(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の誘電体シートが積層方向に積層されて構成されている可撓性を有する誘電体素体であって、所定方向に平行な所定直線に沿って延在する第1の線路部と、該所定直線に沿って延在する第2の線路部と、該第1の線路部における該所定方向の一方側の端部と該第2の線路部における該所定方向の一方側の端部とを接続する第3の線路部と、を含んでいる誘電体素体と、
前記第1の線路部、前記第2の線路部及び前記第3の線路部に沿って延在している信号線路と、
前記誘電体素体において前記信号線路よりも前記積層方向の一方側に設けられ、該信号線路に沿って延在している第1のグランド導体と、
前記誘電体素体において前記信号線路よりも前記積層方向の他方側に設けられ、該信号線路に沿って延在している第2のグランド導体と、
前記誘電体シートを貫通することにより、前記第1のグランド導体と前記第2のグランド導体とを接続している1以上の層間接続導体と、
を備えており、
前記層間接続導体は、前記第3の線路部において、前記積層方向から平面視したときに、前記信号線路よりも前記所定方向の一方側には設けられず、該信号線路よりも該所定方向の他方側に設けられていること、
を特徴とする高周波信号線路。
前記第1の線路部において前記所定方向における一方側の端部に対して最も近くに設けられている前記層間接続導体を第1の層間接続導体とし、前記第3の線路部において前記第1の線路部に対して最も近くに設けられている前記層間接続導体を第3の層間接続導体とし、
前記信号線路において前記第1の層間接続導体に最も近接している第1の部分と該信号線路において前記第3の層間接続導体に最も近接している第3の部分との間における該信号線路の長さは、該信号線路を伝送される電磁波の波長の1/4以下であること、
を特徴とする請求項2に記載の高周波信号線路。
前記誘電体素体は、前記第2の線路部から見て前記第1の線路部の反対側に設けられ、かつ、前記所定直線に沿って延在している第4の線路部と、該第2の線路部における該所定方向の他方側の端部と該第4の線路部における該所定方向の他方側の端部とを接続する第5の線路部と、を更に含んでおり、
前記層間接続導体は、前記第5の線路部において、前記積層方向から平面視したときに、前記信号線路よりも前記所定方向の他方側には設けられず、該信号線路よりも該所定方向の一方側に設けられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の高周波信号線路。
前記第2の線路部において前記所定方向における他方側の端部に対して最も近くに設けられている前記層間接続導体を第2の層間接続導体とし、前記第5の線路部において前記第2の線路部に対して最も近くに設けられている前記層間接続導体を第5の層間接続導体とし、
前記信号線路において前記第2の層間接続導体に最も近接している第2の部分と該信号線路において前記第5の層間接続導体に最も近接している第5の部分との間における該信号線路の長さは、該信号線路を伝送される電磁波の波長の1/4以下であること、
を特徴とする請求項4に記載の高周波信号線路。
前記誘電体素体は、前記第1の線路部が前記所定方向の他方側に引っ張られ、かつ、前記第4の線路部が該所定方向の一方側に引っ張られた場合に、前記第3の線路部および前記第5の線路部がねじれ変形するように構成されていること、
を特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の高周波信号線路。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係る高周波信号線路及びこれを備えた電子機器について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(高周波信号線路の構成)
以下に、本発明の一実施形態に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波信号線路10,10aの外観斜視図である。
図2ないし
図6は、
図1の高周波信号線路10の分解図である。
図7は、
図2のA−Aにおける断面構造図である。
図8は、
図2のB−Bにおける断面構造図である。以下では、高周波信号線路10の積層方向をz軸方向と定義する。また、高周波信号線路10の長手方向をx軸方向と定義し、x軸方向及びz軸方向に直交する方向をy軸方向と定義する。
【0019】
高周波信号線路10は、例えば、携帯電話等の電子機器内において、2つの高周波回路を接続するために用いられる。高周波信号線路10は、
図1ないし
図8に示すように、誘電体素体12、外部端子16a,16b、信号線路20、基準グランド導体22、補助グランド導体24、ビアホール導体(層間接続導体)b1,b2,B1〜B4及びコネクタ100a,100bを備えている。
【0020】
誘電体素体12は、
図1に示すように、z軸方向から平面視したときに、x軸方向に長手方向を有する可撓性を有する板状部材であり、x軸方向の中央部分においてミアンダ形状をなしている。誘電体素体12は、線路部12a〜12e、接続部12f,12gを含んでいる。誘電体素体12は、
図2ないし
図6に示すように、保護層14、誘電体シート18a〜18cがz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されて構成されている積層体である。以下では、誘電体素体12のz軸方向の正方向側の主面を表面と称し、誘電体素体12のz軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。また、誘電体素体12の形状を説明するために、x軸方向に平行な仮想線である直線L1を定義する。
【0021】
線路部12a(第1の線路部)は、
図1に示すように、直線L1に沿って延在している。本実施形態では、線路部12aは、直線L1と平行に延在しており、y軸方向に均一な幅を有する帯状をなしている。線路部12c(第2の線路部)は、
図1に示すように、直線L1に沿って延在している。本実施形態では、線路部12cは、直線L1と平行に延在しており、y軸方向に均一な幅を有する帯状をなしている。直線L1(所定直線)は、仮想線であり、線路部12aのx軸方向の正方向側の端部taと線路部12cのx軸方向の正方向側の端部tbとを結ぶ線分の垂直二等分線である。
【0022】
また、線路部12cは、線路部12aよりもy軸方向の負方向側に設けられている。線路部12aのx軸方向の正方向側の端部taと、線路部12cのx軸方向の正方向側の端部tbとはy軸方向において隣り合っている。ただし、線路部12aの長さは、線路部12cの長さよりも長いので、線路部12aのx軸方向の負方向側の端部と、線路部12cのx軸方向の負方向側の端部とは隣り合っていない。線路部12b(第3の線路部)は、y軸方向に延在しており、x軸方向に均一な幅を有する帯状をなしている。線路部12bは、線路部12aのx軸方向の正方向側の端部と線路部12cのx軸方向の正方向側の端部とを接続している。また、線路部12bの長さは、線路部12a,12cの長さよりも短い。
【0023】
線路部12e(第4の線路部)は、
図1に示すように、直線L1に沿って延在している。本実施形態では、線路部12eは、直線L1と平行に延在しており、y軸方向に均一な幅を有する帯状をなしている。また、線路部12cよりもy軸方向の負方向側に設けられている。すなわち、線路部12eは、線路部12cから見て線路部12aの反対側に設けられている。線路部12cのx軸方向の負方向側の端部と、線路部12eのx軸方向の負方向側の端部とはy軸方向において隣り合っている。ただし、線路部12eの長さは、線路部12cの長さよりも長いので、線路部12cのx軸方向の正方向側の端部と、線路部12eのx軸方向の正方向側の端部とは隣り合っていない。線路部12d(第5の線路部)は、y軸方向に延在しており、x軸方向に均一な幅を有する帯状をなしている。線路部12dは、線路部12cのx軸方向の負方向側の端部と線路部12eのx軸方向の負方向側の端部とを接続している。また、線路部12dの長さは、線路部12c,12eの長さよりも短い。なお、線路部12a,12c,12eのy軸方向の幅及び線路部12b,12dのx軸方向の幅は等しい。なお、
図1では、線路部12a〜12eの境界については、点線で示した。
【0024】
接続部12f,12gはそれぞれ、線路部12aのx軸方向の負方向側の端部及び線路部12eのx軸方向の正方向側の端部に接続されており、z軸方向から平面視したときに矩形状をなしている。接続部12f,12gのy軸方向の幅は、線路部12a,12c,12eのy軸方向の幅及び線路部12b,12dのx軸方向の幅よりも大きい。
【0025】
誘電体シート18a〜18cは、
図2ないし
図6に示すように、z軸方向から平面視したときに、誘電体素体12と同じ平面形状をなしている。誘電体シート18a〜18cは、ポリイミドや液晶ポリマー等の可撓性を有する熱可塑性樹脂により構成されている。以下では、誘電体シート18a〜18cのz軸方向の正方向側の主面を表面と称し、誘電体シート18a〜18cのz軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。
【0026】
誘電体シート18aの厚さT1は、
図7及び
図8に示すように、誘電体シート18bの厚さT2よりも大きい。誘電体シート18a〜18cの積層後において、厚さT1は、例えば、50μm〜300μmである。本実施形態では、厚さT1は100μmである。また、厚さT2は、例えば、10μm〜100μmである。本実施形態では、厚さT2は50μmである。
【0027】
また、誘電体シート18aは、
図2ないし
図6に示すように、線路部18a−a〜18a−e及び接続部18a−f,18a−gにより構成されている。誘電体シート18bは、線路部18b−a〜18b−e及び接続部18b−f,18b−gにより構成されている。誘電体シート18cは、線路部18c−a〜18c−e及び接続部18c−f,18c−gにより構成されている。線路部18a−a,18b−a,18c−aは、線路部12aを構成している。線路部18a−b,18b−b,18c−bは、線路部12bを構成している。線路部18a−c,18b−c,18c−cは、線路部12cを構成している。線路部18a−d,18b−d,18c−dは、線路部12dを構成している。線路部18a−e,18b−e,18c−eは、線路部12eを構成している。接続部18a−f,18b−f,18c−fは、接続部12fを構成している。接続部18a−g,18b−g,18c−gは、接続部12gを構成している。
【0028】
信号線路20は、
図2ないし
図6に示すように、高周波信号(電磁波)が伝送され、線路部12a〜12e及び接続部12f,12gに沿って延在している、すなわち、接続部12fから線路部12a〜12eの延びる方向に沿って接続部12gまで延在している線状の導体である。本実施形態では、信号線路20は、誘電体シート18bの表面上に形成されており、線路導体20a〜20fにより構成されている。
【0029】
線路導体20aは、線路部18b−aにおいてx軸方向に沿って延在しており、線路部18b−aのy軸方向の略中央に位置している。線路導体20bは、線路部18b−bにおいてy軸方向に沿って延在しており、線路部18b−bのx軸方向の略中央に位置している。線路導体20cは、線路部18b−cにおいてx軸方向に沿って延在しており、線路部18b−cのy軸方向の略中央に位置している。線路導体20dは、線路部18b−dにおいてy軸方向に沿って延在しており、線路部18b−dのx軸方向の略中央に位置している。線路導体20eは、線路部18b−eにおいてx軸方向に沿って延在しており、線路部18b−eのy軸方向の略中央に位置している。線路導体20a〜20eは、この順に並ぶように接続されている。
【0030】
線路導体20fは、線路導体20aのx軸方向の負方向側の端部に接続されており、接続部18b−fにおいてx軸方向に沿って延在している。線路導体20fのx軸方向の負方向側の端部は、
図2に示すように、接続部18b−fの略中央に位置している。線路導体20gは、線路導体20eのx軸方向の正方向側の端部に接続されており、接続部18b−gにおいてx軸方向に沿って延在している。線路導体20gのx軸方向の正方向側の端部は、
図3に示すように、接続部18b−gの略中央に位置している。
【0031】
信号線路20の線幅は、例えば、300μm〜700μmである。本実施形態では、信号線路20の線幅は300μmである。信号線路20は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により形成されている。ここで、信号線路20が誘電体シート18bの表面に形成されているとは、誘電体シート18bの表面にめっきにより形成された金属箔がパターニングされて信号線路20が形成されていることや、誘電体シート18bの表面に張り付けられた金属箔がパターニングされて信号線路20が形成されていることを指す。また、信号線路20の表面には平滑化が施されるので、信号線路20が誘電体シート18bに接している面の表面粗さは信号線路20が誘電体シート18bに接していない面の表面粗さよりも大きくなる。
【0032】
基準グランド導体22は、
図2ないし
図6に示すように、誘電体素体12において信号線路20よりもz軸方向の正方向側に設けられているベタ状の導体層であり、信号線路20に沿って延在している。本実施形態では、基準グランド導体22は、誘電体シート18aの表面に形成され、誘電体シート18aを介して信号線路20と対向している。基準グランド導体22には、信号線路20と重なる位置には開口が設けられていない。高周波信号線路10の特性インピーダンスは、主に、信号線路20と基準グランド導体22との対向面積及び距離、並びに、誘電体シート18a〜18cの比誘電率に基づいて定まる。そこで、高周波信号線路10の特性インピーダンスを50Ωに設定する場合には、例えば、信号線路20と基準グランド導体22によって高周波信号線路10の特性インピーダンスが50Ωよりもやや高めの55Ωとなるように設計する。そして、信号線路20と基準グランド導体22と補助グランド導体24によって高周波信号線路10の特性インピーダンスが50Ωとなるように、後述する補助グランド導体24の形状を調整する。
【0033】
基準グランド導体22は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により形成されている。ここで、基準グランド導体22が誘電体シート18aの表面に形成されているとは、誘電体シート18aの表面にめっきにより形成された金属箔がパターニングされて基準グランド導体22が形成されていることや、誘電体シート18aの表面に張り付けられた金属箔がパターニングされて基準グランド導体22が形成されていることを指す。また、基準グランド導体22の表面には平滑化が施されるので、基準グランド導体22が誘電体シート18aに接している面の表面粗さは基準グランド導体22が誘電体シート18aに接していない面の表面粗さよりも大きくなる。
【0034】
また、基準グランド導体22は、
図2ないし
図6に示すように、主要導体22a〜22e及び端子導体22f,22gにより構成されている。主要導体22aは、線路部18a−aの表面に設けられ、x軸方向に沿って延在している。主要導体22bは、線路部18a−bの表面に設けられ、y軸方向に沿って延在している。主要導体22cは、線路部18a−cの表面に設けられ、x軸方向に沿って延在している。主要導体22dは、線路部18a−dの表面に設けられ、y軸方向に沿って延在している。主要導体22eは、線路部18a−eの表面に設けられ、x軸方向に沿って延在している。主要導体22a〜22eは、この順に並ぶように接続されている。
【0035】
端子導体22fは、接続部18a−fの表面に設けられ、矩形状の環をなしている。端子導体22fは、主要導体22aのx軸方向の負方向側の端部に接続されている。端子導体22gは、接続部18a−gの表面に設けられ、矩形状の環をなしている。端子導体22gは、主要導体22eのx軸方向の正方向側の端部に接続されている。
【0036】
補助グランド導体24は、
図2ないし
図6に示すように、誘電体素体12において信号線路20よりもz軸方向の負方向側に設けられており、信号線路20に沿って延在している。より詳細には、補助グランド導体24は、誘電体シート18cの表面に形成され、誘電体シート18bを介して信号線路20と対向している。また、補助グランド導体24には、信号線路20に沿って並ぶ複数の開口30が設けられている。補助グランド導体24は、シールドとしても機能するグランド導体である。以下では、補助グランド導体24のz軸方向の正方向側の主面を表面と称し、補助グランド導体24のz軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。
【0037】
補助グランド導体24は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により形成されている。ここで、補助グランド導体24が誘電体シート18cの表面に形成されているとは、誘電体シート18cの表面にめっきにより形成された金属箔がパターニングされて補助グランド導体24が形成されていることや、誘電体シート18cの表面に張り付けられた金属箔がパターニングされて補助グランド導体24が形成されていることを指す。また、補助グランド導体24の表面には平滑化が施されるので、補助グランド導体24が誘電体シート18cに接している面の表面粗さは補助グランド導体24が誘電体シート18cに接していない面の表面粗さよりも大きくなる。
【0038】
また、補助グランド導体24は、
図2ないし
図6に示すように、主要導体24a〜24e及び端子導体24f,24gにより構成されている。主要導体24aは、線路部18c−aの表面に設けられ、x軸方向に沿って延在している。主要導体24bは、線路部18c−bの表面に設けられ、y軸方向に沿って延在している。主要導体24cは、線路部18c−cの表面に設けられ、x軸方向に沿って延在している。主要導体24dは、線路部18c−dの表面に設けられ、y軸方向に沿って延在している。主要導体24eは、線路部18c−eの表面に設けられ、x軸方向に沿って延在している。主要導体24a〜24eは、この順に並ぶように接続されている。
【0039】
端子導体24fは、接続部18c−fの表面に設けられ、矩形状の環の一部が切り欠かれた形状をなしている。端子導体24fは、主要導体24aのx軸方向の負方向側の端部に接続されている。端子導体24gは、接続部18c−gの表面に設けられ、矩形状の環の一部が切り欠かれた形状をなしている。端子導体24gは、主要導体24eのx軸方向の正方向側の端部に接続されている。
【0040】
また、主要導体24a〜24eには、
図2ないし
図6に示すように、信号線路20に沿って延在する長方形状をなす複数の開口30が設けられている。また、主要導体24a〜24eにおいて開口30に挟まれた部分をブリッジ部90と呼ぶ。ブリッジ部90は、信号線路20に直交する方向に延在している線状の導体である。これにより、主要導体24a〜24eは、梯子状をなしている。複数の開口30及び複数のブリッジ部90とは、z軸方向から平面視したときに、信号線路20に交互に重なっている。そして、本実施形態では、信号線路20は、開口30及びブリッジ部90を横切っている。
【0041】
また、補助グランド導体24は、前記の通り、高周波信号線路10の特性インピーダンスが50Ωとなるように微調整を行うために設計されている。更に、補助グランド導体24の隣り合う2つのブリッジ部90の間隔は、使用帯域内において輻射ノイズが発生しないように設計される。
【0042】
以上のように、信号線路20は、基準グランド導体22及び補助グランド導体24によってz軸方向の両側から挟まれている。すなわち、信号線路20、基準グランド導体22及び補助グランド導体24は、トリプレート型のストリップライン構造をなしている。また、信号線路20と基準グランド導体22との間隔(z軸方向における距離)は、
図7及び
図8に示すように誘電体シート18aの厚さT1と略等しく、例えば、50μm〜300μmである。本実施形態では、信号線路20と基準グランド導体22との間隔は、100μmである。一方、信号線路20と補助グランド導体24との間隔(z軸方向における距離)は、
図7及び
図8に示すように誘電体シート18bの厚さT2と略等しく、例えば、10μm〜100μmである。本実施形態では、信号線路20と補助グランド導体24との間隔は、50μmである。すなわち、補助グランド導体24と信号線路20とのz軸方向における距離は、基準グランド導体22と信号線路20とのz軸方向における距離よりも小さくなるように設計されている。
【0043】
外部端子16aは、
図1及び
図2に示すように、接続部18a−fの表面上の中央に形成されている矩形状の導体である。よって、外部端子16aは、z軸方向から平面視したときに、信号線路20の線路導体20fのx軸方向の負方向側の端部と重なっている。外部端子16bは、
図1及び
図3に示すように、接続部18a−gの表面上の中央に形成されている矩形状の導体である。よって、外部端子16bは、z軸方向から平面視したときに、信号線路20の線路導体20gのx軸方向の正方向側の端部と重なっている。
【0044】
外部端子16a,16bは、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料の表面にNi/Auめっきが施されることにより形成されている。ここで、外部端子16a,16bが誘電体シート18aの表面に形成されているとは、誘電体シート18aの表面にめっきにより形成された金属箔がパターニングされて外部端子16a,16bが形成されていることや、誘電体シート18aの表面に張り付けられた金属箔がパターニングされて外部端子16a,16bが形成されていることを指す。また、外部端子16a,16bの表面には平滑化が施されるので、外部端子16a,16bが誘電体シート18aに接している面の表面粗さは外部端子16a,16bが誘電体シート18aに接していない面の表面粗さよりも大きくなる。
【0045】
ビアホール導体b1は、
図2に示すように、誘電体シート18aの接続部18a−fをz軸方向に貫通しており、外部端子16aと線路導体20fのx軸方向の負方向側の端部とを接続している。ビアホール導体b2は、
図3に示すように、誘電体シート18aの接続部18a−gをz軸方向に貫通しており、外部端子16bと線路導体20gのx軸方向の正方向側の端部とを接続している。これにより、信号線路20は、外部端子16a,16b間に接続されている。ビアホール導体b1,b2は、誘電体シート18aに形成された貫通孔内に金属材料が充填されることによって形成されている。
【0046】
複数のビアホール導体B1は、
図2ないし
図5に示すように、線路部18a−a,18a−c,18a−d,18a−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B1は、
図2及び
図3に示すように、線路部18a−a,18a−eにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B1は、
図4に示すように、線路部18a−cにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、ビアホール導体B1は、
図6に示すように、線路部18a−dにおいて、ブリッジ部90に対してx軸方向の正方向側に設けられている。また、ビアホール導体B1は、
図5に示すように、線路部18a−bには設けられていない。
【0047】
複数のビアホール導体B2は、
図2ないし
図5に示すように、線路部18b−a,18b−c,18b−d,18b−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B2は、
図2及び
図3に示すように、線路部18b−a,18b−eにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、また、複数のビアホール導体B2は、
図4に示すように、線路部18b−cにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、ビアホール導体B2は、
図6に示すように、線路部18b−dにおいて、ブリッジ部90に対してx軸方向の正方向側に設けられている。ビアホール導体B2は、
図5に示すように、線路部18b−bには設けられていない。
【0048】
ビアホール導体B1とビアホール導体B2とは、互いに接続されることによって1本のビアホール導体を構成しており、基準グランド導体22と補助グランド導体24とを接続している。ビアホール導体B1,B2は、誘電体シート18a,18bに形成された貫通孔内に金属材料が充填されることによって形成されている。
【0049】
複数のビアホール導体B3は、
図2ないし
図4及び
図6に示すように、線路部18a−a,18a−b,18a−c,18a−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B3は、
図2及び
図3に示すように、線路部18a−a,18a−eにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B3は、
図4に示すように、線路部18a−cにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、ビアホール導体B3は、
図5に示すように、線路部18a−bにおいて、ブリッジ部90に対してx軸方向の負方向側に設けられている。ただし、ビアホール導体B3は、
図6に示すように、線路部18a−dには設けられていない。
【0050】
複数のビアホール導体B4は、
図2ないし
図4及び
図6に示すように、線路部18b−a,18b−b,18b−c,18b−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B4は、
図2及び
図3に示すように、線路部18b−a,18b−eにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B4は、
図4に示すように、線路部18b−cにおいて、各ブリッジ部90に対してy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、ビアホール導体B4は、
図5に示すように、線路部18b−bにおいて、ブリッジ部90に対してx軸方向の負方向側に設けられている。ただし、ビアホール導体B4は、
図6に示すように、線路部18b−dには設けられていない。
【0051】
ビアホール導体B3とビアホール導体B4とは、互いに接続されることによって1本のビアホール導体を構成しており、基準グランド導体22と補助グランド導体24とを接続している。ビアホール導体B3,B4は、誘電体シート18a,18bに形成された貫通孔内に金属材料が充填されることによって形成されている。
【0052】
以上のように、
図5に示すように、線路部12bにおいて、ビアホール導体B1,B2が設けられず、ビアホール導体B3,B4が設けられている。これにより、z軸方向から平面視したときに、線路部12bにおいて、線路導体20bよりもx軸方向の負方向側にはビアホール導体が設けられ、線路導体20bよりもx軸方向の正方向側にはビアホール導体が設けられていない。
【0053】
また、
図6に示すように、線路部12dにおいて、ビアホール導体B3,B4が設けられず、ビアホール導体B1,B2が設けられている。これにより、z軸方向から平面視したときに、線路部12dにおいて、線路導体20dよりもx軸方向の正方向側にはビアホール導体が設けられ、線路導体20dよりもx軸方向の負方向側にはビアホール導体が設けられていない。
【0054】
また、
図5に示すように、線路部12aにおいてx軸方向の正方向側の端部に対して最も近くに設けられているビアホール導体B4をビアホール導体B4aとする。線路部12bにおいて線路部12aに対して最も近くに設けられているビアホール導体B4をビアホール導体B4bとする。このとき、信号線路20においてビアホール導体B4aに最も近接している部分Paと信号線路20においてビアホール導体B4bに最も近接している部分Pbとの間における信号線路20の長さL10は、信号線路20を伝送される高周波信号(電磁波)の波長の1/4以下である。
【0055】
また、
図5に示すように、線路部12cにおいてx軸方向の正方向側の端部に対して最も近くに設けられているビアホール導体B4をビアホール導体B4cとする。線路部12bにおいて線路部12cに対して最も近くに設けられているビアホール導体B4をビアホール導体B4bとする。このとき、信号線路20においてビアホール導体B4cに最も近接している部分Pcと信号線路20においてビアホール導体B4bに最も近接している部分Pbとの間における信号線路20の長さL11は、信号線路20を伝送される高周波信号(電磁波)の波長の1/4以下である。
【0056】
また、
図6に示すように、線路部12cにおいてx軸方向の負方向側の端部に対して最も近くに設けられているビアホール導体B2をビアホール導体B2cとする。線路部12dにおいて線路部12cに対して最も近くに設けられているビアホール導体B2をビアホール導体B2dとする。このとき、信号線路20においてビアホール導体B2cに最も近接している部分Pdと信号線路20においてビアホール導体B2dに最も近接している部分Peとの間における信号線路20の長さL12は、信号線路20を伝送される高周波信号(電磁波)の波長の1/4以下である。
【0057】
また、
図6に示すように、線路部12eにおいてx軸方向の負方向側の端部に対して最も近くに設けられているビアホール導体B2をビアホール導体B2eとする。線路部12dにおいて線路部12eに対して最も近くに設けられているビアホール導体B2をビアホール導体B2dとする。このとき、信号線路20においてビアホール導体B2eに最も近接している部分Pfと信号線路20においてビアホール導体B2dに最も近接している部分Peとの間における信号線路20の長さL13は、信号線路20を伝送される高周波信号(電磁波)の波長の1/4以下である。
【0058】
保護層14は、誘電体シート18aの表面の略全面を覆っている絶縁膜である。これにより、保護層14は、基準グランド導体22を覆っている。保護層14は、例えば、レジスト材等の可撓性樹脂からなる。
【0059】
また、保護層14は、
図2に示すように、線路部14a〜14e及び接続部14f,14gにより構成されている。線路部14a〜14eは、線路部18a−a〜18a−eの表面の全面を覆うことにより、主要導体22a〜22eを覆っている。
【0060】
接続部14fは、線路部14aのx軸方向の負方向側の端部に接続されており、接続部18a−fの表面を覆っている。ただし、接続部14fには、開口Ha〜Hdが設けられている。開口Haは、接続部14fの中央に設けられている矩形状の開口である。外部端子16aは、開口Haを介して外部に露出している。また、開口Hbは、開口Haに対してy軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hcは、開口Haに対してx軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hdは、開口Haに対してy軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。端子導体22fは、開口Hb〜Hdを介して外部に露出することにより、外部端子として機能する。
【0061】
接続部14gは、線路部14eのx軸方向の正方向側の端部に接続されており、接続部18a−gの表面を覆っている。ただし、接続部14gには、開口He〜Hhが設けられている。開口Heは、接続部14gの中央に設けられている矩形状の開口である。外部端子16bは、開口Heを介して外部に露出している。また、開口Hfは、開口Heに対してy軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hgは、開口Heに対してx軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hhは、開口Heに対してy軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。端子導体22gは、開口Hf〜Hhを介して外部に露出することにより、外部端子として機能する。
【0062】
以上のように構成された高周波信号線路10では、高周波信号線路10の特性インピーダンスは、インピーダンスZ1とインピーダンスZ2との間を周期的に変動する。より詳細には、信号線路20において開口30と重なっている部分では、信号線路20と基準グランド導体22及び補助グランド導体24との間に相対的に小さな容量が形成される。そのため、信号線路20において開口30と重なっている部分の特性インピーダンスは、相対的に高いインピーダンスZ1となる。
【0063】
一方、信号線路20においてブリッジ部90と重なっている部分では、信号線路20と基準グランド導体22及び補助グランド導体24との間に相対的に大きな容量が形成される。そのため、信号線路20においてブリッジ部90と重なっている部分の特性インピーダンスは、相対的に低いインピーダンスZ2となる。そして、開口30とブリッジ部90とは信号線路20に沿って交互に並んでいる。そのため、高周波信号線路10の特性インピーダンスは、インピーダンスZ1とインピーダンスZ2との間を周期的に変動する。インピーダンスZ1は、例えば、55Ωであり、インピーダンスZ2は、例えば、45Ωである。そして、信号線路20全体の平均の特性インピーダンスは、例えば、50Ωである。
【0064】
コネクタ100a,100bはそれぞれ、
図1に示すように、接続部12f,12gの表面上に実装される。コネクタ100a,100bの構成は同じであるので、以下にコネクタ100bの構成を例に挙げて説明する。
図9は、高周波信号線路10のコネクタ100bの外観斜視図である。
図10は、コネクタ100bの断面構造図である。
【0065】
コネクタ100bは、
図9及び
図10に示すように、コネクタ本体102、外部端子104,106、中心導体108及び外部導体110により構成されている。コネクタ本体102は、矩形状の板部材に円筒部材が連結された形状をなしており、樹脂等の絶縁材料により形成されている。
【0066】
外部端子104は、コネクタ本体102の板部材のz軸方向の負方向側の面において、外部端子16bと対向する位置に設けられている。外部端子106は、コネクタ本体102の板部材のz軸方向の負方向側の面において、開口Hf〜Hhを介して露出している端子導体22gに対応する位置に設けられている。
【0067】
中心導体108は、コネクタ本体102の円筒部材の中心に設けられており、外部端子104と接続されている。中心導体108は、高周波信号が入力又は出力する信号端子である。外部導体110は、コネクタ本体102の円筒部材の内周面に設けられており、外部端子106と接続されている。外部導体110は、接地電位に保たれるグランド端子である。
【0068】
以上のように構成されたコネクタ100bは、
図9に示すように、外部端子104が外部端子16bと接続され、外部端子106が端子導体22gと接続されるように、接続部12gの表面上に実装される。これにより、信号線路20は、中心導体108に電気的に接続されている。また、基準グランド導体22及び補助グランド導体24は、外部導体110に電気的に接続されている。
【0069】
高周波信号線路10は、以下に説明するように用いられる。
図11は、高周波信号線路10が用いられた電子機器200をy軸方向から平面視した図である。
図12は、高周波信号線路10が用いられた電子機器200をz軸方向から平面視した図である。
図13は、回路基板202a,202bに取り付ける際の高周波信号線路10を示した図である。
【0070】
高周波信号線路10は、
図11及び
図12に示すように、電子機器200に用いられる。電子機器200は、高周波信号線路10、回路基板202a,202b、コネクタ204a,204b、バッテリーパック(金属体)206及び筐体210を備えている。
【0071】
筐体210は、高周波信号線路10、回路基板202a,202b、コネクタ204a,204b、バッテリーパック206を収容している。回路基板202aには、例えば、アンテナを含む送信回路又は受信回路が設けられている。回路基板202bには、例えば、給電回路が設けられている。バッテリーパック206は、例えば、リチウムイオン2次電池であり、その表面が金属カバーにより覆われた構造を有している。回路基板202a、バッテリーパック206及び回路基板202bは、x軸方向の負方向側から正方向側へとこの順に並んでいる。
【0072】
コネクタ204a,204bはそれぞれ、回路基板202a,202bのz軸方向の負方向側の主面上に設けられている。コネクタ204a,204bにはそれぞれ、コネクタ100a,100bが接続される。これにより、コネクタ100a,100bの中心導体108には、回路基板202a,202b間を伝送される例えば2GHzの周波数を有する高周波信号がコネクタ204a,204bを介して印加される。また、コネクタ100a,100bの外部導体110には、回路基板202a,202b及びコネクタ204a,204bを介して、グランド電位に保たれる。これにより、高周波信号線路10は、回路基板202a,202b間を接続している。
【0073】
ここで、誘電体素体12の表面(より正確には、保護層14)は、バッテリーパック206に対して接触している。そして、誘電体素体12とバッテリーパック206とは、接着剤等により固定されている。誘電体素体12の表面は、信号線路20から見て基準グランド導体22側に位置する主面である。よって、信号線路20とバッテリーパック206との間には、ベタ状の基準グランド導体22が位置している。
【0074】
ところで、高周波信号線路10を回路基板202a,202bに取り付ける際には、コネクタ100aをx軸方向の負方向側に引っ張り、コネクタ100bをx軸方向の正方向側に引っ張る。これにより、線路部12aがx軸方向の負方向側に引っ張られ、線路部12eがx軸方向の正方向側に引っ張られる。そのため、線路部12cのx軸方向の正方向側の端部が線路部12bを介して線路部12aによりx軸方向の負方向側に引っ張られ、線路部12cのx軸方向の負方向側の端部が線路部12dを介して線路部12eによりx軸方向の正方向側に引っ張られる。その結果、線路部12cは、y軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回りに回転し、線路部12b,12dがねじれ変形する。以上の動作により、引っ張られた状態の
図13におけるコネクタ100a,100b間の距離は、引っ張られていない状態の
図1におけるコネクタ100a,100b間の距離よりも長くなる。よって、高周波信号線路10の長さを調整することができるので、コネクタ100a,100bをコネクタ204a,204bに容易に装着することが可能となる。
【0075】
(高周波信号線路の製造方法)
以下に、高周波信号線路10の製造方法について
図2ないし
図6を参照しながら説明する。以下では、一つの高周波信号線路10が作製される場合を例にとって説明するが、実際には、大判の誘電体シートが積層及びカットされることにより、同時に複数の高周波信号線路10が作製される。
【0076】
まず、表面上の全面に銅箔(金属膜)が形成された熱可塑性樹脂からなる誘電体シート18a〜18cを準備する。具体的には、誘電体シート18a〜18cの表面に銅箔を張り付ける。更に、誘電体シート18a〜18cの銅箔の表面に、例えば、防錆のための亜鉛鍍金を施して、平滑化する。誘電体シート18a〜18cは、液晶ポリマーである。また、銅箔の厚さは、10μm〜20μmである。
【0077】
次に、誘電体シート18aの表面上に形成された銅箔をパターニングすることにより、
図2ないし
図6に示す外部端子16a,16b及び基準グランド導体22を誘電体シート18aの表面上に形成する。具体的には、誘電体シート18aの表面の銅箔上に、
図2ないし
図6に示す外部端子16a,16b及び基準グランド導体22と同じ形状のレジストを印刷する。そして、銅箔に対してエッチング処理を施すことにより、レジストにより覆われていない部分の銅箔を除去する。その後、レジスト除去液を吹き付けてレジストを除去する。これにより、
図2ないし
図6に示すような、外部端子16a,16b及び基準グランド導体22が誘電体シート18aの表面上にフォトリソグラフィ工程により形成される。
【0078】
次に、
図2ないし
図6に示す信号線路20を誘電体シート18bの表面上に形成する。更に、
図2ないし
図6に示す補助グランド導体24を誘電体シート18cの表面に形成する。なお、信号線路20及び補助グランド導体24の形成工程は、外部端子16a,16b及び基準グランド導体22の形成工程と同じであるので説明を省略する。
【0079】
次に、誘電体シート18a,18bのビアホール導体b1,b2,B1〜B4が形成される位置にレーザービームを照射することによって貫通孔を形成する。そして、貫通孔に導電性ペーストを充填し、ビアホール導体b1,b2,B1〜B4を形成する。
【0080】
次に、誘電体シート18a〜18cをz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積み重ねて誘電体素体12を形成する。そして、誘電体シート18a〜18cに対してz軸方向の正方向側及び負方向側から熱及び圧力を加えることにより、誘電体シート18a〜18cを一体化する。
【0081】
次に、樹脂(レジスト)ペーストをスクリーン印刷により塗布することにより、誘電体シート18aの表面上に基準グランド導体22を覆う保護層14を形成する。
【0082】
最後に、接続部12f,12g上の外部端子16a,16b及び端子導体22f,22g上にはんだを用いてコネクタ100a,100bを実装する。これにより、
図1に示す高周波信号線路10が得られる。
【0083】
(効果)
以上のように構成された高周波信号線路10によれば、誘電体素体12の可撓性の維持と高周波信号線路10の特性インピーダンスの変動の抑制との両立を図ることができる。より詳細には、線路部12bが容易に変形するためには、線路部12bにビアホール導体を設けないことが好ましい。しかしながら、線路部12bにビアホール導体が設けられない場合には、例えば、主要導体22a,24aと主要導体22b,24bとの間、及び、主要導体22b,24bと主要導体22c,24cとの間に浮遊容量が形成されるおそれがある。このような浮遊容量は、高周波信号線路10の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれる原因となる。
【0084】
そこで、高周波信号線路10では、線路部12bにおいて、z軸方向から平面視したときに、信号線路20よりもx軸方向の負方向側にビアホール導体B3,B4が設けられている。これにより、主要導体22b,24bにおける信号線路20よりもx軸方向の負方向側の部分の電位が接地電位に近づくようになる。そのため、主要導体22a,24aと主要導体22b,24bとの間に電位差が発生することが抑制され、主要導体22b,24bと主要導体22c,24cとの間に電位差が発生することが抑制される。よって、主要導体22a,24aと主要導体22b,24bとの間に浮遊容量が形成されることが抑制され、主要導体22b,24bと主要導体22c,24cとの間に浮遊容量が形成されることが抑制される。同じ理由により、線路部12dにおいて、高周波信号線路10の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることが抑制される。
【0085】
更に、高周波信号線路10では、線路部12bにおいて、ビアホール導体は、z軸方向から平面視したときに、信号線路20よりもx軸方向の正方向側には設けられていない。これにより、線路部12bに設けられているビアホール導体の数を少なくできる。よって、線路部12bの変形がビアホール導体により阻害されることが抑制される。同じ理由により、線路部12dの変形がビアホール導体により阻害されることが抑制される。以上のように、高周波信号線路10によれば、誘電体素体12の可撓性の維持と高周波信号線路10の特性インピーダンスの変動の抑制との両立を図ることができる。
【0086】
また、高周波信号線路10によれば、薄型化を図ることができる。より詳細には、高周波信号線路10では、補助グランド導体24には開口30が設けられている。これにより、信号線路20と補助グランド導体24との間に容量が形成されにくくなる。したがって、信号線路20と補助グランド導体24とのz軸方向における距離を小さくしても、信号線路20と補助グランド導体24との間に形成される容量が大きくなり過ぎない。よって、高周波信号線路10の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンス(例えば、50Ω)からずれにくい。その結果、高周波信号線路10によれば、高周波信号線路10の特性インピーダンスを所定の特性インピーダンスに維持しつつ、薄型化を図ることが可能である。
【0087】
また、補助グランド導体24の面積は、基準グランド導体22の面積よりも小さいため、補助グランド導体24の電位は、基準グランド導体22の電位よりも接地電位から変動しやすい。そのため、線路部12bにビアホール導体が設けられることにより、線路部12bにおいて、基準グランド導体22と補助グランド導体24との間に電位差が発生することが抑制される。
【0088】
また、高周波信号線路10によれば、高周波信号線路10がバッテリーパック206のような金属体に貼り付けられた場合に、高周波信号線路10の特性インピーダンスが変動することが抑制される。より詳細には、高周波信号線路10は、信号線路20とバッテリーパック206との間にベタ状の基準グランド導体22が位置するように、バッテリーパック206に貼り付けられる。これにより、信号線路20とバッテリーパック206とが開口を介して対向しなくなり、信号線路20とバッテリーパック206との間に容量が形成されることが抑制される。その結果、高周波信号線路10がバッテリーパック206に貼り付けられることによって、高周波信号線路10の特性インピーダンスが低下することが抑制される。
【0089】
また、高周波信号線路10によれば、線路部12b,12d及びその近傍からx軸方向及びy軸方向にノイズが放射されることが抑制される。以下に、線路部12bを例に挙げて説明する。
図5に示すように、部分Pa,Pbでは、信号線路20にビアホール導体B4a,B4bが近接しているので、信号線路20とビアホール導体B4a,B4bとの間に容量が形成されている。そのため、部分Pa,Pbにおける高周波信号線路10の特性インピーダンスは、部分Paと部分Pbとの間における高周波信号線路10の特性インピーダンスよりも低い。よって、部分Pa,Pbにおいて高周波信号の反射が発生し、部分Paと部分Pbとの間において部分Pa,Pbを腹とする定在波が発生する。このような定在波は、ノイズの原因となるおそれがある。
【0090】
そこで、高周波信号線路10では、部分Paと部分Pbとの間の信号線路20の長さL10は、信号線路20を伝送される高周波信号(電磁波)の波長の1/4以下である。これにより、部分Paと部分Pbとの間において定在波が発生することが抑制される。その結果、線路部12b及びその近傍からx軸方向及びy軸方向にノイズが放射されることが抑制される。同じ理由により、線路部12d及びその近傍からx軸方向及びy軸方向にノイズが放射されることが抑制される。
【0091】
また、高周波信号線路10では、線路部12b,12d及びその近傍において、信号線路20を伝送される高周波信号にノイズが混入することが抑制される。以下に、線路部12b及びその近傍を例に挙げて説明する。
【0092】
信号線路20はz軸方向の両側から基準グランド導体22と補助グランド導体24とにより挟まれているので、信号線路20からz軸方向にノイズが放射されることが抑制されている。一方、信号線路20のx軸方向又はy軸方向には、ビアホール導体しか存在しない。そのため、信号線路20からx軸方向又はy軸方向にノイズが放射されやすい。
【0093】
ここで、線路部12aと線路部12bとの接続部分では、線路部12aの線路導体20aと線路部12bの線路導体20bとが近接する。そのため、
図5の矢印Mに示すように、線路部12aからx軸方向又はy軸方向にノイズが放射されると、線路部12bを伝送される高周波信号にノイズが混入するおそれがある。同様に、
図5の矢印Mに示すように、線路部12bからx軸方向又はy軸方向にノイズが放射されると、線路部12aを伝送される高周波信号にノイズが混入するおそれがある。その結果、線路部12aと線路部12bとが電磁界結合し、伝送ロスが発生するおそれがある。
【0094】
そこで、高周波信号線路10では、部分Paと部分Pbとの間の信号線路20の長さL10は、信号線路20を伝送される高周波信号の波長の1/4以下である。これにより、部分Paと部分Pbとの間において、信号線路20を伝送される高周波信号の2倍以下の周波数を有する定在波が発生することが抑制される。同じ理由により、部分Pbと部分Pcとの間において、信号線路20を伝送される高周波信号の2倍以下の周波数を有する定在波が発生することが抑制される。例えば、信号線路20を伝送される高周波信号の周波数が2GHzである場合には、4GHz以下の定在波が発生することが抑制される。信号線路20を伝送される高周波信号の周波数が2GHzである場合には、一般的に、信号線路20には1GHz〜3GHzの帯域幅を有する高周波信号が伝送される。よって、4GHz以下の定在波の発生が抑制されることにより、信号線路20を伝送される高周波信号の帯域内の周波数を有するノイズの発生が抑制されることになる。その結果、高周波信号線路10では、線路部12b及びその近傍において、信号線路20を伝送される高周波信号にノイズが混入することが抑制される。同じ理由により、線路部12d及びその近傍において、信号線路20を伝送される高周波信号にノイズが混入することが抑制される。
【0095】
(第1の変形例)
以下に、第1の変形例に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。
図14ないし
図18は、第2の変形例に係る高周波信号線路10aの分解図である。なお、第1の変形例に係る高周波信号線路10aの外観斜視図については
図1を援用する。
【0096】
高周波信号線路10aは、信号線路20及び補助グランド導体24の形状において高周波信号線路10と相違する。以下に、かかる相違点を中心に高周波信号線路10aについて説明する。
【0097】
補助グランド導体24の主要導体24a,24eには、
図14及び
図15に示すように、x軸方向に延在する平行四辺形状をなす複数の開口30,32が設けられている。より詳細には、主要導体24a,24eは、複数の接続部70,72、辺74,76及び複数のブリッジ部78,80,86,88を有している。辺74は、主要導体24aのy軸方向の負方向側の辺を構成している線状導体であり、x軸方向に延在している。辺76は、主要導体24aのy軸方向の正方向側の辺を構成している線状導体であり、x軸方向に延在している。複数の接続部70は、辺74からy軸方向の正方向側に突出しており、半円状をなしている。複数の接続部70は、x軸方向に等間隔に一列に並んでいる。複数の接続部72は、辺76からy軸方向の負方向側に突出しており、半円状をなしている。複数の接続部72は、x軸方向に等間隔に一列に並んでいる。接続部70と接続部72とはx軸方向において異なる位置に設けられている。本実施形態では、接続部70と接続部72とは、x軸方向に交互に並んでいる。そして、接続部72は、x軸方向において、x軸方向に隣り合う2つの接続部70の中間に位置している。接続部70は、x軸方向において、x軸方向に隣り合う2つの接続部72の中間に位置している。
【0098】
ブリッジ部78は、接続部70からy軸方向の正方向側に進行しながらx軸方向の正方向側に進行するように傾斜している線状導体であり、辺76に接続されている。ブリッジ部80は、接続部72からy軸方向の負方向側に進行しながらx軸方向の負方向側に進行するように傾斜している線状導体であり、辺74に接続されている。ブリッジ部78とブリッジ部80とは平行である。これにより、辺74,76及びブリッジ部78,80に囲まれた領域に開口30が形成されている。
【0099】
ブリッジ部86は、接続部72からy軸方向の負方向側に進行しながらx軸方向の正方向側に進行するように傾斜している線状導体であり、辺74に接続されている。ブリッジ部88は、接続部70からy軸方向の正方向側に進行しながらx軸方向の負方向側に進行するように傾斜している線状導体であり、辺76に接続されている。ブリッジ部86とブリッジ部88とは平行である。これにより、辺74,76及びブリッジ部86,88に囲まれた領域に開口32が形成されている。
【0100】
ここで、主要導体24a,24eの辺74には切り欠きC1が設けられている。切り欠きC1は、主要導体24a,24eにおいて接続部72に対してy軸方向の負方向側に設けられている。これにより、切り欠きC1において、辺74が分離されている。
【0101】
また、主要導体24a,24eの辺76には切り欠きC2が設けられている。切り欠きC2は、主要導体24a,24eにおいて接続部70に対してy軸方向の正方向側に設けられている。これにより、切り欠きC2において、辺76が分離されている。
【0102】
補助グランド導体24の主要導体24cには、
図16に示すように、x軸方向に延在する平行四辺形状をなす複数の開口30,32が設けられている。主要導体24cは、z軸を中心として主要導体24a,24eを180度回転させた構造を有している。よって、主要導体24cについて詳細な説明を省略する。
【0103】
補助グランド導体24の主要導体24bは、
図17に示すように、接続部70、辺74,76及び複数のブリッジ部78,88を有している。辺74は、主要導体24bのx軸方向の負方向側の辺を構成している線状導体であり、y軸方向に延在している。辺76は、主要導体24bのx軸方向の正方向側の辺を構成している線状導体であり、y軸方向に延在している。接続部70は、辺74からx軸方向の正方向側に突出しており、半円状をなしている。接続部70は、辺74のy軸方向の中央に設けられている。
【0104】
ブリッジ部78は、接続部70からx軸方向の正方向側に進行しながらy軸方向の負方向側に進行するように傾斜している線状導体である。ブリッジ部78は、辺76に接続されている。
【0105】
ブリッジ部88は、接続部70からx軸方向の正方向側に進行しながらy軸方向の正方向側に進行するように傾斜している線状導体である。ブリッジ部88は、辺76に接続されている。
【0106】
また、主要導体24bの辺76には切り欠きC2が設けられている。切り欠きC2は、主要導体24bにおいて接続部70に対してx軸方向の正方向側に設けられている。これにより、切り欠きC2において、辺76が分離されている。
【0107】
補助グランド導体24の主要導体24dは、
図18に示すように、接続部72、辺74,76及び複数のブリッジ部80,86を有している。辺74は、主要導体24dのx軸方向の負方向側の辺を構成している線状導体であり、y軸方向に延在している。辺76は、主要導体24dのx軸方向の正方向側の辺を構成している線状導体であり、y軸方向に延在している。接続部72は、辺76からx軸方向の負方向側に突出しており、半円状をなしている。接続部72は、辺76のy軸方向の中央に設けられている。
【0108】
ブリッジ部80は、接続部72からx軸方向の負方向側に進行しながらy軸方向の正方向側に進行するように傾斜している線状導体である。ブリッジ部80は、辺74に接続されている。
【0109】
ブリッジ部86は、接続部72からx軸方向の負方向側に進行しながらy軸方向の負方向側に進行するように傾斜している線状導体である。ブリッジ部86は、辺74に接続されている。
【0110】
また、主要導体24dの辺74には切り欠きC1が設けられている。切り欠きC1は、主要導体24dにおいて接続部72に対してx軸方向の負方向側に設けられている。これにより、切り欠きC1において、辺74が分離されている。
【0111】
複数のビアホール導体B11は、
図14ないし
図18に示すように、線路部18a−a,18a−b,18a−c,18a−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B11は、
図14及び
図15に示すように、線路部18a−a,18a−eにおいて、線路部12a,12eのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B11は、
図16に示すように、線路部18a−cにおいて、線路部12cのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B11は、
図17に示すように、線路部18a−bにおいて、線路部12bのx軸方向の中心線L2よりもx軸方向の負方向側に設けられている。ただし、ビアホール導体B11は、
図18に示すように、線路部18a−dには設けられていない。
【0112】
複数のビアホール導体B12は、
図14ないし
図18に示すように、線路部18b−a,18b−b,18b−c,18b−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B12は、
図14及び
図15に示すように、線路部18b−a,18b−eにおいて、線路部12a,12eのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B12は、
図16に示すように、線路部18b−cにおいて、線路部12cのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B12は、
図17に示すように、線路部18b−bにおいて、線路部12bのx軸方向の中心線L2よりもx軸方向の負方向側に設けられている。ただし、ビアホール導体B12は、
図18に示すように、線路部18b−dには設けられていない。
【0113】
ビアホール導体B11とビアホール導体B12とは、互いに接続されることによって1本のビアホール導体を構成しており、基準グランド導体22と補助グランド導体24の接続部70とを接続している。ビアホール導体B11,B12は、誘電体シート18a,18bに形成された貫通孔内に金属材料が充填されることによって形成されている。
【0114】
複数のビアホール導体B13は、
図14ないし
図18に示すように、線路部18a−a,18a−c,18a−d,18a−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B13は、
図14及び
図15に示すように、線路部18a−a,18a−eにおいて、線路部12a,12eのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B13は、
図16に示すように、線路部18a−cにおいて、線路部12cのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B13は、
図18に示すように、線路部18a−dにおいて、線路部12dのx軸方向の中心線L2よりもx軸方向の正方向側に設けられている。ただし、ビアホール導体B13は、
図17に示すように、線路部18a−bには設けられていない。
【0115】
複数のビアホール導体B14は、
図14ないし
図18に示すように、線路部18b−a,18b−c,18b−d,18b−eをz軸方向に貫通している。複数のビアホール導体B14は、
図14及び
図15に示すように、線路部18b−a,18b−eにおいて、線路部12a,12eのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の正方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B14は、
図16に示すように、線路部18b−cにおいて、線路部12cのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の負方向側に設けられており、x軸方向に一列に並んでいる。また、複数のビアホール導体B14は、
図18に示すように、線路部18b−dにおいて、線路部12dのx軸方向の中心線L2よりもx軸方向の正方向側に設けられている。ただし、ビアホール導体B14は、
図17に示すように、線路部18b−bには設けられていない。
【0116】
ビアホール導体B13とビアホール導体B14とは、互いに接続されることによって1本のビアホール導体を構成しており、基準グランド導体22と補助グランド導体24の接続部72とを接続している。ビアホール導体B13,B14は、誘電体シート18a,18bに形成された貫通孔内に金属材料が充填されることによって形成されている。
【0117】
以下では、高周波信号線路10aの線路部12a,12c,12eにおいて、ビアホール導体B11,B12が設けられている区間を区間A2と呼ぶ。高周波信号線路10aの線路部12a,12c,12eにおいて、区間A2とは、ビアホール導体B11,B12とy軸方向に重なる領域を意味する。また、高周波信号線路10bの線路部12a,12c,12eにおいて、ビアホール導体B13,B14が設けられている区間を区間A3と呼ぶ。区間A3とは、ビアホール導体B13,B14とy軸方向に重なる領域を意味する。
【0118】
ここで、ビアホール導体B11,B12とビアホール導体B13,B14とは、線路部12a,12c,12eではx軸方向において異なる位置に設けられている。本実施形態では、ビアホール導体B11,B12とビアホール導体B13,B14とは、x軸方向に交互に並んでいる。そして、ビアホール導体B11,B12は、x軸方向において、x軸方向に隣り合う2つのビアホール導体B13,B14の中間に位置している。ビアホール導体B13,B14は、x軸方向において、x軸方向に隣り合う2つのビアホール導体B11,B12の中間に位置している。
【0119】
また、高周波信号線路10aの線路部12a,12c,12eにおいて、区間A2と区間A3とに挟まれた区間を区間A1と呼ぶ。区間A1は、ビアホール導体B11〜B14が設けられていない区間である。
【0120】
ここで、信号線路20は、
図14ないし
図18に示すように、蛇行している。まず、線路部12a,12eにおける線路導体20a,20eについて説明する。
【0121】
区間A1における線路導体20a,20eは、区間A2における線路導体20a,20eよりもy軸方向の負方向側に位置している。更に、区間A1における線路導体20a,20eは、区間A3における線路導体20a,20eよりもy軸方向の正方向側に位置している。これにより、信号線路20は、ビアホール導体B11,B12及びビアホール導体B13,B14を迂回している。
【0122】
また、線路導体20a,20eは、太線部50,52,54及び細線部56,58,60,62を有している。太線部50,52,54の線幅は、線幅W1である。細線部56,58,60,62の線幅は、線幅W2である。線幅W1は、線幅W2よりも大きい。太線部50は、区間A1において、線路部18b−a,18b−eのy軸方向の中心線L2上をx軸方向に延在している。太線部50は、z軸方向から平面視したときに、開口30,32と重なっている。よって、太線部50は、z軸方向から平面視したときに、補助グランド導体24と重なっていない。
【0123】
太線部52は、区間A2において、線路部18b−a,18b−eのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の正方向側をx軸方向に延在している。ただし、太線部52のx軸方向の両端は、区間A1にはみ出している。太線部52は、z軸方向から平面視したときに、切り欠きC2と重なっている。よって、太線部52は、z軸方向から平面視したときに、補助グランド導体24と重なっていない。
【0124】
太線部54は、区間A3において、線路部18b−a,18b−eのy軸方向の中心線L2よりもy軸方向の負方向側をx軸方向に延在している。ただし、太線部54のx軸方向の両端は、区間A1にはみ出している。太線部54は、z軸方向から平面視したときに、切り欠きC1と重なっている。よって、太線部54は、z軸方向から平面視したときに、補助グランド導体24と重なっていない。以上のような太線部50,52,54の両端はテーパ形状をなしている。
【0125】
細線部56は、区間A1において、太線部52のx軸方向の正方向側の端部と太線部50のx軸方向の負方向側の端部とを接続している。細線部56は、y軸方向の負方向側に進行しながらx軸方向の正方向側に進行するように傾斜している。また、細線部56は、
図14及び
図15に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部78と重なっている。
【0126】
細線部58は、区間A1において、太線部50のx軸方向の正方向側の端部と太線部54のx軸方向の負方向側の端部とを接続している。細線部58は、y軸方向の負方向側に進行しながらx軸方向の正方向側に進行するように傾斜している。また、細線部58は、
図14及び
図15に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部80と重なっている。
【0127】
細線部60は、区間A1において、太線部50のx軸方向の正方向側の端部と太線部52のx軸方向の負方向側の端部とを接続している。細線部60は、y軸方向の正方向側に進行しながらx軸方向の正方向側に進行するように傾斜している。また、細線部60は、
図14及び
図15に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部88と重なっている。
【0128】
細線部62は、区間A1において、太線部54のx軸方向の正方向側の端部と太線部50のx軸方向の負方向側の端部とを接続している。細線部62は、y軸方向の正方向側に進行しながらx軸方向の正方向側に進行するように傾斜している。また、細線部62は、
図14及び
図15に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部86と重なっている。
【0129】
次に、線路部12cにおける線路導体20cについて説明する。線路導体20cは、z軸を中心として線路導体20a,20eを180度回転させた構造を有している。よって、線路導体20cについて詳細な説明を省略する。
【0130】
次に、線路部12bにおける線路導体20bについて説明する。線路導体20bは、
図17に示すように、ビアホール導体B11,B12を迂回している。より詳細には、線路導体20bは、太線部52及び細線部56,60を有している。太線部52の線幅は、線幅W1である。細線部56,60の線幅は、線幅W2である。線幅W1は、線幅W2よりも大きい。
【0131】
太線部52は、線路部12bのy軸方向の中央において、線路部18b−bのx軸方向の中心線L2よりもx軸方向の正方向側をy軸方向に延在している。太線部52は、z軸方向から平面視したときに、切り欠きC2と重なっている。よって、太線部52は、z軸方向から平面視したときに、補助グランド導体24と重なっていない。以上のような太線部52の両端はテーパ形状をなしている。
【0132】
細線部56は、太線部52のy軸方向の負方向側の端部と線路部12cの太線部50のx軸方向の正方向側の端部とを接続している。また、細線部56は、
図17に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部78と重なっている。
【0133】
細線部60は、太線部52のy軸方向の正方向側の端部と線路部12aの太線部50のx軸方向の正方向側の端部とを接続している。また、細線部60は、
図17に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部88と重なっている。
【0134】
次に、線路部12dにおける線路導体20dについて説明する。線路導体20dは、
図18に示すように、ビアホール導体B13,B14を迂回している。より詳細には、線路導体20dは、太線部54及び細線部58,62を有している。太線部54の線幅は、線幅W1である。細線部58,62の線幅は、線幅W2である。線幅W1は、線幅W2よりも大きい。
【0135】
太線部54は、線路部12dのy軸方向の中央において、線路部18b−dのx軸方向の中心線L2よりもx軸方向の負方向側をy軸方向に延在している。太線部54は、z軸方向から平面視したときに、切り欠きC1と重なっている。よって、太線部54は、z軸方向から平面視したときに、補助グランド導体24と重なっていない。以上のような太線部54の両端はテーパ形状をなしている。
【0136】
細線部58は、太線部54のy軸方向の正方向側の端部と線路部12cの太線部50のx軸方向の正方向側の端部とを接続している。また、細線部58は、
図18に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部80と重なっている。
【0137】
細線部62は、太線部54のy軸方向の負方向側の端部と線路部12eの太線部50のx軸方向の正方向側の端部とを接続している。また、細線部62は、
図18に示すように、y軸方向から平面視したときに、ブリッジ部86と重なっている。
【0138】
(効果)
以上のように構成された高周波信号線路10aによれば、例えば、線路部12bにおいて、ビアホール導体は、z軸方向から平面視したときに、信号線路20よりもx軸方向の正方向側には設けられておらず、信号線路20よりもx軸方向の負方向側には設けられている。これにより、高周波信号線路10と同様に、誘電体素体12の可撓性の維持と高周波信号線路10aの特性インピーダンスの変動の抑制との両立を図ることができる。また、高周波信号線路10aによれば、高周波信号線路10のように、線路部12a,12c,12eにおいてz軸方向から平面視したときに信号線路20の両側に2つのビアホール導体を設ける必要がない。したがって、信号線路20に近接するビアホール導体の数が少なくなり、信号線路20に発生する浮遊容量が低減される。これにより、信号線路20の線幅を大きくすることができ、伝送ロスを低減させることができる。また、高周波信号線路10aでは、線路部12a,12c,12eにおいてz軸方向から平面視したときに信号線路20の両側に2つのビアホール導体を設けられていないので、高周波信号線路10aの幅を補足することができる。
【0139】
(第2の変形例)
以下に、第2の変形例に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。
図19は、第2の変形例に係る高周波信号線路10bをz軸方向から平面視した図である。
【0140】
高周波信号線路10bは、線路部12a〜12eの形状において、高周波信号線路10と相違する。より詳細には、高周波信号線路10では、線路部12a,12c,12eは、直線L1に対して平行であった。一方、高周波信号線路10bでは、線路部12a,12c,12eは、直線L1に対して平行ではない。ただし、高周波信号線路10bでは、線路部12a,12c,12eは、直線L1に沿って延在している。線路部12aは、x軸方向の正方向側に進行しながらy軸方向の負方向側に向かって進行している。線路部12cは、x軸方向の負方向側に進行しながらy軸方向の負方向側に向かって進行している。線路部12eは、x軸方向の正方向側に進行しながらy軸方向の負方向側に向かって進行している。ここで、直線L1は、線路部12aのx軸方向の正方向側の端部taと線路部12cのx軸方向の正方向側の端部tbとの垂直二等分線である。
【0141】
また、線路部12bは、線路部12aのx軸方向の正方向側の端部と線路部12cのx軸方向の正方向側の端部とを接続しており、x軸方向の正方向側に突出するように湾曲した円弧状をなしている。線路部12dは、線路部12cのx軸方向の負方向側の端部と線路部12eのx軸方向の負方向側の端部とを接続しており、x軸方向の負方向側に突出するように湾曲した円弧状をなしている。なお、高周波信号線路10bの内部構造は、高周波信号線路10の内部構造と同じであるので、説明を省略する。
【0142】
以上のように構成された高周波信号線路10bによれば、高周波信号線路10と同様に、誘電体素体12の可撓性の維持と高周波信号線路10bの特性インピーダンスの変動の抑制との両立を図ることができる。
【0143】
また、線路部12a,12c,12eが直線L1に沿って延在しているとは、線路部12a,12c,12eが直線L1に対して傾いていてもよいことを意味している。線路部12a,12c,12eが直線L1に対してなす角度の許容範囲は、高周波信号線路10bが奏する効果により定まり、誘電体素体12の可撓性の維持と高周波信号線路10bの特性インピーダンスの変動の抑制との両立を図ることができる範囲である。
【0144】
(その他の実施形態)
本発明に係る高周波信号線路は、高周波信号線路10,10a,10bに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0145】
なお、高周波信号線路10,10a,10bの構成を任意に組み合わせてもよい。
【0146】
保護層14は、スクリーン印刷によって形成されているが、フォトリソグラフィ工程によって形成されてもよい。
【0147】
なお、高周波信号線路10,10a,10bにおいて、コネクタ100a,100bが実装されていなくてもよい。この場合、高周波信号線路10,10a,10bの端部と回路基板とがはんだ等によって接続される。なお、高周波信号線路10,10a,10bの一方の端部のみにコネクタ100aが実装されてもよい。
【0148】
なお、ビアホール導体の代わりに、スルーホール導体が用いられてもよい。スルーホール導体とは、誘電体素体12に設けられた貫通孔の内周面にめっき等の手段により導体を形成した層間接続導体である。
【0149】
なお、補助グランド導体24には開口30が設けられていなくてもよい。
【0150】
なお、ビアホール導体B1〜B4は、線路部12a,12b,12eの全てに設けられている必要はなく、少なくとも1つの線路部にのみ設けられていてもよい。ただし、ビアホール導体B1〜B4は、グランド電位の安定化のために、線路部12a,12b,12eの全てに設けられていることが好ましい。
【0151】
また、高周波信号線路10,10aの線路部12b,12dは、高周波信号線路10bの線路部12b,12dのように湾曲していてもよい。
【0152】
なお、直線L1は、線路部12aのx軸方向の正方向側の端部taと線路部12cのx軸方向の正方向側の端部tbとの垂直二等分線でなくてもよい。
【0153】
なお、高周波信号線路10,10aは、ミアンダ形状をなしていなくてもよい。例えば、高周波信号線路10,10aにおいて、線路部12d,12eが設けられなくてもよい。
【0154】
また、高周波信号線路10bにおいて、線路部12a,12c,12eが図示したものよりさらに長くてもよい。
【0155】
なお、高周波信号線路10,10a,10bは、アンテナフロントエンドモジュールなどRF回路基板における高周波信号線路として用いられてもよい。