特許第5943166号(P5943166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

特許5943166エチレンアクリルゴム組成物、エチレンアクリルゴム、ゴム金属複合体及びボンデッドピストンシール
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943166
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】エチレンアクリルゴム組成物、エチレンアクリルゴム、ゴム金属複合体及びボンデッドピストンシール
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/08 20060101AFI20160616BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160616BHJP
   C08J 5/12 20060101ALI20160616BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   C08L33/08
   C08K3/22
   C08J5/12CEY
   F16J15/10
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-505354(P2016-505354)
(86)(22)【出願日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2015063020
(87)【国際公開番号】WO2015170668
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2016年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-97223(P2014-97223)
(32)【優先日】2014年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】古川 智規
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−020908(JP,A)
【文献】 特開平07−149965(JP,A)
【文献】 特開昭63−291982(JP,A)
【文献】 特開2002−177414(JP,A)
【文献】 特開2008−051125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンとアクリル酸エステルからなる2元エチレンアクリルゴムポリマー100重量部に対して、水酸化カルシウムを1〜7重量部、及び、有機過酸化物を配合したことを特徴とするエチレンアクリルゴム組成物。
【請求項2】
前記2元エチレンアクリルゴムポリマー100重量部に対して、前記水酸化カルシウムを1〜3重量部、及び、有機過酸化物を配合したことを特徴とする請求項1記載のエチレンアクリルゴム組成物。
【請求項3】
前記アクリル酸エステルは、アクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1又は2記載のエチレンアクリルゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のエチレンアクリルゴム組成物を、一次架橋により過酸化物架橋してなることを特徴とするエチレンアクリルゴム。
【請求項5】
請求項4記載のエチレンアクリルゴムと、金属とが、前記一次架橋に伴って架橋接着されてなることを特徴とするゴム金属複合体。
【請求項6】
請求項5記載のゴム金属複合体からなることを特徴とするボンデッドピストンシール。
【請求項7】
請求項1〜3の何れかに記載のエチレンアクリルゴム組成物を、一次架橋により過酸化物架橋してなることを特徴とするエチレンアクリルゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次架橋を施さなくても、圧縮永久歪に優れ、且つ架橋接着にも優れるエチレンアクリルゴム組成物、該組成物を一次架橋してなるエチレンアクリルゴム、該エチレンアクリルゴムと金属とが接着されたゴム金属複合体、及び、該ゴム金属複合体からなるボンデッドピストンシールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両の自動変速機(AT)内部のクラッチ締結に使用されるゴムリップ架橋接着タイプのボンデッドピストンシール(BPS;ピストンシール、キャンセラーシール、ドラムシール等を含む)は、一般に自動変速機の内部において油圧作動(往復動)する金属環と、この金属環に架橋接着されてシール作用をなすゴム製のシールとを有している。
【0003】
特許文献1にも記載されるように、現在、BPS用のゴムには、硫黄架橋系のアクリルゴム(ACM)が適用されている。
【0004】
かかるACMは、ポリマーの特徴として、二次架橋を施し、架橋密度を高くして使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5011886号公報
【特許文献2】特開平10−121020号公報
【特許文献3】WO2011/010615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
BPSのようにボリュームが大きい製品では、工程費を削減するために、二次架橋工程を省略できることが好ましい。
【0007】
これを具体的に実現するためには、二次架橋を施さなくても圧縮永久歪に優れる(即ち圧縮永久歪率が小さい)ゴム材料が望まれる。
【0008】
二次架橋を施さなくても圧縮永久歪に優れる材料開発の手法の一つとして、本発明者は、材質をエチレンアクリルゴム(AEM)に変更することを検討した。
【0009】
AEMには、過酸化物架橋が適用されるエチレンとアクリル酸エステルから成る2元タイプと、これに架橋サイトモノマー(カルボン酸モノマー)を加えることによりアミン架橋を可能にした3元タイプがある。このうち、2元タイプは、二次架橋を施さなくても圧縮永久歪に優れることがわかった。
【0010】
しかし、2元タイプには、架橋接着性に劣るという更なる課題があることがわかった。上述の通り、BPSは金属にゴムを架橋接着して構成されるため、このような用途に用いる場合には、例えば特許文献2に記載されるような接着剤と、架橋接着することが要求される。
【0011】
本発明者は、鋭意検討し、2元エチレンアクリルゴムポリマーに対して、水酸化カルシウムを特定の配合量で配合することにより、二次架橋を施さなくても、圧縮永久歪に優れ、且つ架橋接着にも優れるゴムを得ることができることを見出して、本発明に至った。
【0012】
これまでに、出願人は、特許文献3において、硫黄架橋系のアクリルゴム(ACM)に水酸化カルシウムを配合し、二次架橋を施して、圧縮永久歪を改善する技術を開示してきた(特許文献3)。これに対して、上述のように、2元エチレンアクリルゴムに水酸化カルシウムを配合したときに、二次架橋を施さなくても、圧縮永久歪に優れ、特に架橋接着にも優れることは、本発明者が最初に見出したものであり、当該特許文献3から予想できるものではない。
【0013】
そこで、本発明の課題は、二次架橋を施さなくても、圧縮永久歪に優れ、且つ架橋接着にも優れるエチレンアクリルゴム組成物、該組成物を一次架橋してなるエチレンアクリルゴム、該エチレンアクリルゴムと金属とが接着されたゴム金属複合体、及び、該ゴム金属複合体からなるボンデッドピストンシールを提供することにある。
【0014】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0016】
1.
エチレンとアクリル酸エステルからなる2元エチレンアクリルゴムポリマー100重量部に対して、水酸化カルシウムを1〜7重量部配合したことを特徴とするエチレンアクリルゴム組成物。
【0017】
2.
前記2元エチレンアクリルゴムポリマー100重量部に対して、前記水酸化カルシウムを1〜3重量部配合したことを特徴とする前記1記載のエチレンアクリルゴム組成物。
【0018】
3.
前記アクリル酸エステルは、アクリル酸メチルであることを特徴とする前記1又は2記載のエチレンアクリルゴム組成物。
【0019】
4.
前記1〜3の何れかに記載のエチレンアクリルゴム組成物を、一次架橋により過酸化物架橋してなることを特徴とするエチレンアクリルゴム。
【0020】
5.
前記4記載のエチレンアクリルゴムと、金属とが、前記一次架橋に伴って架橋接着されてなることを特徴とするゴム金属複合体。
【0021】
6.
前記5記載のゴム金属複合体からなることを特徴とするボンデッドピストンシール。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、二次架橋を施さなくても、圧縮永久歪に優れ、且つ架橋接着にも優れるエチレンアクリルゴム組成物、該組成物を一次架橋してなるエチレンアクリルゴム、該エチレンアクリルゴムと金属とが接着されたゴム金属複合体、及び、該ゴム金属複合体からなるボンデッドピストンシールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のエチレンアクリルゴム組成物は、エチレンとアクリル酸エステルから成る2元エチレンアクリルゴム(AEM)ポリマー100重量部に対して、水酸化カルシウムを1〜7重量部配合したものである。
【0024】
かかるエチレンアクリルゴム組成物は、二次架橋を施さなくても、圧縮永久歪に優れ、且つ架橋接着にも優れる効果を奏する。
【0025】
かかるエチレンアクリルゴム組成物によれば、これを架橋した際に、従来の材料と同等の圧縮永久歪及び架橋接着を達成できる。なお、ここでいう「従来の材料」とは、特にアクリルゴム(ACM)組成物であり、より具体的には、後に参考例1に挙げる組成物である。
【0026】
更に、かかるエチレンアクリルゴム組成物によれば、これを架橋した際に、優れたムーニースコーチ特性(例えば、最低ムーニー粘度Vm、スコーチタイムT5)や、優れた常態物性(例えば、硬さ(Duro−A)、引張強度、破断時伸び)を実現することもできる。
【0027】
ここで、架橋とは、2元エチレンアクリルゴム(AEM)ポリマーを、架橋剤により架橋を行い可塑性のものを弾性物質に変化させることである。架橋には、例えば、架橋剤として硫黄を含む化合物を用いた硫黄架橋(加硫という場合がある。)や、過酸化物を用いた過酸化物架橋があるが、本発明では、過酸化物架橋が好適に用いられる。
【0028】
2元AEMポリマーは、エチレンとアクリル酸エステルから成るポリマー(エチレン−アクリル酸エステル共重合ともいう)であれば、格別限定されない。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル(アクリル酸n−ブチル)、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられ、中でも、アクリル酸メチルが好ましい。即ち、エチレンとアクリル酸メチルから成る2元AEMポリマー(エチレン−アクリル酸メチル共重合ともいう)であることが好ましい。
【0029】
2元AEMポリマーには、市販品を用いることもできる。例えば、エチレンとアクリル酸メチルから成る2元AEMポリマーとして、デュポン社製「VAMAC DP」などの市販品を用いることができる。
【0030】
水酸化カルシウムは、固体でも液体でもよいが、固体が好ましく、粉末であることがより好ましい。粉末状の水酸化カルシウムとして、市販品を用いることもでき、例えば、近江化学工業社製「CALDIC #2000」などを好ましく用いることができる。
【0031】
水酸化カルシウムの配合量は、2元AEMポリマー100重量部に対して、1〜7重量部の範囲内であればよく、1〜5重量部の範囲とすることが好ましく、1〜4重量部の範囲とすることがより好ましく、1〜3重量部の範囲とすることが最も好ましい。これにより、二次架橋を施さなくても圧縮永久歪に更に優れる効果が得られる。更に、ムーニースコーチ特性や、常態物性を更に改善することもできる。
【0032】
以上のゴム組成物には、架橋のために必要な成分(例えば架橋剤など)を適宜配合することができる。
【0033】
架橋剤としては、2元AEMポリマーに過酸化物架橋を形成可能なものが好ましく用いられ、具体的には、有機過酸化物を好ましく例示することができる。
【0034】
このような有機過酸化物は、格別限定されないが、例えば、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられ、中でも、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。
【0035】
架橋剤の配合量は、格別限定されず、例えば、2元AEMポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部の範囲、より好ましくは3〜12重量部の範囲で配合される。
【0036】
ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を更に含むことができる。このような他の成分として、例えば、共架橋剤、補強剤、充填材、老化防止剤、加工助剤、可塑剤等を、適宜配合することができる。
【0037】
ゴム組成物は、混練されていることが好ましい。混練に際しては、公知の混練手段であるロール、ニーダ等を用いることができる。
【0038】
以上に説明したゴム組成物(未架橋ゴム)に、架橋を施すことにより、架橋ゴム(単にゴムともいう)を得ることができる。
【0039】
ゴム組成物(未架橋ゴム)を架橋する際の架橋条件は、格別限定されるものではないが、例えば、150〜250℃の範囲の温度下で、30秒間〜30分間の範囲の時間で行うことが好ましい。
【0040】
架橋の方式は、格別限定されず、例えば、オーブン架橋やプレス架橋等を用いることができるが、プレス架橋を用いることが好ましい。プレス架橋により、架橋と成型を同時に行うことができる。
【0041】
例えば、ゴム組成物を、任意の他部材に接合させた状態でプレス架橋を行い、ゴムと他部材とが接着されてなる複合体を得ることも好ましいことである。このような複合体としては、他部材として金属を用いたゴム金属複合体を好ましく例示することができる。
【0042】
ゴム金属複合体としては、例えば、自動車等車両の自動変速機(AT)内部のクラッチ締結に使用されるゴムリップ架橋接着タイプのボンデッドピストンシール(BPS;ピストンシール、キャンセラーシール、ドラムシール等を含む)を好ましく例示することができる。
【0043】
BPSは、一般に自動変速機の内部において油圧作動(往復動)する金属環と、この金属環に架橋接着されてシール作用をなすゴム製のシールとを有している。
【0044】
BPSのようなゴム金属複合体において、ゴムと金属とを好適に接着させる観点では、架橋に際して、あらかじめ金属の表面に接着剤を塗布しておくことが好ましい。塗布された接着剤を加熱処理して焼付を行っておくことも好ましいことである。
【0045】
このような接着に用いられる接着剤は、格別限定されるものではないが、ノボラック型フェノール樹脂を接着性成分として含むものを好ましく例示できる。また、ノボラック型フェノール樹脂を含む接着剤は、更にレゾール型フェノール樹脂を硬化剤として含むことが好ましい。最も好ましいのは、m−クレゾールとp−クレゾールとの混合物から得られたノボラック型フェノール樹脂を接着性成分とし、これにレゾール型フェノール樹脂を硬化剤として添加してなる接着剤である。このような接着剤としては、例えば、特開平10−121020号公報に記載のものを挙げることができる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0047】
(実施例1)
(1)ゴム組成物
ゴム組成物の配合を下記とした。
【0048】
・エチレン−アクリル酸メチル共重合体(AEM)(デュポン社製「VAMAC DP」) 100重量部
・水酸化カルシウム(近江化学工業社製「CALDIC #2000」) 1重量部
・カーボンブラック(FEF)(東海カーボン社製「シーストG−S0」) 70重量部
・乾式シリカ(日本エアロジル社製「AEROSIL 200」) 5重量部
・老化防止剤(4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製「ノクラックCD」) 1重量部
・加工助剤1;ミヨシ油脂社製「ステアリン酸TST」 1重量部
・加工助剤2;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(東邦化学工業社製「ファスファノールRL210) 1.25重量部
・加工助剤3;N−オクタデシルアミン(ライオン・アクゾ社製「ARMEEN 18D」) 0.5重量部
・可塑剤;アジピン酸(ブトキシエチル)ジセステル(旭電化工業社製「アデカサイザーRS−107)」 10重量部
・架橋剤1;ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂社製「ペロキシモンF40」) 7.5重量部
・共架橋剤;トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(三菱レーヨン社製「アクリエステルTMP」 2重量部
【0049】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、200℃、3分間の一次架橋(プレス架橋)を行って、架橋ゴムを得た。この架橋は、有機過酸化物である架橋剤1による過酸化物架橋である。二次架橋は省略された。
【0050】
(実施例2)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムの配合量を3重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0051】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0052】
(実施例3)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムの配合量を5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0053】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0054】
(実施例4)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムの配合量を7重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0055】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0056】
(参考例1)*従来の材料(ACM組成物)
(1)ゴム組成物
ゴム組成物の配合を下記とした。
【0057】
・アクリルゴム(ACM)(ユニマテック社製「Noxtite PA401」)
100重量部
・カーボンブラック(FEF)(東海カーボン社製「シーストG−S0」) 70重量部
・乾式シリカ(日本エアロジル社製「AEROSIL 200」) 5重量部
・老化防止剤(4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製「ノクラックCD」) 1重量部
・加工助剤1;ミヨシ油脂社製「ステアリン酸TST」 1重量部
・加工助剤4;パラフィンワックス(大内新興化学工業社製「サンノック」) 2重量部
・架橋剤2;硫黄 0.6重量部
・加硫促進剤1;精製ソーダ石鹸(花王社製「NS-Sorp」) 5重量部
・加硫促進剤2;ステアリン酸カリウム(日本油脂社製「ノンサールSK−1」) 2重量部
【0058】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、200℃、3分間の一次架橋(プレス架橋)、及び、170℃、6時間の二次架橋(オーブン架橋)を行って、架橋ゴムを得た。これらの架橋は、硫黄である架橋剤2による加硫である。
【0059】
(比較例1)
(1)ゴム組成物
比較例1のゴム組成物は、参考例1と同様の配合である。
【0060】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、200℃、3分間の一次架橋(プレス架橋)を行って、架橋ゴムを得た。この架橋は、硫黄である架橋剤2による加硫である。二次架橋は省略された。
【0061】
(比較例2)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムの配合を省略したこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を得た。
【0062】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0063】
(比較例3)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムの配合量を0.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0064】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0065】
(比較例4)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムの配合量を10重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0066】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0067】
(比較例5)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムに代えて、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製「200−6H」)1重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0068】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0069】
(比較例6)
(1)ゴム組成物
実施例1において、水酸化カルシウムに代えて、水酸化アルミニウム(昭和電工社製「ハイジライト」)1重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0070】
(2)架橋条件
得られたゴム組成物について、実施例1と同様の架橋条件により架橋を行って、架橋ゴムを得た。
【0071】
2.評価方法
(1)ムーニースコーチ
上記実施例、参考例及び比較例のゴム組成物(未架橋ゴム)について、JIS K6300−1(2001)に準拠し、試験温度125℃、余熱時間1分、L形ローターにてムーニースコーチ試験を実施し、最低ムーニー粘度Vm、スコーチタイムT5を求めた。
【0072】
(2)常態物性
上記実施例、参考例及び比較例の架橋ゴムについて、常態物性(硬さ(Duro−A)、引張強度及び破断時伸び)を測定した。
【0073】
<測定方法>
a.硬さ
JIS K6253(1997)に準拠して、硬さ(Duro−A:瞬時)を測定した。
【0074】
b.引張強度
JIS K6251(2010)に準拠して、引張強度(MPa)を測定した。
【0075】
c.破断時伸び
JIS K6251(2010)に準拠して、破断時伸び(%)を測定した。
【0076】
(3)接着試験
SPCC鋼板からなる基材を用意し、リン酸亜鉛マグネシウムで化成処理した。
【0077】
次いで、化成処理されたSPCC鋼板上に、ノボラック型フェノール樹脂を主成分とし、レゾール型フェノール樹脂を硬化剤としてなる接着剤を塗布し、乾燥させた後、130℃で15分間、接着剤の焼付処理を行った。
【0078】
接着剤が焼付されたSPCC鋼板に、上記実施例、参考例及び比較例のゴム組成物(未架橋ゴム)を接合させ、各実施例、参考例及び比較例について上述した架橋条件で架橋を行って、ゴム金属複合体を得た。
【0079】
得られたゴム金属複合体において、SPCC鋼板からゴムを剥離させ、剥離後のSPCC鋼板表面へのゴム残存率(%)を測定した。
【0080】
ゴム残存率(%)は、SPCC鋼板上にゴムが残存する面積を、ゴム−SPCC鋼板の接合面の面積で除し、これを100分率で示したものである。ゴム残存率(%)が大きいほど、接着性が強い(即ち接着性に優れる)と評価できる。
【0081】
(4)圧縮永久歪試験
上記実施例及び比較例のゴム組成物(未架橋ゴム)を、各実施例、参考例及び比較例について上述した架橋条件で架橋し、架橋ゴムからなる断面がO形(円形状)の環状シール部材(環の直径=φ3.1cm)を得、JIS K6262(2013)に準拠して120℃、70時間の耐熱老化後の圧縮永久歪率(%)を測定した。圧縮率は25%とした。
【0082】
以上の評価結果を、表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
<評価>
実施例1〜4は、参考例1(従来の材料)との対比で、二次架橋がなくても同等の圧縮永久歪を有しており、生産コストが安い。また、スコーチタイムT5が6分以上であるため、生地保管性も十分であり、且つ接着性も良好である。
【0085】
参考例1(従来の材料)は、接着性、圧縮永久歪ともに良好だが、二次架橋を施しているため、生産コストが高い。
【0086】
比較例1は、参考例1で用いたACM組成物を一次架橋のみ(二次架橋無し)としたものであり、圧縮永久歪が著しく悪化していることがわかる。
【0087】
比較例2、3は、参考例1(従来の材料)との対比で良好な圧縮永久歪を有するが、接着性は皆無である。
【0088】
比較例4は、接着性は良好であるが、比較例2(水酸化カルシウム無添加)と比較して圧縮永久歪に劣り、またスコーチタイムT5も6分に満たないため、生地保管性が不安定である。
【0089】
比較例5、6より、水酸化カルシウム以外の金属水酸化物では、接着性は皆無であることがわかる。