特許第5943234号(P5943234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943234超音波診断装置および超音波診断装置制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943234
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20160621BHJP
   A61B 8/06 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   A61B8/14
   A61B8/06
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-142156(P2012-142156)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-4149(P2014-4149A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 友和
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 勝
(72)【発明者】
【氏名】福田 省吾
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−350791(JP,A)
【文献】 特開2003−265463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、
前記超音波振動子を介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部からの出力に基づいて3次元Bモード画像のデータを発生するBモード画像発生部と、
前記3次元Bモード画像上の複数の特定血管領域を、複数の特定血管同士の相対的な位置関係が異なる複数のモデル画像を用いて特定する特定部と、
前記3次元Bモード画像と前記特定された複数の特定血管領域とに基づいて、前記特定血管領域を表す特定血管画像を発生する血管画像発生部と、
前記血管画像発生部で発生された画像を表示する表示部と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記血管画像発生部は、前記特定された複数の特定血管領域に基づいて、前記特定血管同士の相対的な位置関係を表す模式画像を発生すること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記血管画像発生部は、前記被検体の特定臓器における複数の内腔を含む断面に垂直な方向を用いて、前記特定血管画像の投影画像とレンダリング画像とのうち少なくとも一方を発生すること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記血管画像発生部で発生された前記投影画像と前記レンダリング画像とにおいて、前記複数の特定血管領域の交差の有無を判定する判定部をさらに具備し、
前記表示部は、前記交差の有無をさらに表示すること、
を特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記3次元Bモード画像と前記複数のモデル画像とを用いたマッチング処理により、前記特定血管領域を特定すること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記特定部は、
前記特定された特定血管領域の輪郭を特定し、
前記特定された輪郭を用いて、前記複数の特定血管にそれぞれ対応する複数の芯線を特定し、
前記表示部は、前記特定された芯線を表示すること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記血管画像発生部は、
前記特定された芯線各々に対して視点を設定し、
前記設定された視点と前記3次元Bモード画像のデータとを用いてレンダリング処理を実行することにより、前記複数の特定血管にそれぞれ対応する複数のレンダリング画像を発生し、
前記表示部は、前記レンダリングと画像各々を表示すること、
を特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、
前記超音波振動子を介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部からの出力に基づいて3次元ドプラ画像のデータを発生するドプラ画像発生部と、
前記3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を、複数の特定血管同士の相対的な血流方向の位置関係が異なる複数の血流方向パターンを用いて特定する特定部と、
前記3次元ドプラ画像と前記特定された特定血管領域と基づいて、前記特定血管領域を表す特定血管画像を発生する血管画像発生部と、
前記特定血管画像を表示する表示部と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
前記特定部は、前記特定血管における血流の平均速度に関する閾値をさらに用いて、前記特定血管領域を特定すること、
を特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記特定部は、前記特定血管領域を特定するために、前記特定血管における血流量に関する閾値をさらに用いること、
を特徴とする請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記特定部は、前記血流方向と前記血流量に関する閾値とに基づいて、前記特定された複数の特定血管領域にそれぞれ対応する血管名をさらに特定し、
前記表示部は、前記血管名を、前記特定血管画像とともに表示すること、
を特徴とする請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、
3次元Bモード画像のデータを発生させるBモード画像発生機能と、
前記3次元Bモード画像上の複数の特定血管領域を、複数の特定血管同士の相対的な位置関係が異なる複数のモデル画像を用いて特定させる特定機能と、
前記3次元Bモード画像と前記特定された複数の特定血管領域とに基づいて、前記特定血管領域を表す特定血管画像を発生させる血管画像発生機能と、
前記血管画像発生部で発生された画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体内部の臓器を画像化する超音波診断装置および超音波診断装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の特徴の一つは非侵襲性を有することである。このため、一般的な超音波診断装置の適用領域として産科が知られている。産科における超音波診断装置の使用により、胎児の様子を確実にとらえることができる。近年、胎児の様子を立体的に可視化することができる超音波診断装置は、胎児の表情および仕草などを妊婦に説明するため(胎児診断)に用いられている。従って、3次元超音波は一般的なものになりつつある。また、超音波診断装置は、被検体内の様々な器官の形状および血流などの情報を取得するものとして運用さている。以上のことから、超音波診断装置は、胎児の発育状態を取得するための唯一ともいえる装置である。
【0003】
胎児及び小児(特に幼年期)の心疾患は、大人の心疾患と異なり、かつ心疾患の種類も非常多い。一般的に、重篤な心疾患を有する胎児及び小児は、成年に達するまでに死亡することが多い。しかしながら、成年までの死亡率が高い心疾患を母体内において確実に見つけ出すことで、早期治療により予後を大きく改善することができる。超音波診断装置は安全に胎児の心臓形状と血流とを取得できる貴重な装置である。このため、産科医および小児科医にとって、超音波診断装置における断層像およびカラードプラは、例えば、胎児の循環器における検査として、重要な診断装置として定着している。
【0004】
しかしながら、従来の超音波診断装置においては、胎児の心疾患の検出に対する問題を有する。例えば、心疾患の検出は、操作者の手技によるところが大きい。具体的には、胎児は母体内で自由に体を移動することができるため、実際に超音波検査を行わなければ、母体内での胎児の位置及び体位を確定することは難しい問題がある。このため、胎児の心臓を画像上で表示するためには難しい問題がある。
【0005】
加えて、胎児の心臓に関する重大な心疾患として、心臓形状の異常を示す心房中隔欠損および心室中隔欠損などの他に、一見して心臓形状が正常にきわめて近い大血管転位症がある。大血管転位症は、胎児の循環器系にきわめて深刻なダメージを与えるにもかかわらず、医師が見落としやすい症例となっている。
【0006】
大血管転位症を見つけるために、操作者は、まず、胎児の心臓を被走査領域に含まれるように、超音波プローブなどを操作する。次いで、操作者は、被走査領域に含まれる胎児の心臓に対して、カラードプラを実行する。操作者は、カラードプラにより表示される血管のうち、大血管(大静脈、肺動脈、大動脈)を特定する。続いて、操作者は、心基部から胎児の短軸に沿って頭部方向に超音波プローブを操作することにより発生された複数の断層像に基づいて、特定した大血管の立体的な位置関係(以下、血管走向と呼ぶ)を把握する。操作者は、把握した血管走向により、大血管の立体的な交差(以下、血管交差と呼ぶ)の有無を判断している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超音波診断装置の操作者にとって、ある程度の経験がなければ、血管交差の有無を判断するための断層像を得ることすら難しい問題がある。加えて、操作者は、表示された複数の断層像に基づいて、血管交差の有無を判断するため、結果として、操作者の主観に頼らざるを得ない問題がある。さらに、操作者の主観に頼ることは、大血管転位症の見落としの危険性が高い状態となっている問題がある。大血管転位症の見落としは、胎児の予後に大きな影響を与えてしまう。
【0008】
目的は、胎児または小児の心臓における大血管転位症に関して、大血管の血管走向を容易にかつ明確に表示する超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る超音波診断装置は、複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、前記超音波振動子を介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部からの出力に基づいて3次元Bモード画像のデータを発生するBモード画像発生部と、前記3次元Bモード画像上の複数の特定血管領域を、複数の特定血管同士の相対的な位置関係が異なる複数のモデル画像を用いて特定する特定部と、前記3次元Bモード画像と前記特定された複数の特定血管領域とに基づいて、前記特定血管領域を表す特定血管画像を発生する血管画像発生部と、前記血管画像発生部で発生された画像を表示する表示部と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、第1の実施形態に係り、4chビュー投影モデル画像の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係り、正常な複数の特定血管に関して、心基部から被検体の頭部方向に沿った複数の特定血管画像の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係り、大血管転位症における複数の特定血管に関して、心基部から被検体の頭部方向に沿った複数の特定血管画像の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係り、正常な複数の特定血管において、被検体の心臓の複数の内腔を含む断面に垂直な方向から特定血管画像を投影した投影画像の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係り、大血管転位症において、被検体の心臓の複数の内腔を含む断面に垂直な方向から特定血管画像を投影した投影画像の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係り、3次元Bモード画像上の特定血管領域を特定し、表示する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係り、被検体の心臓の複数の内腔を含む断面に垂直な方向から見た正常方向パターンの一例を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係り、被検体の心臓の複数の内腔を含む断面に垂直な方向から見た異常方向パターンの一例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に係り、投影ドプラ画像を、3次元ドプラ画像と、投影方向(4chビュー方向)とともに示した投影概念図である。
図12図12は、第2の実施形態に係り、3次元Bドプラ画像上の特定血管領域を特定し、表示する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示す構成図である。同図に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ11、装置本体13、表示部15、装置本体13に接続され操作者からの各種指示・命令・情報を装置本体13に取り込むための入力部17を有する。加えて本超音波診断装置1には、心電計、心音計、脈波計、呼吸センサに代表される図示していない生体信号計測部およびネットワークが、後述するインターフェース部34を介して接続されてもよい。
【0013】
超音波プローブ11は、複数の圧電振動子と、整合層と、複数の圧電振動子の背面側に設けられるバッキング材とを有する。複数の圧電振動子は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子である。複数の圧電振動子は並列され、超音波プローブ11の先端に装備される。なお、一つの圧電振動子が一チャンネルを構成するものとして説明する。圧電振動子は、後述する送受信部20から供給される駆動信号に応答して超音波を発生する。
【0014】
超音波プローブ11を介して被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波(以下、送信超音波と呼ぶ)は、被検体内の生体組織における音響インピーダンスの不連続面で反射される。圧電振動子は、反射された超音波を受信し、エコー信号を発生する。エコー信号の振幅は、超音波の反射に関する不連続面を境界とする音響インピーダンスの差に依存する。また、送信超音波が移動している血流、および心臓壁等の表面で反射された場合のエコー信号の周波数は、ドプラ効果により、移動体(血流および心臓壁の表面)の超音波送信方向の速度成分に依存して偏移する。
【0015】
以下、超音波プローブ11は、1次元アレイを複数の振動子の配列方向と直交する方向に揺動させて3次元走査を実行するメカニカル4次元プローブとして説明する。なお、超音波プローブ11は、メカニカル4次元プローブに限定されず、2次元アレイプローブであってもよい。
【0016】
整合層は、被検体Pに対する超音波の送受信を効率よくするために、複数の圧電振動子の超音波放射面側に設けられる。バッキング材は、圧電振動子の後方への超音波の伝搬を防止する。
【0017】
装置本体13は、送受信部20と、Bモード画像発生部22と、特定部24と、血管画像発生部26と、判定部28と、画像合成部30と、記憶部32と、インターフェース部34と、制御プロセッサ(中央演算処理装置:Central Processing Unit:以下CPUと呼ぶ)36とを有する。
【0018】
送受信部20は、後述するCPU23による制御のもとで、超音波プローブ11における複数の圧電振動子各々に駆動信号を供給する。送受信部20は、各圧電振動子によって発生された受信エコー信号に基づいて、受信信号を発生する。
【0019】
具体的には、送受信20は、図示していないパルス発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路と、プリアンプと、アナログディジタル(Analog to digital(以下、A/Dと呼ぶ))変換器と、受信遅延回路と、加算器とを有する。
【0020】
パルス発生器は、所定のレート周波数frHz(周期:1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。発生されたレートパルスは、チャンネル数に分配され、送信遅延回路に送られる。
【0021】
送信遅延回路は、複数のチャンネルごとに、送信超音波をビーム状に収束し、かつ送信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、送信遅延時間と呼ぶ)を、各レートパルスに与える。送信超音波の送信方向または送信遅延時間(以下、送信遅延パターンと呼ぶ)は、後述する記憶部32に記憶される。記憶部32に記憶された送信遅延パターンは、後述するCPU36により超音波の送信時に参照される。
【0022】
パルサ回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11の圧電振動子ごとに電圧パルス(駆動信号)を印加する。これにより、超音波ビームが被検体に送信される。
【0023】
プリアンプは、超音波プローブ11を介して取り込まれた被検体Pからのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された受信エコー信号をディジタル信号に変換する。
【0024】
受信遅延回路は、ディジタル信号に変換された受信エコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、受信遅延時間と呼ぶ)を与える。エコー信号の受信方向または受信遅延時間(以下、受信遅延パターンと呼ぶ)は、後述する記憶部32に記憶される。記憶部32に記憶された受信遅延パターンは、後述するCPU36により超音波の受信時に参照される。
【0025】
加算器は、遅延時間が与えられた複数のエコー信号を加算する。この加算により、送受信部20は、受信指向性に応じた方向からの反射成分を強調した受信信号(RF(radiofrequency)信号ともいう)を発生する。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される。この総合的な指向性により、超音波ビーム(いわゆる「超音波走査線」)が決まる。
【0026】
Bモード画像発生部22は、図示していない包絡線検波器、対数変換器などを有する。包絡線検波器は、送受信部20から出力された受信信号に対して包絡線検波を実行する。包絡線検波器は、包絡線検波された信号を、後述する対数変換器に出力する。対数変換器は、包絡線検波された信号に対して対数変換して弱い信号を相対的に強調する。Bモード画像発生部22は、対数変換器により強調された信号に基づいて、各走査線および各超音波送受信における深さごとの信号値(Bモードデータ)を発生する。
【0027】
Bモード画像発生部22は、被走査領域におけるアジマス(Azimuth)方向、エレベーション(Elevation)方向、深さ方向(以下レンジ(Range)方向と呼ぶ)にそれぞれ対応付けて配列された複数の信号値からなる3次元Bモード画像のデータを発生する。レンジ方向とは、走査線上の深さ方向である。アジマス方向とは例えば、1次元超音波振動子の配列方向に沿った電子走査方向である。エレベーション方向とは、1次元超音波振動子の機械的揺動方向である。なお、3次元Bモード画像のデータは、複数の画素値または複数の輝度値などを、走査線に沿って、アジマス方向、エレベーション方向、レンジ方向にそれぞれ対応付けて配列させたデータであってもよい。Bモード画像発生部22は、3次元Bモード画像のデータに基づいて、3次元Bモード画像を発生し、発生した3次元Bモード画像を後述する特定部24に出力する。
【0028】
Bモード画像発生部22は、図示していないディジタルスキャンコンバータ(Digital Scan Converter:以下DSCと呼ぶ)と、3次元画像処理デバイスとを有する。Bモード画像発生部22は、3次元Bモード画像のデータを3次元画像処理して2次元の表示画像のデータを発生する。具体的には、3次元画像処理デバイスは、3次元画像処理として、例えば、レイキャスティング法によるボリュームレンダリング(volume rendering)、サーフェスレンダリング(surface rendering)、最大値投影(maximum intensity projection:以下、MIPと呼ぶ)、断面変換処理(multi−plannar reconstruction)などを実行する。DSCは、これらの処理を用いて発生された2次元の表示画像のデータに対して、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、投影画像としてのBモード画像を発生する。
【0029】
なお、Bモード画像発生部22は、STIC(SpatioTemporal Image Correlation)技術などを利用することにより心時相を調整し、被検体である胎児の心臓の拡張期および収縮期に限定した3次元Bモード画像のデータを発生してもよい。具体的には、まず、後述するインターフェース部34を介して、被検体の心拍数および心周期を取得する。Bモード画像発生部22は、心周期に合わせて、同時相ごとに3次元Bモード画像のデータを発生する。
【0030】
特定部24は、複数の特定血管同士の相対的な位置関係が異なる複数のモデル画像を用いて、3次元Bモード画像上の特定血管の領域(以下、特定血管領域と呼ぶ)を特定する。特定血管とは、例えば、被検体の心臓につながる複数の大血管である。複数の大血管とは、例えば、大静脈、大動脈、肺動脈である。なお、複数の大血管は、大動脈と大静脈であってもよい。相対的な位置関係とは、複数の大血管に関する3次元的な相互の位置関係である。複数のモデル画像は、例えば、複数種類のモデル画像セットからなる。以下、説明を簡単にするため、モデル画像セットの種類は、2種類であり、第1、第2のモデル画像セットとする。第1のモデル画像セットにおける複数の第1モデル画像各々は、正常な心臓形状および正常な複数の大血管を示す標準的な3次元Bモード画像(以下、正常モデル画像と呼ぶ)であって、被検体である胎児の成長段階に対応する。第2のモデル画像セットにおける複数の第2モデル画像各々は、例えば、大血管転位症を示す標準的な3次元Bモード画像(以下、異常モデル画像と呼ぶ)であって、被検体である胎児の成長段階に対応する。なお、3種類以上のモデル画像セットが存在する場合、モデル画像セット各々は、他の心疾患などに対応する。以下、特定部24による3次元Bモード画像上の特定血管領域の特定について詳述する。
【0031】
特定部24は、3次元Bモード画像と複数の正常モデル画像とに対してマッチング処理を実行する。特定部24は、3次元Bモード画像と複数の異常モデル画像とに対してマッチング処理を実行する。マッチング処理とは、例えば、相関マッチングである。
【0032】
具体的には、特定部24は、3次元Bモード画像における複数の画素値の第1平均値と、3次元Bモード画像における複数の画素値とに基づいて、第1分散値とを計算する。特定部24は、後述する記憶部32に記憶されている複数のモデル画像を、記憶部32から読み出す。特定部24は、正常モデル画像における複数の画素値の第2平均値と、正常モデル画像における複数の画素値とに基づいて、第2分散値とを計算する。特定部24は、3次元Bモード画像の複数の画素値と、正常モデル画像の複数の画素値と、第1、第2分散値とに基づいて、第1共分散値を計算する。特定部24は、第1、第2分散値と第1共分散値とに基づいて、3次元Bモード画像と正常モデル画像との相関係数を計算する。この相関係数は、複数の正常モデル画像各々について計算される。すなわち、特定部24は、複数の正常モデル画像にそれぞれ対応する3次元Bモード画像との複数の相関係数を計算する。
【0033】
次いで、特定部24は、異常モデル画像における複数の画素値の第3平均値と、異常モデル画像における複数の画素値とに基づいて、第3分散値とを計算する。特定部24は、3次元Bモード画像の複数の画素値と、異常モデル画像の複数の画素値と、第1、第3分散値とに基づいて、第2共分散値を計算する。特定部24は、第1、第2分散値と第2共分散値とに基づいて、3次元Bモード画像と異常モデル画像との相関係数を計算する。この相関係数は、複数の異常モデル画像各々について計算される。すなわち、特定部24は、複数の異常モデル画像にそれぞれ対応する3次元Bモード画像との複数の相関係数を計算する。
【0034】
特定部24は、計算された複数の相関係数のうち、最も大きい相関係数に関するモデル画像(正常モデル画像または異常モデル画像)に基づいて、3次元Bモード画像上の複数の特定血管領域を特定する。特定部24は、特定した複数の特定血管領域を、後述する血管画像発生部26へ出力する。
【0035】
なお、記憶部32に記憶された複数のモデル画像が被検体の特定臓器(例えば心臓)における複数の内腔(右心房、右心室、左心房、左心室:以下、4ch(chamber)と呼ぶ)を含む断面(以下、4chビューと呼ぶ)に垂直な方向(以下、4chビュー方向と呼ぶ)からの投影画像(以下、4chビュー投影モデル画像と呼ぶ)である場合、特定部24は、以下の処理を実行してもよい。特定部24は、4chビュー方向から3次元Bモード画像を投影した投影Bモード画像を発生する。特定部24は、投影Bモード画像と複数の4chビュー投影モデル画像とを用いて、複数の相関係数を計算する。特定部24は、計算された複数の相関係数のうち、最も大きい相関係数に関するモデル画像(正常モデル画像または異常モデル画像)に基づいて、3次元Bモード画像上の複数の特定血管領域を特定する。図2は、4chビュー投影モデル画像の一例を示す図である。
【0036】
また、記憶部32に記憶された複数のモデル画像が特定血管の芯線からなる画像である場合、特定部24は、以下の処理を実行してもよい。特定部24は、3次元Bモード画像に対して2値化処理に続いて細線化処理を実行する。特定部24は、細線化処理された3次元Bモード画像と複数のモデル画像とに基づいて、複数の相関係数を計算する。特定部24は、計算された複数の相関係数のうち、最も大きい相関係数に関するモデル画像(正常モデル画像または異常モデル画像)に基づいて、3次元Bモード画像上の複数の特定血管の芯線を特定する。
【0037】
血管画像発生部26は、3次元Bモード画像と特定された複数の特定血管領域とに基づいて、特定血管領域を表す特定血管画像を発生する。特定血管画像とは、例えば、特定血管に関する3次元Bモード画像(以下、3次元特定血管画像と呼ぶ)である。具体的には、血管画像発生部26は、3次元Bモード画像から特定された血管領域を抽出することにより、3次元特定血管画像を発生する。なお、血管画像発生部26は、4chビュー方向を用いて、3次元特定血管画像から4chビューにおける投影画像(以下、血管投影画像と呼ぶ)を発生してもよい。血管画像発生部26は、発生した画像を後述する表示部15に出力する。
【0038】
なお、血管画像発生部26は、3次元Bモード画像のうち、特定された血管領域を除く非特定血管領域の画素値をゼロにしてもよい。また、血管画像発生部26は、3次元Bモード画像と特定された複数の特定血管領域とに基づいて、4chビュー方向からレンダリング処理を実行する事により、特定血管に関するレンダリング画像(以下、血管レンダリング画像と呼ぶ)を発生してもよい。血管画像発生部26は、非特定血管領域の透過度を100にして、レンダリング処理を実行してもよい。
【0039】
また、血管画像発生部26は、3次元特定血管画像に基づいて、被検体の心尖部と心基部とを結んだ直線(以下長軸と呼ぶ)に垂直な複数の断面像(以下、短軸像と呼ぶ)を、心基部から頭部に向かって所定の間隔で発生してもよい。
【0040】
判定部28は、血管画像発生部26において発生された特定血管画像において、複数の特定血管同士の相対的な位置関係を判定する。具体的には、判定部28は、特定血管画像における複数の特定血管の相対的な位置関係が略平行関係かねじれの位置関係かを判定する。なお、複数の特定血管の相対的な位置関係は、特定部24において最大の相関係数に対応するモデル画像に基づいて、判定してもよい。また、判定部28は、投影血管画像および血管レンダリング画像において、複数の特定血管が交差しているか否かを判定してもよい。判定部28は、判定結果を後述する表示部15に出力する。判定結果とは、例えば、交差の有無に関するメッセージなどである。
【0041】
図示していないシネメモリは、例えばフリーズする直前の複数のフレームに対応するBモード画像を保存するメモリである。このシネメモリに記憶されている画像を連続表示(シネ表示)することで、Bモード動画像を表示部15に表示させることも可能である。例えば、シネメモリは、血管画像発生部26において発生された複数の短軸像をシネ表示するために記憶する。
【0042】
画像合成部30は、Bモード画像、血管投影画像、血管レンダリング画像、短軸像などに、種々のパラメータの文字情報、目盛、判定部28による判定結果等を合成する。画像合成部30は、合成された画像を表示部15に出力する。
【0043】
記憶部32は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターンおよび複数の送信遅延パターン、本超音波診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群、Bモード画像発生部22で発生されたBモード画像、血管画像発生部26で発生された血管投影画像、血管レンダリング画像、短軸像、複数の特定血管同士の相対的な位置関係が異なる複数のモデル画像、特定部24で実行されるマッチング処理に関するプログラム、4chビュー方向を特定するためのプログラム、各種レンダリング処理に関するプログラムなどを記憶する。
【0044】
インターフェース部34は、入力部17、ネットワーク、図示していない外部記憶装置および生体信号計測部に関するインターフェースである。装置本体13によって得られた超音波画像等のデータおよび解析結果等は、インターフェース部34とネットワークとを介して他の装置に転送可能である。なお、インターフェース部34は、ネットワークを介して、図示していない他の医用画像診断装置で取得された被検体に関する医用画像を、ダウンロードすることも可能である。
【0045】
CPU36は、操作者により入力部17を介して入力されたフレームレート、被走査深度、送信開始・終了に基づいて、記憶部32に記憶された送信遅延パターン、受信遅延パターンと装置制御プログラムとを読み出し、これらに従って装置本体13および超音波プローブ11を制御する。CPU36は、マッチング処理に関するプログラム、4chビュー方向を特定するためのプログラム、各種レンダリング処理に関するプログラムなどを記憶部32から読み出し、特定部24および血管画像発生部26を制御する。
【0046】
表示部15は、画像合成部30の出力に基づいて、Bモード画像、血管投影画像、血管レンダリング画像、短軸像などを表示する。なお、表示部15は、表示された画像に対して、ブライトネス、コントラスト、ダイナミックレンジ、γ補正などの調整および、カラーマップの割り当てを実行してもよい。また、表示部15は、特定血管画像のうち、複数の特定血管の相対的な位置関係(略平行関係またはねじれの位置関係)に関する部分領域を表示することも可能である。
【0047】
図3は、正常な複数の特定血管に関して、例えば、心基部から頭部に向かって所定の間隔で表示した短軸像の表示の一例を示す図である。図3のAは、心基部近傍の短軸像を示している。図3のBは、長軸に沿って図3のAから頭部方向に向かって所定の間隔離れた短軸像を示している。図3のCは、図3のBから頭部方向に向かって所定の間隔離れた短軸像を示している。図3のA、B、C、各々におけるaは、大静脈を示している。図3のA、B、C、各々におけるbは、肺動脈を示している。図3のA、B、C、各々におけるcは、大動脈を示している。
【0048】
図4は、大血管転位症における複数の特定血管に関して、心基部から頭部に向かって所定の間隔で表示した短軸像の表示の一例を示す図である。図4のAは、心基部近傍の短軸像を示している。図4のBは、長軸に沿って、図4のAから頭部方向に向かって所定の間隔離れた短軸像を示している。図4のCは、図4のBから頭部方向に向かって所定の間隔離れた特定血管の断層像を示している。図4のA、B、C、各々におけるaは、大静脈を示している。図4のA、B、C、各々におけるbは、肺動脈を示している。図4のA、B、C、各々におけるcは、大動脈を示している。
【0049】
なお、図3図4各々は、シネメモリに記憶された画像であってもよい。この時、図3図4各々の画像は、シネ表示における表示画像に対応する。
【0050】
図5は、第1の実施形態に係り、正常な複数の特定血管において、4chビュー方向から3次元特定血管画像を投影した投影血管画像(または血管レンダリング画像)の一例を示す図である。図5におけるaは、大静脈を示している。図5におけるbは、肺動脈を示している。図5におけるcは、大動脈を示している。
【0051】
図6は、大血管転位症において、4chビュー方向から3次元特定血管画像を投影した投影画像(または血管レンダリング画像)の一例を示す図である。図6におけるaは、大静脈を示している。図6におけるbは、肺動脈を示している。図6におけるcは、大動脈を示している。
【0052】
入力部17は、インターフェース部34に接続され操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を装置本体13に取り込む。入力部17は、図示していないトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等の入力デバイスを有する。入力デバイスは、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を後述するCPU23に出力する。なお、入力デバイスは、表示画面を覆うように設けられたタッチコマンドスクリーンでもよい。この場合、入力部17は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標をCPU36に出力する。また、操作者が入力部17の終了ボタンまたはフリーズボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、装置本体13は一時停止状態となる。
【0053】
なお、入力部17は、操作者により決定された4chビュー方向を、特定部24および血管画像発生部26に出力してもよい。
【0054】
(特定血管画像発生機能)
特定血管画像発生機能とは、複数の特定血管同士の相対的な位置関係が異なる複数のモデル画像と3次元Bモード画像とに基づいて、3次元Bモード画像上の複数の特定血管領域を特定し、3次元Bモード画像と特定された特定血管領域とに基づいて、特定血管画像を発生する機能である。以下、特定血管画像発生機能に関する処理(以下、特定血管画像発生処理と呼ぶ)を説明する。
【0055】
図7は、特定血管画像発生処理の手順を示すフローチャートである。
被検体Pに超音波が送信され、3次元Bモード画像のデータが発生される(ステップSa1)。複数のモデル画像が、記憶部32から読み出される(ステップSa2)。3次元Bモード画像と複数のモデル画像とを用いて、マッチング処理が実行される(ステップSa3)。マッチング処理により、複数の特定血管領域が特定される(ステップSa4)。3次元Bモード画像と特定された特定血管領域とに基づいて、3次元特定血管画像が発生される。3次元特定血管画像と、予め操作者により決定された4chビュー方向とに基づいて、投影画像またはレンダリング画像(特定血管画像)が発生される(ステップSa5)。なお、4chビュー方向は、3次元Bモード画像のデータと所定のプログラムとに従って決定されてもよい。発生された特定血管画像が表示部15に表示される(ステップSa6)。
【0056】
(第1の変形例)
第1の実施形態との相違は、特定部24により特定された特定血管領域を、模式画像として表示することにある。
【0057】
血管画像発生部26は、特定された特定血管領域に基づいて、複数の特定血管同士の相対的な位置関係を表す模式画像を発生する。なお、血管画像発生部26は、記憶部32から、特定された特定血管領域に対応する模式画像を読み出してもよい。血管画像発生部26は、画像合成部30を介して、模式画像を表示部15に出力する。なお、血管画像発生部26は、特定部24におけるマッチング処理の結果において、相関係数が最も高いモデル画像に対応する模式画像を発生してもよい。
【0058】
記憶部32は、正常モデル画像および異常モデル画像にそれぞれ対応する複数の模式画像を記憶する。正常モデル画像に対応する模式画像は、例えば、肺動脈と大動脈とが交差する画像である。異常モデル画像に対応する模式画像は、例えば、大静脈、肺動脈および大動脈が略平行となる画像である。
【0059】
表示部15は、血管画像発生部26から出力された模式画像を表示する。
【0060】
(第2の変形例)
第1の実施形態との相違は、特定された特定血管領域の輪郭を用いて複数の特定血管にそれぞれ対応する複数の芯線を特定し、芯線上であって心基部に隣接する地点に設定された視点と3次元Bモード画像のデータとに基づいて、心基部から頭部方向に向かう芯線に沿った一連の透視投影像を発生することにある。
【0061】
特定部24は、特定された特定血管領域に基づいて、複数の特定血管各々の芯線を特定する。具体的には、特定部24は、特定血管領域の輪郭を特定する。特定部24は、特定された特定血管領域の輪郭に基づいて、複数の血管各々の芯線を特定する。
【0062】
血管画像発生部26は、入力部17により指定された地点(以下、指定点と呼ぶ)に最も近い複数の特定血管各々の芯線上に視点を設定する。血管画像発生部26は、設定された視点と3次元Bモード画像のデータとに基づいて、レンダリング処理により、透視投影像(以下、血管透視投影像と呼ぶ)を発生する。血管画像発生部26は、設定された視点から頭部方向に向かって芯線上で視線を移動させることにより、一連の血管透視投影像を発生する。血管画像発生部26は、複数の特定血管各々に対応する一連の血管透視投影像を、画像合成部30を介して表示部15に出力する。
【0063】
表示部15は、複数の特定血管各々に対応する一連の血管透視投影像を、複数の特定血管ごとに連続的に表示する(以下、フライスルーと呼ぶ)。なお、表示部15は、模式画像とともに、フライスルーに関する画像を表示することも可能である。
【0064】
入力部17は、表示部15に表示された特定血管画像(血管レンダリング画像、または血管投影画像でもよい)に、指定点を入力する。
【0065】
CPU36は、指定点の入力を契機として、指定点にもっと近い芯線上に視点を設定するために、血管画像発生部26を制御する。CPU36は、指定点から頭部方向に向って芯線上で視点を移動させることにより、複数の特定血管各々について一連の血管透視投影像を発生する。
【0066】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置1によれば、3次元Bモード画像と複数の特定血管同士の相対的な位置関係が異なる複数のモデル画像とに基づいて、3次元Bモード画像上の複数の特定血管領域を特定することができる。さらに、本超音波診断装置1によれば、3次元Bモード画像と特定された複数の特定血管領域とに基づいて、特定血管画像を発生し、表示することができる。また、本超音波診断装置1によれば、複数の特定血管同士の相対的な位置関係を模式画像として表示することもできる。これらのことから、胎児または小児の心臓における大血管転位症に関して、超音波診断装置1の操作に熟練していない操作者であっても大血管の血管走向を容易にかつ明確に表示することができ、検査効率と検査精度とが向上する。
【0067】
また、本超音波診断措置1によれば、入力部17を介して特定血管を指定する事により、複数の特定血管各々に対応する一連の血管透視投影像を発生することができる。これにより、複数の特定血管にそれぞれ対応する複数のフライスルーを実行することができる。これにより、胎児または小児の心臓における大血管転位症に関して、フライスルーの視点を設定することなしに大血管の血管走向および血管構造を容易にかつ明確に表示することができる。被検体の大動脈、肺動脈、大動脈が正常に心臓に接続される場合、フライスルー中に他の特定血管が表示画面に現れることにより、肺動脈と大動脈とが立体交差することが明確となる。一方、大血管転位症の場合、立体交差は現れない。以上のことから、フライスルーにおいて特定血管を追跡して表示することにより、視線方向という直観的な情報(立体的な交差情報)を操作者に提示できる。
【0068】
これらのことから、本超音波診断装置1によれば、特定血管(大動脈と肺動脈)の交差の有無または大血管の走向を、複雑な操作をすることなく操作者に容易に明示することができる。例えば、大動脈と肺動脈とが交差していることが明示されれば、被検体の心臓は正常心である可能性が高いことを示している。一方、大動脈と肺動脈とが交差していないことが明示されれば、被検体は大動脈転置症である可能性が高いことを示している。従って、本超音波診断装置1によれば、胎児または比較的年少な小児の心臓のうち特に見落としリスクが高く、かつ胎児または比較的年少な小児の予後に影響を与える大血管系の代表的な疾患において、操作者に対する疾患鑑別および発見の容易性および簡便性を向上させることができる。このため、産婦人科、小児科領域において、検査品質を向上させることができる。
【0069】
(第2の実施形態)
第1の実施形態との相違は、3次元ドプラ画像のデータと、複数の特定血管同士の相対的な血流方向の位置関係が異なる服うすの血流方向パターンとに基づいて、3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を特定することにある。
【0070】
図8は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示す図である。
ドプラ画像発生部23は、図示していないミキサー、低域通過フィルタ(Low Pass Filter:以下LPFと呼ぶ)、速度/分散/Power演算デバイス等を有する。ミキサーは、送受信部20から出力された受信信号に、送信周波数と同じ周波数fを有する基準信号を掛け合わせる。この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数fの成分の信号と(2f+f)の周波数成分を有する信号とが得られる。LPFは、ミキサーからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f+f)の信号を取り除く。ドプラ処理ユニット142は、高い周波数成分(2f+f)の信号を取り除くことにより、ドプラ偏移周波数fの成分を有するドプラ信号を発生する。
【0071】
なお、ドプラ画像発生部23は、ドプラ信号を発生するために、直交検波方式を用いてもよい。このとき、受信信号(RF信号)は、直交検波されIQ信号に変換される。ドプラ画像発生部23は、IQ信号を複素フーリエ変換することにより、ドプラ偏移周波数fの成分を有するドプラ偏移信号を発生する。
【0072】
速度/分散/Power演算デバイスは、図示していないMTI(Moving Target Indicator)フィルタ、自己相関演算器等を有する。MTIフィルタは、発生されたドプラ偏移信号に対して、臓器の呼吸性移動や拍動性移動などに起因するドプラ成分(クラッタ成分)を除去する。自己相関演算器は、MTIフィルタによって血流情報のみが抽出されたドプラ偏移信号に対して、自己相関値を算出する。自己相関演算器は、算出された自己相関値に基づいて、血流の平均速度値、分散値、ドプラ偏移信号の反射強度等を算出する。速度/分散/Power演算デバイスは、複数のドプラ偏移信号に基づく血流の平均速度値、分散値、ドプラ偏移信号の反射強度等に基づいて、カラードプラ信号を発生する。以下、ドプラ偏移信号とカラードプラ信号とをまとめて、ドプラ信号と呼ぶ。
【0073】
ドプラ画像発生部23は、アジマス方向、エレベーション方向、レンジ方向にそれぞれ対応付けて配列された複数のドプラ信号からなる3次元ドプラ画像のデータを発生する。なお、3次元ドプラ画像のデータは、複数の画素値または複数の輝度値などを、走査線に沿って、アジマス方向、エレベーション方向、レンジ方向にそれぞれ対応付けて配列させたデータであってもよい。ドプラ画像発生部23は、3次元ドプラ画像のデータに基づいて、3次元ドプラ画像を発生し、発生した3次元ドプラ画像を特定部24に出力する。
【0074】
ドプラ画像発生部23は、図示していないDSCと、3次元画像処理デバイスとを有する。ドプラ画像発生部23は、3次元ドプラ画像のデータを3次元画像処理して2次元の表示画像のデータを発生する。具体的には、3次元画像処理デバイスは、3次元画像処理として、例えば、各種レンダリング処理、MIP、断面変換処理などを実行する。DSCは、これらの処理を用いて発生された2次元の表示画像のデータに対して、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、投影画像としてのドプラ画像を発生する。
【0075】
特定部24は、複数の特定血管同士の相対的な血流方向の位置関係が異なる複数の血流方向パターンを用いて、3次元ドプラ画像上の特定血管領域を特定する。以下、血流方向パターンについて説明する。以下、説明を簡単にするため、複数の特定血管は、大静脈、肺動脈、大動脈であるとする。血流方向とは、大静脈、肺動脈、大動脈中の血液が流れる方向であって、カラードプラで表されるものとする。複数の血流方向パターンは、例えば、複数種類の血流方向パターンセットからなる。以下、説明を簡単にするため、血流方向パターンセットの種類は、2種類であり、第1、第2の血流方向パターンセットとする。第1の血流方向パターンセットにおける複数の第1血流方向パターン各々は、正常な複数の大血管の血流方向を示す標準的な血流方向パターン(以下、正常方向パターンと呼ぶ)であって、被検体である胎児の成長段階に対応する。図9は、4chビュー方向からの投影した正常方向パターンの一例を示す図である。
【0076】
第2の血流方向パターンセットにおける複数の第2血流方向パターン各々は、例えば、大血管転位症を示す標準的な血流方向パターン(以下、異常方向パターンと呼ぶ)であって、被検体である胎児の成長段階に対応する。図10は、4chビュー方向からの投影した異常方向パターンの一例を示す図である。なお、3種類以上の血流方向パターンセットが存在する場合、血流方向パターンセット各々は、他の心疾患などに対応する。以下、特定部24による3次元ドプラ画像上の特定血管領域の特定について詳述する。
【0077】
特定部24は、3次元ドプラ画像と複数の正常方向パターンとに対してマッチング処理を実行する。特定部24は、3次元ドプラ画像と複数の異常方向パターンとに対してマッチング処理を実行する。マッチング処理とは、例えば、相関マッチングである。
【0078】
具体的には、特定部24は、3次元ドプラ画像における複数の画素値の第1平均値と、3次元ドプラ画像における複数の画素値とに基づいて、第1分散値とを計算する。特定部24は、後述する記憶部32に記憶されている複数の血流方向パターン像を、記憶部32から読み出す。特定部24は、正常方向パターンにおける複数の画素値の第2平均値と、正常方向パターンにおける複数の画素値とに基づいて、第2分散値とを計算する。特定部24は、3次元ドプラ画像の複数の画素値と、正常方向パターンの複数の画素値と、第1、第2分散値とに基づいて、第1共分散値を計算する。特定部24は、第1、第2分散値と第1共分散値とに基づいて、3次元ドプラ画像と正常方向パターンとの相関係数を計算する。この相関係数は、複数の正常方向パターン各々について計算される。すなわち、特定部24は、複数の正常方向パターンにそれぞれ対応する3次元ドプラ画像との複数の相関係数を計算する。
【0079】
次いで、特定部24は、異常方向パターンにおける複数の画素値の第3平均値と、異常モデル画像における複数の画素値とに基づいて、第3分散値とを計算する。特定部24は、3次元ドプラ画像の複数の画素値と、異常方向パターンの複数の画素値と、第1、第3分散値とに基づいて、第2共分散値を計算する。特定部24は、第1、第2分散値と第2共分散値とに基づいて、3次元ドプラ画像と異常方向パターンとの相関係数を計算する。この相関係数は、複数の異常方向パターン各々について計算される。すなわち、特定部24は、複数の異常方向パターンにそれぞれ対応する3次元ドプラ画像との複数の相関係数を計算する。
【0080】
特定部24は、計算された複数の相関係数のうち、最も大きい相関係数に関する血流方向パターン(正常方向パターンまたは異常方向パターン)に基づいて、3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を特定する。特定部24は、特定した複数の特定血管領域を、血管画像発生部26へ出力する。
【0081】
なお、記憶部32に記憶された複数の血流方向パターンが4chビューからの投影による血流方向パターン(以下、4chビュー投影血流方向パターンと呼ぶ)である場合、特定部24は、以下の処理を実行してもよい。正常方向パターンに対応する4chビュー投影血流方向パターンは、例えば図9で示されている。異常方向パターンに対応する4chビュー投影血流方向パターンは、例えば図10で示されている。特定部24は、4chビュー方向から3次元ドプラ画像を投影した投影ドプラ画像を発生する。特定部24は、投影ドプラ画像と複数の4chビュー投影血流方向パターンとを用いて、複数の相関係数を計算する。特定部24は、計算された複数の相関係数のうち、最も大きい相関係数に関する血流方向パターン(正常方向パターンまたは異常方向パターン)に基づいて、3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を特定する。図11は、投影ドプラ画像を、3次元ドプラ画像と、投影方向(4chビュー方向)とともに示した投影概念図である。
【0082】
なお、特定部24は、血流方向パターンを用いて、特定した複数の特定血管領域にそれぞれ対応する複数の血管名を特定してもよい。具体的には、特定部24は、例えば、図9(正常方向パターンに対応する4chビュー投影血流方向パターン)、図10(異常方向パターンに対応する4chビュー投影血流方向パターン)に示すように、右心房に流入する血液を有する特定血管の血管名を、大静脈として特定する。特定部24は、例えば、図9図10に示すように、右心室から流出する血液を有する特定血管の血管名を、大動脈として特定する。特定部24は、例えば、図9図10に示すように、左心室から流出する血液を有する特定血管の血管名を、肺動脈として特定する。なお、特定部24は、大動脈と肺動脈とを特定してもよい。
【0083】
血管画像発生部26は、3次元ドプラ画像と特定された複数の特定血管領域とに基づいて、特定血管領域を表す特定血管画像を発生する。特定血管画像とは、例えば、特定血管に関する3次元ドプラ画像である。具体的には、血管画像発生部26は、3次元ドプラ画像から特定された血管領域を抽出することにより、3次元特定血管画像を発生する。なお、血管画像発生部26は、4chビュー方向を用いて、3次元特定血管画像から4chビューにおける投影画像(以下、血管投影画像と呼ぶ)を発生してもよい。血管画像発生部26は、発生した画像を表示部15に出力する。
【0084】
なお、血管画像発生部26は、3次元ドプラ画像のうち、特定された血管領域を除く非特定血管領域の画素値をゼロにしてもよい。また、血管画像発生部26は、3次元ドプラ画像と特定された複数の特定血管領域とに基づいて、4chビュー方向からレンダリング処理を実行する事により、特定血管に関するレンダリング画像(以下、血管レンダリング画像と呼ぶ)を発生してもよい。
【0085】
また、血管画像発生部26は、特定血管に関する3次元ドプラ画像に基づいて、被検体の心尖部と心基部とを結んだ直線(以下長軸と呼ぶ)に垂直な複数の断面像(以下、短軸像と呼ぶ)を、心基部から頭部に向かって所定の間隔で発生してもよい。
【0086】
判定部28は、3次元ドプラ画像において特定された複数の特定血管領域にそれぞれ対応する複数の血流ベクトルを抽出する。判定部28は、抽出された複数の血流ベクトルが所定の範囲(以下、判定範囲と呼ぶ)内で立体的に交差するか否かを判定する。判定範囲とは、例えば、被検体の心基部から肺動脈が左右の肺に向けて分岐する分岐点までの範囲であって、大静脈、肺動脈、大動脈が含まれる領域である。判定部28は、判定結果を画像合成部30に出力する。判定範囲は、入力部17を介して入力されたデータに基づいて、被検体(胎児)の成長に応じて決定される。判定範囲の決定については、CPU36で説明する。
【0087】
記憶部32は、ドプラ画像発生部23で発生されたドプラ画像、複数の特定血管同士の相対的な血流方向の位置関係が異なる複数の血流方向パターン、産科などで用いられる胎児に関する指標(以下、胎児指標と呼ぶ)に対する判定範囲の対応表(例えば胎児の成長曲線など)などを記憶する。胎児指標とは、例えば、例えば、最終月経(Last Menstrual Period:LMP)、出産予定日(Estimated Date of Delivery:EDD)、他の胎児計測項目の値である。
【0088】
画像合成部30は、ドプラ画像、血管投影画像、血管レンダリング画像、短軸像などに、種々のパラメータの文字情報、目盛、判定部28による判定結果等を合成する。画像合成部30は、合成された画像を表示部15に出力する。
【0089】
表示部15は、画像合成部30の出力に基づいて、ドプラ画像、特定血管画像などを表示する。なお、表示部15は、特定部24により特定された複数の特定血管各々の血管名を、特定血管画像と血管投影画像と血管レンダリング画像とのうち少なくとも一つの画像とともに表示してもよい。また、表示部15は、特定血管画像を模式的に示した模式画像を表示することも可能である。
【0090】
入力部17は、胎児指標および検査日などを入力する。
【0091】
CPU36は、入力部17を介して入力された胎児指標、検査日と記憶部32に記憶された対応表とに基づいて、判定範囲を決定する。CPU36は、決定した判定範囲を、判定部へ出力する。決定した判定範囲は、被検体の成長状態(例えば、妊娠期間)に対応する判定範囲である。なお、CPU36は、胎児指標と判定範囲とに基づいて、複数の血流方向のパターンから胎児の成長段階に対応した正常方向パターンおよび異常方向パターンを選択してもよい。CPU36は、選択した正常方向パターンおよび異常方向パターンを、特定部24へ出力する。選択された正常方向パターンおよび異常方向パターンは、被検体の成長状態(例えば、妊娠期間)に対応する血流方向パターンである。
【0092】
(特定血管画像発生機能)
特定血管画像発生機能とは、複数の特定血管同士の相対的な血流方向の位置関係が異なる複数の血流方向パターンと3次元ドプラ画像とに基づいて、3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を特定し、3次元ドプラ画像と特定された特定血管領域とに基づいて、特定血管画像を発生する機能である。以下、特定血管画像発生機能に関する処理(以下、特定血管画像発生処理と呼ぶ)を説明する。
【0093】
図12は、特定血管画像発生処理の手順を示すフローチャートである。
被検体Pに超音波が送信され、3次元ドプラ画像のデータが発生される(ステップSb1)。複数の血流方向パターンが、記憶部32から読み出される(ステップSb2)。3次元ドプラ画像と複数の血流方向パターンとを用いて、マッチング処理が実行される(ステップSb3)。マッチング処理により、複数の特定血管領域が特定される(ステップSb4)。3次元ドプラ画像と特定された特定血管領域とに基づいて、3次元特定血管画像が発生される。3次元特定血管画像と、予め操作者により決定された4chビュー方向とに基づいて、投影画像またはレンダリング画像(特定血管画像)が発生される(ステップSb5)。なお、4chビュー方向は、3次元ドプラ画像のデータと所定のプログラムとに従って決定されてもよい。発生された特定血管画像が表示部15に表示される(ステップSb6)。
【0094】
(第1の変形例)
第2の実施形態との相違は、3次元ドプラ画像における平均速度の分布と、平均速度に関する閾値(以下、流速閾値と呼ぶ)とをさらに用いて、特定血管領域を特定することにある。
【0095】
記憶部32は、流速閾値を記憶する。以下、説明を簡単にするため、流速閾値は、複数の特定血管のうち最小の平均流速に対応する閾値であるとする。また、流速閾値は、複数の血流方向パターンにそれぞれ対応する複数の閾値であるとする。なお、流速閾値は、複数の特定血管にそれぞれ対応する複数の閾値であってもよい。
【0096】
特定部24は、マッチング処理後、記憶部32から流速閾値を読み出す。具体的には、特定部24は、マッチング処理により相関係数が最も高い血流方向パターンに対応する流速閾値を、記憶部32から読み出す。特定部24は、マッチング処理された3次元ドプラ画像に対して、読み出した流速閾値を用いて、閾値処理(以下、流速閾値処理と呼ぶ)を実行する。特定部24は、マッチング処理及び流速閾値処理を実行する事により、3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を特定する。例えば、正常方向パターンに対応する流速閾値は、特定血管が正常な場合の標準的な流速値である。異常方向パターンに対応する流速閾値は、特定血管が異常な場合の標準的な流速値である。なお、流速閾値は、人種、性別、胎児の成長段階などに応じて適宜変更可能である。
【0097】
(第2の変形例)
第2の実施形態との相違は、3次元ドプラ画像における血流量の分布と、血流量に関する閾値(以下、流量閾値と呼ぶ)とをさらに用いて、特定血管領域を特定することにある。
【0098】
記憶部32は、流量閾値を記憶する。以下、説明を簡単にするため、流量閾値は、複数の特定血管のうち最小の血流量に対応する閾値であるとする。また、流量閾値は、複数の血流方向パターンにそれぞれ対応する複数の閾値であるとする。なお、流量閾値は、複数の特定血管にそれぞれ対応する複数の閾値であってもよい。
【0099】
特定部24は、マッチング処理後、記憶部32から流量閾値を読み出す。具体的には、特定部24は、マッチング処理により相関係数が最も高い血流方向パターンに対応する流量閾値を、記憶部32から読み出す。特定部24は、マッチング処理された3次元ドプラ画像に対して、読み出した流量閾値を用いて、閾値処理(以下、流量閾値処理と呼ぶ)を実行する。特定部24は、マッチング処理及び流量閾値処理を実行する事により、3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を特定する。例えば、正常方向パターンに対応する流量閾値は、特定血管が正常な場合の標準的な流量値である。異常方向パターンに対応する流速閾値は、特定血管が異常な場合の標準的な流量値である。なお、流量閾値は、人種、性別、胎児の成長段階などに応じて適宜変更可能である
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置1によれば、3次元ドプラ画像と複数の特定血管同士の相対的な血流方向の位置関係が異なる複数の血流方向パターンとに基づいて、3次元ドプラ画像上の複数の特定血管領域を特定することができる。さらに、本超音波診断装置1によれば、3次元ドプラ画像と特定された複数の特定血管領域とに基づいて、特定血管画像を発生し、表示することができる。これにより、胎児または小児の心臓における大血管転位症に関して、超音波診断装置1の操作に熟練していない操作者であっても大血管の血管走向を容易にかつ明確に表示することができ、検査効率と検査精度とが向上する。
【0100】
また、本超音波診断装置1によれば、正常方向パターンと異常方向パターンとにそれぞれ対応する複数の流速閾値を用いて、流速閾値処理を実行することができる。加えて、本超音波診断装置1によれば、正常方向パターンと異常方向パターンとにそれぞれ対応する複数の流量閾値を用いて、流量閾値処理を実行することができる。これらのことから、本超音波診断装置1によれば、被検体の心臓を取り巻く冠動脈に代表される多くの血管によるノイズを低減することができる。さらに、特定血管が正常な場合の標準的な流速値および特定血管が異常な場合の標準的な流速値を流速閾値として用いることで、流速閾値処理の精度が向上する。また、特定血管が正常な場合の標準的な流量値および特定血管が異常な場合の標準的な流量値を流量閾値として用いることで、流量閾値処理の精度が向上する。
【0101】
以上のことから、本超音波診断装置1によれば、3次元ドプラ画像に基づいて、特定血管(大動脈と肺動脈)の交差の有無を、複雑な操作をすることなく操作者に明示することができる。これにより、胎児または小児の心臓における大血管転位症に関して、大血管の血管走向を容易にかつ明確に表示することができ、検査効率と検査精度とが向上する。このため、産婦人科、小児科領域において、検査品質を向上させることができる。
【0102】
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
1…超音波診断装置、11…超音波プローブ、13…装置本体、15…表示部、17…入力部、20…送受信部、22…Bモード画像発生部、23…ドプラ画像発生部、24…特定部、26…血管画像発生部、28…判定部、30…画像合成部、32…記憶部、34…インターフェース部、36…制御プロセッサ(CPU)
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図12