特許第5943223号(P5943223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943223非晶質無機陰イオン交換体、電子部品封止用樹脂組成物および非晶質ビスマス化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943223
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】非晶質無機陰イオン交換体、電子部品封止用樹脂組成物および非晶質ビスマス化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 41/10 20060101AFI20160616BHJP
   C01G 29/00 20060101ALI20160616BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160616BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160616BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160616BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B01J41/10
   C01G29/00
   C08K3/22
   C08L101/00
   H01L23/30 R
【請求項の数】26
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-521396(P2014-521396)
(86)(22)【出願日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2013066305
(87)【国際公開番号】WO2013191075
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-140108(P2012-140108)
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-140109(P2012-140109)
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 知久
(72)【発明者】
【氏名】大野 康晴
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/062723(WO,A1)
【文献】 特開昭63−060112(JP,A)
【文献】 特開平01−259591(JP,A)
【文献】 特開平02−147333(JP,A)
【文献】 特開平02−293325(JP,A)
【文献】 特開平02−294354(JP,A)
【文献】 特開平03−004940(JP,A)
【文献】 特開昭61−132519(JP,A)
【文献】 特開2000−016814(JP,A)
【文献】 特開平07−267643(JP,A)
【文献】 特開平06−001614(JP,A)
【文献】 特開平01−246140(JP,A)
【文献】 特開2010−090002(JP,A)
【文献】 特開2008−208176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/00−49/02
C01G 25/00−99/00
H01L 23/28−23/30
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡で観察される平均1次粒子径が1nm以上500nm以下であり、
NO3含有量が全体の1重量%以下であり、
式〔1〕で表されることを特徴とする
非晶質無機陰イオン交換体。
BiO(OH) 〔1〕
【請求項2】
BET法比表面積が10m2/g以上である、請求項1に記載の非晶質無機陰イオン交換体。
【請求項3】
レーザー回折式粒度分布計で測定した2次粒子径が0.01μm〜20μmの範囲内である、請求項1または2に記載の非晶質無機陰イオン交換体。
【請求項4】
レーザー回折式粒度分布計で測定した2次粒子の最大粒子径が20μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体。
【請求項5】
陰イオン交換容量が2.0meq/g以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体。
【請求項6】
25℃、10分間での陰イオン交換速度が2.5meq/g以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体。
【請求項7】
脱イオン水に懸濁させたものの上澄の導電率が50μS/cm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、電子部品封止用樹脂組成物。
【請求項9】
さらに無機陽イオン交換体を含有する、請求項8に記載の電子部品封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の電子部品封止用樹脂組成物を硬化させてなる、電子部品封止用樹脂。
【請求項11】
請求項8または9に記載の電子部品封止用樹脂組成物により素子を封止してなる、電子部品。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、ワニス。
【請求項13】
さらに無機陽イオン交換体を含有する、請求項12に記載のワニス。
【請求項14】
請求項12または13に記載のワニスを含有する物品。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、接着剤。
【請求項16】
さらに無機陽イオン交換体を含有する、請求項15に記載の接着剤。
【請求項17】
請求項15または16に記載の接着剤により接着された物品。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、ペースト。
【請求項19】
さらに無機陽イオン交換体を含有する、請求項18に記載のペースト。
【請求項20】
請求項18または19に記載のペーストを含有する物品。
【請求項21】
3価Biイオンを含む酸性水溶液を、温度範囲が0℃より高く20℃未満で、pHを12以上にして沈澱を生成させる沈澱生成工程を含み、
得られる非晶質ビスマス化合物が、式〔1〕で表され、かつNO3の含有量が1重量%以下であることを特徴とする
非晶質ビスマス化合物の製造方法。
BiO(OH) 〔1〕
【請求項22】
前記沈澱生成工程に引き続き、ろ液の導電率が300μS/cm以下になるまで沈殿を洗浄する洗浄工程を更に含む、請求項21に記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法。
【請求項23】
前記洗浄工程の後、沈殿の水分量を5重量%以下になるまで乾燥させる乾燥工程を更に含む、請求項22に記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法。
【請求項24】
前記沈澱生成工程が、pH12以上の水溶液の中に、3価Biイオンを含む酸性水溶液を投入して混合する方法で実施される、請求項21〜23のいずれかに記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法。
【請求項25】
前記沈澱生成工程において、前記酸性水溶液中に有機酸またはアミン類を共存させる、請求項21〜24のいずれかに記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法。
【請求項26】
前記有機酸またはアミン類として、ヒドロキシジカルボン酸を用いる、請求項25に記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質無機陰イオン交換体、前記非晶質無機陰イオン交換体を含有する電子部品封止用樹脂組成物、電子部品封止用樹脂、電子部品、ワニス、接着剤、ペーストおよび物品、ならびに、非晶質ビスマス化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、IC、ハイブリッドIC、トランジスタ、ダイオード、およびサイリスタやこれらのハイブリッド部品などの電子部品の多くは、外界からの汚染や水分等の影響から電子回路やパッケージを保護するために、電子部品封止用樹脂組成物を用いて封止されているのが普通である。このような電子部品封止材は、原材料中のイオン性不純物または外部より侵入する水分に起因する不良を抑止すると共に、難燃性、高密着性、耐クラック性および高体積抵抗率等の電気特性等、種々の特性が要求されている。
【0003】
電子部品封止用樹脂組成物には、金属配線や半導体チップとの密着性がよく、耐熱性の高いエポキシ樹脂が多用されており、封止用樹脂組成物は、主成分であるエポキシ化合物の他、エポキシ化合物硬化剤、硬化促進剤、無機充填物、難燃剤、顔料、およびシランカップリング剤等により構成されている場合が多い。
【0004】
エポキシ樹脂は優れた封止用樹脂であるが、わずかながらイオン性不純物を含むことは従来から知られており、イオン性不純物が半導体チップの配線回路に用いられるアルミ等の金属配線を腐食させる可能性があることも知られていた。一方、近年の半導体回路の高集積化と高速化に伴い、回路の動作時に発生するジュール熱による半導体チップの温度上昇が著しくなってきたため、封止材には、酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂、および無機水酸化物等の難燃剤が多量に配合されるようになり、これらの難燃剤成分により、アルミニウム配線等の金属配線の腐食がさらに起きやすくなってきている。この腐食は、主に、封止材として用いられているエポキシ樹脂中に浸入した水分により助長されるものである。
【0005】
上記の腐食を防止するため、エポキシ樹脂に無機陰イオン交換体であるビスマス化合物を配合した半導体封止用エポキシ樹脂組成物が知られている。特許文献1には、無機陰イオン交換体として下記式〔3〕で表されるビスマス化合物が開示されており、電気電子分野関連の固体材料中の不純物イオンの吸着固定に用いることができることが開示されているが、組成中の硝酸イオン(NO36-xについては、3.5≦x≦5.5が必須であることの定義があり、xが5.5より大きくなると化合物中のNO3基が少ないため、中性付近でのイオン交換容量や交換速度が小さくなり、構造が通常の含水酸化ビスマスに近くなる結果、通常の含水酸化ビスマスの欠点である、耐水性の低下が起きやすいことが開示されていた。
Bi66(OH)x(NO36-x・nH2O 〔3〕
【0006】
式〔3〕において、xが5.5より大きくなるときとは、nが0または1とすると、無機陰イオン交換体に含まれる(NO3)が2%よりも少ない場合を意味する。すなわち、ビスマス化合物からなる無機陰イオン交換体において、(NO3)が2%よりも多く含まれるものは、中性付近でのイオン交換容量や交換速度が大きく、耐水性に優れる一方、(NO3)が少ないものは劣る傾向が知られていた。
また、従来のビスマス化合物の製造方法として、特許文献1には、硝酸過剰の硝酸ビスマスに、当量のアルカリを2時間程度かけて添加する方法が開示されており、さらに式〔3〕における添え字xの値を1大きくするためには約1モルのアルカリをさらに添加する方法が開示されており、より好ましい反応温度は20〜50℃の範囲であることが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には下記式〔4〕で表されるビスマス化合物が開示されており、塩化物イオン除去用の無機イオン交換体として優れていることが開示されているが、組成中の硝酸イオン(NO34-2xについては、−0.18≦x≦0.29が必須であることの定義があることから、NO3の質量割合として換算すると、8.4〜10.5%にあたり、硝酸イオンの高い含有量を必須とするものであった。
Bi1013+x(NO34-2x 〔4〕
また、特許文献2には、好ましくは(NO3)のBiに対する割合が4:10より大きいビスマス化合物を原料として熱分解することによって前記式〔4〕で表される結晶性のビスマス化合物が得られることが開示されており、熱分解を630℃まで行うと、結晶化したBi23になることが記載されている。
【0008】
これらのビスマス化合物の製造方法としては、硝酸ビスマスにアルカリ溶液を作用させて加水分解することによって得られることは知られていたが、この製法では平均粒径5〜10μmの柱状結晶しか得られないことも知られていた(特許文献3参照)。
【0009】
特許文献3には、3価ビスマスイオンを含む、pHが1.0以下の水性溶液に等モル以上のモノカルボン酸を添加してビスマス−モノカルボン酸錯体を生成させた後、アルカリを加えて錯体を沈殿させ、焼成して微粒子の結晶質酸化ビスマス(III)(Bi23)を得る方法が開示されている。ここで、モノカルボン酸を加えた場合にはpHが1.8〜5.3の間で錯体が沈殿することが開示されており、モノカルボン酸を加えない場合には、pHが1.0以下の強酸性領域で水酸化ビスマスまたは酸化ビスマス水和物が析出することが開示されており、ビスマス−モノカルボン酸錯体は340℃で球状微粒子の酸化ビスマス結晶となり、水酸化ビスマスまたは酸化ビスマス水和物は550℃に加熱すると粒径が不揃いで棒状の酸化ビスマス結晶となることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−60112号公報
【特許文献2】特開平07−267643号公報
【特許文献3】特開平01−246140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
半導体チップの高集積化や軽薄短小化に伴い、液状封止材と呼ばれる特許文献3に記載されているような半導体封止用樹脂組成物では、フィラーの粒径として平均粒径1μmで最大粒径が10μm以下というような大粒径の粒子が用いられることが知られているが、このような大粒径の無機イオン交換体ではチップ内の狭小部分への浸透が妨げられる恐れがある。
また、特許文献3に記載された酸化ビスマスの用途は、焼結材料の原料であるが、結晶質の酸化ビスマスは無機イオン交換体としてはイオン交換速度も交換容量も非晶質のものに劣ることが知られているから、特許文献3に開示されているのは、ビスマス−モノカルボン酸錯体沈殿と、微粒子の酸化ビスマス結晶(III)(Bi23)を製造する方法であって、無機陰イオン交換体として好ましい非晶質微粒子のビスマス化合物(BiO(OH))およびその製造方法について開示するものではなかった。
また、本発明の製造方法は、微粒子でイオン交換性能が高い非晶質ビスマス化合物を製造できるものであり、pH12という極めて高いpHで沈殿生成反応を行うことは従来知られておらず、この製法で得られるビスマス化合物が、従来にない微粒子でイオン交換性能が高いものであることも知られていなかった。
【0012】
電子部品の軽薄短小化に伴い、従来の無機陰イオン交換体であるビスマス化合物よりも、粒径が小さく、イオン交換容量や交換速度などの性能が優れる新しい無機陰イオン交換体が求められている。そのような無機陰イオン交換体を実現し、さらにそれを用いて、より信頼性の高い電子部品封止用樹脂組成物を得ることが課題である。
また、そのような無機陰イオン交換体として用いることのできる非晶質ビスマス化合物の製造方法を提供することが本発明の他の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、下記<1>、<8>、<10>〜<12>、<14>、<15>、<17>、<18>、<20>及び<21>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<7>、<9>、<13>、<16>、<19>及び<22>〜<26>と共に以下に示す。
<1>電子顕微鏡で観察される平均1次粒子径が1nm以上500nm以下であり、NO3含有量が全体の1重量%以下であり、式〔1〕で表されることを特徴とする非晶質無機陰イオン交換体、
BiO(OH) 〔1〕
<2>BET法比表面積が10m2/g以上である、<1>に記載の非晶質無機陰イオン交換体、
<3>レーザー回折式粒度分布計で測定した体積基準のメジアン径が0.01μm〜20μmの範囲内である、<1>または<2>に記載の非晶質無機陰イオン交換体、
<4>レーザー回折式粒度分布計で測定した最大粒子径が20μm以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体、
<5>陰イオン交換容量が2.0meq/g以上である、<1>〜<4>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体、
<6>25℃、10分間での陰イオン交換速度が2.5meq/g以上である、<1>〜<5>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体、
<7>脱イオン水に懸濁させたものの上澄の導電率が50μS/cm以下である、<1>〜<6>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体、
<8><1>〜<7>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、電子部品封止用樹脂組成物、
<9>さらに無機陽イオン交換体を含有する、<8>に記載の電子部品封止用樹脂組成物、
<10><8>または<9>に記載の電子部品封止用樹脂組成物を硬化させてなる、電子部品封止用樹脂、
<11><8>または<9>に記載の電子部品封止用樹脂組成物により素子を封止してなる、電子部品、
<12><1>〜<7>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、ワニス、
<13>さらに無機陽イオン交換体を含有する、<12>に記載のワニス、
<14><12>または<13>に記載のワニスを含有する物品、
<15><1>〜<7>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、接着剤、
<16>さらに無機陽イオン交換体を含有する、<15>に記載の接着剤、
<17><15>または<16>に記載の接着剤により接着された物品、
<18><1>〜<7>のいずれかに記載の非晶質無機陰イオン交換体を含有する、ペースト、
<19>さらに無機陽イオン交換体を含有する、<18>に記載のペースト、
<20><18>または<19>に記載のペーストを含有する物品、
【0014】
<21>3価Biイオンを含む酸性水溶液を、温度範囲が0℃より高く20℃未満で、pHを12以上にして沈澱を生成させる沈澱生成工程を含み、得られる非晶質ビスマス化合物が、式〔1〕で表され、かつNO3の含有量が1重量%以下であることを特徴とする非晶質ビスマス化合物の製造方法、
BiO(OH) 〔1〕
<22>前記沈澱生成工程に引き続き、ろ液の導電率が300μS/cm以下になるまで沈殿を洗浄する洗浄工程を更に含む、<21>に記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法、
<23>前記洗浄工程の後、沈殿の水分量を5重量%以下になるまで乾燥させる工程を更に含む、<22>に記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法、
<24>前記沈澱生成工程が、pH12以上の水溶液の中に、3価Biイオンを含む酸性水溶液を投入して混合する方法で実施される、<21>〜<23>のいずれかに記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法、
<25>前記沈澱生成工程において、前記酸性水溶液中に有機酸またはアミン類を共存させる、<21>〜<24>のいずれかに記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法、
<26>前記有機酸またはアミン類として、ヒドロキシジカルボン酸を用いる、<25>に記載の非晶質ビスマス化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた陰イオン交換性を有し、金属への腐食性が少ない非晶質無機陰イオン交換体を提供することができた。
また、本発明によれば、優れた陰イオン交換性を有し、金属への腐食性が少ない非晶質ビスマス化合物を製造することができる製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1で作製した非晶質無機陰イオン交換体1のX線回折図形
図2】実施例2で作製した非晶質無機陰イオン交換体2のX線回折図形
図3】比較例1で作製した比較化合物1のX線回折図形
図4】比較例2で作製した比較化合物2のX線回折図形
図5】比較例3で作製した比較化合物3のX線回折図形
図6】比較例4で作製した比較化合物4のX線回折図形
図7】比較例5で作製した比較化合物5のX線回折図形
図8】比較例6で作製した比較化合物6のX線回折図形
図9】比較例7で作製した比較化合物7のX線回折図形
図10】比較例8で作製した比較化合物8のX線回折図形
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、「%」は特に明記しない限り「重量%」を意味し、「部」は「重量部」、「ppm」は「重量ppm」を意味する。また、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。更に、本発明においては、後述する好ましい態様の2以上の組み合わせもまた、好ましい態様である。
【0018】
○非晶質無機陰イオン交換体
本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、粉末X線回折図形において非晶質の構造を示し、なおかつ電子顕微鏡観察による平均1次粒子径が1nm以上500nm以下であり、NO3含有量が1%以下である。
特許文献2に示されているように、従来、本発明のように硝酸イオン濃度の低いビスマス化合物は、陰イオン交換体としてはイオン交換速度が遅く、耐水性に劣るものとして、顧みられていなかったということができる。
本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、微粒子であり、なおかつ陰イオン交換性能が高いので、封止剤組成物に用いれば、狭いピッチの配線を有する電子部品や薄い膜やフィルムの形態での封止に適し、金属配線の腐食防止の効果を発揮することができる他、幅広い範囲で電子部品または電気部品の封止、被覆、および絶縁等の様々な用途に適用することができ、腐食を防いで信頼性を高める効果がある。また、ポリ塩化ビニルなどの樹脂の安定剤、防錆剤などにも使用することができる。
【0019】
本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法は、3価Biイオンを含む酸性水溶液を、温度範囲が0℃より高く20℃未満で、pHを12以上にして沈澱を生成させる沈澱生成工程を含み、得られる非晶質ビスマス化合物が、式〔1〕で表され、かつNO3の含有量が1%以下であることを特徴とする。
BiO(OH) 〔1〕
本発明の製造方法は、粉末X線回折図形において非晶質の構造を示し、なおかつ平均1次粒子径が500nm以下であり、NO3含有量が1%以下であるビスマス化合物が容易に得られる。
本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法によって得られる非晶質ビスマス化合物は、本発明の非晶質無機陰イオン交換体として好適に用いることができる。
また、本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法により好適に製造される。
本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法、及び、当該製造方法によって得られる非晶質ビスマス化合物の好ましい態様はそれぞれ、特に断りのない限り、後述する本発明の非晶質無機陰イオン交換体の製造方法、及び、本発明の非晶質無機陰イオン交換体の好ましい態様と同様である。
また、本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法は、前記沈澱生成工程に引き続き、ろ液の導電率が300μS/cm以下になるまで沈殿を洗浄する洗浄工程を更に含むことが好ましく、前記洗浄工程の後、沈殿の水分量を5重量%以下になるまで乾燥させる工程を更に含むことがより好ましい。
【0020】
○粉末X線回折図形
本発明の無機陰イオン交換体が非晶質であることは、粉末X線回折分析によって確認することができる。粉末X線回折分析は、例えばJIS K0131−1996の規定に従って行うことができる。JISの規定にはX線管球の印加電圧の定めはないが、Cuターゲットを用いたX線管球への印加電圧50kV、電流値120mAで、発生するCuKα線を用いてX線回折測定を行うのが標準的な測定方法である。もし試料に結晶質の物質が含まれていた場合は、X線回折図に鋭角の形状を有する回折ピークが表れるので、得られた粉末X線回折図から、回折ピークの回折角2θを決定し、λ=2dsinθの関係に基づいて結晶の面間隔dを算出し、結晶系の同定をすることができる。なお、CuKα線のλは1.5405オングストロームである。
【0021】
化合物が非晶質の場合、X線回折図形に鋭角のピークが表れないので、結晶質の成分が含まれていないことがわかる。非晶質のものであっても、X線回折図形の回折角2θ=20°〜40°の間にブロードなピークが表れることはよくあるが、これは結晶が存在することを意味するものではない。ブロードなピークの強度は最大ピーク位置で10,000cps(counts per second)未満であり、好ましくは7,000cps以下、更に好ましくは5,000cps以下である。
回折角2θ=20°〜40°の間に鋭角なピークが混在したり、ブロードなピークであっても10,000cps以上であると、結晶質のものが含まれることを意味する。本発明の非晶質無機陰イオン交換体においては、イオン交換性能の観点から、結晶質のものが含まれない方が好ましい。
【0022】
本発明における非晶質無機陰イオン交換体の基本組成は式〔1〕で表される。
BiO(OH) 〔1〕
本発明の非晶質無機陰イオン交換体と併用してよいものとしては、BiO(OH)以外の陰イオン交換能を有する無機化合物であり、硝酸イオンを含まないものが好ましく、具体的にはハイドロタルサイト、含水酸化ビスマス、含水酸化マグネシウム、および含水酸化アルミニウムなどを挙げることができる。このうち好ましいのは、含水酸化ビスマスであり、また、併用するときの好ましい量としては、無機陰イオン交換体全体の50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0023】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体に、含まれるNO3(硝酸イオン、NO3-)の含有量は1%以下であることが必須である。例えばNO3を1%含有する場合、組成としては下記式〔2〕においてx=0.958となるから、本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、式〔2〕においてx=0〜0.958として定義することもできるが、本発明の非晶質無機陰イオン交換体の主成分は式〔1〕で表される化合物であり、NO3は1%以下であれば含まれても良い不純物として定義しても差し支えない。より好ましいNO3の含有量は0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下であり、最も好ましいのは0である。NO3含有量が1%を超えると、電子部品に悪影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
他に含まれても良い不純物としてはH2Oがあり、好ましい含有量は5%以下であり、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。Bi(OH)3も含まれてもよく、好ましい含有量は3%以下であり、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
BiO(OH)x(NO31-x 〔2〕
また、本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、式〔1〕で表される化合物を50重量%以上含有し、70重量%以上含有することが好ましく、95重量%以上含有することがより好ましい。
【0024】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の比表面積は、BET法などの公知の方法で測定することができ、窒素吸着によるBET法で測定する場合の好ましい比表面積は10〜100m2/gであり、より好ましくは10〜50m2/gである。比表面積が10m2/g以上であると、イオン捕捉性能に優れる。一方、比表面積が100m2/g以下であると、二次凝集を抑制でき、不具合の発生を防ぐことができる。
【0025】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体を得るための原料は、従来、水溶液中の反応によって酸化ビスマスやオキシ水酸化ビスマス等のビスマス化合物を得るための原料として用いられてきたものであればいずれでも用いることができる。すなわち、水溶液中で3価ビスマスイオンを生成するものであり、具体的には、塩化酸化ビスマスや、クエン酸ビスマス、オキシ酢酸ビスマス、オキシ過塩素酸ビスマス、オキシサリチル酸ビスマス、三塩化ビスマス、三臭化ビスマス、水酸化ビスマス、オキシ炭酸二ビスマス、オキシ硝酸ビスマス、硫酸ビスマス、硝酸ビスマス等であり、この中で好ましいのは工業的に入手しやすく、水への溶解性のよい硝酸ビスマスである。また、これらの原料の水溶液は水酸化物や酸化物の沈殿生成を防ぐために、鉱酸等を加えて酸性に保つことが知られている。好ましい鉱酸としては、塩酸、硝酸が挙げられ、より好ましくは硝酸である。
【0026】
本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法は、3価Biイオンを含む酸性水溶液を、温度範囲が0℃より高く20℃未満で、pHを12以上にして沈澱を生成させる沈澱生成工程を含む。
本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、3価Biイオンを含む酸性水溶液を、温度範囲0〜20℃の間で、pHを12以上にして沈澱を生成させる工程を含む製造方法で得ることができる。
沈澱を生成させる際のpHとしては12以上が好ましく、より好ましくはpH12〜14であり、さらに好ましくはpH12.3〜13.5であり、特に好ましくはpH12.7〜13.3である。pHが12以上であると、NO3の残存を防ぐことができる。pHは一般的なガラス電極を用いたpHメーターを用いて測定することができる。この沈澱を生成させるときの溶液の温度としては、0℃より高く20℃未満であることが好ましく、より好ましくは0℃より高く15℃未満であり、さらに好ましくは0℃より高く10℃未満である。当該温度が0℃より高いと、氷ができて反応が阻害されることを抑制でき、逆に20℃未満であると、粒子径の適度なものが容易に得られる。
【0027】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体を製造するとき、上記のpH12以上を実現するために用いるものとしては塩基性物質であり、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩、アンモニア、および加熱によりアンモニアが発生する化合物(例えば尿素やヘキサメチレンテトラミン等)等が好ましいものとして例示でき、より好ましくは水酸化アルカリ金属であり、含まれるアルカリ金属としては、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。これらの塩基性物質は、ビスマス原料と速やかに混合するためにあらかじめ水溶液となっていることが好ましく、その場合の濃度は高い方が反応液を希釈しすぎない点で好ましい。好ましい濃度は1%〜飽和濃度であり、さらに好ましくは3%〜20%である。
【0028】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体を製造するとき、pH12以上にする方法としては、塩基性物質の溶液に3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液を添加する方法や、逆に3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液に塩基性物質の溶液を添加する方法などが採用できるが、3価ビスマスイオンは強酸性領域でのみ安定に存在するから、3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液のpHは3以下であることが好ましく、より好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下である。そしてこのような3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液のpHを上記方法のようにいっきに12以上にする代わりに、徐々に上昇させていった場合、pHが7より低い酸性領域から沈殿が生成し始める。pH12以上であると、好ましい非晶質無機陰イオン交換体が容易に得られる。
【0029】
そのため、本発明の非晶質無機陰イオン交換体の製造方法において、3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液をpH12以上にする方法としては、3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液と塩基性物質の溶液とを、混合したときにpHが12以上となるように調整して同時滴下する方法や、pHが12以上の溶液の中に3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液を滴下していく方法を用いることができる。このうち、好ましいのは、pHが12以上の溶液の中に3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液を急速に投入して混合する方法である。投入して混合する時間は好ましくは30分以内、より好ましくは10分以内、さらに好ましくは1分以内である。これらの方法は、いずれも、3価ビスマスイオンを含む酸性水溶液のpHが中性領域を速やかに通り越してpHが12以上に達する方法であり、酸性〜中性付近で生成する可能性のあるBi(OH)3等の生成を防ぐことができ、非晶質で粒径の小さい無機陰イオン交換体を得ることができる。
【0030】
沈殿を生成させるとき、添加剤を用いることができる。添加剤には、有機酸や、アミン類を用いることができる。好ましいのはジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリアミン類であり、具体的には、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられ、エチレンイミンやポリエチレンイミン等の、アミンと同じ反応をするものも含まれる。この中でより好ましいのはジカルボン酸であり、さらに好ましいのはジカルボン酸の中でもヒドロキシ酸であり、特に好ましいのは酒石酸およびリンゴ酸である。これらの添加剤を用いることにより、析出した沈殿の熟成を防ぐことができ、非晶質で粒径の小さいビスマス化合物を得ることができる。添加剤の好ましい添加量は、3価ビスマスの100部に対して1〜100部、より好ましくは3〜50部である。
【0031】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の製造方法において、3価Biイオンを含む酸性水溶液を、温度範囲が0℃より高く20℃未満の間で、pHを12以上にして沈澱を生成させる沈澱生成工程に引き続き、1時間以内に、ろ液の導電率が300μS/cm以下になるまで沈殿を洗浄する洗浄工程が含まれることが好ましい。この理由は、生成した沈殿は溶液中で徐々に熟成が進み、結晶化してしまうからで、溶液の温度が高いほど結晶化は早く進み、また、雰囲気中に沈殿成分の原料となるイオンが溶存していると、沈殿成分の結晶化を促進する効果があるからである。副生物や未反応原料を速やかに洗浄で取り除くことにより結晶化を抑えることができる。洗浄に用いる脱イオン水の温度は0℃より高く40℃以下であることが好ましい。より好ましくは0℃より高く25℃以下であり、更に好ましくは0℃より高く15℃以下である。洗浄は、ろ液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで行うことが好ましく、より好ましくは50μS/cm以下である。また、沈殿生成から、洗浄完了して乾燥に移るまでの時間は好ましくは1時間以内であり、より好ましくは45分以内であり、更に好ましくは30分以内である。
【0032】
洗浄を終えた沈殿は、さらに乾燥して水分を除くことによっても結晶化が進むことを防ぐことができる。乾燥は、室温で行っても乾燥炉内で加熱して行っても良い。即ち、沈殿物から余分な水分が除ければどのような処理を行っても良い。例えば、本発明における乾燥温度としては、−20〜250℃が好ましく、100〜230℃がより好ましい。乾燥方法は特に限定しないが、本発明における非晶質ビスマス化合物は微粒子であり、凝集しやすいので、好ましい乾燥方法はフリーズドライ、スプレードライなどである。乾燥は沈殿全体に含まれる水分量が5%以下になるまで行うのが好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の製造方法は、前記洗浄工程の後、沈殿の水分量を5%以下になるまで乾燥させる乾燥工程を更に含むことが好ましい。
【0033】
上記のようにして得られた本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、目的に応じて粉砕処理を行って、希望する2次粒子径にすることができる。
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の2次粒子径はとくに限定しないが、例えば脱イオン水に超音波分散したものをレーザー回折式粒度分布計で測定し、体積基準のメジアン径を2次粒子径の代表値として採用することができる。好ましい2次粒子径としては0.01〜20μm、より好ましくは0.05〜20μm、さらに好ましくは0.1〜10.0μmである。2次粒子径が0.01μm以上であると再凝集を抑制でき、20μm以下であると、樹脂に添加して薄いフィルムや膜状として用いるときにブツやつまりなどのトラブルの発生を抑制できる。
【0034】
同様にしてレーザー回折式粒度分布計で測定できる非晶質無機陰イオン交換体の最大粒子径も重要であり、好ましい最大粒子径としては20μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。好ましい下限は、0.01μm以上である。最大粒子径が20μm以下であれば、樹脂に添加して薄いフィルムや膜状として用いるときにブツやつまりなどのトラブルの発生を抑制できる。
【0035】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の1次粒子径は、比表面積に影響し、イオン交換速度に影響する重要なパラメータである一方で、溶液からの沈殿反応で大きさが決まり、粉砕によっては値を変えることができない。1次粒子径は、走査型または透過型電子顕微鏡によって粒子を拡大観察し、例えば視野中で100個の粒子を選んで長径の測長を行い、数平均を算出することによって決定することができる。この様にして得られる平均1次粒子径として、1nm以上500nm以下であることが必須であり、好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは30nm以上200nm以下である。平均1次粒子径が500nmを超えると、イオン捕捉性能が十分に発揮され難くなったり、フィルムやシートなどへの加工がしにくくなる。
また、本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法によって得られる非晶質ビスマス化合物の平均1次粒子径は、好ましくは1nm以上500nm以下であり、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは30nm以上200nm以下である。
【0036】
○陰イオン交換容量
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の陰イオン交換容量は、塩酸を用いて測定することができる。具体的な測定例としては、1gの無機陰イオン交換体と50mlの0.1mol/リットル濃度の塩酸とを100mlのポリエチレン製の瓶に入れ、40℃で24時間振盪し、その後、上澄の塩素イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定し、無機陰イオン交換体を入れないで同様の操作を行って塩素イオン濃度を測定したものをブランク値として、その差を無機陰イオン交換体1gあたりの陰イオン交換容量とすることができる。
【0037】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の陰イオン交換容量は、2.0meq/g以上であることが好ましく、2.5meq/g以上がより好ましく、更に好ましくは3.0meq/g以上であり、好ましい上限は10meq/g以下である。この範囲が好ましい理由は、電子部品封止剤用途として、少量の添加量で充分な効果が得られるからである。
【0038】
○陰イオン交換速度
本発明の非晶質無機陰イオン交換体の陰イオン交換速度とは、上記の陰イオン交換容量の測定において、24時間振盪する代わりに、10分間の振盪の間にイオン交換した量を測定することによってイオン交換速度の指標にするものである。イオン交換速度は大きい方が好ましく、2.5meq/g以上が好ましく、より好ましくは3.0meq/g以上、さらに好ましくは3.2meq/g以上であり、好ましい上限は5meq/g以下である。
【0039】
○導電率
本発明の非晶質無機陰イオン交換体を脱イオン水に入れて撹拌し、静置沈殿させた上澄の導電率を測定したものを本発明における導電率と定義する。導電率が大きい値を示すときは、イオン性物質が溶出していることを意味するから導電率は小さい方が好ましい。具体的には、容量100mlのポリプロピレン製の瓶に、0.5gの無機陰イオン交換体と50mlの脱イオン水とを入れ、95℃で20時間保持し、その後、上澄の導電率を導電率計で測定することによって決定することができる。
本発明の非晶質無機陰イオン交換体について好ましい導電率は、50μS/cm以下であり、より好ましくは40μS/cm以下であり、さらに好ましくは30μS/cm以下であり、好ましい下限は0.1μS/cm以上である。
本発明の陰イオン交換体としては、導電率が上記記載の範囲であると電子部品封止等の用途として、少量の添加量で充分な効果が得られるからである。
例えば、本発明の非晶質無機陰イオン交換体を電子部品封止剤に用いる場合は、陰イオン交換容量が2.0meq/g以上であり、なおかつ導電率が50μS/cm以下のものを用いると配線腐食を防止する効果に優れることが期待できる。
【0040】
○電子部品封止用樹脂組成物
本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、本発明の非晶質無機陰イオン交換体を含有する樹脂組成物である。
本発明の非晶質無機陰イオン交換体を配合する電子部品封止用樹脂組成物に用いられる樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であっても、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル、およびポリプロピレン等の熱可塑性樹脂であってもよく、常温硬化のシリコーン系樹脂も用いることができるが、好ましくは熱硬化性樹脂である。本発明の電子部品封止用樹脂組成物に用いる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂が好ましく、特に好ましくはエポキシ樹脂であり、その場合は電子部品封止用エポキシ樹脂組成物と呼ぶ。
【0041】
○電子部品封止用エポキシ樹脂組成物
電子部品封止用エポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂は、電子部品封止用樹脂に用いられているものであれば限定なく用いることができる。例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、硬化可能なものであれば特に種類は問わず、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、成形材料として用いられているものをいずれも使用できる。また、本発明の組成物の耐湿性を高めるためには、エポキシ樹脂として、塩化物イオン含有量が10ppm以下、加水分解性塩素含有量が1,000ppm以下のものを用いることが好ましい。
【0042】
本発明において、電子部品封止用エポキシ樹脂組成物は、硬化剤および硬化促進剤を含有することが好ましい。
本発明に用いる硬化剤はエポキシ樹脂組成物の硬化剤として知られているものをいずれも使用可能であり、好ましい具体例として、酸無水物、アミン系硬化剤およびノボラック系硬化剤等がある。
本発明に用いる硬化促進剤はエポキシ樹脂組成物の硬化促進剤として知られているものをいずれも使用可能であり、好ましい具体例として、アミン系、リン系、およびイミダゾール系の促進剤等がある。
【0043】
本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、必要に応じて成形用樹脂に配合する成分として知られたものを配合することもできる。この成分としては、無機充填物、難燃剤、無機充填物用カップリング剤、着色剤、および離型剤等が例示できる。これらの成分はいずれも成形用エポキシ樹脂に配合する成分として知られたものである。無機充填物の好ましい具体例として、結晶性シリカ粉、石英ガラス粉、熔融シリカ粉、アルミナ粉およびタルク等が挙げられ、中でも結晶性シリカ粉、石英ガラス粉および熔融シリカ粉が安価で好ましい。難燃剤の例としては、酸化アンチモン、ハロゲン化エポキシ樹脂、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、赤燐系化合物、リン酸エステル系化合物等があり、カップリング剤の例としては、シラン系およびチタン系等があり、離型剤の例としては、脂肪族パラフィン、高級脂肪族アルコール等のワックスがある。
【0044】
上記の成分の他に、反応性希釈剤、溶剤やチクソトロピー性付与剤等を含有することもできる。具体的には、反応性希釈剤としてはブチルフェニルグリシジルエーテル、溶剤としてはメチルエチルケトン、チクソトロピー性付与剤としては有機変性ベントナイトが例示できる。
【0045】
電子部品封止用樹脂組成物における本発明の非晶質無機陰イオン交換体の好ましい配合割合は、電子部品封止用樹脂組成物100部当たり0.1〜10部であり、より好ましくは1〜5部である。0.1部以上であると、陰イオン除去性や耐湿信頼性を高める効果に優れ、一方10部以下であると、十分な効果が得られるとともにコスト面についても優れる。
【0046】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体は無機陰イオン交換体であるのに対して、無機陽イオン交換体を併用することにより、本発明の非晶質無機陰イオン交換体の無機陰イオン交換体としての陰イオン捕捉能を増加させ、且つ陽イオン性イオンの捕捉効果も期待することができる。無機陽イオン交換体は、無機物であって、陽イオン交換性を有する物質であり、具体例として、アンチモン酸(五酸化アンチモン水和物)、ニオブ酸(五酸化ニオブ水和物)、マンガン酸化物、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズ、リン酸セリウム、ゼオライト、および粘土鉱物等が挙げられ、アンチモン酸(五酸化アンチモン水和物)、リン酸ジルコニウム、およびリン酸チタンが好ましい。
【0047】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体と無機陽イオン交換体とを併用するときの配合比は、特に限定はないが、重量比で100:0〜20:80が好ましい。本発明の非晶質無機陰イオン交換体と無機陽イオン交換体との配合は、電子部品封止用樹脂組成物を作製する際に別個に配合してもよく、これらを予め均一に混合してから行うこともできる。好ましくは混合物を用いるものである。このようにすることにより、これらの成分を併用する効果をさらに発揮させることができるからである。
【0048】
本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、上記の原料を公知の方法で混合することにより容易に得ることができ、例えば上記各原料を適宜配合し、この配合物を混練機にかけて加熱状態で混練し、半硬化状の樹脂組成物とし、これを室温に冷却した後、公知の手段により粉砕し、必要に応じて打錠することにより、いわゆるモールディングコンパウンドと呼ばれる固体状の組成物として得られるものが例示でき、あるいは液状の封止剤として得ることができる。
【0049】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、電子部品または電気部品の封止、被覆、および絶縁等の様々な用途に使用することが可能である。さらに、塩化ビニル等の樹脂の安定剤、防錆剤等にも本発明の非晶質無機陰イオン交換体は使用可能である。
【0050】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体を配合した電子部品封止用樹脂組成物は、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載したものなどに使用することができる。また、プリント回路板にも本発明の電子部品封止用樹脂組成物は有効に使用できる。本発明の非晶質無機陰イオン交換体を配合した電子部品封止用エポキシ樹脂組成物も同様に用いることができる。
本発明の電子部品封止用樹脂組成物または電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0051】
○配線板への適用について
エポキシ樹脂等の熱硬化性を用いてプリント配線基板とし、これに銅箔等を接着し、これをエッチング加工等して回路を作製して配線板を作製している。しかし近年、回路の高密度化、回路の積層化および絶縁層の薄膜化等により腐食や絶縁不良が問題となっている。配線板を作製するときに本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することによりこのような腐食を防止することができる。また、配線板用の絶縁層にも本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することにより、配線板の腐食等を防止することができる。このようなことから本発明の非晶質無機陰イオン交換体を含有する配線板は、腐食等に起因する不良品発生を抑制することができる。この配線板や配線板用の絶縁層中の樹脂固形分100部に対し、0.1〜5部の本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することが好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0052】
○接着剤への配合について
配線板等の基板に接着剤を用いて電子部品等を実装している。このとき用いる接着剤に本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することにより、金属の腐食等に起因する不良品発生を抑制することができる。この接着剤中の樹脂固形分100部に対し、0.1〜5部の本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することが好ましい。
配線板に電子部品等を接続するまたは配線するときに用いる伝導性接着剤等に本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することにより腐食等に起因する不良を抑制することができる。この伝導性接着剤とは、銀等の伝導性金属を含むものが例示できる。この伝導性接着剤中の樹脂固形分100部に対し0.1〜5部の本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することが好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0053】
○ワニスへの配合について
本発明の非晶質無機陰イオン交換体を含有したワニスを用いて電気製品、プリント配線板、または電子部品等を作製することができる。このワニスとしては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とするものが例示できる。この樹脂固形分100部に対し0.1〜5部の本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することが好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【0054】
○ペーストへの配合について
銀粉等を含有させたペーストに本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することができる。ペーストとは、ハンダ付け等の補助剤として接続金属同士の接着を良くするために用いられるものである。このことにより、ペーストから発生する腐食性物の発生を抑制することができる。ペーストとしては、例えば、ハンダペースト、銀ペースト及び銅ペーストなどの導電性ペーストが例示できる。このペースト中の樹脂固形分100部に対し0.1〜5部の本発明の非晶質無機陰イオン交換体を添加することが好ましい。ここに無機陽イオン交換体を含有させても良い。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、%は重量%であり、部は重量部であり、ppmは重量ppmである。また、無機陰イオン交換体の組成は、以下の方法で決定した。
(1)無機陰イオン交換体を硝酸で溶解し、ICP(誘導結合プラズマ式発光分光分析装置)によりビスマス含有量を測定した。(2)無機陰イオン交換体0.5gに0.1N水酸化ナトリウム水溶液50mlを加え、95℃で20時間処理した。処理後の液中の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定し、硝酸イオン含有量を求めた。この2つの測定結果から、無機陰イオン交換体の組成を算出した。
【0056】
粉末X線回折(XRD)測定は、理学電機(株)製RINT2400V型で、CuターゲットX線管球を用い、印加電圧50kV,電流値120mAで発生するCuKαを用いてX線回折図形を得た。そして、作製した無機イオン交換体に、鋭角なピークが顕れたり、ブロードなピークであっても10,000cps以上の回折強度がないことを確かめた。さらにTG−DTA熱分析装置(示差熱−熱重量同時測定装置)を用いて空気中20℃/分で1,000℃まで昇温したときの重量変化を測定した。作製した無機イオン交換体が式〔1〕の組成を持つとき、加熱によって下記式〔5〕の反応が起き、脱水縮合によって計算値で3.7%の重量減少が起きてBi23に変化するはずである。
2BiO(OH)→Bi23+H2O 〔5〕
熱分析の結果は、どれも付着水の蒸発と思われる110℃以下での重量減少が見られたが、実施例では250℃〜350℃にかけて階段状の重量減少があった。そこで、110℃〜1,000℃の間での重量減少が、付着水を除く固体全体の3.7%付近(3.2〜4.2%)であり、加熱前が非晶質で、1,000℃で加熱した後は粉末X栓回折でα−Bi23結晶であることが確かめられたものは式〔1〕または式〔2〕で規定されるBiO(OH)であると結論付けた。下記の実施例1〜実施例7はすべてこの条件に当てはまった。
【0057】
<実施例1>
5%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して5℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液60gを5%硝酸200gで希釈し、冷却して5℃とした。
用意した水酸化ナトリウム水溶液を1Lビーカーに入れ、5℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液を漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.0であった。
【0058】
得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで沈殿物を洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、フリッチュ社製ロータースピードミルで粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)1を得た。この化合物のICP分析を行ってBi濃度を求め、イオンクロマトグラフィーによって陰イオンを測定した結果から、この化合物はBiO(OH)であり、NO3含有量は0.6%であった。また、この化合物の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図1に示す。ここには結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。
【0059】
<1次粒子径の測定>
得られた非晶質無機陰イオン交換体1を(株)日立製作所製S−4800型走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に選んだ100個の粒子の長径を測定した。その数平均値を平均1次粒子径とした。この結果を表1に示す。
【0060】
<比表面積の測定>
得られた非晶質無機陰イオン交換体1の0.1gをマルバーン社製「AUTOSORB−1」によりBET比表面積を測定した。この結果を表1に示す。
【0061】
<2次粒子径、最大粒子径の測定>
得られた非晶質無機陰イオン交換体1の0.1gを10mlの脱イオン水に分散させ、70Wの超音波で30秒分散させた。そのスラリーを、マルバーン社製レーザー回折式粒度分布計、マスターサイザー2000により粒度分布を測定した。この測定値の体積基準のメジアン径、および最大値をそれぞれ2次粒子径、および最大粒子径とした。この結果を表1に示す。
【0062】
<陰イオン交換容量の測定試験>
1.0gの非晶質無機陰イオン交換体1を100mlのポリエチレン製の瓶に入れ、更に50mlの0.1mol/リットル濃度の塩酸を投入し、密栓して25℃で24時間振とうした。その後、ポアサイズ0.1μmのメンブレンフィルターでこの溶液を濾過し、ろ液中の塩素イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。何も固形分を入れないで同様の操作を行って塩素イオン濃度を測定したものと比較して陰イオン交換容量を求めた。この結果を表1に示す。
【0063】
<陰イオン交換速度の測定>
1.0gの非晶質無機陰イオン交換体1を100mlのポリエチレン製の瓶に入れ、更に50mlの0.1mol/リットル濃度の塩酸を投入し、密栓して25℃で10分振とうした。その後直ぐに、ポアサイズ0.1μmのメンブレンフィルターでこの溶液を濾過し、ろ液中の塩素イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。何も固形分を入れないで同様の操作を行って塩素イオン濃度を測定したものと比較してイオン交換容量を求め、この値を陰イオン交換速度とした。この結果を表1に示す。
【0064】
<上澄の導電率の測定>
0.5gの非晶質無機陰イオン交換体1を100mlのポリプロピレン製の瓶に入れ、更に50mlの脱イオン水を投入し、栓をして、95℃で20時間保持した(破裂防止のため、瓶には小さな穴をあけてある。)。20時間後、冷却し、デカンテーションで上澄を取り出し、0.1μmのメンブレンフィルターでろ過後、ろ液の導電率を測定して上澄の導電率とした。この結果を表1に示す。
【0065】
<実施例2>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して5℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して5℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、5℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液を漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)2を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO3含有量は0.2%であった。
【0066】
非晶質無機陰イオン交換体2の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図2に示す。ここには結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体2の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0067】
<実施例3>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して10℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、10℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液を漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)3を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO3含有量は0.2%であった。
【0068】
非晶質無機陰イオン交換体3の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体3の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0069】
<実施例4>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して10℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、10℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で約30分かけて全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0070】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)4を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO3含有量は0.2%であった。非晶質無機陰イオン交換体4の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体4の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0071】
<実施例5>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して17℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへ酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、17℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で約30分かけて全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0072】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)5を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO3含有量は0.2%であった。非晶質無機陰イオン交換体5の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体5の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0073】
<実施例6>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを冷却して10℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈した。そこへシュウ酸2水和物2.35gを添加して溶解し、冷却して10℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を2Lビーカーに入れ、10℃に冷却しながら400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、冷却したビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で約30分かけて全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.1であった。得られた沈殿物をただちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0074】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)6を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO3含有量は0.2%であった。非晶質無機陰イオン交換体6の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体6の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した。
【0075】
<実施例7>
1Lビーカーに脱イオン水200g、ポリエチレンイミン(分子量600)を40.0g入れ、溶解させ、15℃にした。一方、500mlビーカーに脱イオン水200g、71%−HNO3を10.0g添加し、さらに日本化学産業(株)製50%−Bi(NO33・5H2Oを20.83gゆっくりと添加し、均一に撹拌して液温を15℃にした。また、10%水酸化カリウム水溶液を500g用意し、15℃にした。1Lビーカー中のポリエチレンイミン水溶液を400rpmで撹拌し、そこへ硝酸ビスマス水溶液をローラーポンプを使用して20ml/minで滴下した。同時に10%水酸化カリウム水溶液を1Lビーカーの内溶液のpHが12.5になるように流量調節しながら滴下した。硝酸ビスマス水溶液がなくなったところで10%水酸化カリウム水溶液の滴下も終了した。こうして、得られた1Lビーカーの混合液には沈殿物ができていたので、速やかにろ過し、15℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。こうして得られた沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、非晶質無機陰イオン交換体(非晶質ビスマス化合物)7を得た。この化合物の分析を行ったところ、BiO(OH)であり、NO3含有量は0.7%であった。非晶質無機陰イオン交換体7の粉末X線回折(XRD)測定を行ったが、実施例1,2と同じく20°〜40°のところにブロードなピークがあるだけで、結晶質に基づく鋭いピークは認められず、非晶質であることが確かめられた。実施例1と同様に、非晶質無機陰イオン交換体7の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表1に記載した
【0076】
<比較例1>
5%水酸化ナトリウム水溶液530gを25℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液60gを5%硝酸200gで希釈し、25℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を1Lビーカーに入れ、25℃で400rpmで撹拌した(pH=14)。そこへ、ビスマス水溶液を、漏斗を使用して1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.0であった。得られた沈殿物を25℃で24時間保存後、ろ過し、25℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物1を得た。この化合物の分析を行ったところ、Bi23であり、NO3含有量は0.6%であった。
【0077】
比較化合物1の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図3に示す。比較化合物1の粉末X線回折図形は、公知のα−Bi23の回折図形ピークと一致した。実施例1と同様に、比較化合物1の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0078】
<比較例2>
50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈し、25℃に保ち撹拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度でpHが13.0になるまで滴下しところ、pHが1.0付近から沈殿が生成し始めた。得られた沈殿物を直ちにろ過し、25℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物2を得た。この化合物の分析を行ったところ、組成はBi23であり、NO3含有量は0.4%であった。
比較化合物2の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図4に示す。比較化合物2の粉末X線回折図形は、公知のα−Bi23の回折図形とピーク位置が一致した。実施例1と同様に、比較化合物2の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0079】
<比較例3>
50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈し、さらに酒石酸2.8gを添加して溶解し、冷却して5℃とした。5℃に保ち撹拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度でpHが13.0になるまで滴下したところ、pHが1.0付近から沈殿が生成し始めた。
【0080】
得られた沈殿物を直ちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物3を得た。この化合物の分析を行ったところ、Bi23混合物であり、NO3含有量は0.2%であった。比較化合物3の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図5に示す。比較化合物3の粉末X線回折図形は、ほぼ非晶質で、10,000cps未満の小さなピークではあるが、α−Bi23とは異なるピーク位置に回折ピークがあったことから不明相の結晶が生成していた。実施例1と同様に、比較化合物3の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0081】
<比較例4>
10%水酸化ナトリウム水溶液530gを25℃とした。また、50%硝酸ビスマス水溶液60gを5%硝酸200gで希釈し、さらに酒石酸2.8gを添加し溶解し、25℃とした。用意した水酸化ナトリウム水溶液を1Lビーカーに入れ、25℃に保ちながら400rpmで撹拌した。そこへ、ビスマス水溶液をローラーポンプを使用して、20ml/minの速度で全量添加したところ、pHが1.0付近から沈殿が生成し始めた。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物を直ちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。
【0082】
この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物4を得た。この化合物の分析を行ったところ、NO3含有量は0.2%であった。比較化合物4の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図6に示す。比較化合物4の粉末X線回折図形は、10,000cps未満の小さなピークではあるが、α−Bi23の結晶のピーク位置に回折ピークがあった。実施例1と同様に、比較化合物4の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0083】
<比較例5>
50%硝酸ビスマス水溶液180gを5%硝酸420gで希釈し、さらに酒石酸2.8gを添加して溶解し、25℃とした。25℃に保ち撹拌しながら、10%水酸化ナトリウム530gを漏斗を使用して、1分以内に全量添加した。滴下後のスラリーのpHは13.2であった。得られた沈殿物を直ちにろ過し、10℃の脱イオン水でろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物5を得た。この化合物の分析を行ったところ、NO3含有量は0.2%であった。比較化合物5の粉末X線回折(XRD)測定を行った。この回折図形を図7に示す。比較化合物5の粉末X線回折図形は、10,000cps未満の小さなピークではあるが、α−Bi23とは異なるピーク位置に回折ピークがあったことから不明相の結晶が生成していた。実施例1と同様に、比較化合物5の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0084】
<比較例6>
50%硝酸ビスマス水溶液を25℃に保ち攪拌しながら、15%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して30分かけてpHを8まで上げた。このとき、pH1付近から沈殿が生成し始めた。その後さらに30分かけて2%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液のpHを10に調整した。そして、生じた沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。ろ過と洗浄とは30分で終了した。この沈殿物を120℃で24時間乾燥した。その後、粉砕し、比較化合物6を得た。この化合物の分析を行ったところ、Bi(OH)2.65(NO30.35であった。また、この化合物の粉末X線回折(XRD)測定を行い、この回折図形を図8に示す。この結果、2θ=28°のピーク強度が1,100cpsであり、2θ=8.5°のピーク強度が380cpsであり、2θ=7.4°のピーク強度が400cpsのものであった。すなわち、α−Bi23ではない不明相の結晶が生成していた。
実施例1と同様に、比較化合物6の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0085】
<比較例7>
試薬の水酸化ビスマスBi(OH)3を比較化合物7として用いた。XRD回折図形を図9に示す。また、この水酸化ビスマスのXRD回折における2θ=28℃のピーク強度は2,800cpsで、2θ=8.5°のピーク強度は900cpsで、2θ=7.4°のピークは検出されなかった。すなわち、α−Bi23ではない不明相の結晶が生成していた。
実施例1と同様に、比較化合物7の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0086】
<比較例8>
試薬の酸化ビスマスBi23を比較化合物8として用いた。XRD回折図形を図10に示す。
実施例1と同様に、比較化合物8の1次粒子径、2次粒子径、最大粒子径、比表面積、イオン交換容量、イオン交換速度、上澄の導電率等の測定を行い、これらの結果を表2に記載した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
比較例1〜8で得られたビスマス化合物はいずれも結晶質であり、最大粒子径が大きいため、微細な構造形状を有する半導体の封止剤等の用途に用いるには適さないものであった。一方実施例の非晶質無機陰イオン交換体はいずれも、NO3の含有量が同程度である比較例1〜5または比較例8で得られたもののいずれに比べてもイオン交換速度が高いという点で優れていた。比較例6または7で得られたものは、イオン交換速度は高いが、NO3の含有量が著しく大きく、NO3イオンの溶出が懸念されるため、やはり半導体の封止剤等用途には適さないものである。したがって、本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、NO3の含有量が1%以下と小さいにもかかわらずイオン交換速度が高いことが示された。また、本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法によれば、NO3の含有量は1%以下と小さいにもかかわらずイオン交換速度が高く、最大粒子径が小さい非晶質ビスマス化合物が得られ、このような非晶質ビスマス化合物は微細な構造形状を有する半導体の封止剤用途に用いるのに好ましいものであるということができる。
【0090】
<実施例8>
○アルミニウム配線の腐食試験
<サンプルの作製>
72部のビスフェノールエポキシ樹脂(エポキシ当量190)、28部のアミン系硬化剤(日本化薬(株)製カヤハードAA:分子量252)、100部の溶融シリカ、エポキシ系シランカップリング剤1部、および0.2部の非晶質無機陰イオン交換体1を配合し、これをスパーテルでよく混合し、更に3本ロールで混合した。更にこの混合物を真空乾燥機に入れ、35℃で1時間真空脱気した。
混合した樹脂組成物(電子部品封止用樹脂組成物)を、ガラス板に印刷された2本のアルミ配線(線幅20μm、膜厚0.15μm、長さ1,000mm、線間隔20μm、抵抗値・約9kΩ)上に厚さ1mmで塗布し、120℃で硬化させた(アルミ配線サンプル1)。
<腐食試験>
作製したアルミ配線サンプル1についてプレッシャークッカーテスト(PCT試験)を行った。(使用機器:楠本化成(株)製PLAMOUNT−PM220、130℃±2℃、85%RH(±5%)、印加電圧40V、時間40時間)PCT試験前と後で、陽極のアルミ配線の抵抗値を測定し、抵抗値の変化率を、(PCT試験後の抵抗値/PCT試験前の抵抗値)×100(%)として評価した。また、アルミ配線の腐食度合いを裏面から顕微鏡で観察した。結果を表3に示す。
【0091】
<実施例9>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体2を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル2を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0092】
<実施例10>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体3を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル3を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0093】
<実施例11>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体4を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル4を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0094】
<実施例12>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体5を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル5を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0095】
<実施例13>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体6を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル6を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0096】
<実施例14>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに非晶質無機陰イオン交換体7を用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル7を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0097】
<実施例15>
非晶質無機陰イオン交換体1とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体8とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル8を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0098】
<実施例16>
非晶質無機陰イオン交換体2とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体9とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル9を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0099】
<実施例17>
非晶質無機陰イオン交換体3とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3の質量比で均一に混合して、無機陰イオン交換体10とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル10を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0100】
<実施例18>
非晶質無機陰イオン交換体4とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体11とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル11を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0101】
<実施例19>
無機陰イオン交換体5とαリン酸ジルコニウム(レーザー粒度分布計による体積基準メジアン径が1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体12とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル12を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0102】
<実施例20>
無機陰イオン交換体6とαリン酸ジルコニウム(粒子径1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体13とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル13を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0103】
<実施例21>
無機陰イオン交換体7とαリン酸ジルコニウム(粒子径1μm)を重量比7:3で均一に混合して、無機陰イオン交換体14とした。これを用いた以外は実施例8と同様に操作してアルミ配線サンプル14を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0104】
<比較参考例>
無機陰イオン交換体1を使用しない以外は実施例8と同様に操作して比較参考アルミ配線サンプルを作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0105】
<比較例9>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物1を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル1を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0106】
<比較例10>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物2を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル2を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0107】
<比較例11>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物3を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル3を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0108】
<比較例12>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物4を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル4を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0109】
<比較例13>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物5を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル5を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0110】
<比較例14>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物6を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル6を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0111】
<比較例15>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物7を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル7を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0112】
<比較例16>
非晶質無機陰イオン交換体1の代わりに比較化合物8を用いた以外は実施例8と同様に操作して比較アルミ配線サンプル8を作製し、腐食試験を行った。結果を表3に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
表3から明らかなように、本発明の非晶質無機陰イオン交換体は、電子部品封止用樹脂組成物に用いた場合、アルミ配線の腐食を抑える効果が高い。これにより、幅広い範囲で電子部品の信頼性を高める電子部品封止用樹脂組成物の提供が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の非晶質無機陰イオン交換体及び本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法により得られた非晶質ビスマス化合物は、優れた陰イオン交換性を有する。そして、樹脂に本発明の非晶質無機陰イオン交換体又は本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法により得られた非晶質ビスマス化合物を配合すると樹脂からの陰イオンの溶出を抑える効果がある。このことから、本発明の非晶質無機陰イオン交換体及び本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法により得られた非晶質ビスマス化合物は、幅広い範囲で信頼性の高い電子部品または電気部品の封止、被覆、および絶縁等の様々な用途に使用することができる。また、本発明の非晶質無機陰イオン交換体及び本発明の非晶質ビスマス化合物の製造方法により得られた非晶質ビスマス化合物は、塩化ビニルなどの樹脂の安定剤、防錆剤などにも使用することができる。
【符号の説明】
【0116】
図1〜10の縦軸は、X線回折強度(単位cps)を示す。
図1〜10の横軸は、回折角度2θ(単位°)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10