特許第5943240号(P5943240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943240
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   G01D5/347 110X
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-229835(P2013-229835)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-90305(P2015-90305A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100191112
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康
(72)【発明者】
【氏名】有永 雄司
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕司
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−113660(JP,A)
【文献】 特開2010−010006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する材質で構成されたディスクと、
前記ディスクに測定方向に沿って配置された複数の反射スリットと、
前記反射スリットに光を出射するように構成された光源と、
前記光源より出射され前記反射スリットで反射された光を受光するように構成された受光素子と、
前記ディスクの前記光源とは反対側に配置され、少なくとも前記光源の光軸上の位置に前記ディスクとの間に空隙を介して配置された前記光軸に対し傾斜した傾斜部を備え、前記ディスクを透過した前記光が前記空隙を介して前記傾斜部に照射される部材と、を有する、
エンコーダ。
【請求項2】
前記光源は、
拡散光を出射するように構成された点光源であり、
前記部材は、
前記光軸に対する傾斜角度が変化するように構成された前記傾斜部を有する、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記部材は、
前記光軸に対する傾斜角度が前記光軸の近傍位置を境に2段階に変化するように構成された前記傾斜部を有する、
請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記部材は、
前記ディスクとシャフトとを連結するように構成された連結部材であり、
前記傾斜部は、
前記ディスクから離間するにつれて前記シャフトの軸心を中心とする径方向寸法が大きくなるように前記連結部材の外周面に形成されたテーパ部である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記連結部材は、
前記ディスクが固定されるように構成されたディスク固定面と、
前記ディスク固定面と前記テーパ部との間に位置し、前記ディスク固定面からの前記軸心方向の距離が所定の距離となる範囲で前記径方向寸法が等しくなるように構成された等径部と、を有する、
請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記連結部材は、
前記シャフトを回転自在に支持する軸受の前記ディスク側の表面を覆うように構成された軸受覆い部を有する、
請求項4又は5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記連結部材は、
前記軸受覆い部の前記軸受に対向する面に凹状のオイル溜まりを有する、
請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記連結部材は、
黒色あるいは光を吸収し易い色彩の材質で構成される、又は、黒色あるいは光を吸収し易い色彩に塗装される、
請求項〜7のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記エンコーダは、
少なくとも前記ディスク、前記光源、前記受光素子及び前記部材を収容するように構成されたハウジングをさらに有し、
前記ハウジングは、
黒色あるいは光を吸収し易い色彩の材質で構成される、又は、内側が黒色あるいは光を吸収し易い色彩に塗装される、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項10】
前記ハウジングは、
前記傾斜部側に突出した突出部を有する、
請求項9に記載のエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスクとハウジングとの間に、ミスト化した軸受のグリースのエンコーダ側への漏出を抑制するオイルシールを設けたエンコーダが記載されている。このオイルシールは、黒色のゴムや樹脂等の光を吸収する材質で構成されるか、黒色あるいは光を吸収し易い彩色・パターンで塗装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−130394号公報(第7頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源から出射される光が、受光信号に含めたい反射光としてではなく、散乱光や迷光として受光素子に受光された場合、ノイズを発生させる。このようなノイズは、エンコーダの位置検出精度を低下させる要因となる。
【0005】
上記従来技術では、オイルシールを光を吸収する材質で構成するか、光を吸収し易い彩色・パターンで塗装することで、光の散乱や反射を抑制する。しかしながら、部品によっては、光を吸収する材質で構成したり、塗装等の照射された光を吸収する加工を施すことができない場合もある。このような部品がディスクとハウジングとの間等に配置された場合、エンコーダの検出精度が低下する可能性があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、検出精度を向上することが可能なエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、光を透過する材質で構成されたディスクと、前記ディスクに測定方向に沿って配置された複数の反射スリットと、前記反射スリットに光を出射するように構成された光源と、前記光源より出射され前記反射スリットで反射された光を受光するように構成された受光素子と、前記ディスクの前記光源とは反対側に配置され、少なくとも前記光源の光軸上の位置に前記光軸に対し傾斜した傾斜部を備えた部材と、を有する、エンコーダが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、光を透過する材質で構成されたディスクと、前記ディスクに測定方向に沿って配置された複数の反射スリットと、前記反射スリットに光を出射するように構成された光源と、前記光源より出射され前記反射スリットで反射された光を受光するように構成された受光素子と、前記ディスクの前記光源とは反対側に配置され、前記光源より出射され前記ディスクを透過した光を前記光源の光軸に対し傾斜した面で受ける手段と、を有する、エンコーダが適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンコーダの検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るエンコーダを備えたサーボシステムについて説明するための説明図である。
図2】実施形態に係るエンコーダについて説明するための説明図である。
図3】実施形態に係るエンコーダが有するハブを説明するための説明図である。
図4】第1変形例に係るエンコーダについて説明するための説明図である。
図5】第1変形例に係るエンコーダが有するハブを説明するための説明図である。
図6】第2変形例に係るエンコーダについて説明するための説明図である。
図7】第2変形例に係るエンコーダが有するハブを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<1.サーボシステム>
まず、図1を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダを備えたサーボシステムの構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、サーボシステムSは、サーボモータSMと、制御装置CTとを有する。サーボモータSMは、エンコーダ100と、モータMとを有する。
【0014】
モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。モータMは、回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型モータであり、回転子に固定されたシャフトSHを軸心AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
【0015】
なお、モータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMという。モータMは、例えば位置データ等をエンコーダ100が検出可能なモータであれば特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限定されるものではなく、例えば、油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。但し、説明の便宜上、以下ではモータMが電動式モータである場合について説明する。
【0016】
エンコーダ100は、モータMのシャフトSHの回転力出力側とは反対側に連結される。但し、必ずしも反対側に限定されるものではなく、エンコーダ100はシャフトSHの回転力出力側に連結されてもよい。エンコーダ100は、シャフトSH(回転子)の位置を検出することにより、モータMの位置(回転角度ともいう。)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
【0017】
なお、エンコーダ100は、モータMの位置に加えて又は代えて、モータMの速度(回転速度、角速度等ともいう。)及びモータMの加速度(回転加速度、角加速度等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば、位置を時間で1又は2階微分したり検出信号(例えば後述するインクリメンタル信号)を所定の時間の間カウントする等の処理により検出することが可能である。説明の便宜上、以下ではエンコーダ100が検出する物理量は位置であるとして説明する。
【0018】
制御装置CTは、エンコーダ100から出力される位置データを取得して、該位置データに基づいて、モータMの回転を制御する。従って、モータMとして電動式モータが使用される本実施形態では、制御装置CTは、位置データに基づいて、モータMに印加する電流又は電圧等を制御することにより、モータMの回転を制御する。更に、制御装置CTは、上位制御装置(図示せず)から上位制御信号を取得して、該上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がシャフトSHから出力されるように、モータMを制御することも可能である。なお、モータMが、油圧式、エア式、蒸気式などの他の動力源を使用する場合には、制御装置CTは、それらの動力源の供給を制御することにより、モータMの回転を制御することが可能である。
【0019】
<2.エンコーダ>
次に、図2を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100の構成について説明する。なお、本実施形態に係るエンコーダ100は、エンコーダ専用の筐体10やシャフトshを備えた、いわゆる「コンプリート型」のエンコーダとして構成される。この場合、エンコーダのシャフトshはモータのシャフトSHに図示しないカップリングを介して同一軸心となるように連結される。但し、エンコーダ100は「コンプリート型」に限定されるものではなく、例えばディスク110がエンコーダのシャフトshを介さずにモータのシャフトSHに連結された、いわゆる「ビルトイン型」のエンコーダとして構成されてもよい。この場合、筐体10はモータMの筐体として構成される。以下では、説明の便宜上、エンコーダ100がコンプリート型のエンコーダとして構成される場合について説明する。
【0020】
ここで、エンコーダ100の構成の説明の便宜上、上下等の方向を以下のように定め、適宜使用する。図2において、ディスク110が光学モジュール130と面する方向、つまりZ軸正の方向を「上」とし、Z軸負の方向を「下」とする。但し、該方向はエンコーダ100の設置態様によって変動するものであり、エンコーダ100の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、筐体10と、ハウジング150と、基板16と、光学モジュール130と、ハブ160と、ディスク110と、位置データ生成部140と、エンコーダカバー101を有する。
【0022】
(2−1.ディスク)
ディスク110は、後述するハブ160のディスク固着部162に固定されている。このディスク110は、円板状に形成されており、その略中央部には、ボルト14が貫通すると共にハブ160のボルト締結部163がはめ合わされる貫通孔111が設けられている。ディスク110は、貫通孔111にボルト締結部163がはめ合わされた状態で、下面110Bがディスク固着部162の上側の表面であるディスク固定面162Aに固着される。そして、ディスク110は、シャフトshと同一軸心となるように、ハブ160を介してシャフトshに連結されている。シャフトshは、軸受20を介して筐体10に回転自在に支持されている。ディスク110は、モータMの回転、すなわちシャフトshの回転により回転する。
【0023】
ディスク110の上面110Aには、スリットトラックSAが形成されている。スリットトラックSAは、ディスク110の上面110Aにおいてディスク中心を中心とした円環状に配置されたトラックとして形成されている。スリットトラックSAは、トラックの全周にわたって、測定方向に沿って並べられた複数の反射スリット(図示省略)を有する。ここで、「測定方向」とは、後述する光学モジュール130によりディスク110に形成されたスリットトラックを光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態のように被測定対象がディスク110である回転型のエンコーダにおいては、測定方向はディスク110の円周方向に一致する。1つ1つの反射スリットは、後述する光学モジュール130の光源131から出射された光を反射するように構成される。すなわち、エンコーダ100は、光源131からの光が反射スリットで反射されて、後述する受光素子で受光される、いわゆる「反射型」エンコーダである。複数の反射スリットは、円周方向で例えばインクリメンタルパターンを有するように、ディスク110の全周に配置されている。
【0024】
ディスク110は、光を透過する材質で構成されている。本実施形態では、ディスク110は例えばガラスにより形成される。ガラスは、金属(例えばステンレス鋼等)に比べて熱伝導率が小さい。従って、ディスク110をガラス製とすることにより、モータMのシャフトshで発生した熱がハブ160から該ディスク110に伝わるのを抑制することが可能である。そして、スリットトラックSAの反射スリットは、ガラス製のディスク110の上面110Aに、光を反射する材質(例えばアルミニウム等)を蒸着する等によって形成可能である。但し、反射スリットの形成方法は、この例に限定されるものではない。
【0025】
(2−2.光学モジュール)
光学モジュール130は、この例では基板状に形成されており、ディスク110のスリットトラックSAの一部に対向可能なように、基板16の下面においてディスク110と平行に固定されている。従って、ディスク110の回転に伴い、光学モジュール130は、スリットトラックSAに対して円周方向で相対移動することができる。この光学モジュール130のディスク110と対向する側の面、つまり下面には、光源131と受光アレイPAとが設けられている。
【0026】
光源131は、対向する位置を通過するスリットトラックSAの一部分に光を出射するように構成される。この光源131としては、照射領域に光を照射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)が使用可能である。そして、この光源131は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として形成されており、発光部から拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な出射面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することにより、光源131は、対向した位置を通過するスリットトラックSAにほぼ均等に光を照射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないので、光学素子による誤差等が生じにくく、スリットトラックへの光の直進性を高める事が可能である。
【0027】
受光アレイPAは、光源131の周囲に配置されており、対向するスリットトラックSAの反射スリットで反射した光を受光するように構成される。受光アレイPAは、複数の受光素子(図示省略)を有する。1つ1つの受光素子としては、例えばPD(Photodiode(フォトダイオード))を使用することができる。但し、受光素子としては、PDに限られるものではなく、光源131から発せられた光を受光して電気信号に変換可能なものであれば、特に限定されるものではない。受光素子で生成された電気信号は、位置データ生成部140に出力される。
【0028】
(2−3.ハブ)
図2及び図3により、ハブ160について説明する。ハブ160は、ディスク110とシャフトshとを連結する連結部材であり、ディスク110の光源131とは反対側に配置されている。このハブ160は、ディスク固着部162と、ボルト締結部163と、本体部164と、軸受覆い部165とを有する。本実施形態では、ハブ160は、例えば真鍮やステンレス等の金属材料で構成されるが、比較的剛性の高い材料であれば金属に限定されるものではない。
【0029】
ボルト締結部163は、ディスク固着部162の略中央部に、上方に突出した形状に形成されている。ボルト締結部163は、ディスク110とハブ160とが同一軸心となるように、ディスク110の貫通孔111にはめ合わされる。このボルト締結部163の内側には、ボルト14が貫通する貫通孔161が設けられている。ボルト14は、ディスク110の貫通孔111、及びハブ160の貫通孔161を上下方向に貫通して、シャフトshに設けられたボルト穴13にねじ込まれる。これにより、ハブ160がシャフトshの上端部に固定されると共に、該ハブ160のディスク固着部162に固定されたディスク110がシャフトshに連結される。
【0030】
ディスク固着部162は、ディスク110が固定されるように構成されたディスク固定面162Aと、等径部162Bとを有する。等径部162Bは、ディスク固定面162Aと後述のテーパ部164Aとの間に位置し、ディスク固定面162Aからの軸心方向(Z軸方向)の距離が所定の距離となる範囲で径方向寸法が等しくなるように構成されている。すなわち、ディスク固着部162は、中心に貫通孔161が形成された円柱状に形成され、上面がディスク固定面162Aであり、円柱状の本体部分が等径部162Bとなっている。ディスク固定面162Aには、ディスク110の下面110Bが当接されて適宜の接着剤により固定される。
【0031】
本体部164は、ディスク110から離間するにつれてシャフトshの軸心AXを中心とする径方向寸法が大きくなるように拡径した略円錐台形状に形成されており、その外周面にテーパ部164Aを備えている。ハブ160は、テーパ部164Aが少なくとも光源131の光軸h上に位置し、テーパ部164Aが光軸hに対し反射光が径方向外側を向くように傾斜した姿勢となるように配置される。なお、ここでいう「傾斜」とは、光軸hに対し平行且つ垂直のどちらでもなく、光軸hに対して一定の傾斜角度(但し90度を除く)を有しつつ公差することをいう。
【0032】
軸受覆い部165は、本体部164(テーパ部164A)の下部に位置する。この軸受覆い部165は、シャフトshを回転自在に支持する軸受20の外径よりも大きな外径を有することにより、軸受20のディスク110側の表面の全体を覆うように構成される。このような構成により、軸受覆い部165は、シャフトshの回転により温度が上昇してミスト化した軸受20のグリースがエンコーダ100側に漏出するのを低減する。また、軸受覆い部165の軸受20に対向する面には、凹状のオイル溜まり166が形成されている。
【0033】
なお、上記テーパ部164Aが傾斜部の一例に相当し、上記ハブ160が傾斜部を備えた部材の一例に相当する。また、ハブ160は、光源より出射されディスクを透過した光を光源の光軸に対し傾斜した面で受ける手段の一例に相当する。
【0034】
(2−4.基板及びハウジング)
【0035】
基板16は、例えば円板状のプリント配線基板であり、その下面には、光学モジュール130及び複数の回路素子等が搭載されている。この基板16は、ハウジング150とほぼ同じ直径となるように形成されており、その縁部がハウジング150の面151に載置されている。基板16の縁部には、固定ネジ15が貫通する複数の貫通孔16Aが円周方向に均等な間隔で設けられている。ハウジング150は、例えば円筒状に形成されており、基板16を支持すると共に、エンコーダ100のディスク110、光学モジュール130、及びハブ160等を収容するように構成される。このハウジング150は、固定ネジ15が貫通する複数の貫通孔152を有している。固定ネジ15は、基板16の貫通孔16A及びハウジング150の貫通孔152を上下方向に貫通して、筐体10に設けられたネジ穴に螺合する。これにより、基板16及びハウジング150が筐体10に固定される。
【0036】
また、ハウジング150は、内周面のディスク110より下側となる部分に、ハブ160のテーパ部164A側に突出した突出部153を有している。突出部153は、ハウジング150の内周面の周方向全体に亘って設けられている。
【0037】
なお、ハウジング150は、黒色あるいは光を吸収し易い色彩の材質で構成されるか、又は、内側が黒色あるいは光を吸収し易い色彩に塗装されている。なお、筐体10も、少なくともディスク110側に露出する表面を黒色あるいは光を吸収し易い色彩に塗装する等の手段を講ずることが好ましい。
【0038】
<3.エンコーダの動作>
エンコーダ100の動作の一例について説明する。モータMに外部電源が供給されてシャフトshが回転し、ディスク110が回転すると、光源131から対向する位置を通過するスリットトラックSAに光が照射され、受光アレイPAがスリットトラックSAで反射された光を受光する。そして、受光アレイPAの受光素子が電気信号を生成して位置データ生成部140に出力し、位置データ生成部140が入力された信号に基づいてディスク110の1回転内の位置を表す位置データを生成し、位置データを制御装置CTへ連続的に出力する。
【0039】
<4.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のエンコーダ100は、ディスク110の光源131とは反対側に配置されたハブ160を有する。このハブ160は、少なくとも光源131の光軸h上の位置に、光軸hに対し傾斜したテーパ部164Aを備える。これにより、光源131より出射されディスク110を透過した光(特にスリットトラックSAの各反射スリット間を透過した光)を、ハブ160のテーパ部164Aで受けることができ、光を受光アレイPAにより受光されない方向に反射させることができる。その結果、受光アレイPAの受光信号に含めたい反射光(反射スリットで反射された反射光)以外の、ノイズの原因となる散乱光や迷光が受光アレイPAで受光されるのを低減することができるので、エンコーダ100の検出精度を向上することができる。
【0040】
本実施形態では特に、ディスク110とシャフトshとを連結するハブ160がテーパ部164Aを有する。前述のように、ハブ160は剛性を持たせるために、光沢のある金属材料(ステンレスや真鍮等)で構成される。このため、仮にハブ160が光軸h上に該光軸に対して実質的に垂直となる面を有する場合、光源131より出射されディスク110を透過した光がハブ160で反射されて受光アレイPAに受光され、ノイズの原因となる。本実施形態では、ハブ160が外周面の少なくとも光軸h上の位置にテーパ部164Aを有するので、光を径方向外側に向かって反射させることができる。したがって、ハブ160を反射光量が比較的大きな金属材料で構成した場合でも、ノイズの原因となる散乱光や迷光が受光アレイPAで受光されるのを低減することができる。
【0041】
また、本実施形態では特に、ハブ160が、ディスク固定面162Aと、ディスク固定面162Aとテーパ部164Aとの間に位置する等径部162Bとを有する。これにより、次のような効果を得る。すなわち、反射型エンコーダの製造工程では、ハブ160のディスク固定面162Aにディスク110を接着する前に、ハブ160のディスク固定面162Aを切削加工して軸心方向(Z軸方向)の寸法を調整することで、光源131及び受光素アレイPAとディスク110とのギャップが精度出しされる。このとき、本実施形態では、ハブ160が等径部162Bを有するので、上記切削加工によってディスク固定面162Aの接着面積が変化することがなく、接着面積を一定とすることができる。したがって、ハブ160とディスク110との接着力がばらつくのを抑制でき、エンコーダ100の信頼性を向上できる。また、ハブ160が等径部162Bを有することにより、光源131とテーパ部164Aとの距離を増大することができる。その結果、光の減衰によりテーパ部164Aでの反射光量を減少でき、散乱光や迷光の低減効果をさらに高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では特に、ハブ160が、軸受20のディスク110側の表面を覆うように構成された軸受覆い部165を有する。これにより、次のような効果を得る。すなわち、一般に、シャフトshの回転によりエンコーダ100の温度が上昇すると、軸受20のグリースがミスト化して飛散する。このミスト化したグリースがエンコーダ100側に漏出すると、光源131や受光アレイPA等の光学部品やディスク110にグリースが付着し、光源131から受光アレイPAに至る光量が減少して、エンコーダ100による検出結果の信頼性が低下するおそれがある。そこで本実施形態では、ハブ160が軸受20のディスク110側の表面を覆う軸受覆い部165を有する。これにより、シャフトshの回転による発熱によりミスト化した軸受20のグリースがエンコーダ100側へ漏出するのを抑制することができる。したがって、エンコーダ100の信頼性を向上できる。
【0043】
また、本実施形態では特に、ハブ160は、軸受覆い部165の軸受20に対向する面に凹状のオイル溜まり166を有する。これにより、ミスト化した軸受20のグリースの多くをオイル溜まり166に付着させ、エンコーダ100側への漏出を効果的に抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では特に、エンコーダ100のハウジング150が、黒色あるいは光を吸収し易い色彩の材質で構成されるか、又は、その内側が黒色あるいは光を吸収し易い色彩に塗装される。これにより、散乱光や迷光の低減効果をさらに高めることができる。
【0045】
また、本実施形態では特に、ハウジング150がテーパ部164A側に突出した突出部153を有する。この突出部153により、ハウジング150の内壁をテーパ部164Aに近接させることができる。その結果、テーパ部164Aによって反射された光を突出部153で吸収させ、散乱光や迷光の低減効果をさらに高めることができる。
【0046】
<5.変形例>
以上、添付図面を参照しながら一実施形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されるものではない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
【0047】
(1)ハブの外周面を円弧状の曲面とする場合
上記実施形態では、ハブ160の本体部164の外周面に、光軸hに対する傾斜角度が一定であるテーパ部164Aを形成したが、光軸hに対する傾斜角度が連続的に変化する構成としてもよい。本変形例の一例を図4及び図5に示す。なお、図4及び図5において、図2及び図3と同様の構成については同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0048】
図4及び図5に示すように、ハブ160の本体部167は、その外周面に円弧状の曲面部167Aを備えている。曲面部167Aは、上部に位置する等径部162Bと下部に位置する軸受覆い部165との間に位置し、その上端部はほぼ光軸hと平行な方向(つまり傾斜角度が0度)となり、その下端部はほぼ光軸hと垂直な方向(つまり傾斜角度が90度)となる。本実施形態では、図4に示すように、曲面部167Aは曲率半径を距離rとする円弧状に形成されているが、曲面部の曲がり具合をこれに限定するものではない。なお、図4に示す距離dは等径部162Bの厚み(軸心方向の距離)である。
【0049】
本変形例によれば、次のような効果を得る。すなわち、点光源である光源131より出射される拡散光を一定の傾斜角度を有する傾斜部で受ける場合、光軸hより内周側であるほど傾斜部での反射光が受光アレイPA側に向きやすくなり、光軸hより外周側であるほど反射光は受光アレイPAより離間する方向に向きやすい。そこで、本変形例では、光軸hに対する傾斜角度が変化するように傾斜部が構成される。具体的には、傾斜部は、傾斜角度が連続的に変化する曲面部167Aとして構成される。これにより、光軸h近傍より内周側であるほど曲面部167Aの傾斜角度が小さくなるので、反射光を受光アレイPAより遠ざけることができる。一方、光軸h近傍より外周側であるほど曲面部167Aの傾斜角度が大きくなるので、反射光の向きを受光アレイPAより離間する方向に維持できる。その結果、散乱光や迷光の低減効果をさらに高めることができ、エンコーダ100の検出精度をより向上することができる。
【0050】
(2)ハブの外周面の傾斜角度を段階的に変化させる場合
上記実施形態では、ハブ160の本体部164の外周面に、光軸hに対する傾斜角度が一定であるテーパ部164Aを形成したが、光軸hに対する傾斜角度が段階的に変化する構成としてもよい。本変形例の一例を図6及び図7に示す。図6及び図7において、図2及び図3と同様の構成については同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0051】
図6及び図7に示すように、ハブ160の本体部168は、その外周面の光軸hに対する傾斜角度が光軸hの近傍位置を境にして2段階に変更するように構成される。具体的には、本体部168は外周面に、上部に位置する第1テーパ部168Aと下部に位置する第2テーパ部168Bとを有している。第1テーパ部168Aの傾斜角度は第2テーパ部168Bの傾斜角度よりも小さくなるように構成される。図6に示す例では、第1テーパ部168Aと第2テーパ部168Bとの境界が光軸hよりも内周側に位置しているが、これに限定されるものではなく、境界が光軸hよりも外周側に位置してもよいし、境界と光軸hとの位置を一致させてもよい。つまり、境界が光軸hの近傍に位置すればよい。
【0052】
本変形例によれば、ハブ160の外周面の光軸hに対する傾斜角度を、反射光が受光アレイPA側に向きやすい光軸h近傍より内周側については相対的に小さくし、反射光が受光アレイPAより離間する方向に向きやすい光軸h近傍より外周側については相対的に大きくすることができる。これにより、光軸hの内周側及び外周側のいずれの位置においても反射光の向きを受光アレイPAより離間させることができる。その結果、散乱光や迷光の低減効果をさらに高めることができ、エンコーダ100の検出精度をより向上することができる。
【0053】
なお、上記では傾斜角度が2段階に変化する場合を一例として説明したが、3段階以上に変化する構成としてもよい。
【0054】
(3)ハブを黒色等に塗装又は黒色等の材質で構成する場合
上記実施形態では、ハブ160に塗装等しなかったが、ハブ160を黒色あるいは光を吸収し易い色彩に塗装してもよい。あるいは、ハブ160の材質(材料)を、例えばカーボン繊維等の黒色あるいは光を吸収し易い色彩の材質で構成してもよい。これにより、テーパ部164等によって光を受光アレイPAで受光されない方向に反射させると共に、その反射光量を低減することができるので、散乱光や迷光の低減効果をさらに高めることができる。
【0055】
(4)その他
以上では、ディスク110とシャフトshとを連結するハブ160が光軸hに対し傾斜した傾斜部を備える場合を一例として説明したが、傾斜部を備える部材はハブ160に限定されるものではない。例えば、ハウジング150や筐体10等が、少なくとも光源131の光軸h上の位置に光軸hに対し傾斜した傾斜部を有する構成として、光を受光アレイPAにより受光されない方向に反射させてもよい。
【0056】
また以上では、ハブ160がシャフトshの上端部にボルト14により固定される場合を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、ハブ160はシャフトshに接着剤により固定されてもよい。
【0057】
また、以上の説明における「平行」「垂直」とは、厳密な意味での平行や垂直ではない。すなわち、「平行」「垂直」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に平行」「実質的に垂直」という意味である。同様に、以上の説明における「均等」とは、厳密な意味での均等ではない。すなわち、「均等」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に均等」という意味である。
【0058】
以上、一実施形態及び変形例について説明したが、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0059】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0060】
20 軸受
100 エンコーダ
110 ディスク
130 光学モジュール
131 光源
150 ハウジング
153 突出部
160 ハブ(部材、連結部材)
162A ディスク固定面
162B 等径部
164A テーパ部(傾斜部)
165 軸受覆い部
166 オイル溜まり
168A 第1テーパ部(傾斜部)
168B 第2テーパ部(傾斜部)
h 光軸
PA 受光アレイ
SA スリットトラック
sh シャフト
SH シャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7