(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ディスクに形成された反射スリットに光を出射するように構成された光源、及び、前記光源から出射され前記反射スリットで反射された光を受光するように構成された受光素子を備えた第1基板と、
前記第1基板上に配置され、前記光源及び前記受光素子の周囲を取り囲む枠部材と、
前記第1基板が搭載された第2基板と、
前記第1基板の第1縁部に配置され、前記第1基板と前記第2基板とを電気的に接続するように構成された複数の端子部と、
前記枠部材の外側の側面の少なくとも一部と前記複数の端子部とを被覆する被覆材と、
前記枠部材の第1の部位の前記側面に形成された凹部と、
を有する、エンコーダ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<1.サーボモータ>
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態に係るサーボモータの構成の概略について説明する。
【0013】
図1に示すように、サーボモータSMは、モータMと、エンコーダ100とを有する。
【0014】
モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。このモータMは、回転子及び固定子(どちらも図示省略)を備え、回転子が固定子に対して回転する回転型モータであり、回転子に固定されたシャフトSHを軸心AX周りに回転させることで、回転力を出力する。
【0015】
なお、このモータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMということにする。つまり、サーボモータSMは、エンコーダ付きモータの一例に相当する。なお、説明の便宜上、以下では、エンコーダ付きモータが位置や速度等の目標値に追従するように制御されるサーボモータである場合について説明するが、エンコーダ付きモータは、必ずしもサーボモータに限定されるものではない。エンコーダ付きモータは、例えばエンコーダの出力を表示のみに用いる場合等、エンコーダが付設されていればサーボモータ以外に用いられるモータをも含むものである。
【0016】
また、モータMは、例えば後述の位置データ等をエンコーダ100が検出可能なモータであれば特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限定されるものではなく、例えば油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。但し、説明の便宜上、以下では、モータMが電動式モータである場合について説明する。
【0017】
エンコーダ100は、シャフトSHの回転力出力側(「負荷側」ともいう。)と反対側(「反負荷側」ともいう。)に連結されている。なお、エンコーダ100の連結位置は、シャフトSHの回転力出力側と反対側に限定されるものではなく、シャフトSHの回転力出力側であってもよい。このエンコーダ100は、シャフトSHの位置を検出することで、モータMの位置(「回転角度」ともいう。)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
【0018】
なお、エンコーダ100は、モータMの位置に加えて又は代えて、モータMの速度(「回転速度」や「角速度」等ともいう。)及び加速度(「回転加速度」や「角加速度」等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば位置を時間で1又は2階微分したり、後述の受光素子による検出信号を所定時間カウントする等の処理により、検出可能である。但し、説明の便宜上、以下では、エンコーダ100が検出する物理量が位置である場合について説明する。
【0019】
<2.エンコーダ>
次に、
図2〜
図11を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100の構成について説明する。
図2は、
図3中のA−A線におけるエンコーダ100の断面を模式的に表す断面図である。
図3は、エンコーダ100の分解斜視図である。
図4は、エンコーダ100の光学ユニット近傍部分を、モータMのハウジング側から見た平面図である。
図5は、
図4中のB−B線におけるエンコーダ100の断面を模式的に表す断面図である。
図6は、光学ユニットの平面図である。
図7は、光学ユニットの底面図である。
図8は、光学ユニットの正面図である。
図9は、光学ユニットの背面図である。
図10は、光学ユニットの右側面図である。なお、光学ユニットの左側面図は、右側面図と対称のため省略している。
図11は、光学モジュールの基板の端子部と光学モジュールが搭載された基板の端子部との構造を表す斜視図である。
【0020】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、モータMのハウジング10に設けられ、エンコーダカバー101により覆われている。なお、
図3中では、エンコーダカバー101の図示を省略している。このエンコーダ100は、円板状のディスク110と、基板130と、円筒状の支持部材140と、磁気検出部102と、光学ユニット1200とを有する。なお、基板130(以下では「メイン基板130」ともいう。)は、第2基板の一例に相当する。また、支持部材140は、必ずしも円筒状である必要はなく、筒状であればよい。
【0021】
ここで、エンコーダ100の構造の説明の便宜上、上下等の方向を次のように定め、適宜使用する。すなわち、
図2において、ディスク110が磁気検出部102及び光学ユニット1200と面する方向、つまりZ軸正の方向を「上」と定め、逆のZ軸負の方向を「下」と定める。但し、上下等の方向は、エンコーダ100の設置態様により変動するものであり、エンコーダ100の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0022】
(2−1.ディスク)
図2及び
図3に示すように、ディスク110は、ディスク中心Oが軸心AXと一致するようにシャフトSHに連結され、モータMの回転と共に回転する。なお、
図2及び
図3に示す例では、ディスク110は、シャフトSHに直接連結されているが、ハブ等の連結部材を介してシャフトSHに連結されてもよい。
【0023】
このディスク110は、その上面に、磁気(磁界)を発生する永久磁石MGと、3本のスリットトラックST1,ST2,ST3とを有する。そして、ディスク110は、上記のようにモータMの回転と共に回転するが、磁気検出部102及び光学ユニット1200は、後述のように永久磁石MG及びスリットトラックST1,ST2,ST3の一部と対向しつつ固定されている。従って、永久磁石MG及びスリットトラックST1,ST2,ST3と、磁気検出部102及び光学ユニット1200とは、モータMの回転に伴い、互いに測定方向に相対移動する。
【0024】
ここで、「測定方向」とは、後述の光学モジュール120でスリットトラックST1,ST2,ST3を光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態では、測定方向はディスク110の中心軸を中心とした測定方向に一致する。なお、「中心軸」とは、ディスク110の回転軸心であり、本実施形態のようにディスク110とシャフトSHが同軸に連結される場合には、中心軸はシャフトSHの軸心AXと一致する。
【0025】
永久磁石MGは、円形状に形成され、ディスク110と同一軸心となるようにディスク110の上面に固定されている。なお、永久磁石MGは、必ずしも円形状である必要はなく、他の形状(例えば四角形状等)であってもよい。
【0026】
スリットトラックST1,ST2,ST3は、それぞれ、ディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成されている。
【0027】
スリットトラックST1は、測定方向でインクリメンタルパターンを有するように、トラックの全周にわたって測定方向に沿って並べられた複数の反射スリット(図示省略)を有する。なお、「インクリメンタルパターン」とは、複数の反射スリットが所定のピッチ(配置間隔)で規則的に繰り返されるパターンである。このインクリメンタルパターンは、後述の受光アレイ122の少なくとも1つの受光素子122aによる検出信号の和により、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの位置を表す。
【0028】
スリットトラックST2,ST3は、それぞれ、スリットトラックST1の外径側及び内径側に形成されている。これらスリットトラックST2,ST3は、それぞれ、測定方向でアブソリュートパターンを有するように、トラックの全周に配置された複数の反射スリット(図示省略)を有する。なお、「アブソリュートパターン」とは、後述の受光アレイ123が対向する角度内における反射スリットの位置や割合等が、ディスク110の1回転内で一義に定まるようなパターンである。本実施形態では、同様のアブソリュートパターンが、測定方向で例えば1ビットの1/2の長さだけオフセットされて、2本のスリットトラックST2,ST3として形成されている。なお、スリットトラックST2,ST3の各アブソリュートパターン同士をオフセットさせる代わりに、例えば、アブソリュートパターン同士はオフセットさせずに、スリットトラックST2,ST3それぞれに対応した受光アレイ123,123同士をオフセットさせてもよい。
【0029】
スリットトラックST1,ST2,ST3の各反射スリットは、後述の光源121から出射された光を反射する。
【0030】
ここで、ディスク110は、例えば金属等の光を反射する材質により形成される。そして、ディスク110の上面の光を反射させない部分に反射率の低い材質(例えば酸化クロム等)を塗布等により配置することで、該材質が配置されない部分に反射スリットが形成される。なお、光を反射させない部分をスパッタリング等により粗面として反射率を低下させることで、反射スリットが形成されてもよい。
【0031】
なお、ディスク110の材質や製造方法等は、特に限定されるものではない。例えば、ディスク110をガラスや透明樹脂等の光を透過する材質で形成することも可能である。この場合、ディスク110の上面に光を反射する材質(例えばアルミニウム等)を蒸着等により配置することで、反射スリットが形成可能である。
【0032】
(2−2.メイン基板)
図2及び
図3に示すように、メイン基板130は、円板状のプリント配線基板であり、その上面及び下面には、磁気検出部102及び光学ユニット1200を含む複数の回路素子等が搭載され、それらの間に複数の配線が形成されている。なお、各図中では、磁気検出部102及び光学ユニット1200以外の回路素子や配線の図示を省略している。
【0033】
このメイン基板130は、支持部材140と同じ直径となるように形成され、その縁部133が支持部材140の面141(以下では「基板載置面141」ともいう。)に載置されている。なお、縁部133は、第2縁部の一例に相当する。メイン基板130の縁部133には、固定ネジ150が貫通する複数(本実施形態では3つ)の貫通孔131が設けられている。貫通孔131は、測定方向に均等な間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されている。また、メイン基板130の縁部133には、位置決めピン160が挿入される少なくとも2つ(本実施形態では2つ)のピン孔132が設けられている。ピン孔132は、メイン基板130を貫通して設けられ、上記3つの貫通孔131のうちの2つに隣接して配置されている。
【0034】
上記磁気検出部102及び光学ユニット1200は、メイン基板130の下面に搭載されている。具体的には、光学ユニット1200は、メイン基板130の下面における縁部133近傍に搭載されている。なお、光学ユニット1200は、必ずしもメイン基板130の下面における縁部133近傍に搭載される必要はなく、メイン基板130の下面における縁部133近傍以外の位置に搭載されてもよい。
【0035】
(2−3.支持部材)
図2及び
図3に示すように、支持部材140は、ディスク110と、メイン基板130の下面に搭載された磁気検出部102及び光学ユニット1200とを、内部に収容しつつ、メイン基板130の縁部133を支持する。この支持部材140は、例えば金型を用いた樹脂モールド等により一体成型される。樹脂は、支持部材140の内部における光の散乱・反射を抑制できるように、黒色あるいは光を吸収し易い色彩の材質が好ましい。なお、それ以外の樹脂でも、成型後に内部を黒色あるいは光を吸収し易い色彩やパターンに塗装することで、使用可能である。
【0036】
また、支持部材140は、上記固定ネジ150が貫通する少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の貫通孔142を有する。貫通孔142は、基板130の貫通孔131と対応するように、測定方向に均等な間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されている。少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の固定ネジ150は、基板130の貫通孔131及び支持部材140の貫通孔142をシャフトSHの軸方向に貫通してハウジング10のネジ孔11に螺合する。これにより、基板130及び支持部材140がモータのハウジング10に固定される。
【0037】
また、支持部材140の基板載置面141には、上記位置決めピン160が挿入される少なくとも2つ(本実施形態では2つ)のピン孔143が設けられている。ピン孔143は、基板130のピン孔132と対応するように、上記3つの貫通孔142のうちの2つに隣接して配置されている。位置決めピン160は、まず支持部材140のピン孔143に差し込まれ、立設された状態で、基板130のピン孔132に挿入される。このようにして基板130と支持部材140との両方に位置決めピン160が挿入されることで、基板130と支持部材140との回転軸心AXに垂直な面方向の相対位置が位置決めされる。
【0038】
(2−4.オイルシール)
図2及び
図3に示すように、ディスク110とハウジング10との間には、ハウジング10を覆うようにオイルシール170が設けられている。オイルシール170は、その中心部をシャフトSHが貫通し、その外周部にディスク110の半径方向(以下では「ディスク半径方向」ともいう。)外側に向けて突出した複数(本実施形態では3つ)の固定部171を有する。固定部171は、測定方向に均等な間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されており、各固定部171がビス161によりハウジング10に固定されている。オイルシール170とシャフトSHとは密着しており、ハウジング10に設けた軸受12のグリースがミスト化して飛散し、その一部がハウジング10とシャフトSHとの隙間からエンコーダ100側に漏出しても、オイルシール170によりグリースの漏出を抑制し、エンコーダ100の信頼性を向上できる。
【0039】
また、オイルシール170は、少なくともディスク110を間に挟んで後述の光源121に対応する位置にまで形成されている。そして、オイルシール170は、例えば黒色のゴムや樹脂等の光を吸収する材質で構成されている。なお、光を吸収する材質以外でも、例えば黒色あるいは光を吸収し易い彩色・パターンで塗装すれば、使用可能である。これにより、オイルシール170は、光源121からの照射光(ディスク110を透過した透過光や散乱・反射光を含む)の少なくとも一部を吸収し、支持部材140の内部におけるハウジング10での光の散乱・反射を抑制することができる。その結果、散乱・反射光の受光素子への影響を抑制できるので、エンコーダ100の検出精度を向上できる。
【0040】
(2−5.磁気検出部)
図2及び
図3に示すように、磁気検出部102は、ディスク110の永久磁石MGの一部と対向するように、基板130の下面に固定されている。この磁気検出部102は、永久磁石MGが発生する磁気(磁界)を検出することで、ディスク110が基準位置から何回転したかを表す多回転量を検出する。
【0041】
磁気検出部102としては、永久磁石MGが発生する磁気を検出可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、MR(磁気抵抗効果:Magnetro Resistive effect)素子やGMR(巨大磁気抵抗効果:Giant Magnetro Resistive effect)素子、TMR(トンネル磁気抵抗効果:Tunnel Magneto Resistance effect)素子等の磁気抵抗素子が使用可能である。また、磁気検出部102として、例えばホール素子等の磁界検出素子を使用することも可能である。また、基板130の下面における磁気検出部102の配置位置とは異なる位置に、別の磁気検出部が配置されてもよい。
【0042】
(2−6.光学ユニット)
図2及び
図3に示すように、光学ユニット1200は、ディスク110のスリットトラックST1,ST2,ST3の一部と対向するように、基板130の下面に固定されている。
図2及び
図4〜
図10に示すように、この光学ユニット1200は、実質的に四角形状の基板125を備えた光学モジュール120と、実質的に四角形状の枠部材1210とを備える。なお、基板125(以下では「サブ基板125」ともいう。)は、第1基板の一例に相当する。サブ基板125は、メイン基板130の下面における縁部133近傍に搭載されており、その下面には、光源121と、受光アレイ122,123とが備えられている。枠部材1210は、これら光源121及び受光アレイ122,123の周囲を取り囲むように、サブ基板125の下面に配置されている。なお、サブ基板125及び枠部材1210は、必ずしも四角形状である必要はなく、他の形状(例えば円形形状等)であってもよい。
【0043】
(2−6−1.光源)
図2及び
図4〜
図6に示すように、光源121は、サブ基板125の略中央位置に配置され、サブ基板125と対向する位置を通過するディスク110のスリットトラックST1,ST2,ST3の一部(以下では「照射領域」ともいう。)に光を出射する。
【0044】
光源121としては、照射領域に光を出射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えばLED(Light Emitting Diode)が使用可能である。本実施形態では、光源121は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として構成され、発光部から拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することで、光源121は、光軸からのズレによる光量変化や光路長の差による減衰等の影響は多少あるにせよ、照射領域に拡散光を出射し、照射領域に均等に光を出射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないため、光学素子による誤差等が生じにくく、照射領域への出射光の直進性を高める事が可能である。
【0045】
(2−6−2.受光アレイ)
図2及び
図4〜
図6に示すように、受光アレイ122,123は、光源121の周囲に配置されている。具体的には、受光アレイ122は、光源121を間に挟んで測定方向両側に配置されており、受光アレイ123は、光源121を間に挟んでディスク半径方向両側に配置されている。これら受光アレイ122,123は、それぞれ、測定方向に沿って所定のピッチでアレイ状に並べられた複数の受光素子122a,123aを有する。
【0046】
受光アレイ122の各受光素子122aは、光源121から出射され上記インクリメンタルパターンに対応するスリットトラックSTIの反射スリットで反射された光を受光し、検出信号を出力する。ディスク半径方向外側に配置された受光アレイ123の各受光素子122aは、光源121から出射され上記アブソリュートパターンに対応するスリットトラックST2の反射スリットで反射された光を受光し、検出信号を出力する。ディスク半径方向内側に配置された受光アレイ123の各受光素子122aは、光源121から出射され上記アブソリュートパターンに対応するスリットトラックST3の反射スリットで反射された光を受光し、検出信号を出力する。これら受光アレイ122,123の各受光素子122a,123aとしては、光源121から出射され対応する反射スリットで反射された光を受光して検出信号を出力可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えばフォトダイオードが使用可能である。
【0047】
なお、上述した受光アレイ122,123の配置構成は一例であり、この構成に限定するものではない。例えばアブソリュートパターンに対応する受光アレイ123を設けずにインクリメンタルパターンに対応する受光アレイ122のみとしてもよく、この場合に受光アレイ122を光源121のディスク半径方向外側及び内側の少なくとも一方に設けてもよい。
【0048】
(2−6−3.接続部及び被覆材)
図4〜
図11に示すように、サブ基板125とメイン基板130とは、サブ基板125の周囲に配置された複数の接続部180を介して電気的に接続されている。なお、
図4に示す例では、接続部180は、サブ基板125の測定方向両側及びディスク半径方向内側に配置されているが、さらにディスク半径方向外側に配置されてもよい。また、サブ基板125とメイン基板130との機械的な接続は、図示しないネジ等により行われる。各接続部180は、サブ基板125に設けられた端子部181と、メイン基板130に設けられた端子部182と、半田付けにより形成されて端子部181と端子部182とを接合する接合部183とを有する。端子部181及び端子部182は金属導体で構成されており、接合部183は半田で構成されているので、接続部180は、全体として光沢を有し、光の反射率が高い。
【0049】
端子部181は、サブ基板125の測定方向両側及びディスク半径方向内側の外周端面、つまり縁部125aに複数設けられている。なお、縁部125aは、第1縁部の一例に相当する。各端子部181は、光源121や各受光素子122a,123aとサブ基板125の内部においてリード線等を介して接続されている。また、各端子部181は、半円筒状の凹部184を有する。一方、端子部182は、メイン基板130の下面における端子部181に対応する位置に薄膜状に形成されている。そして、サブ基板125の端子部181がメイン基板130の端子部182上に載置された状態で、凹部184近傍において半田が溶融され、溶融した半田が凹部184により端子部182上に導かれる。このようにして端子部181の凹部184から端子部182に亘って接合部183が形成され、端子部181と端子部182とが接合される。なお、
図11中では、半田付けにより形成された接合部183の図示を省略している。
【0050】
なお、上述した接続部180の構成は一例であり、この構成に限定するものではない。例えば、サブ基板125の縁部125aからアーム状の金属端子を外側に突出させ、当該金属端子とメイン基板130の端子部182とを半田付けにより接合してもよいし、サブ基板125とメイン基板130との端子部同士をリード線等を用いて半田付けにより接続してもよい。また、例えばサブ基板125の下面に複数の端子部を形成しておき、メイン基板130の端子部182に形成した半田バンプによりサブ基板125側の端子部と直接接続するフリップチップ接合方式としてもよい。さらに、半田付けを行わず、例えばコネクタ等を用いてサブ基板125の端子部とメイン基板130の端子部とを接続する構成としてもよい。
【0051】
また、サブ基板125の測定方向両側及びディスク半径方向内側の縁部125a近傍には、被覆材190が該縁部125aに沿って(
図4に示す例では略コの字状に)設けられている。被覆材190は、枠部材1210により周囲を取り囲まれるようにサブ基板125上に配置された光源121及び各受光アレイ122,123を露出させつつ、枠部材1210の外側の側面1211(以下では「外周側面1211」ともいう。)における測定方向両側及びディスク半径方向内側と、複数の接続部180の全てとを被覆する。なお、
図11中では、被覆材190の図示を省略している。
【0052】
被覆材190としては、例えば接着剤やシール剤、樹脂等の材質が使用可能である。被覆材190の色は、表面に光沢のない黒色等、光を吸収し易い色やパターンであることが好ましい。これにより、光源121からの出射光(ディスク110で反射された反射光や散乱光を含む)の少なくとも一部を吸収し、被覆材190自身が光の散乱・反射を生じるのを防止できる。このような彩色は、予め接着剤等に顔料等を含有させることで行ってもよいし、被覆材190の表面を塗装することで行ってもよい。なお、被覆材190は、必ずしも黒色である必要はない。被覆材190は、黒色以外の暗い色(濃紺等)であってもよいし、例えば透明や明るい色の材質であっても、接続部180を覆うことでその反射率を下げることは可能であるため、接続部による光の反射、散乱の抑制に関し一定の効果を得ることができる。なお、説明の便宜上、以下では、被覆材190として、例えば紫外線照射等のエネルギー放射、加熱、空気中の水分等、外的要因によって硬化する接着剤を使用する場合について説明する。
【0053】
なお、本実施形態では、被覆材190は、枠部材1210の外周側面1211における測定方向両側及びディスク半径方向内側と、複数の接続部180の全てとを被覆するが、枠部材1210の外周側面1211の一部と、一部の接続部180のみとを被覆してもよい。例えば、比較的ノイズに対する耐性が低いアブソリュートパターンに対応する受光アレイ123に近い、枠部材1210の外周側面1211の部分と接続部180(サブ基板125のディスク半径方向内側の縁部125aに設けた接続部180)のみとを被覆し、比較的ノイズに対する耐性が高いインクリメンタルパターンに対応する受光アレイ122に近い、枠部材1210の外周側面1211の部分と接続部180(サブ基板125の測定方向両側の縁部125aに設けた接続部180)については被覆しない構成とすることもできる。この場合には、被覆材190の使用量を削減しつつ有効なノイズ対策を施すことが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では被覆材190が各接続部180の構成要素の全部を被覆するようにしたが、接続部180の一部、すなわち端子部181,182及び接合部183の少なくとも1つを被覆する構成としてもよい。例えば、最も受光アレイ122,123に近接する端子部181のみを被覆したり、端子部181,182及び接合部183のうち最も反射率の高い金属材料で構成されたもの、あるいは最も表面積の大きいもの等を被覆してもよい。この場合にも、被覆材190の使用量を削減しつつ有効なノイズ対策を施すことが可能となる。
【0055】
(2−6−4.サブ基板及び枠部材)
図4〜
図10に示すように、サブ基板125には、位置決め用のピン(図示省略)が貫通する少なくとも2つ(本実施形態では2つ)のピン孔125dが設けられている。また、枠部材1210には、上記位置決め用のピンが貫通する少なくとも2つ(本実施形態では2つ)のピン孔1218が、サブ基板125のピン孔125dと対応するように配置されている。
【0056】
ここで、本実施形態では、エンコーダ100の薄型化(軸方向の小型化)により、ディスク110の上面に配置された永久磁石MGと、メイン基板130の下面に配置された光学ユニット1200の枠部材1210とが、軸方向において重なる配置となっている。従って、枠部材1210の外周側面1211のディスク半径方向内側と永久磁石MGの外周面MGa(
図3も参照)とは、サブ基板130の面方向において対向している。そして、枠部材1210は固定配置されるのに対し永久磁石MGは回転されるので、枠部材1210の外周側面1211のディスク半径方向内側を覆う被覆材190と永久磁石MGとの隙間Sを確保する必要があり、このことがエンコーダ100の小型化(特に径方向の小型化)を阻害する要因となる。
【0057】
本実施形態では、枠部材1210の、永久磁石MGとサブ基板125の面方向において対向する部位1212の側面に、凹部1213が形成されている。なお、部位1212は、第1の部位の一例に相当する。これにより、被覆材190を永久磁石MGと対向する部位で凹ませることが可能であり、また被覆材190と永久磁石MGとの隙間Sを確保することが可能である。つまり、凹部1213は、被覆材の設置領域を規定する手段の一例に相当する。なお、凹部1213は、必ずしも部位1212の側面に形成される必要はなく、枠部材1210の他の部位の側面に形成されてもよい。凹部1213は、永久磁石MGの外周面MGaと等しい曲率である凹状の曲面1214を有する。これにより、凹部1213による被覆材190の凹みと永久磁石MGの外周面MGaとを等しい形状とすることが可能であり、また被覆材190と永久磁石MGとの隙間Sを等間隔にすることが可能である。なお、凹部1213の曲面1214は、必ずしも永久磁石MGの外周面MGaと等しい曲率である凹状である必要はない。
【0058】
またここで、被覆材190として接着剤が使用される本実施形態では、被覆材190は硬化する前は流動性を有するので、枠部材1210の周囲に流れ出す可能性がある。そして、枠部材1210の周囲に被覆材190の付着が禁止される領域(以下では「付着禁止領域」ともいう。)がある場合、付着禁止領域と枠部材1210との隙間を大きく確保する必要があり、このことがエンコーダ100の小型化を阻害する要因となる。付着禁止領域としては、枠部材1210のディスク半径方向外側の1辺のさらにディスク半径方向外側に位置する、メイン基板130の縁部133(支持部材140により支持される部位)が挙げられる。
【0059】
本実施形態では、サブ基板125及び枠部材1210の4つの角のうち、メイン基板130の縁部133側に位置する隣り合う2つの角に対応する部位125b,1215に、それぞれ、切り欠き部125c,1217が設けられている。なお、部位1215は、第2の部位の一例に相当する。また、切り欠き部125c,1217は、必ずしも設けられる必要はなく、設けられなくてもよい。そして、枠部材1210の各部位1215の側面には、切り欠き部1217と隣接して突出部1216が設けられている。これら各突出部1216により、該突出部1216を隔てた向こう側、つまり枠部材1210のディスク半径方向外側の1辺のさらにディスク半径方向外側に位置する、メイン基板130の縁部133側への被覆材190の流出を防止できる。つまり、突出部1216は、被覆材の設置領域を規定する手段の一例に相当する。なお、突出部1216は、必ずしも部位1215の側面に形成される必要はなく、枠部材1210の他の部位(但し、凹部1213の形成部位とは異なる部位)の側面に形成されてもよい。また、突出部1216は、必ずしも設けられる必要はなく、設けられなくてもよい。各突出部1216は、各部位1215の側面からメイン基板130の縁部133を支持する支持部材140に実質的に沿う方向に突出した形状に形成されている。これにより、支持部材140側への被覆材190の流出を効果的に防止でき、支持部材140とメイン基板130との間に被覆材190が侵入する、つまりメイン基板130の縁部133に被覆材190が付着することによる、光源121及び受光アレイ122,123とのギャップG(
図2参照)の変動を回避可能である。なお、突出部1216の形状は、必ずしも部位1215の側面から支持部材140に実質的に沿う方向に突出していなくてもよい。
【0060】
<3.本実施形態の効果の例>
以上説明した本実施形態に係るエンコーダ100では、サブ基板125とメイン基板130とが複数の端子部181を介して電気的に接続される。複数の端子部181は、乱反射の防止及び半田のフラックスの封止のために、被覆材190により被覆される。ここで、被覆材190は、枠部材1210の外周側面1211の少なくとも一部についても被覆する。そして、枠部材1210の部位1212の側面には凹部1213が形成される。この凹部1213により、枠部材1210の部位1212ではその他の部位よりも被覆材190を凹ませることができる。その結果、枠部材1210と(部位1212に対応して配置された)部品(上記の例では永久磁石MG)とを近接して配置することが可能となる。このようにして、エンコーダ100を構成する各部品間の隙間を小さくすることが可能となるので、枠部材1210の側面に凹部1213を形成するという簡易な構造で、エンコーダ100を小型化することができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、枠部材1210のディスク110に設置された永久磁石MGとサブ基板125の面方向において対向する部位1212の側面に、凹部1213が形成される。これにより、永久磁石MGと対向する部位1212で被覆材190を凹ませることができる。その結果、枠部材1210と永久磁石MGとを近接して配置することが可能となるので、エンコーダ100を(径方向及び軸方向に)小型化することができる。また、被覆材190と永久磁石MGとの間に隙間Sを確保できるので、永久磁石MGの回転によってエンコーダ100内部に生じる空気の流れの乱れを抑制できる効果もある。
【0062】
また、本実施形態では特に、凹部1213は、円形状の永久磁石MGの外周面MGaと等しい曲率である凹状の曲面1214を有する。これにより、凹部1213による被覆材190の凹みと永久磁石MGの外周面MGaとを等しい形状とすることができるので、枠部材1210と永久磁石MGとを最も近接して配置することが可能となる。また、被覆材190と永久磁石MGとの隙間Sを等間隔にすることができるので、永久磁石MGの回転によって生じる空気の流れを整流できる効果もある。
【0063】
また、本実施形態では特に、枠部材1210の部位1212とは異なる部位1215の側面に、突出部1216が設けられる。この突出部1216により、該突出部1216を隔てた向こう側への被覆材190の流出を防止することができる。その結果、枠部材1210と(突出部1216を隔てた向こう側に位置する)付着禁止領域に配置された部品(上記の例では支持部材140)とを近接して配置することが可能となる。このようにして、エンコーダ100を構成する各部品間の隙間を小さくすることが可能となるので、枠部材1210の側面に突出部1216を形成するという簡易な構造で、エンコーダ100を小型化することができる。
【0064】
また、本実施形態では特に、枠部材1210が実質的に四角形状であり、突出部1216が枠部材1210の隣り合う2つの角に対応する部位1215にそれぞれ設けられる。この2つの突出部1216により、枠部材1210の1辺に対応する部位1215側への被覆材190の流出を防止できる。その結果、枠部材1210と上記1辺に対応する部位1215側に配置された部品(上記の例では支持部材140)とを近接して配置することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では特に、突出部1216が、枠部材1210の4つの角のうちメイン基板130の縁部133側に位置する2つの角に対応する部位1215に設けられる。これにより、メイン基板130の縁部133側への被覆材190の流出を防止できるので、枠部材1210とメイン基板130の縁部133を支持する支持部材140とを近接して配置することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では特に、筒状の支持部材140が、サブ基板125及び枠部材1210を内部に収容すると共にメイン基板130の縁部133を支持する。そして、突出部1216は、側面から支持部材140に実質的に沿う方向に突出した形状に形成される。これにより、支持部材140側への被覆材190の流出を効果的に防止できる。その結果、支持部材140とメイン基板130との間に被覆材190が浸入することによる上述のギャップGの変動を回避でき、エンコーダ100の信頼性を向上できる。
【0067】
また、本実施形態では特に、サブ基板125及び枠部材1210は、メイン基板130の縁部133側に位置する2つの角に対応する部位125b,1215に切り欠き部125c,1217を有する。これにより、サブ基板125及び枠部材1210を支持部材140により近接して配置することが可能となり、エンコーダ100のさらなる小型化を実現できる。
【0068】
また、本実施形態では特に、被覆材190として、外的要因によって硬化する接着剤を使用する。これにより、被覆材190の硬化時間を短縮できると共に、所望のタイミングで硬化させることが可能となるので製造工程の自由度を向上できる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら一実施形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施形態に限定されるものではない。本開示の実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
【0070】
なお、以上の説明における「垂直」とは、厳密な意味での垂直ではない。すなわち、「垂直」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」という意味である。
【0071】
また、以上の説明における「同じ」「一致」「等しい」「均等」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「同じ」「一致」「等しい」「均等」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同じ」「実質的に一致」「実質的に等しい」「実質的に均等」という意味である。
【0072】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態等による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0073】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態等は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。