(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物(A)及び前記重合体(B)の合計に対し、前記化合物(A)を10〜90質量%、前記重合体(B)を90〜10質量%含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法。
前記重合体(B)が、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、液状組成物であり、後述するように、有機溶剤を含む組成物、及び、有機溶剤を含まない組成物のいずれの態様も可能である。
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本願明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを表し、また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを表す。
【0011】
1.エチレン性不飽和基含有化合物(A)
本発明における化合物(A)は、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物である。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基が挙げられる。上記化合物(A)に含まれるエチレン性不飽和基の数は、特に限定されず、1つでも、2つでも、あるいは、3つ以上でもよい。また、2つ以上のエチレン性不飽和基を含む場合、これらのエチレン性不飽和基は、互いに同一であっても異なってもよい。
上記化合物(A)としては、種々の化合物が使用可能である。具体的には、(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート(a1)」という);(メタ)アクリルアミド類;スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド並びにN−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、化合物(A)を1種のみ含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る化合物(A)としては、(メタ)アクリレート(a1)が好ましい。
(メタ)アクリレート(a1)としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリレート」という)及び分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「多官能(メタ)アクリレート」という)が挙げられる。
【0013】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール誘導体のアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;N−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド及びN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のマレイミド(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のポリカプロラクトン変性物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトン変性物、3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(メチルジメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(メチルジエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート並びにオキサゾリジノンエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの単官能(メタ)アクリレートは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−ノナンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド〔エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等〕付加物のポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマーも使用することができ、具体的にはウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、下記の重合体を用いることもできる。
(i)グリシジル基を有するビニル単量体を単独で重合した後、得られたビニル重合体のグリシジル基に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られた、側鎖に(メタ)アクリレート基を有するビニル重合体
(ii)グリシジル基含有ビニル単量体を、共重合可能な他のビニル単量体とともに重合した後、得られたビニル共重合体のグリシジル基に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られた、側鎖に(メタ)アクリレート基を有するビニル重合体
【0015】
多官能(メタ)アクリレートは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリレート(a1)としては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートのいずれか一方を用いてよいし、両方を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、多官能(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート(a1)を用いることが好ましく、その使用量は、(メタ)アクリレート(a1)の全体に対して、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。
【0016】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;並びに(メタ)アクリルロイルモルホリン等が挙げられる。
【0017】
化合物(A)としては、硬化物の耐衝撃性及び耐薬品性に優れる点、並びに、組成物を適切な粘度とすることができる点で、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。本発明では、後述する重合体(B)が可塑剤として作用することにより、化合物(A)として多官能(メタ)アクリレートのみを使用しても、硬化物の柔軟性、及び、基材に対する密着性を良好なものとすることができる。
化合物(A)が多官能(メタ)アクリレートを含む場合、その割合は、化合物(A)の全体に20〜100質量%含まれることが好ましく、より好ましくは50〜100質量%である。
【0018】
2.重合体(B)
本発明における重合体(B)は、ビニル単量体を、150〜350℃の温度で重合する工程及び得られた重合体(以下、「前駆重合体」という)に水素を付加する工程によって得られた重合体である。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合体(B)を1種のみ含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
【0019】
ビニル単量体は、ビニル結合を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート(b1)」という);(メタ)アクリル酸等の不飽和酸;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物等が挙げられる。これらのビニル単量体は、1種のみを用いてよいし、2種以上を用いてもよい。本発明においては、重合工程における共重合性、硬化物の機械的特性、耐候性、耐水性等が優れることから、(メタ)アクリレート(b1)が好ましい。
【0020】
(メタ)アクリレート(b1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸脂肪族アルキルエステル(アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート);2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のヘテロ原子含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;3−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−トリイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−メチルジエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、−メチルジイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、8−トリメトキシシリルオクチル(メタ)アクリレート等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリレート(b1)は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
(メタ)アクリレート(b1)は、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、その使用量の割合の下限は、(メタ)アクリレート(b1)の全体に対して、好ましくは40質量%、より好ましくは60質量%である。尚、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの中でも、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む重合体(B)は、硬化物に柔軟性を付与し、耐水性、耐候性にも優れるために好ましい。ビニル単量体に含まれる、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの割合は、前駆重合体の製造に用いるビニル単量体の全体に対して、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。40質量%未満では、水素付加後の重合体(B)のガラス転移温度が高くなり、硬化物の柔軟性が不足する場合がある。
【0022】
前駆重合体は、溶液重合、塊状重合、分散重合等の重合方法により得ることができるが、150〜350℃の範囲の高い温度で重合する必要がある。重合温度を150℃以上とすることにより、重合開始剤の使用量を少量化し、かつ連鎖移動剤を用いなくても、前駆重合体の分子量の制御が容易となる。そして、水素付加後の重合体(B)を含む硬化物とした場合の耐候性が優れたものとなる。また、重合温度を350℃以下とすることにより、単量体から重合体への転化率を上げることができる。更に、分解生成物に起因する着色の問題を回避することができる。好ましい重合温度は170〜300℃の範囲であり、180〜250℃の範囲がより好ましい。反応プロセスとしては、バッチ式、セミバッチ式及び連続重合のいずれでもよいが、組成の均一性の点で、連続重合が好ましい。
【0023】
高温連続重合法としては、特開昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報及び特開昭60−215007号公報等に開示された公知の方法に従えば良い。
例えば、加圧可能な反応器を、加圧下で所定温度に設定した後、ビニル単量体又はビニル単量体と必要に応じて併用される重合溶媒等とを含む単量体混合物からなる原料を、一定の供給速度で反応器へ供給しつつ重合を行い、原料の供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法が挙げられる。原料は、必要に応じて、重合開始剤を含有することもできる。
反応器内の圧力は、反応温度と使用する原料の沸点に依存するもので、重合反応に影響を及ぼさないが、反応温度(150〜350℃)を維持できる圧力であればよい。
反応器内の原料の滞留時間は、1〜60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が充分に反応しない恐れがあり、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2〜40分である。
【0024】
反応器から抜き出された前駆重合体を含有する反応液は、そのまま、次の水素付加工程において用いることができる。また、この反応液を、蒸留等に供することにより、未反応のビニル単量体、低分子量オリゴマー、重合溶媒等の揮発性成分を留去した後、単離された前駆重合体を用いて、水素付加工程に供することができる。尚、反応液から留去させた揮発性成分を、原料を収容するタンク又は反応器に戻し、重合反応に再利用することもできる。
このように、未反応単量体及び重合溶媒をリサイクルする方法は経済性の面から好ましい方法である。リサイクルする場合には、反応器内で望ましい構成のビニル単量体と望ましい重合溶媒の量を維持するように、新たに供給するビニル単量体等の混合比を決定する必要がある。
【0025】
前駆重合体の製造に、重合溶媒を用いる場合は、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等の有機溶剤を用いることができる。これらの重合溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。尚、(メタ)アクリル酸エステル共重合体をよく溶解しない有機溶剤を用いた場合には、反応器の内壁にスケールが成長しやすく、洗浄工程等で生産上の問題がおきやすい。
重合溶媒の使用量は、ビニル単量体の全量100質量部に対して、80質量部以下とすることが好ましい。80質量部以下とすることにより、短時間で高い転化率が得られる。より好ましくは1〜50質量部である。また、重合溶媒を用いる場合には、オルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
【0026】
前駆重合体を得るために用いる重合開始剤は、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば、特に限定されない。具体的には、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−tert−ヘキシルパーオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4′−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤の使用量は、ビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.001〜3質量部である。
【0027】
上記の方法により得られた前駆重合体に水素付加を行うことにより、重合体(B)が得られる。水素付加は、従来公知の方法により行われる。
例えば、前駆重合体を含む反応液に均一系触媒又は不均一系触媒を添加した後、系内を水素雰囲気にし、圧力を常圧〜10MPa、温度を20〜180℃程度に加熱し、2〜20時間ほど反応させることにより、水素付加を行うことができる。均一系触媒としては、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム錯体;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等のルテニウム錯体;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金等の白金錯体;カルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等のイリジウム錯体等が挙げられる。また、不均一系触媒としては、例えば、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金等の遷移金属を、カーボン、シリカ、アルミナ、繊維、有機ゲル状物等に担持させた固体触媒が挙げられる。不均一系触媒を用いる場合、水素付加工程の後、ろ過等により容易に触媒を除去することができ、高価な触媒が再利用できるといった点で好ましい。また、末端二重結合の濃度を十分に低下させた重合体(B)を高品質で得ることができる。尚、触媒の使用量としては、均一系触媒の場合、前駆重合体に対して、好ましくは10〜1,000ppm程度である。不均一系触媒の場合、前駆重合体に対して、好ましくは1,000〜10,000ppm程度である。
【0028】
水素付加工程により、前駆重合体中の二重結合濃度を、好ましくは0.30meq/g以下、更に好ましくは0.20meq/g以下まで減少させる。0.20meq/g以下の重合体(B)を用いると、組成物の硬化性をより向上させることができる。二重結合濃度は、より好ましくは0.10meq/g以下、更に好ましくは0.05meq/g以下である。重合体(B)中の二重結合濃度は、
1H−NMRの測定により、NMRスペクトルにおける、5〜6.5ppmに認められる二重結合のシグナルと、3〜4.5ppmに認められるエステルに隣接するメチレン、メチル基のシグナルの積分値の比から算出することができる。
【0029】
本発明における重合体(B)の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは、1,500〜20,000である。Mwが1,000以上であることにより硬化物において、長期に渡ってブリードせずに安定に系中の存在し、50,000以下であることにより、組成物とした時に適正な粘度となり、優れた作業性が確保される。尚、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定された、ポリスチレン換算の値である。
また、本発明における重合体(B)のガラス転移温度は、好ましくは−80℃〜20℃、より好ましくは、−80℃〜−10℃である。ガラス転移温度が20℃以下になることにより、柔軟性が付与される。尚、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)において検出される吸熱ピークの中間点により決定される。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、化合物(A)及び重合体(B)の質量比は、特に制限されない。重合体(B)の含有量は、化合物(A)及び重合体(B)の合計に対し、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜70質量%である。10質量%以上になることにより柔軟性が付与され、90質量%以下であることにより、硬化物の強度が発現される。
【0031】
3.光重合開始剤(C)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線、可視光等の活性エネルギー線により硬化させる目的で、光重合開始剤(C)含有する。
光重合開始剤(C)としては、芳香族ケトン化合物、ベンゾフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、チオキサントン系化合物、アクリドン系化合物、オキシムエステル類、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体等が挙げられる。光重合開始剤は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
芳香族ケトン化合物としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等が挙げられる。
アクリドン系化合物としては、アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン等が挙げられる。
オキシムエステル類としては、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O―ベンゾイルオキシム)]及びエタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O―アセチルオキシム)等が挙げられる。
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。
アクリジン誘導体としては、9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等が挙げられる。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、光重合開始剤(C)の含有割合は、硬化性の観点から、化合物(A)及び重合体(B)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜8質量部である。光重合開始剤(C)の含有割合を0.01質量部以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができる。また、10質量部以下とすることで、硬化物の耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
【0034】
4.他の成分
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記した成分(A)、(B)及び(C)を必須とするものであるが、必要に応じて、有機溶剤、湿気硬化用触媒、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、表面調整剤、密着性付与剤、レオロジーコントロール剤、ワックス、無機フィラー、有機フィラー等の他の成分を含有してもよい。以下、他の成分について説明する。
【0035】
4−1.有機溶剤
本発明の組成物が有機溶剤を含む場合、塗工性等を改善することができる。有機溶剤としては、例えば、前駆重合体の製造に用いることができる、上記した重合溶媒を使用できる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有割合は、目的、用途等に応じて、適宜、設定すれば良いが、組成物中における含有割合は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
【0036】
4−2.湿気硬化用触媒
本発明の組成物は、湿気硬化型組成物として使用することもできる。この場合、湿気硬化用触媒を使用することが好ましい。
湿気硬化用触媒としては、従来の湿気硬化型組成物で使用されているものを用いることができる。また、湿気によりアルコキシシリル基含有共重合体や、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートのアルコキシシリル基を縮合させることができるものであれば、種々の化合物が使用可能である。
【0037】
具体的な湿気硬化用触媒としては、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジアセテート及びジブチル錫ジアセトアセトナート等の錫系触媒、テトラブチルチタネート及びテトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物;オクチル酸鉛;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物;これらのアミン系化合物のカルボン酸等との塩;カルボン酸;カルボン酸金属塩;有機スルホン酸;酸性リン酸エステル;3B族又は4A族金属を含有する有機金属化合物;その他酸性触媒並びに塩基性触媒等のシラノール縮合触媒が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が湿気硬化用触媒を含有する場合、湿気硬化用触媒の含有割合は、目的、用途等や、アルキシシリル基を有する共重合体及びアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレート等の、化合物(A)又は重合体(B)の種類及びその割合等に応じて、適宜、設定すれば良いが、組成物中における含有割合は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0038】
4−3.重合禁止剤
重合禁止剤は、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤が好ましい。また、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等を添加することもできる。
【0039】
4−4.紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアジン化合物;2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4′−メチルベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等が挙げられる。
【0040】
4−5.光安定剤
光安定剤としては、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6−)ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0041】
5.活性エネルギー線硬化性組成物
上記のように、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、化合物(A)と、特定の製造方法により得られた重合体(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、必要に応じて、他の成分を含有する。組成物の粘度は、特に限定されないが、E型粘度計を用いて測定される25℃における粘度は、200〜20,000mPa・sであることが好ましい。粘度がこの範囲にあることにより、塗工作業性に優れ、平滑な塗工が容易になる。
【0042】
6.活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法
本発明の組成物は、前述の原料成分を、常温又は加熱下で、従来公知の装置等を用いて混合することにより製造することができる。加熱を行いながら組成物を製造する場合、各原料成分の揮発性等を考慮して温度を設定する。
【0043】
7.硬化物の形成方法
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて、硬化物を形成する場合には、組成物の構成等により、その方法が、適宜、選択される。例えば、組成物が有機溶剤を含有しない場合、塗膜等を形成した後、直接、活性エネルギー線を照射することにより、硬化膜(硬化物)を形成することができる。しかしながら、組成物が有機溶剤を含有する場合には、塗膜等を形成した後、乾燥等を行って、有機溶剤の含有量を低減させた状態で、活性エネルギー線を照射することが好ましい。尚、硬化物を被着体に密着させつつ形成する場合、被着体の構成材料は、特に限定されず、有機材料及び無機材料のいずれでもよいし、両方でもよい。
【0044】
活性エネルギー線の具体例としては、紫外線、電子線、可視光等が挙げられるが、紫外線が特に好ましい。紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV無電極ランプ、LED等が挙げられる。照射エネルギーは、組成物の構成、活性エネルギー線の種類等に応じて、適宜、設定される。紫外線を照射する場合の光量は、好ましくは500〜5,000mJ/cm
2である。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性に優れるため、従来の組成物に比べて、活性エネルギー線の照射量を低減することができ、低コストで硬化物を形成することができる。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明を、例を挙げて具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、質量部を意味する。
【0046】
1.重合体(B)の製造
以下の製造例1〜10により、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造及び評価に用いるビニル重合体(B)を製造した(表1参照)。
【0047】
製造例1(ビニル重合体B1の製造)
オイルジャケットを備えた容量1,000mLの加圧式攪拌槽型反応器のジャケット温度を248℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、単量体として、n−ブチルアクリレート(100部)、重合溶媒として、イソプロピルアルコール(4.2部)及びメチルエチルケトン(12.2部)、重合開始剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイド(1.0部)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御することにより、反応器の内温を239〜241℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した。この製造では、結果として、1.2kgの単量体混合物を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後、反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分の分離及び除去を行い、重合体B1を得た。重合体B1のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算の数平均分子量(以下、「Mn」という)が1,600、重量平均分子量(Mw)が3,000であり、E型粘度計による25℃における粘度が、1,000mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−77℃であり、
1H−NMR測定による二重結合濃度は0.36meq/gであった。
【0048】
製造例2(ビニル重合体B2の製造)
オイルジャケットを備えた容量1,000mLの加圧式攪拌槽型反応器のジャケット温度を245℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、単量体として、2−エチルヘキシルアクリレート(75部)及びメチルメタクリレート(25部)、重合溶媒として、メチルエチルケトン(4.6部)、重合開始剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイド(0.77部)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御することにより、反応器の内温を240〜242℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した。この製造では、結果として、1.2kgの単量体混合物を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後、反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分の分離及び除去を行い、重合体B2を得た。重合体B2のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが1,500、Mwが2,400であり、E型粘度計による25℃における粘度が、3,600mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−64℃であり、
1H−NMR測定による二重結合濃度は0.63meq/gであった。
【0049】
製造例3(ビニル重合体B3の製造)
オイルジャケットを備えた容量1,000mLの加圧式攪拌槽型反応器のジャケット温度を181℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、単量体として、n−ブチルアクリレート(45部)、2−エチルヘキシルアクリレート(45部)及びメチルメタクリレート(10部)、重合溶媒として、イソプロピルアルコール(9部)及びメチルエチルケトン(9部)、重合開始剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイド(0.25部)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御することにより、反応器の内温を183〜185℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した。この製造では、結果として、1.2kgの単量体混合物を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後、反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分の分離及び除去を行い、重合体B3を得た。重合体B3のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが2,500、Mwが7,500であり、E型粘度計による25℃における粘度が、20,000mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−57℃であり、
1H−NMR測定による二重結合濃度は0.34meq/gであった。
【0050】
製造例4(ビニル重合体B4の製造)
オイルジャケットを備えた容量1,000mLの加圧式攪拌槽型反応器のジャケット温度を244℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、単量体として、2−エチルヘキシルアクリレート(77部)、メチルメタクリレート(20部)及び3−メタクリロキシトリメトキシシラン(3部)、重合溶媒として、メチルエチルケトン(13.1部)及びオルト酢酸メチル(3.8部)、重合開始剤としてジ−tert−ブチルパーオキサイド(1.0部)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御することにより、反応器の内温を231〜233℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した。この製造では、結果として、1.2kgの単量体混合物を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後、反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分の分離及び除去を行い、重合体B4を得た。重合体B4のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが1,400、Mwが2,400であり、E型粘度計による25℃における粘度が、2,200mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−65℃であり、
1H−NMR測定による二重結合濃度は0.56meq/gであった。
【0051】
製造例5(ビニル重合体B1への水素付加)
オイルジャケットを備えた容量1,000mLの加圧式撹拌槽型反応器に、製造例1で得た重合体B1(700g)及び乾燥した5%パラジウムカーボン(3.5g)を入れ、反応器内の雰囲気を真空にした。その後、内温を130℃に加温し、水素で約1.5MPaまで加圧した。この状態で、8時間撹拌し、水素付加反応を行った。圧力をパージした後、ろ過助剤として、昭和化学工業社製珪藻土「ラジオライト#100」を用いて、ろ過し、重合体B5を得た。重合体B5のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが1,600、Mwが3,000であり、E型粘度計による25℃における粘度が、1,000mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−77℃であり、
1H−NMRによる二重結合濃度は、検出下限(0.01meq/g)以下であった。
【0052】
製造例6(ビニル重合体B2への水素付加)
重合体B1に代えて、製造例2で得た重合体B2を用い、内温を60℃、水素の圧力を約0.3MPaにして、4時間撹拌し、水素付加反応を行った以外は、製造例5と同じ操作を行い、重合体B6を得た。重合体B6のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが1,500、Mwが2,400であり、E型粘度計による25℃における粘度が、3,600mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−64℃であり、
1H−NMRによる二重結合濃度は、0.22meq/gであった。
【0053】
製造例7(ビニル重合体B2への水素付加)
重合体B1に代えて、製造例2で得た重合体B2を用い、内温を100℃、水素の圧力を約0.3MPaにして、4時間撹拌し、水素付加反応を行った以外は、製造例5と同じ操作を行い、重合体B7を得た。重合体B7のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが1,500、Mwが2,400であり、E型粘度計による25℃における粘度が、3,600mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−64℃であり、
1H−NMRによる二重結合濃度は、0.13meq/gであった。
【0054】
製造例8(ビニル重合体B2への水素付加)
重合体B1に代えて、製造例2で得た重合体B2を用い、内温を130℃、水素の圧力を約1.5MPaにして、8時間撹拌し、水素付加反応を行った以外は、製造例5と同じ操作を行い、重合体B8を得た。重合体B8のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが1,500、Mwが2,400であり、E型粘度計による25℃における粘度が、3,600mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−64℃であり、
1H−NMRによる二重結合濃度は、検出下限以下であった。
【0055】
製造例9(ビニル重合体B3への水素付加)
重合体B1に代えて、製造例3で得た重合体B3を用い、内温を130℃、水素の圧力を約1.5MPaにして、8時間撹拌し、水素付加反応を行った以外は、製造例5と同じ操作を行い、重合体B9を得た。重合体B9のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが2,500、Mwが7,500であり、E型粘度計による25℃における粘度が、20,000mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−57℃であり、
1H−NMRによる二重結合濃度は、検出下限以下であった。
【0056】
製造例10(ビニル重合体B4への水素付加)
重合体B1に代えて、製造例4で得た重合体B4を用い、内温を130℃、水素の圧力を約1.5MPaにして、8時間撹拌し、水素付加反応を行った以外は、製造例5と同じ操作を行い、重合体B10を得た。重合体B10のGPC測定を行った結果、ポリスチレン換算のMnが1,400、Mwが2,400であり、E型粘度計による25℃における粘度が、2,200mPa・sであった。また、DSCによるガラス転移温度は−65℃であり、
1H−NMRによる二重結合濃度は、検出下限以下であった。
【0057】
【表1】
【0058】
2.活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造及び評価
実施例1〜11、比較例1〜10
製造例1〜10で得た重合体(B)と、以下に示す、化合物(A)及び光開始剤(C)とを用いて、表2及び表3に示す割合で配合し、均一に混合することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
・化合物(A)
(a1)M−211B:ビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックス M−211B」)
(a2)M−402:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックス M−402」)
(a3)FA−513AS:ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成社製、商品名「ファンクリル FA−513AS」)
・光重合開始剤(C)
(c1)Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名「Irgacure184」)
【0059】
その後、得られた各組成物について、以下に記載する評価方法に供した。その結果を表2及び表3に併記した。
(1)硬化性
アプリケーターを用いて、組成物をガラス板に膜厚が50μmになるように塗布した。その後、アイグラフィックス社製紫外線照射装置「ECS−401GX」を用いて、以下の条件により塗膜に紫外線を照射した。紫外線を1回照射するごとに指触を行って塗膜表面を観察し、指に液状物が付着しなくなった照射回数(パス回数)により、硬化性を評価した。
<紫外線照射条件>
光源:80W/cm集光型高圧水銀灯
ランプ高さ(光源と塗膜との距離):10cm
コンベアスピードは、1パス当たりの照射量が100mJ/cm
2になるように調節。
【0060】
(2)硬化物の破断強度
アプリケーターを用いて、組成物を、幅300mm×長さ300mm×厚さ50μmの東レ社製表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー50−T60」(以下、「ルミラー」という)に、膜厚が50μmになるように塗布した。
次いで、上記紫外線照射装置を用いて、積算光量が3000mJ/cm
2となるように塗膜に紫外線を照射した。その後、ルミラーから硬化物を剥がし、15mm×150mm×50μmのサンプルを切り出した。このサンプルを、島津製作所社製引張試験機「オートグラフAGS−J」を用いて、引張速度50mm/分の条件で引張試験を行い、破断強度を求めた。
【0061】
(3)硬化物の柔軟性
バーコーターを用いて、組成物を東洋紡社製易接着PETフィルム「コスモシャインA4300」(厚さ100μm)に、膜厚が10μmになるように塗布した。
次いで、上記紫外線照射装置を用いて、積算光量が3000mJ/cm
2となるように塗膜に紫外線を照射した。その後、100mm×50mmの大きさに切り出し、JIS K5600−5−1に従って、耐屈曲性試験を実施した。屈曲させたときに、割れ又は剥がれが生じたときの円筒の直径により柔軟性を評価した。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
実施例1〜11の組成物は、硬化に必要なパス回数が少なく、良好な硬化性を示した。実施例2以外の実施例は、二重結合濃度が0.20meq/g以下の重合体(B)を用いた組成物の例であるが、パス回数4回以下の低照射条件でも硬化可能であった。
また、その硬化物は、十分な強度を有しながら柔軟性にも優れるものであることが確認できた。
【0065】
これに対し、水素を付加する処理を行っておらず、二重結合濃度の高い重合体を含有する組成物を用いた比較例1〜9は、硬化に必要なパス回数が多く、硬化性に劣るものであった。また、比較例10は、重合体(B)を用いない組成物の例であり、得られる硬化物の柔軟性が不十分なものであることが確認できた。