【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、%は重量%であり、部は重量部であり、ppmは重量ppmである。また、無機陰イオン交換体の組成は、以下の方法で決定した。
(1)無機陰イオン交換体を硝酸で溶解し、ICP(誘導結合プラズマ式発光分光分析装置)によりビスマス含有量を測定した。(2)無機陰イオン交換体0.5gに0.1N水酸化ナトリウム水溶液50mlを加え、95℃で20時間処理した。処理後の液中の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定し、硝酸イオン含有量を求めた。この2つの測定結果から、無機陰イオン交換体の組成を算出した。
【0056】
粉末X線回折(XRD)測定は、理学電機(株)製RINT2400V型で、CuターゲットX線管球を用い、印加電圧50kV,電流値120mAで発生するCuKαを用いてX線回折図形を得た。そして、作製した無機イオン交換体に、鋭角なピークが顕れたり、ブロードなピークであっても10,000cps以上の回折強度がないことを確かめた。さらにTG−DTA熱分析装置(示差熱−熱重量同時測定装置)を用いて空気中20℃/分で1,000℃まで昇温したときの重量変化を測定した。作製した無機イオン交換体が式〔1〕の組成を持つとき、加熱によって下記式〔5〕の反応が起き、脱水縮合によって計算値で3.7%の重量減少が起きてBi
2O
3に変化するはずである。
2BiO(OH)→Bi
2O
3+H
2O 〔5〕
熱分析の結果は、どれも付着水の蒸発と思われる110℃以下での重量減少が見られたが、実施例では250℃〜350℃にかけて階段状の重量減少があった。そこで、110℃〜1,000℃の間での重量減少が、付着水を除く固体全体の3.7%付近(3.2〜4.2%)であり、加熱前が非晶質で、1,000℃で加熱した後は粉末X栓回折でα−Bi
2O
3結晶であることが確かめられたものは式〔1〕または式〔2〕で規定されるBiO(OH)であると結論付けた。下記の実施例1〜実施例7はすべてこの条件に当てはまった。
【0057】
<実施例1>
5%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して5℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液60gを5%硝酸200gで希釈し、冷却して5℃とした。
用意した水酸化ナトリウム水溶液を1Lビーカーに入れ、5℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液を漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.0であった。
【0058】
得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで沈殿物を洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、フリッチュ社製ロータースピードミルで粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)1を得た。この化合物のICP分析を行ってBi濃度を求め、イオンクロマトグラフィーによって陰イオンを測定した結果から、この化合物はBiO(OH)であり、NO
3含有量は0.6%であった。また、この化合物の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を
図1に示す。ここには結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。
【0059】
<1次粒子径の測定>
得られた非晶質無機陰イオン交換体1を(株)日立製作所製S−4800型走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に選んだ100個の粒子の長径を測定した。その数平均値を平均1次粒子径とした。この結果を表1に示す。
【0060】
<比表面積の測定>
得られた非晶質無機陰イオン交換体1の0.1gをマルバーン社製「AUTOSORB−1」によりBET比表面積を測定した。この結果を表1に示す。
【0061】
<2次粒子径、最大粒子径の測定>
得られた非晶質無機陰イオン交換体1の0.1gを10mlの脱イオン水に分散させ、70Wの超音波で30秒分散させた。そのスラリーを、マルバーン社製レーザー回折式粒度分布計、マスターサイザー2000により粒度分布を測定した。この測定値の体積基準のメジアン径、および最大値をそれぞれ2次粒子径、および最大粒子径とした。この結果を表1に示す。
【0062】
<陰イオン交換容量の測定試験>
1.0gの非晶質無機陰イオン交換体1を100mlのポリエチレン製の瓶に入れ、更に50mlの0.1mol/リットル濃度の塩酸を投入し、密栓して25℃で24時間振とうした。その後、ポアサイズ0.1μmのメンブレンフィルターでこの溶液を濾過し、ろ液中の塩素イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。何も固形分を入れないで同様の操作を行って塩素イオン濃度を測定したものと比較して陰イオン交換容量を求めた。この結果を表1に示す。
【0063】
<陰イオン交換速度の測定>
1.0gの非晶質無機陰イオン交換体1を100mlのポリエチレン製の瓶に入れ、更に50mlの0.1mol/リットル濃度の塩酸を投入し、密栓して25℃で10分振とうした。その後直ぐに、ポアサイズ0.1μmのメンブレンフィルターでこの溶液を濾過し、ろ液中の塩素イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。何も固形分を入れないで同様の操作を行って塩素イオン濃度を測定したものと比較してイオン交換容量を求め、この値を陰イオン交換速度とした。この結果を表1に示す。
【0064】
<上澄の導電率の測定>
0.5gの非晶質無機陰イオン交換体1を100mlのポリプロピレン製の瓶に入れ、更に50mlの脱イオン水を投入し、栓をして、95℃で20時間保持した(破裂防止のため、瓶には小さな穴をあけてある。)。20時間後、冷却し、デカンテーションで上澄を取り出し、0.1μmのメンブレンフィルターでろ過後、ろ液の導電率を測定して上澄の導電率とした。この結果を表1に示す。
【0065】
<実施例2>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して5℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して5℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、5℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液を漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)2を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO
3含有量は0.2%であった。
【0066】
非晶質無機陰イオン交換体2の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を
図2に示す。ここには結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体2の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0067】
<実施例3>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して10℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、10℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液を漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)3を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO
3含有量は0.2%であった。
【0068】
非晶質無機陰イオン交換体3の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体3の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0069】
<実施例4>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して10℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、10℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で約30分かけて全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0070】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)4を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO
3含有量は0.2%であった。非晶質無機陰イオン交換体4の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体4の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0071】
<実施例5>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して17℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、17℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で約30分かけて全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0072】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)5を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO
3含有量は0.2%であった。非晶質無機陰イオン交換体5の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体5の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0073】
<実施例6>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して10℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへシュウ酸2水和物2.35gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、10℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で約30分かけて全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.1であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0074】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)6を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO
3含有量は0.2%であった。非晶質無機陰イオン交換体6の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体6の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0075】
<実施例7>
1Lビーカーに脱イオン水200g、ポリエチレンイミン(分子量600)を40.0g入れ、溶解させ、15℃にした。一方、500mlビーカーに脱イオン水200g、71%−HNO
3を10.0g添加し、さらに日本化学産業(株)製50%−Bi(NO
3)
3・5H
2Oを20.83gゆっくりと添加し、均一に撹拌して液温を15℃にした。また、10%水酸化カリウム水溶液を500g用意し、15℃にした。1Lビーカー中のポリエチレンイミン水溶液を400rpmで撹拌し、そこへ硝酸ビスマス水溶液をローラーポンプを使用して20ml/minで滴下した。同時に10%水酸化カリウム水溶液を1Lビーカーの内溶液のpHが12.5になるように流量調節しながら滴下した。硝酸ビスマス水溶液がなくなったところで10%水酸化カリウム水溶液の滴下も終了した。こうして、得られた1Lビーカーの混合液には沈殿物ができていたので、速やかにろ過し、15℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。こうして得られた沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)7を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO
3含有量は0.7%であった。非晶質無機陰イオン交換体7の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく20°〜40°のところにブロードなピークがあるだけで、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体7の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した
【0076】
<比較例1>
5%水酸化ナトリウム水溶液530gを25℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液60gを5%硝酸200gで希釈し、25℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を1Lビーカーに入れ、25℃で400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、ビスマス水溶液を、漏斗を使用して1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.0であった。得られた沈殿物を25℃で24時間保存後、ろ過し、25℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物1を得た。この化合物の分析を行ったところ、Bi
2O
3であり、NO
3含有量は0.6%であった。
【0077】
比較化合物1の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を
図3に示す。比較化合物1の粉末X線回折図形は、公知のα−Bi
2O
3の回折図形ピークと一致した。実施例1と同様に、比較化合物1の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0078】
<比較例2>
50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈し、25℃に保ち撹拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度でpHが13.0になるまで滴下しところ、pHが1.0付近から沈殿が生成し始めた。得られた沈殿物を直ちにろ過し、25℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物2を得た。この化合物の分析を行ったところ、組成はBi
2O
3であり、NO
3含有量は0.4%であった。
比較化合物2の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を
図4に示す。比較化合物2の粉末X線回折図形は、公知のα−Bi
2O
3の回折図形とピーク位置が一致した。実施例1と同様に、比較化合物2の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0079】
<比較例3>
50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈し、さらに酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して5℃とした。5℃に保ち撹拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度でpHが13.0になるまで滴下したところ、pHが1.0付近から沈殿が生成し始めた。
【0080】
得られた沈殿物を直ちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物3を得た。この化合物の分析を行ったところ、Bi
2O
3混合物であり、NO
3含有量は0.2%であった。比較化合物3の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を
図5に示す。比較化合物3の粉末X線回折図形は、ほぼ非晶質で、10,000cps未満の小さなピークではあるが、α−Bi
2O
3とは異なるピーク位置に回折ピークがあったことから不明相の結晶が生成していた。実施例1と同様に、比較化合物3の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0081】
<比較例4>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを25℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液60gを5%硝酸200gで希釈し、さらに酒石酸2.8gを添加し溶解し、25℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を1Lビーカーに入れ、25℃に保ちながら400rpmで撹拌した。そこへ、ビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で全量添加したところ、pHが1.0付近から沈殿が生成し始めた。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物を直ちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0082】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物4を得た。この化合物の分析を行ったところ、NO
3含有量は0.2%であった。比較化合物4の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を
図6に示す。比較化合物4の粉末X線回折図形は、10,000cps未満の小さなピークではあるが、α−Bi
2O
3の結晶のピーク位置に回折ピークがあった。実施例1と同様に、比較化合物4の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0083】
<比較例5>
50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈し、さらに酒石酸2.8gを添加して溶解し、25℃とした。25℃に保ち撹拌しながら、10%水酸化ナトリウム530gを漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物を直ちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物5を得た。この化合物の分析を行ったところ、NO
3含有量は0.2%であった。比較化合物5の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を
図7に示す。比較化合物5の粉末X線回折図形は、10,000cps未満の小さなピークではあるが、α−Bi
2O
3とは異なるピーク位置に回折ピークがあったことから不明相の結晶が生成していた。実施例1と同様に、比較化合物5の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0084】
<比較例6>
50%硝酸ビスマス水溶液を25℃に保ち攪拌しながら、15%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して30分かけてpHを8まで上げた。このとき、pH1付近から沈殿が生成し始めた。その後さらに30分かけて2%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液のpHを10に調整した。そして、生じた沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物6を得た。この化合物の分析を行ったところ、Bi(OH)
2.65(NO
3)
0.35であった。また、この化合物の粉末X線回折(XRD)測定を行い、この回折図形を
図8に示す。この結果、2θ=28°のピーク強度が1,100cpsであり、2θ=8.5°のピーク強度が380cpsであり、2θ=7.4°のピーク強度が400cpsのものであった。すなわち、α−Bi
2O
3ではない不明相の結晶が生成していた。
実施例1と同様に、比較化合物6の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0085】
<比較例7>
試薬の水酸化ビスマスBi(OH)
3を比較化合物7として用いた。XRD回折図形を
図9に示す。また、この水酸化ビスマスのXRD回折における2θ=28℃のピーク強度は2,800cpsで、2θ=8.5°のピーク強度は900cpsで、2θ=7.4°のピークは検出されなかった。すなわち、α−Bi
2O
3ではない不明相の結晶が生成していた。
実施例1と同様に、比較化合物7の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0086】
<比較例8>
試薬の酸化ビスマスBi
2O
3を比較化合物8として用いた。XRD回折図形を
図10に示す。
実施例1と同様に、比較化合物8の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
比較例1〜8で得られたビスマス化合物はいずれも結晶質であり、最大粒子径が大きいため、微細な構造形状を有する半導体の封止剤等の用途に用いるには適さないものであった。一方実施例の非晶質無機陰イオン交換体はいずれも、NO
3の含有量が同程度である比較例1〜5または比較例8で得られたもののいずれに比べてもイオン交換速度が高いという点で優れていた。比較例6または7で得られたものは、イオン交換速度は高いが、NO
3の含有量が著しく大きく、NO
3イオンの溶出が懸念されるため、やはり半導体の封止剤等用途には適さないものである。したがって、本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、NO
3の含有量が1%以下と小さいにもかかわらずイオン交換速度が高いことが示された。また、本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法によれば、NO
3の含有量は1%以下と小さいにもかかわらずイオン交換速度が高く、最大粒子径が小さい非晶質ビスマス化合物が得られ、このような非晶質ビスマス化合物は微細な構造形状を有する半導体の封止剤用途に用いるのに好ましいものであるということができる。
【0090】
<実施例8>
○アルミニウム配線の腐食試験
<サンプルの作製>
72部のビスフェノールエポキシ樹脂(エポキシ当量190)、28部のアミン系硬化剤(日本化薬(株)製カヤハードAA:分子量252)、100部の溶融シリカ、エポキシ系シランカップリング剤1部、および0.2部の非晶質無機陰イオン交換体1を配合し、これをスパーテルでよく混合し、更に3本ロールで混合した。更にこの混合物を真空乾燥機に入れ、35℃で1時間真空脱気した。
混合した樹脂組成物(電子部品封止用樹脂組成物)を、ガラス板に印刷された2本のアルミ配線(線幅20μm、膜厚0.15μm、長さ1,000mm、線間隔20μm、抵抗値・約9kΩ)上に厚さ1mmで塗布し、120℃で硬化させた(アルミ配線サンプル1)。
<腐食試験>
作製したアルミ配線サンプル1についてプレッシャークッカーテスト(PCT試験)を行った。(使用機器:楠本化成(株)製PLAMOUNT−PM220、130℃±2℃、85%RH(±5%)、印加電圧40V、時間40時間)PCT試験前と後で、陽極のアルミ配線の抵抗値を測定し、抵抗値の変化率を、(PCT試験後の抵抗値/PCT試験前の抵抗値)×100(%)として評価した。また、アルミ配線の腐食度合いを裏面から顕微鏡で観察した。結果を表3に示す。
【0091】
<実施例9>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体2を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル2を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0092】
<実施例10>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体3を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル3を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0093】
<実施例11>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体4を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル4を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0094】
<実施例12>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体5を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル5を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0095】
<実施例13>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体6を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル6を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0096】
<実施例14>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体7を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル7を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0097】
<実施例15>
非晶質無機陰イオン交換体1とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体8とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル8を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0098】
<実施例16>
非晶質無機陰イオン交換体2とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体9とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル9を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0099】
<実施例17>
非晶質無機陰イオン交換体3とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3の質量比で均一に混合して、無機陰イオン交換体10とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル10を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0100】
<実施例18>
非晶質無機陰イオン交換体4とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体11とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル11を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0101】
<実施例19>
無機陰イオン交換体5とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体12とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル12を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0102】
<実施例20>
無機陰イオン交換体6とαリン酸ジルコニウム(粒子径1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体13とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル13を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0103】
<実施例21>
無機陰イオン交換体7とαリン酸ジルコニウム(粒子径1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体14とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル14を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0104】
<比較参考例>
無機陰イオン交換体1を使用しない以外は実施例8と同様に操作して比較参考アルミ配線サンプルを作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0105】
<比較例9>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物1を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル1を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0106】
<比較例10>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物2を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル2を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0107】
<比較例11>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物3を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル3を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0108】
<比較例12>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物4を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル4を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0109】
<比較例13>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物5を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル5を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0110】
<比較例14>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物6を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル6を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0111】
<比較例15>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物7を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル7を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0112】
<比較例16>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物8を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル8を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
表3から明らかなように、本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、電子部品封止用樹脂組成物に用いた場合、アルミ配線の腐食を抑える効果が高い。これにより、幅広い範囲で電子部品の信頼性を高める電子部品封止用樹脂組成物の提供が可能である。