特許第5943195号(P5943195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943195導電性高分子のエッチング液、およびエッチング液を用いた導電性高分子パターンの形成方法。
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  • 特許5943195-導電性高分子のエッチング液、およびエッチング液を用いた導電性高分子パターンの形成方法。 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943195
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】導電性高分子のエッチング液、およびエッチング液を用いた導電性高分子パターンの形成方法。
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20160616BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20160616BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   H01L21/306 F
   H01L21/88 C
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-120256(P2012-120256)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-247250(P2013-247250A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井原 孝
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526944(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113744(WO,A1)
【文献】 特開2001−035276(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125603(WO,A1)
【文献】 特表2014−508371(JP,A)
【文献】 特開2008−294054(JP,A)
【文献】 特開2005−306927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/3213
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム4価化合物および次亜塩素酸塩の中から選択される少なくとも1つの水溶性の酸化剤と、水系溶媒と、式(1)および(2)から選択される少なくとも1つのフッ素系界面活性剤とを含む、導電性高分子用エッチング液。
Rf1SO3M (1)
(Rf2SO2xNH(3-x) (2)
(上記式中のRf1およびRf2は、アルキル基のHの全部をFで置き換えた炭素数2〜5のフッ化炭素基であり、Mは水素、カリウム、リチウム、ナトリウム、またはアンモニウムイオンであり、xは1または2である。)
【請求項2】
フッ素系界面活性剤が、エッチング液全体の0.01〜5質量%である、請求項1に記載の導電性高分子用のエッチング液。
【請求項3】
水溶性の酸化剤が、(NH42Ce(NO36、Ce(SO42、(NH44Ce(SO44、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸カルシウムの中から選択される少なくとも一つである、請求項1または請求項2に記載の導電性高分子用エッチング液。
【請求項4】
ポリアセチレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリフェニレン類、ポリチエニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリアセン類、ポリアニリン類、ポリピロール類又はポリチオフェン類から選択される導電性高分子の膜に、請求項1〜のいずれかに記載の導電性高分子用エッチング液を接触させてエッチングを行う、導電性高分子パターンの形成方法。
【請求項5】
ポリチオフェン類からなる膜厚10nm〜1μmの導電性高分子膜に、導電性高分子用エッチング液を接触させて、1分間以内でエッチングを行う、請求項に記載の導電性高分子パターンの形成方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法で形成された、パターンの境目の色差がΔE*ab値で0〜1.5の間である、導電性高分子パターンを有する基板の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子をエッチングすることのできるエッチング液と、エッチング液による部分エッチングを行って、導電性高分子のパターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、透明導電膜としては、In(インジウム)を含むITO(酸化インジウムスズ)が主に使われているが、Inは可採埋蔵量が3千トンといもいわれる希少元素であることから、Inを使わない透明導電膜の材料が研究されている。導電性高分子の導電率は目覚しく向上しており、ITOの代替材料として導電性高分子は有望である。
この導電性高分子は、導電性、光の透過性、発光性、成膜後もフレキシブルであるという特徴をもっており、透明導電膜、電解コンデンサー、帯電防止剤、電池、及び有機EL素子等への応用が研究され、一部ではすでに実用化されている。導電性高分子を電子回路に組み込んで使用する場合、導電性高分子膜をパターニングする技術は重要な技術である。
【0003】
導電性高分子をパターニングする方法としては、例えば、特許文献1にはPET基板上に成膜した導電性高分子膜にドライフィルムレジストを用いてパターンを転写し、各種エッチング液を用いてエッチングして、導電性高分子のパターンを形成する方法が記載されており、エッチング液の処理能力として、エッチング所要時間やエッチング液の安定性に関する課題が開示されているが、エッチング液に界面活性剤を併用できることの記載は無く、実施例で示されたエッチング所要時間は、1分以内のものもあったが、1〜5分かかったものもあった。特に導電性が高く、実用化が期待されているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)含有の導電性高分子膜に対しては、1分以上のエッチング時間が記載されたものが複数あることが開示されていることから、生産効率の観点からはエッチング液の処理能力に改良の余地のあるものであった。
【0004】
特許文献2には、基板上の金属、合金、それらの酸化物からなる導電膜をエッチングして導電膜パターンを形成するためのエッチング液として、少なくとも硝酸第二セリウムアンモニウムを含有する導電膜用エッチング剤と、界面活性剤として、炭素数6〜10の直鎖フッ化炭素基を有するパーフルオロアルキルスルホン酸塩と分岐鎖フッ化炭素基を有するパーフルオロアルキルスルホン酸塩とを併用するエッチング液が開示されているが、エッチングの対象は金属導電膜であって導電性高分子は開示されておらず、また、界面活性剤の併用によってエッチング液の消耗を抑えることが開示されているものの、エッチング時間を短くすることの記載は無く、実施例に示されたエッチング時間は界面活性剤の有無にかかわらず同じであった。すなわち、特許文献2には、金属系導電膜について、エッチング液に界面活性剤を併用することができることが開示されているが、導電性高分子膜のエッチング時間を短くするという課題の解決に導くものではなかった。
【0005】
特許文献3には、タッチパネル用のITO等の透明導電膜のエッチングに用いられる、リン酸と硝酸とを必須成分とするエッチング液に、式(Rf1SO2)(Rf2SO2)NX で表されるパーフルオロスルホニルイミドを界面活性剤として併用するエッチング液が開示されており、実施例には上記界面活性剤の併用によって、消泡時間が著しく短くなることが示されているが、ジャストエッチング時間に注目すると、界面活性剤を含まないエッチング液を用いた場合のジャストエッチング時間が30秒であったのに対して、各種界面活性剤を用いた実施例および他の比較例のすべてでジャストエッチング時間が45〜180秒と5割以上長くなったことが開示されている。ここでいう、ジャストエッチング時間(以下、ジャストエッチ時間という)とは、透明導電膜が完全に無くなるまでに要するエッチング時間である。
【0006】
すなわち、エッチング液によって導電性高分子をエッチングしてパターンを形成できることは知られており、また、金属や金属酸化物系の導電膜についてはエッチング液にフッ素系の界面活性剤を併用できることは知られていたが、エッチング剤と界面活性剤の、従来知られた組み合わせでは、ジャストエッチ時間が長くなってしまい、生産性が低下するという問題点が未解決のままであったということができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2008/041461国際公開パンフレット
【特許文献2】特開2008−294054号公報
【特許文献3】特開2011−108975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、導電性高分子に対し優れたエッチング能力を有し、従来よりもエッチング時間を短くできる導電性高分子用エッチング液、及び、前記導電性高分子用エッチング液を用いた導電性高分子のパターニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記従来技術における問題点を克服するために鋭意検討した結果、水溶性の酸化剤と、水系溶媒と、特定の式で表されるフッ素系界面活性剤とを含むエッチング液は、導電性高分子に対して従来よりも短い時間でエッチングをすることができ、導電性高分子のパターニングの生産性を高めることができることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性高分子膜を短時間でエッチングすることができるので、導電性高分子パターンの生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エッチング液を用いて導電性高分子をエッチングして導電性高分子パターンを得る工程概念図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、「%」は透過率を表す場合を除き、特に明記しない限り「質量%」を意味する。
【0013】
(導電性高分子用エッチング液)
本発明の導電性高分子用エッチング液は、水溶性の酸化剤と、特定のフッ素系界面活性剤、及び、水系溶媒を含むものである。
本発明の導電性高分子用エッチング液は、導電性高分子に接触することにより、当該接触部分の導電性高分子をエッチングすることができる。通常はレジスト膜を使用するフォトリソグラフ法により、導電性高分子の残したい部分をレジスト膜で保護した上で、除去したい部分にエッチング液を接触させることにより、特定部分の導電性高分子を除去し、望みの導電性高分子のパターンを得ることができる。
【0014】
<フッ素系界面活性剤>
本発明のエッチング液に含まれるのは、式(1)および(2)から選択される少なくとも1つのフッ素系界面活性剤である。
Rf1SO3M (1)
(Rf2SO2xNH(3-x) (2)
(上記式中のRf1およびRf2は、アルキル基のHの全部をFで置き換えた炭素数2〜5のフッ化炭素基であり、Mは水素、カリウム、リチウムおよびナトリウムから選択され、xは1または2である。)
【0015】
式(1)で表されるフッ素系界面活性剤として好ましいものは、Rf1で表されるフッ化炭素基が直鎖アルキル基のHの全部をFで置き換えた炭素数2〜5のフッ化炭素基であり、好ましくは炭素数2〜4であり、具体例としては、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロエタンスルホン酸カリウム、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロプロパンスルホン酸カリウム、パーフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロペンタンスルホン酸カリウムなどが例示できる。この中でも特に好ましいのは、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムである。
【0016】
式(2)で表されるフッ素系界面活性剤の具体例としては、Rf2で表されるフッ化炭素基が直鎖アルキル基のHの全部をFで置き換えた炭素数2〜5のフッ化炭素基であり、好ましくは炭素数2〜4であり、またxは1よりも2の方が好ましい。xが2の場合、式(2)で表されるフッ素系界面活性剤には2つのRf2で表されるフッ化炭素基が含まれるが、これら2つのフッ化炭素基は同一でなくてもよい。好ましいのは、2つのフッ化炭素基が同一であるものである。具体例としては、1,1,2,2,3,3,4,4,4、−ノナフルオロ−N−[(ノナフルオロブチル)スルホニル]−1−ブタンスルホンアミド、1,1,2,2,2−ペンタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエチル)スルホニル]−1−エタンスルホンアミド、1,1,2,2,2−ペンタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエチル)スルホニル]−1−エタンスルホンアミド、1,1,2,2,3,3,3、−ヘプタフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロピル)スルホニル]−1−プロパンスルホンアミド、1,1,2,2,3,3,4,4,4、−ノナフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロピル)スルホニル]−1−ブタンスルホンアミド、1,1,2,2,3,3,4,4,4、−ノナフルオロ−N−[(ペンタフルオロエチル)スルホニル]−1−ブタンスルホンアミドなどが例示できる。この中でも特に好ましいのは、1,1,2,2,3,3,4,4,4、−ノナフルオロ−N−[(ノナフルオロブチル)スルホニル]−1−ブタンスルホンアミドである。
【0017】
本発明のエッチング液における、式(1)および(2)から選択される少なくとも1つのフッ素系界面活性剤の含有量は、多い方がエッチング時間を短くする効果が高い傾向があって好ましいが、あまり多すぎても効果は頭打ちになる。そこで好ましい含有量の範囲としては、エッチング液全体の0.01〜5%、さらに好ましくは0.05〜2%である。
【0018】
<水溶性の酸化剤>
本発明の導電性高分子用エッチング液に用いる水溶性の酸化剤としては、セリウム4価化合物,次亜塩素酸塩,過マンガン酸化合物,塩酸と硝酸の混合物,臭素酸,塩素酸,クロム6価化合物などを挙げることができ、これらの中から複数を併用することもできる。
この中でも、好ましいのはセリウム4価化合物または次亜塩素酸塩であり、セリウム4価化合物の具体例としては(NH42Ce(NO36、Ce(SO42、(NH44Ce(SO44が挙げられ、次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カリウムなどを挙げることができる。塩素化イソシアヌル酸のように水に溶解して次亜塩素酸を発生する物質も次亜塩素酸塩と同様に使用できる。この中でより好ましいのは(NH42Ce(NO36、および次亜塩素酸ナトリウムであり、酸化力が強い点で(NH42Ce(NO36のほうがさらに好ましい。
【0019】
前記水溶性酸化剤として、(NH42Ce(NO36を用いる場合、本発明のエッチング液における(NH42Ce(NO36の含有量は、エッチング性の観点から、エッチング液の全質量に対し、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましく、また、濃度と共に処理速度が上がるが溶解度の観点からは、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、1.5〜15%がさらに好ましい。
【0020】
本発明のエッチング液において(NH42Ce(NO36を用いる場合、エッチング液中における4価のセリウム化合物の分解を防止するため、安定剤を用いることが好ましい。
前記安定剤としては、HNO3又はH2SO4が好ましく、HNO3がより好ましい。前記安定剤としてHNO3を用いる場合、その濃度は、エッチング液の全質量に対し、0.1%より多いことが好ましく、また、70%以下が好ましく、1.0〜60%であることがより好ましく、3.0〜20%であることが更に好ましい。 また、前記安定剤としてH2SO4を用いる場合、その濃度は、1.0%より多いことが好ましく、また、40%以下が好ましく、2.0〜30%であることがより好ましく、3〜20%であることが更に好ましい。HNO3又はH2SO4が上記範囲の濃度であると、エッチング液のエッチング能力の低下を防止することができる。
【0021】
前記水溶性酸化剤として、Ce(SO42を用いる場合、本発明のエッチング液におけるCe(SO42の含有量は、エッチング性の観点から、エッチング液の全質量に対し、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましく、また、濃度と共に処理速度が上がるが溶解度の観点からは、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、1.5〜15%がさらに好ましい。
【0022】
本発明のエッチング液においてCe(SO42を用いる場合、エッチング液中における4価のセリウム化合物の分解を防止するため、安定剤を用いることが好ましい。
前記安定剤としては、HNO3又はH2SO4が好ましく、HNO3がより好ましい。前記安定剤としてHNO3を用いる場合、その濃度は、エッチング液の全質量に対し、0.1%より多いことが好ましく、また、70%以下が好ましく、1.0〜60%であることがより好ましく、3.0〜20%であることが更に好ましい。また、前記安定剤としてH2SO4を用いる場合、その濃度は、1.0%より多いことが好ましく、また、40%以下が好ましく、2.0〜30%であることがより好ましく、3〜20%であることが更に好ましい。HNO3又はH2SO4が上記範囲の濃度であると、エッチング液のエッチング能力の低下を防止することができる。
【0023】
前記水溶性の酸化剤として、(NH44Ce(SO44を用いる場合、(NH44Ce(SO44の含有量は、エッチング性の観点から、エッチング液の全質量に対し、0.5%より多いことが好ましく、1.0%以上が好ましく、また、濃度と共に処理速度が上がるが溶解度の観点から、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、2.0〜20%が更に好ましく、1.5〜15%が特に好ましい。
【0024】
(NH44Ce(SO44を用いた本発明のエッチング液において、エッチング液中における4価のセリウム化合物の分解を防止するため、安定剤を用いることが好ましい。
前記安定剤は、H2SO4が好ましい。前記安定剤としてH2SO4を用いた場合、その濃度は、1.0%より多いことが好ましく、また、40%以下が好ましく、2.0〜30%であることがより好ましく、3〜20%であることが更に好ましい。H2SO4が上記範囲の濃度であると、エッチング液のエッチング能力の低下を防止することができる。
【0025】
前記水溶性の酸化剤として、次亜塩素酸塩を好適に用いることができる。
次亜塩素酸塩は、水酸化アルカリ金属又は水酸化アルカリ土類金属に塩素を吸収させて製造する場合が多く、その場合、未反応の水酸化アルカリ金属又は水酸化アルカリ土類金属の影響でその水溶液は強アルカリ性を示す。
水溶性の酸化剤として、次亜塩素酸塩を用いる場合、エッチング液のpHを調整するため、酸を併用してもよい。併用する酸としては無機酸及び有機酸のいずれも使用することができる。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸等が好ましく例示でき、これらの中でも塩酸、硫酸および硝酸がより好ましく、硫酸および硝酸がさらに好ましい。
【0026】
本発明のエッチング液に次亜塩素酸塩を用いる場合、本発明のエッチング液のpHは、特に制限はなく、使用する基材や導電性高分子膜の材質に応じて選択すればよいが、塩素ガスの発生の抑制やエッチング性の観点から、pHが4〜13であることが好ましく、6〜12.5であることがより好ましく、7〜12であることが更に好ましく、7〜11であることが最も好ましい。本発明のエッチング液のpHの測定は、市販されているpHメーターを用いて測定することができる。
【0027】
本発明のエッチング液に次亜塩素酸塩を用いる場合、次亜塩素酸塩の有効塩素濃度は、エッチング液の全質量に対し、0.06%以上であることが好ましく、0.1%以上がより好ましく、0.2%以上が更に好ましく、また、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。有効塩素濃度がこの範囲内であると導電性高分子のエッチングが効率よくできる。
【0028】
本発明において、次亜塩素酸塩の有効塩素濃度は、Na2SO3での滴定法により測定することができる。すなわち、測定する試料をWグラム採取し、イオン交換水を加え250mlとする。この試料液10mlを分取し、ヨウ化カリウム10%水溶液10mlを加える。そして、酢酸(1:2)10mlを加えpHを酸性にし、0.1規定濃度チオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定する(滴定の途中で終点を判定しやすくするため可溶性でんぷんを加えてもよい。)。0.1規定濃度Na2SO3の滴定量及び試料採取量をWグラムとしたとき、次の式(3)から有効塩素濃度を求めることができる。
【0029】
【数1】
なお、式(3)中のf(ファクター)は、0.1規定濃度Na2SO3の補正係数、すなわち、実際に使用したNa2SO3水溶液と0.1規定濃度Na2SO3水溶液との差を補正する係数を表す。
【0030】
<水系溶媒>
本発明の導電性高分子用エッチング液は、水系溶媒を含む。本発明に用いることができる水系溶媒は、エッチング処理に影響のない媒体であれば、特に制限はない。炭素数1〜3のアルコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、酢酸などの水と任意の割合で混合できるものおよび水そのものを水系溶媒と呼び、複数の水系溶媒を併用することもできる。好ましいのは酸化剤で分解されにくい炭酸エチレン、炭酸プロピレン、酢酸およびそれらの水溶液などであり、より好ましいのは水である。本発明のエッチング液は、水系溶媒を25%以上含有することが好ましく、50%以上含有することがより好ましい。
【0031】
<導電性高分子>
本発明の導電性高分子用エッチング液は、導電性高分子に対し優れたエッチング能力を有する。
導電性高分子は、π電子が移動して導電性を示す。このような導電性高分子は多数報告されている。
本発明に用いることができる導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリイソチアナフテン、ポリイソナフトチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチアジル、ポリエチレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリドデシルチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等やこれらの誘導体が例示できる。これらの中でも、ポリアニリン類、ポリピロール類又はポリチオフェン類が好ましく、ポリピロール類、又は、ポリチオフェン類がより好ましく、電気伝導度、空気中での安定性及び耐熱性に優れたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が最も好ましい。
また、本発明に用いることができる導電性高分子は、水系溶媒に不溶性のものであることが好ましい。
【0032】
導電性高分子は、より高い電気伝導度を発現する目的で、ドーパントと呼ばれるドーピング剤を含むことができる。前記導電性高分子に用いることができるドーパントとしては、導電性高分子の種類に応じ、ハロゲン類(臭素、ヨウ素、塩素等)、ルイス酸(BF3、PF5等)、プロトン酸(HNO3、H2SO4等)、遷移金属ハライド(FeCl3、MoCl5等)、アルカリ金属(Li、Na等)、有機物質(アミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、アルキルアンモニウムイオン、クロラニル、テトラシアノエチレン(TCNE)、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等)等が例示できる。導電性高分子自体にドーピング効果を持つ自己ドープ型導電性高分子であってもよい。また、ポリチオフェン類を用いる場合、ドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0033】
本発明に用いることができる導電性高分子の導電率に制限はないが、10-6〜104S/cmであることが好ましく、10-5.5〜103S/cmであることがより好ましく、10-5〜5×102S/cmであることが更に好ましい。本発明において、用いる導電性高分子の導電率が上記範囲であると、接続部分のパターニング等において好ましい。
また、本発明に用いることができる導電性高分子は、可視光域における透過率が高いものが好ましい。なお、透過率は、波長550nmにおいて60〜98%であることが好ましく、70〜95%であることがより好ましく、80〜93%であることが更に好ましい。導電性高分子自体の透過率が上記範囲であると、ディスプレイ等の用途に好適に用いることができる。
ここで、本発明において、可視光域とは波長400〜700nmである。なお、透過率の測定は、分光光度計により測定することができる。
【0034】
各種の導電性高分子が市販されている。Panipol社により製造され「Panipol」の商品名で市販されているポリアニリンは、機能性スルホン酸でドープした有機溶媒可溶型ポリアニリンである。Ormecon社により製造され「Ormecon」の商品名で市販されているポリアニリンは、有機酸をドーパントに用いた溶媒分散型ポリアニリンである。ヘレウス(株)により製造され「クレビオス」の商品名で市販されているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)はポリスチレンスルホン酸をドーパントとしている。その他に、アキレス(株)から商品名「STポリ」で市販されるポリピロール、東洋紡績(株)から商品名「PETMAX」で市販されるスルホン化ポリアニリン、マルアイ(株)から商品名「SCS−NEO」で市販されているポリアニリンにも本発明を応用して導電性高分子パターンを形成することができる。
特許流通促進事業として特許流通支援チャートの平成13年度 化学6「有機導電性ポリマー」に記載されている導電性高分子にも同様に本発明を応用して導電性高分子パターンを得ることができる。
【0035】
(導電性高分子のパターニング方法)
本発明の導電性高分子のパターニング方法(以下、単に「本発明のパターニング方法」ともいう。)は、本発明の導電性高分子用エッチング液を用いて行う方法であり、本発明の導電性高分子用エッチング液を導電性高分子に接触させることにより、当該接触部分をエッチングすることができる。 本発明の導電性高分子のパターニング方法によりエッチングする導電性高分子の形状は、特に制限はなく、任意の形状であればよいが、膜状であることが好ましい。
また、本発明の導電性高分子のパターニング方法は、基材上に導電性高分子の膜を形成する成膜工程、前記膜において導電性高分子を除去したい領域に本発明の導電性高分子用エッチング液を選択的に接触させる工程、前記導電性高分子用エッチング液により前記の除去したい領域の導電性高分子をエッチングするエッチング工程、並びに、残存する導電性高分子用エッチング液及び導電性高分子のエッチング残渣を基板上から除去する除去工程を含むことが好ましい。
【0036】
<成膜工程>
本発明の導電性高分子のパターニング方法は、基材上に導電性高分子の膜を形成する成膜工程を含むことが好ましい。
基材としては、特に制限はなく、使用用途に応じて選択することができ、具体的には、ガラス、石英、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)、ポリイミド、ポリアクリレート、メタクリレート等が挙げられる。
前記成膜工程における導電性高分子の膜の厚さとしては、特に制限はなく、所望の厚さであればよいが、1nm〜100μmであることが好ましく、2nm〜1μmであることがより好ましく、5nm〜500nmであることがさらに好ましい。
前記成膜工程における導電性高分子としては、前述したものを好適に用いることができる。
前記成膜工程における基材上に導電性高分子の膜を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法により形成すればよい。具体的には、導電性高分子の溶液を基材上にスピンコートやディップコートし、乾燥させる方法などが例示できる。
基材と導電性高分子の膜との間には、必要に応じ、他の層を有していてもよい。また、前記印刷工程の前に、導電性高分子の膜上に、必要に応じ、他の層を形成してもよい。
基材上に形成する導電性高分子の膜は、一様な膜であっても、一部が既に本発明のパターニング方法又は他の方法によりパターニングされた膜であってもよい。
【0037】
また、前記膜における導電性高分子を除去する領域の形状は、特に制限はなく、必要に応じた形状であればよい。また、本発明の導電性高分子のパターニング方法は、例えば、ナノオーダーからセンチオーダーの線幅のパターンの形成に好適に用いることができ、マイクロオーダーからミリオーダーの線幅のパターンの形成により好適に用いることができる。
【0038】
<エッチング工程>
本発明の導電性高分子のパターニング方法は、前記導電性高分子用エッチング液により前記除去する領域の導電性高分子をエッチングするエッチング工程を含むことが好ましい。
前期の除去する領域に選択的にエッチング液を接触することがパターニング方法として必須であり、その方法としては液体レジストを使用する方法、レジストインクを使用する方法、エッチング液をインク化し印刷する方法があり、本発明のエッチング液はすべての方法に適用可能である。
前記エッチング工程における経過時間(エッチング時間)は、特に制限はなく、エッチング液の組成、導電性高分子の材質や膜の厚さ、エッチングを行う温度、エッチングを行う深さ等に応じ、適宜選択することができる。
【0039】
前記エッチング工程におけるエッチング時の温度としては、特に制限はなく、例えば、常温(10〜30℃)で行うことができる。また、エッチング速度の調整等のため、エッチング雰囲気及び/又は導電性高分子の膜を有する基材を、加熱又は冷却してもよい。
また、エッチング工程において、前記除去する領域の導電性高分子の除去は、必要に応じ、膜を貫通させ完全にエッチングする態様であっても、膜を貫通させず前記除去する領域の一部のみをエッチングする態様であってもよい。
また、前記エッチング工程においては、前記導電性高分子の膜を有する基材を静置しておいてもよいし、搬送等、エッチングに大きな影響がない範囲で前記導電性高分子の膜を有する基材を動かしていてもよい。
【0040】
<除去工程>
本発明の導電性高分子のパターニング方法は、残存する導電性高分子用エッチング液及び導電性高分子のエッチング残渣を基板上より除去する除去工程を含むことが好ましい。前記導電性高分子のエッチング残渣としては、例えば、本発明のエッチング液による導電性高分子の分解物や、エッチングにより生じた導電性高分子の微粉などが挙げられる。また、前記除去工程においては、残存する導電性高分子用エッチング液及び導電性高分子のエッチング残渣だけでなく、不要なエッチング残渣を除去してもよいことは言うまでもない。
前記除去工程においては、簡便性やコストの観点から、水洗により、残存する導電性高分子用エッチング液及び導電性高分子のエッチング残渣を除去することが好ましい。
水洗方法としては、特に制限はなく、パターニングされた導電性高分子を有する基材を流水により洗浄する方法や、パターニングされた導電性高分子の膜を有する基材を水に浸漬する方法が好ましく例示できる。
また、前記除去工程において水洗を行った場合は、本発明の導電性高分子のパターニング方法は、前記除去工程の後に、パターニングされた導電性高分子の膜を乾燥させる工程を含むことが好ましい。
前記乾燥方法としては、特に制限はなく、熱による乾燥、風乾、温風による乾燥等、公知の方法を用いることができる。
【0041】
また、本発明の導電性高分子のパターニング方法は、前記工程以外に、必要に応じて、他の工程を含んでいてもよい。
例えば、本発明の導電性高分子のパターニング方法を行った後、又は、行う前に、本発明以外の他のパターニング方法によりパターニングを行ってもよく、また、本発明の導電性高分子のパターニング方法を2回以上行ってもよい。
また、本発明の導電性高分子のパターニング方法においては、必要に応じ、本発明の導電性高分子用エッチング液を2種以上使用してもよい。
【0042】
<色差測定>
エッチング液による酸化等によって、導電性高分子が除去されたあとの基板表面が変色することがあるが、タッチパネルやディスプレイ用途など、外観が重要となる用途ではこのような着色が問題となることがある。特に着色が目立つのが、パターンの境目である。そこで、パターンの境目を挟んでエッチングされて基板が露出した部分と導電性高分子が残った部分との比較で色差を測定して着色を定量的に評価することができる。これを本発明ではパターンの境目の色差と呼び、評価には、例えばCIE1976による(L*,a*,b*)色空間を用いた色差ΔE*abの数字を用いることができ、ΔE*abが0〜0.5の場合は、きわめてわずかに異なる(trace)、0.5〜1.5の場合はわずかに異なる(slight)、1.5〜3.0の場合は感知し得るほどに異なる(noticiable)という表現に対応すると言われている。色差の値が小さければ外観上パターンの境目が感知されず、美観を損ねることがないので好ましいから、エッチング後の色差が0〜1.5であることが好ましく、さらに好ましくは0〜0.5である。
【0043】
なお、色差ΔE*abは、式(4)で定義される値であり、値が大きいほど色差が大きいことを意味する。

ΔE*ab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2 (4)
【0044】
本発明の導電性高分子用エッチング液、及び、本発明の導電性高分子のパターニング方法は、電解コンデンサー、電池、タッチパネル、液晶パネル、及び、有機EL素子等に用いる導電性高分子のエッチングに適用することができる。
したがって、高分子有機ELディスプレイに代表されるディスプレイの表示画素部分の導電性高分子及び周辺回路と導電性高分子の接続部分のパターニング、タッチパネルの検出部分の導電性高分子及び周辺回路と導電性高分子の接続部分のパターニング、コンデンサー製造時に不要部分に付着した導電性高分子の除去などといったエッチングの必要な用途において導電性高分子の利用を促進することが期待できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、これらの実施例によってで本発明が限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り、「質量部」を示すものとする。実施例、比較例で用いた界面活性剤は表1および以下に示すものを用いた。界面活性剤AはDIC(株)製の製品名「メガファック F−114」であり、本発明の式(1)のRf1が(C49−)でMがカリウムの場合にあたる構造を有する。界面活性剤Bはジェムコ(株)製の製品名「エフトップ FBSA」であり、本発明の式(1)のRf1が(C49−)でMが水素にあたる構造を有する。界面活性剤Cは三菱マテリアル(株)製の製品名「スルホンイミドEF−N441S−30」であり、本発明の式(2)のRf2が(C49−)でxが2の構造を有する。界面活性剤Dとしては、MATRIX SCIENTIFIC社製のパーフルオロオクタンスルホン酸カリウムを用いた。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)シートの表面に導電性高分子としてクレビオスFE(商品名、ヘレウス(株)製、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)含有)を用いて50nm程度の薄膜を作製したものをテスト基板(D)とした。液体レジストとして、製品名クリアイマージュTRP‐101(東亞合成(株)製)を、スピンコーターを用いてテスト基板(D)に塗布しクリーンオーブンで90℃15分間加熱し、テスト基板(D1)を得た。レジストを製膜した前述のテスト基板(D1)に、型枠式真空露光機を用いてマスターパターンを密着させながら紫外線を照射して露光し、テスト基板(D2)を得た。水酸化カリウムを含む現像液製品名クリアイマージュTRP‐D−101(東亞合成(株)製)を10倍に希釈し、20℃に調節しながら露光済みのテスト基板(D2)を浸漬して現像し、現像済みのテスト基板(D3)を得た。
【0048】
現像済みのテスト基板(D3)を水洗後、5質量部の(NH42Ce(NO36と、HNO3として6質量部となる硝酸と、1質量部の界面活性剤Aを、全体で100質量部となるように脱イオン水に溶かして調製したエッチング液CAN5A1(液温30℃)に浸漬してエッチングを行い、テスト基板(D4)を得た。なお、このエッチングは、時間を変えて最長30分間行ってジャストエッチング時間を求めた。レジスト剥離液製品名クリアイマージュTRP‐S−001(東亞合成(株)製)を25℃に調節しながらエッチング済みのテスト基板(D4)を1分間浸漬しレジストを剥離し、レジスト剥離後のテスト基板(D5)を得た。レジストを剥離したテスト基板(D5)を水洗し、エアーを吹き付けてテスト基板を乾燥した。
【0049】
なお、ここでは、基板上の導電性高分子のエッチング残りが完全に無くなるのに必要最小限のエッチング液への浸漬時間をジャストエッチ時間とした。エッチング残りの有無は、乾燥後のテスト基板を走査型電子顕微鏡で観察し、基板のPETが露出しているかどうかにより確認した。この結果を表2に記載した。なお、レジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も目視では認められなかった。
【0050】
レジストを剥離したテスト基板(D5)を水洗し、乾燥した後で、パターンの境目の色差、すなわちレジストで覆われていた導電性高分子パターンの部分と、エッチングにより導電性高分子が除かれて基板が露出した部分との間の色差ΔE*abを、村上色彩技術研究所製の積分球式光透過率測定器DOT−3C型を用いて測定して表2に載せた。なお、表2におけるCANとは(NH42Ce(NO36の略称である。
【0051】
実施例1におけるエッチング液CAN5A1の界面活性剤Aを、同量の界面活性剤BまたはCに変えたエッチング液CAN5B1またはCAN5C1、を使用してエッチングを行った他は実施例1と同じにして、実施例2〜3のジャストエッチ時間と色差を測定し、結果を表2に記載した。
【0052】
実施例4〜6では、エッチング液CAN5A1、CAN5B1,およびCAN5C1における界面活性剤A,B,Cの配合量1質量部を0.1質量部に変え、水の量を加減して全体を100質量部としたエッチング液、CAN5A0.1、CAN5B0.1、およびCAN5C0.1を使用してエッチングを行った他は、実施例1〜3と同じにしてジャストエッチ時間および色差を測定した。そして、結果を表2に記載した。
【0053】
(実施例7)
実施例1のテスト基板Dの代わりに、PETフィルム上にポリピロール系導電性高分子の薄膜を有する複合シート(アキレス(株)製ST−PETシート(ST−9))を基板Dと同じ大きさに切り、基板Eとした。基板Eについて、実施例1の基板D1〜基板D3に対応する工程を経て現像済みのテスト基板(E3)を得た。E3を水洗後、2.5質量部の(NH42Ce(NO36と、HNO3として3質量部となる硝酸と、1質量部の界面活性剤Aとを、全体で100質量部となるように脱イオン水に溶かして調製したエッチング液CAN2.5A1(液温30℃)に浸漬してエッチングを行い、テスト基板(E4)を得た。なお、このエッチングは、時間を変えて最長30分間行った。レジスト剥離液製品名クリアイマージュTRP‐S−001(東亞合成(株)製)を25℃に調節しながら、エッチング済みのテスト基板(E4)を1分間浸漬しレジストを剥離し、テスト基板(E5)を得た。レジストを剥離したテスト基板(E5)を水洗し、エアーを吹き付けてテスト基板を乾燥した。その他は実施例1と同じにしてジャストエッチ時間および色差を測定し、結果を表2に記載した。
【0054】
(実施例8)
実施例1の現像済みのテスト基板(D3)と同じものを水洗後、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液であるエッチング液HPC2.4C1に浸漬してエッチングを行った(基板F4と呼ぶ)。エッチング液HPC2.4C1は次亜塩素酸ナトリウム水溶液(東亞合成(株)製 商品名アロンクリン)中の有効塩素濃度をあらかじめ測定しておき、有効塩素濃度が2.4%になるように脱イオン水で希釈したものであり、界面活性剤Cをエッチング液全体の1%含む。次亜塩素酸ナトリウムの水溶液の有効塩素濃度および水酸化ナトリウム濃度の実測値は表3に記載した通りである。なお、このエッチングは、時間を変えて最長30分間まで行った。
レジスト剥離液製品名クリアイマージュTRP‐S−001(東亞合成(株)製)を25℃に調節しながら、エッチング済みのテスト基板(F4)を1分間浸漬しレジストを剥離し、レジスト剥離基板(F5)を得た。レジストを剥離したテスト基板(F5)を水洗し、エアーを吹き付けてテスト基板を乾燥した。
【0055】
乾燥後のテスト基板を走査型電子顕微鏡で観察し、ジャストエッチ時間と色差を測定して結果を表3に記載した。なおレジストに覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
【0056】
(実施例9)
実施例7と同じテスト基板(E)を用い、エッチング液CAN2.5A1の代わりにエッチング液HPC1.2C0.5を用いた他は実施例7と同じにしてジャストエッチ時間と色差を測定して結果を表3に記載した。エッチング液HPC1.2C0.5は次亜塩素酸ナトリウム水溶液(東亞合成(株)製 商品名アロンクリン)中の有効塩素濃度をあらかじめ測定しておき、有効塩素濃度が1.2%になるように脱イオン水で希釈したものであり界面活性剤Cをエッチング液全体の0.5%含む。次亜塩素酸ナトリウムの水溶液の有効塩素濃度および水酸化ナトリウム濃度の実測値は表3に記載した通りである。なおレジストに覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
【0057】
(比較例1)
比較例1では、エッチング液CAN5A1の界面活性剤Aをなくしたエッチング液CAN5Nを用いた他は、実施例1と同じにしてジャストエッチ時間と色差を測定し、結果を表2に記載した。エッチング液CAN5Nは、5質量部の(NH42Ce(NO36とHNO3として6質量部となる硝酸とを、全体で100質量部となるように脱イオン水に溶かして調製し、界面活性剤は加えなかったものである。
【0058】
(比較例2)
比較例2では、エッチング液CAN2.5A1の界面活性剤Aをなくしたエッチング液CAN2.5Nを用いた他は、実施例7と同じにしてジャストエッチ時間と色差を測定し、結果を表2に記載した。エッチング液CAN2.5Nは、2.5質量部の(NH42Ce(NO36とHNO3として3質量部となる硝酸とを、全体で100質量部となるように脱イオン水に溶かして調製し、界面活性剤は加えなかったものである。
【0059】
(比較例3)
比較例3では、エッチング液CAN5A1の界面活性剤Aを界面活性剤Dに変更したエッチング液CAN5D1を用いた他は、実施例1と同じにしてジャストエッチ時間と色差を測定し、結果を表2に記載した。
【0060】
(比較例4)
比較例4では、エッチング液CAN2.5A1の界面活性剤Aを界面活性剤Dに変更したエッチング液CAN2.5D1を用いた他は、実施例7と同じにしてジャストエッチ時間と色差を測定し、結果を表3に記載した。
【0061】
(比較例5)
比較例5では、エッチング液HPC2.4C1の界面活性剤Cをなくしたエッチング液HPC2.4Nを用いた他は、実施例8と同じにしてジャストエッチ時間と色差を測定し、結果を表3に記載した。
【0062】
(比較例6)
比較例6では、エッチング液HPC1.2C0.5の界面活性剤Cをなくしたエッチング液HPC1.2Nを用いた他は、実施例9と同じにしてジャストエッチ時間を測定し、結果を表3に記載した。
【0063】
(比較例7)
比較例7では、エッチング液HPC2.4C1の界面活性剤Cを界面活性剤Dに変更したエッチング液HPC2.4D1を用いた他は、実施例8と同じにしてジャストエッチ時間を測定し、結果を表3に記載した。
【0064】
(比較例8)
比較例8では、エッチング液HPC1.2C0.5の界面活性剤Cを界面活性剤Dに変更したエッチング液HPC1.2D1を用いた他は、実施例9と同じにしてジャストエッチ時間を測定し、結果を表3に記載した。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
表2,3から、本発明に係る界面活性剤を用いたエッチング液を用いた実施例は、本発明で特定される界面活性剤を用いない以外は同じ条件の比較例に比べてジャストエッチ時間が短いことから、本発明において特定する界面活性剤によってエッチング速度が向上していることがわかる。また、本発明で特定される界面活性剤を用いない以外は同じ条件の比較例に比べて、対応する実施例の色差の値は小さかった。L*,a*,b*測定の内訳では、実施例に比べて比較例の被エッチング部分のb*値が正の方向にシフトしている傾向があった。このことは、比較例ではエッチング液に接触した基板表面が黄色味を帯びていることを意味する。すなわち、本発明に係る界面活性剤を用いたエッチング液を用いた場合、エッチング部分の変色を小さく抑えることができる点でも優れていることが確かめられた。特に導電性高分子がポリチオフェンであったときは、ΔE*abの絶対値も小さく、実施例ではすべてのΔE*abの値が0.5〜1.5の範囲内であって「わずかに異なる」程度に収まっていた点が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、導電性高分子膜を短時間でエッチングすることができるので、導電性高分子パターンの生産性を向上することができ、液晶表示素子等の生産効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0069】
A:基板のみの概念図
B:基板に導電性高分子膜を取付けた概念図
C:導電性高分子膜の上にレジストを塗布したものの概念図
D:マスクパターンに従ってレジスト膜に部分露光した概念図
E:露光したレジストを除去した後の概念図
F:導電性高分子膜をエッチングした後の概念図
G:レジストを除去して導電性高分子パターンが完成した概念図
1:基板
2:導電性高分子膜
3:レジスト
4:露光したレジスト
図1