって、第1の配線電極17がパッケージ基板12の絶縁層に形成されている場合に、絶縁層の数を減らすことができるので、フィルタ部品10を低背化することができる。また、第2のインダクタL2がフィルタ部品10の直下に配置されることにより、第2のインダクタL2を形成する第2の配線電極6を平面視においてフィルタ部品10と重なる領域に配置することができるので、第2の配線電極6が形成されるモジュール基板2を小面積化することにより高周波モジュール1を小型化することができる。
【0073】
また、第1の配線電極17の線路長を短くしてフィルタ部品10内における第1の配線電極17の占有面積を低減することができるので、フィルタ部品10内に配置された他のインダクタ等を形成する他の配線電極と第1の配線電極17とが電磁界的に結合するのを抑制することができる。したがって、第1のインダクタL1等の素子特性が変化して第1のフィルタ14の減衰特性が変動するのを防止することができる。
【0074】
また、フィルタ部品10と比較すると配線電極の配置スペースを確保し易いモジュール基板2内において、第2の配線電極6のパターン形状や線路長、太さを容易に変更して第2のインダクタL2のインダクタンス値を自由に調整することができる。したがって、第1のインダクタL1および第2のインダクタL2が一体となって構成される特性調整用のインダクタの設計の自由度を高めることができるので、第1のフィルタ14を容易に所望の減衰特性に調整することができる。
【0075】
また、第1の配線電極17と第2の配線電極6とが平面視において少なくとも一部が重なるように配置されることにより、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2とを容易に磁界結合させることができる。そのため、高周波モジュール1が小型化されて、第1のインダクタL1および第2のインダクタL2を配置することができるスペースが制限されている場合であっても、第1のインダクタL1および第2のインダクタL2が一体となって構成される特性調整用のインダクタのインダクタ特性を向上させることができる。したがって、第1のフィルタ14の減衰特性をさらに容易に調整して改善することができる。
【0076】
また、第1の配線電極17と第2の配線電極6とが重なった部分において電流が同一方向に流れるように第1の配線電極17および第2の配線電極6が形成されているので、第1の配線電極17と第2の配線電極6とをさらに容易に磁界結合させることができる。したがって、第1のインダクタL1および第2のインダクタL2が一体となって構成される特性調整用のインダクタのインダクタ特性をさらに向上させることができる。また、この実施形態では、フィルタ部品10と第2のインダクタL2との間にはシールド用のグランド電極が配置されていないので、各インダクタL1,L2それぞれで生じる磁束が遮られることがないので、第1のインダクタL1および第2のインダクタL2が一体となって構成される特性調整用のインダクタのインダクタ特性をより一層向上させることができる。
【0077】
また、第1のインダクタL1および第2のインダクタL2が、スパイラル型およびヘリカル型のいずれか一方の同一のインダクタ構造に形成された第1の配線電極17および第2の配線電極6により形成され、第1の配線電極17および第2の配線電極6が同一方向に巻回することにより、次のような効果を奏することができる。すなわち、第1のインダクタL1で発生する磁界の向きと第2のインダクタL2で発生する磁界の向きとが同じになるので、第1のフィルタ14の特性を調整するためのインダクタで発生する磁界の広がりを抑えることができる。したがって、例えば、第1、第2のインダクタL1,L2と他の回路素子とが磁界結合するのを防止することができる。
【0078】
また、第1の配線電極17が設けられたパッケージ基板12を薄く形成することができるので、低背化されたCSP構造のフィルタ部品10がモジュール基板2に実装された、実用的な構成の高周波モジュール1を提供することができる。
【0079】
また、第2のインダクタL2および第3のインダクタL3のそれぞれを流れる電流の向きが互いに逆方向になるように、第2の配線電極6および第3の配線電極7が形成されているので、第2のインダクタL2と第3のインダクタL3とがモジュール基板2内において磁界結合するのが抑制される。したがって、第2のインダクタL2および第3のインダクタL3のインダクタ特性が変動するのが抑制されるので、第1のフィルタ14の減衰特性が劣化するのを防止して、第1のフィルタ14の減衰特性の向上を図ることができる。
【0080】
また、分離配置された第1、第2のインダクタL1,L2により第1のフィルタ14の減衰特性が改善されるので、アイソレーション特性が改善された第1のフィルタ14と第2のフィルタ15とを備える高周波モジュール1を提供することができる。
【0081】
<第2実施形態>
次に、
図6を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図6は本発明の高周波モジュールの第2実施形態を示す図である。
【0082】
この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、
図6に示すように、フィルタ部品20がウェハレベル−チップサイズパッケージ(WL−CSP)構造を有し、第1のインダクタL1を形成する第1の配線電極17がカバー層23に形成されている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を引用することによりその構成の説明は省略する。
【0083】
フィルタ部品20は、フィルタ基板11と、絶縁層22と、カバー層23と、第1のフィルタ14および第2のフィルタ15とを備えている。
【0084】
この実施形態では、上記した第1実施形態と同様に、フィルタ基板11の一方主面11aの所定領域に、AlやCuなどにより形成されたくし歯電極(IDT電極)や反射器が設けられてSAW(表面弾性波)共振子が構成されることにより、第1のフィルタ14および第2のフィルタ15が形成されている。また、フィルタ基板11の一方の主面11aに、第1のフィルタ14の入力端子14aおよび出力端子14bと、第2のフィルタ15の入力端子15aおよび出力端子15bと、グランド配線用の外部接続端子GNDcを形成する端子電極24が設けられている。
【0085】
そして、各端子電極24それぞれに絶縁層22を貫通して形成された電極25が接続され、カバー層23の主面から露出する電極25により、送信端子Txb、受信端子Rxb、共通端子ANTb、複数のグランド端子GNDbが構成されている。なお、第1のフィルタ14の入力端子14aと送信端子Txbとが接続され、第2のフィルタ15の出力端子15bと受信端子Rxbとが接続され、第1のフィルタ14の出力端子14bおよび第2のフィルタ15の入力端子15aと共通端子ANTbとが接続されている。また、各SAW共振子が、グランド配線用のグランド端子GNDcを介してグランド端子GNDbに接続されている。
【0086】
絶縁層22は、フィルタ基板11の一方の主面11aのくし歯電極および反射器が設けられた所定領域を囲繞して配置される。具体的には、絶縁層22は、くし歯電極、反射器および端子電極24が設けられたフィルタ基板11の一方の主面11aに、感光性のエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂により樹脂層を形成した後に、フォトリソグラフィの工程を経て、くし歯電極および反射器が設けられた所定領域および端子電極24の領域の樹脂層を取り除くことにより形成される。
【0087】
カバー層23は、絶縁層22上に配置されてフィルタ基板11との間に絶縁層22とともに囲繞された空間Kを形成し、当該形成された空間K内に、送信用SAWフィルタ素子および受信用SAWフィルタ素子が配置される。具体的には、カバー層23は、例えば、絶縁層22に感光性のエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂によりフォトリソグラフィの工程を経て積層された樹脂層の接続孔に、CuやAlのペーストを充填したりビアフィルめっきを施したりして端子電極24に接続される電極25を形成することで形成される。また、この実施形態では、カバー層23に、第1のインダクタL1を形成する第1の配線電極17が形成されている。そして、端子電極24に接続されて、各フィルタ素子が配置される空間と反対側のカバー層23の主面から露出する電極25に実装用のはんだボール26が形成されてフィルタ部品20が形成される。
【0088】
また、カバー層23がモジュール基板2の実装面2aに対向するようにフィルタ部品20が実装面2aの実装用の電極2bに接続されることにより、モジュール基板2の送信電極Txaとフィルタ部品20の送信端子Txbとが接続されて、送信電極Txaと第1のフィルタ14の入力端子14aとが送信端子Txbを介して接続される。また、モジュール基板2の受信電極Rxaとフィルタ部品20の受信端子Rxbとが接続されて、受信電極Rxaと第2のフィルタ15の出力端子15bとが受信端子Rxbを介して接続される。また、モジュール基板2の共通電極ANTaとフィルタ部品20の共通端子ANTbとが接続されて、共通電極ANTaと第1のフィルタ14の出力端子14bおよび第2のフィルタ15の入力端子15aとが共通端子ANTbを介して接続される。また、モジュール基板2のグランド電極GNDaとフィルタ部品20の各グランド端子GNDbとが接続されて、グランド電極GNDaと各フィルタ14,15の接地箇所とが各グランド端子GNDbを介して接続される。
【0089】
以上のように、この実施形態では、
図2に示す回路と同様の回路が構成されて、次のような効果を奏することができる。すなわち、第1の配線電極17が設けられたカバー層23が薄く形成されることでさらに低背化されたWL−CSP構造のフィルタ部品20がモジュール基板2に実装されることにより、さらに低背化および小型化された高周波モジュール1を提供することができる。
【0090】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、上記した実施形態が備える構成をどのように組み合わせてもよい。例えば、他の並列腕共振子にも第1のインダクタL1の一端が接続されていてもよい。また、複数の第1のインダクタL1が設けられ、各第1のインダクタL1それぞれが異なる並列腕共振子に接続されていてもよい。
【0091】
また、第1のフィルタ14が備えるラダー型のフィルタの構成は上記した例に限定されるものではなく、フィルタ特性を調整するためにシャント接続された共振子を備える構成であれば、どのように第1のフィルタ14を形成してもよい。また、第2のフィルタ15の構成は、弾性波を利用した共振子を備える構成としてもよいし、一般的なLCフィルタにより第2のフィルタ15が形成されていてもよい。また、弾性波を利用したフィルタとしては、SAWフィルタに限らず、FBAR型やSMR型のバルク弾性波を利用したBAWフィルタにより第1のフィルタ14および第2のフィルタ15が形成されていてもよい。
【0092】
また、上記した各実施形態では、モジュール基板2に1個のフィルタ部品10,20が搭載された高周波モジュール1を例に挙げて説明したが、モジュール基板2に2個以上のフィルタ部品10,20を搭載して高周波モジュールを形成してもよく、この場合、モジュール基板2にスイッチICを搭載して、モジュール基板2に搭載された複数のフィルタ部品10,20から、使用するフィルタ部品10,20をスイッチICにより選択して切換えるようにするとよい。
【0093】
また、モジュール基板2の実装面2aに、グランド電極層がさらに設けられていてもよい。この場合に、第1の配線電極17および第2の配線電極6が平面視で重なる部分において、グランド電極層に切欠きが設けられているとよい。
フィルタ部品10の第1のフィルタ14の減衰特性を調整するための第1、第2のインダクタL1,L2が、互いに磁界結合し易い状態で分離して配置されることにより、フィルタ部品10内における第1の配線電極17の配線量を低減することができ、例えばパッケージ基板12の層数を減らしてフィルタ部品10を低背化することができる。また、フィルタ部品10内における第1の配線電極17の配線密度を低減することができるので、第1の配線電極17が他の配線電極と電磁界的に結合して第1のフィルタ14の減衰特性が変動するのを防止できる。また、第2のインダクタL2のインダクタンス値を調整することにより、第1のフィルタ14の減衰特性を容易に調整して改善することができる。