(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943236
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】すべりブッシュ
(51)【国際特許分類】
F16F 1/38 20060101AFI20160621BHJP
B60G 7/02 20060101ALI20160621BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20160621BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20160621BHJP
F16F 1/387 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
F16F1/38 G
F16F1/38 W
B60G7/02
F16F15/04 D
F16F15/08 K
F16F1/387 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-183862(P2012-183862)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-40876(P2014-40876A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107320
【弁理士】
【氏名又は名称】高塚 一郎
(72)【発明者】
【氏名】蛇谷 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 慎一郎
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−302726(JP,A)
【文献】
特開平01−046028(JP,A)
【文献】
特開平10−252796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/38
B60G 7/02
F16F 15/04
F16F 15/08
F16F 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部材(1)と、前記円筒部材(1)と同心に配置され、その内周面が多角形筒状面(21)を備えた外筒部材(2)と、前記円筒部材(1)の外周面に固着され、前記多角形筒状面(21)の角部(211)に向かって伸びる複数個の突起部(31)を備えたゴム状弾性部材(3)と、前記突起部(31)の各々の先端部に固着され、前記角部(211)に当接しているアウターロッド(4)とより成り、前記円筒部材(1)と前記外筒部材(2)との間に一定以上の捩り応力が作用すると、前記多角形筒状面(21)と前記アウターロッド(4)との間で周方向の滑りが生ずる様に成したことを特徴とするすべりブッシュ。
【請求項2】
前記アウターロッド(4)が円柱形状であると共に、前記角部(211)が前記アウターロッド(4)の外周面と同じ曲率の円弧状面を備えていることを特徴とする請求項1記載のすべりブッシュ。
【請求項3】
前記外筒部材(2)の軸方向両端部に前記アウターロッド(4)の軸方向移動を規制する径方向内方に伸びるフランジ部(22)、(22)を形成したことを特徴とする請求項1または2記載のすべりブッシュ。
【請求項4】
前記アウターロッド(4)の軸方向両端部にゴム層(41)、(41)を形成したことを特徴とする請求項3記載のすべりブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべりブッシュに関する。
また、本発明は、例えば車両のサスペンションにおいて、アッパーアームを車体に揺動可能に取り付ける為に用いるすべりブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
すべりブッシュは、一般的にサスペンションでは振動低減のため、ゴムと金具を加硫接着したブッシュを採用するが、アッパーアーム等の捩り方向の入力が厳しい(大きい)箇所に使用される場合は、ゴムと金具が一体的に加硫接着している為、捩り方向の入力が負荷された場合、ゴムが破断する問題を惹起した。
【0003】
その対策として、捩り方向の入力が厳しい(大きい)箇所では、ゴムの破断防止のため、振り方向にすべり構造を設けている。(特許文献1)
【0004】
具体的には、
図3に示す様に、このすべりプッシュは、支持軸500の外周に嵌着する内筒部材100と、この内筒部材100と同心的に配置された外筒部材200とを備え、この内筒部材100と外筒部材200との間に、ゴム状弾性材からなる略筒状の弾性部材300が介装されていると共に、この弾性部材300と内筒部材100との間には、この内筒部材100に回転摺動自在な合成樹脂材からなる筒状の摺動部材600が介装されている。
【0005】
また、この摺動部材600の内周面と内筒部材100の外周面との間には、摺動部材6の円滑な回転摺動を得るために隙間部700が形成されている。
そして、弾性部材300のばね特性によって、主にその軸心に直角な方向の振動を吸収する一方、摺動部材600が内筒部材100の外周面に対し隙間部700を介して相対回転することにより、弾性部材300に働く涙りばね作用を低減するようになっている。
【0006】
しかしこれらの構造は、すべり構造にするために構造が複雑となっており、また、摺動面に異物(ダスト)が侵入した際、摺動画が固着する可能性があり摺動画をシールする必要がある。
そのため、アッパーアーム等の捩り方向の入力が厳しい(大きい)箇所に使用される場合は、更に構造が複雑と成り、製造コストも嵩む問題を招来した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−302726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アッパーアーム等の捩り方向の入力が厳しい(大きい)箇所に使用されても、安定した振動低減機能を発揮出来るすべりブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のすべりブッシュは、円筒部材と、前記円筒部材と同心に配置され、その内周面が多角形筒状面を備えた外筒部材と、前記円筒部材の外周面に固着され、前記多角形筒状面の角部に向かって伸びる複数個の突起部を備えたゴム状弾性部材と、前記突起部の各々の先端部に固着され、前記角部に当接しているアウターロッドとより成り、前記円筒部材と前記外筒部材との間に一定以上の捩り応力が作用すると、前記多角形筒状面と前記アウターロッドとの間で周方向の滑りが生ずる様に成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のすべりブッシュによれば、円筒部材と外筒部材との間に一定以上の捩り応力が作用すると、多角形筒状面とアウターロッドとの間で周方向の滑りが生ずる構成としている為、アッパーアーム等の捩り方向の入力が厳しい(大きい)箇所に使用されても、安定した振動低減機能を発揮出来る。
更に、請求項2記載の発明のすべりブッシュによれば、アウターロッドが円柱形状であると共に、角部がアウターロッドの外周面と同じ曲率の円弧状面を備える構成としている為、捩り方向の入力が小さい時は、アウターロッドが外筒部材側に安定した状態で保持されると共に、捩り方向の入力が厳しい(大きい)状態となった時は、多角形筒状面とアウターロッドとの間で、周方向の円滑な滑りが生ずる。
【0011】
更に、請求項3記載の発明のすべりブッシュによれば、外筒部材の軸方向両端部に、アウターロッドの軸方向移動を規制する径方向内方に伸びるフランジ部を形成する構成とした為、円筒部材と外筒部材との間の軸方向位置を正確に維持出来、安定した振動低減機能を発揮出来る。
更に、請求項4記載の発明のすべりブッシュによれば、アウターロッドの軸方向両端部にゴム層を形成した為、円筒部材と外筒部材との間で軸方向変位が発生しても、異音の発生を抑える事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための態様について説明する。
図1及び
図2に示される様に、本発明に係るすべりブッシュの態様は、金属材製の円筒部材1と、この円筒部材1と同心に配置され、その内周面が5角形の筒状面21を備えた外筒部材2と、円筒部材1の外周面に一体的に固着され、5角形の筒状面21の角部211に向かって伸びる5個の突起部31を備えたゴム状弾性部材3と、突起部31の各々の先端部に一体的に固着され、角部211に当接している円柱形状のアウターロッド4とより構成されている。
【0014】
そして、円筒部材1と外筒部材2との間に一定以上の捩り応力が作用すると、ゴム状弾性部材3の突起部31が大きく変形し、5角形の筒状面21とアウターロッド4との間で周方向の滑りが生じ、ゴム状弾性部材3に過大な捩り応力が作用することを効果的に回避出来る。
【0015】
この際、アウターロッド4は、隣接する角部211に収まる様に移動する。
本実施態様では、筒状面21を5角形としたが、3角形以上の各種の角形が適宜選択して用いられる。
そして、筒状面21の角形に合わせて、ゴム状弾性部材3の突起部31の数も決められるが、必ずしも一致する必要は無く、5角形の筒状面21に対し3個の突起部31を設ける態様としても良い。
【0016】
この様に、円筒部材1と外筒部材2の間に一定以上の捩り応力が作用すると、多角形筒状面21とアウターロッド4との間で周方向の滑りが生ずる構成としている為、アッパーアーム等の捩り方向の入力が厳しい(大きい)箇所に使用されても、安定した振動低減機能を発揮出来る。
【0017】
更に、突起部31の本数や、ゴム状弾性部材3の形状及び硬度等を変更することにより、すべりブッシュの保持出来る荷重を調整する事が出来る。
更にまた、ゴム状弾性部材3の突起部31が変形して、円筒部材1と外筒部材2との間で捩り方向に回転する為、アウターロッド4と多角形筒状面21との間で固着を発生し難い構造と成っている。
【0018】
また、アウターロッド4が円柱形状であると共に、角部211がアウターロッド4の外周面と同じ曲率の円弧状面を備えている構成としている為、捩り方向の入力が小さい時は、アウターロッド4が外筒部材2側に安定した状態で保持されると共に、捩り方向の入力が厳しい(大きい)状態となった時は、多角形筒状面21とアウターロッド4との間で、周方向の円滑な滑りが生ずる。
【0019】
また、外筒部材2の軸方向両端部にアウターロッド4の軸方向移動を規制する径方向内方に伸びるフランジ部22、22を形成している為、円筒部材1と外筒部材2との間の軸方向位置を正確に維持出来、安定した振動低減機能を発揮出来る。
【0020】
また、アウターロッド4の軸方向両端部にゴム層41、41を形成している為、円筒部材1と外筒部材2との間で軸方向変位が発生しても、異音の発生を抑える事が出来る。
【0021】
ゴム状弾性部材3の材質は、天然ゴム(NR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロロプレン等のゴム状弾性材や、ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性エラストマーから、適宜用途に合わせ選択して使用されるが、減衰効果の大きいブチルゴムが好ましい。
【0022】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係るすべりブッシュは、車両のサスペンションにおいて、アッパーアームを車体に揺動可能に取り付ける為に使用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 円筒部材
2 外筒部材
3 ゴム状弾性部材
4 アウターロッド
21 多角形筒状面
22 フランジ部
31 突起部
41 ゴム層
211角部